説明

走査型プローブ顕微鏡装置及び走査型プローブ顕微鏡装置用プログラム

【課題】 表面の凹凸による輪郭が明瞭でない検査対象物であっても、感度の調整具合を適切に判断することができる走査型プローブ顕微鏡装置を提供する。
【解決手段】 カンチレバーに取り付けられた探針を検査対象物上で往復走査させる走査制御部24と、カンチレバーに作用する押圧力の目標値に対する偏差に基づいて探針の高さを制御する高さ制御部26と、探針の走査位置情報及び高さ情報に基づいて走査線上の表面形状を検出する表面形状検出部27aと、走査位置情報及び偏差に基づいて走査線上の偏差分布を求める偏差分布検出部27bと、往復走査の往路及び復路においてそれぞれ得られた表面形状を重ねて2次元表示するとともに、往路及び復路においてそれぞれ得られた偏差分布を重ねて2次元表示する表示制御部29と、ユーザが指定するオフセット量に基づいて往路及び復路における走査位置情報をオフセットさせるオフセット調整部28により構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走査型プローブ顕微鏡装置及び走査型プローブ顕微鏡装置用プログラムに係り、さらに詳しくは、探針が取り付けられたカンチレバーを用いて、微細な検査対象物の表面形状を検出する走査型プローブ顕微鏡装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
微細な検査対象物の表面形状を観測する観測装置として、走査型プローブ顕微鏡が知られている。走査型プローブ顕微鏡は、カンチレバー(片持ち梁)の先端に取り付けられた探針(probe:プローブ)を検査対象物上で走査させ、その走査位置及び高さを計測することによって、検査対象物の表面形状を検出している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
探針は、カンチレバーによって検査対象物に押圧されており、カンチレバーの高さは、カンチレバーに作用する押圧力が一定となるようにフィードバック制御されている。このフィードバック制御では、カンチレバーのたわみ量や振幅に基づいてカンチレバーに作用する押圧力を検出し、当該押圧力の目標値に対する偏差に基づいてカンチレバーの高さを制御している。探針の走査位置及び高さは、カンチレバーの走査位置及び高さから求められるため、この様なカンチレバーを検査対象物上で走査させることによって、探針の走査位置情報及び高さ情報を取得し、検査対象物の表面形状を示す形状データが生成される。
【0004】
この様な走査型プローブ顕微鏡では、探針の走査速度、高さ制御の目標値及びフィードバックゲインによって、検査対象物表面の凹凸に対する探針の追従性や応答性が変化する。例えば、形状データの生成時間を短縮するために、探針の走査速度を速くすると、探針の追従性が低下してしまうことから、所望の観測精度に応じて走査速度を決定する必要がある。そこで、上述したプローブ顕微鏡では、探針の走査速度や押圧力の目標値及びフィードバックゲインを変更することによる感度調整が行われている。この感度調整は、通常、ユーザによる操作入力に基づいて行われ、例えば、同じ走査線上を往復走査させて得られる表面形状の画面表示を見て感度の調整具合が判断される。表面形状の画面表示では、往復走査の往路及び復路においてそれぞれ得られた走査線上の表面形状を重ねて表示され、ユーザは、走査位置ごとの高さを往路及び復路間で比較することによって、感度調整が適切であるか否かを判断している。
【特許文献1】特開平5−157554号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、往復走査の往路及び復路においてそれぞれ得られる各表面形状には、検査対象物表面の形状変化に対する探針の応答遅れ、走査方向の切り替えによる探針やカンチレバーのブレにより、往路及び復路間で走査方向にずれが生じることが少なくない。このため、上述した様な従来の走査型プローブ顕微鏡装置では、各表面形状の高さを比較する際、往路及び復路間の対応付けがしづらく、感度調整が容易ではないという問題があった。特に、表面の凹凸による輪郭が明瞭でない検査対象物については、表面形状の変化が緩慢となるので、往路及び復路間の対応付けが極めて困難であった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、感度調整を容易化させた走査型プローブ顕微鏡装置及び走査型プローブ顕微鏡装置用プログラムを提供することを目的とする。特に、表面の凹凸による輪郭が明瞭でない検査対象物であっても、感度の調整具合を適切に判断することができる走査型プローブ顕微鏡装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の本発明による走査型プローブ顕微鏡装置は、カンチレバーの先端に取り付けられた探針を検査対象物へ押圧し、同じ走査線上を往復走査させる走査手段と、上記カンチレバーに作用する押圧力を検出し、検出した押圧力の目標値に対する偏差に基づいて上記探針の高さを制御する高さ制御手段と、上記探針の走査位置情報及び高さ情報に基づいて、上記走査線上の表面形状を検出する表面形状検出手段と、上記走査位置情報及び上記偏差に基づいて、上記走査線上の偏差分布を求める偏差分布検出手段と、上記往復走査の往路及び復路においてそれぞれ得られた上記表面形状を重ねて2次元表示するとともに、上記往路及び復路においてそれぞれ得られた上記偏差分布を重ねて2次元表示する表示制御手段と、ユーザが指定するオフセット量に基づいて、上記往路及び復路における上記走査位置情報を相対的にオフセットさせるオフセット調整手段とを備え、上記表示制御手段が、オフセット後の上記走査位置情報に基づいて表面形状及び偏差分布を表示するように構成される。
【0008】
この走査型プローブ顕微鏡装置では、往復走査させて得られた表面形状及び偏差分布がそれぞれ往復走査の往路及び復路について重ねて2次元表示され、ユーザが指定するオフセット量に基づいて、往路及び復路における走査位置情報がオフセットされる。この様な構成により、表面形状及び偏差分布について、必要に応じてオフセット量を変更して表示させることができるので、表面形状や偏差分布を往路及び復路間で比較する際の対応付けを容易化することができる。
【0009】
第2の本発明による走査型プローブ顕微鏡装置は、上記構成に加え、上記表示制御手段が、偏差分布を表示する際、往路又は復路のいずれか一方の偏差分布について偏差の符号を反転させて表示するように構成される。この様な構成によれば、偏差分布について往復走査の往路及び復路間で比較する際、走査位置ごとの偏差の対応付けがさらに容易となるので、表面の凹凸による輪郭が明瞭でない検査対象物であっても、感度の調整具合が適切であるか否かを容易に判断することができる。
【0010】
第3の本発明による走査型プローブ顕微鏡装置は、上記構成に加え、上記表示制御手段が、同一画面上において、表面形状及び偏差分布を同時に表示するとともに、走査位置を一致させて表示するように構成される。この様な構成によれば、走査位置を一致させて表面形状及び偏差分布が表示されるので、これらの比較が容易となり、オフセット量や感度を調整する際の利便性を向上させることができる。
【0011】
第4の本発明による走査型プローブ顕微鏡装置は、上記構成に加え、ユーザ操作に基づいて、上記目標値を変更する目標値変更手段を備えて構成される。
【0012】
第5の本発明による走査型プローブ顕微鏡装置は、上記構成に加え、ユーザ操作に基づいて、比例ゲイン及び積分ゲインを変更するフィードバックゲイン変更手段を備え、上記高さ制御手段が、上記比例ゲイン及び積分ゲインに基づいて、上記探針の高さをフィードバック制御するように構成される。
【0013】
第6の本発明による走査型プローブ顕微鏡装置用プログラムは、カンチレバーの先端に取り付けられた探針を検査対象物へ押圧し、同じ走査線上を往復走査させる走査手段と、上記カンチレバーに作用する押圧力を検出し、検出した押圧力の目標値に対する偏差に基づいて上記探針の高さを制御する高さ制御手段と、上記探針の走査位置情報及び高さ情報に基づいて、上記走査線上の表面形状を検出する表面形状検出手段と、上記往復走査の往路及び復路においてそれぞれ得られた上記表面形状を重ねて2次元表示する表示制御手段とからなる走査型プローブ顕微鏡装置を制御するためのプログラムであって、上記走査位置情報及び上記偏差に基づいて、上記走査線上の偏差分布を求める偏差分布検出手順と、ユーザが指定するオフセット量に基づいて、上記往路及び復路における上記走査位置情報を相対的にオフセットさせるオフセット調整手順と、上記往路及び復路においてそれぞれ得られた上記偏差分布を重ねて2次元表示させるとともに、オフセット後の上記走査位置情報に基づいて表面形状及び偏差分布を表示させる表示処理手順とをコンピュータに実行させるように構成される。
【発明の効果】
【0014】
本発明による走査型プローブ顕微鏡装置及び走査型プローブ顕微鏡装置用プログラムによれば、必要に応じてオフセット量を変更して表面形状及び偏差分布を表示させることができるので、往路及び復路間で比較する際の対応付けが容易となり、ユーザはこれらの表示を見て感度の調整具合を判断することができ、感度調整を容易化することができる。特に、偏差分布における反転表示により、走査位置ごとの偏差の対応付けがさらに容易となるので、表面の凹凸による輪郭が明瞭でない検査対象物であっても、感度の調整具合を適切に判断することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は、本発明の実施の形態による走査型プローブ顕微鏡装置の概略構成の一例を示した図であり、コントローラ20が接続された顕微鏡本体10の外観の様子が示されている。本実施の形態による走査型プローブ顕微鏡装置100は、探針(probe:プローブ)を走査させることにより、検査対象物の表面形状を観測する観測装置であり、顕微鏡本体10、コントローラ20及びモニター30からなる。
【0016】
本実施の形態では、SPM(Scanning Probe Microscope:走査型プローブ顕微鏡)の一例として、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope:AFM)5を備えた顕微鏡装置について説明するが、AFM5に代えて他のプローブ顕微鏡、例えば、走査型トンネル顕微鏡(Scanning Tunneling Microscope:STM)を備えた顕微鏡装置であっても良い。AFMは、探針先端の原子と検査対象物表面の原子との間に作用する原子間力を利用する顕微鏡である。これに対し、STMは、導電性を有する試料を検査対象とし、探針を試料表面に近づけた際、探針及び検査対象物間に流れるトンネル電流を利用する顕微鏡である。
【0017】
顕微鏡本体10は、検査対象物が載置される載置台11と、カンチレバー保持部12を有するAFM5と、顕微鏡画像を生成する光学顕微鏡13と、カンチレバーの側方から見たサイドビュー画像を生成するサイドビューカメラ14と、これらを収容する筐体1aを備えて構成される。
【0018】
載置台11は、水平な載置面を有するテーブルであり、検査対象物の位置決めに使用される。カンチレバー保持部12は、カンチレバーを着脱可能に保持するホルダーである。
【0019】
光学顕微鏡13は、載置台11上の検査対象物を撮影し、顕微鏡画像を生成する撮像装置である。ここでは、光軸変換用ミラー15を用いて検査対象物からの光が観測され、カンチレバーの後方、すなわち、カンチレバーよりも高い位置から見た撮影画像として顕微鏡画像が生成されるものとする。光軸変換用ミラー15は、光を反射させて光軸の向きを変更する光学素子である。この様な顕微鏡画像は、探針に対する検査対象物の水平面内における位置決めに使用される。
【0020】
サイドビューカメラ14は、載置台11上に配置された検査対象物及びカンチレバーを撮影し、カンチレバーの側方、すなわち、水平方向から見た撮影画像をサイドビュー画像として生成する撮像装置である。このサイドビュー画像は、光学顕微鏡13により生成される顕微鏡画像に比べて倍率の低い画像であり、検査対象物を探針に近づける際、検査対象物及び探針間の近づき具合をモニターするのに使用される。
【0021】
筐体1aには、検査対象物を取り替える際に取り出し口として使用される開口が設けられており、この開口を介して筐体1a内の様子を直接見ることができる。AFM5による測定の際には、開口を着脱可能なパネル板1bにより塞いだ状態で、探針の走査が行われる。この様にすることにより、載置台11付近の検査エリア内に音、風、光などが侵入するのを防ぐことができ、空気の振動や風による振動がAFM5の測定精度を低下させるのを抑制することができる。特に、カンチレバーのたわみ量や振幅を圧電素子からの電気信号に基づいて検出する自己検知式のAFM5では、光の侵入によって圧電素子の動作に不具合が生じるのを防止することができる。
【0022】
また、筐体1aの正面パネルには、顕微鏡画像の視野位置を調整するための調整用つまみ2a、2b及び操作ボタン3と、検査エリアを照明する照明用LEDをオン又はオフする操作ボタン4が配置されている。
【0023】
コントローラ20は、顕微鏡本体10の各部を制御する制御装置であり、AFM5の走査系制御、光学顕微鏡13の撮像制御、サイドビューカメラ14の撮像制御などを行っている。また、AFM5により検出される形状データ、顕微鏡画像及びサイドビュー画像を画像処理し、表示データとしてモニター30へ出力する動作を行っている。ここでは、AFM5及び光学顕微鏡13を用いて検査対象物を観測する動作モード(以下、AFM観測モードと呼ぶことにする)と、光学顕微鏡13のみで検査対象物を観測する動作モード(以下、光学顕微鏡モードと呼ぶことにする)とが選択可能であるものとする。
【0024】
図2は、図1の走査型プローブ顕微鏡装置の要部における構成例を示した斜視図であり、顕微鏡本体10における筐体内部の様子が示されている。この顕微鏡本体10では、走査系41、可動ステージ43、駆動系44,45、光軸変換部51、撮像部52、AFM5、載置台11、カンチレバー保持部12、光学顕微鏡13、サイドビューカメラ14及び光軸変換用ミラー15が防振フレーム40に配置されている。
【0025】
可動ステージ43は、載置台11と共に移動させることにより、載置台11上の検査対象物の位置を変更させる位置決め手段である。可動ステージ43の水平面(xy平面)内における位置は、駆動系44を制御することにより変更され、上下方向(z軸方向)の位置は、駆動系45を制御することにより変更される。可動ステージ43の水平面内における位置を変更させることにより、AFM5により走査可能なエリアを変更することができる。また、可動ステージ43を上下方向に移動させることにより、検査対象物を探針に近づけ、或いは、探針から遠ざけることができる。
【0026】
また、可動ステージ43を上昇させることによって検査対象物を探針へ近づける際の接近動作が2段階に分けて行われるものとする。すなわち、ユーザ操作に基づいて行われる手動アプローチと、カンチレバーのたわみ量や振幅を監視しながらさらに検査対象物を探針へ接近させ、たわみ量や振幅に基づいて停止させる自動アプローチに分けて行われる。
【0027】
AFM5は、xy平面及びyz平面による断面形状がいずれもL字状のアーム部40a(防振フレーム40の一部)によって釣り下げられ、カンチレバー保持部12を載置台11の載置面に対向させて配置されている。このAFM5では、走査系41を制御することにより、カンチレバー保持部12の高さ方向(z軸方向)における位置を調整するとともに、水平方向に走査させる動作が行われる。ここでは、走査系41が3つのボイスコイルモーター(VCM)42によって駆動されるものとする。ボイスコイルモーター42は、電気エネルギーを直進運動に変換するリニアモーターである。各ボイスコイルモーター42により、x、y、zの各軸方向にそれぞれ独立してカンチレバーの位置を変更させることができる。
【0028】
光学顕微鏡13は、AFM5の側方に配置され、検査対象物からの光を光軸変換用ミラー15で反射させて顕微鏡画像の生成を行っている。この光軸変換用ミラー15は、光学顕微鏡13の対物レンズに対向させてカンチレバーの近傍に配置されている。検査対象物からの光は、光軸変換用ミラー15を介して対物レンズに入射され、光軸変換部51により概ね直角に光軸が曲げられて撮像部52へ出力される。
【0029】
ここでは、カンチレバーがカンチレバー保持部12からx軸方向に突出させて配置され、カンチレバー先端の探針が載置台11(円形)の中心に位置決めされるものとする。
【0030】
図3は、図1の走査型プローブ顕微鏡装置の要部における構成例を示したブロック図であり、コントローラ20の機能構成が示されている。このコントローラ20は、操作入力部21、感度調整部22、走査情報記憶部23、走査制御部24、高さ制御情報記憶部25、高さ制御部26、表面形状検出部27a、偏差分布検出部27b、オフセット調整部28及び表示制御部29からなる。
【0031】
走査制御部24は、走査系41を制御し、探針を走査させる動作を行っている。この探針の走査は、走査情報記憶部23内に格納されている走査情報に基づいて行われる。具体的には、探針の走査範囲、解像度、走査速度23aなどが走査情報として走査情報記憶部23内に書き換え可能に格納され、これらの走査情報に従って水平面内における位置の制御が行われる。感度調整の際には、同じ走査線上を往復走査させる動作(往復スキャン)が行われ、探針の走査位置情報が出力される。
【0032】
高さ制御部26は、走査系41を制御し、探針の高さを調整する動作を行っている。この探針の高さ制御は、カンチレバーに作用する押圧力を検出することにより行われる。探針は、カンチレバーによって検査対象物に押圧されており、探針の高さは、カンチレバーに作用する押圧力が一定となるようにフィードバック制御される。カンチレバーは、作用する押圧力に応じてたわみ量(歪)や振幅が変化するので、たわみ量や振幅によって押圧力を判断することができる。
【0033】
ここでは、カンチレバーが圧電素子により構成され、圧電素子からの電気信号に基づいてたわみ量や振幅を求めることにより、カンチレバーに作用する押圧力が検出されるものとする。探針の高さのフィードバック制御は、この様にして検出された押圧力の目標値に対する偏差、比例ゲイン(Pゲイン)及び積分ゲイン(Iゲイン)に基づいて行われ、探針の高さ情報が出力される。
【0034】
高さ制御情報記憶部25内には、これらのフィードバックゲインや目標値(以下、フォースリファレンスと呼ぶことにする)がフィードバックパラメータ25aとして書き換え可能に格納されている。
【0035】
ここでは、カンチレバーを一定の周波数で振動させた状態で表面形状を測定する動作モード、いわゆるダンピングフォースモード(DFM)と、探針を検査対象物に接触させながら測定する動作モード(コンタクトモード)とが選択可能であるものとする。DFMでは、カンチレバー固有の共振周波数でカンチレバーを振動させながら検査対象物及び探針を近づけ、検査対象物及び探針を近づけた際に生じる振幅、位相及び周波数の変化に基づいて探針の高さが制御される。
【0036】
表面形状検出部27aは、探針の走査位置情報及び高さ情報に基づいて、走査線上の表面形状を検出する動作を行っている。この表面形状は、走査線で検査対象物を切断したときの形状データであり、走査位置ごとの高さ情報からなる。
【0037】
偏差分布検出部27bは、探針の走査位置情報及び偏差に基づいて、走査線上の偏差分布を検出する動作を行っている。この偏差分布は、探針の高さ制御における制御量を規定する偏差を走査位置ごとに示したデータであり、探針の高さの変化率分布に相当する。
【0038】
操作入力部21は、ユーザ操作に基づいて入力信号を生成するユーザインターフェースである。感度調整部22は、操作入力部21からの入力信号に基づいて、探針の走査速度23a及びフィードバックパラメータ25aを変更する感度の変更手段である。
【0039】
オフセット調整部28は、ユーザが指定するオフセット量に基づいて、往復走査の往路及び復路における走査位置情報を相対的にオフセットさせる処理を行っている。
【0040】
表示制御部29は、表面形状検出部27aにより検出された表面形状と、偏差分布検出部27bにより検出された偏差分布をモニター30上に画面表示させる動作を行っている。具体的には、往復走査の往路及び復路においてそれぞれ得られた表面形状が重ねて2次元表示されるとともに、往路及び復路においてそれぞれ得られた偏差分布が重ねて2次元表示される。
【0041】
偏差分布を重ねて表示する際には、往路又は復路のいずれか一方の偏差分布について、偏差の符号を反転させて表示する反転表示モードと、反転させずに表示する通常表示モードとを選択することができる。ここでは、反転表示モードにおいて、復路について符号反転が行われるものとする。
【0042】
表示制御部29では、オフセット調整部28によるオフセット後の走査位置情報に基づいて、表面形状及び偏差分布の表示が行われる。ここでは、復路について、走査位置をずらすことによりオフセット調整が行われ、表面形状及び偏差分布の表示位置が往路及び復路間で変更されるものとする。
【0043】
<AFM観測>
図4のステップS101〜S110は、図1の走査型プローブ顕微鏡装置における動作の一例を示したフローチャートであり、AFM観測モードにおける測定動作の処理手順が示されている。AFM観測モードでは、まず、AFM5の動作モードを選択させる選択画面がモニター30上に表示され、カンチレバーの装着を促すメッセージが配置される(ステップS101)。
【0044】
次に、カンチレバーの探針が顕微鏡画像の中央となるように、調整用つまみ2a及び2bを操作することにより、光学顕微鏡13の視野位置が調整される(ステップS102)。視野位置の調整が完了すれば、カンチレバーの共振周波数を検出して当該共振周波数によるカンチレバーの振動を開始させる初期化処理が行われる(ステップS103)。
【0045】
次に、サイドビュー画像がモニター31上に顕微鏡画像と共に表示され、ユーザ操作に基づく探針の手動アプローチが開始される(ステップS104)。この手動アプローチが完了すると、可動ステージ43の水平面内における位置を調整してAFM5の走査可能なエリアの位置が決定される(ステップS105)。
【0046】
AFM5の走査可能なエリアについて、ユーザ操作による走査範囲の指定が完了すると、探針の自動アプローチが開始される(ステップS106〜S108)。この自動アプローチが完了すると、AFM5による走査(スキャン)が開始され、形状データが生成される(ステップS109,S110)。
【0047】
図5〜図9は、図1の走査型プローブ顕微鏡装置における動作の一例を示した図であり、AFM観測モードにおいてモニター30上に表示されるモニター画面200の様子が示されている。モニター画面200は、光学顕微鏡13により撮影された顕微鏡画像やAFM5による観測結果を表示する表示画面である。このモニター画面200は、メインタイトル表示領域201、タブ表示領域202、メイン画像表示領域203、サブタイトル表示領域204、観測モード表示領域205、操作手順表示領域206、メッセージ表示領域207、手順詳細表示領域208及びユーザ操作表示領域209からなる。
【0048】
メインタイトル表示領域201は、動作状態を示す文字列を表示する表示領域であり、モニター画面200における最上段に配置されている。タブ表示領域202は、処理中の画像データを示す文字列を処理順にタブとして表示する表示領域である。メイン画像表示領域203は、撮影中の顕微鏡画像やAFM5による観測結果を表示する表示領域である。
【0049】
サブタイトル表示領域204は、サブタイトルを示す文字列を表示する表示領域である。観測モード表示領域205は、観測モードを表示する表示領域であり、AFM観測モード及び光学顕微鏡モードの選択ボックスが配置されている。この選択ボックスは、マウスなどのポインティングデバイスを用いて操作選択することができ、観測モードをAFMモード又は光学顕微鏡モードのいずれかに切り替えることができる。
【0050】
操作手順表示領域206は、AFM観測時における操作手順を模式的に表示する表示領域である。具体的には、「カンチレバー装着」から「スキャン」までの各操作手順を示すアイコンと、スキャンを停止させるための停止ボタンを示すアイコンが配置されている。これらのアイコンは、操作選択することにより当該操作手順を実行させることができる。ここでは、操作選択されたアイコンをフォーカシングして表示、例えば、反転表示し、実行中の操作手順が判別可能であるものとする。
【0051】
メッセージ表示領域207は、実行中の操作手順に関するメッセージを表示する表示領域である。手順詳細表示領域208は、実行中の操作手順の詳細を示す文字列を表示する表示領域である。ユーザ操作表示領域209は、実行中の操作手順に関し、ユーザ操作の選択対象や操作対象を表示する表示領域である。具体的には、測定モードを指定するための選択ボックスや、次の操作手順に移行させるための操作ボタン、手動アプローチの際のサイドビュー画像、可動ステージ43を移動させるための操作ボタン、走査範囲を指定するための入力ボックスなどが動作状態に応じてユーザ操作表示領域209内に配置される。表示領域206〜209は、モニター画面200内において、メイン画像表示領域203の右側に配置されている。
【0052】
図5には、カンチレバー装着時の画面が示され、メイン画像表示領域203に顕微鏡画像が表示されている。このモニター画面200では、カンチレバー保持部12に装着されたカンチレバー12a及び温度補償用の突出部12bの様子が顕微鏡画像として表示されている。また、メイン画像表示領域203の中央で交差させた位置決め用の直線A1及びA2が表示されている。
【0053】
ユーザは、カンチレバー12aの装着後、調整用つまみ2a及び2bを操作して顕微鏡画像の視野位置を調整する。具体的には、カンチレバー12aの探針が直線A1及びA2の交点と重なるように視野位置が調整される。視野位置の調整の完了後、「次へ」ボタン209aを操作し、或いは、操作手順「手動アプローチ」を操作選択すれば、次の操作手順に移行することができる。
【0054】
図6には、手動アプローチによる可動ステージ43の高さ調整時の画面が示され、ユーザ操作表示領域209内にサイドビュー画像210が表示されている。このモニター画面200では、光学顕微鏡13の焦点位置がカンチレバー12aから検査対象物側の所定位置に切り替えられるとともに、カンチレバー12a周辺の様子がサイドビュー画像210として表示されている。
【0055】
このモニター画面200におけるユーザ操作表示領域209には、サイドビュー画像210の他に、可動ステージ43を移動させるための操作ボタン211a〜211d及び212や、サイドビューカメラ14の撮影倍率を選択するための選択ボックスが配置されている。ここでは、サイドビュー画像210の右側に操作ボタン211a〜211dが配置され、可動ステージ43を上昇又は下降させる際の移動速度に関し、2段階もしくは3段階の移動速度が選択可能であるものとする。
【0056】
具体的には、操作ボタン211a及び211bを操作することにより、可動ステージ43が上昇し、検査対象物をカンチレバー12a側へ移動させることができる。その際、操作ボタン211aの操作により、操作ボタン211bよりも高速で移動させることができる。また、操作ボタン211c及び211dを操作することにより、可動ステージ43が下降し、検査対象物をカンチレバー12aとは反対側へ移動させることができる。その際、操作ボタン211dの操作により、操作ボタン211cよりも高速で移動させることができる。
【0057】
操作ボタン212は、可動ステージ43を可動範囲内における最下点に移動させて、探針を退避させるための操作ボタンである。また、サイドビューカメラ14の撮影倍率として、通常倍率(ここでは、「×1」と表示)による撮影モードと、通常倍率よりも高倍率(ここでは、「×2」と表示)な撮影モードのいずれかを選択することができる。ここでは、撮影画像を画像処理することによってサイドビューカメラ14による撮影の高倍率化が行われるものとする。可動ステージ43の高さ調整の完了後、「OK」ボタン213を操作し、或いは、操作手順「水平位置調整」を操作選択すれば、次の操作手順に移行することができる。
【0058】
図7には、可動ステージ43の水平位置調整時の画面が示され、ユーザ操作表示領域209内に調整のためのアイコンなどが表示されている。具体的には、光学顕微鏡13の光学系を調整するためのアイコンや撮影ボタン220、可動ステージ43の可動範囲及び探針位置をグラフィカルに示す表示エリア221、可動ステージ43の水平位置を調整するための操作ボタン222が配置されている。
【0059】
ここでは、アイコンを操作することにより、ズームアップさせ、或いは、焦点位置を移動させた顕微鏡画像が表示されるものとする。撮影ボタン220は、メイン画像表示領域203に表示されている画像を静止画像としてメモリ内に取り込むための操作ボタンである。
【0060】
表示エリア221には、水平面内における可動ステージ43の可動範囲が可動ステージ43に対する相対的な探針位置221aとして表示される。操作ボタン222を操作して探針位置221aを前後左右に移動させることにより、可動ステージ43の水平面内における位置を調整することができる。可動ステージ43の水平位置調整の完了後、「OK」ボタン213を操作し、或いは、操作手順「スキャン設定」を操作選択すれば、次の操作手順に移行することができる。
【0061】
図8には、スキャン設定時の画面が示され、ユーザ操作表示領域209内に走査範囲を指定するための入力ボックス231〜234やAFM5の感度を調整するための感度調整ボタン235が配置されている。このモニター画面200では、メイン画像表示領域203内に、AFM5の走査可能なエリアを規定する矩形枠A3が顕微鏡画像に重ねて表示されている。ユーザは、この矩形枠A3内において、探針の走査範囲としての矩形領域A4を指定することができる。
【0062】
ここでは、矩形領域A4について、中心点の位置座標や縦横の走査範囲、アスペクト比(縦横比)及び角度を指定することにより、探針の走査範囲が決定されるものとする。この様な探針の走査範囲の設定の完了後、操作手順「スキャン」を操作選択すれば、AFM5によるスキャンを開始させることができる。
【0063】
図9には、スキャン完了時の画面が示され、メイン画像表示領域203内にAFM5による観測結果が表示されている。この例では、AFM5による観測結果として、検査対象物表面における高さの変化を輝度の変化として示す高さ画像B1と、所定の切断線A5で切断した検査対象物断面の高低差を示すラインプロファイルB2が表示されている。
【0064】
高さ画像B1は、矩形領域A4内を走査して得られた形状データを画素ごとの輝度データに変換することによって生成される。この高さ画像B1では、検査対象物表面の高低差(凹凸)が輝度の差として表される。具体的には、高さの高いところほど明るくなっている。
【0065】
<感度調整>
図10のステップS201〜S209は、図1の走査型プローブ顕微鏡装置における動作の一例を示したフローチャートであり、感度調整時の処理手順が示されている。まず、ユーザにより走査位置が指定されると、所定の範囲内で走査線上を往復走査させる往復スキャンが開始される(ステップS201,S202)。この往復スキャンが完了すると、走査位置情報や高さ情報、偏差情報から表面形状及び偏差分布が検出され、モニター30上に画面表示される(ステップS203、S204)。
【0066】
このとき、ユーザにより、偏差分布の反転表示モードが選択指定されれば、復路について偏差の符号を反転させる処理が行われる(ステップS205,S208)。次に、ユーザは、モニター30上の表面形状及び偏差分布を見て往路及び復路間における走査方向のずれを判断し、オフセット量を指定するための操作入力を行う。この操作入力に基づいて走査位置情報がオフセットされ、オフセット後の表面形状及び偏差分布が表示される(ステップS206)。
【0067】
次に、ユーザは、オフセット後の表面形状及び偏差分布を見て感度の調整具合を判断し、感度の変更が必要であれば、感度変更のための操作入力を行う。この操作入力に基づいて感度調整が行われ(ステップS207,S209)、ステップS202からステップS206までの処理手順が繰り返される。感度の調整具合が適切であり、再度の感度変更が不要となれば、この処理は終了する。
【0068】
図11(a)〜(c)は、図1の走査型プローブ顕微鏡装置における動作の一例を示した図であり、往復スキャン完了時にモニター30上に表示される表面形状が模式的に示されている。図11の(a)及び(b)には、AFM5の感度が適切でない場合が示され、図11の(c)には、オフセット量C2を調整し感度を適正化させた場合が示されている。
【0069】
一般に、探針の走査速度が大きく、或いは、探針の高さ制御における目標値が小さいと、検査対象物表面の凹凸に対する探針の追従性が低下し、表面形状の立ち下がり部分C1などでなまりが生じる。(a)には、往復スキャンの往路及び復路について、立ち下がり部分C1になまりが生じている例が示されている。
【0070】
また、探針の走査速度が小さくても、目標値が大きく、或いは、探針の高さ制御における比例ゲインや積分ゲインが大きいと、立ち上がりの際にオーバーシュートが発生し、表面形状の立ち上がり部分に発振ノイズC3が生じる。(b)には、往路及び復路について、立ち上がり部分に発振ノイズC3が生じている例が示されている。
【0071】
ユーザは、この様な形状データの画面表示を見て、感度の調整具合を判断することになる。その際、往路及び復路間のオフセット量C2が小さくなるように、予めオフセット調整しておくと、感度が適切であるか否かが判断しやすくなる。
【0072】
図12(a)及び(b)は、図1の走査型プローブ顕微鏡装置における動作の一例を示した図であり、図11の表面形状に対応する偏差分布が模式的に示されている。図12(a)には、AFM5の感度が適切でない場合が示され、図12(b)には、オフセット量C2を調整し感度を適正化させた場合が示されている。
【0073】
この偏差分布では、表面形状の立ち上がりに対応して偏差の正領域側に極大点を有する凸部分が生じ、立ち下がりに対応して負領域側に極小点を有する凸部分が生じている。この様な偏差分布によれば、表面形状に大きな変化が生じている部分のみが凸部分として抽出されるので、往路及び復路についてのオフセット調整が行いやすくなる。従って、この様な偏差分布に基づいてオフセット量C2を調整し、オフセット調整後の形状データに基づいて感度調整を行えば、感度の調整具合を適切に判断することができる。
【0074】
具体的には、偏差分布について、往路及び復路間で凸部分の走査方向における位置が一致するように、オフセット量C2が調整される。
【0075】
図13は、図1の走査型プローブ顕微鏡装置における動作の一例を示した図であり、反転表示モードにおける偏差分布が模式的に示されている。この例では、復路の偏差分布について、偏差の符号が反転されている。この様にして偏差分布を表示すれば、往路及び復路間における偏差分布の重なり具合によって、走査方向における位置の対応付けが適切であるか否かを判断することができるので、オフセット量C2の調整がさらに容易となる。
【0076】
図14〜図16は、図1の走査型プローブ顕微鏡装置における動作の一例を示した図であり、感度調整時のモニター画面200の様子が示されている。図14には、往復スキャン設定時の画面が示されている。このモニター画面200では、メイン画像表示領域203に顕微鏡画像が表示され、ユーザ操作表示領域209内には、往復スキャンの走査位置を指定するための入力ボックス241が配置されている。
【0077】
ここでは、往復スキャンの走査位置として、中心点の位置座標を入力すれば、矩形枠A3内にその位置座標によって規定される走査線D1が表示されるものとする。走査位置の指定後、「往復スキャン」ボタン242を操作すれば、走査線D1についての往復スキャンを開始させることができる。
【0078】
図15には、往復スキャン完了時の画面が示され、往復スキャンにより得られた表面形状及び偏差分布が同一画面上に同時に表示されている。このモニター画面200では、メイン画像表示領域が上下に分割され、上側領域にタイトル311及び表面形状312が表示され、下側領域にタイトル321及び偏差分布322が表示されている。
【0079】
また、メイン画像表示領域の右側には、メッセージや模式図が配置される表示領域323と、感度設定に関する表示領域330及び331と、オフセット設定に関する表示領域340及び341が配置されている。
【0080】
表面形状312は、左右方向を走査方向(y軸方向)とし、上下方向を高さ方向(z軸方向)として表示され、走査位置ごとの高さからなる往路波形E1及び復路波形E2が重ねて配置されている。
【0081】
偏差分布322は、表面形状312と走査位置を一致させて表示され、走査位置ごとの偏差からなる往路波形E3及び復路波形E4が重ねて配置されている。すなわち、往路及び復路の走査開始位置や走査終了位置、走査方向の表示スケールを一致させて、表面形状312及び偏差分布322が表示されている。この偏差分布322では、往路波形E3及び復路波形E4について、偏差のゼロ点を一致させて表示されている。
【0082】
表示領域323には、感度調整の目安を示すメッセージや模式図と、偏差分布322の反転表示を選択させる選択ボックス324が配置されている。AFM5の感度は、表面形状の往路波形及び復路波形が一致し、或いは、偏差分布の往路波形及び復路波形が上下対象となれば、適切であると判断することができる。
【0083】
感度設定の表示領域331には、探針の走査速度を指定するためのアイコン332や、高さ制御の目標値(フォースリファレンス)を指定するための入力ボックス333、フィードバックゲインを指定するための入力ボックス334及び335が配置されている。
【0084】
オフセット設定の表示領域341には、表面形状312及び偏差分布322について、往路及び復路間のオフセット量を調整するためのアイコン342が配置されている。この例では、アイコン342の操作レバーを右側へ移動させれば、復路波形E2及びE4を右側へ移動させることができ、操作レバーを左側へ移動させれば、復路波形E2及びE4を左側へ移動させることができる。
【0085】
図16には、オフセット量を調整した後の表面形状312及び偏差分布322が示されている。このモニター画面200には、復路波形E2及びE4を左側に移動させることによって、オフセット調整された表面形状312及び偏差分布322が表示されている。ユーザは、この様にしてオフセット調整された形状データを見て感度の調整具合を判断し、必要に応じて感度調整を行う。感度調整として、走査速度やフォースリファレンス、フィードバックゲインを変更した場合、「再スキャン」ボタン350を操作すれば、往復スキャンを開始させることができる。この再度の往復スキャンが完了すれば、再スキャンにより得られた表面形状及び偏差分布がモニター画面200上に表示される。
【0086】
本実施の形態によれば、表面形状及び偏差分布について、必要に応じてオフセット量を変更して表示させることができるので、表面形状や偏差分布を往路及び復路間で比較する際の対応付けを容易化することができる。また、偏差分布については、反転表示させることにより、走査位置ごとの偏差の対応付けがさらに容易となるので、表面の凹凸による輪郭が明瞭でない検査対象物であっても、感度の調整具合が適切であるか否かを容易に判断することができる。
【0087】
なお、本実施の形態では、往復走査の復路について走査位置をずらすことにより、往路及び復路間でオフセット調整される場合の例について説明したが、本発明はこれに限られるものではない。往路について走査位置をずらすことにより、オフセット調整しても良い。また、本実施の形態では、反転表示モードにおいて、復路について偏差の符号が反転される場合の例について説明したが、往路について偏差の符号を反転させても良い。
【0088】
また、本実施の形態では、可動ステージ43を移動させて検査対象物を探針に近づける場合の例について説明したが、本発明はこれに限られるものではない。載置台11及びカンチレバー12aを相対的に移動させることによって、検査対象物及び探針を近づけるものであれば、他の構成であっても良い。例えば、カンチレバーを移動させて、探針を検査対象物に近づけても良い。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の実施の形態による走査型プローブ顕微鏡装置の概略構成の一例を示した図であり、顕微鏡本体10の外観の様子が示されている。
【図2】図1の走査型プローブ顕微鏡装置の要部における構成例を示した斜視図であり、顕微鏡本体10における筐体内部の様子が示されている。
【図3】図1の走査型プローブ顕微鏡装置の要部における構成例を示したブロック図であり、コントローラ20の機能構成が示されている。
【図4】図1の走査型プローブ顕微鏡装置における動作の一例を示したフローチャートであり、AFM観測モードにおける測定動作の処理手順が示されている。
【図5】図1の走査型プローブ顕微鏡装置における動作の一例を示した図であり、カンチレバー装着時の画面が示されている。
【図6】図1の走査型プローブ顕微鏡装置における動作の一例を示した図であり、手動アプローチによる可動ステージ43の高さ調整時の画面が示されている。
【図7】図1の走査型プローブ顕微鏡装置における動作の一例を示した図であり、可動ステージ43の水平位置調整時の画面が示されている。
【図8】図1の走査型プローブ顕微鏡装置における動作の一例を示した図であり、スキャン設定時の画面が示されている。
【図9】図1の走査型プローブ顕微鏡装置における動作の一例を示した図であり、スキャン完了時の画面が示されている。
【図10】図1の走査型プローブ顕微鏡装置における動作の一例を示したフローチャートであり、感度調整時の処理手順が示されている。
【図11】図1の走査型プローブ顕微鏡装置における動作の一例を示した図であり、往復スキャン完了時にモニター30上に表示される表面形状が模式的に示されている。
【図12】図1の走査型プローブ顕微鏡装置における動作の一例を示した図であり、図11の表面形状に対応する偏差分布が模式的に示されている。
【図13】図1の走査型プローブ顕微鏡装置における動作の一例を示した図であり、反転表示モードにおける偏差分布が模式的に示されている。
【図14】図1の走査型プローブ顕微鏡装置における動作の一例を示した図であり、往復スキャン設定時の画面が示されている。
【図15】図1の走査型プローブ顕微鏡装置における動作の一例を示した図であり、往復スキャン完了時の画面が示されている。
【図16】図1の走査型プローブ顕微鏡装置における動作の一例を示した図であり、オフセット量を調整した後の表面形状312及び偏差分布322が示されている。
【符号の説明】
【0090】
1a 筐体
2a,2b 調整用つまみ
3,4 操作ボタン
5 AFM
10 顕微鏡本体
11 載置台
12 カンチレバー保持部
12a カンチレバー
13 光学顕微鏡
14 サイドビューカメラ
15 光軸変換用ミラー
20 コントローラ
21 操作入力部
22 感度調整部
23 走査情報記憶部
24 走査制御部
25 高さ制御情報記憶部
26 高さ制御部
27a 表面形状検出部
27b 偏差分布検出部
28 オフセット調整部
29 表示制御部
30 モニター
40 防振フレーム
40a アーム部
41 走査系
42 ボイスコイルモーター
43 可動ステージ
44,45 駆動系
51 光軸変換部
52 撮像部
100 走査型プローブ顕微鏡装置



【特許請求の範囲】
【請求項1】
カンチレバーの先端に取り付けられた探針を検査対象物へ押圧し、同じ走査線上を往復走査させる走査手段と、
上記カンチレバーに作用する押圧力を検出し、検出した押圧力の目標値に対する偏差に基づいて上記探針の高さを制御する高さ制御手段と、
上記探針の走査位置情報及び高さ情報に基づいて、上記走査線上の表面形状を検出する表面形状検出手段と、
上記走査位置情報及び上記偏差に基づいて、上記走査線上の偏差分布を求める偏差分布検出手段と、
上記往復走査の往路及び復路においてそれぞれ得られた上記表面形状を重ねて2次元表示するとともに、上記往路及び復路においてそれぞれ得られた上記偏差分布を重ねて2次元表示する表示制御手段と、
ユーザが指定するオフセット量に基づいて、上記往路及び復路における上記走査位置情報を相対的にオフセットさせるオフセット調整手段とを備え、
上記表示制御手段は、オフセット後の上記走査位置情報に基づいて表面形状及び偏差分布を表示することを特徴とする走査型プローブ顕微鏡装置。
【請求項2】
上記表示制御手段は、偏差分布を表示する際、往路又は復路のいずれか一方の偏差分布について偏差の符号を反転させて表示することを特徴とする請求項1に記載の走査型プローブ顕微鏡装置。
【請求項3】
上記表示制御手段は、同一画面上において、表面形状及び偏差分布を同時に表示するとともに、走査位置を一致させて表示することを特徴とする請求項1に記載の走査型プローブ顕微鏡装置。
【請求項4】
ユーザ操作に基づいて、上記目標値を変更する目標値変更手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の走査型プローブ顕微鏡装置。
【請求項5】
ユーザ操作に基づいて、比例ゲイン及び積分ゲインを変更するフィードバックゲイン変更手段を備え、
上記高さ制御手段が、上記比例ゲイン及び積分ゲインに基づいて、上記探針の高さをフィードバック制御することを特徴とする請求項1に記載の走査型プローブ顕微鏡装置。
【請求項6】
カンチレバーの先端に取り付けられた探針を検査対象物へ押圧し、同じ走査線上を往復走査させる走査手段と、上記カンチレバーに作用する押圧力を検出し、検出した押圧力の目標値に対する偏差に基づいて上記探針の高さを制御する高さ制御手段と、上記探針の走査位置情報及び高さ情報に基づいて、上記走査線上の表面形状を検出する表面形状検出手段と、上記往復走査の往路及び復路においてそれぞれ得られた上記表面形状を重ねて2次元表示する表示制御手段とからなる走査型プローブ顕微鏡装置を制御するためのプログラムであって、
上記走査位置情報及び上記偏差に基づいて、上記走査線上の偏差分布を求める偏差分布検出手順と、
ユーザが指定するオフセット量に基づいて、上記往路及び復路における上記走査位置情報を相対的にオフセットさせるオフセット調整手順と、
上記往路及び復路においてそれぞれ得られた上記偏差分布を重ねて2次元表示させるとともに、オフセット後の上記走査位置情報に基づいて表面形状及び偏差分布を表示させる表示処理手順とをコンピュータに実行させることを特徴とする走査型プローブ顕微鏡装置用プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2007−170861(P2007−170861A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−365355(P2005−365355)
【出願日】平成17年12月19日(2005.12.19)
【出願人】(000129253)株式会社キーエンス (681)
【Fターム(参考)】