説明

赤血球中に含まれるヘモグロビンの固有色素を利用して血液試料の赤血球指数を決定するための方法及び装置

個々の赤血球の容積、並びにヘモグロビン含有量及び濃度とを含む赤血球指数と、さらに、試料中に存在する赤血球の総数、及び実質的に無希釈の血液試料における前述の指数の各々についての平均値を含む赤血球の集団統計量とを決定するための方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、以下の米国仮特許出願:2008年3月21日に出願された米国仮特許出願第61/038,557号明細書;2008年3月21日に出願された米国仮特許出願第61/038,574号明細書;2008年3月21日に出願された米国仮特許出願第61/038,545号明細書;及び2008年3月21日に出願された米国仮特許出願第61/038,559号明細書に開示される本質的主題の利益を享受し、それを参照により援用する。
【0002】
本発明は、概して血液試料を分析するための、特に、赤血球の容積と、さらに試料の平均赤血球容積とを決定するための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
医師、獣医師及び科学者は、構成粒状物質の量を決定し、さらに健常な被験体には見られない異常な粒状物質の存在を同定するため、ヒト及び動物の生体体液、特に血液を調べている。一般に計測、定量及び同定される粒状物質としては、赤血球(RBC)、白血球(WBC)、及び血小板が挙げられる。RBC分析には、RBCの数、大きさ、容積、形状、ヘモグロビン含有量及び濃度、並びにヘマトクリット(血中血球容積とも称される)の測定が含まれ得る。RBC分析にはまた、RBCにおける住血原虫(例えば、マラリア原虫)か、又はWBCにおける細胞外の、若しくはリーシュマニア症の病原生物であるトリパノソーマ、並びに他の多くの住血原虫の存在の検出及び/又は計数を含め、赤血球細胞中の特定の成分、例えばDNA、RNAの存在及び/又は濃度の決定も関わり得る。WBC分析には、一般にはWBC分画と称されるWBCサブタイプの集団内頻度の決定、並びに健常な被験体には見られない任意の異常な細胞タイプの報告が含まれ得る。血小板(又は、鳥類、爬虫類及び魚類を含む特定の動物においては栓球、これは、哺乳類における血小板の機能と同様だが、10倍程大きく有核である)の分析には、試料中の血小板又は栓球の凝集塊の存在についての決定を含め、血小板の数、大きさ、形状・構造、及び容積の決定が含まれ得る。
【0004】
「Wintrobe’s Clinical Hematology」第12版などの医学テキストに詳細に記載されている公知の血液検査手法では、概して検査方法は、手動、遠心、及びインピーダンスを用いるタイプの方法に分けられる。細胞計数を手動で行う方法には、典型的には、正確に測定された容積の血液又は体液試料を作成し、それを定量的に希釈して、計数チャンバにおいて目視で数をカウントすることが関わる。手動での検査方法には、末梢血スメアを調べることが含まれ、そこでは目視検査により各粒状物質タイプの相対量が決定される。遠心による検査方法には、試料を遠心し、試料を構成成分の相対密度に従う構成成分層に分離させることが関わる。成分層は染色して、可視性又は検出を高めることができる。インピーダンスによる方法には、計測対象の粒状物質に従い処理された血液の正確な容積を調べることが関わる;例えば、有核細胞を計数するためRBCを溶解し、容積測定に基づき試料を導電性流体中に希釈する。この過程には、典型的には、狭小な通路を通る試料に印加される電流又は電圧をモニタすることにより、粒子が一列で通過するときの電流/電圧に対する粒子の影響を決定することが関わる。他の手法では、光線の中を一列に通過する粒状物質に入射する光の散乱の強度及び角度を分析することが関わる。フローサイトメトリーによる方法もまた用いることができ、これには、各細胞又は粒子タイプに存在する表面エピトープに対する抗体と結合したフルオロフォアにより、懸濁液中の対象の粒状物質を染色し、染色した粒状物質を適切な波長の光で励起して、個々の粒状物質/細胞の発光を分析することが関わる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述の方法は全て、末梢血スメア又は遠心分離を除き、正確な容積の試料を計量分配する必要がある。試料容積が不正確であると、関連する分析において同じ規模の定量誤差が生じ得る。遠心による方法を除き、前述の方法は全て、試料を1つ又は複数の液体試薬又は希釈剤と混合することも必要で、且つ正確な結果を得るために器具のキャリブレーションも必要となる。末梢血スメアの場合、スメアを正しく検査するには高度な訓練が必要とされる。前述の方法の多くは、処理費用が高額な大量の汚染廃棄物が発生する。加えて、赤血球及び栓球が有核である鳥類、爬虫類及び魚類、並びに赤血球の大きさが極めて小さく、血小板と混同し得る特定の哺乳類では、上述の方法は全血球計算値(CBC)の決定には好適でない。
【0006】
ヒト又は動物の血液検査により決定することのできる情報量は膨大である。特に、RBC指数;例えば、個々の細胞の大きさ、個々の細胞のヘモグロビン含有量及び濃度、並びに試料中のRBCの集団統計量の決定が有用である。上記に参照したWintrobeのテキスト中の論考によって明らかなとおり、前述のパラメータの各々についての平均及び分散統計量(例えば、変動係数)もまた重要な情報を提供することができ、それにより医師は、RBCの障害をより適切に分類することが可能となっている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に従えば、個々のRBCについての容積、並びにヘモグロビン含有量及び濃度を含むRBC指数と、さらに、試料中に存在するRBCの総数、及び実質的に無希釈の血液試料における前述の指数の各々についての平均値を含むRBC集団統計量とを決定するための方法が提供される。
【0008】
本発明のある態様に従えば、1)実質的に無希釈の血液試料を提供するステップと;2)被分析試料を静止状態に保つように構成された分析チャンバに試料を入れるステップであって、チャンバが第1のパネルの内表面と第2のパネルの内表面とにより画定され、双方のパネルとも透明であり、及びチャンバがパネルの内表面間に延在する高さであって、試料中の少なくとも1個の赤血球が内表面の双方に接触するような高さを有する、ステップと;3)内表面に接触している少なくとも1個の赤血球を撮像するステップと;4)撮像された赤血球のうち双方の内表面に接触している部分の光学濃度を決定するステップと;5)赤血球のうち内表面間に延在する部分と光学的に整列する画素の決定された光学濃度値を用いて、内表面に接触している赤血球のヘモグロビン濃度を決定するステップとを含む方法が提供される。
【0009】
本発明の別の態様に従えば、実質的に無希釈の血液試料中の赤血球の細胞容積を決定するための方法が提供される。この方法は、1)実質的に無希釈の血液試料を提供するステップと;2)被分析試料を静止状態に保つように構成された分析チャンバに試料を入れるステップであって、チャンバが第1のパネルの内表面と第2のパネルの内表面とにより画定され、双方のパネルとも透明であり、及びチャンバがパネルの内表面間に延在する高さであって、試料中の少なくとも1個の赤血球が内表面の双方に接触するような高さを有する、ステップと;3)赤血球のうち双方の内表面と接触している部分を含め、内表面に接触している少なくとも1個の赤血球を撮像するステップと;4)赤血球のうち双方の内表面と接触している部分の平均光学濃度を決定するステップと;5)赤血球全体の全光学濃度を決定するステップと;6)チャンバ高さと、撮像された赤血球のうち双方の内表面に接触している部分について決定された平均光学濃度と、撮像された赤血球全体について決定された光学濃度とを用いて、少なくとも1個の赤血球の細胞容積を決定するステップとを含む。
【0010】
本発明の利点は、毛細血管を穿刺することにより患者から直接採取され得るか(これは、ポイント・オブ・ケア用途に一層有用となる)、又は必要に応じて静脈血試料から得ることのできる極めて少量の試料容積を使用した血液試料の特性決定に用い得ることである。
【0011】
本発明の別の利点は、ヘモグロビンの固有色素を用いて血液試料の特性を決定するように機能するため、いかなる色素又は染色剤も添加する必要がないことである。ヘモグロビンはモル吸光係数が高いため、数マイクロメートル程の極めて小さい光路距離においても、その相対又は絶対濃度の正確な決定が可能となる。
【0012】
本発明の別の利点は、特定の細胞に関する個々のRBC指数の決定が可能となり、それにより指数間の関係を特定し得ることである。
【0013】
本方法の別の利点は、外部及び内部流動体なしに、且つ重力又は向きとは無関係に機能するため、手持ち型機器として微小重力条件下での使用に適応可能なことである。
【0014】
本方法の別の利点は、インピーダンス式計数器と異なり、本装置は使用時に毎回キャリブレーションを行う必要がないことである。本装置はまた、細胞の形状、細胞がインピーダンス式細胞計数器の計測用オリフィス中を流れるときの細胞の向き、又はインピーダンス式の計数に必要な希釈液の重量オスモル濃度効果などの摂動(pertebration)を受けることもない。
【0015】
本方法及びそれに関連する利点が、添付の図面を含め、以下に提供される詳細な説明を考慮することでさらに容易に明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本方法で使用し得る分析チャンバの図式的な断面表示である。
【図2】本方法で使用し得る分析チャンバの図式的な断面表示である。
【図3】本方法で使用し得る分析チャンバの図式的な断面表示である。
【図4】本方法で使用し得る分析チャンバの図式的な断面表示である。
【図5】複数の分析チャンバを有するテープの図式的な平面図である。
【図6】分析チャンバを有する使い捨て容器の図式的な平面図である。
【図7】分析チャンバを有する使い捨て容器の図式的な断面図である。
【図8】本方法で使用し得る分析機器の図式的な略図である。
【図9】図1に示される分析チャンバの一部分の拡大図である。
【図10】本発明のある態様に従い、赤血球中のヘモグロビン濃度、及び複数の赤血球における平均ヘモグロビン濃度を決定するための方法ステップを示すブロック図である。
【図11】本発明のある態様に従い、赤血球の細胞容積、及び赤血球集団の平均細胞容積を決定するための方法ステップを示すブロック図である。
【図12】本発明のある態様に従い、赤血球のヘモグロビン含有量、及び赤血球集団の平均ヘモグロビン含有量を決定するための方法ステップを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
実質的に無希釈の全血の試料を分析するための本方法及び装置により、試料にいかなる色素、試薬(いくつかの実施形態における抗凝固薬は除く)又は希釈剤も添加することなく、赤血球(RBC)細胞容積(CV)、平均赤血球容積(MCV)、赤血球ヘモグロビン濃度(CHC)、平均赤血球ヘモグロビン濃度(MCRC)、及び平均赤血球ヘモグロビン含有量(MCH)、並びにそれらの集団統計量を決定することが可能となる。
【0018】
本方法は、実質的に無希釈の抗凝固処理された全血の被分析試料を静止状態に保つように機能する分析チャンバを利用する。このチャンバは、典型的には約0.2〜1.0μlの試料を保持するサイズであるが、チャンバはいかなる特定の容積容量にも限定されず、容量は分析用途に合わせて変更することができる。語句「実質的に無希釈の」は、本明細書で使用されるとき、全く希釈されていないか、又は意図的に希釈されたわけではないが、分析のためにそこに何らかの試薬が添加されている血液試料を指す。試薬の添加により試料が希釈される程度では、あったとしても、かかる希釈は実施される分析に対して何ら臨床的に有意な影響をもたない。典型的には、本方法の実施に使用され得る試薬は、抗凝固薬(例えば、EDTA、ヘパリン)及び場合によって等積球形化剤のみである。これらの試薬は一般に乾燥形態で添加され、試料の希釈を目的とするものではない。ある状況下では(例えば、超高速分析)、抗凝固剤の添加は必要でないこともあるが、試料が分析に適した形態であることを確実にするため、ほとんどの場合には添加することが好ましい。用語「静止状態」は、試料が分析用チャンバの中に入れられ、分析中、その試料がチャンバに対して意図的に動かされることがない;すなわち、試料がチャンバ内に静止状態で存在することを表すために用いられる。血液試料中に存在する運動の程度では、それは主に血液試料の有形の構成成分のブラウン運動によるもので、そうした運動によってこの発明の機器が使用不能になることはない。
【0019】
ここで図1を参照すると、分析チャンバ10は、内表面14を有する第1のパネル12と、内表面18を有する第2のパネル16とにより画定される。パネル12、16は双方とも十分に透明なため、以下に記載される光学濃度分析の実施に十分な量の所定波長に従う光を、それらのパネルに透過させることが可能である。パネル12、16の少なくとも一部分は互いに平行であり、その部分の範囲内で内表面14、18は高さ20だけ互いに隔たり、これは、以下にさらに詳細に考察されるとおり、試料中の少なくとも一部の個々のRBC22が、各々、内表面14、18の双方に個々に接触し、及び/又は試料中の1つ又は複数のRBC凝集塊23が、各々、チャンバパネル12、16の内表面14、18の双方に接触し、且つ静止状態の試料中の1つ又は複数のRBC間隙領域(例えば、ラクナ)24が内表面間に延在するような高さである。本方法は、前記特徴を有する様々な異なる分析チャンバタイプを利用することができ、従っていかなる特定のタイプの分析チャンバにも限定されることはない。平行なパネル12、16を有する分析チャンバは、それにより分析が簡略化されるため好ましいが、本発明に必須ではない;例えば、一方のパネルが他方のパネルに対して既知の非平行な角度で配置されたチャンバを使用しても良い。
【0020】
ここで図2〜5を参照すると、許容可能なチャンバ10の例が示され、これは、第1のパネル12と、第2のパネル16と、パネル12、16の間に配置された少なくとも3つのセパレータ26とを含む。セパレータ26は、パネル12、16の間に配置可能な、パネル12、16を互いに離間させるように機能する任意の構造であって良い。パネル12、16間に延在するセパレータ26の寸法28は、本明細書ではセパレータ26の高さ28と称される。セパレータ26の高さ28は、典型的には互いに正確に等しいわけではないが(例えば、製造公差)、同様の分析装置に使用される間隔保持手段についての商業的に許容可能な公差の範囲内である。球形ビーズは許容可能なセパレータ26の一例であり、例えば、Bangs Laboratories of Fishers、米国Indianaから市販されている。
【0021】
図3に示されるチャンバの実施形態では、セパレータ26は、第1のパネル12及び第2のパネル16の一方又は双方と比べて可撓性が高い材料からなる。図3で分かるとおり、より大きいセパレータ26は、ほとんどのセパレータ26がパネル12、16の内表面14、18に接触している点まで圧縮され、そのためチャンバ高さはセパレータ26の平均直径よりほんの僅かに小さくなる。図4に示されるチャンバの実施形態では、セパレータ26は、第1のパネル12及び第2のパネル16の一方又は双方と比べて可撓性が低い材料からなる。図4では、第1のパネル12は球形セパレータ26及び第2のパネル16より可撓性の高い材料によって形成され、テントのような形でセパレータ26に被さる。この実施形態において、チャンバ10の局所的な小さい領域は所望のチャンバ高さ20から逸脱し得るが、チャンバ10の平均高さ20は、セパレータ26の平均直径の高さに極めて近似する。分析では、平均チャンバ高さ20は、この実施形態を使用する4μm未満のチャンバ高さにおいて1パーセント(1%)又はそれ以上まで制御され得ることが示されている。上記の可撓性を有するという特性(並びにセパレータの分布密度などの他の要因)を前提として、セパレータ26及びパネル12、16は様々な材料で作製することができ、但しパネル12、16は十分に透明であるものとする。アクリル又はポリスチレンからなる透明プラスチックフィルムが、許容可能なパネル12、16の例であり、ポリスチレン、ポリカーボネート、シリコーンなどから作製される球形ビーズが、許容可能なセパレータ26である。許容可能なセパレータの具体例は、例えば、Thermo Scientific of Fremont、米国Californiaから、カタログ番号4204A、直径4ミクロン(4μm)で市販されているポリスチレン製の球体である。図5を参照すると、他方の上側に垂直方向に配置されるパネル12が、等間隔に配置された複数のポート30(例えば、通気孔として働く)を含み、パネル12、16は所定箇所で互いに結合される。いくつかの実施形態では、結合材料32がチャンバ外壁を形成し、試料34を分析チャンバ10内に横方向に収容するように機能する。許容可能な分析チャンバのこの例は、米国特許出願公開第2007/0243117号明細書、米国特許出願公開第2007/0087442号明細書、及び2008年4月2日に出願された米国仮特許出願第61/041,783号明細書;及び2008年10月31日に出願された米国仮特許出願第61/110,341号明細書(これらは全て、全体として参照により本明細書に援用される)にさらに詳細に記載されている。
【0022】
許容可能なチャンバ10の別の例は、図6及び図7に示されるとおりの使い捨て容器36に配置される。チャンバ10は、第1のパネル12と第2のパネル16との間に形成される。第1のパネル12及び第2のパネル16の双方とも透明なため、チャンバ10に光を通過させることができる。第1のパネル12及び第2のパネル16の少なくとも一部分は互いに平行であり、その部分の範囲内で内表面14、18は高さ20だけ互いに隔たっている。このチャンバ10の実施形態は、米国特許第6,723,290号明細書にさらに詳細に記載されており、この特許は、全体として参照により本明細書に援用される。図2〜図7に示される分析チャンバは、本方法における使用に適したチャンバに相当する。しかしながら、本方法はそれらの特定の実施形態に限定されるものではない。
【0023】
許容可能なチャンバ高さは、試料中のRBCの少なくとも一部がチャンバパネルの双方の内表面に個々に接触し、及び/又は1つ又は複数のRBC凝集塊がチャンバパネルの双方の内表面に接触し、且つ静止状態の試料中においてRBCが含まれない1つ又は複数の領域(例えば、ラクナ)が内表面間に延在する高さである。血液試料中のRBC22の大きさは、分析される血液試料のタイプ(例えば、ヒト、サル、ウマ、ヤギ、魚類、鳥類等)に従い異なるため、許容可能なチャンバ高さは被験体によって変わり得る。典型的なRBCの大きさと、RBCはある程度変形し得る(例えば、上記で考察される部分的に圧縮された球形)という事実とに基づくと、約2〜6ミクロン(2〜6μm)のチャンバ高さが、ほとんどの動物種についての個々のRBCに適している。ヒトRBCより実質的に大きい、又は小さいRBCを有する動物種のヘマトクリット分析は、それぞれ、チャンバ高さがより高い、又はより低いそれぞれのチャンバで実施することができる。加えて、RBC凝集塊を利用するヘマトクリット分析では、RBC凝集塊の高さによって決まるチャンバ高さとなり得る。
【0024】
セパレータ26を利用しないチャンバの実施形態では、チャンバ10の高さ20はチャンバの製造過程の一部として決定し、そのチャンバに設けることができる。或いは、チャンバ10の高さ20は、既知量の感受性着色剤の利用、又はチャンバ内にある幾何学的特徴であって、既知のフィールド領域についての試料の容積、ひいてはチャンバの高さの決定に用いることのできる特徴の利用を含め、様々な手法を用いて決定することができる。これらの、及び他の手法が、米国特許第6,723,290号明細書及び米国特許第6,929,953号明細書に記載されている。しかしながら、本発明はそれらの手法に限定されるものではない。
【0025】
用途によっては、RBCの少なくとも一部が実質的に球形の幾何形状をとるよう、試料の少なくとも一部分と等積球形化剤(例えば、両性イオン界面活性剤又は同様の機能性試薬)が混和される。RBC22は、その自然の形態では、球形状40よりむしろ両凹円盤(bioconcave disc)形状38(図1を参照)であることのほうが多い。結果として、等積球形化剤の作用がない限り、円盤形状のRBC22のほとんどは、チャンバパネル12、16の双方には接触しないことになる。実質的に球形の幾何形状を有するRBC22の数が増加すると、本来は球形でありながらチャンバパネルに抑え込まれる一部の細胞42を含め、パネル12、16の双方と接触するRBC22の数が増加する。等積球形化剤は、チャンバ10の離れた領域に(例えば、内表面の特定の部分に堆積させることにより)配置することができる。チャンバ10内での試料の混合がない場合、この作用剤は、作用剤に近接した試料の一部分と混和されるのみであり、従って試料の他の部分は球形化剤による処理は受けないままである。このように選択的にRBC22の一部分が等積球形化を受けないようにすることで、以下に記載されるとおり、RBC22の定性的形態を画像分析によって調べたり、さらにはその丸み、その形状、及び細胞上の突起の存在などの特徴を確認するため医師に画像を提供したりすることが可能となる。等積球形化は、RBC22の定量分析のいずれにも摂動を生じさせない。
【0026】
チャンバ10内に静止状態で配置された試料の分析は、試料の少なくとも一部分を撮像し、画像に対して分析を実施するように機能する分析機器を使用して実施される。画像は、試料の光学濃度をユニット毎ベースで決定することが可能な形で生成される。用語「ユニット毎ベース」又は「画像ユニット」とは、試料の画像を解像することのできる定義された増分単位を意味する。画素は、特定の撮像システムにおいて個々に処理することのできる画像の最小要素として一般に定義され、画像ユニットの一例であり、また画像ユニットとしては、集合的な単位としての少数の画素も含まれ得る。撮像機器の拡大率は、線形的な関係(例えば、焦点面におけるマイクロメートル毎画素)として表すこともでき、この場合、線の寸法は、画像に適用される直交格子の特定の軸に従う。そのため、焦点面においてセンサの画素(又は他の画像ユニット)により捕捉される実際の試料面積は、撮像機器が適用する拡大倍率に従い変わる。従って、撮像機器の拡大率は既知であるか、又は特定可能でなければならない。従って、チャンバにおいて検知された点は、RBCがチャンバ全体にわたって延在する点であることから、当該の画素に関連する容積は、画素毎の画像の面積に既知のチャンバ高さを掛けたものである。例えば、拡大率が0.5μm毎画素であったならば、200画素を占有する画像の面積は50平方μmとなり、容積は50平方μm×チャンバ高さとなる。
【0027】
ここで図8を参照すると、本方法での使用向けに構成することのできる分析機器44の例であり、これは、試料照明器46と、解像装置48と、プログラム可能分析器50とを含む。試料照明器46は光源を含み、この光源は、ヘマトクリット分析に有用な十分に広い波長範囲にわたり光を選択的に発生し(例えば、約400〜670nm;ヒトの血液試料中のRBCの光学濃度の決定には、約413nm及び約540nmの光が特に有効である。これは、ヘモグロビンにおいて前記波長で起こる光の吸収量が、前記波長における高いモル吸収係数(ε)を反映して大きいことを考慮したものである)、典型的には光を操作するための光学素子を含む。試料照明器46は、画像を生成するために透過率を利用する。試料の光透過特性は、例えば、チャンバ10内に存在する試料の片側に光源を位置決めし、チャンバパネル間に静止状態で配置された試料に光を送り込み、その後解像装置を使用してその光を捕捉することにより計測することができる。許容可能な解像装置48の一例は、試料を通過する光の像を電子データ形式に変換する電荷結合素子(CCD)型画像センサである。相補型金属酸化膜半導体(complimentary metal oxide semiconductor)(「CMOS」)型画像センサは、使用することのできる画像センサの別の例であり、本発明はこれらの例のいずれにも限定されない。プログラム可能分析器50は中央演算処理装置(CPU)を含み、試料照明器46及び解像装置48に接続される。CPUは、本方法の実施に必要な機能を選択的に実行するように構成される(例えば、プログラムされる)。プログラム可能分析器50の機能は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はそれらの組み合わせを用いて実装され得ることに留意しなければならない。当業者であれば、必要以上に実験を行うことなく、本明細書に記載される機能を実行させるように処理装置をプログラムすることができるであろう。全体として参照により本明細書に援用される、「Apparatus for Analyzing Biologic Fluids」と題される2005年8月15日に発行された米国特許第6,866,823号明細書が、かかる分析機器44を開示している。
【0028】
分析機器44は、試料の撮像された部分について、検出された光信号に関連するOD値を画像ユニット毎ベースで決定するように構成される。RBC22のODは、細胞内のヘモグロビン濃度と、所与の波長におけるヘモグロビンのモル吸収係数(モル吸光率とも称される)と、ヘモグロビンを通じて進んだ光路距離とにより決定され、以下の関係式によって表すことができる:
OD=εcL
式中、ε=ヘモグロビンのモル吸収係数、c=ヘモグロビン濃度、及びL=RBC22(すなわち、細胞内にあるヘモグロビン)を通じて進んだ距離である。モル吸収係数はヘモグロビンに固有の特性であり、実験によるか、又は現在利用可能な実験データから求めることができる。許容誤差を有する光源(例えば、設計定格波長±ある大きさを有するLED)を利用する分析機器の実施形態では、正確を期すため、最初に機器を較正してヘモグロビンのモル吸収係数を決定することが有用であり、次に光源が交換され、その時点で機器が再較正され得るまで、当該の特定の機器ではこの係数を用いることができる。
【0029】
検出された光信号(すなわち、OD値)をエッジ抽出アルゴリズムで用いることにより、RBCの位置と境界とを特定することができる。チャンバ10の双方の内表面に接触するRBC22は、部分的に圧縮された球形と同様のODプロファイルを有する。表面14、18と接触していない細胞22の側方エッジのODは、(相対的に見て)ゼロにほぼ等しいと見なすことができる。決定されるOD値は、1)RBC22の中心に近付く方向に進むほど(例えば、細胞を通じた光透過路が長くなるに従い)増加し;2)RBCがパネル内表面14、18と接触するところで(すなわち、RBCを通じた透過光路が一定になったとき)最大値に達し、実質的に一定のままとなり;及び3)RBC22の中心から離れる方向に進むほど(例えば、細胞を通じた光透過路が短くなるに従い)減少する。RBCのODプロファイルのこの特徴は、球形状のRBCについては特に一様であり、双方の内表面と接触しているRBCに限定されるものではない。
【0030】
いくつかの実施形態において、分析機器44は、さらに、双方の内表面と接触しているRBC22及び/又はRBC凝集塊23の一群の平均最大OD値を決定するように構成される。内表面と接触しているRBC及び/又はRBC凝集塊の許容可能な群の大きさとはどのようなものかについての決定は、試料分析毎ベースで行われても良く、又は「n」回の同じタイプ、例えばヒト血液試料の試料分析に対して定期的に行われても良い。例えば、双方の内表面14、18と接触していると特定された一群のRBC22を比較評価して、平均最大OD及び群内のODの統計的偏差を決定することができる。特定の試料内であっても、細胞22内のヘモグロビンのODは細胞毎に異なり得るため、平均最大ODを決定することが望ましい。標準偏差が所定の閾値より大きい場合、前記分析によって許容可能な標準偏差の平均最大ODを有するRBC22の群が確立されるまで、双方のパネル12、16と接触しているRBC22の新しい群を選択しても良く、又は既存の群を拡大させても良い。例えば、群内のRBC22の平均最大ODが、試料中における双方の表面14、18に接触する全RBCの平均最大ODの±約1パーセント(1%)であれば、許容可能な標準偏差値の範囲内である。しかしながら、許容可能な標準偏差値とはどのようなものかについては、当面の用途及び具体的な統計分析(例えば、標準誤差等)に応じて変わり得る。RBC22のODに関する既存の統計データが利用可能であり、許容可能なOD統計値の決定に用いることができる。特定の群内のRBCが、臨床的に許容可能な標準偏差の範囲内にある平均最大ODを有するかどうかの決定もまた、適応できる。これは、上記に指摘されるとおり、個体内のRBC集団のヘモグロビン濃度のばらつきは典型的には小さく、実行時の結果の標準偏差を使用して、許容可能な精度の平均値を得るまでにいくつの細胞を検査しなければならないかを決定することができることが知られているためである;例えば、正常な血液特性を有する被験体からの試料について、許容可能な群の大きさは100RBCほどの少なさであり、一方、異常な血液特性を有する被験体からの試料では、1000個以上のRBCの分析が必要となり得る。許容可能な平均最大ODを確立するために、双方の内表面と接触しているRBC22及び/又はRBC凝集塊23を具体的にいくつ使用するかは、試料中のRBC22及び/又はRBC凝集塊23のいかなる特定の数にも、又は割合にも限定されることはなく、双方の表面14、18と接触している全ての(例えば、数千個の)RBC22及び/又はRBC凝集塊23を含み得る。
【0031】
ここで図9及び図10を参照すると、分析機器44は、さらに、チャンバ10の双方の内表面14、18と接触しているRBC22の一部分25を調べることにより、RBC22のヘモグロビン濃度(「CHC」)を決定するように構成される。ヘモグロビンの濃度は、いかなる所与のRBC22においても一様である。OD値は、画素(又は他の画像ユニット)毎に決定される。画素毎のOD信号は、当該の画素と「整列する」チャンバ部分の高さ「L」に属し得るOD信号を表す。CHCの決定では、ODは検知され、チャンバの高さは既知であるか、又は特定可能であり、及びヘモグロビンのモル吸収係数(ε)は既知である。従って、CHCは、光学濃度(OD)と、ヘモグロビンの吸光係数(ε)と、ヘモグロビン(L)を通じた光路長との関係を用いて決定され、チャンバの内表面と接触しているRBC22の一部分25についての光路長は、チャンバの高さに等しい:
OD=εcL,c=OD/εL
RBC22の平均赤血球ヘモグロビン濃度(「MCHC」)の決定は、個々のRBCのCHCを決定するための上記と同じ方法を用いて、チャンバの双方の内表面と接触しているある数のRBCについて繰り返し、その結果を用いて平均値及び許容可能な標準偏差を決定することにより行われる。
【0032】
ここで図9及び図11を参照すると、分析機器44は、さらに、チャンバ10の双方の内表面と接触している個々のRBC22の細胞容積(「CV」)を、RBC内のヘモグロビンのODの関数としてRBCの容積を積算することにより決定するように構成される。容積の積算は、様々な分析手法を用いて実施することができる。例えば、第1の手法によれば、双方の内表面14、18と接触している個々のRBC22の細胞容積は、チャンバ高さ20と、撮像されたRBC22のうち双方の内表面14、18に接触している一部分25について決定された平均最大光学濃度と、撮像されたRBC22全体について決定された光学濃度とを使用して決定することができる。撮像されたRBCの全光学濃度を平均最大光学濃度で除算し、その結果をチャンバ高さに対して補正する。別の手法によれば、細胞容積は、個々のRBC22を種々の部分:双方の表面に接触する一部分25(「領域I」)と、内表面14、18の双方には接触しないか、又は一方にさえ接触しない一部分27(「領域II」)とに分割することにより決定される。内表面14、18と接触している細胞の一部分25の容積は、当該の一部分25(すなわち、領域I)のODを検知することにより決定される。ODは、画素(又は他の画像ユニット)毎ベースで検知及び定義される。上述したとおり、器具の拡大倍率に従い変わる画素当たりの画像サイズにより、画素に相当するチャンバ面積が決定される。従って、チャンバにおいて検知された点は、RBC22がチャンバ高さ20の全体にわたって延在する点であることから、当該の画素に関連する容積は、画素毎の画像面積に既知のチャンバ高さを掛けたものである。双方の表面14、18と接しているRBCの一部分25(すなわち、領域I)の容積は、2つの表面と接触している範囲内にある各画素に関連する容積を合計することにより決定される。双方の表面14、18とは接触していないRBC22の一部分27(すなわち、領域II)の容積も、同様にして決定される。2つの表面と接触している範囲について決定されたOD値を、双方の表面14、18とは接触していないRBC22の一部分27(すなわち、領域II)の範囲内にある各画素のOD値と比較する。ヘモグロビンのモル吸収係数(ε)は一次関数であるため、領域II内の各画素の相対OD値はまた、当該の画素に関連するRBC22の高さに相当する;例えば、当該の画素のODが領域IにおけるODの50%である場合、当該点におけるRBC22の高さは領域IにおけるRBCの高さ(すなわち、チャンバ高さ20)の50%である。領域IIにおける各画素に関連する容積を上記のとおり画素毎ベースで決定し、それらを合計することで、RBC22の領域IIにおける容積が決定される。RBC22の容積は、領域Iと領域IIとの合計である。各画素上の画像面積が小さくなると(すなわち、解像度が上がると)、細胞容積の決定精度が増す。これらの手法は使用可能な手法の例として提供され、本方法はこれらの手法に限定されるものではない。
【0033】
細胞容積を決定するための前記手法は、ODが検知された特定のRBC22の容積を決定するように機能する。RBC22内のヘモグロビンのODは、特定の試料中のものであってもRBC毎に異なり得るため、当該の特定の細胞について検知されたODを用いて細胞22の容積を決定することで、容積の決定精度は増す。しかしながら、多くのRBC22はチャンバ10の双方の内表面14、18には接触しない。双方の表面に接触しないこれらのRBC22については、細胞容積は、双方の表面14、18と接触しているRBC22について既に得られた平均最大光学濃度を使用して決定することができる。記載されるとおり得られた平均最大光学濃度は十分に正確で、そうした他の細胞22の正確な容積を提供する。さらなる代替例として、等積球形化剤を利用する本発明の実施形態については、双方の内表面14、18に接触しないRBC断片又はRBC22の細胞容積は、前記RBC断片又はRBCが球形であると仮定することにより決定することもできる。上記のとおりの形状決定手法を用いてRBC22の外周を決定することができるならば、その円面積を用いて球の大きさ、従ってRBC22の容積を決定することができる。
【0034】
分析機器44は、さらに、試料中のRBC22の平均赤血球容積(「MCV」)の決定を、上記と同じ方法を用いて、ある数のRBC22について繰り返し、その結果を用いて平均値及びその平均値の精度又は信頼度の尺度;例えば、許容可能な平均値の標準誤差を決定することにより行うように構成される。許容可能な精度尺度を有するMCVの決定に必要なRBC22の数は、分析されるRBC集団に依存し、その数は、およそ数百〜数千個のRBC22の範囲であり得る。細胞容積を決定したRBCの数が、MCVを決定するという目的に適した集団であるかどうかを判断する一つの方法は、集団内の試料平均赤血球容積を反復して決定し、それらの平均値の標準誤差;すなわち平均値の標準偏差を決定することである。精度尺度(例えば、標準誤差)が所定の許容範囲内にあれば、そのMCVが受け入れられる。
【0035】
ここで図9及び図12を参照すると、分析機器44は、さらに、決定された個々のRBC22により占有される容積に対してヘモグロビン濃度を積算することにより、RBC22の赤血球ヘモグロビン含有量(「CH」)を決定するように構成される。チャンバ10の双方の内表面14、18と接触しているRBC22について、上記のとおり、当該の特定のRBC22について決定された濃度(CHC)及び容積(CV)を用いてCHが決定される。CHが個々のRBC22ベースで決定される場合、それは、平均CHC(MCHC)とは対照的に、当該の特定のRBC22について決定されたCHCを用いて行われ得るため、一層高い精度がもたらされる。チャンバ10の双方の内表面14、18と接触していないRBC22については、CHは、平均最大光学濃度を用いて当該の特定のRBC22の濃度及び容積を決定することにより決定される。
【0036】
分析機器44は、さらに、試料中のRBC22の平均赤血球ヘモグロビン含有量(「MCH」)の決定を、上記と同じ方法を用いて、ある数のRBC22について繰り返し、その結果を用いて平均値及び許容可能な精度尺度(例えば、平均値の標準誤差)を決定することにより行うように構成される。許容可能な精度尺度を有するMCHの決定に必要なRBC22の数は、分析されるRBC集団に依存し、その数は、およそ数百〜数千個のRBC22の範囲であり得る。精度尺度(例えば、標準誤差)が所定の許容範囲内にあれば、そのMCHが受け入れられる。
【0037】
CHC、MCHC、CV、MCV、CH、及びMCHを決定するための上述の方法は、実質的に無希釈の血液試料のそうした特性を、記載されるチャンバ及び分析機器を本発明と共に使用していかに決定することができるかについての例である。本発明は、それらの具体例に限定されるものではない。
【0038】
本方法に従えば、上記のとおりのチャンバ10に実質的に無希釈の全血の試料が入れられる。試料のチャンバへの導入前か、又はチャンバへの導入時に、抗凝固剤、及び場合により等積球形化剤及び/又は凝集剤が試料と混合される。例えば表面コーティングを介して乾燥又は半乾燥形態で添加される試薬が、特に簡便である。しかしながら、本発明は乾燥形態の試薬に限定されるものではなく、例えば、試料を著しく希釈することのない液体試薬を使用することもできる。試料は、チャンバ内に静止状態で存在する。ある状況下では(例えば、超高速分析)、抗凝固剤の添加は必要でないこともあるが、試料が分析に適した形態であることを確実にするため、ほとんどの場合には添加することが好ましい。特定の分析(例えば、個々のRBCに関する情報を提供する分析)では、凝集試薬を含まないことが好ましいこともある。
【0039】
分析機器44を使用して、試料に光を透過させ、その透過光を検出することにより、チャンバ10内に静止状態で存在する試料の少なくとも一部分が撮像される。チャンバ10内に存在する試料の全体を撮像することは必須ではないが、実質的に無希釈の全血の試料はRBC22及びRBC間隙領域24のチャンバ内における分布が典型的には不均質なため、全体を撮像することで、典型的には試料(及びそのあらゆる構成成分)のより完全な分析が提供され、それに伴い精度が増すため、好ましい。
【0040】
チャンバ10の内表面12、16と接触しているRBC22の一群は、分析機器44により試料部分の画像を用いて決定される。血液試料のどの特性が求められているかに応じて、分析機器44は特性値の1つ又は複数を決定し、要求された特性値を求める。
【0041】
本発明の利点は、試料中の全てのRBC22が各チャンバパネルに接触していなくても良いことである。この方法は、RBC22の一部のみがチャンバ10の双方の内表面14、18と接触しているだけで実施することができる。より小さいRBC22及びRBC断片は、分析のキャリブレーションには用いられないが、ヘマトクリットに対するそれらの寄与は計測に含まれる。加えて、本発明に従えば、チャンバ10内の試料の総面積又は総容積を知らなくとも、試料のCHC、MCHC、CV、MCV、CH、及びMCHを決定することができる。
【0042】
本発明に従い同定及び分析されるRBC22としては、網赤血球(未熟な赤血球)が挙げられ、これは、有核細胞として骨髄内で成長する細胞である。網赤血球は、循環中に放出される前に、その核が除かれる。網赤血球は、血流中を約1日循環した後、網状の染色(これは、細胞質RNA及び核DNAの染色されたレムナントに従い変わる)を失い、本質的にヘモグロビンのみを含有する成熟したRBC22に成長する。血液試料中の網赤血球の相対数は、様々な病態の重要な指標となり得る。例えば、網赤血球の数は、最近の産生を表すため、骨髄の赤血球産生活性の良い指標である。異常に低い網赤血球絶対数は、再生不良性貧血、悪性貧血、骨髄性悪性腫瘍、エリスロポエチン産生不全、様々なビタミン又はミネラル欠乏症(B9、B12、及び鉄)等の指標となり得る。異常に高い網赤血球絶対数は、出血又は溶血による失血を体が代償していることに起因する急激な産生を示し得る。結果的に、網赤血球を検出及び計数可能であれば、多大な価値がある。本発明に従えば、網赤血球はヘモグロビンを含有し、且つ染色すると、残存するRNA及びDNAが同定され得るため、RBC22として同定される。
【0043】
網赤血球はまた、試料を染色剤、例えば、アクリジンオレンジ、アストロゾンオレンジ(astrozone orange)などの超生体染色色素と混和することにより、他のRBC22と識別して計数することもできる。色素により、約470nmの紫色光によって励起すると、網赤血球中に天然に存在するレチクリンが蛍光を発する。全ての網赤血球中はヘモグロビンを含むため、静止状態の試料内におけるRBC22の位置は、RBCの光学濃度により決定することができ、及び試料の画像から決定することができる。網赤血球は、試料を撮像し、蛍光下において超生体染色色素に関連した1つ又は複数の特定の波長(例えば、470nm)で調べることにより、レチクリンを含まないRBC22及び白血球と識別することができる。ヘモグロビンの存在及びレチクリンの蛍光(florescence)により網赤血球と同定されたRBCに対し、細胞容積、赤血球ヘモグロビン含有量、及び赤血球ヘモグロビン濃度を決定するための上述の方法を用いることにより、個々の網赤血球についてそれらを決定することができる。加えて、統計情報(例えば、平均値及び精度尺度)を決定することができる。網赤血球の成熟度と逆相関して変化する各網赤血球中のレチクリンの相対量もまた、蛍光信号の強度により決定することができる。結果として、個々の網赤血球並びに網赤血球集団に関するさらに具体的な情報を決定することができる。個々の網赤血球におけるレチクリンの相対量は、蛍光の面積又は蛍光の強度のいずれかを用いて決定することができ、個々の網赤血球の容積の関数として計算しても良い。
【0044】
本発明を用いると、RBC指数は、網赤血球を含めたものも、又は網赤血球を除いたものも決定することができる。例えば、試料のMCVは、網赤血球による容積寄与を含める場合と含めない場合との双方でプロットしても良い。網赤血球なしでMCVを決定すると、サイズが大きい網赤血球により影響を受ける小赤血球集団を明らかにすることができる。RBC及び網赤血球間には、他の多くの数学的関係を決定し得る。
【0045】
上記に指摘されるとおり、双方のパネル内表面14、18に接触しないRBC22について、本発明に従い個々の指数を決定することができる。RBC断片も同じ方法で分析することができ、それによりRBC断片を、血液試料中に存在する他の構成成分;例えば、血小板、血小板凝集塊、白血球断片、組織片等と識別することが可能となる。RBC断片は、微小血管症性貧血、重篤な炎症、及び播種性悪性腫瘍などの病態の指標となり得るため、本発明を用いてRBC断片の検出が可能であることは、特に有用である。等積球形化剤で処理していない血液試料中のRBC断片の分析については、例えば形態学的分析を含めることで、大きさの決定、円形からのずれ、外周対面積比などの不変の形態学的特性を決定することができる。本発明を用いて生成されるOD画像により、尖鋭性、楕円性、突起等の特性を各RBC断片について決定することが可能となり、そうした特性により前記形態学的分析が促進される。加えて、赤血球細胞断片の容積が、その直径又は円周を計測して、そうした寸法を有する球体の容積を計算することにより決定され得る。
【0046】
本発明は、その詳細な実施形態に関して図示及び説明されているが、当業者は、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な形態及び詳細の変更が行われ得ることを理解するであろう。
【0047】
特許請求の範囲は以下のとおりである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液試料中の赤血球ヘモグロビン濃度を測定するための方法であって、
被分析試料を静止状態に保つように構成された分析チャンバに前記試料を入れるステップであって、前記チャンバが第1のパネルの内表面と第2のパネルの内表面とにより画定され、双方のパネルとも透明であり、及び前記チャンバが、前記パネルの前記内表面の間に延在する既知の、又は特定可能な高さであって、前記試料中の少なくとも1個の赤血球が前記内表面の双方に接触するような高さを有する、ステップと、
前記内表面に接触している少なくとも1個の赤血球を撮像するステップと、
前記撮像された赤血球のうち、少なくとも双方の内表面に接触している部分の光学濃度を決定するステップと、
前記決定された光学濃度を用いて、前記内表面に接触している赤血球のヘモグロビン濃度を決定するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記光学濃度が画像ユニット毎ベースで決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記画像ユニットが画素である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記内表面に接触している複数の赤血球のヘモグロビン濃度を決定するステップと、
前記複数の赤血球の各々について決定されたヘモグロビン濃度を用いて、平均ヘモグロビン濃度を決定するステップと、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記試料全体が撮像される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
等積球形化剤を前記試料の少なくとも一部分と混和するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記等積球形化剤が両性イオン界面活性剤である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記パネルの前記内表面が実質的に平行であり、前記チャンバ高さが、ヘモグロビン濃度の決定前に既知である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記チャンバ高さが約2μm〜6μmの範囲内である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
複数の赤血球であって、少なくとも一部分が前記内表面に接触しているかかる赤血球の各々を撮像するステップと、
かかる赤血球の各々のうち双方の内表面に接触している部分の光学濃度を決定するステップと、
前記複数の赤血球の少なくとも一部について決定された光学濃度を用いて、平均最大光学濃度を決定するステップと、
前記決定された平均最大光学濃度を用いて、双方の内表面と接触していない前記試料中の1つ又は複数の赤血球のヘモグロビン濃度を決定するステップと、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記試料が、等積球形化剤と混和された第1の部分と、前記等積球形化剤を含まない第2の部分とを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記双方の内表面と接触していない1つ又は複数の赤血球の少なくとも一部が、前記試料の前記第2の部分内に存在し、前記第2の部分内にある前記双方の内表面と接触していない赤血球の一部についての不変の形態を決定するステップをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
超生体染色色素を前記試料と混和するステップをさらに含み、前記色素は、1つ又は複数の所定波長の光によって励起すると、前記試料中の網赤血球内のレチクリンに蛍光を発生させるように機能する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
1つ又は複数の蛍光を発する網赤血球中のレチクリンの相対量を、蛍光の面積又は蛍光の強度のいずれかとして決定するステップをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
複数の赤血球であって、少なくとも一部分が前記内表面に接触しているかかる赤血球の各々を撮像するステップであって、前記撮像が、赤血球中に含まれるヘモグロビンによって吸収される1つ又は複数の所定波長の光を用いて実施される、ステップと、
網赤血球中のレチクリンに蛍光を発生させるように機能する所定波長で前記複数の赤血球を撮像するステップと、
かかる赤血球の各々のうち双方の内表面に接触している部分の光学濃度を決定するステップと、
前記決定された光学濃度値を用いて、蛍光を発する赤血球を除く前記複数の赤血球の各々のヘモグロビン濃度を決定するステップと、
蛍光を発する赤血球を除く前記複数の赤血球の各々について決定された前記ヘモグロビン濃度を用いて平均ヘモグロビン濃度を決定するステップと、
をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記撮像するステップが、1つ又は複数の所定波長で実施され、前記ヘモグロビン濃度を決定するステップが、前記1つ又は複数の所定波長に対するヘモグロビンのモル吸収係数を利用する、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記撮像するステップが、分析機器であって、当該の分析機器に対して較正されたヘモグロビンのモル吸収係数値を決定するように較正された分析機器を使用して実施される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記血液試料が実質的に無希釈である、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記血液試料が全血である、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
血液試料中の赤血球の細胞容積を決定するための方法であって、
被分析試料を静止状態に保つように構成された分析チャンバに前記試料を入れるステップであって、前記チャンバが第1のパネルの内表面と第2のパネルの内表面とにより画定され、双方のパネルとも透明であり、及び前記チャンバが、前記パネルの前記内表面の間に延在する既知の、又は特定可能な高さであって、前記試料中の少なくとも1個の赤血球が前記内表面の双方に接触するような高さを有する、ステップと、
前記内表面に接触している少なくとも1個の赤血球を撮像して画像信号を生成するステップと、
前記赤血球のうち双方の内表面と接触している部分の平均光学濃度と、赤血球の全光学濃度とを、双方とも画像ユニット毎ベースで決定するステップと、
前記赤血球のうち内表面と接触している部分の前記平均光学濃度と、前記全光学濃度と、前記チャンバの高さとを用いて、前記撮像された赤血球の容積を決定するステップと、を含む、方法。
【請求項21】
前記血液試料が実質的に無希釈である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記血液試料が全血である、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記画像ユニットが画素である、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
血液試料中の赤血球の細胞容積を決定するための方法であって、
被分析試料を静止状態に保つように構成された分析チャンバに前記血液試料を入れるステップであって、前記チャンバが第1のパネルの内表面と第2のパネルの内表面とにより画定され、双方のパネルとも透明であり、及び前記チャンバが、前記パネルの前記内表面の間に延在する既知の、又は特定可能な高さであって、前記試料中の少なくとも1個の赤血球が前記内表面の双方に接触するような高さを有する、ステップと、
赤血球のうち双方の内表面と接触している部分と、双方の内表面と接触していない部分とを含め、前記内表面に接触している前記少なくとも1個の赤血球を撮像するステップと、
前記赤血球のうち双方の内表面と接触している部分の光学濃度と、前記双方の内表面と接触していない部分の光学濃度とを、画像ユニット毎ベースで決定するステップと、
前記撮像された赤血球のうち双方の内表面に接触している部分の容積を、当該の部分について決定された画像ユニット毎の前記光学濃度を用いて決定するステップと、
前記撮像された赤血球のうち双方の内表面と接触していない部分の容積を、当該の部分について決定された画像ユニット毎の前記光学濃度と、前記双方の表面と接触している部分について決定された画像ユニット毎の前記光学濃度とを用いて決定するステップと、
前記撮像された赤血球のうち双方の内表面に接触している部分について決定された前記容積と、前記撮像された赤血球のうち双方の内表面と接触していない部分について決定された前記容積とを用いて、前記少なくとも1個の赤血球の細胞容積を決定するステップと、
を含む、方法。
【請求項25】
双方の内表面と接触している複数の赤血球の細胞容積を決定するステップと、
前記複数の赤血球の各々について決定された前記細胞容積を用いて、平均赤血球容積を決定するステップと、
を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記試料全体が撮像される、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
等積球形化剤を前記試料の少なくとも一部分と混和するステップをさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記等積球形化剤が両性イオン界面活性剤である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記パネルの前記内表面が実質的に平行であり、前記チャンバ高さが、ヘモグロビン濃度の決定前に既知である、請求項24に記載の方法。
【請求項30】
前記チャンバ高さが約2μm〜6μmの範囲内である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記試料中の複数の赤血球であって、各々が双方の内表面と接触している部分を有する赤血球を撮像するステップと、
各赤血球について、当該の赤血球のうち双方の内表面と接触している部分の光学濃度を画像ユニット毎ベースで決定するステップと、
前記複数の赤血球の各々のうち双方の内表面と接触している部分について決定された前記光学濃度を用いて、平均最大光学濃度を決定するステップと、
をさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項32】
双方の内表面と接触していない1つ又は複数の赤血球を撮像するステップと、
前記双方の内表面と接触していない赤血球の光学濃度を決定するステップと、
前記双方の内表面と接触していない1つ又は複数の赤血球について、当該の赤血球の前記光学濃度と、前記決定された平均最大光学濃度と、前記チャンバの高さとを用いて細胞容積を決定するステップと、
をさらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記試料が、等積球形化剤と混和された第1の部分と、前記等積球形化剤を含まない第2の部分とを有する、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記双方の内表面と接触していない1つ又は複数の赤血球の少なくとも一部が、前記試料の前記第2の部分内に存在し、前記第2の部分内にある前記双方の内表面と接触していない1つ又は複数の赤血球の少なくとも1つについての不変の形態を決定するステップをさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
双方の内表面と接触していない少なくとも1個の赤血球を撮像するステップと、
前記双方の内表面と接触していない赤血球の光学濃度を決定するステップと、
前記双方の内表面と接触している赤血球について決定された前記平均光学濃度を用いて、前記双方の内表面と接触していない赤血球のヘモグロビン濃度を決定するステップと、をさらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項36】
超生体染色色素を前記試料と混和するステップをさらに含み、前記色素は、1つ又は複数の所定波長の光で励起すると、前記試料中の網赤血球内のレチクリンに蛍光を発生させるように機能する、請求項24に記載の方法。
【請求項37】
1つ又は複数の蛍光を発する網赤血球中のレチクリンの相対量を決定するステップをさらに含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
複数の赤血球であって、少なくとも一部分が前記内表面に接触しているかかる赤血球の各々を撮像するステップであって、前記撮像が、赤血球中に含まれるヘモグロビンによって吸収される光を用いて実施される、ステップと、
試料中の網赤血球内に含まれるレチクリンに蛍光を発生させるように機能する所定波長で前記複数の赤血球を撮像するステップと、
前記複数の赤血球の各々の細胞容積を決定するステップと、
前記複数の赤血球の各々の前記細胞容積を用いて、平均赤血球容積を決定するステップであって、蛍光を発する各赤血球の細胞容積が前記平均赤血球容積から除かれる、ステップと、
をさらに含む、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記撮像するステップが1つ又は複数の所定波長で実施され、前記ヘモグロビン濃度を決定するステップが、前記1つ又は複数の所定波長に対するヘモグロビンのモル吸収係数を利用する、請求項24に記載の方法。
【請求項40】
前記赤血球のうち双方の内表面と接触している部分について決定された前記光学濃度を用いて、前記赤血球のヘモグロビン濃度を決定するステップと、
前記ヘモグロビン濃度と前記細胞容積とを用いて、前記赤血球中のヘモグロビン含有量を決定するステップと、
をさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項41】
複数の赤血球であって、各々が双方の内表面と接触している部分を有する赤血球中のヘモグロビン含有量を決定するステップと、
前記複数の赤血球の各々について決定された前記ヘモグロビン含有量を用いて、平均ヘモグロビン含有量を決定するステップと、
をさらに含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記血液試料が実質的に無希釈である、請求項24に記載の方法。
【請求項43】
前記血液試料が全血である、請求項24に記載の方法。
【請求項44】
前記画像ユニットが画素である、請求項24に記載の方法。
【請求項45】
複数の赤血球を有する実質的に無希釈の血液試料中の赤血球ヘモグロビン濃度を決定するための装置であって、
被分析試料を静止状態に保つように構成された分析チャンバであって、前記チャンバが第1のパネルの内表面と第2のパネルの内表面とにより画定され、双方のパネルとも透明であり、及び前記チャンバが、前記パネルの前記内表面の間に延在する既知の、又は特定可能な高さであって、前記試料中の赤血球の1つ又は複数が前記内表面の双方に接触するような高さを有する、チャンバと、
照明器と解像装置とを含む撮像ユニットであって、前記内表面に接触している1つ又は複数の赤血球を撮像し、かかる撮像された赤血球のそれぞれの画像信号を生成するように機能するユニットと、
前記画像信号を用いて、前記撮像された赤血球のうち少なくとも双方の内表面に接触している部分の光学濃度を画像ユニット毎ベースで決定し、前記決定された光学濃度を用いて、前記内表面に接触している赤血球のヘモグロビン濃度を決定するように構成されたプログラム可能分析器と、
を含む、装置。
【請求項46】
実質的に無希釈の血液試料中の少なくとも1個の赤血球の細胞容積を決定するための装置であって、
被分析試料を静止状態に保つように構成された分析チャンバであって、前記チャンバが第1のパネルの内表面と第2のパネルの内表面とにより画定され、双方のパネルとも透明であり、及び前記チャンバが、前記パネルの前記内表面の間に延在する既知の、又は特定可能な高さであって、少なくとも1個の赤血球が前記内表面の双方に接触するような高さを有する、チャンバと、
照明器と解像装置とを含む撮像ユニットであって、前記内表面に接触している少なくとも1個の赤血球を撮像し、かかる撮像された赤血球のそれぞれの画像信号を生成するように機能するユニットと、
前記画像信号を用いて、前記双方の内表面に接触している赤血球の平均光学濃度と前記赤血球の全光学濃度とを決定し、前記平均光学濃度と、前記全光学濃度と、前記チャンバの高さとを用いて、前記撮像された赤血球の容積を決定するように構成されたプログラム可能分析器と、
を含む、装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−515682(P2011−515682A)
【公表日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−500981(P2011−500981)
【出願日】平成21年3月20日(2009.3.20)
【国際出願番号】PCT/US2009/037815
【国際公開番号】WO2009/117664
【国際公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(501354521)アボット ポイント オブ ケア インコーポレイテッド (21)
【Fターム(参考)】