説明

走査式測距装置の光学窓汚れ検出装置

【課題】汚れ検出用のセンサの数を制限しながらも、光学窓に付着した微細物まで検出することができる光学窓汚れ検出装置を提供する。
【解決手段】光学窓102が設けられたケーシング101に、投光部3と、投光部3から出力された測定光を光学窓102を通して測定対象空間に偏向走査する走査機構4と、対象物からの反射光を光学窓102を通して検出する受光部5が収容されている走査式測距装置の光学窓汚れ検出装置であって、光学窓102の外側に光学窓102に沿って複数の反射式光電センサ1を設けるとともに、光学窓102を通過した反射式光電センサ1からの検出光を反射式光電センサ1に向けて反射する再帰性反射部材2を走査機構4に取付けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光をミラーにより偏向走査して装置外部の測定対象空間に照射し、対象物からの反射光の強度から一次元の画像を取得する撮像装置や、光に強度変調をかけた測定光と対象物からの反射光の遅延時間に基づいて距離を計測する光波距離装置等の光学装置の光学窓汚れ検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図8に示すように、光学窓102が設けられたケーシング101に、投光部3と、投光部3から出力された測定光を光学窓102を通して測定対象空間に偏向走査する走査機構4と、対象物Xからの反射光を光学窓102を通して検出する受光部5が収容された走査式測距装置100が提案されている。
【0003】
上述の測距装置は、ロボットや無人搬送車の視覚センサ、或いは、ドアの開閉センサや監視領域への侵入者の有無を検出する監視センサ、さらには、危険な装置に人や物が近づくのを検出し、機械を安全に停止する安全センサ等に利用される。さらに、車の形状や人の形状を認識する場合にも利用され、例えば、ETCシステムでは、車種を判別し、通過する車の数をカウントするセンサとして利用され、人の数をカウントして込み具合や、人の流れを検出する監視センサに利用される。
【0004】
しかし、光学窓102が泥や水滴等で汚染された場合には、光が適正な光量で照射されず、また対象物Xで反射された光が検出されない等、測距機能が適正に発揮できなくなるという重大な問題がある。そのため、測定光の走査範囲に対応して広範囲に設けられた光学窓に対して、瞬間的に付いた微細な汚れであっても絶えず監視し、汚れが装置の性能に著しい影響を与える場合には、異常信号や故障信号を出して装置を安全に停止する等の機能が必須となる。
【0005】
光学窓の汚れ検出装置として、例えば特許文献1には、図10(a)に示すように、装置の外周方向に湾曲状に配置された光学窓41を鉛直方向から傾斜するように配置するとともに、光学窓41の下側に配置された投光素子91と上側に配置された受光素子92でそれらの光路98間に存在する光学窓41の汚れを検出する複数組の投受光素子が光学窓41に沿って並設されたレーザ距離測定装置が提案されている。
【0006】
また、特許文献2には、図10(b)に示すように、光学窓2の内側から投光素子25で光を照射し、光学窓2の一部で複屈折させた光を受光素子29で検出することにより光学窓2の汚れを検出する物体情報検知装置が提案されている。
【特許文献1】米国特許5,455,669号明細書
【特許文献2】特開平10-90412号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載された技術では、小さな汚れを検出する必要がある場合には、光学窓の全域を死角なく検出するために僅かな間隔で多数の投受光素子を並設する必要があるため、各投受光素子の光軸の調整や並設された投受光素子相互間の干渉の防止といった新たな課題が発生するとともに、部品点数が増して高価になるという問題があった。
【0008】
特許文献2に記載された技術では、上述の特許文献1に記載された技術に比べてコンパクトに構成できるが、ケースの反射面に水滴が付着した場合には、光が水滴により乱反射して計測用の受光素子で検出されると誤判断を招くという問題があり、光学窓の小さな汚れを検出する必要がある場合には、上述と同様に多くの投受光素子が必要になるという問題があった。
【0009】
本発明の目的は、上述した問題点に鑑み、汚れ検出用のセンサの数を制限しながらも、光学窓の僅かな汚れまで検出することができる光学窓汚れ検出装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の目的を達成するため、本発明による走査式測距装置の光学窓汚れ検出装置の第一の特徴構成は、特許請求の範囲の書類の請求項1に記載した通り、光学窓が設けられたケーシングに、投光部と、前記投光部から出力された測定光を前記光学窓を通して測定対象空間に偏向走査する走査機構と、対象物からの反射光を前記光学窓を通して検出する受光部が収容されている走査式測距装置の光学窓汚れ検出装置であって、前記光学窓の外側に前記光学窓に沿って複数の反射式光電センサを設けるとともに、前記光学窓を通過した前記反射式光電センサからの検出光を前記反射式光電センサに向けて反射する再帰性反射部材を前記走査機構に取付けている点にある。
【0011】
上述の構成によれば、反射式光電センサから再帰性反射部材に向けて検出光を照射すると光学窓を通して再帰性反射部材に入射し、光学窓を通して再帰性反射部材からの反射光が反射式光電センサにより検出されるため、検出光量に基づいて光学窓に付着した汚れ等が検出される。固定設置された反射式光電センサから出力された検出光が走査機構の動作に伴って光学窓に沿って移動する再帰性反射部材に照射されると、当該再帰性反射部材から反射式光電センサに向けて再帰反射されるため、一つの反射式光電センサからの出力光の照射範囲に相当する光学窓の範囲を検出できるようになり、僅かな数の反射式光電センサであっても光学窓の全範囲の汚れを精度良く検出できるのである。
【0012】
同第二の特徴構成は、同請求項2に記載した通り、上述の第一特徴構成に加えて、前記走査機構の走査角を検出する走査角検出手段を備え、前記走査角検出手段により検出された走査角と前記反射式光電センサによる検出光の光量に基づいて前記光学窓の状態をモニタする光学窓モニタ手段を備えている点にある。
【0013】
上述の構成によれば、光学窓モニタ手段は、走査角検出手段により検出される走査角に基づいて再帰性反射部材の位置を把握して、その位置に対応して各反射式光電センサの出力状態を判断することにより光学窓の汚れを適正に検出することができるようになるのである。
【0014】
同第三の特徴構成は、同請求項3に記載した通り、上述の第一または第二特徴構成に加えて、前記再帰性反射部材は測定光及び反射光の光路の外部に設けられている点にある。
【0015】
上述の構成によれば、再帰性反射部材により測定光及び反射光の光路が妨げられるようなことなく、測距しながら光学窓の汚れを適正に検出することができるようになる。
【0016】
同第四の特徴構成は、同請求項4に記載した通り、上述の第一から第三の何れかの特徴構成に加えて、前記反射式光電センサは反射光が前記受光部で検出されるタイミングとは異なるタイミングで発光駆動される点にある。
【0017】
上述の構成によれば、反射式光電センサからの検出光が測距用の受光部に迷光として入射することが無いので、正確に測距しながらも適正に光学窓の汚れを検出することができる。
【0018】
同第五の特徴構成は、同請求項5に記載した通り、上述の第一から第四の何れかの特徴構成に加えて、前記光学窓モニタ手段は、前記反射式光電センサにより前記再帰性反射部材からの反射光が検出されないときに非反射性の汚れがあると判断し、前記反射式光電センサにより前記再帰性反射部材以外からの反射光が検出されるときに反射性の汚れがあると判断する点にある。
【0019】
反射式光電センサからの検出光が再帰性反射部材に入射するタイミングで反射光が検出されない場合には光学窓に非反射性の汚れがあると判断でき、反射式光電センサからの検出光が再帰性反射部材に入射するタイミング以外で反射光が検出される場合には光学窓に反射性の汚れがあると判断できるのである。
【0020】
本発明による撮像装置の光学窓汚れ検出装置の特徴構成は、同請求項6に記載した通り、光学窓が設けられたケーシングに、撮像素子と、前記撮像素子に入射光を合焦させる光学素子が収容されている撮像装置の光学窓汚れ検出装置であって、前記光学窓の外側に前記光学窓に沿って反射式光電センサを設けるとともに、前記光学窓を通過した前記反射式光電センサからの検出光を前記反射式光電センサに向けて反射する再帰性反射部材を前記光学窓の内側であって前記光学素子の光路外に取付けている点にある。
【発明の効果】
【0021】
以上説明した通り、本発明によれば、汚れ検出用のセンサの数を制限しながらも、光学窓に付着した微細物まで検出することができる光学窓汚れ検出装置を提供することができるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明による光学窓汚れ検出装置を走査式測距装置の光学窓に適用する例を説明する。
【0023】
一般に測距装置は、図8に示すように、レーザ光源LDから出力される測定光に変調を加えて光学窓102を通して対象物Xに照射し、対象物Xからの反射光を光学窓102を通して受光素子PDで検出して距離を測定するもので、測定光の変調方式としてAM(Amplitude Modify)方式とTOF(Time of Flight)方式の二種類が実用化されている。AM方式は、図9(a)及び(数1)に示すように、正弦波でAM変調された測定光とその反射光を光電変換して、それらの信号間の位相差Δφを計算し、位相差Δφから距離を演算する方式であり、TOF方式は、図9(b)及び(数2)に示すように、パルス状に変調された測定光とその反射光を光電変換し、それらの信号間の遅延時間Δtから距離を演算する方式である。ここに、Lは対象物までの距離、Cは光速、fは変調周波数、Δφは位相差、Δtは遅延時間を示す。
【0024】
【数1】

【0025】
【数2】

【0026】
本発明が適用される走査式測距装置は、上述の何れの方式をも採用することができるものである。図1及び図2に示すように、走査式測距装置100は、内壁面が迷光を吸収する暗幕等の吸光部材で被覆された略円筒状のケーシング101に、測定光を出力する投光部3と反射光を検出する受光部5が対向配置され、投光部3と受光部5との間に測定光を回転走査する走査機構4が配置されている。
【0027】
走査機構4は、所定の回転軸心P周りに回転する回転体8と、回転体8と一体回転する偏向ミラー9と、回転体8を回転駆動するモータ11を備えている。回転体8は、下端部が縮径された円筒状の周壁部8aと天板部8bとからなり、その内周面に備えた軸受12を介して中空軸13によって回転可能に支承されている。
【0028】
偏向ミラー9は、回転体8の天板部8bの上面に配置された第一偏向ミラー9aと、天板部8bの下面に配置された第二偏向ミラー9bとで構成され、夫々が回転軸心Pに対して約45度の傾斜角度で配置されている。
【0029】
モータ11は、縮径された周壁部8aの下端部の外周面に取り付けられたマグネット11bでなる回転子と、ケーシング側に配置されたコイル11aでなる固定子とで構成され、コイル11aとマグネット11bとの相互作用により、回転体8が前記回転軸心P周りで回転可能に構成されている。
【0030】
回転体8の外周面に周方向に複数の光学的スリットを備えたスリット板15aが設置されるとともに、スリット板15aの回転経路上にフォトインタラプタ15bが配置され、これらにより回転体8の走査角度を検出する走査角度検出部15が構成されている。
【0031】
投光部3は、半導体レーザを用いた発光素子3aでなる光源と、発光素子3aの駆動回路3bを備えて構成され、発光素子3aは、そこから出力される測定光の光軸L1と軸心Pが一致するようにケーシング101の上方に固定配置されるとともに光軸L1上に光のビーム径を一定にする光学レンズ3cが配置されている。
【0032】
受光部5は、回転軸心P上に走査機構4を挟んで投光部3と対向するように回転体8の内部に固定配置され、反射光を検出するアバランシェフォトダイオードでなる受光素子5aと、受光素子5aで光電変換された反射信号を増幅する増幅回路5bを備えて構成されている。
【0033】
ケーシング101の周壁部には、投光部3から出力された測定光が走査機構4により測定対象空間に照射され、測定対象空間に存在する測定対象物Xで反射した反射光が受光部5で検出されるように、上下方向に一定幅を有する光透過性の光学窓102が設けられている。光学窓102には測定光が光学窓102で複屈折して受光部5に迷光として入射しないように水平な段差部が形成され、段差部の上側領域から測定光が通過し、下側領域から反射光が通過するように構成されており、第一偏向ミラー9aが段差部の上側に対応する位置に設けられ、第二偏向ミラー9bが段差部の下側に対応する位置に夫々設けられている。
【0034】
つまり、図2に示すように、光軸L1に沿って投光部3から出射された測定光が第一偏向ミラー9aで水平方向の光軸L2方向に偏向された後に、光学窓102を通過して測定対象空間に照射され、水平方向の光軸L3に沿って光学窓102を通過した測定対象物からの反射光が第二偏向ミラー9bにより垂直下方に偏向されて受光部5に導かれる。そして、反射光が受光部5に導かれる光軸L3上には、測定対象物からの反射光を受光部5に集束させる受光レンズ14が設けられている。
【0035】
ケーシング101の底部には、走査機構4を回転制御するとともに、発光素子3aを駆動制御して、受光部5で検出された反射信号に基づいて測定対象物までの距離を算出する信号処理基板9が配置されている。
【0036】
信号処理基板9では、走査角度検出部15から入力されるパルス信号に基づいて走査機構4の回転角度が算出されて、反射光に対応する測定対象物の位置する方向が把握される。
【0037】
光学窓102は、測定光が回転軸心Pを中心として約180度から270度の範囲で走査可能に配置されており、光学窓102に対向するケーシング101の内壁部に、信号処理基板9で算出される距離を補正するための基準光を導く導光部材7としてのプリズムが配置されている。つまり、図1に示すように、走査機構4により測定光が一走査される度に、投光部3から導光部材7を介して受光部5に直接入射する基準光に基づいて、測距装置内での投光部3から受光部5までの基準距離が算出され、これに基づいて測定対象空間の対象物からの反射光に基づいて算出される距離が補正されるのである。
【0038】
図1から図3に示すように、光学窓102を挟んでケーシング101の上方及び下方にハウジング103,104が張り出すように設けられ、ハウジング103,104にケーシング101の周方向、つまり、光学窓102の外側に光学窓102に沿って複数の反射式光電センサ1が設けられるとともに、光学窓102を通過した反射式光電センサ1からの検出光を反射式光電センサ1に向けて反射する再帰性反射部材2が走査機構4に取付けられている。
【0039】
再帰性反射部材2は測定光及び反射光の光軸L2,L3の延長上であって、第一及び第二偏向ミラー9a,9bの反射面とは反対側、つまり、測定光及び反射光の光路を遮らない位置に設けられている。尚、測定光及び反射光の光路の外部に設けられていれば、取付け位置は特に限定されるものではない。
【0040】
反射式光電センサ1は、ケーシングに赤外線領域の波長の検出光を発光する発光素子と当該赤外線領域の波長を受光する光電センサが収容されたもので、光学窓102に向けて発光素子から照射された検出光が光学窓102を通して再帰性反射部材2に入射し、再帰性反射部材2からの反射光が光学窓102を通して受光素子により検出され、検出光量に基づいて光学窓102に付着した汚れ等が検出されるように構成されている。
【0041】
再帰性反射部材2は、図6に示すように、反射式光電センサ1の発光部から発した光が当たると再び光源に向かって帰される反射部材で、光の入射方向に100%近い反射率で反射するため、非常に小さな反射板であっても検出が可能となる。照射光路または反射光路上に測距のための測定光が通過する光学窓102の領域が位置するように反射式光電センサ1と再帰性反射部材2を配置することにより、検出された反射光の光量に基づいて光学窓102の微細な汚れまで検出できるようになる。
【0042】
以下、信号処理基板90に構成されている信号処理回路について詳述する。信号処理回路は、図4に示すように、発光素子3aから出力されるレーザ光を正弦波でなる変調信号によりAM変調する駆動回路3bと、測定対象物からの反射光が受光素子5aで光電変換された反射信号を増幅する受光回路5bと、受光回路5bで増幅されたアナログ反射信号をデジタル反射信号に変換するAD変換部91と、測定光と反射光との位相差を求める信号処理部92と、求められた位相差から測定対象物までの距離を算出するシステム制御部93等を備えて構成されている。
【0043】
システム制御部93はマイクロコンピュータ及びその周辺回路を備えてシステム全体を制御するように構成され、複数の反射式光電センサ1と、モータ11を駆動するモータ制御回路16と、走査角度検出部15が接続されている。
【0044】
システムに電源が投入されると、システム制御部93からモータ制御回路16にモータ駆動信号が出力され、モータ制御回路16によりモータ11が所定速度で駆動される。
【0045】
モータ11の回転駆動に伴って走査角度検出部15から出力されるパルス信号がシステム制御部93に入力され、当該パルス信号に基づいて回転機構である走査機構4による測定光の出力方向が把握される。
【0046】
尚、走査角度検出部15を構成するスリット板15aのスリット間隔が予め設定された回転体の基準位置、つまり、上述した導光部材7から受光部5に基準光が導かれる位置で、他と異なる間隔になるように形成されており、検出されるパルス信号の波形に基づいて基準位置が把握され、基準位置からのパルス数をカウントすることにより基準位置からの回転角度が算出される。
【0047】
信号処理部92では、駆動回路3bに出力する変調信号が生成され、AD変換部91でデジタル信号に変換された反射信号と当該変調信号との位相差が演算導出され、システム制御部93に出力される。システム制御部93では、上述した信号処理部92から入力された位相差を(数1)に適用して測定対象物までの距離が算出され、算出された距離が一周期に一度検出される基準距離に基づいて補正されて出力される。
【0048】
さらに、システム制御部93には、走査角検出手段15により検出された走査角と反射式光電センサ1による検出光の光量に基づいて光学窓102の状態をモニタする光学窓モニタ手段93aを備えている。
【0049】
光学窓モニタ手段93aは、測定対象空間からの反射光が受光部5で検出されるタイミングとは異なるタイミング、つまり、走査角度に基づいて反射式光電センサ1からの検出光が測距用の受光部5に迷光として入射することが無いタイミングを求め、当該タイミングで各反射式光電センサ1を発光駆動し、各反射式光電センサ1からの検出光の光量に基づいて光学窓102が汚れているか否かを判断し、測定に影響を及ぼす程度の汚れが検出されると、装置の表示部にエラー表示を行なった後に装置を停止させる。例えば、測定光が導光部材7に照射されるタイミングを示す図1では、反射式光電センサ1を発光駆動して汚れを検出し、測定光が測定対象空間に向けて照射されるタイミングを示す図2では、反射式光電センサ1がオフされる。
【0050】
図3は、再帰性反射部材2が走査機構の回転に伴って2a,2b,2cと移動するときに、光学窓102の下側のハウジング104に配置された複数の反射式光電センサ1のうちの一つの反射式光電センサ1aにより再帰性反射部材2に検出光が照射される様子を示し、少なくともこれらの検出タイミングで光学窓102の汚れが検出されるようになる。
【0051】
図5に示すように、走査角度信号(図中、信号A)に基づく所定タイミングで再帰性反射部材2に向けて反射式光電センサ1aが発光駆動される(図中、信号B)と、光学窓102に汚れが無い場合には発光駆動タイミングと同期して再帰性反射部材2からパルス幅Tdの所定の反射信号(図中、信号C)が検出されるが、光学窓102に光の透過を妨げる汚れが付着している場合には、パルス幅Td内でその反射信号が検出されないタイミングが生じる(図中、信号D)。光学窓モニタ手段93aは、このような場合に非反射性の汚れ、つまり吸光性の黒い汚れがあると判断する。また、発光駆動タイミング(図中、信号B)と同期して、パルス幅Tdの正常な反射信号(信号C)の前または後にも本来検出されない光が検出されると光学窓102に反射性の汚れ、つまり反射率の高い白い汚れが付着していると判断する。
【0052】
同図で、走査角度信号(図中、信号A)のパルスが出力されるタイミングは、投光部3から出力される測定光が導光部材7に入射するタイミングを示しており、このタイミングを基準として導光部材7と対向する位置に配置された反射式光電センサ1aが駆動され、次に所定時間遅延して走査機構4の回転方向に沿った反射式光電センサ1bが駆動されるというように、各反射式光電センサ1が順次発光駆動される。
【0053】
つまり、光学窓102の外側に光学窓102に沿って複数の反射式光電センサ1を設けるとともに、光学窓102を通過した反射式光電センサ1からの検出光を反射式光電センサ1に向けて反射する再帰性反射部材2を走査機構4に取付けることにより走査式測距装置100の光学窓汚れ検出装置が構成されている。
【0054】
上述の説明では各反射式光電センサ1aを間歇的に駆動する場合を説明したが、連続的に駆動するものであってもよい。この場合には、各発光素子に測定光に対する変調周波数とは異なる周波数で変調をかけて、受光部5で検出される光信号に当該周波数の光信号を除去するフィルタ手段を設けることによりノイズ除去することができる。
【0055】
汚れの最小検出範囲と反射式光電センサ1の個数は再帰性反射部材2の性能で決定される。再帰反射部材2の大きさは汚れの最小検出範囲の大きさで決定され、反射式光電センサ1の個数は再帰反射部材2の角度特性で決定される。
【0056】
再帰反射部材2は±45度以上の角度特性があるため、反射式光電センサ1から出力される検出光の照射角度を広げるような光学系をセンサのケーシングに内装することにより、反射式光電センサ1と45度光軸がずれた位置に再帰反射部材2が位置する場合でも反射光を検出できるようになる。このような再帰反射部材2から反射光を検出する場合、反射式光電センサ1を光学窓102に沿って回転軸心を中心に90度ピッチ以上の間隔で配置することも可能となる。そのため、光学窓102の微細な汚れを少ないセンサ数で検出できるようになる。
【0057】
本実施形態では、投光部3と受光部5との間に第一偏向ミラー9a及び第二偏向ミラー9bが配置され、測定光を回転走査する走査機構4が配置光学窓102の段差部の上側領域から測定光が通過し、下側領域から反射光が通過するように構成されており、上側領域と下側領域を夫々検出するために光学窓の上下に夫々複数の反射式光電センサ1を配置しているものを説明しているが、従来技術を説明した図10(a)のように、測定光を出力する投光部3と反射光を検出する受光部5を平行配置して、一枚の偏向ミラーで測定光を偏向するとともに反射光を偏向する構成の場合には、何れか一方の側にのみ複数の反射式光電センサ1を配置することが可能であり、また、検出光の光芒が大きい場合には本実施形態の構成を採用する場合であっても、再帰反射部材2の面積を大きくして何れか一方の側にのみ反射式光電センサ1を配置することができる。
【0058】
図1に示す再帰性反射部材2は、回転体8の周壁部8aに取付部材を介して反射面が光学窓102に接近するように取付けているが、図7に示すように、一枚の平坦な再帰性反射部材2を段差部の無い光学窓102に対向するように取付けるものであってもよい。
【0059】
上述した実施形態ではAM方式による走査式測距装置について説明したが、TOF方式の走査式測距装置にも適用可能であることはいうまでもない。
【0060】
上述した実施形態では光学窓汚れ検出装置を走査式測距装置に搭載したものを説明したが、光学窓汚れ検出装置の適用対象はこれに限るものではなく、光学窓が設けられたケーシングに、リニアセンサ等の撮像素子と、撮像素子に入射光を合焦させる光学素子が収容された撮像装置に適用することも可能である、光学窓の外側に光学窓に沿って反射式光電センサを設けるとともに、光学窓を通過した反射式光電センサからの検出光を反射式光電センサに向けて反射する再帰性反射部材を光学窓の内側であって光学素子の光路外に取付けることにより実現できる。
【0061】
上述した実施形態は、本発明の一実施例であり、反射式光電センサの取付位置、取付機構、数、再帰性反射部材のサイズ、取付位置、光学窓モニタ手段の具体的構成等は、本発明による作用効果を奏する範囲において適宜変更設計できることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明による走査式測距装置の光学窓汚れ検出装置の全体構成を示す概略縦断面図
【図2】本発明による走査式測距装置の光学窓汚れ検出装置の全体構成を示す概略縦断面図
【図3】図1におけるAA線で切断した要部断面図
【図4】信号処理回路のブロック構成図
【図5】汚れ検出のタイミングチャート
【図6】再帰性反射部材の説明図
【図7】別実施形態を示し、本発明による走査式測距装置の光学窓汚れ検出装置の全体構成を示す概略縦断面図
【図8】走査式測距装置の全体構成を示す概略縦断面図
【図9】AM方式とTOF方式の測距原理の説明図
【図10】従来の光学窓汚れ検出の説明図
【符号の説明】
【0063】
1:反射式光電センサ
2:再帰性反射部材
3:投光部
3a:光源
3b:AM変調部、バースト駆動部(駆動回路)
4:走査機構
5:受光部
5a:受光素子
5b:受光回路(増幅回路)
7:導光部材
8:回転体
9:偏向ミラー
11:モータ
90:信号処理回路
91:AD変換部
92:信号処理部
93:システム制御部
93a:光学窓モニタ手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学窓が設けられたケーシングに、投光部と、前記投光部から出力された測定光を前記光学窓を通して測定対象空間に偏向走査する走査機構と、対象物からの反射光を前記光学窓を通して検出する受光部が収容されている走査式測距装置の光学窓汚れ検出装置であって、
前記光学窓の外側に前記光学窓に沿って複数の反射式光電センサを設けるとともに、前記光学窓を通過した前記反射式光電センサからの検出光を前記反射式光電センサに向けて反射する再帰性反射部材を前記走査機構に取付けている走査式測距装置の光学窓汚れ検出装置。
【請求項2】
前記走査機構の走査角を検出する走査角検出手段を備え、前記走査角検出手段により検出された走査角と前記反射式光電センサによる検出光の光量に基づいて前記光学窓の状態をモニタする光学窓モニタ手段を備えている請求項1記載の走査式測距装置の光学窓汚れ検出装置。
【請求項3】
前記再帰性反射部材は測定光及び反射光の光路の外部に設けられている請求項1または2記載の走査式測距装置の光学窓汚れ検出装置。
【請求項4】
前記反射式光電センサは反射光が前記受光部で検出されるタイミングとは異なるタイミングで発光駆動される請求項1から3の何れかに記載の走査式測距装置の光学窓汚れ検出装置。
【請求項5】
前記光学窓モニタ手段は、前記反射式光電センサにより前記再帰性反射部材からの反射光が検出されないときに非反射性の汚れがあると判断し、前記反射式光電センサにより前記再帰性反射部材以外からの反射光が検出されるときに反射性の汚れがあると判断する請求項1から4の何れかに記載の走査式測距装置の光学窓汚れ検出装置。
【請求項6】
光学窓が設けられたケーシングに、撮像素子と、前記撮像素子に入射光を合焦させる光学素子が収容されている撮像装置の光学窓汚れ検出装置であって、
前記光学窓の外側に前記光学窓に沿って反射式光電センサを設けるとともに、前記光学窓を通過した前記反射式光電センサからの検出光を前記反射式光電センサに向けて反射する再帰性反射部材を前記光学窓の内側であって前記光学素子の光路外に取付けている撮像装置の光学窓汚れ検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−164477(P2008−164477A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−355154(P2006−355154)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【特許番号】特許第4098341号(P4098341)
【特許公報発行日】平成20年6月11日(2008.6.11)
【出願人】(000242600)北陽電機株式会社 (37)
【Fターム(参考)】