走査荷電粒子ビーム
直接連続して、サンプル表面の各部分を荷電粒子ビームに露光させるステップを含み、前記サンプル表面の前記各部分は、第1の方向に列を形成し、前記荷電粒子ビームが前記サンプル表面において平均スポットサイズfを有し、前記各部分は、それぞれ隣接部分から、第1方向に少なくとも距離dだけ離れており、比率d/fは2以上であることを特徴とする方法を開示する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、荷電粒子源、システム及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、液体金属イオン源、又は気体電界イオン源からイオンは形成される。いくつかの例においては、イオン源により形成されたイオンは、イオンビームに露光したサンプルにおける、特定の特性を判定することや、サンプルを加工するために用いられ得る。他の例においては、イオン源により形成されたイオンは、イオン源自体の特定の特性を判定するために用いられ得る。
【発明の概要】
【0003】
概して、本発明の第1の観点に係る発明は、直接連続(direct succession)して、サンプル表面の各部分を荷電粒子ビームに露光させるステップを含み、前記サンプル表面の前記各部分は、第1の方向に列を形成し、前記荷電粒子ビームが前記サンプル表面において平均スポットサイズfを有し、前記各部分は、それぞれ隣接部分から、前記第1方向に少なくとも距離dだけ離れており、比率d/fは2以上であることを特徴とする方法である。
【0004】
概して、本発明の他の観点に係る発明は、サンプルを、該サンプルの表面における平均スポットサイズfを有する荷電粒子ビームに対して露光させるステップを含み、該ステップは、前記荷電粒子ビームが前記サンプルの前記表面上において複数の露光列を形成するように、前記荷電粒子ビーム及び前記サンプルを相対的に移動させることを特徴とし、前記連続する露光列のそれぞれは、複数の露光スポットを有し、且つ、前の露光列から第1方向に少なくとも距離dだけ離れており、且つ、比率d/fは2以上であり、前記サンプル及び前記荷電粒子ビームは、ガス圧が10-2Torr以下の共通のチャンバ内に配置され、且つ、前記サンプルから放出される複数の粒子が、前記共通のチャンバ内に配置された検出器によって検出されることを特徴とする方法である。
【0005】
概して、本発明の更に他の観点に係る発明は、サンプルの領域を包含する最小の正方形の辺長
【数1】
(Aは前記領域の面積、Fは定数)
を決定するステップと、前記サンプルの前記領域のM個の部分のそれぞれを、荷電粒子ビームに露光させるステップであって、前記M個の部分のそれぞれは、前記荷電粒子ビームに対して、期間t1の間、連続的に露光され、前記M個の部分のいずれか一つを、前記荷電粒子ビームに対して、連続的に露光させる間の最短期間は、t2であり、期間t1及びt2は、比率t1/(t1+t2)が、
【数2】
以下となるように選択されることを特徴とするステップと、
を含む方法である。
【0006】
実施形態には、以下に示す特徴のうちの1つ又は複数が含まれうる。
【0007】
上述の方法は、直接連続して、サンプル表面の複数の第2部分を荷電粒子ビームに露光させるステップを含み、前記複数の第2部分のうちの各部分は、それぞれ、前記第1方向に少なくとも距離dだけ、前記複数の第2部分のうちの隣接する部分から離れており、前記第1方向に直交する第2方向に、少なくとも距離eだけ前記第1部分から離れている、ことを特徴としうる。
【0008】
前記サンプル及び前記荷電粒子ビームは、ガス圧力が10-2Torr未満の共通のチャンバ内に配置され、前記サンプルから放出される複数の粒子が、前記共通のチャンバ内に配置された検出器によって検出されうる。
【0009】
前記サンプルは、サンプルマウント上に配置されており、前記サンプルマウントは、前記荷電粒子ビームの入射方向に直交する平面内において、前記サンプルが移動できるようにし、前記サンプルマウントは、前記サンプルを別のサンプルに交換できるように構成されている、ことを特徴としうる。
【0010】
前記サンプルは、サンプルマウント上に配置されており、前記サンプルマウントは、前記サンプルと、前記サンプルに入射すべき前記荷電粒子ビームを方向づける荷電粒子レンズシステムのレンズと、の間の距離を調整できるように構成されていることを特徴としうる。
【0011】
比率e/fは2以上(例えば、3以上、4以上、5以上、7以上、10以上、20以上、30以上、50以上、70以上、100以上)でありうる。、前記eは、前記d以上でありうる。
【0012】
上述の方法は、前記サンプルから放出される複数の粒子に基づいて、前記サンプルの画像を形成するステップを含みうる。上述の方法は、電子表示部上において、システム操作者に対して前記サンプルの画像を表示するステップを含みうる。
【0013】
上述の方法は、前記サンプルを前記荷電粒子ビームに露光する前に、前記サンプルを電子源に露光するステップを含みうる。代替的又は付加的には、上述の方法は、前記サンプルを前記荷電粒子ビームに露光している間に、前記サンプルを電子源に露光させるステップを含みうる。
【0014】
前記荷電粒子ビームの荷電粒子電流は、10pA以上(例えば、20pA以上、30pA以上、40pA以上、50pA以上、70pA以上、100pA以上、150pA以上、200pA以上、500pA以上)でありうる。
【0015】
前記各部分は、100μ秒以下(例えば、80μ秒以下、60μ秒以下、40μ秒以下、30μ秒以下、20μ秒以下、10μ秒以下、5μ秒以下、1μ秒以下、0.5μ秒以下、0.1μ秒以下)の露光時間の間、前記荷電粒子ビームに対して露光されうる。
【0016】
前記荷電粒子ビームの荷電粒子電流は、1pA以上であり、前記各部分は、100μ秒以下の露光時間の間、前記荷電粒子ビームに対して露光され、前記画像は、全取得時間100秒以下で形成されうる。
【0017】
前記荷電粒子ビームは、希ガスイオンを含みうる。前記希ガスイオンは、ヘリウムイオンを含みうる。
【0018】
前記荷電粒子ビームは、電子を含みうる。
【0019】
前記fは、5nm以下(例えば、4nm以下、3nm以下、2nm以下、1nm以下、0.5nm以下、)でありうる。
【0020】
前記dは、10nm以上(例えば、20nm以上、30nm以上、40nm以上、50nm以上、70nm以上、100nm以上、200nm以上、300nm以上、500nm以上)でありうる。
【0021】
eは、10nm以上(例えば、20nm以上、30nm以上、40nm以上、50nm以上、70nm以上、100nm以上、200nm以上、300nm以上、500nm以上)でありうる。
【0022】
前記荷電粒子ビームは、前記サンプルの前記表面において、エネルギーの広がりが5eV以下(例えば、4eV以下、3eV以下、2eV以下、1eV以下、0.5eV以下、0.1eV以下)でありうる。
【0023】
前記画像の解像度は、3nm以下(例えば、2nm以下、1nm以下、0.5nm以下、0.25nm以下、0.1nm以下)でありうる。
【0024】
前記複数の粒子は、二次電子を含みうる。前記複数の粒子は、散乱イオン及び散乱中性原子からなる群の要素の少なくとも一つを含みうる。前記複数の粒子は、光子を含みうる。
【0025】
前記荷電粒子は、品質係数0.25以上(例えば、品質係数0.5以上、品質係数1以上、品質係数2以上、品質係数3以上、品質係数5以上、品質係数10以上)の気体電界イオン顕微鏡によって生成されうる。
【0026】
前記各部分は複数の画素を含みうる。
【0027】
上述の方法は、前記荷電粒子ビームに露光中に、前記サンプルを熱するステップを含みうる。
【0028】
前記荷電粒子ビームは、前記サンプルの前記表面における還元輝度が5×108A/m2srV以上(例えば、1×109A/m2srV以上、1×1010A/m2srV以上)でありうる。
【0029】
前記露光列は、前記第1方向に直交する第2方向に沿って延在しうる。
【0030】
前記比率d/fは10以上でありうる。
【0031】
前記荷電粒子ビームは、前記露光列のそれぞれに対応する前記サンプルの領域を露光させるにあたって、前記領域のいずれかをより多くの回数露光させる前に、前記領域を同じ回数だけ露光させうる。
【0032】
前記荷電粒子ビームは、前記サンプルの領域を露光させるにあたって、前記露光列の第1のサブセットに対応する前記サンプルの領域を露光させて、第1画像フレームを形成し、そして、前記露光列の第2のサブセットに対応する前記サンプルの領域を露光させて、第2画像フレームを形成し、そして、前記画像は、前記第1及び第2画像フレームを結合することによって形成されうる。
【0033】
前記露光列のそれぞれは、前記第1方向における平均厚さgを有し、比率d/gが2以上(例えば、3以上、4以上、5以上、7以上、10以上、20以上、50以上、100以上)でありうる。
【0034】
前記荷電粒子ビームは、最初に、各前記露光列の第1部分に対応する前記サンプルの領域を露光させ、そして、各前記露光列の第2部分に対応する前記サンプルの領域を露光させうる。
【0035】
前記比率t1/(t1+t2)は、
以下でありうる。
【0036】
前記最小の正方形の前記辺長を決定するステップは、前記領域の最大の大きさを決定するステップを含みうる。
【0037】
上述の方法は、直接連続して、前記M個の部分のうちの第1の複数部分を荷電粒子ビームに露光させるステップを含み、前記第1の複数部分は、第1方向に列を形成し、前記荷電粒子ビームが前記サンプル表面において平均スポットサイズfを有し、前記第1の複数部分は、それぞれ隣接部分から、第1方向に少なくとも距離dだけ離れており、比率d/fは2以上であることを特徴としうる。
【0038】
上述の方法は、直接連続して、前記M個の部分のうちの第2の複数部分を荷電粒子ビームに露光させるステップを含み、前記第2の複数部分は、前記第1方向において、前記第1の複数部分により形成される前記列に平行な列を形成し、前記第2の複数部分のうちの各部分は、それぞれ、前記第1方向に少なくとも距離dだけ、前記第2の複数部分のうちの隣接する部分から離れており、前記第1方向に直交する第2方向に、少なくとも距離eだけ前記第1の複数部分から離れている、ことを特徴としうる。
【0039】
前記eは、前記dよりも大きくてもよい。
【0040】
前記fは5nm以下であり、前記dは10nm以上、前記eは10nm以上でありうる。
【0041】
実施形態は、以下の有利な効果のうちの1又は複数を含みうる。
【0042】
一部の実施形態においては、サンプルをイオンビームに露光させるにあたって、比較的高いイオンビーム電流を使用することができる。サンプルの部分がイオンビームに比較的低頻度に露光されるような走査プロトコルを実施することによって、イオンビームが同じ場所を再度照射する前に、注入された粒子は露光された部分から拡散しうる。その結果、比較的高いイオンビーム電流は、サンプル内における注入イオンの飽和の原因とはならない。高いイオンビーム電流を使用することで、低いイオンビーム電流を使用した場合よりも、比較的良好なサンプル画像を取得することができる。これは、高いイオンビーム電流を用いた場合に得られる画像における信号ノイズ比が比較的高いからである。
【0043】
一部の実施形態においては、サンプルをイオンビームに露光させる際に、一部分あたりの露光時間をより長くすることができる。サンプルの部分がイオンビームに比較的低頻度に露光されるような走査プロトコルを実施することによって、イオンビームが同じ場所を再度照射する前に、注入された粒子は露光された部分から拡散しうる。よって、比較的長い露光時間は、注入粒子の飽和の原因とはならない。露光時間が比較的長ければ、測定信号における信号ノイズ比が比較的高いので、比較的高品質のサンプル画像を取得することができる。
【0044】
一部の実施形態においては、サンプルを適切に選択された走査プロトコルにおけるイオンビームに露光すれば、サンプルの荷電は低減される。特に、イオンビームによりサンプル(例えば、サンプル表面)が過剰に荷電した場合、電荷シンクに過剰な電荷を逃がすことで、サンプルを絶縁して、過剰な荷電を消滅させる。サンプルの部分がイオンビームに比較的低頻度に露光されるような走査プロトコルを使用することで、イオンビームが同じ場所を再度照射する前に、注入された粒子は露光された部分から拡散しうる。過剰な電荷は、入射イオンとサンプルとの間における変則的な相互作用により生じるイメージング誤差の原因となりうる。よって、適切な走査プロトコルを実施することで、イオンビームへのサンプルの露光により取得される画像の品質を改善することができる。
【0045】
一部の実施形態においては、適切な走査プロトコルは、サンプルに関する大まかな情報を迅速に取得することができ、より詳細な情報を、少し遅れて取得することができる。例えば、「チェッカーボード」パターンの走査プロトコルは、大きく離間した露光スポットにおいてサンプルをイオンビームに露光させることで、サンプルの低解像度画像を迅速に取得するために用いられる。大まかな情報(例えば、大まかな表面構造の特定)は、イオンビームに対してサンプルを一度露光させることで得られる。この情報は、サンプルに関する特定の特徴を調べるために用いられ、例えば、より高解像度に、イオンビームに対してサンプルを露光させる前に行われる。サンプルについての、低解像度の初期的な露光と、より高解像度の露光は、高解像度の露光のみを実施する場合に比べて、非常に迅速にサンプルのイメージングを行うことを可能にする。
【0046】
上述の実施形態のうちの1又は複数につき、添付の図面を参照して以下に詳述する。他の特徴及び有利な効果は、以下の記載、図面、及び特許請求の範囲により明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】サンプル内への粒子注入を示す概略断面図である。
【図2】イオンビームについての走査手順を示す概略図である。
【図3】図2に示した操作手順についての他の概略図である。
【図4】フラッドガンを含む気体電界イオン顕微鏡の部分概略図である。
【図5】表面下荷電層を含むサンプルの概略図である。
【図6】イオンビームについてのバンド走査手順を示す概略図である。
【図7A】サンプル内の各部分の露光状態の決定方法を示す概略図である。
【図7B】サンプルの多様な露光プロトコルを対比説明する概略図である。
【図8】イオン顕微鏡システムの概略図である。
【図9】気体電界イオン源の概略図である。
【図10】一実施の形態に係るチップ先端を概略的に示す拡大側面図である。
【図11】図10に示すチップ先端を概略的に示す拡大側面図である。
【図12】ヘリウムイオン顕微鏡システムの概略図である。
【図13】一実施の形態に係るW(III)チップを概略的に示す拡大上面図である。
【図14】図13に示すW(III)チップ先端を概略的に示す拡大側面図である。
【図15】チップを作成する一実施の形態を示すフローチャートである。
【図16】気体電界イオン源及びイオン光学系の一実施の形態を示す概略図である。
【図17】エバーハート−ソンリー(Evehart−Thornley)検出器の概略図である。
【図18】マイクロチャネルプレート検出器を備える気体電界イオン顕微鏡の部分断面図である。
【図19A】カーボン表面により支持される島状金の側面図である。
【図19B】カーボン表面により支持される島状金の上面図である。
【図19C】図19A及び図19Bに示すサンプルに対するイオンビームの位置に対する関数として、二次電子の平均存在量をプロットした図である。同一の参照符号は他の図面と同様の要素を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0048】
イオンビームは、サンプルイメージングや加工のためのサンプルの露光を含む、多様な用途に用いることができる。典型的には、サンプルイメージングは、イオンビームがサンプル表面に入射するように方向付けるステップと、そして、入射したイオンビームが反射してサンプルから放出される粒子を検出するステップとを含む。具体的には、イオンビームによってサンプル表面を走査して粒子を生成し、検出した粒子に対応する信号を測定して、入射したイオンビームの位置に対応させて、サンプルの画像を形成させる。
【0049】
走査型イオン顕微鏡システムにおいて、入射するイオンビームによるイオンスパッタリングに起因して、イメージング技術の達成可能な空間分解能が制限されるおそれがある。イオンスパッタリングに起因するダメージの程度は、概して、イオンビームのフルエンスと関連性がある(例えば、単位面積当たりに入射する粒子の個数)。高解像度のサンプル画像を測定するためには、許容可能な信号ノイズ比において粒子を検出するために、十分な量の入射イオンが必要である。イオンビーム電流が減少した場合には、時間経過に応じたイオンスパッタリングに起因するサンプルダメージは抑えられる。しかし、使用に耐えうる程度のノイズのサンプル画像を得るためには、撮像時間(及びサンプル上の照射箇所のそれぞれについての露光時間)が増加するおそれがある。サンプルは、撮像時間が長くなることにより生じる蓄積ダメージの影響を受けるおそれがある。
【0050】
一例には、ガリウムイオンビームがサンプルの機械加工に一般的に用いられる。質量が比較的大きいことに起因して、ガリウムイオンは多くのサンプルに対するスパッタ率が大きい。ガリウムイオンビームにより典型的な半導体サンプルを露光して形成した像において、最小解像幅は、約5nm程度である。これは、ガリウムイオンビームは、入射点においてタイトにフォーカスした場合には、サンプルの表面を削る傾向があるためである。
ヘリウムイオンのような比較的軽いイオンをベースとするイオンビームは、概して、ガリウムイオンビームよりも低いスパッタ率を有する。よって、ヘリウムイオンビームに露光することによるサンプルダメージ量は、同じビーム電流のガリウムイオンビームによって生じるダメージ量よりも少ない。ヘリウムイオンビームへの露光により形成した像における最小解像幅は、5nm未満とすることが可能であり、時には、5nmを大きく下回らせることも可能である。
【0051】
よって、イオンビームがヘリウムイオンビーム又は比較的軽いイオンにより形成される類似のイオンビームである場合、サンプルのイオンスパッタリングはサンプルイメージング中における大きな問題とはならない。しかし、本願発明者らは、サンプルにダメージを与え、画質を劣化させる原因は、イオンスパッタリングのみに留まらず、入射イオンエネルギー及びサンプルの材質、サンプルに形成されうる表面下ヘリウム気泡、及びサンプルが崩壊しはじめることに起因することを見出した。
【0052】
入射イオンビームに起因して、サンプル荷電も生じうる。入射イオンは二次荷電粒子(例えば、電子及び/又はイオン)を生成しうる。いくつかの入射イオンは中性子としてではなく、むしろイオンとしてサンプル中に注入される。その結果、サンプル中、特にサンプルの表面及び隣接領域においてにおいて過剰な電荷が生じうる。サンプル(例えば、金属製のサンプル)が比較的高い導電性を有する場合、過剰な電荷は比較的早期に減少してシンク(例えば、電気接地)となる。しかし、サンプルを絶縁するために、イオンビームが入射するサンプル表面近傍に電荷を蓄積させる傾向がある。サンプル表面の近傍は、過剰な電荷を接地又は隣接する絶縁サンプル領域に導電させるために十分な程度まで、表面電圧を上昇させる表面静電容量を生成する。蓄積表面電荷は、サンプル表面における電場を生成する。これらの局所的な電場は、(例えば、入射イオンビームを偏向させることにより)入射イオン及びサンプル表面間の相互作用を生じさせ、また、サンプル中において二次粒子を生成させる。よって、二次粒子を測定することにより取得したサンプル画像は劣化しうる。
【0053】
さらに、本願の発明者らは、イオン注入及び/又は蓄積電荷を含む、イオンビーム及びサンプルの相互作用に起因するダメージ作用は、ビームのフルエンス(例えば、単位面積当たりに入射する粒子の個数)の関数として変化するだけではなく、率に依存することを見出した。すなわち、入射イオンによるサンプルの露光を比較的低速に行うことで、イオンビームへの露光を高速に行った場合に比較して、サンプルダメージを低減することができる。
【0054】
特定の理論に縛られることを望むものではないが、上記について考えられる理由は、粒子注入の可逆性と、サンプルにダメージを及ぼしうる蓄積電荷と、に関連する。例えば、サンプル内に注入された粒子は、サンプルの外に拡散し、サンプルを元の注入の無い内部構造状態に戻しうる。注入粒子の拡散は比較的ゆっくりと行われ、そして、イオンビームによる所定のサンプル部分の連続的な露光の間の比較的長時間のインターバルを含む走査方法は、露光の合間に注入粒子をサンプル外に拡散させ、注入による影響の一部を元の状態に戻す。
【0055】
他の例としては、絶縁サンプルにおける過剰電荷は、サンプル面の露光部分から過剰電荷の少ない(又は過剰電荷のない)他の部分への拡散によって消費される。よって、サンプルを絶縁させるために、サンプルの所定部分をイオンビームに連続的に露光する間に比較的長いインターバルを含む走査方法により過剰電荷を消費することができる。さらには、これにより、サンプルの荷電に起因して生じる画質の劣化を緩和することができる。
【0056】
サンプルダメージ及び画質の劣化を回避するために、本願において開示する操作方法は、一回の照射中に、サンプルの同一箇所を過剰に長時間にわたってイオンビームに露光しないようにすることを確実にする。反対に、特定部分について比較的長時間の総露光時間が必要な場合、イオンビームは、その特定部分を複数回にわたって、短時間の照射を連続的に行う。サンプルの各露光箇所における、イオンビームへの露光時間は、各画素の撮像が、単一の露光時間とほぼ同じ総露光時間で行われるように、変更することができる。しかし、入射イオンビーム電流はサンプルのより大きい領域に拡散している。また、本願において開示する走査手法は、サンプルの特定部分をイオンビームに連続的に露光する合間に、十分な時間が経過することにより、露光部分から粒子が拡散できるようにし、電荷を消失させることにより、イオンビームに露光する合間に、局所的な電場を低減する。
【0057】
また、本願において開示する走査方法は、イオンビームが、一つ又は複数の化学薬品を吸着したサンプルの表面領域と相互作用する際に用いることができる。表面に吸着された化学薬品はイオンビームにより生じた二次電子と相互作用し、サンプル中において一つ又は複数の化学反応を誘発する。これらの反応は、サンプルの被制御構造成形に用いられうる。吸着された化学薬品は、反応により消費されるので、例えば、薬品をサンプル表面に追加するために、イオンビーム近傍に配置されたガスノズルから補充される。ガスノズルの位置は、イオンビームの位置が変わると共に変更される(例えば、サンプル表面を横断する通常のパターンでは、ガスノズルはイオンビームに後続する)。
【0058】
ガスノズルによって供給された活性化状態の化学薬品は、概して、サンプル表面に吸着される。イオンビームが、単純な列ごと(ライン−バイ−ライン)のラスタパターンでサンプル表面を走査する場合、イオンビームは、既に照射された、隣接位置(例えば、ビームスポット)におけるイオンビームとの相互作用により、吸着された化学薬品が既に消費されている、サンプル表面の部分(例えば、イオンビームスポット)を常に探索(interrogate)する。しかし、イオンビームが本願において開示した走査方法に従って走査される場合、連続的なビームスポットは、従来のラスタスキャン方法よりも大きく離間することになる。この結果、サンプル表面上のイオンビームの位置のそれぞれにおいて、吸着された化学薬品は、イオンビームにより生成された二次電子と未だ相互作用しないか、或いは、吸着された化学薬品はイオンビームにより生成された二次電子との間の既に行われた相互作用の後に補給される。したがって、サンプルにおける、イオンビームが誘起する反応の効率は、概して、本願に開示した走査方法でサンプル表面をイオンビームで走査することにより促進され、連続的に、サンプルの何れかの領域を露光する間のインターバルは比較的長くなる。
【0059】
一部のサンプルは、サンプル表面おいて不所望に吸着された化学薬品も含んでいる。これらの化学薬品は、サンプルにおけるイオンビーム誘起化学反応の副産物であり、例えば、様々は炭化水素類を含みうる。本願に開示した走査方法に従って、イオンビームによりサンプル表面上を走査することにより、これらの不必要な化学薬品による汚染の影響を抑制することができる。
【0060】
本発明に係る開示は、2つの側面からなる。先ず、第1の側面においては、イオンビームの走査方法を開示する。第2の側面においては、イオンビームを生成及び走査するためのイオンビームシステムを開示する。
【0061】
I.イオンビーム走査方法について
準備実験(study)において、島状金(gold island)を形成したカーボン基板を含むサンプルをヘリウムイオンビームに露光する。図19Aは、カーボン表面1710上の島状部1700を概略的に示す図である。島状金は、例えば、カーボン表面への金蒸着によって形成することができる。カーボンに蒸着された島状部を含む測定サンプルは、本願に示す測定に適しており、且つ、例えば、Structure Probe社(ペンシルバニア州、ウェストチェスター)から入手することができる。
【0062】
Heイオン顕微鏡を、イオンビーム192が島状金の表面を走査するように操作し、入射イオンビームから生じ、サンプル表面から遠ざかる二次電子を検出して、サンプルイメージを取得する。サンプルの被走査領域は、1ミクロンの辺長を有する正方形であり、500×500ピクセルの配列を含む。ヘリウムイオンのビームエネルギーは25keVであり、ヘリウムイオンビーム電流は1pAである。イオンビームによって形成されたサンプル上の各露光スポットは、一つの撮像画素に対応し、且つ、各スポットについての露光時間は100μ秒であった。サンプル領域についての総露光時間は25秒であった。比較的ノイズの少ないサンプルイメージが取得でき、像取得によりサンプルへのダメージは生じなかった。
【0063】
2つ目の実験では、サンプル上の走査領域を辺長100nmの矩形領域に縮小し、イオンビーム電流は1pAに維持した。この状態において、イオンビームのフルエンスは25倍に上昇した。サンプル画像上で、約100nmの厚さの島状金は完全にカーボン基板に至るまで除去(removed down)されている。発明者らは、イオンビーム電流が比較的低く、且つヘリウムイオンのスパッタ率が比較的低いため、イオンスパッタリングがサンプルへのダメージについての主たる原因とはならないということを見出した。更に、その後の研究において、第1のサンプルと同様の第2のサンプルの連続したイメージの測定を、矩形走査領域は辺長1μm、イオンビーム電流は1pAという条件下で行った。100回の連続したサンプル走査について、イメージ測定を行った。このような条件下では、イオンビームのフルエンスは100倍に増加したが、しかし、取得したイメージからはサンプルへのダメージは明示されなかった。
【0064】
特定の理論に縛られることを望むものではないが、ヘリウムイオンビームが25keVで金サンプルに入射する場合に、ヘリウムイオンの多くは、サンプル表面のイオンビームが入射する領域から約50nm〜約100nm下に注入される。図1は、上述したように、金により形成されるサンプル180の概略断面図である。イオンビーム192は、サンプル180の表面181に入射する。イオンビーム192からのイオンは、サンプル180の領域3010に注入され、表面181の下約50nm〜100nmの深さに到達する。図1に示すように、領域3010の幅dvは、上述の露光条件においては約20nmである。
【0065】
注入イオンは、領域3010において、サンプル180の領域3020を経て表面181へと達することで拡散する。表面181からは、イオンはガス抜けによりサンプルから除去される。本願において開示したイオンビームにサンプルを露光するにあたって、数値的ガイドラインを得るために、20nm×20nmの断面領域(例えば、サンプル180の表面181に平行な平面における、領域3010の略断面領域)及び高さ50nm(表面180下の領域3020の深さ)を有する、サンプルの相互作用領域3030において計算を行った。
【0066】
金により形成されるサンプル180は、以下を含む。
【数3】
相互作用領域3030における金原子であって、ρAuは、金のバルク密度であり、av=50nmは領域3030の高さであり、mAuは金原子の質量である。室温において、ヘリウムはモル濃度にして約0.5%まで可溶である。よって、Mb≒6000を上回る濃度のヘリウム粒子(例えば、原子及び/又はイオン)が領域3030に存在する場合、この領域においてヘリウム泡が生成され始める。核融合炉のシミュレーションから知られている、材料中におけるヘリウムイオンフルエンスの崩壊臨界値は、Fc≒1020粒子/m-2であり、ブリスタ及びサンプルダメージを生じさせないようにする臨界値として、領域3030におけるヘリウム粒子がMc=Fc・dv2≒40000を満たすことを要件とする。
【0067】
領域3030において、注入されたヘリウム粒子の拡散が生じる。領域3030中のヘリウム粒子の総濃度がMb≒6000粒子を超えた場合、拡散を通じて領域3030における濃度勾配が形成される。この勾配は、深さ50nm(例えば、領域3030の下端)から表面181(例えば、領域3030の上端)におけるヘリウム濃度については略線形である。金における、ヘリウム粒子の拡散係数はD≒2×10-13m2S-1であり、最大拡散係数Rbは、フィックの拡散の第1法則によれば、以下の式により与えられる。
【数4】
ここで、hg=50nmは、拡散勾配の長さである。
【0068】
イオンビーム192にサンプル180を露光している間のイオンビーム電流は、約Ci=6×106イオン/秒である。露光表面領域3040は、辺長bv=100nm、500画素×500画素の配列を含み、ピクセルあたり露光時間te=100μ秒、領域3030に注入され、拡散可能なヘリウム粒子数MHeは、少なくとも以下のようである。
【数5】
すなわち、領域3030におけるヘリウム粒子数MHeは、Mc≒4000よりも有意に多い。よって、サンプル180の金表面において気泡やブリスタが発生し、気泡が割れることで、観察可能なサンプルダメージを生成する。
【0069】
しかし、露光表面領域3040が辺長bv=1μm未満であるか、又は同様の条件の場合、MHeは、臨界値Mcを大幅に下回る約6000粒子まで減少する。この結果、ほとんどの場合サンプルダメージは回避することができる。2組の露光条件における差異は、第2の露光条件下における注入ヘリウム粒子のガス抜けの増加に起因するものである。
【0070】
したがって、その値を超えたらサンプルダメージが発生してしまう、特定の濃度限界まで、サンプル180の領域3040の表面下に対してヘリウムイオンを注入することができる。注入ヘリウム粒子の濃度は、サンプル180から離脱する表面181に向かって粒子が拡散することにより、徐々に低下する。同様の因果関係により、サンプル180が絶縁されている場合、イオンビーム192に露光している間に表面181付近において過剰電荷が蓄積する。特定の表面電圧限界まで、荷電は容量的に蓄積可能である。この表面電圧限界を超えると、イオンビーム192からのイオンとの相互作用により、サンプル180が著しく崩壊し、サンプル180からの粒子の測定により取得した像の品質が劣化する。蓄積表面荷電は、比較的ゆっくりと、漏れ電流により低減することができる。漏れ電流は、サンプル180の他の絶縁領域に電荷を逃がすからである。上述の考察に基づくと、入射イオンからのサンプルダメージを低減させる走査プロトコルは、サンプルの表面荷電の緩和にも役立つ。
【0071】
ヘリウムイオン顕微鏡システムは、サンプル上をオングストローム解像度で探索することができる。典型的には、顕微鏡システムは両側(直径)100nmのオーダーの、比較的小さい視野において走査可能なように構成される。上述の議論に基づくと、粒子注入に起因するサンプルダメージはヘリウムイオン顕微鏡システムにおいて深刻な問題となりうる。操作中、イオンビーム電流は、サンプルダメージを緩和するように低減することができる。しかし、典型的な走査条件下においては、許容可能な信号ノイズ比の画像を取得するためには、1画素あたりの入射イオンを、約600を下限とすることが必要である。したがって、低い操作イオンビーム電流を用いた場合、像取得のための時間は全体として非常に長くなりうる。像取得時間が長引けば、サンプルドリフトが測定画像に及ぼす影響が増大し、比較的弱い検出信号は、一般的に、検出器のノイズに起因する揺らぎに対して脆弱である。
【0072】
走査プロトコルの一実施形態を図2に概略的に示す。本実施形態は、比較的高いイオンビーム電流を可能にすると共に、サンプルダメージ及び入射ヘリウムイオンに起因する荷電を緩和する。領域4000は、サンプル180の一領域であり、サンプル180は、上述の走査プロトコルにより定められる特定の露光パターンで、イオンビーム192に露光される。図2に示す走査プロトコルは、領域4000の異なる空間部分をイオンビーム192に露光させる順序に起因して、チェッカーボード走査プロトコルと称される。
【0073】
領域4000を露光している間、イオンビーム192及びサンプル180は、相対的に平行移動される(例えば、イオンビーム192を動かしたり、サンプル180を動かしたりするか、又は両方を動かす)ことで、領域4000の異なる部分を交互に露光させる。図2において、イオンビーム192は、領域4000において、複数の露光スポット4001〜4024を形成する。明確のため、図2には全露光スポットのうちの一部のみを示す。図3には、同様のチェッカーボード走査プロトコルのための、追加の露光スポットを示す。これらにより、領域4000の様々な部分を露光された、そのオーダーにおけるより完全なピクチャを提供することができる。
【0074】
図2に戻ると、イオンビーム192の領域4000における平均スポットサイズはfsである。領域4000の走査を開始するためには、イオンビーム192は、露光スポット4001に対応する領域4000の一部分がイオンビーム192に露光されるように、領域4000に対して配置される。スポット4001を照射した後に、イオンビーム192をx軸方向に距離ds平行移動することにより、再配置し、照射スポット4002に対応する領域の一部分をイオンビーム192に露光する。再配置及び露光は、スポット4001〜4004が、それぞれを直接連続して露光し終わるまで続く。スポット4001〜4004は、それぞれ領域4000の異なる部分に対応し、前に露光された部分から、x軸方向に距離dsだけ離間している。
【0075】
領域4000のスポット4001〜4004に対応する部分を露光した後に、イオンビーム192を、再度、領域4000に対して再配置し、スポット4005に対応する領域4000の一部分をイオンビーム192に露光する。この、領域4000の一部分は、スポット4001〜4004に対応する各部分からは、y軸方向によりesだけ離れている。
【0076】
そして、スポット4006〜4008に対応する領域4000の部分は、それぞれ直接連続して、イオンビーム192に露光される。この際、先ず、イオンビーム102をx軸方向に距離dsだけ平行移動し、そして各領域をイオンビーム192に露光する。
【0077】
スポット4008に対応する領域を露光した後に、イオンビーム192を再度y軸方向に距離esだけ平行移動し、スポット4009〜4012に対応する領域について、イオンビーム192を連続的にx軸方向にdsだけ移動して照射する。ここまで開示してきた走査プロトコルの一部分に続いて、スポット4001〜4012を含むチェッカーボード露光パターンが、サンプル180の領域4000上において形成される。
【0078】
スポット4012に対応する部分を照射した後に、イオンビーム192は領域4000に対して再配置され、照射スポット4013に対応する領域4000の部分に対してイオンビーム192を照射する。したがって、照射スポット4014〜4024に対応する領域は、照射の合間に、領域4000に対してイオンビーム192を適切に再配置する(例えば、x軸方向に距離ds、y軸方向に距離esだけ平衡移動する)ことによって連続的に照射される。
【0079】
図2に示すような、再配置及び照射パターンを延長して行うことにより、x軸方向に、領域4000の照射部分の一連の横列の照射を完了させることができる。図3に示すように、照射領域の横列については、参照符号4100、4200及び4300を付す。列4100、4200、及び4300に対応する領域4000の部分の全てについて、イオンビーム192の照射した後に、イオンビームを領域4000に対して再配置して、完全に照射された横列の間の照射を開始する。すなわち、チェッカーボード走査プロトコルによれば、領域4000の未照射部分を含む、横列4500、4600、及び4700について、別の複数の照射スポットを領域4000上に形成することでイオンビーム192を照射する。横列4100、4200、4300の間の部分についての一連の照射手順は、上述した手順と同様である。領域4000の部分の横列を連続的に走査することによって、イオンビーム192を領域4000全体に照射する。
【0080】
図2及び3に示す一連の露光スポットが完了し、領域4000を完全にイオンビーム192に露光することは、サンプルダメージ及び表面荷電を緩和するために効果的である。これは、イオンビーム192は領域4000の特定部分の露光時間を延長させないからである。その代わり、イオンビーム192は、領域4000の横断方向に比較的長い間隔でで移動する(例えば、平均スポットサイズfsと比較して大きい)。典型的には、大きいイオン電流が比較的小さい領域に分布する場合に発生するサンプルダメージは発生しない。これは、イオンビーム電流が領域4000上の比較的広い領域に分布しているからである。相互作用領域3030は、各露光スポットにおいて形成され、相互に重複しない。また、イオンビーム192は、比較的長時間の間、どの露光部分も再度照射しないので、注入粒子の拡散及びガス抜けにより、再びイオンビーム192がそれらの露光部分を照射するときには、注入粒子の濃度を低下させる。特定部分の露光の間に比較的長時間のインターバルを設ければ、絶縁サンプルにおける表面荷電を広範にわたって消失させることができる。
【0081】
特定数の露光スポットを、図2及び3に示す領域4000上に形成し、それぞれがイオンビーム192に照射される領域4000上の部分に対応する。しかし、概して、領域4000は、それぞれ、イオンビーム192に露光する所望数の部分に分割することができる。領域4000上の露光部分の数は、例えば、領域4000の画像の所望解像度に基づいて決定することができる。
【0082】
典型的には、サンプル180の領域4000にイオンビーム192を照射すれば、サンプル180から粒子が放出される。サンプル180から放出される粒子は、二次電子、後方散乱入射イオン、散乱中性子、及び光子を含みうる。これらさまざまな種類の粒子を測定するために、本明細書の第二部において詳述する検出器が用いられうる。概して、イオンビーム192を領域4000に対して配置し、領域4000にイオンビームで露光すると、1つ又は複数の検出器が、サンプル180から放出される粒子を測定する。この1つ又は複数の検出器は、サンプル180から放出される粒子の、例えば、存在量、及び/又はエネルギー及び/又は角度位置/方向に対応する電気信号を生成する。これらの生成された電気信号を、領域4000に対するイオンビーム192の位置について補正することにより、領域4000の1つ又は複数の画像を形成することができる。
【0083】
一部の実施形態においては、イオンビーム192の領域4000表面における平均スポットサイズfsは、5nm以下(例えば、4nm以下、3nm以下、2nm以下、1nm以下、0.5mm以下、0.25mm以下)及び/又は0.25nm〜5nm(例えば、0.5nm〜4nm、0.5nm〜3nm、0.5nm〜2nm)である。
【0084】
ある実施形態においては、dsは5nm以上(例えば、10nm以上、15nm以上、20nm以上、30nm以上、50nm以上)及び/又は500nm以下(例えば、400nm以下、300nm以下、200nm以下、100nm以下)である。また、一部の実施形態においては、esは、5nm以上(例えば、10nm以上、15nm以上、20nm以上、30nm以上、50nm以上)及び/又は500nm以下(例えば、400nm以下、300nm以下、200nm以下、100nm以下)である。
【0085】
ある実施形態においては、ds/fsの比率は、は2以上(例えば、3以上、4以上、5以上、10以上、15以上、20以上、25以上、30以上)及び/又は100以下(例えば、90以下、80以下、70以下、60以下、50以下)である。また、一部の実施形態においては、es/fsの比率は、2以上(例えば、3以上、4以上、5以上、10以上、15以上、20以上、25以上、30以上)及び/又は100以下(例えば、90以下、80以下、70以下、60以下、50以下)である。また、ある実施形態においては、esは、dsより大きいかdsに等しい。また、ある実施形態においては、esはdsよりも小さい。
【0086】
ある実施形態においては、領域4000をイオンビーム192に照射した場合、ビーム192のイオン電流は1pA以上(例えば、2pA以上、5pA以上、10pA以上、20pA以上、30pA以上、50pA以上、100pA以上、200pA以上、300pA以上、500pA以上)である。概して、イオン電流は、サンプル画像の信号ノイズ比が十分に高くなるように大きくすると共に、サンプルダメージ及びサンプルの荷電が緩和されるのに十分な程度に低くなるように選択される。本明細書において開示する走査プロトコルは、領域4000上において、ラスタ走査のような、シンプルな走査プロトコルを使用した場合に可能となるイオン電流よりも、比較的大きいイオン電流を使用できるようにするものである。
【0087】
一部の実施形態において、領域4000の各部分についてのイオンビーム192への露光時間は、500μ秒以下(例えば、400μ秒、300μ秒、200μ秒、100μ秒、50μ秒、30μ秒、20μ秒、10μ秒、5μ秒、1μ秒、0.5μ秒)である。概して、露光時間は、サンプル画像の測定における信号ノイズ比が比較的大きくなるように十分なほど高く、且つ、サンプルダメージ及び荷電が緩和されるのに十分なほど小さくなるように選択される。
【0088】
一部の実施形態においては、106画素を含むサンプル画像のための総取得時間は、1000秒以下(例えば、800秒以下、600秒以下、400秒以下、300秒以下、200秒以下、100秒以下、50秒以下、30秒以下、20秒以下、10秒以下、1秒以下)である。
【0089】
一部の実施形態においては、イオンビーム192への露光による領域4000における過剰な電荷の消失を補助するためには、領域4000をフラッドガンのような電子源に露光させることができる。電子源への露光は、イオンビーム192への露光の前、例えば、サンプル内の荷電層を注入する前に行う。これに代えて、又はこれに加えて、イオンビーム192への露光中に、領域4000を電子源に露光することもできる。電子源からの電子は、表面電荷の消失を補助し、イオンビーム192によるサンプルからの二次電子の放出を促進する。さらに、これに代えて、又はこれに加えて、領域4000をイオンビームにより連続的に走査し終えた合間や、領域4000のさまざまな部分をイオンビームにより連続的にライン走査する合間や、及び/又は領域4000の様々な部分の露光スポットをイオンビームにより連続的に露光する合間に、領域4000を電子源に露光することができる。
【0090】
概して、イオンがサンプル表面に入射する際に、二次電子が生成され、サンプルから放出されることにより、表面が正味正電荷を有することになる。サンプル表面における、過剰な正の電荷は、望ましくない多数の影響を及ぼす。例えば、ある実施形態においては、サンプル表面の正電荷は、検出器が、サンプルから放出される二次電子を検出する能力を制限しうる。これは、サンプルとイオンビームとの相互作用に起因するものである。サンプル表面における正電荷と、二次電子との間における引力は、電子を減速させ、検出器に電子が到達することを妨げる。
【0091】
一部の実施形態において、サンプル表面の正電荷は、イオンビーム走査を不正確にする恐れがある。サンプル表面における正電荷により生成された電場に起因する、入射イオンビームが偏向したり、減速したりすれば、入射イオンのエネルギーが減少し、その軌道を予測し難いものに変えてしまう。
【0092】
サンプル表面の正味正電荷が十分に大きくなれば、サンプル表面は入射イオンの静電ミラーとして作用し、イオンがサンプル表面に到達する前にイオンをサンプル表面から偏向させてしまうおそれがある。
【0093】
サンプル表面に電子フラックスを供給することが可能なフラッドガンを荷電による影響のための対策に用いることができる。図4は、フラット゛ガン840を備える気体電界イオン顕微鏡の一部を示す図である。フラッドガン840は、サンプル180の表面181に対して電子ビームを供給するように構成され、ヘリウムイオンビーム192は、表面181に入射している。表面181上の電子フラックスは、概して、電子ビーム842が所望程度に表面荷電の影響と釣り合うように制御される。
【0094】
図4は、サンプル180の表面181に、別の方法で同時に入射するイオンビーム192及び電子ビーム842を示す図である。例えば、イオンビーム192に表面181を露光する前に電子ビーム842がサンプル180に供給されて、サンプル180の表面下領域において荷電層846(図5参照)を形成するように、フラット゛ガンを構成することが可能である。層846は、平均して、表面181の下の深さmに存在し、表面181の法線方向における厚さrを有する。概して、深さm及び厚さrと、層846の電子密度とは、電子ビームの電子のエネルギー、表面181に対する電子ビーム842の電子の入射角、及びサンプル180に供給される電子の総供給量によって制御される。
【0095】
一部の実施形態においては、表面181への入射、電子ビームにおける電子の平均エネルギーは調節可能である。例えば、電子の平均エネルギーは500eV以上(例えば、1keV以上、2keV以上)、及び/又は20KeV以下(例えば、15keV以下、10KeV以下)である。例えば、表面181に入射する場合、電子エネルギー842の電子の平均エネルギーは500eV〜20KeV(例えば、1keV〜15keV、2keV〜10KeV)でありうる。
【0096】
電子ビーム842の電子の、表面181に対する入射角δの角度は、電子ビーム842の主光線850と、表面181の法線848との間の角度に相当する。概して、δは0°以上(例えば、10°以上、20°以上)、及び/又は80°以下(例えば、70°以下、60°以下)である。例えば、δは0°〜70°(例えば、0°〜10°、40°〜60°)である。
【0097】
ある実施形態では、サンプル180に供給される電子の総電流は、10pA以上(例えば、100pA以上、1nA以上、10nA以上)、及び/又は100μA以下(例えば、10μA以下、1μA以下、500nA以下、100nA以下)である。例えば、サンプル180に供給される総電流量は10pA〜1μA(例えば、100pA〜100nA、1nA〜10nA)である。
【0098】
一部の実施形態においては、mは10nm以上(例えば、25nm以上、50nm以上、75nm以上、100nm以上)、及び/又は500nm以下(例えば、400nm以下、300nm以下、200nm以下)である。例えば、mは、10nm〜500nm(例えば、25nm〜500nm、50nm〜500nm、75nm〜400nm、100nm〜400nm)である。
【0099】
一部の実施形態においては、複数のフラッドガンを用いることができる。例えば、一部の実施形態においては、異なるフラッドガンを、サンプル180の表面181の異なる部分を電子に露光させるために用る。また、一部の実施形態においては、各フラッドガンは、表面181の同じ部分を電子に露光させるために用いられる。任意には、異なるフラッドガンを異なる時点において走査することもできる。例えば、1又は複数のフラッドガンを、(例えば、表面下荷電層を形成させるために)、入射イオンに表面181を露光させる前に、表面181を電子に露光させるために用いることもできるし、入射イオンに露光中の表面181について、1又は複数の異なるフラッドガンを表面181を電子にも露光させるために用いることもできる。一部の実施形態においては、(例えば、表面下荷電層を形成させるために)、入射イオンに表面181を露光させる前に、フラッドガンの全てを、表面181を電子に露光させるために用いることもできる。一方、他の実施形態においては、入射イオンに露光中の表面181について、全てのフラッドガンを表面181を電子に露光させるために用いることもできる。この他の組み合わせも可能である。
【0100】
一部の実施形態においては、イオンビーム192は、希ガスイオンによって形成される。例えば、イオビーム192は1又は複数のヘリウムイオン、ネオンイオン、クリプトンイオン、キセノンイオンによって形成されうる。代替的又は追加的には、一部の実施形態においては、水素イオンなどの非希ガスイオンによりイオンビーム192を形成することも可能である。
【0101】
典型的には、注入粒子の拡散率は温度に依存し、温度の上昇により拡散率も上昇する。よって、幾つかの実施形態においては、サンプルはイオンビーム192への露光中に熱せられ、注入粒子がサンプルから放出される程度まで拡散率が上昇してしまう。サンプルが熱せられれば、注入粒子はサンプルからすばやく拡散し、イオンビーム192が領域4000上の露光済みの部分を、露光しようとしても、その部分に注入されている粒子のうち残っている粒子の濃度はサンプルが熱せられなかった場合と比較して低い。よって、サンプルダメージ及び荷電が緩和される。
【0102】
図2及び3を再度参照すると、領域4000の各露光スポットは、イオンビーム192に露光される領域4000上の特定部分に対応している。入射イオンビームに対応してサンプルから放出される粒子は、検出され、イオンビーム192の領域4000に対する位置に関連する電気信号を生成する。そのような信号のうちの複数は、その相関する位置と共に、領域4000についての画像を形成するために用いられる。一部の実施形態においては、イオンビーム192に露光される領域4000の各部分は、それぞれ一つの画素に対応する。例えば、n×n画素の配列により形成される画像については、領域4000は、それぞれが画素一つ一つに対応する、n×n個の領域に分割することができる。また、一部の実施形態においては、領域4000の1又は複数の部分(各部分)は、複数の画素に対応しうる。
【0103】
図2及び3において、領域4000の連続的に露光された部分は、x軸方向に、相互に距離dsだけ離れている。しかし、概して、dsは連続的に露光される領域の間の最小の間隔を表し、連続的に露光される領域は、x軸方向にds又は更に大きく相互に離間して配置することができる。更に、連続的に露光される領域の間の間隔は、各領域ペアの間すべてにおいて同一でも異なっていても良い。一部の実施形態においては、例えば、連続的に照射される部分はx軸方向に相互に可変間隔で離間して配置されうる。このような可変間隔で離間は、例えば、サンプルの特定部分が、比較的高解像度で最適に画像化されるような比較的細かい構造(feature)を有するような場合、その部分において連続的に露光される領域間の間隔を狭める際に用いられうる。逆に、比較的粗い構造(又は、構造のない)を含む観察箇所は、比較的低解像度(連続的に露光される部分間の間隔を大きくする)で画像化し、画像取得スピードを速めることができる。
【0104】
同様に、図2及び図3において、走査プロトコルの実行中における露光部分の一連の横列は、y軸方向に相互に距離esだけ離間させる。概して、横列の間の間隔は可変であり、露光された横列の間の距離esは最小間隔を表す。高解像度のためには、比較的短い間隔を用い、高速且つ低解像度の画像化のためには、比較的長い間隔を用いる。更に、ds及びesは、露光部分が領域4000上において正方形パターンを形成するように等しい値としたり、矩形パターンを形成するように異なる値とすることもできる。
【0105】
また、図2及び3に示したようなチェッカーボードプロトコルに対して修正を加えた、他の様々な走査プロトコルを用いることもできる。例えば、図2及び3に示すような露光スポットに対応する部分は、上述したようなサンプルダメージ及び荷電を緩和するのに適している、あらゆる順番で露光することが可能である。操作プロトコルにおいては、連続的に走査される部分の間で、イオンビーム192を領域4000に対してx軸方向、y軸方向、又は、x軸並びにy軸両方向に移動する。x軸及びy軸方向は、サンプル180の領域4000のエッジに対して平行であっても、平行でなくても良い。
【0106】
一部の実施形態においては、露光スポットのパターンは正方形や矩形配置以外を用いることもできる。例えば、一部の実施形態においては、環状(例えば、渦状)及び/又は楕円パターンの露光スポットを領域4000上に形成することもできる。イオンビーム192は、領域4000に対して移動され、イオンビームは領域4000の部分を露光させて、一連の集中(concentric)リングを形成する。露光部分は、リングの弧に沿って相互に距離ds以上離間し、放射方向に距離es以上離間する。
【0107】
他のタイプの走査プロトコルを用いることもできる。図6は、イオンビーム192によって領域4000を露光するために適用されるバンド走査プロトコルを表す図である。イオンビーム192は、最初、図6に示す領域4000の左上角に配置され、領域4000上において露光列5001を形成するように、領域4000についてx軸方向に平行移動される。イオンビーム192を領域4000に対して平行移動するため、入射イオンに対応して領域4000から粒子が放出される。これらの粒子は1つ又は複数の検出器によって検出され、検出器によって生成される信号はイオンビーム192の位置に対応する。
【0108】
露光列5001を形成した後、イオンビーム192を領域4000に対して再配置した後に、露光列5002を形成するためにx軸方向に走査する。イオンビーム192の再配置は、イオンビーム192を、領域4000に対して距離dt以上y方向に平行移動することを含む。露光列5003を領域4000上に形成するために、同様の手順を繰り返す。
【0109】
露光列5003の形成に続いて、イオンビーム192を領域4000について再配置し、x方向に平行移動して露光列5004を形成する。イオンビーム192を再配置して、ビームをx方向に平行移動する手順により露光列5005及び5006の形成を続ける。領域4000の露光パターンは、y方向に相互に距離dtだけ離間する一連の露光列は、領域4000の全部分が露光し終わるまで反復する。
【0110】
典型的には、例えば、各露光列は、複数の露光スポットを含む。イオンビーム192は、領域4000における平均スポットサイズがfsであり、各露光列における露光スポットは、典型的には、x方向に相互に距離fs/2以上離間している。しかし、x方向におけるあらゆる所望の間隔で露光スポットを離間することができる。
【0111】
概して、領域4000上における連続的に露光されるラインの間の距離dtは、上述したようなdsと同様の値を有する。連続的な露光列の間の間隔は、一定又は可変であり、例えば、これにより、領域4000の様々な部分を画像化する解像度を制御することができる。一部の実施形態においては、dt/fsの割合は2以上(例えば、3以上、4以上、5以上、10以上、15以上、20以上、25以上、30以上)、及び/又は100以下(例えば、90以下、80以下、70以下、60以下、50以下)である。
【0112】
バンド走査プロトコルの変形例は、領域4000上において露光列を形成するあらゆる走査プロトコルを含み、このようにすることで、ラスタ走査のような従来走査プロトコルにより発生していたサンプルダメージ及び荷電が低減される。
【0113】
典型的には、バンド走査プロトコルいおいて、何れかの領域が更に露光される前に、露光列に対応する全領域は同じ回数だけ露光される。換言すれば、新たな画像フレームのいかなる部分を取得する前に完全な画像フレームが取得される。しかし、ある実施形態においては、領域4000の幾つかの部分は複数回イオンビーム192に露光され、他方、他の部分はイオンビーム192への露光回数は比較的少ない。この不均等な露光は、例えば、領域4000の特定部分の信号ノイズ比を改善するために用いられうる。
【0114】
一部の実施形態においては、画像はインタレース画像フレームから形成されうる。例えば、領域4000の画像を取得するためには、イオンビーム192は領域4000に対して、領域4000上に一連の露光列を形成するように走査される。これらの露光列は、例えば、領域4000のある一部(例えば、半分)のみをカバーすることができ、入射イオンビームに応じて領域4000から放出される粒子に基づいて第1の画像フレームが形成される。そして、イオンビーム192により、領域4000に対して、2回目の走査を行い、1回目の走査で露光されなかった部分を露光する。第2画像フレームは、入射イオンビームに対応して領域4000から放出される粒子に基づいて形成される。第1及び第2の画像フレームは、例えば、一連の交互の露光列を領域4000上に形成し、この場合、第1及び第2の画像フレームはインタレースされた画像フレームに対応する。領域4000の完全な画像は第1及び第2の画像フレームを組み合わせることで形成される。
【0115】
一部の実施形態において、領域4000上において、露光列の異なる部分は、領域4000に対してイオンビーム192を走査させることにより、異なるタイミングで形成される。例えば、第1露光ステップにおいては、イオンビーム192は、図6に示す各露光列の最初の部分に沿って走査することができる。そして、第2露光ステップにおいてはイオンビーム192は、各露光列の残りの部分ん磯って走査し、領域4000の露光を完了することができる。
【0116】
図6に示すように、露光列は、y方向に幅gtを有する。一部の実施形態においてはgtは0.25nm以上(例えば、0.5nm以上、1nm以上、2nm以上、3nm以上、4nm以上、5nm以上、6nm以上、7nm以上、8nm以上)。ある実施形態においては、dt/gtの比率は、2以上(例えば、3以上、4以上、5以上、10以上、15以上、20以上、30以上、40以上、50以上)である。
【0117】
様々な走査プロトコルのパラメータを表1に比較する。表1に示す数値を得るために、一辺100nmの正方形露光領域を仮定した。この正方形領域は、1000×1000画素の配列に分割され、そのそれぞれが露光スポットに対応した。また、画素あたりの最小露光時間は、0.1μ秒として設定した。この値は、イオンビームをサンプルに対して平行移動できる最大の比率である。イオンビーム粒子電流Ciは、等価(equivalent)プローブ電流Ii、各画素につき少なくとも600入射イオンを露光するための総取得時間、及び画素毎の露光時間は、領域3030におけるヘリウム粒子数が、Mb=6000粒子(例えば、金におけるヘリウムの飽和濃度)を超えないようにするという制約の下、算出した。
【0118】
【表1】
【0119】
従来のピクセル平均走査プロトコルにおいては、観察領域を従来のラスタパターンでラインバイラインで走査する。すなわち、各連続した領域の横列は、一端から他端に向かって走査され、走査中、イオンビームは列を飛ばすことは無い。表1に示すように、この走査プロトコルのために、注入ヘリウム粒子のサンプル中における飽和を回避するために、イオンビーム電流は比較的低く抑える。これにより、取得時間は長くなる。
【0120】
従来の平滑化(line averaging)プロトコルでは、各領域の横列は、イオンビームが次の横列に移動する前に複数回走査されうる。画素平均化(pixel averaging)プロトコルのように、イオンビームは走査中、横列を飛ばすことは無い。しかし、次のラインに移動する前に、複数回同じ横列内の画素を再度露光できるようにすることで、高いイオンビーム電流を用いることが可能になる。この結果、表1の第2横列に示したように、総取得時間は短縮される。
【0121】
フレーム平均走査プロトコルにおいては、各フレーム(それぞれ、領域のピクセル平均走査に対応する)は、取得され、画像を形成するように結合される。しかし、イオンビームは領域の各横列を複数回にわたって再走査できるので(例えば、各追加フレームにつき一回ずつ)、サンプル中における注入ヘリウム粒子の飽和を回避すると共に、イオンビーム電流は更に増加する。表1に示すように、フレーム平均走査プロトコルは、滞留時間によって効果的に制限され、これにより、注目領域に対してイオビームを平行移動できる最大比率で固定することができる。
【0122】
図6に概略的に示すバンド走査プロトコルでは、ラインバイラインで領域を走査することにより画像を取得することができ、さらに、複数のフレームを統合することによって画像を形成することができる。フレーム平均走査プロトコルとバンド走査プロトコルとの違いは、バンド走査プロトコルにおいては連続的に走査された横列がy方向に距離dtだけ離間している天で異なる。このように、連続的に走査される横列は、離間しているので、走査される横列の露光スポットに対応するサンプルの領域における相互作用領域3030は、相互に影響がでるほどには重複しない。従来のフレーム平均走査プロトコルにおいては、画素あたりの露光時間と、イオンビームが同じ画素を再度照射するのに擁する時間との比率は、約(dv/bv)である。バンド走査プロトコルにおいては、この比率は約(dv/bv)2である。この値は格段に小さい。表1に示すように、バンド走査プロトコルは、高いイオンビーム電流が用いられるようにすると共に、他の走査プロトコルに比較して総取得時間を短縮することができる。
【0123】
図2及び3に概略的に示したチェッカーボード走査プロトコルにおいて、各画像フレームは正方形又は矩形のサブ領域に分割され、イオンビームは、いずれのサブ領域が再度照射されるよりも前に、各サブ領域における類似の対応する位置を照射する。イオンビームによる連続的な照射において、各サブ領域におけるイオンビームの相対的な照射位置は、その前の照射に対して相対的に変化する。このパターンを繰り返すことで、注目領域全体を露光させる。
【0124】
チェッカーボード走査プロトコルは、サンプルのイオンビームへの露光により生じる相互作用領域3030の間の相互作用領域の空間重複を低減させる。露光時間が短ければ、サンプルの画像は複数の画像フレームを統合することにより形成される。表1においては、注入ヘリウム粒子のガス漏れ率のため、イオンビーム電流はバンド走査プロトコルと同じ値に制限されている。しかし、画素あたりの露光時間は、相互作用領域3030の間の重複を更に低減させるために、バンド走査プロトコルの場合よりも長くすることができる。実際、ここでの計算においては、画素あたりの露光時間は、1画素当たりの最小投与粒子数を600個とすることにより制約している。例えば、仮に、1画素当たりの最小投与粒子数を6000個よりも大きくした場合、画素あたりの露光時間は500μ秒にまで増加し、これにより、イオンビームをすばやく移動させることにより生じうる機械ノイズの低減を補助することができる。表1に示した他の走査プロトコルにおいては、画素あたりの露光時間を長くすることはできない。これは他の走査プロトコルにおいては相互作用領域が近接しているからである。
【0125】
発明者らにより、典型的な走査条件下では、イオンビーム照射により生じるサンプルダメージ及び/又は荷電のような効果を緩和するための、領域4000が連続的にイオンビームに露光される時間と、各領域がイオンビームに露光されていない時間との間の関係は一般化することができた。この関係は、サンプルの良好な画像を取得できるようにする。
【0126】
図7Aを参照すると、サンプル180の領域4000は、この領域について1又は複数の画像を取得するために、イオンビーム192に露光される。領域4000は、典型的には、縦R1横R2の矩形又は正方形領域である。領域4000の各部分についての連続露光時間及び非露光時間との間の関係を決定するために、領域4050の横の長さS1を決定する。このとき正方形領域4050は、領域4000を完全に取り囲む最小の正方形領域である。図7Aに示すように、領域4000の最大寸法(例えば、R1、R2)の決定に対応して、矩形又は正方形領域4000正方形領域4050の横の長さS1を決定する。よって、図7Aに示す領域4000については、S1=R1とする。一部の実施形態においては、領域4000は、正方形領域ではないが、多くの場合、正方形領域4050の横の長さを決定することは、領域4000の最大寸法を決定することに対応する。
【0127】
領域4000は、領域Aを有する。手順における次のステップは、正方形領域4050の辺長S1を、下式により設定することである。
【数6】
Fは、簡単に決定することが可能な数字定数である。領域4000が正方形領域であれば、Fの値は1となる。しかし、領域4000が正方形でなければ、Fは1以外の数になる。
【0128】
次に、領域4000はM個の連続した正方形部分に分割される。各正方形部分は、同一面積であり、イオンビーム192に別々に露光される。概して、M個の部分のそれぞれは、領域4000における画素の数に対応する。例えば、一部の実施形態においては、領域4000の画素は全部でU個のピクセルを含み、M個の部分のそれぞれは、画像の画素の4画素〜U/4画素に対応する。
【0129】
一つの画像フレームを形成するための領域4000の露光は以下の手順で行う。領域4000のM個の部分のそれぞれについて、時間t1の間、イオンビームに部分の小集合(一部)を継続的に露光させる。この部分の小集合は1つ又は複数の、部分の画像に含まれる1つ又は複数のピクセルに対応する。そして、イオンビームは、平行移動され、他の部分の小集合を継続的に露光させる。結果的に、イオンビームはM個の部分のそれぞれに戻り、各部分の異なる小集合(例えば、イオンビームに露光されていない部分の小集合)を露光させる。部分の小集合の露光の後に、イオンビームを他の部分に平行移動し、各部分の全小集合をイオンビームに露光させるまで継続し、領域4000の露光を完了して一つの画像フレームを形成する。
【0130】
一部の実施形態においては、各M個の部分の露光された小集合は、同等の数の画素に対応する。一部の実施形態においては、露光された小集合は、様々な数の画素に対応する。M個の部分は、一部の実施形態においては、入射イオンと領域4000の材料との相互作用の大まかな量に基づいて決定される。相互作用の量は、実験的に測定することができ、領域4000における部分Mの数(すなわち、間隔)を決定するために用いられる。代替的又は追加的には、入射イオンと領域4000の材料との相互作用の量は、特定の材料について測定された相互作用量の表のようなデータベースから推定することができる。そのようなデータベースから相互作用の量が推定されると、領域4000における、部分Mの数及び間隔が決定できる。
【0131】
一部の実施形態においては、M個の部分のイオンビームへの連続した露光の間の時間間隔は、一つの部分についての時間間隔と同様であり、領域4000内のM個の部分全てについての時間間隔と同様である。しかし、M個の部分のうち1つを連続且つ継続的にイオンビームに露光する間の時間間隔は、所定の部分については可変でありうる。そして領域4000における部分ごとに可変でありうる。
【0132】
時間間隔t2は、M個の部分のいずれかをイオンビームに連続的に照射する間の最短の時間間隔である。所定の領域4000及び部分数Mについて、異なる露光プロトコルに応じて、t1及びt2の値は広い範囲で可変である。しかし、一般的に時間間隔t1及びt2は、下式を満たすように選択される。
【数7】
【0133】
上記式がイコールの場合、比率t1/(t1+t2)の上限値を示す。この比率は、上記式の右辺の値以下である。例えば、一部の実施形態においては、t1/(t1+t2)の値は、
である。
【0134】
概して、ここで記載するいずれの走査プロトコルも、上述したような、M個の部分の継続露光時間t1と、M個の部分の何れかを連続して露光する間の最短時間間隔t2との間の関係に従って実行される。例えば、チェッカーボード走査プロトコル及びバンド走査プロトコルの両方、及びそれらの変形例は、サンプルダメージ及び荷電を緩和するために、上記数7に示す関係に基づいて実行される。
【0135】
図7Aに、異なる走査プロトコルの比較を示す。図7Aの領域4000は、1000個の画素(F=1)に対応し、M=100個(10×10配列の画素)の部分に分割される。M個の部分のそれぞれは、10000画素(100×100配列の画素)に対応する。各画素は一つの露光スポット(例えば、イオンビームにより、領域4000のスポットを露光させる)。各スポットの露光時間は1μ秒である。よって、ビームの平行移動の時間その他の要素を考慮しなければ、領域4000の全スポット(例えば、領域4000の画像に含まれる全ピクセル)を露光するのに要する時間は、1秒である。明確のため、この例においては、M個の部分のそれぞれは、全て同じ方法でイオンビームに露光される。
【0136】
標準的なピクセル平均走査プロトコルにおいては、領域4000における露光スポットの横列は、イオンビームに連続的に露光される。例えば、図7Bを参照すると、横列は、1−2−3−4−5...1000の順番に露光され、領域4000の画像取得を完了する。領域4000における部分M1を参照すると、横列から横列へと順番に露光していった場合、イオンビームは、部分M2に移動する前に、部分M1において連続的に100個のスポットを露光する。各スポットは1μ秒間露光されるので、t1=100μ秒である。M個の部分の何れかをイオンビームへ連続的に露光する間の間隔で最も短い時間であるt2は、全ての部分について同一である。イオンビームは、各部分M2〜M10のそれぞれについて、100スポットを露光し、領域M1に戻り、横列2の100個のスポットを露光させる。従って、部分M1の連続露光の間の最短時間はt2=900μ秒である。比率t1/(t1+t2)は、値0.1を有し、これは下式の値より大きい。
【数8】
【0137】
標準的な画素平均バンドプロトコルにおいては、部分M1〜M10における、画素の各横列(例えば、横列1〜100)は、イオンビームに連続的に露光される。そして、部分M11〜M20を跳び越し、部分M21〜M30の画素の横列(例えば、列201〜300)をイオンビームに対して連続的に露光させる。しかし、この走査プロトコルについて、時間間隔t1及びt2は、連続したピクセル走査プロトコルと同じ値であり、比率t1/(t1+t2)の値は、0.1であり、これは下式の値よりも大きい。
【数9】
【0138】
図6に概略的に示したプロトコルのような、バンド走査プロトコルにおいては、各M個の部分のスポット列は、M個の部分の追加のスポット列のいずれかが露光される前に、露光される。例えば、図7Bを参照すると、1、101、201、301、・・・901列が露光され、そして、列2、102、202、302・・・901列などが露光される。各部分についての連続露光時間は、t1=100μ秒(各部分の一つの横列における全スポットを露光するために要する時間)である。各部分のそれぞれを連続して照射する間の最短時間は、9900μ秒である。例えば、部分M1を考えると、t2は、部分M1における横列1内の最後のスポットの露光から、部分M1における列2の最初のスポットの露光までの間の時間である。この時間は、900μ秒及び9000μ秒を含む。900μ秒の間、横列1の他のスポット(例えば、部分M2〜M10内のスポット)が露光され、9000μ秒の間、横列101、201、301、・・・901のそれぞれに含まれる1000スポットが露光される。バンド走査プロトコルについては比率t1/(t1+t2)は値0.01を有し、これは下式より小さい。
【数10】
【0139】
図3に概略的に示すプロトコルのような、チェッカーボード走査プロトコルにおいては、各M個の部分内の一つのスポットは、M個の部分のうち追加のスポットが露光される前に露光される。図7Bにおけるスポットの座標系でいえば、スポット(1,1)、(1,101)、(1,201)、・・・(1,901)、(101,1)、(101,101)、(901,901)が露光される。各部分M1〜M100は、まさに、これらのスポットの一つを含んでいる。そして、イオンビームはM1に戻り、スポット(1,2)を露光させ、次に部分M2のスポット(1,102)、次いで、部分M3のスポット(1,202)等を露光させていく。各部分(例えば部分M1)についての継続露光時間は、一つのスポットについての露光時間であり、t1=1μ秒である。M個の部分それぞれの連続的な露光の間の最短時間はt2=99μ秒である。これは、イオンビームが部分M1に戻り、部分M1の第2のスポットを露光するまでには、各部分M2〜M99の対応するスポットを照射するからである。チェッカーボード走査プロトコルについては、比率t1/(t1+t2)は値0.01を有し、これは下式より小さい
【数11】
【0140】
よって、バンド走査及びチェッカーボード走査プロトコルは、数7によって定められる関係を満たし、これにより、イオンビームへの露光によるサンプルダメージ及び/又は荷電を低減する。
【0141】
半導体製造においては、マルチレイヤ半導体装置の所定の層に材料を添加し、及び/又は、層から除去するために、ガスアシスト化学反応がよく用いられている。例えば、ガスアシスト化学反応は、半導体製品(article)に形成されたダメージを受けた、又は誤って製造された回路修正するための、半導体回路の編集に用いられうる。ガスアシスト化学反応はフォトリソグラフィマスク修正にも用いられうる。この場合、ガスアシスト化学反応は、使用又は誤製造による欠陥を修復するために、マスクに材料を添加する、又はマスクから材料を除去するために用いられる。
【0142】
このプロセスは、電子と活性ガスとを相互作用させて、反応ガスを形成し、この反応ガスを、半導体製品の表面における化学反応に作用させて、材料を表面に添加又は表面から除去させるか、或いはその両方をさせる。典型的には、電子は、Gaイオンビームとサンプルとの相互作用により生じる二次電子として生成された電子か、及び/又は、電子ビーム(例えば、SEMから供給された電子ビーム)とサンプルとの相互作用による二次電子として生成された電子である。任意には、適切なポンプシステムを適用して、表面化学反応により生じた、不所望な揮発性生成物を除去することもできる。
【0143】
表面から材料を除去するために用いることができる活性ガスの例としては、Cl2、O2、I2、XeF2、F2、CF4及びH2Oである。例示的には、一部の実施形態においては、クロム、酸化クロム、窒化クロム、及び/又はクロムオキシニトライドにより形成された表面領域は、Cl2、O2と共に、電子と相互作用させることで少なくとも部分的には除去可能であり、また、生じた化学種により表面領域をエッチングすることができる。他の例として、一部の実施形態においては、窒化タンタルによって形成された表面領域は、XeF2、F2、CF4と共に電子と相互作用させることで少なくとも部分的には除去することができ、また、生じた化学種により表面領域をエッチングすることができる。更に他の例として、一部の実施形態においては、炭素含有材料により形成された表面領域は、H2Oと共に電子と相互作用させることで、少なくとも部分的には除去することができ、また、生じた化学種により表面領域をエッチングすることができる。
【0144】
表面に材料を堆積させるために用いられうる活性ガスは、例えば、WF6である(例えば、Wプラグのような、Wを堆積させる)。
【0145】
本願において述べるような、ガス原子と気体電界イオン源(例えば、Heイオン源)とを相互作用させることにより生成されるイオンビームは、ガスアシスト化学反応を実行するために用いられうる。このようなプロセスにおいては、例えば、イオンビームとサンプルとの相互作用によりサンプルから放出される二次電子は、化学反応をアシストするための電子となりうる。このようなイオンビームを用いることで、Gaイオンビームを用いる場合に比較していくつかの有利な効果が生じる。例えば、Heイオンビームを利用した不所望なイオン注入が少なくなる(例えば、低減される)が、他方、Gaイオンビームを用いた場合には不所望なGa注入が一般的な課題である。他の例としては、気体電界イオンビーム(例えば、Heイオンビーム)は、Gaイオンビームに比べて解像度を改善し、及び/又は、正確又は制御可能に化学反応を利用できるようにする入射電子ビーム(例えば、SEMから供給される入射イオンビーム)を提供することができる。これは、例えば、イオンとサンプルの特定部分との間における不所望な相互作用(例えば、Ga注入により半導体製品の性能に問題が生じる、サンプル上の不所望な領域にまでビームプロファイルが延在するGaイオンビームにより引き起こされる相互作用)を減らす(例えば、低減する)ことができる。
【0146】
上述したとおり、イオンビームをサンプル中におけるビームアシスト化学反応を実施するために用いた場合、表面において吸着された化学薬品は、イオンビームにより生成される二次電子と相互作用し、サンプルと化学反応を起こす。化学反応はサンプルの構造を修正することで制御できる。サンプル表面において消費された化学薬品は、追加の薬品にサンプルを曝すことで補充することができる(例えば、ガスフローノズルを利用する)。
【0147】
単純にラインバイライン(標準ラスタパターン)でイオンビームをサンプル表面上で走査させると、イオンビームはサンプル上面の部分(例えば、イオンビームスポット)を探索し、吸着された化学薬品は、イオンビームが近傍位置を露光した際における相互作用により既に消費されている。しかし、本願において開示したような走査プロトコルに基づくイオンビームを走査プロトコルに従ってイオンビームを走査させた場合、連続的なビームスポットは、従来のラスタ走査プロトコルよりも大きい間隔で相互に離間する。この場合、サンプル表面上のイオンビームの各位置において、吸着された化学薬品は、イオンビームによって生成された二次電子と相互作用していないか、又は、イオンビームにより生成された二次電子と相互作用した後に補充されている。よって、サンプルにおけるイオンビーム化学反応の効率は、本願に開示するような走査プロトコルに従って、サンプル表面をイオンビームによって走査することによって促進される。これにより、サンプル上のあらゆる位置における連続的な照射の間のインターバルは比較的長くなる。
【0148】
II.イオンビームシステム
本節では、イオンビームを生成し、且つ、イオンビームへの露光により観察対象のサンプルから放出された粒子を検出するためのシステム及び方法を開示する。本システム及び方法は、サンプルについて1つ又は複数の画像を得るために用いられうる。典型的には、サンプルを探索するために用いられるガスイオンビームは、多目的顕微鏡システムにおいて生成される。
【0149】
サンプル分析(例えば、イメージング)のために用いられうるイオンを生成に気体電界イオン源を用いる顕微鏡システムは、気体電界イオン顕微鏡と称される。気体電界イオン源は、中性気体(neutral gas)類をイオン化してイオン(例えば、イオンビーム)を生成するために用いられうる導電性チップ(典型的には、先端が10以下の原子を有するものである)を備える。イオンの生成にあたって、中性気体類は導電性チップの近傍(例えば、約4〜5Å以内)に集められ、導電性チップの先端には高い陽電位(例えば、抽出器(以下に詳述する)に対して1kV以上)が印加される。
【0150】
図8は、気体電界イオン顕微鏡システム100の概略構成を示す図である。気体電界イオン顕微鏡システム100は、ガス源110、気体電界イオン源120、イオン光学系130、サンプルマニピュレータ140、前側検出器150、後側160、及び通信線172a〜172fを介してシステム100の様々な構成要素に接続された電子制御システム170(例えば、コンピュータのような電子的な処理装置)を備える。サンプル180は、イオン光学系130と検出器150、160との間であって、サンプルマニピュレータ140の中又は上に配置される。使用中、イオンビーム192は、イオン光学系130を通じてサンプル180の表面181に向けられ、イオンビーム192とサンプル180との相互作用により生じる粒子194は、検出器150及び/又は160によって測定される。
【0151】
一般的に、システムを真空にすることでシステム100内における特定の不所望な化学種を抑制することが望ましい。典型的には、システム100の異なる構成要素は異なるバックグラウンド圧力に維持される。例えば、気体電界イオン源120は、約10-10Torrに維持されうる。気体を気体電界イオン源120に導入する際には、バックグラウンド圧力は約10-5Torrまで上昇する。イオン光学系130は、気体電界イオン源120にガスを導入する前は、約10-8Torrのバックグラウンド圧力に維持される。そして、ガスが導入された際には、イオン光学系130のバックグラウンド圧力は、典型的には約10-7Torrまで上昇する。サンプル180は、典型的には約10-6Torrのバックグラウンド圧力に維持されるチャンバ内に配置される。この圧力は、気体電界イオン源120内におけるガスの有無によってはあまり変化しない。
【0152】
図9に示すように、ガス源110は、1又は複数のガス182を気体電界イオン源120に供給するように構成される。以下に詳述するとおり、ガス源110は、ガスを様々な純度、流率、圧力、及び温度で供給するように構成されている。概して、ガス源110によって供給されるガスのうち少なくとも一つは、希ガス(ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe))であり、希ガスのイオンは、望ましくは、イオンビーム192の主要成分である。概して、サンプル180の表面181において測定されるように、イオンビーム192のイオンの電流はシステム100における希ガスの圧力が増加することに従って、単調に増加する。一部の実施形態においては、この関係は、べき乗則(power-law)に従う。この場合、ある範囲の希ガス圧力については、電流はガス圧力に比例して増加する。操作中、希ガスの圧力は、典型的には約10-2Torr以下(例えば、10-3Torr以下、10-4Torr以下)、及び/又は、チップ先端周辺においては、10-7Torr以上(例えば、10-6Torr以上、10-5Torr以上)である(以下に詳述する)。概して、(例えば、システム中における不所望な化学種の存在を低減するために、)比較的高純度のガスを使用することが望ましい。例えば、Heを用いる場合、Heは、少なくとも99.99%の純度(例えば、99.995%純度、99.999%純度、99.9995%純度、99.9999%純度)である。同様に、他の希ガスを用いる場合(Neガス、Arガス、Krガス、Xeガス)には、ガスの純度は市販グレードの高純度であることが望ましい。
【0153】
任意には、ガス源110は、希ガスに加えて、1又は複数のガスを供給できる。以下に更に詳述するように、そのようなガスの一例は窒素である。典型的には、追加のガスは、希ガスにおける不純物を超えるレベルで存在しうるが、ガス源110によって導入されるガス混合物全体のうちのごく少量の成分を構成するに過ぎない。例えば、Heガス及びNeガスがガス源110によって気体電界イオン源120に導入されるような実施形態において、ガス混合物は、全体として20%以下(例えば、15%以下、12%以下)のNe、及び/又は1%以上(例えば、3%以上、8%以上)のNeを含みうる。例えば、Heガス及びNeガスがガス源110によって導入される実施形態において、ガス混合物全体として、5〜15%(例えば、8〜12%、9〜11%)のNeを含みうる。他の例としては、He ガス及び窒素ガスがガス源110によって導入される実施形態において、ガス混合物全体として、1%以下(例えば、0.5%以下、0.1%以下)の窒素、及び/又は0.01%以上(例えば0.05%以上)の窒素を含みうる。例えば、Heガス及び窒素ガスがガス源110によって導入される実施形態において、ガス混合物全体として、0.01〜1%(例えば、0.05〜0.5%、0.08〜0.12%)の窒素を含みうる。一部の実施形態において、追加のガスは、(例えば、ガスを混合し、単一のインレットからシステムに供給するガスマニホールドを用いることによって、)システム100に導入される前に希ガスと混合される。一部の実施形態においては、システム100に導入される前に追加のガスは希ガスと混合されない(例えば、分離インレットを用いてガスをシステム100に注入することによる。この場合、分離インレットは、ガスが、気体電界イオン源120のいかなる要素とも相互作用する前に、混合されるために十分な程度に近接している)。
【0154】
気体電界イオン源120は、1又は複数のガス182をガス源110から受けて、ガス182から気体イオンを生成するように構成されている。気体電界イオン源120は、チップ端187、抽出器190、及び、任意には抑制器を有する導電性チップ186を備える。典型的には、チップ端187からサンプル180(図2には図示しない)の表面181までの距離は、5cm以上(例えば、10cm以上、15cm以上、20cm以上、25cm以上)、及び/又は100cm以下(例えば、80cm以下、60cm以下、50cm以下)である。例えば、一部の実施形態においては、チップ端186からサンプル180の表面181までの距離は5〜100cm(例えば、25〜75cm、40〜60cm、45〜55cm)である。
【0155】
導電性チップ186は、様々な素材によって形成されうる。一部の実施形態においては、チップ186は、金属(例えば、タングステン(W)、タンタル(Ta)、イリジウム(Ir)、レニウム(Rh)、ニオブ(Nb)、プラチナ(Pt)、モリブデン(Mo))により形成される。一部の実施形態においては、導電性チップ186は、合金によって形成されうる。一部の実施形態においては、導電性チップ186は、非金属(例えば、カーボン(C))によって形成されうる。
【0156】
使用中、チップ186には、抽出器190に対して正のバイアスがかかる(例えば、約20kV)。抽出器190には、大地アースに対して、負又は正にバイアスがかかる(例えば、−20kV〜+50kV)。そして、付加的な抑制器188は、チップ186に対して正又は負にバイアスが係る(例えば、−5kV〜+5kV)。チップ186は、導電性金属により掲載されているため、チップ端187におけるチップ186の電場は、チップ端187から外に向かって形成される。チップ186の形状に起因して、電場はチップ端187の付近で最も強い。チップ186の電場の強度は、例えば、チップ186に印加される正電圧を変更することによって調節可能である。この構成によれば、ガス源110によって供給される脱イオン化ガス原子182が、イオン化されて、チップ端187付近において正荷電イオンとなる。この、正荷電イオンは、同じく正に荷電したチップ186によって一斉に押し出され、負に荷電した抽出器190に引き付けられて、チップ186から出てきた正荷電イオンが、イオンビームとして、イオン光学系130に入っていく。抑制器188は、チップ186と抽出器190との間の電場全体を制御を支援し、これにより、チップ186からイオン光学系130へと向かう正荷電イオンの軌道が調節される。一般的に、チップ186と抽出器190との間の電場全体は、チップ端187において正荷電イオンが生成されるような比率であり、チップ186からイオン光学系130に正荷電イオン送られるような効率になるように調整される。
【0157】
特定の理論に縛られることを望むものではないが、例えば、Heイオンは以下のようにして生成されるものとして考えられている。気体電界イオン源120は、チップ端187付近におけるチップ186の電場が、非イオン化Heガス原子182のイオン化電場を越え、チップ186が比較的低温に維持されるように構成されている。脱イオン化Heガス原子182がチップ端187に近接している場合、He原子はチップの電場によって分極し、He原子182とチップ端187との間で弱い引力を生成する。その結果、He原子182は、チップ端187に接触し、暫くの間、その場所に結合したままになる(例えば、物理吸着)。チップ端187の近傍において、電場は、チップ端187に吸着したHe原子をイオン化するのに十分に高くなり、正に荷電したHeイオン(例えば、イオンビーム)を生成する。
【0158】
図10は、チップ端187(W(III)によって形成される)を概略的に示した図である(以下に詳述する)。チップ端187は、原子棚(atomic shelf)を形成するように配置された原子の層を含む。原子142により、末端原子棚(terminal atomic shelf)が形成される。第2の原子棚は原子144により形成され、第3の原子棚は原子146によって形成される。ガス源110によって供給される中性気体原子182は、チップ端187の近傍に存在する。原子182について付した矢印によって示すように、原子182は、チップ端187の電場によって分極され、原子182がチップ187に向かって移動するようにする比較的弱い引力の影響を受ける。
【0159】
チップの電場の強度に依存して、チップ端187付近の原子棚中の各原子は、対応するイオン化ディスク148を有しうる。イオン化ディスク148は、その中に飛び込んだ中性He原子が高確率でイオン化される空間領域である。典型的には、中性He原子は、中性He原子からチップ端原子への電子トンネルを経て生じる。したがって、イオン化ディスク148は、Heイオンが生成され、且つ、そこからHeイオンが発生する空間領域として示される。
【0160】
特定のチップ端原子のためのイオン化ディスク148のサイズは、チップ端187の形状と、チップ端187に印加される電位とに依存する。一般的に、He原子のイオン化は、局所的な電場がHeイオンのイオン化ポテンシャルを超えるチップ端187に近接する空間領域において発生する。従って、チップ端187に印加された高い電気ポテンシャルのため、多くのチップ原子がイオン化ディスクを有するようになる。更に、チップ端187の付近における局所的な電場は、チップ端187の形状に依存する。比較的鋭角のチップ端については、チップ端187の付近における局所的な電場は比較的高い。比較的鈍角のチップ端については、チップ端187付近でさえ、局所的な電場が小さい。
【0161】
図10において、チップ端187の各原子に対応するイオン化ディスク148は、空間的に相互に離間する。一部の実施形態においては、チップ端187の電場が十分に大きければ、一つ以上の原子(例えば、原子142)からのイオン化ディスクは空間的に重複し、複数のチップ端原子の付近の空間領域に延在する、より大きいイオン化ディスクを形成する。チップ端187における電場を低減することにより、イオン化ディスク148によって占有される空間体積が減少し、少ないチップ端のそれぞれが独自の空間的に離れたイオン化ディスクを有する、図10に表したような構造が実現する。多くの例において、チップ端187の形状は、イオン源120の使用中において、簡単には変更されないが、チップ端187の付近における電場は、典型的には、チップ端187に印加される電気ポテンシャルを調整することによって制御される。
【0162】
チップ端187に印加されるポテンシャルを更に減少させることにより、図10に示すイオン化ディスクのうちの幾つかは取り除かれる。例えば、チップ端187は、第2原子棚の原子144の付近にある場合よりも、鋭角ではなく、更に、チップ端187に印加するポテンシャルを減少させることにより、原子144の付近におけるチップ端187の電場は低減され、He原子のイオン化がこれらの領域では発生しない確率が高くなる。これにより、原子144に対応するイオン化ディスクは存在しなくなる。しかし、末端棚原子(terminal shelf atoms)142の付近におけるチップ端187の電場は、He原子のイオン化を生じさせるために十分に高く、これにより、原子142に対応するイオン化ディスク148は残る。チップ端187に印加される電気ポテンシャルを身長に制御することにより、イオン源120は、末端棚原子142に対応して、イオン化ディスクが存在し、末端棚原子に対応するイオン化ディスクが相互に空間的に離間するようになる。この結果、チップ端187付近においてイオン化されたHe原子は、特定の末端棚原子の付近におけるイオン化を経て生成される。
【0163】
中性ヘリウム原子182は、イオン化ディスク148内において、より長時間残留することにより、よりイオン化の影響を受ける確率が高い。He原子の分極化は、チップ端187の電場により誘発され、チップ端187に向かって分極化He原子を移動させる。これにより、分極化He原子がチップ端187に結合したままとなり、He原子182がイオン化ディスク148内に残留し、分極化He原子が長時間を経てイオン化する確率を増大する。
【0164】
分極化He原子は、一つの位置から他の位置へとチップ端187の表面に沿って移動する。分極化He原子とチップ端187との間の引力は、分極化He原子の位置における、チップ端187における電場の強度に依存し、分極化He原子の移動により、局所的な電場が最も強いチップ186のチップ端の先端(例えば、末端棚142)に向かって原子が運ばれる。分極化He原子の移動のメカニズムは、(例えば、末端棚原子142のみに対応する散在するイオン化ディスクが確実に存在するように)、チップ186に印加される電気ポテンシャルを制御することと組み合わせることで、イオン源120を操作するために用いられ、これにより、ガス場イオン化源120によってHeイオンビーム192が生成される。この場合、イオンビームに含まれる各Heイオンは、Heガスと末端棚原子142のうちの一つとの相互作用により生成される。従って、イオンビーム192は、各末端棚原子142からの複数のHeイオンを含み、このとき、各Heイオンは末端棚原子142におけるイオン化によって生じうる。
【0165】
上述したように、一般的に、イオン化ディスク148のサイズ及び形状は、チップ端187に印加される電気ポテンシャルを変更することによって修正することができ、隣接するイオン化ディスク148は、適切な大きさで印加された電位により相互に重複するか、又は、適切な小ささで印加された電位により、空間的に相互に分散して維持される。典型的には、イオン化ディスク148はチップ端142、144、及び146から、約0.4nm離間される。チップ原子に対応する各イオン化ディスクは、所定のディスクと対応する原子とを結んだ線に沿って約0.02nmの厚さを有する。イオン化ディスク148は、典型的には、所定のディスクと対応する原子とを結んだ線の法線に沿って、対応する原子の略等しい直径を有する。
【0166】
図11は、チップ端187の操作構成を示し、チップ186に印加される電気ポテンシャルは3つのイオン化ディスク148を生成し、そのそれぞれが、3つの末端原子棚原子148のうちの1つに対応する。一旦、イオンがチップ端187の付近で生成されると、チップのポテンシャルが高いため、急速に加速され、チップから遠ざかる。Heイオンはチップ端187から複数の軌道を経て加速されて遠ざかる。このような軌道として、2つの軌道156を図11に示す。図11に示すように、軌道156は、中間末端棚原子の半値全幅(FWHM)軌道の分布における左右の限界に対応する。このように、軌道156が、中間末端棚原子の位置に対して(例えば、ライン154に沿って)後退させると、中間末端棚原子の仮想源152が定まる。この仮想源152の直径は、一般的には、中間末端棚原子の直径より小さく、中間末端棚原子の直径よりもかなり小さい(例えば、2倍以上、3倍以上、5倍以上、10倍以上)場合もある。同様のことが、他の末端棚原子についても言え、各末端棚原子は、対応する仮想源サイズを有している。
【0167】
末端棚原子の仮想源サイズが小さいことで、幾つかの有利な点がある。例えば、イオンビーム192の仮想源サイズが小さく、且つ、イオンビーム192を生じさせるイオン化ディスク148の厚さが比較的薄ければ、比較的高輝度且つ比較的エネルギー分布の狭いイオンビーム192を確実に得られる。
【0168】
特定の理論に縛られることを望むものではないが、低すぎるチップ温度は電流の安定性に悪影響を及ぼし、及び/又は、チップにおける不純物の吸着による不所望な影響を増大させる。概して、チップ186の温度は5K以上(例えば、10K以上、25K以上、50K以上、75K以上)、及び/又は100K以下(例えば、90K以下、80K以下)である。例えば、チップ186の温度葉5K〜100K(例えば、25K〜90K、50K〜90K、75K〜80K)である。チップ186の温度は、例えば、液体ヘリウム又は液体窒素のような冷却材と熱結合させることにより達成される。代替的又は追加的には、チップ186は、極低温冷凍庫を用いて熱冷却されうる。
【0169】
チップ186の温度が低すぎれば、吸着されたHe原子が、チップ端187の末端原子棚における末端棚原子142へと移動することにより運ばれる比率が減少し、単位時間当たりに末端棚原子142に到達してイオン化されるHe原子の数が不十分となる。この結果、(フィールドイオン顕微鏡(FIM)技術、又は走査型FIM(SFIM)技術によって)チップ186の放出パターンを観察すると、各末端棚原子からのイオンの存在量(abundance)について、比較的高い存在量から比較的低い存在量が交互に観察される(一般的に、ブリンキングと称される)。このような現象は、例えば、ある時点において、末端棚原子の付近にイオン化することができるHe原子が存在しない場合に生じうる。チップ186の温度が高くなると、He原子が、チップ端187の原子の末端棚に向かって移動する移動率が増加し、上述のように、末端棚原始142からのイオンの存在量が交互に高くなったり低くなったりする現象は低減又は抑制される。
【0170】
また、チップ186の温度が高すぎれば、分極化He原子は、非常に高い動的エネルギーを有するようになると考えられている。この動的エネルギーは、末端棚原子142の付近におけるHe原子を、効率的且つ確実にイオン化するためには十分に長い時間の間、チップ186に対して結合させておくためには高すぎる。また、FIM及び/又はSFIMを用いて観察されたような各末端棚原子からの放出パターンの消失にもつながりうる。よって、末端棚原子142におけるHeイオン化過程において、各末端棚原子142からの安定したイオン電流が確実に生成されるようにするために、チップ186の温度は慎重に制御され、不所望な高温又は低温効果を緩和させる。
【0171】
概して、イオン光学系130は、イオンビーム192をサンプル180の表面181に方向付けるように構成される。以下に更に詳述するように、イオン光学系130は、例えば、イオンビーム192に含まれるイオンをフォーカスし、コリメートし、偏向し、加速し、及び/又は減速させることができる。イオン光学系130は、イオンビーム192におけるイオンの一部のみがイオン光学系130を通過できるようにする。概して、イオン光学系130は、所望に構成された、多様な静電素子及び他のイオン光学素子を含む。イオン光学系130内の、1つ又は複数の素子(例えば、静電偏向器)の電場強度を操作することにより、Heイオンビーム192は、サンプル180の表面181を走査する。例えば、イオン光学系130は、イオンビーム192を2つの直交方向に偏向する2つの偏向器を有する。これらの偏向器は、イオンビーム192が表面181における各領域をラスタ状に横断できるように電場強度を変化させることができる。
【0172】
イオンビーム192がサンプル180に当たると、多様な種類の粒子194が生成されうる。これらの粒子は、例えば、二次電子、オージェ(Auger)電子、二次イオン、二次中性粒子、散乱イオン、及び光子(例えば、X線光子、IR光子、可視光子、UV光子)である。検出器150及び160は、それぞれ、Heイオンビームとサンプル180との相互作用によって生じた1又は複数の様々なタイプの粒子を計測するように、配置及び構成されている。図8に示すように、検出器150は、サンプル180の表面181から主に発生する粒子194を検出するように配置されており、検出器160は、サンプル180の表面183から主に発生する粒子194(放出粒子)を検出するように配置される。以下に更に詳述するように、概して、本願に係る顕微鏡においては、検出器の数及び構成はいかなるものであってもよい。一部の実施形態においては、複数の検出器を用い、そのうちのいくつかは、異なるタイプの粒子を計測するように構成されうる。また、ある実施形態においては、検出器は、粒子についての様々な情報(例えば、粒子エネルギー、所定の粒子の角度分布、所定の粒子の全存在量)を同時に生成するように構成されることも可能である。選択的には、これらのような検出器を組み合わせて用いることも可能である。
【0173】
概して、検出器によって計測される情報は、サンプル180に関する情報を決定するために用いられうる。典型的には、この情報は、サンプル180について、1つ又は複数の画像を取得することにより決定される。表面181上でイオンビーム192をラスタ走査させることにより、離散的なステップにおいて、サンプル180についての画素ごとの情報を取得することができる。検出器150及び160は、各画素において、1又は複数の異なるタイプの粒子194検出するように構成されている。典型的には、画素は正方形であるが、一部の実施形態においては、画素は異なる形状(例えば、矩形)を有しうる。画素の横長に対応する画素サイズは、例えば、100pm〜2μm(例えば、1nm〜1μm)でありうる。一部の実施形態においては、隣接画素の配置は、少なくとも200pm以内(例えば、少なくとも100pm以内、少なくとも75pm以内、少なくとも50pm以内)となるように決定されうる。よって、システムのオペレータは、ビームスポットの中心位置が、少なくとも200pm以内(例えば、100pm以内、75pm以内、50pm以内)と成るように決定しうる。ある実施形態においては、サンプル180の視野(FOV)は、200nm以上(例えば、500nm以上、1μm以上、50μm以上、100μm以上、500μm以上、1mm以上、1.5mm以上)、及び/又は25mm以下(例えば、15mm以下、10mm以下、5mm以下)である。視野とは、イオン顕微鏡によってイメージングされる、サンプル表面の領域を指す。
【0174】
顕微鏡システム100は、典型的には、電子制御システム170を介して制御される。例えば、電子制御システム170は、ガス源110によって供給されるガス、チップ186の温度、チップ186の電気ポテンシャル、抽出器190の電気ポテンシャル、抑制器188の電気ポテンシャル、イオン光学系130の構成素子の設定、サンプルマニピュレータ140の位置、及び/又は検出器150並びに160の位置並びに設定を制御するように構成されている。選択的には、これらのパラメータのうち1つ又は複数は、(例えば、電子制御システム170に一体化されたユーザインタフェースを介して)手動制御されうる。付加的又は代替的には、電子制御システム170は、検出器150並びに160によって収集された情報を(例えば、コンピュータのような電子プロセッサにより)分析して、サンプル180に関する情報(例えば、トポグラフィ情報、材料構成成分情報、結晶情報、電圧コントラスト情報、光学特性情報、磁気情報)を提供するために用いられうる。この情報は、画像、グラフ、表、スプレッドシートなどとして提供されうる。典型的には、電子制御システム170は、表示部又は他の出力装置、入力装置及び記憶媒体を持つユーザインタフェースを有しうる。
【0175】
電子制御システム170は、本明細書に開示した走査プロトコルに従って、イオンビーム192をサンプル180の表面上を走査させるようにも構成される。例えば、電子制御システム170は、部分Mの数や間隔などの様々な走査パラメータを、手動(例えば、操作者のアシストによる)で入力できるように構成される。代替的又は追加的には、電子制御システム170は、多様な走査パラメータ(例えば、部分Mの数及び間隔)を、入力情報(例えば、入射イオンエネルギー、サンプルの素材)に基づいて自動で決定するように構成されることもできる。一般的に、電子制御システム170は、本願に開示したあらゆる走査プロトコルを顕微鏡システム100において実施するように構成され、自動化の程度についても、全自動から手動までの様々な程度において実施するように構成される。
【0176】
A.全体
図12は、Heイオン顕微鏡システム200の概略構成を示す図である。顕微鏡システム200は、Heイオン源及びイオン光学系130を含む第1真空ハウジング202を備え、且つ、サンプル180及び検出器150並びに160を含む第2真空ハウジング204を備える。ガス源110は、供給管228からHeガスを顕微鏡システム200に供給する。フローレギュレータ230は供給管228を経たHeガスの流率を制御し、温度制御器232は、ガス源110内のHeガスの温度を制御する。Heイオン源は、チップマニピュレータ208に添付されたチップ186を含む。イオン光学系130は、第1レンズ216、整列偏向器220及び222、開口224、非点収差補正器218、走査偏向器219並びに222、及び第2レンズ226を含む。開口224は、開口マウント234内に配置される。サンプル180は、第2真空ハウジング203内で、サンプルマニピュレータ140の中又は上に配置される。検出器150及び160も、第2真空ハウジング204内に配置され、サンプル180からの粒子194を検出するように構成されている。典型的には、ガス源110、チップマニピュレータ208、抽出器190、抑制器188、第1レンズ216、整列偏向器220及び222、開口マウント234、非点収差補正器218、走査偏向器219並びに222、サンプルマニピュレータ140、及び/又は、検出器150及び/又は160が、電子制御システム170によって制御される。付加的には、電子制御システム170は、真空ポンプ236並びに237も制御する。これらは、真空ハウジング202並びに204、及びイオン光学系130の内部を減圧状態にするように構成されている。
【0177】
B.イオン源
上述したように、概して、チップ186は、あらゆる導電性材料で形成されうる。ある実施形態においては、チップ186は、単一の結晶金属のような、単一の結晶材料によって形成されうる。典型的には、チップ端187の原子の末端棚における、特定の単一の結晶方向は、チップ186の長軸方向に対して3°以内(例えば、2°以内、1°以内)の方向に整列する。一部の実施形態においては、チップ186の先端187は、特定数の原子(例えば、20原子以下、15原子以下、10原子以下、9原子以下、6原子以下、3原子以下)を有する原子棚に相当する。例えば、チップ186の先端187は、W(III)によって形成され、3つの原子(トリマー)を持つ末端棚を有することができる。図13及び14は、それぞれ、Wで形成されたチップ186の2つの原子棚であって、チップ端に最も近い原子棚を概略的に示す、拡大上面図及び、拡大側面図である。トリマーとして配置された3つのW原子302を含む末端棚は、W(III)表面に相当する。特定の理論に縛られることを望むものではないが、このトリマー表面は(成形、再成形、及び安定性の面で)有利である。これは、W(III)結晶面の表面エネルギーは、好適には、トリマーを形成するように、正三角形に配置された3つのW原子により形成される末端棚を支持している。これらのトリマー原子302は、W原子304の第2棚によって支持される。
【0178】
一部の実施形態においては、チップ186は、3つ未満の原子又は3つ以上の原子を含む末端棚を有しうる。例えば、W(III)チップは、2つの原子を含む末端棚か、又は1だけの原子を含む末端棚を有しうる。或いは、W(III)チップは、4以上の原子(例えば、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、10以上、又は、それ以上の原子)を有しうる。代替的又は付加的には、他のW結晶方向に対応するチップ(例えば、W(112)、W(110)、又はW(100))を用いることも可能であり、このようなチップは、一つ又は複数の原子(例えば、2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、10以上、又は、それ以上の原子)を含む末端棚を有しうる。
【0179】
一部の実施形態においては、単結晶W以外の素材(例えば、上述下金属のうちの一つの単結晶のような、金属単結晶)により形成されるチップを、イオン源において用いることが可能であり、そのようなチップは、1又は複数の原子(例えば2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、10以上、又は、それ以上の原子)を含む末端棚を有しうる。
【0180】
以下に述べるように、チップ端187の形状はイオンビームの品質に影響しうる。イオンビームの品質は、顕微鏡システム200の性能に影響を及ぼしうる。例えば、横から見た場合、チップ端187は、長軸に対して左右対称に形成されるか、長軸に対して左右非対称に形成されうる。ある実施形態においては、1又は複数の側面から見ると、チップ端187は、その長軸に対して左右対称に形成されており、1又は複数の他の側面から見ると、チップ端187は、その長軸に対して左右非対称に形成されていてもよい。
【0181】
図15は、トリマーの末端原子棚を有するW(III)チップを作成するためのプロセス400を示すフローチャートである。第1ステップ402では、単結晶W(III)前駆体線が、サポートアセンブリに取り付けられる。第2ステップ404では、前駆体線からチップを成形するために、前駆体線が電気化学浴中でエッチングされる。そして、プロセス400のステップ406において、エッチングされたチップは検査され、適切な構造的特性を有しているか検証される。構造的特性の検証は、エッチングされたチップの輪郭線画像を取得し、その輪郭線画像から得られたデータに基づいて様々な構造パラメータを計算することによって行う。例えば、この検査はSEMを用いて実施される。
【0182】
その後、ステップ408において、エッチング済前駆体線のチップ端の末端棚はトリマーに形成される。このプロセスは、(例えば、FIM又はSFIMを用いた)チップのイメージング及び、(例えば、電界蒸発を用いた)チップの成形を含む。そして、プロセス400のステップ410において、チップ186の先端187をシステム200内に配置する。顕微鏡システム200内に支持アセンブリが設けられている状態において、顕微鏡システム200は1又は複数の真空ポンプにより真空とされ、そして、チップ187を熱することにより、例えば、酸素、凝縮物、及び/又は他のチップ表面に付着しうる不純物を除去する。典型的には、例えば、チップ186は、900K以上(例えば、1000K以上、1100K以上)まで、10秒以上(例えば、30秒以上、60秒以上)の間、熱せられる。不純物の存在によりチップ形状が劣化した場合に、熱せられることでチップ186は再度削ることができる。
【0183】
システム200内にチップ186が整列された状態において、Heイオンビームは、イオンビーム192の一部は開口224を通るように整列され、プロセス400のステップ412において、顕微鏡システム200はHeイオンモードで操作されうる。
【0184】
チップ186の完全性を検証するために、顕微鏡システムをFIM又はSFIMモードで動作させることにより、チップ186からの電界放出パターンを周期的に監視する。チップ端187におけるトリマー構造が無傷であれば、チップ186はイオンビーム192を顕微鏡システム200に供給するために継続して用いられる。しかし、ある状況下においては、チップ186をFIM又はSFIMでイメージングすることにより、チップ端187のトリマー構造が、既に無傷ではないことを確認することができる。この場合、チップ186は、先ず、電界蒸発されて、チップを丸め、ダメージを受けたトリマー構造を除去し、その場所において(例えば、顕微鏡システム200からチップ186を取り出すことなく)、上述したプロセスにより再度鋭角化する。チップを形成及び検査し、そして、チップを顕微鏡システム内において調整する方法は、例えば、既に組み込んだ、米国特許出願11/600,711(米国特許出願公開第2007/0158558号明細書)、「イオン源、システム及び方法」、ビリーW. Wardら、出願日2006年11月15日、において開示されている。
【0185】
図16を参照すると、顕微鏡システム200内におけるチップ186の調整は、チップ186の長軸207をイオン光学系130の長軸132と整列させることを含む。これにより、チップ186の先端187における、軸207と軸132との間の距離は、2mm以下(例えば、1mm以下、500μm以下、200μm以下)となる。一部の実施形態においては、チップ186の先端187における軸207と軸132との間の角度は2°以下(例えば、1°以下、0.5°以下、0.2°以下)である。
【0186】
抽出器190は、開口191を含む。概して、抽出器290の形状と、開口191の形状は、所望に選択できる。典型的には、これらの特徴は、Heイオンが、確実に、高効率且つ高信頼性でイオン光学系130に方向付けられるように選択される。一部の実施形態においては、図16に示すように、抽出器190は、チップ186よりも+z方向に更に配置される。ある実施形態においては、抽出器190は、チップ186よりも、更に−z方向に配置される。そのような実施形態においては、例えば、チップ186は、抽出器190から突出して、z軸に沿って、抽出器190よりも更に+z方向に延在するようになる。抽出器190は、図16に示すような特定の構造を有するが、一般的に、抽出器190は、どのように設計されていてもよい。例えば、一部の実施形態においては、開口191の側面は、どのような形状の曲面であってもよい。
【0187】
抽出器190は、チップ186に対して、正と負のいずれにバイアスされていてもよい。一部の実施形態においては、抽出器190に印加される電気ポテンシャルは、チップ186に対して、−10KV以上(例えば、−5kV以上、0KV以上)、及び/又は、20KV以下(例えば15kV以下、10KV以下)である。
【0188】
付加的には、抑制器188もチップ186の付近に存在する。抑制器188は、例えば、抑制器188に印加されたポテンシャルを調節することによりチップ186付近における電場分布を変更させるために用いられうる。抑制器188は、抽出器190と共に、チップ186において生成されるHeイオンの軌道を制御するために用いられる。ある実施形態においては、図16に示すように、抑制器188は、+z方向に沿ってチップ186よりも遠くに配置される。一部の実施形態においては、チップ186は、+z方向に沿って抑制器188よりも遠くに配置され、チップ186は、抑制器188を通って+z方向に延在する。
【0189】
概して、顕微鏡システム200は、ビーム192におけるイオンのエネルギーが抽出器190を通過した後に所望の値に選択されるように構成される。典型的には、イオン光学系130の入口開口133を通過後の、イオンビーム192に含まれるイオンの平均エネルギーは、5keV以上(例えば、10KeV以上、20KeV以上、30KeV以上)、及び/又は、100KeV以下(例えば、90KeV以下、80KeV以下、60KeV以下、50KeV以下、40KeV以下、30KeV以下)である。例えば、一部の実施形態においては、入口開口133を通過した後のイオンビーム192に含まれるイオンのエネルギーは、5keV〜100KeV(例えば、10KeV〜90KeV、20KeV〜80KeV)である。例えば、サンプルを透過したイオンを検出することが望ましい実施形態においては、より高いイオンエネルギー(例えば、50KeV〜100KeV)が用いられうる。
【0190】
更に、ある実施形態においては、イオンビーム192のイオンのエネルギーは、イオン電流を変更することなく、変更することができる。すなわち、チップ186に印加される電気ポテンシャルは、実質的にイオンビーム192からのイオンビーム電流を変更することなく、イオンビームの平均エネルギーを加減するために調整されうる。
【0191】
イオン光学系130は、概して、例えば、レンズ、偏向器、フィルタのような、1又は複数の素子を有し、これらの素子は、イオン源120から発せられるイオンビームを、イオンビームがサンプルにあたる前に、コリメート、フォーカス、偏向、及び成形するために用いられうる。
【0192】
例示的な次元において、電圧その他の顕微鏡システム200の様々な構成要素についての設定は、例えば、米国特許出願11/600,711(米国特許出願公開第2007/0158558号明細書)、「イオン源、システム及び方法」、ビリーW. Wardら、出願日2006年11月15日、において開示されている。この開示内容の全体を、参照として本願に組み込む。
【0193】
C.検出器
検出器150及び160を、図12に概略的に示す。検出器150は、サンプル180(この表面にイオンがあたる)の表面181からの粒子を検出するように配置され、検出器160は、サンプル180の表面183からの粒子を検出するように配置される。概して、顕微鏡システム200において、様々な粒子を検出するために多様な検出器を用いることができる。そして、顕微鏡システム200は、いくつの検出器を備えてもよい。上述の多様な検出器は、測定すべき粒子や測定条件に応じて選択することができる。一部の実施形態においては、スペクトル分解検出器を用いることができる。このような検出器は、異なるエネルギー及び/又は波長の粒子を検出し、そして、検出した各粒子のエネルギー及び/又は波長に応じて、粒子を分類(resolve)することができる。ある実施形態においては、スペクトル分解検出器は、粒子のエネルギー及び/又は波長に応じて、粒子を検出器中の異なる領域に移動させることができる構成素子を含んでいる。
【0194】
ある例示的な検出器及び偏向器の構成を以下に示す。検出システム及び方法は、例えば、既に言及した、米国特許出願11/600,711(米国特許出願公開第2007/0158558号明細書)、「イオン源、システム及び方法」、ビリーW. Wardら、出願日2006年11月15日、において開示されている。この開示内容の全体を、参照として本願に組み込む。
【0195】
(i)エバーハート−ソンリー検出器
エバーハート−ソンリー(ET)検出器を、二次電子、イオン、及び/又は中性粒子を検出するために用いることができる。図17は、ET検出器600を概略的に示す図である。ET検出器600は、粒子選択器601、変換材料602、サポート604、光子検出器606、及び電圧源607並びに608を備える。
【0196】
動作中、電圧源607は比較的小さい電圧(例えば、100〜500Vのような500V以下の電圧)を、(導電性材料によって形成される)粒子選択器601に印加する。電圧源608は、比較的大きい電圧(例えば、5kV以上、10KV以上)を変換材料602に印加する。ET検出器がサンプル180からの電子(例えば、二次電子)を検出するために用いられる実施形態においては、粒子選択器601及び変換材料602に対して印加される電圧の符号は、サンプル180に対しては正である。ET検出器がサンプル180からの電子(例えば、二次電子、後方散乱電子)を検出するために用いられる実施形態においては、粒子選択器601及び変換材料602に対して印加される電圧の符号は、サンプル180に対しては負である。ある実施形態においては、サンプル180にも(大地アースに対して)バイアスがかけられ、サンプル180から検出器600への粒子の供給を補助する。例えば、ET検出器がサンプル180からの二次電子を測定するために用いられる場合、サンプルは大地アースと比較して負のバイアスがかけられる。マニピュレータ140に負のポテンシャルバイアスをかけることは特に有益であり、例えば、高アスペクト比のホール部(例えば、深いホール部)又はサンプルのビア部を介して生成された二次電子を検出する場合に有益である。大地アースと比較して負のポテンシャルバイアスは、ホール部又はビア部から放出される電子の加速と、サンプルから遠ざかることとを補助し、電子の検出を容易にする。負のバイアスのない状態では、二次電子の多くは、ホール部又はビア部の壁部付近でサンプル内に再度入り、ホール部又はビア部から放出されず、検出されない。
【0197】
例えば、ET検出器をサンプルからのイオンを検出するために用いた場合、サンプル180には正のバイアスがかけられる。バイアスとしてかけられる電気ポテンシャルの大きさは、、5V以上(例えば、10V以上、15V以上、20V以上、30V以上、50V以上、100V以上)である。
【0198】
サンプル180からの荷電粒子610(例えば、電子又はイオン)は、粒子選択器601に引き付けられ、粒子選択器601を通過して、変換材料602に向かって加速される。そして、荷電粒子610は、変換材料602にあたり、光子612を生成する。光子612は、サポート604を通過して、光子検出器606によって検出される。
【0199】
ET検出器は、中性又は荷電粒子を検出するためには、サンプル180に対してどこに配置してもよい。典型的には、例えば、ET検出器は、イオン光学系130の第2レンズ226に隣接して配置される。選択的には、ET検出器は、サンプル180に向かって僅かに傾斜させて配置してもよい(例えば、図12に示した構成と同様の構成に配置してもよい)。
【0200】
ある実施形態においては、ET検出器をサンプル180の表面183の付近に配置することもできる。このような構成は、例えば、表面183から生じた、サンプル180の二次電子(例えば、サンプル180を透過した後の二次電子)を測定するために探索する場合に望ましい。この場合、ET検出器は、図12に示す検出器160の構成に類似する構成を有しうる。
【0201】
(ii)マイクロチャネルプレート検出器
一部の実施形態においては、マイクロチャネルプレート検出器は、サンプルからの二次電子のフラックス、中性原子、又はイオンを増幅させるために用いられる。マイクロチャネルプレートは、典型的には、融合シリカのような材料から形成され、アレー状に配置された、直径の小さい多くのチャネルを含む。各チャネルに入る粒子は、チャネル壁に衝突し、自由電子を生成する。典型的には、粒子(中性原子、イオン、又は、電子)が一回チャネル壁に衝突する度に、複数の自由電子が生成される。これにより、入力粒子信号の増幅に対応するカスケード電気信号がマイクロチャネルプレートから放出される。
【0202】
マイクロチャネルプレートベースの検出器(1又は複数のマイクロチャネルプレートを備える)は、イオン、二次電子、及び/又はサンプル180からの中性原子を検出するように構成されている。サンプル180から形成された中性粒子及び/又はイオンは(例えば、二次電子及び原子、散乱イオン及び一次原子)は、典型的には、サンプル180の表面181(イオンビームがあたった表面)から放出される。したがって、マイクロチャネルプレートベースの検出器は、サンプル180からの中性子及び/又はイオンを測定するように構成されており、一般的には、図8及び12に示した検出器150の位置と同じ位置に配置される。しかし、ある実施形態においては、中性粒子及び/又はイオン(例えば、透過イオン)を検査することもできる。このような実施形態においては、マイクロチャネルプレートベースの検出器は図8及び12に示す検出器160の位置と同じ位置に配置される。二次電子は、表面181(イオンビームがあたる表面)及び/又はサンプル180の表面183(イオンビームがあたる表面とは逆側の表面)の何れかから検出される。そして、マイクロチャネルプレートベースの検出器は、サンプル180からの二次電子を検出するように構成されており、図10及び14に示す検出器150及び/又は検出器160の位置と同じ位置に配置される。
【0203】
マイクロチャネルプレートは、入力粒子信号を増幅し、入力信号を出力電気信号に変換する。出力電気信号を可視化するために、マイクロチャネルプレートベースの検出器は、変換材料、スクリーン、及び光子検出器(上述参照)も備えうる。
【0204】
一部の実施形態においては、マイクロチャネルプレートは、イオン光学系130の構成要素に直接取り付けられる。図18は、静電レンズ226に直接マウントされたマイクロチャネルプレート検出器620の断面図である。レンズ226は、平坦な下表面622を有する円錐形状である。検出器620は、表面622に直接マウントされる。サンプル180がイオンビーム192に露光されるとき、サンプル180からのイオン、二次電子、及び/又は中性原子(矢印624で集合として示す)は、マイクロチャネルプレート検出器620によって検出されうる。検出器620は、検出された粒子フラックスに比例する電流を記録して、電子制御システム170に伝える。
【0205】
(iii)変換プレート
一部の実施形態において、変換プレートは、サンプル又は中性粒子(例えば、一次中性He原子)からのイオン(例えば、散乱イオン、二次イオン)の検出に用いられうる。典型的には、変換プレートは、入射イオン又は原子が当たった際の二次電子収率の高い薄箔材料により形成されうる。このような材料の一例としては、プラチナが挙げられる。この二次電子収率は、例えば、検出器150及び/又は160(図8及び12)として構成された適切な電子検出器により検出可能な二次電子の量を増加させることができる。
【0206】
(iv)チャンネルトロン検出器
チャンネルトロン検出器は、サンプルから放出される、電子、イオン及び中性原子のような粒子を検出するために用いられうる。チャンネルトロン検出器は、マイクロチャンネルプレート検出器に関して説明したものと同様の、複数の内部での衝突によって粒子信号を増幅することによって機能する。チャンネルトロン検出器から出力される増幅された粒子信号を、(例えば、電子制御システムを用いて)測定することによって、サンプル180からの、比較的弱い二次電子、イオン、又は中性原子フラックスを測定することが可能である。サンプル180からの二次電子を測定する場合、チャンネルトロン検出器は、図10及び14に示す検出器150及び/又は検出器160の位置と同じ位置に配置される。典型的には、サンプル180からのイオン及び/又は中性粒子の測定のために、チャンネルトロン検出器は、図8及び12に示した検出器150の位置及び/又は検出器160の位置と同じ位置に配置される。
【0207】
(v)りん光検出器
りん光ベースの検出器は、透過性基板の上に体積されたりん光材料の薄層を含み、CCDカメラ、PMT、又は1又は複数のダイオードのような光子検出器を用いて、サンプルからのイオン及び/又は中性粒子を検出することができるものである。りん光性層にあたる粒子は、光子検出器によって検出されたりん光性材料から放出された光子を含む。りん光ベースの検出器は、測定される粒子のタイプに応じて(上記参照)、図8及び12に示した検出器150の位置及び/又は検出器160の位置と同じ位置に配置される。
【0208】
(vi)半導体検出器
半導体検出器(SSD)は、サンプルからのイオン及び/又は中性粒子を検出するために用いられうる。半導体検出器は、シリコン又はドープされたシリコン材料によって形成されるセンサによって構成されうる。入射粒子がセンサにあたると、センサ材料内で電子ホールペアが生成され、電子制御システム170により検出されうる電流を供給する。入射粒子によって生成される電子ホールペアの数と、これらにより生成される電流の大きさは、ある程度粒子のエネルギーに依存する。したがって、半導体検出器は、粒子のエネルギー計測に特に有効であり、サンプル180からの高エネルギー粒子(例えば、散乱Heイオン及び中性He原子)を検出するにあたって特に有効である。
【0209】
(vii)シンチレータ検出器
りん光ベースの検出器と同様に、シンチレータベースの検出器は、入射粒子(電子、イオン、又は中性原子)の衝突により光子を生成するシンチレータ素材を含む。適当なシンチレータ素材は、例えば、YAG及びYAPである。シンチレータベースの検出器における光子収率は、入射粒子のエネルギーに依存する。よって、シンチレータ検出器は、粒子のエネルギー計測に有効であり、具体的には、サンプル180からの高エネルギー粒子(例えば、散乱Heイオン及び中性He原子)を検出するにあたって特に有効である。
【0210】
(viii)イオンのためのエネルギー検出器
サンプルからのイオン(例えば、散乱Heイオン)のエネルギー検出を実行するために、様々な検出器及び検出スキームを用いることができる。静電プリズム検出器は、電場及び/又は磁場を用いて入射イオンを偏向させ、それらのエネルギーに依存する偏向量を利用して、異なるエネルギーのイオンを空間的に分離することができる。磁気プリズム検出器も、イオンのエネルギーに基づいてイオンを空間的に分離するために利用することができる。上述した検出器(例えば、マイクロチャンネルプレート、チャンネルトン、その他)の何れかを用いて、偏向されたイオンを検出することができる。
【0211】
四極子検出器は、サンプルからのイオンのエネルギーを分析するためにも用いることができる。四極子検出器において、四極子内の無線周波数(RF)電場は、選択した質量及びエネルギーを有するイオンが、四極子内において、真直ぐな、偏向のない軌道に沿って確実に進むようにする。異なる質量及び/エネルギーのイオンは、四極子内で曲線軌道を進む。四極子分析器内におけるイオンの偏向位置から、イオンのエネルギーを検出することができる。
【0212】
一部の実施形態においては、イオンの飛行経路に沿い、且つ検出器の手前に配置した、正のバイアスをかけた粒子選択器(例えば、導電性材料のスクリーン或いは格子、又は円筒状金属管、又はリング)を配置することによってイオンエネルギーを判定できる。粒子選択器601に印加することが可能な電気ポテンシャルの大きさは、最初は非常に高くすることができ(例えば、サンプル180からのイオンが全く通過できないような値とする)、そして、イオンの検出に適切な検出器(上記参照)を使用している間は、この電気ポテンシャルを減少させることができる。粒子選択器にかけられるポテンシャルバイアスの大きさに応じて、検出器に到達するイオンの電流は、イオンのエネルギーに関する情報を判定するために用いることができる。
【0213】
(ix)電子のためのエネルギー検出器
サンプルからの電子(例えば、二次電子)のエネルギーを測定するために、様々な検出器及び検出スキームを実施することができる。プリズム検出器は、電場及び/又は磁場を用いて入射イオンを偏向させ、それらのエネルギーに依存する偏向量を利用して、異なるエネルギーのイオンを空間的に分離することができる。上述した検出器の何れかを用いて、偏向されたイオンを検出することができる。
【0214】
一部の実施形態においては、イオンの飛行経路に沿い、且つ検出器の手前に配置した、負のバイアスをかけた粒子選択器(例えば、導電性材料のスクリーン或いは格子、又は円筒状金属管、又はリング)を配置することによってイオンエネルギーを判定できる。粒子選択器における電気ポテンシャルの大きさは、最初は非常に高くすることができ(例えば、サンプル180からのイオンが全く通過できないような値とする)、そして、イオンの検出に適切な検出器(上記参照)を使用している間は、この電気ポテンシャルを減少させることができる。粒子選択器にかけられるポテンシャルバイアスの大きさに応じて、検出器に到達するイオンの電流は、イオンのエネルギーに関する情報を判定するために用いることができる。
【0215】
(x)飛行時間検出器
上述した検出器は、二次電子、イオン、中性原子の飛行時間を計測するようにも構成されうる。飛行時間検出を行うために、イオンビーム192をパルスモードで操作する。イオンビーム192は、例えば、1又は複数のビーム偏向器に印加される電気ポテンシャルを迅速に変更させることにより、パルスにすることができる。例えば、これらのポテンシャルを上昇させることで、イオン光学系130における通常の経路とは異ならせて、イオンビーム192を一時的に開口部224から遮ることができる。ポテンシャルを再度上昇させる前の短時間の間、偏向器のポテンシャルを通常の値に戻せば、Heイオンのパルスをサンプル180に供給することができる。
【0216】
同時に、検出器150及び160を電子制御システム170からのクロック信号に同期させることも可能である。このクロック信号は、偏向器に印加するポテンシャルの時間間隔の変化に基づくものである。よって、Heイオンのパルスの発射の間の時間間隔と、サンプル180からの粒子の検出について、正確に測定することができる。イオン光学系130内におけるHeイオンパルスの伝播時間に関して把握した情報から、サンプル180と検出器150及び/又は160との間において検出される粒子の飛行時間を決定することができる。
【0217】
(xi)角度依存計測
サンプルからの粒子の、相対的な存在量及びエネルギーを測定することに加えて、上述したような検出器を用いて角度依存散乱情報を取得することができる。典型的には、角度依存情報を取得するために、検出器はマウント(例えば、スイベルマウント)に取り付けられる。これにより、検出器をサンプル180についての立体角範囲全体で検出器を動かすことができる。ある立体角に対応する、サンプル180ついての所定方向における、粒子の存在量及び/又はエネルギー計測結果が記録される。検出器は、連続的に異なる立体角に配置され、測定された量の角度依存性を決定するために、繰り返し測定する。一部の実施形態においては、ピンホールのような制限された開口部を、散乱粒子の経路において検出器の手前に配置し、サンプル180からの粒子の計測を行う角度範囲を更に制限する。
【0218】
(xii)光子検出器
イオンとサンプル180との相互作用によって生成された光子を検出するために、PMTのような標準的な光子検出器を用いることができる。サンプル180から発せられる光子フラックスが十分に大きければ、ダイオード、ダイオードアレー及びCCDカメラのような、比較的低感度の光子検出器を用いることができる。
【0219】
一部の実施形態においては、光子検出器は、例えば、対象とする特定の光学信号を他の光学信号から独立させるために構成された、様々な光学素子も含みうる。例えば、ある実施形態においては、光子検出器は、サンプル180から発せられる光子信号における特定の波長帯を選択するためのフィルタのような光学素子を備えうる。このフィルタは、サンプル180についての材料の構成成分の情報を提供することができる。このフィルタは、例えば、不所望な波長の光子をブロックすることができる(例えば、不所望な波長の光子を吸着したり、不所望な波長の光子を屈折させたり、不所望な波長の光子を偏向させたりする)。一部の実施形態においては、(1又は複数のグレーチングのような回折素子、及び/又は1又は複数のプリズムのような屈折素子、及び/又は、光子の波長分解検出が可能な1又は複数のスペクトロメータシステムによって)異なる波長を空間的に分散させることにより、(サンプル180により生成された光子のスペクトルを測定するために)光学素子はスペクトル解像度を提供することができる。一部の実施形態においては、光子検出器は、波長板及び/又は偏光子のような偏光操作素子を含みうる。これらの偏光操作素子は、選択された偏光状態の光子のみをPMTに到達させるように構成され、例えば、サンプル180から生じた光子信号について、偏光選択的な検出を行うことを可能にする(これにより、例えば、サンプル180の結晶方向情報の決定が補助される)。一部の実施形態においては、光子検出器は、ミラー、レンズ、ビームスプリッター、その他入射イオンの方向を再度方向付け、操作するための光学素子も備えうる(例えば、検出された光子の立体角を大きくするためである)。
【0220】
一般的に、光子検出器は、サンプル180対してあらゆる角度及び距離の光子を検出するように配置されうる。例えば、ある実施形態においては、光子検出器は、表面181(イオンビーム192が入射する、サンプル180の表面)又は、表面183(イオンビーム192が入射する表面の反t内側に位置する、サンプル180の表面)から発せられた光子を検出するように配置されることも可能である。選択的には、表面181(イオンビームが入射する表面)、表面183(イオンビームが入射する表面の反対側の表面)、及び/又はサンプル180の他の表面から発せられた光子を検出するように、複数の光子検出器を用い、又は、構成することができる。
【0221】
[操作パラメータ]
イオンビーム192は、サンプル180の表面181上において比較的小さいスポットサイズを有しうる。例えば、一部の実施形態においては、イオンビーム192のサンプル180の表面181上におけるスポットサイズは、寸法が10nm以下(例えば、9nm以下、8nm以下、7nm以下、6nm以下、5nm以下、4nm以下、3nm以下、2nm以下、1nm以下)でありうる。ある実施形態においては、サンプル180の表面181におけるイオンビーム192のスポットサイズは、0.5nm以上(例えば、0.1nm以上、0.2nm以上、0.25nm以上、0.5nm以上、0.75nm以上、1nm以上、2nm以上、3nm以上)である。一部の実施形態においては、表面181上のイオンビーム192のスポットサイズは、寸法が、0.05nm〜10nm(例えば、0.1nm〜10nm、0.2nm〜10nm、0.25nm〜3nm、0.25nm〜nm、0.1nm〜0.5nm、0.1nm〜0.2nm)である。本明細書において使用したように、スポットサイズは図19A〜19Cを参照して、以下のように決定されうる。金で形成された島状部1700は、寸法が50nm〜2000nmであり、カーボン表面1710上に配置される。島状金は、例えば、カーボン表面への金蒸着により形成される。カーボンに蒸着された島状部を含む測定サンプルは、本願に示す測定に適しており、且つ、例えば、Structure Probe社(ペンシルバニア州、ウェストチェスター)から入手することができる。イオン顕微鏡を、イオンビーム192が島状金の表面と、島状金の片側上のカーボン表面の部分を走査するように操作する(矢印1730)。二次電子の強度をイオンビームの位置の関数として測定する(図19C)。漸近線1740及び1750は、カーボン及び金の平均総存在量に対応して算出(描画)され、漸近線1760及び1770の間の存在量の違いに関連する、垂線1760及び1770は、総存在量がそれぞれ25%及び75%の位置に対応して算出(描画)される。イオン顕微鏡200のスポットサイズは、垂線1760及び1770の間の距離である。
【0222】
概して、サンプル180の表面181におけるイオンビーム192の電流は、1nA又はそれ以下(例えば、100pA又はそれ以下、50pA又はそれ以下)、及び/又は、0.1fA又はそれ以上(例えば、1fA又はそれ以上、10fA又はそれ以上、50fA又はそれ以上、100fA又はそれ以上、1pA又はそれ以上、10pA又はそれ以上)である。例えば、一部の実施形態においては、サンプル180の表面181におけるイオンビーム192の電流は、0.1fA〜1nA(例えば、10fA〜100pA、100fA〜50pA)である。一部の実施形態においては、サンプルイメージングに当たって、比較的低いビーム電流を用いることが望ましい。例えば、いくつかの生物学的及び/又は薬学的用途においては、(例えば、サンプルに与えるダメージを低減するために、)サンプルイメージングにあたって低い電流を用いることが更に重要である。このような実施形態においては、1つの電流(例えば、10fA以上の電流)が気体電界イオン顕微鏡を使用するための準備に用いられ、これとは異なる大きさの電流(例えば、0・1fAのような、1fA以下の電流)が、サンプルイメージングに用いられうる。
【0223】
概して、イオンビーム192の、サンプル180の表面181におけるエネルギーの広がりは、5eV以下(例えば、5eV以下、3eV以下、2eV以下、1eV以下、0.5eV以下)である。一部の実施形態においては、イオンビーム192の、サンプル180の表面181におけるエネルギーの広がりは、0.1eV以上(0.2eV以上、0.3eV以上、0.4eV以上)である。例えば、イオンビーム192の、サンプル180の表面181におけるエネルギーの広がりは、0.1〜5eV(0.1〜3eV、0.1〜1eV)である。
【0224】
イオンビーム192は、サンプル180の表面181において比較的高い輝度を有する。例えば、イオンビーム192は、サンプル180の表面181において、輝度が1×109A/cm2sr(例えば、1×1010A/cm2sr以上、1×1011A/cm2sr以上)である。一部の実施形態においては、チップ186付近におけるガス圧力を上昇させるか、及び/又はチップ186の温度を低下させることによって、輝度を上昇させることができる。本明細書において参照したように、イオンビームの輝度は以下のように計測する。イオンビーム192におけるイオン軌道の分布のFWHMは、正味の電場が比較的小さく、イオン軌道が略直線に近い、抽出器190と第1レンズ216との間の空間領域においては、x、yの両方向について決定される。全体で100個のイオン軌道が、イオンビーム192におけるイオン軌道の分散からランダムに選択されたx、yの両方向のFWHM幅内に入る。100個のイオン軌道のそれぞれは、略直線であり、チップ端187に向かって突き出している。特定のポイントztにおける軌道のz軸に沿う空間的広がりは、x−y平面に平行であり、且つポイントztを通る平面Ztにおいて、後方に突き出す軌道と平面Ztとが交差するポイントの全てを含む最小の円を生成することによって評価できる。最小直径の円の直径はdsmである。典型的には、ポイントZtがチップ端187に近くなるほど、dsmは小さくなり、ポイントZtがサンプル180に近くなるほど、dsmは大きくなる。Zt=Z0のポイントにおいて、dsmは、最小値d0である。すなわち、x−y平面に平行な平面における軌道の空間的広がりは最小となる。ポイントZ0における、最小直径円の直径d0は、顕微鏡システム200の仮想のソースサイズとして示される。次いで、上述したように、抽出器190と第1レンズ216との間における、イオンビーム192のFWHM領域におけるイオンビーム192の発散及びビーム電流が測定される。最終的に、輝度は、ビーム電流を仮想源サイズ及び立体発散角で割ることによって算出される。
【0225】
イオンビーム192は、サンプル180の表面181において、比較的高い、還元輝度を有する。例えば、イオンビーム192の還元輝度は、サンプル180の表面181において、5×108A/cm2srV以上(例えば、1×109A/cm2srV以上、1×1010A/cm2srV以上)である。本明細書において述べたように、イオンビームの還元輝度は、イオンビームの輝度を、イオンビーム電流を測定した位置におけるイオンビームに含まれるイオンの平均エネルギーで割った値である。
【0226】
イオンビーム192は、抽出器190の遠位端193において比較的エタンデュ(etendue)が低い。例えば、抽出器190の遠位端193における、イオンビーム192のエタンデュは、5×10-21cm2sr以下(例えば、1×10-22cm2sr以下、1×10-23cm2sr以下、1×10-24cm2sr)である。本明細書において述べたように、イオンビームのエタンデュは、輝度の逆数と、ビーム電流の数学的結果として得られる。
【0227】
イオンビーム192は、抽出器190の遠位端193における還元エタンデュが比較的低い。例えば、例えば、抽出器190の遠位端193における、イオンビーム192の還元エタンデュは、1×10-16cm2sr以下(例えば、1×10-17cm2sr以下、1×10-18cm2sr以下、1×10-19cm2sr)である。イオンビームの還元エタンデュは、イオンビームのエタンデュと、ビーム電流を測定した位置におけるイオンビームに含まれるイオンのエネルギー対荷電の平均比率との数学的結果として得られる。
【0228】
イオンビーム192は、サンプル180の表面181に対して、比較的低い角度に集束する。例えば、一部の実施形態においては、イオンビーム192の集束半角は、5mrad以下(例えば、1mrad以下、0.5mrad以下、0.1mrad以下)、及び/又は0.05mrad以上でありうる。本明細書において述べたように、イオンビームの半角集束は以下のように決定される。上述したような、カーボン基板上の島状金を有するサンプルを、イオン顕微鏡200にマウントし、z方向に移動してイオンビーム192の焦点位置が可能な限り金島の直径方向における最高点の付近となるように配置する。イオンビーム192を、金島の直径に沿って直線的に移動し、上述したように、フォーカスされた状態のイオンビームのスポットサイズsfを測定する。そして、サンプルを、イオン光学系130から遠ざかるように、+z方向にsz=1μmだけ移動し、イオンビーム192を、同じ金島の直径に沿って直線的に移動し、フォーカスされていない状態のイオンビームのスポットサイズsdを測定する。集束角度ηは、フォーカスされたスポットサイズ並びにフォーカスされていないスポットサイズの測定と、移動距離と、に基づいて下式のように、三角関数を用いることで決定することができる。
【数12】
ここで、イオン顕微鏡200の集束半角は、η/2である。
【0229】
イオン顕微鏡200は、比較的解像度が良好である。例えば、一部の実施形態においては、イオン顕微鏡200の解像度は、10nm以下(例えば、9nm以下、8nm以下、7nm以下、6nm以下、5nm以下、4nm以下、3nm以下、2nm以下、1nm以下)でありうる。ある実施形態においては、イオン顕微鏡200の解像度は、0.05nm以上(例えば、0.1nm以上、0.2nm以上、0.25nm以上、0.5nm以上、0.75nm以上、1nm以上、2nm以上、3nm以上)である。一部の実施形態においては、イオン顕微鏡200の解像度は、0.05nm〜10nm(例えば、0.1nm〜10nm、0.2nm〜10nm、0.25nm〜3nm、0.25nm〜1nm、0.1nm〜10nm、0.1nm〜0.5nm、0.1nm〜0.2nm)である。以下で言及する、イオンビームの解像度とは、イオン顕微鏡を用いて得られる画像から高い信頼度で計測することができる最も小さい構造の大きさである。同一条件下で計測された10枚の画像において、計測誤差が実際の構造の大きさに対して10%以下であり、測定された大きさの標準偏差が、実際の構造の大きさの5%以下である場合に、その構造のサイズは高い信頼度で計測されたものとする。
【0230】
イオン顕微鏡200は、比較的短時間で高品質の画像を取得するために用いることができる。例えば、イオン顕微鏡200は、品質係数0.25以上(例えば、0.5以上、0.75以上、1以上、1.5以上、2以上)である。本明細書において述べたように、品質係数は以下のようにして算出される。半分がシリコン(Si)で、もう半分が銅(Cu)により形成され、これらの境界はサンプルを横切る直線であるような平面サンプルは、この境界がy軸に平行に成るように配置される。このサンプルは、x−y配列が512×512となるようにサンプル表面をサブ領域に分割して、画素毎にイメージングされる。測定中のピクセル毎の滞留時間は、100nsである。サンプルからの二次電子の総存在量は、サンプル表面おけるイオンビームの位置の関数として測定される。サンプル中のSiに対応する画素については、Si画素輝度の分布に基づく標準偏差SD1と、平均画素輝度G1とを決定する。サンプル中におけるCuに対応する画素については、平均画素輝度G2Cu画素輝度の分布に基づく標準偏差SD2と、平均画素輝度G2とを決定する。そして、下式により、品質係数が算出される。
【数13】
【0231】
イオンビーム192に露光されても、サンプル180の表面181は、比較的小さいダメージを受けるだけである。例えば、ダメージ試験によれば、サンプル180の表面181は、値25nm以下(例えば、20nm以下、15nm以下、10nm以下、5nm以下)でありうる。本明細書において述べたように、ダメージ試験は以下のようにして実施される。4平方μm視野を有する原子平坦シリコン(純度99.99%)サンプルを、サンプル上でのビーム電流が10pA、スポットサイズが10nm以下のイオンビーム電流を用いて、サンプル表面上で画素毎にラスタ走査させて、120秒間イメージングする。ラスタ化のために、4平方μm視野を512×512ピクセル配列に分割する。ダメージ試験の値は、ダメージ試験の実施により得られるシリコンサンプルのイメージングされた部分における最大のエッチング距離に相当する。
【0232】
イオン顕微鏡200は、比較的深いフォーカス深度を有する。例えば、一部の実施形態においては、イオン顕微鏡200のフォーカス深度は5nm以上(例えば、10nm以上、100nm以上、1μm以上)、及び/又は200μm以下(例えば、100μm以下、10μm以下)でありうる。一部の実施形態においては、イオン顕微鏡200のフォーカス深度は、200μm〜5nm(例えば、500μm〜5nm、1mm〜5nm)でありうる。ここで使用したように、イオンビームのフォーカス深度は、以下のようにして測定される。(Heイオンビームスポットサイズの測定に関連して上述したように、)カーボン基板上の島状金を有するサンプルを、Heイオン顕微鏡内に挿入し、Heイオンビームのスポットサイズを、上述の方法で測定する。z軸法クのサンプル位置を、対話的に調整して、最小のHeイオンビームスポットサイズとなるサンプル位置を決定する。このときのz軸における位置をzfと称する。Heイオンビームのzfにおけるスポットサイズは、ssfとして示す。そして、サンプルを、zfに対して−z方向に段階的に移動させる。連続的且つ段階的な移動の後に、Heイオンビームのスポットサイズ計測を(zfの決定のために用いたサンプル上の位置と同じ位置について)行う。サンプルの移動は、計測されたHeイオンビームスポットサイズが、2ssfになった時点で終了する。このときの、z軸方向におけるサンプルの位置は、zuとして示す。そして、サンプルを、zuに対して、ポイントzfを経由して、+z方向に段階的に移動させる。連続的且つ段階的な移動の後に、Heイオンビームのスポットサイズ計測を(zfの決定のために用いたサンプル上の位置と同じ位置について)行う。サンプルの移動は、計測されたHeイオンビームスポットサイズが、2ssfになった時点で終了する。このときの、z軸方向におけるサンプルの位置は、zlとして示す。Heイオン顕微鏡のフォーカス深度dfは、df=|zl−zu|により算出される。
【0233】
一部の実施形態においては、本明細書に示す気体電界イオン顕微鏡(例えば、Heイオン顕微鏡)は、例えば、二次電子収率、散乱イオン存在量、及び/又は角度及びエネルギー分解イオン検出を利用して、原子番号(z値)が非常に近いサンプル内の成分を区別するために用いることができる。例えば、ある実施形態においては、気体電界イオン顕微鏡は、原子番号(z値)が1異なる成分を区別するために用いられる。
【0234】
ある実施形態では、本願に開示したような気体電界イオン顕微鏡(例えば、Heイオン顕微鏡)が、例えば、二次電子収率、散乱イオン存在量、及び/又は角度及びエネルギー分解イオン検出を利用して、質量の非常に近いサンプル内の成分を区別するために用いられうる。ある実施形態においては、気体電界イオン顕微鏡は、1原子質量単位以下(例えば、0.9原子質量単位以下、0.8原子質量単位以下、0.7原子質量単位以下、0.6原子質量単位以下、0.5原子質量単位以下、0.4原子質量単位以下、0.3原子質量単位以下、0.2原子質量単位以下、0.1原子質量単位以下)だけ異なる成分を区別するために用いられうる。一部の実施形態においては、サンプルは、平均質量の異なる領域を有する素材(例えば、合金)により形成されうる。このような実施形態においては、ガスbイオン顕微鏡は、例えば、質量が1原子質量単位以下(例えば、0.9原子質量単位以下、0.8原子質量単位以下、0.7原子質量単位以下、0.6原子質量単位以下、0.5原子質量単位以下、0.4原子質量単位以下、0.3原子質量単位以下、0.2原子質量単位以下、0.1原子質量単位以下)だけ異なる成分を区別するために用いられうる。
【0235】
本願明細書に開示したようなシステム及び方法に関連する追加の走査パラメータは、たとえば、上述した、米国特許出願11/600,711(米国特許出願公開第2007/0158558号明細書)、「イオン源、システム及び方法」、ビリーW.Wardら、出願日2006年11月15日、において開示されている。
【0236】
コンピュータハードウェア及びソフトウェア
概して、上述した分析方法は、コンピュータハードウェア又はソフトウェアにおいて、或いはそれらの組み合わせにより実行されうる。この方法は、標準的なプログラミングテクニックを用いて、本明細書において開示した方法及び図面を参照することにより、コンピュータプログラムに実装可能である。プログラムコードが、入力データに適用され、本明細書に開示したような機能が実行され、出力情報が生成される。出力情報は、1つ又は複数の表示モニタの様な出力装置に適用される。各プログラムは、コンピュータと通信するためのハイレベル手続型言語又はオブジェクト指向言語において実装されうる。しかし、これらのプログラムは、必要に応じて、アセンブリ又はマシン言語においても実装されうる。どのような場合であっても、言語は、コンパイル又は翻訳された言語である。更には、プログラムは、この目的のための専用集積回路において実行することが可能である。
【0237】
このような各コンピュータプログラムは、好適には、一般的又は特定目的のプログラム制御可能なコンピュータによって読み出し可能な、記憶媒体又は装置(例えば、ROM又は磁気ディスケット)に記憶され、記憶媒体又は装置をコンピュータによって読み込んで上述の手順を実行する場合に、コンピュータを構成又は動作させる。このコンピュータプログラムは、プログラム実行中において、キャッシュ又はメインメモリに記憶されうる。分析方法は、コンピュータプログラムの記憶されたコンピュータ可読記憶媒体としても実装可能である。この記憶媒体は、コンピュータを特定且つ予め定められた方法で本明細書に記載したような機能を実行するように動作させるように構成されている。
【0238】
[変形例]
イオンビームを用いる実施形態について記載してきたが、更に一般的には、あらゆる適切に荷電された粒子ビームを利用することができる。例えば、電子ビームを用いることができる。一部の実施形態においては、電子ビームは走査電子顕微鏡を用いて生成することができる。電子ビームを利用する場合は、本明細書に示した走査プロトコルは、電子ビーに露光することによるサンプルダメージ及び/又は荷電の低減を含む、同様の利点を有する。電子ビーム源及び走査電子顕微鏡システムは、例えば、米国特許第7,186,976号明細書、「走査電子顕微鏡」、米国特許第7,105,814号明細書、「電子顕微鏡システム及び電子顕微鏡方法」、米国特許第7,285,780号明細書、「走査電子顕微鏡のための検出システム及び該検出システムを含む走査電子顕微鏡」、及び、米国特許第6,855,938号明細書、「電子顕微鏡システムの対物レンズ及び電子顕微鏡システム」に開示される。これらの米国特許の開示内容は、参照により本明細書に組み入れられる。他の実施形態は、請求の範囲に記載する。
【技術分野】
【0001】
この出願は、荷電粒子源、システム及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、液体金属イオン源、又は気体電界イオン源からイオンは形成される。いくつかの例においては、イオン源により形成されたイオンは、イオンビームに露光したサンプルにおける、特定の特性を判定することや、サンプルを加工するために用いられ得る。他の例においては、イオン源により形成されたイオンは、イオン源自体の特定の特性を判定するために用いられ得る。
【発明の概要】
【0003】
概して、本発明の第1の観点に係る発明は、直接連続(direct succession)して、サンプル表面の各部分を荷電粒子ビームに露光させるステップを含み、前記サンプル表面の前記各部分は、第1の方向に列を形成し、前記荷電粒子ビームが前記サンプル表面において平均スポットサイズfを有し、前記各部分は、それぞれ隣接部分から、前記第1方向に少なくとも距離dだけ離れており、比率d/fは2以上であることを特徴とする方法である。
【0004】
概して、本発明の他の観点に係る発明は、サンプルを、該サンプルの表面における平均スポットサイズfを有する荷電粒子ビームに対して露光させるステップを含み、該ステップは、前記荷電粒子ビームが前記サンプルの前記表面上において複数の露光列を形成するように、前記荷電粒子ビーム及び前記サンプルを相対的に移動させることを特徴とし、前記連続する露光列のそれぞれは、複数の露光スポットを有し、且つ、前の露光列から第1方向に少なくとも距離dだけ離れており、且つ、比率d/fは2以上であり、前記サンプル及び前記荷電粒子ビームは、ガス圧が10-2Torr以下の共通のチャンバ内に配置され、且つ、前記サンプルから放出される複数の粒子が、前記共通のチャンバ内に配置された検出器によって検出されることを特徴とする方法である。
【0005】
概して、本発明の更に他の観点に係る発明は、サンプルの領域を包含する最小の正方形の辺長
【数1】
(Aは前記領域の面積、Fは定数)
を決定するステップと、前記サンプルの前記領域のM個の部分のそれぞれを、荷電粒子ビームに露光させるステップであって、前記M個の部分のそれぞれは、前記荷電粒子ビームに対して、期間t1の間、連続的に露光され、前記M個の部分のいずれか一つを、前記荷電粒子ビームに対して、連続的に露光させる間の最短期間は、t2であり、期間t1及びt2は、比率t1/(t1+t2)が、
【数2】
以下となるように選択されることを特徴とするステップと、
を含む方法である。
【0006】
実施形態には、以下に示す特徴のうちの1つ又は複数が含まれうる。
【0007】
上述の方法は、直接連続して、サンプル表面の複数の第2部分を荷電粒子ビームに露光させるステップを含み、前記複数の第2部分のうちの各部分は、それぞれ、前記第1方向に少なくとも距離dだけ、前記複数の第2部分のうちの隣接する部分から離れており、前記第1方向に直交する第2方向に、少なくとも距離eだけ前記第1部分から離れている、ことを特徴としうる。
【0008】
前記サンプル及び前記荷電粒子ビームは、ガス圧力が10-2Torr未満の共通のチャンバ内に配置され、前記サンプルから放出される複数の粒子が、前記共通のチャンバ内に配置された検出器によって検出されうる。
【0009】
前記サンプルは、サンプルマウント上に配置されており、前記サンプルマウントは、前記荷電粒子ビームの入射方向に直交する平面内において、前記サンプルが移動できるようにし、前記サンプルマウントは、前記サンプルを別のサンプルに交換できるように構成されている、ことを特徴としうる。
【0010】
前記サンプルは、サンプルマウント上に配置されており、前記サンプルマウントは、前記サンプルと、前記サンプルに入射すべき前記荷電粒子ビームを方向づける荷電粒子レンズシステムのレンズと、の間の距離を調整できるように構成されていることを特徴としうる。
【0011】
比率e/fは2以上(例えば、3以上、4以上、5以上、7以上、10以上、20以上、30以上、50以上、70以上、100以上)でありうる。、前記eは、前記d以上でありうる。
【0012】
上述の方法は、前記サンプルから放出される複数の粒子に基づいて、前記サンプルの画像を形成するステップを含みうる。上述の方法は、電子表示部上において、システム操作者に対して前記サンプルの画像を表示するステップを含みうる。
【0013】
上述の方法は、前記サンプルを前記荷電粒子ビームに露光する前に、前記サンプルを電子源に露光するステップを含みうる。代替的又は付加的には、上述の方法は、前記サンプルを前記荷電粒子ビームに露光している間に、前記サンプルを電子源に露光させるステップを含みうる。
【0014】
前記荷電粒子ビームの荷電粒子電流は、10pA以上(例えば、20pA以上、30pA以上、40pA以上、50pA以上、70pA以上、100pA以上、150pA以上、200pA以上、500pA以上)でありうる。
【0015】
前記各部分は、100μ秒以下(例えば、80μ秒以下、60μ秒以下、40μ秒以下、30μ秒以下、20μ秒以下、10μ秒以下、5μ秒以下、1μ秒以下、0.5μ秒以下、0.1μ秒以下)の露光時間の間、前記荷電粒子ビームに対して露光されうる。
【0016】
前記荷電粒子ビームの荷電粒子電流は、1pA以上であり、前記各部分は、100μ秒以下の露光時間の間、前記荷電粒子ビームに対して露光され、前記画像は、全取得時間100秒以下で形成されうる。
【0017】
前記荷電粒子ビームは、希ガスイオンを含みうる。前記希ガスイオンは、ヘリウムイオンを含みうる。
【0018】
前記荷電粒子ビームは、電子を含みうる。
【0019】
前記fは、5nm以下(例えば、4nm以下、3nm以下、2nm以下、1nm以下、0.5nm以下、)でありうる。
【0020】
前記dは、10nm以上(例えば、20nm以上、30nm以上、40nm以上、50nm以上、70nm以上、100nm以上、200nm以上、300nm以上、500nm以上)でありうる。
【0021】
eは、10nm以上(例えば、20nm以上、30nm以上、40nm以上、50nm以上、70nm以上、100nm以上、200nm以上、300nm以上、500nm以上)でありうる。
【0022】
前記荷電粒子ビームは、前記サンプルの前記表面において、エネルギーの広がりが5eV以下(例えば、4eV以下、3eV以下、2eV以下、1eV以下、0.5eV以下、0.1eV以下)でありうる。
【0023】
前記画像の解像度は、3nm以下(例えば、2nm以下、1nm以下、0.5nm以下、0.25nm以下、0.1nm以下)でありうる。
【0024】
前記複数の粒子は、二次電子を含みうる。前記複数の粒子は、散乱イオン及び散乱中性原子からなる群の要素の少なくとも一つを含みうる。前記複数の粒子は、光子を含みうる。
【0025】
前記荷電粒子は、品質係数0.25以上(例えば、品質係数0.5以上、品質係数1以上、品質係数2以上、品質係数3以上、品質係数5以上、品質係数10以上)の気体電界イオン顕微鏡によって生成されうる。
【0026】
前記各部分は複数の画素を含みうる。
【0027】
上述の方法は、前記荷電粒子ビームに露光中に、前記サンプルを熱するステップを含みうる。
【0028】
前記荷電粒子ビームは、前記サンプルの前記表面における還元輝度が5×108A/m2srV以上(例えば、1×109A/m2srV以上、1×1010A/m2srV以上)でありうる。
【0029】
前記露光列は、前記第1方向に直交する第2方向に沿って延在しうる。
【0030】
前記比率d/fは10以上でありうる。
【0031】
前記荷電粒子ビームは、前記露光列のそれぞれに対応する前記サンプルの領域を露光させるにあたって、前記領域のいずれかをより多くの回数露光させる前に、前記領域を同じ回数だけ露光させうる。
【0032】
前記荷電粒子ビームは、前記サンプルの領域を露光させるにあたって、前記露光列の第1のサブセットに対応する前記サンプルの領域を露光させて、第1画像フレームを形成し、そして、前記露光列の第2のサブセットに対応する前記サンプルの領域を露光させて、第2画像フレームを形成し、そして、前記画像は、前記第1及び第2画像フレームを結合することによって形成されうる。
【0033】
前記露光列のそれぞれは、前記第1方向における平均厚さgを有し、比率d/gが2以上(例えば、3以上、4以上、5以上、7以上、10以上、20以上、50以上、100以上)でありうる。
【0034】
前記荷電粒子ビームは、最初に、各前記露光列の第1部分に対応する前記サンプルの領域を露光させ、そして、各前記露光列の第2部分に対応する前記サンプルの領域を露光させうる。
【0035】
前記比率t1/(t1+t2)は、
以下でありうる。
【0036】
前記最小の正方形の前記辺長を決定するステップは、前記領域の最大の大きさを決定するステップを含みうる。
【0037】
上述の方法は、直接連続して、前記M個の部分のうちの第1の複数部分を荷電粒子ビームに露光させるステップを含み、前記第1の複数部分は、第1方向に列を形成し、前記荷電粒子ビームが前記サンプル表面において平均スポットサイズfを有し、前記第1の複数部分は、それぞれ隣接部分から、第1方向に少なくとも距離dだけ離れており、比率d/fは2以上であることを特徴としうる。
【0038】
上述の方法は、直接連続して、前記M個の部分のうちの第2の複数部分を荷電粒子ビームに露光させるステップを含み、前記第2の複数部分は、前記第1方向において、前記第1の複数部分により形成される前記列に平行な列を形成し、前記第2の複数部分のうちの各部分は、それぞれ、前記第1方向に少なくとも距離dだけ、前記第2の複数部分のうちの隣接する部分から離れており、前記第1方向に直交する第2方向に、少なくとも距離eだけ前記第1の複数部分から離れている、ことを特徴としうる。
【0039】
前記eは、前記dよりも大きくてもよい。
【0040】
前記fは5nm以下であり、前記dは10nm以上、前記eは10nm以上でありうる。
【0041】
実施形態は、以下の有利な効果のうちの1又は複数を含みうる。
【0042】
一部の実施形態においては、サンプルをイオンビームに露光させるにあたって、比較的高いイオンビーム電流を使用することができる。サンプルの部分がイオンビームに比較的低頻度に露光されるような走査プロトコルを実施することによって、イオンビームが同じ場所を再度照射する前に、注入された粒子は露光された部分から拡散しうる。その結果、比較的高いイオンビーム電流は、サンプル内における注入イオンの飽和の原因とはならない。高いイオンビーム電流を使用することで、低いイオンビーム電流を使用した場合よりも、比較的良好なサンプル画像を取得することができる。これは、高いイオンビーム電流を用いた場合に得られる画像における信号ノイズ比が比較的高いからである。
【0043】
一部の実施形態においては、サンプルをイオンビームに露光させる際に、一部分あたりの露光時間をより長くすることができる。サンプルの部分がイオンビームに比較的低頻度に露光されるような走査プロトコルを実施することによって、イオンビームが同じ場所を再度照射する前に、注入された粒子は露光された部分から拡散しうる。よって、比較的長い露光時間は、注入粒子の飽和の原因とはならない。露光時間が比較的長ければ、測定信号における信号ノイズ比が比較的高いので、比較的高品質のサンプル画像を取得することができる。
【0044】
一部の実施形態においては、サンプルを適切に選択された走査プロトコルにおけるイオンビームに露光すれば、サンプルの荷電は低減される。特に、イオンビームによりサンプル(例えば、サンプル表面)が過剰に荷電した場合、電荷シンクに過剰な電荷を逃がすことで、サンプルを絶縁して、過剰な荷電を消滅させる。サンプルの部分がイオンビームに比較的低頻度に露光されるような走査プロトコルを使用することで、イオンビームが同じ場所を再度照射する前に、注入された粒子は露光された部分から拡散しうる。過剰な電荷は、入射イオンとサンプルとの間における変則的な相互作用により生じるイメージング誤差の原因となりうる。よって、適切な走査プロトコルを実施することで、イオンビームへのサンプルの露光により取得される画像の品質を改善することができる。
【0045】
一部の実施形態においては、適切な走査プロトコルは、サンプルに関する大まかな情報を迅速に取得することができ、より詳細な情報を、少し遅れて取得することができる。例えば、「チェッカーボード」パターンの走査プロトコルは、大きく離間した露光スポットにおいてサンプルをイオンビームに露光させることで、サンプルの低解像度画像を迅速に取得するために用いられる。大まかな情報(例えば、大まかな表面構造の特定)は、イオンビームに対してサンプルを一度露光させることで得られる。この情報は、サンプルに関する特定の特徴を調べるために用いられ、例えば、より高解像度に、イオンビームに対してサンプルを露光させる前に行われる。サンプルについての、低解像度の初期的な露光と、より高解像度の露光は、高解像度の露光のみを実施する場合に比べて、非常に迅速にサンプルのイメージングを行うことを可能にする。
【0046】
上述の実施形態のうちの1又は複数につき、添付の図面を参照して以下に詳述する。他の特徴及び有利な効果は、以下の記載、図面、及び特許請求の範囲により明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】サンプル内への粒子注入を示す概略断面図である。
【図2】イオンビームについての走査手順を示す概略図である。
【図3】図2に示した操作手順についての他の概略図である。
【図4】フラッドガンを含む気体電界イオン顕微鏡の部分概略図である。
【図5】表面下荷電層を含むサンプルの概略図である。
【図6】イオンビームについてのバンド走査手順を示す概略図である。
【図7A】サンプル内の各部分の露光状態の決定方法を示す概略図である。
【図7B】サンプルの多様な露光プロトコルを対比説明する概略図である。
【図8】イオン顕微鏡システムの概略図である。
【図9】気体電界イオン源の概略図である。
【図10】一実施の形態に係るチップ先端を概略的に示す拡大側面図である。
【図11】図10に示すチップ先端を概略的に示す拡大側面図である。
【図12】ヘリウムイオン顕微鏡システムの概略図である。
【図13】一実施の形態に係るW(III)チップを概略的に示す拡大上面図である。
【図14】図13に示すW(III)チップ先端を概略的に示す拡大側面図である。
【図15】チップを作成する一実施の形態を示すフローチャートである。
【図16】気体電界イオン源及びイオン光学系の一実施の形態を示す概略図である。
【図17】エバーハート−ソンリー(Evehart−Thornley)検出器の概略図である。
【図18】マイクロチャネルプレート検出器を備える気体電界イオン顕微鏡の部分断面図である。
【図19A】カーボン表面により支持される島状金の側面図である。
【図19B】カーボン表面により支持される島状金の上面図である。
【図19C】図19A及び図19Bに示すサンプルに対するイオンビームの位置に対する関数として、二次電子の平均存在量をプロットした図である。同一の参照符号は他の図面と同様の要素を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0048】
イオンビームは、サンプルイメージングや加工のためのサンプルの露光を含む、多様な用途に用いることができる。典型的には、サンプルイメージングは、イオンビームがサンプル表面に入射するように方向付けるステップと、そして、入射したイオンビームが反射してサンプルから放出される粒子を検出するステップとを含む。具体的には、イオンビームによってサンプル表面を走査して粒子を生成し、検出した粒子に対応する信号を測定して、入射したイオンビームの位置に対応させて、サンプルの画像を形成させる。
【0049】
走査型イオン顕微鏡システムにおいて、入射するイオンビームによるイオンスパッタリングに起因して、イメージング技術の達成可能な空間分解能が制限されるおそれがある。イオンスパッタリングに起因するダメージの程度は、概して、イオンビームのフルエンスと関連性がある(例えば、単位面積当たりに入射する粒子の個数)。高解像度のサンプル画像を測定するためには、許容可能な信号ノイズ比において粒子を検出するために、十分な量の入射イオンが必要である。イオンビーム電流が減少した場合には、時間経過に応じたイオンスパッタリングに起因するサンプルダメージは抑えられる。しかし、使用に耐えうる程度のノイズのサンプル画像を得るためには、撮像時間(及びサンプル上の照射箇所のそれぞれについての露光時間)が増加するおそれがある。サンプルは、撮像時間が長くなることにより生じる蓄積ダメージの影響を受けるおそれがある。
【0050】
一例には、ガリウムイオンビームがサンプルの機械加工に一般的に用いられる。質量が比較的大きいことに起因して、ガリウムイオンは多くのサンプルに対するスパッタ率が大きい。ガリウムイオンビームにより典型的な半導体サンプルを露光して形成した像において、最小解像幅は、約5nm程度である。これは、ガリウムイオンビームは、入射点においてタイトにフォーカスした場合には、サンプルの表面を削る傾向があるためである。
ヘリウムイオンのような比較的軽いイオンをベースとするイオンビームは、概して、ガリウムイオンビームよりも低いスパッタ率を有する。よって、ヘリウムイオンビームに露光することによるサンプルダメージ量は、同じビーム電流のガリウムイオンビームによって生じるダメージ量よりも少ない。ヘリウムイオンビームへの露光により形成した像における最小解像幅は、5nm未満とすることが可能であり、時には、5nmを大きく下回らせることも可能である。
【0051】
よって、イオンビームがヘリウムイオンビーム又は比較的軽いイオンにより形成される類似のイオンビームである場合、サンプルのイオンスパッタリングはサンプルイメージング中における大きな問題とはならない。しかし、本願発明者らは、サンプルにダメージを与え、画質を劣化させる原因は、イオンスパッタリングのみに留まらず、入射イオンエネルギー及びサンプルの材質、サンプルに形成されうる表面下ヘリウム気泡、及びサンプルが崩壊しはじめることに起因することを見出した。
【0052】
入射イオンビームに起因して、サンプル荷電も生じうる。入射イオンは二次荷電粒子(例えば、電子及び/又はイオン)を生成しうる。いくつかの入射イオンは中性子としてではなく、むしろイオンとしてサンプル中に注入される。その結果、サンプル中、特にサンプルの表面及び隣接領域においてにおいて過剰な電荷が生じうる。サンプル(例えば、金属製のサンプル)が比較的高い導電性を有する場合、過剰な電荷は比較的早期に減少してシンク(例えば、電気接地)となる。しかし、サンプルを絶縁するために、イオンビームが入射するサンプル表面近傍に電荷を蓄積させる傾向がある。サンプル表面の近傍は、過剰な電荷を接地又は隣接する絶縁サンプル領域に導電させるために十分な程度まで、表面電圧を上昇させる表面静電容量を生成する。蓄積表面電荷は、サンプル表面における電場を生成する。これらの局所的な電場は、(例えば、入射イオンビームを偏向させることにより)入射イオン及びサンプル表面間の相互作用を生じさせ、また、サンプル中において二次粒子を生成させる。よって、二次粒子を測定することにより取得したサンプル画像は劣化しうる。
【0053】
さらに、本願の発明者らは、イオン注入及び/又は蓄積電荷を含む、イオンビーム及びサンプルの相互作用に起因するダメージ作用は、ビームのフルエンス(例えば、単位面積当たりに入射する粒子の個数)の関数として変化するだけではなく、率に依存することを見出した。すなわち、入射イオンによるサンプルの露光を比較的低速に行うことで、イオンビームへの露光を高速に行った場合に比較して、サンプルダメージを低減することができる。
【0054】
特定の理論に縛られることを望むものではないが、上記について考えられる理由は、粒子注入の可逆性と、サンプルにダメージを及ぼしうる蓄積電荷と、に関連する。例えば、サンプル内に注入された粒子は、サンプルの外に拡散し、サンプルを元の注入の無い内部構造状態に戻しうる。注入粒子の拡散は比較的ゆっくりと行われ、そして、イオンビームによる所定のサンプル部分の連続的な露光の間の比較的長時間のインターバルを含む走査方法は、露光の合間に注入粒子をサンプル外に拡散させ、注入による影響の一部を元の状態に戻す。
【0055】
他の例としては、絶縁サンプルにおける過剰電荷は、サンプル面の露光部分から過剰電荷の少ない(又は過剰電荷のない)他の部分への拡散によって消費される。よって、サンプルを絶縁させるために、サンプルの所定部分をイオンビームに連続的に露光する間に比較的長いインターバルを含む走査方法により過剰電荷を消費することができる。さらには、これにより、サンプルの荷電に起因して生じる画質の劣化を緩和することができる。
【0056】
サンプルダメージ及び画質の劣化を回避するために、本願において開示する操作方法は、一回の照射中に、サンプルの同一箇所を過剰に長時間にわたってイオンビームに露光しないようにすることを確実にする。反対に、特定部分について比較的長時間の総露光時間が必要な場合、イオンビームは、その特定部分を複数回にわたって、短時間の照射を連続的に行う。サンプルの各露光箇所における、イオンビームへの露光時間は、各画素の撮像が、単一の露光時間とほぼ同じ総露光時間で行われるように、変更することができる。しかし、入射イオンビーム電流はサンプルのより大きい領域に拡散している。また、本願において開示する走査手法は、サンプルの特定部分をイオンビームに連続的に露光する合間に、十分な時間が経過することにより、露光部分から粒子が拡散できるようにし、電荷を消失させることにより、イオンビームに露光する合間に、局所的な電場を低減する。
【0057】
また、本願において開示する走査方法は、イオンビームが、一つ又は複数の化学薬品を吸着したサンプルの表面領域と相互作用する際に用いることができる。表面に吸着された化学薬品はイオンビームにより生じた二次電子と相互作用し、サンプル中において一つ又は複数の化学反応を誘発する。これらの反応は、サンプルの被制御構造成形に用いられうる。吸着された化学薬品は、反応により消費されるので、例えば、薬品をサンプル表面に追加するために、イオンビーム近傍に配置されたガスノズルから補充される。ガスノズルの位置は、イオンビームの位置が変わると共に変更される(例えば、サンプル表面を横断する通常のパターンでは、ガスノズルはイオンビームに後続する)。
【0058】
ガスノズルによって供給された活性化状態の化学薬品は、概して、サンプル表面に吸着される。イオンビームが、単純な列ごと(ライン−バイ−ライン)のラスタパターンでサンプル表面を走査する場合、イオンビームは、既に照射された、隣接位置(例えば、ビームスポット)におけるイオンビームとの相互作用により、吸着された化学薬品が既に消費されている、サンプル表面の部分(例えば、イオンビームスポット)を常に探索(interrogate)する。しかし、イオンビームが本願において開示した走査方法に従って走査される場合、連続的なビームスポットは、従来のラスタスキャン方法よりも大きく離間することになる。この結果、サンプル表面上のイオンビームの位置のそれぞれにおいて、吸着された化学薬品は、イオンビームにより生成された二次電子と未だ相互作用しないか、或いは、吸着された化学薬品はイオンビームにより生成された二次電子との間の既に行われた相互作用の後に補給される。したがって、サンプルにおける、イオンビームが誘起する反応の効率は、概して、本願に開示した走査方法でサンプル表面をイオンビームで走査することにより促進され、連続的に、サンプルの何れかの領域を露光する間のインターバルは比較的長くなる。
【0059】
一部のサンプルは、サンプル表面おいて不所望に吸着された化学薬品も含んでいる。これらの化学薬品は、サンプルにおけるイオンビーム誘起化学反応の副産物であり、例えば、様々は炭化水素類を含みうる。本願に開示した走査方法に従って、イオンビームによりサンプル表面上を走査することにより、これらの不必要な化学薬品による汚染の影響を抑制することができる。
【0060】
本発明に係る開示は、2つの側面からなる。先ず、第1の側面においては、イオンビームの走査方法を開示する。第2の側面においては、イオンビームを生成及び走査するためのイオンビームシステムを開示する。
【0061】
I.イオンビーム走査方法について
準備実験(study)において、島状金(gold island)を形成したカーボン基板を含むサンプルをヘリウムイオンビームに露光する。図19Aは、カーボン表面1710上の島状部1700を概略的に示す図である。島状金は、例えば、カーボン表面への金蒸着によって形成することができる。カーボンに蒸着された島状部を含む測定サンプルは、本願に示す測定に適しており、且つ、例えば、Structure Probe社(ペンシルバニア州、ウェストチェスター)から入手することができる。
【0062】
Heイオン顕微鏡を、イオンビーム192が島状金の表面を走査するように操作し、入射イオンビームから生じ、サンプル表面から遠ざかる二次電子を検出して、サンプルイメージを取得する。サンプルの被走査領域は、1ミクロンの辺長を有する正方形であり、500×500ピクセルの配列を含む。ヘリウムイオンのビームエネルギーは25keVであり、ヘリウムイオンビーム電流は1pAである。イオンビームによって形成されたサンプル上の各露光スポットは、一つの撮像画素に対応し、且つ、各スポットについての露光時間は100μ秒であった。サンプル領域についての総露光時間は25秒であった。比較的ノイズの少ないサンプルイメージが取得でき、像取得によりサンプルへのダメージは生じなかった。
【0063】
2つ目の実験では、サンプル上の走査領域を辺長100nmの矩形領域に縮小し、イオンビーム電流は1pAに維持した。この状態において、イオンビームのフルエンスは25倍に上昇した。サンプル画像上で、約100nmの厚さの島状金は完全にカーボン基板に至るまで除去(removed down)されている。発明者らは、イオンビーム電流が比較的低く、且つヘリウムイオンのスパッタ率が比較的低いため、イオンスパッタリングがサンプルへのダメージについての主たる原因とはならないということを見出した。更に、その後の研究において、第1のサンプルと同様の第2のサンプルの連続したイメージの測定を、矩形走査領域は辺長1μm、イオンビーム電流は1pAという条件下で行った。100回の連続したサンプル走査について、イメージ測定を行った。このような条件下では、イオンビームのフルエンスは100倍に増加したが、しかし、取得したイメージからはサンプルへのダメージは明示されなかった。
【0064】
特定の理論に縛られることを望むものではないが、ヘリウムイオンビームが25keVで金サンプルに入射する場合に、ヘリウムイオンの多くは、サンプル表面のイオンビームが入射する領域から約50nm〜約100nm下に注入される。図1は、上述したように、金により形成されるサンプル180の概略断面図である。イオンビーム192は、サンプル180の表面181に入射する。イオンビーム192からのイオンは、サンプル180の領域3010に注入され、表面181の下約50nm〜100nmの深さに到達する。図1に示すように、領域3010の幅dvは、上述の露光条件においては約20nmである。
【0065】
注入イオンは、領域3010において、サンプル180の領域3020を経て表面181へと達することで拡散する。表面181からは、イオンはガス抜けによりサンプルから除去される。本願において開示したイオンビームにサンプルを露光するにあたって、数値的ガイドラインを得るために、20nm×20nmの断面領域(例えば、サンプル180の表面181に平行な平面における、領域3010の略断面領域)及び高さ50nm(表面180下の領域3020の深さ)を有する、サンプルの相互作用領域3030において計算を行った。
【0066】
金により形成されるサンプル180は、以下を含む。
【数3】
相互作用領域3030における金原子であって、ρAuは、金のバルク密度であり、av=50nmは領域3030の高さであり、mAuは金原子の質量である。室温において、ヘリウムはモル濃度にして約0.5%まで可溶である。よって、Mb≒6000を上回る濃度のヘリウム粒子(例えば、原子及び/又はイオン)が領域3030に存在する場合、この領域においてヘリウム泡が生成され始める。核融合炉のシミュレーションから知られている、材料中におけるヘリウムイオンフルエンスの崩壊臨界値は、Fc≒1020粒子/m-2であり、ブリスタ及びサンプルダメージを生じさせないようにする臨界値として、領域3030におけるヘリウム粒子がMc=Fc・dv2≒40000を満たすことを要件とする。
【0067】
領域3030において、注入されたヘリウム粒子の拡散が生じる。領域3030中のヘリウム粒子の総濃度がMb≒6000粒子を超えた場合、拡散を通じて領域3030における濃度勾配が形成される。この勾配は、深さ50nm(例えば、領域3030の下端)から表面181(例えば、領域3030の上端)におけるヘリウム濃度については略線形である。金における、ヘリウム粒子の拡散係数はD≒2×10-13m2S-1であり、最大拡散係数Rbは、フィックの拡散の第1法則によれば、以下の式により与えられる。
【数4】
ここで、hg=50nmは、拡散勾配の長さである。
【0068】
イオンビーム192にサンプル180を露光している間のイオンビーム電流は、約Ci=6×106イオン/秒である。露光表面領域3040は、辺長bv=100nm、500画素×500画素の配列を含み、ピクセルあたり露光時間te=100μ秒、領域3030に注入され、拡散可能なヘリウム粒子数MHeは、少なくとも以下のようである。
【数5】
すなわち、領域3030におけるヘリウム粒子数MHeは、Mc≒4000よりも有意に多い。よって、サンプル180の金表面において気泡やブリスタが発生し、気泡が割れることで、観察可能なサンプルダメージを生成する。
【0069】
しかし、露光表面領域3040が辺長bv=1μm未満であるか、又は同様の条件の場合、MHeは、臨界値Mcを大幅に下回る約6000粒子まで減少する。この結果、ほとんどの場合サンプルダメージは回避することができる。2組の露光条件における差異は、第2の露光条件下における注入ヘリウム粒子のガス抜けの増加に起因するものである。
【0070】
したがって、その値を超えたらサンプルダメージが発生してしまう、特定の濃度限界まで、サンプル180の領域3040の表面下に対してヘリウムイオンを注入することができる。注入ヘリウム粒子の濃度は、サンプル180から離脱する表面181に向かって粒子が拡散することにより、徐々に低下する。同様の因果関係により、サンプル180が絶縁されている場合、イオンビーム192に露光している間に表面181付近において過剰電荷が蓄積する。特定の表面電圧限界まで、荷電は容量的に蓄積可能である。この表面電圧限界を超えると、イオンビーム192からのイオンとの相互作用により、サンプル180が著しく崩壊し、サンプル180からの粒子の測定により取得した像の品質が劣化する。蓄積表面荷電は、比較的ゆっくりと、漏れ電流により低減することができる。漏れ電流は、サンプル180の他の絶縁領域に電荷を逃がすからである。上述の考察に基づくと、入射イオンからのサンプルダメージを低減させる走査プロトコルは、サンプルの表面荷電の緩和にも役立つ。
【0071】
ヘリウムイオン顕微鏡システムは、サンプル上をオングストローム解像度で探索することができる。典型的には、顕微鏡システムは両側(直径)100nmのオーダーの、比較的小さい視野において走査可能なように構成される。上述の議論に基づくと、粒子注入に起因するサンプルダメージはヘリウムイオン顕微鏡システムにおいて深刻な問題となりうる。操作中、イオンビーム電流は、サンプルダメージを緩和するように低減することができる。しかし、典型的な走査条件下においては、許容可能な信号ノイズ比の画像を取得するためには、1画素あたりの入射イオンを、約600を下限とすることが必要である。したがって、低い操作イオンビーム電流を用いた場合、像取得のための時間は全体として非常に長くなりうる。像取得時間が長引けば、サンプルドリフトが測定画像に及ぼす影響が増大し、比較的弱い検出信号は、一般的に、検出器のノイズに起因する揺らぎに対して脆弱である。
【0072】
走査プロトコルの一実施形態を図2に概略的に示す。本実施形態は、比較的高いイオンビーム電流を可能にすると共に、サンプルダメージ及び入射ヘリウムイオンに起因する荷電を緩和する。領域4000は、サンプル180の一領域であり、サンプル180は、上述の走査プロトコルにより定められる特定の露光パターンで、イオンビーム192に露光される。図2に示す走査プロトコルは、領域4000の異なる空間部分をイオンビーム192に露光させる順序に起因して、チェッカーボード走査プロトコルと称される。
【0073】
領域4000を露光している間、イオンビーム192及びサンプル180は、相対的に平行移動される(例えば、イオンビーム192を動かしたり、サンプル180を動かしたりするか、又は両方を動かす)ことで、領域4000の異なる部分を交互に露光させる。図2において、イオンビーム192は、領域4000において、複数の露光スポット4001〜4024を形成する。明確のため、図2には全露光スポットのうちの一部のみを示す。図3には、同様のチェッカーボード走査プロトコルのための、追加の露光スポットを示す。これらにより、領域4000の様々な部分を露光された、そのオーダーにおけるより完全なピクチャを提供することができる。
【0074】
図2に戻ると、イオンビーム192の領域4000における平均スポットサイズはfsである。領域4000の走査を開始するためには、イオンビーム192は、露光スポット4001に対応する領域4000の一部分がイオンビーム192に露光されるように、領域4000に対して配置される。スポット4001を照射した後に、イオンビーム192をx軸方向に距離ds平行移動することにより、再配置し、照射スポット4002に対応する領域の一部分をイオンビーム192に露光する。再配置及び露光は、スポット4001〜4004が、それぞれを直接連続して露光し終わるまで続く。スポット4001〜4004は、それぞれ領域4000の異なる部分に対応し、前に露光された部分から、x軸方向に距離dsだけ離間している。
【0075】
領域4000のスポット4001〜4004に対応する部分を露光した後に、イオンビーム192を、再度、領域4000に対して再配置し、スポット4005に対応する領域4000の一部分をイオンビーム192に露光する。この、領域4000の一部分は、スポット4001〜4004に対応する各部分からは、y軸方向によりesだけ離れている。
【0076】
そして、スポット4006〜4008に対応する領域4000の部分は、それぞれ直接連続して、イオンビーム192に露光される。この際、先ず、イオンビーム102をx軸方向に距離dsだけ平行移動し、そして各領域をイオンビーム192に露光する。
【0077】
スポット4008に対応する領域を露光した後に、イオンビーム192を再度y軸方向に距離esだけ平行移動し、スポット4009〜4012に対応する領域について、イオンビーム192を連続的にx軸方向にdsだけ移動して照射する。ここまで開示してきた走査プロトコルの一部分に続いて、スポット4001〜4012を含むチェッカーボード露光パターンが、サンプル180の領域4000上において形成される。
【0078】
スポット4012に対応する部分を照射した後に、イオンビーム192は領域4000に対して再配置され、照射スポット4013に対応する領域4000の部分に対してイオンビーム192を照射する。したがって、照射スポット4014〜4024に対応する領域は、照射の合間に、領域4000に対してイオンビーム192を適切に再配置する(例えば、x軸方向に距離ds、y軸方向に距離esだけ平衡移動する)ことによって連続的に照射される。
【0079】
図2に示すような、再配置及び照射パターンを延長して行うことにより、x軸方向に、領域4000の照射部分の一連の横列の照射を完了させることができる。図3に示すように、照射領域の横列については、参照符号4100、4200及び4300を付す。列4100、4200、及び4300に対応する領域4000の部分の全てについて、イオンビーム192の照射した後に、イオンビームを領域4000に対して再配置して、完全に照射された横列の間の照射を開始する。すなわち、チェッカーボード走査プロトコルによれば、領域4000の未照射部分を含む、横列4500、4600、及び4700について、別の複数の照射スポットを領域4000上に形成することでイオンビーム192を照射する。横列4100、4200、4300の間の部分についての一連の照射手順は、上述した手順と同様である。領域4000の部分の横列を連続的に走査することによって、イオンビーム192を領域4000全体に照射する。
【0080】
図2及び3に示す一連の露光スポットが完了し、領域4000を完全にイオンビーム192に露光することは、サンプルダメージ及び表面荷電を緩和するために効果的である。これは、イオンビーム192は領域4000の特定部分の露光時間を延長させないからである。その代わり、イオンビーム192は、領域4000の横断方向に比較的長い間隔でで移動する(例えば、平均スポットサイズfsと比較して大きい)。典型的には、大きいイオン電流が比較的小さい領域に分布する場合に発生するサンプルダメージは発生しない。これは、イオンビーム電流が領域4000上の比較的広い領域に分布しているからである。相互作用領域3030は、各露光スポットにおいて形成され、相互に重複しない。また、イオンビーム192は、比較的長時間の間、どの露光部分も再度照射しないので、注入粒子の拡散及びガス抜けにより、再びイオンビーム192がそれらの露光部分を照射するときには、注入粒子の濃度を低下させる。特定部分の露光の間に比較的長時間のインターバルを設ければ、絶縁サンプルにおける表面荷電を広範にわたって消失させることができる。
【0081】
特定数の露光スポットを、図2及び3に示す領域4000上に形成し、それぞれがイオンビーム192に照射される領域4000上の部分に対応する。しかし、概して、領域4000は、それぞれ、イオンビーム192に露光する所望数の部分に分割することができる。領域4000上の露光部分の数は、例えば、領域4000の画像の所望解像度に基づいて決定することができる。
【0082】
典型的には、サンプル180の領域4000にイオンビーム192を照射すれば、サンプル180から粒子が放出される。サンプル180から放出される粒子は、二次電子、後方散乱入射イオン、散乱中性子、及び光子を含みうる。これらさまざまな種類の粒子を測定するために、本明細書の第二部において詳述する検出器が用いられうる。概して、イオンビーム192を領域4000に対して配置し、領域4000にイオンビームで露光すると、1つ又は複数の検出器が、サンプル180から放出される粒子を測定する。この1つ又は複数の検出器は、サンプル180から放出される粒子の、例えば、存在量、及び/又はエネルギー及び/又は角度位置/方向に対応する電気信号を生成する。これらの生成された電気信号を、領域4000に対するイオンビーム192の位置について補正することにより、領域4000の1つ又は複数の画像を形成することができる。
【0083】
一部の実施形態においては、イオンビーム192の領域4000表面における平均スポットサイズfsは、5nm以下(例えば、4nm以下、3nm以下、2nm以下、1nm以下、0.5mm以下、0.25mm以下)及び/又は0.25nm〜5nm(例えば、0.5nm〜4nm、0.5nm〜3nm、0.5nm〜2nm)である。
【0084】
ある実施形態においては、dsは5nm以上(例えば、10nm以上、15nm以上、20nm以上、30nm以上、50nm以上)及び/又は500nm以下(例えば、400nm以下、300nm以下、200nm以下、100nm以下)である。また、一部の実施形態においては、esは、5nm以上(例えば、10nm以上、15nm以上、20nm以上、30nm以上、50nm以上)及び/又は500nm以下(例えば、400nm以下、300nm以下、200nm以下、100nm以下)である。
【0085】
ある実施形態においては、ds/fsの比率は、は2以上(例えば、3以上、4以上、5以上、10以上、15以上、20以上、25以上、30以上)及び/又は100以下(例えば、90以下、80以下、70以下、60以下、50以下)である。また、一部の実施形態においては、es/fsの比率は、2以上(例えば、3以上、4以上、5以上、10以上、15以上、20以上、25以上、30以上)及び/又は100以下(例えば、90以下、80以下、70以下、60以下、50以下)である。また、ある実施形態においては、esは、dsより大きいかdsに等しい。また、ある実施形態においては、esはdsよりも小さい。
【0086】
ある実施形態においては、領域4000をイオンビーム192に照射した場合、ビーム192のイオン電流は1pA以上(例えば、2pA以上、5pA以上、10pA以上、20pA以上、30pA以上、50pA以上、100pA以上、200pA以上、300pA以上、500pA以上)である。概して、イオン電流は、サンプル画像の信号ノイズ比が十分に高くなるように大きくすると共に、サンプルダメージ及びサンプルの荷電が緩和されるのに十分な程度に低くなるように選択される。本明細書において開示する走査プロトコルは、領域4000上において、ラスタ走査のような、シンプルな走査プロトコルを使用した場合に可能となるイオン電流よりも、比較的大きいイオン電流を使用できるようにするものである。
【0087】
一部の実施形態において、領域4000の各部分についてのイオンビーム192への露光時間は、500μ秒以下(例えば、400μ秒、300μ秒、200μ秒、100μ秒、50μ秒、30μ秒、20μ秒、10μ秒、5μ秒、1μ秒、0.5μ秒)である。概して、露光時間は、サンプル画像の測定における信号ノイズ比が比較的大きくなるように十分なほど高く、且つ、サンプルダメージ及び荷電が緩和されるのに十分なほど小さくなるように選択される。
【0088】
一部の実施形態においては、106画素を含むサンプル画像のための総取得時間は、1000秒以下(例えば、800秒以下、600秒以下、400秒以下、300秒以下、200秒以下、100秒以下、50秒以下、30秒以下、20秒以下、10秒以下、1秒以下)である。
【0089】
一部の実施形態においては、イオンビーム192への露光による領域4000における過剰な電荷の消失を補助するためには、領域4000をフラッドガンのような電子源に露光させることができる。電子源への露光は、イオンビーム192への露光の前、例えば、サンプル内の荷電層を注入する前に行う。これに代えて、又はこれに加えて、イオンビーム192への露光中に、領域4000を電子源に露光することもできる。電子源からの電子は、表面電荷の消失を補助し、イオンビーム192によるサンプルからの二次電子の放出を促進する。さらに、これに代えて、又はこれに加えて、領域4000をイオンビームにより連続的に走査し終えた合間や、領域4000のさまざまな部分をイオンビームにより連続的にライン走査する合間や、及び/又は領域4000の様々な部分の露光スポットをイオンビームにより連続的に露光する合間に、領域4000を電子源に露光することができる。
【0090】
概して、イオンがサンプル表面に入射する際に、二次電子が生成され、サンプルから放出されることにより、表面が正味正電荷を有することになる。サンプル表面における、過剰な正の電荷は、望ましくない多数の影響を及ぼす。例えば、ある実施形態においては、サンプル表面の正電荷は、検出器が、サンプルから放出される二次電子を検出する能力を制限しうる。これは、サンプルとイオンビームとの相互作用に起因するものである。サンプル表面における正電荷と、二次電子との間における引力は、電子を減速させ、検出器に電子が到達することを妨げる。
【0091】
一部の実施形態において、サンプル表面の正電荷は、イオンビーム走査を不正確にする恐れがある。サンプル表面における正電荷により生成された電場に起因する、入射イオンビームが偏向したり、減速したりすれば、入射イオンのエネルギーが減少し、その軌道を予測し難いものに変えてしまう。
【0092】
サンプル表面の正味正電荷が十分に大きくなれば、サンプル表面は入射イオンの静電ミラーとして作用し、イオンがサンプル表面に到達する前にイオンをサンプル表面から偏向させてしまうおそれがある。
【0093】
サンプル表面に電子フラックスを供給することが可能なフラッドガンを荷電による影響のための対策に用いることができる。図4は、フラット゛ガン840を備える気体電界イオン顕微鏡の一部を示す図である。フラッドガン840は、サンプル180の表面181に対して電子ビームを供給するように構成され、ヘリウムイオンビーム192は、表面181に入射している。表面181上の電子フラックスは、概して、電子ビーム842が所望程度に表面荷電の影響と釣り合うように制御される。
【0094】
図4は、サンプル180の表面181に、別の方法で同時に入射するイオンビーム192及び電子ビーム842を示す図である。例えば、イオンビーム192に表面181を露光する前に電子ビーム842がサンプル180に供給されて、サンプル180の表面下領域において荷電層846(図5参照)を形成するように、フラット゛ガンを構成することが可能である。層846は、平均して、表面181の下の深さmに存在し、表面181の法線方向における厚さrを有する。概して、深さm及び厚さrと、層846の電子密度とは、電子ビームの電子のエネルギー、表面181に対する電子ビーム842の電子の入射角、及びサンプル180に供給される電子の総供給量によって制御される。
【0095】
一部の実施形態においては、表面181への入射、電子ビームにおける電子の平均エネルギーは調節可能である。例えば、電子の平均エネルギーは500eV以上(例えば、1keV以上、2keV以上)、及び/又は20KeV以下(例えば、15keV以下、10KeV以下)である。例えば、表面181に入射する場合、電子エネルギー842の電子の平均エネルギーは500eV〜20KeV(例えば、1keV〜15keV、2keV〜10KeV)でありうる。
【0096】
電子ビーム842の電子の、表面181に対する入射角δの角度は、電子ビーム842の主光線850と、表面181の法線848との間の角度に相当する。概して、δは0°以上(例えば、10°以上、20°以上)、及び/又は80°以下(例えば、70°以下、60°以下)である。例えば、δは0°〜70°(例えば、0°〜10°、40°〜60°)である。
【0097】
ある実施形態では、サンプル180に供給される電子の総電流は、10pA以上(例えば、100pA以上、1nA以上、10nA以上)、及び/又は100μA以下(例えば、10μA以下、1μA以下、500nA以下、100nA以下)である。例えば、サンプル180に供給される総電流量は10pA〜1μA(例えば、100pA〜100nA、1nA〜10nA)である。
【0098】
一部の実施形態においては、mは10nm以上(例えば、25nm以上、50nm以上、75nm以上、100nm以上)、及び/又は500nm以下(例えば、400nm以下、300nm以下、200nm以下)である。例えば、mは、10nm〜500nm(例えば、25nm〜500nm、50nm〜500nm、75nm〜400nm、100nm〜400nm)である。
【0099】
一部の実施形態においては、複数のフラッドガンを用いることができる。例えば、一部の実施形態においては、異なるフラッドガンを、サンプル180の表面181の異なる部分を電子に露光させるために用る。また、一部の実施形態においては、各フラッドガンは、表面181の同じ部分を電子に露光させるために用いられる。任意には、異なるフラッドガンを異なる時点において走査することもできる。例えば、1又は複数のフラッドガンを、(例えば、表面下荷電層を形成させるために)、入射イオンに表面181を露光させる前に、表面181を電子に露光させるために用いることもできるし、入射イオンに露光中の表面181について、1又は複数の異なるフラッドガンを表面181を電子にも露光させるために用いることもできる。一部の実施形態においては、(例えば、表面下荷電層を形成させるために)、入射イオンに表面181を露光させる前に、フラッドガンの全てを、表面181を電子に露光させるために用いることもできる。一方、他の実施形態においては、入射イオンに露光中の表面181について、全てのフラッドガンを表面181を電子に露光させるために用いることもできる。この他の組み合わせも可能である。
【0100】
一部の実施形態においては、イオンビーム192は、希ガスイオンによって形成される。例えば、イオビーム192は1又は複数のヘリウムイオン、ネオンイオン、クリプトンイオン、キセノンイオンによって形成されうる。代替的又は追加的には、一部の実施形態においては、水素イオンなどの非希ガスイオンによりイオンビーム192を形成することも可能である。
【0101】
典型的には、注入粒子の拡散率は温度に依存し、温度の上昇により拡散率も上昇する。よって、幾つかの実施形態においては、サンプルはイオンビーム192への露光中に熱せられ、注入粒子がサンプルから放出される程度まで拡散率が上昇してしまう。サンプルが熱せられれば、注入粒子はサンプルからすばやく拡散し、イオンビーム192が領域4000上の露光済みの部分を、露光しようとしても、その部分に注入されている粒子のうち残っている粒子の濃度はサンプルが熱せられなかった場合と比較して低い。よって、サンプルダメージ及び荷電が緩和される。
【0102】
図2及び3を再度参照すると、領域4000の各露光スポットは、イオンビーム192に露光される領域4000上の特定部分に対応している。入射イオンビームに対応してサンプルから放出される粒子は、検出され、イオンビーム192の領域4000に対する位置に関連する電気信号を生成する。そのような信号のうちの複数は、その相関する位置と共に、領域4000についての画像を形成するために用いられる。一部の実施形態においては、イオンビーム192に露光される領域4000の各部分は、それぞれ一つの画素に対応する。例えば、n×n画素の配列により形成される画像については、領域4000は、それぞれが画素一つ一つに対応する、n×n個の領域に分割することができる。また、一部の実施形態においては、領域4000の1又は複数の部分(各部分)は、複数の画素に対応しうる。
【0103】
図2及び3において、領域4000の連続的に露光された部分は、x軸方向に、相互に距離dsだけ離れている。しかし、概して、dsは連続的に露光される領域の間の最小の間隔を表し、連続的に露光される領域は、x軸方向にds又は更に大きく相互に離間して配置することができる。更に、連続的に露光される領域の間の間隔は、各領域ペアの間すべてにおいて同一でも異なっていても良い。一部の実施形態においては、例えば、連続的に照射される部分はx軸方向に相互に可変間隔で離間して配置されうる。このような可変間隔で離間は、例えば、サンプルの特定部分が、比較的高解像度で最適に画像化されるような比較的細かい構造(feature)を有するような場合、その部分において連続的に露光される領域間の間隔を狭める際に用いられうる。逆に、比較的粗い構造(又は、構造のない)を含む観察箇所は、比較的低解像度(連続的に露光される部分間の間隔を大きくする)で画像化し、画像取得スピードを速めることができる。
【0104】
同様に、図2及び図3において、走査プロトコルの実行中における露光部分の一連の横列は、y軸方向に相互に距離esだけ離間させる。概して、横列の間の間隔は可変であり、露光された横列の間の距離esは最小間隔を表す。高解像度のためには、比較的短い間隔を用い、高速且つ低解像度の画像化のためには、比較的長い間隔を用いる。更に、ds及びesは、露光部分が領域4000上において正方形パターンを形成するように等しい値としたり、矩形パターンを形成するように異なる値とすることもできる。
【0105】
また、図2及び3に示したようなチェッカーボードプロトコルに対して修正を加えた、他の様々な走査プロトコルを用いることもできる。例えば、図2及び3に示すような露光スポットに対応する部分は、上述したようなサンプルダメージ及び荷電を緩和するのに適している、あらゆる順番で露光することが可能である。操作プロトコルにおいては、連続的に走査される部分の間で、イオンビーム192を領域4000に対してx軸方向、y軸方向、又は、x軸並びにy軸両方向に移動する。x軸及びy軸方向は、サンプル180の領域4000のエッジに対して平行であっても、平行でなくても良い。
【0106】
一部の実施形態においては、露光スポットのパターンは正方形や矩形配置以外を用いることもできる。例えば、一部の実施形態においては、環状(例えば、渦状)及び/又は楕円パターンの露光スポットを領域4000上に形成することもできる。イオンビーム192は、領域4000に対して移動され、イオンビームは領域4000の部分を露光させて、一連の集中(concentric)リングを形成する。露光部分は、リングの弧に沿って相互に距離ds以上離間し、放射方向に距離es以上離間する。
【0107】
他のタイプの走査プロトコルを用いることもできる。図6は、イオンビーム192によって領域4000を露光するために適用されるバンド走査プロトコルを表す図である。イオンビーム192は、最初、図6に示す領域4000の左上角に配置され、領域4000上において露光列5001を形成するように、領域4000についてx軸方向に平行移動される。イオンビーム192を領域4000に対して平行移動するため、入射イオンに対応して領域4000から粒子が放出される。これらの粒子は1つ又は複数の検出器によって検出され、検出器によって生成される信号はイオンビーム192の位置に対応する。
【0108】
露光列5001を形成した後、イオンビーム192を領域4000に対して再配置した後に、露光列5002を形成するためにx軸方向に走査する。イオンビーム192の再配置は、イオンビーム192を、領域4000に対して距離dt以上y方向に平行移動することを含む。露光列5003を領域4000上に形成するために、同様の手順を繰り返す。
【0109】
露光列5003の形成に続いて、イオンビーム192を領域4000について再配置し、x方向に平行移動して露光列5004を形成する。イオンビーム192を再配置して、ビームをx方向に平行移動する手順により露光列5005及び5006の形成を続ける。領域4000の露光パターンは、y方向に相互に距離dtだけ離間する一連の露光列は、領域4000の全部分が露光し終わるまで反復する。
【0110】
典型的には、例えば、各露光列は、複数の露光スポットを含む。イオンビーム192は、領域4000における平均スポットサイズがfsであり、各露光列における露光スポットは、典型的には、x方向に相互に距離fs/2以上離間している。しかし、x方向におけるあらゆる所望の間隔で露光スポットを離間することができる。
【0111】
概して、領域4000上における連続的に露光されるラインの間の距離dtは、上述したようなdsと同様の値を有する。連続的な露光列の間の間隔は、一定又は可変であり、例えば、これにより、領域4000の様々な部分を画像化する解像度を制御することができる。一部の実施形態においては、dt/fsの割合は2以上(例えば、3以上、4以上、5以上、10以上、15以上、20以上、25以上、30以上)、及び/又は100以下(例えば、90以下、80以下、70以下、60以下、50以下)である。
【0112】
バンド走査プロトコルの変形例は、領域4000上において露光列を形成するあらゆる走査プロトコルを含み、このようにすることで、ラスタ走査のような従来走査プロトコルにより発生していたサンプルダメージ及び荷電が低減される。
【0113】
典型的には、バンド走査プロトコルいおいて、何れかの領域が更に露光される前に、露光列に対応する全領域は同じ回数だけ露光される。換言すれば、新たな画像フレームのいかなる部分を取得する前に完全な画像フレームが取得される。しかし、ある実施形態においては、領域4000の幾つかの部分は複数回イオンビーム192に露光され、他方、他の部分はイオンビーム192への露光回数は比較的少ない。この不均等な露光は、例えば、領域4000の特定部分の信号ノイズ比を改善するために用いられうる。
【0114】
一部の実施形態においては、画像はインタレース画像フレームから形成されうる。例えば、領域4000の画像を取得するためには、イオンビーム192は領域4000に対して、領域4000上に一連の露光列を形成するように走査される。これらの露光列は、例えば、領域4000のある一部(例えば、半分)のみをカバーすることができ、入射イオンビームに応じて領域4000から放出される粒子に基づいて第1の画像フレームが形成される。そして、イオンビーム192により、領域4000に対して、2回目の走査を行い、1回目の走査で露光されなかった部分を露光する。第2画像フレームは、入射イオンビームに対応して領域4000から放出される粒子に基づいて形成される。第1及び第2の画像フレームは、例えば、一連の交互の露光列を領域4000上に形成し、この場合、第1及び第2の画像フレームはインタレースされた画像フレームに対応する。領域4000の完全な画像は第1及び第2の画像フレームを組み合わせることで形成される。
【0115】
一部の実施形態において、領域4000上において、露光列の異なる部分は、領域4000に対してイオンビーム192を走査させることにより、異なるタイミングで形成される。例えば、第1露光ステップにおいては、イオンビーム192は、図6に示す各露光列の最初の部分に沿って走査することができる。そして、第2露光ステップにおいてはイオンビーム192は、各露光列の残りの部分ん磯って走査し、領域4000の露光を完了することができる。
【0116】
図6に示すように、露光列は、y方向に幅gtを有する。一部の実施形態においてはgtは0.25nm以上(例えば、0.5nm以上、1nm以上、2nm以上、3nm以上、4nm以上、5nm以上、6nm以上、7nm以上、8nm以上)。ある実施形態においては、dt/gtの比率は、2以上(例えば、3以上、4以上、5以上、10以上、15以上、20以上、30以上、40以上、50以上)である。
【0117】
様々な走査プロトコルのパラメータを表1に比較する。表1に示す数値を得るために、一辺100nmの正方形露光領域を仮定した。この正方形領域は、1000×1000画素の配列に分割され、そのそれぞれが露光スポットに対応した。また、画素あたりの最小露光時間は、0.1μ秒として設定した。この値は、イオンビームをサンプルに対して平行移動できる最大の比率である。イオンビーム粒子電流Ciは、等価(equivalent)プローブ電流Ii、各画素につき少なくとも600入射イオンを露光するための総取得時間、及び画素毎の露光時間は、領域3030におけるヘリウム粒子数が、Mb=6000粒子(例えば、金におけるヘリウムの飽和濃度)を超えないようにするという制約の下、算出した。
【0118】
【表1】
【0119】
従来のピクセル平均走査プロトコルにおいては、観察領域を従来のラスタパターンでラインバイラインで走査する。すなわち、各連続した領域の横列は、一端から他端に向かって走査され、走査中、イオンビームは列を飛ばすことは無い。表1に示すように、この走査プロトコルのために、注入ヘリウム粒子のサンプル中における飽和を回避するために、イオンビーム電流は比較的低く抑える。これにより、取得時間は長くなる。
【0120】
従来の平滑化(line averaging)プロトコルでは、各領域の横列は、イオンビームが次の横列に移動する前に複数回走査されうる。画素平均化(pixel averaging)プロトコルのように、イオンビームは走査中、横列を飛ばすことは無い。しかし、次のラインに移動する前に、複数回同じ横列内の画素を再度露光できるようにすることで、高いイオンビーム電流を用いることが可能になる。この結果、表1の第2横列に示したように、総取得時間は短縮される。
【0121】
フレーム平均走査プロトコルにおいては、各フレーム(それぞれ、領域のピクセル平均走査に対応する)は、取得され、画像を形成するように結合される。しかし、イオンビームは領域の各横列を複数回にわたって再走査できるので(例えば、各追加フレームにつき一回ずつ)、サンプル中における注入ヘリウム粒子の飽和を回避すると共に、イオンビーム電流は更に増加する。表1に示すように、フレーム平均走査プロトコルは、滞留時間によって効果的に制限され、これにより、注目領域に対してイオビームを平行移動できる最大比率で固定することができる。
【0122】
図6に概略的に示すバンド走査プロトコルでは、ラインバイラインで領域を走査することにより画像を取得することができ、さらに、複数のフレームを統合することによって画像を形成することができる。フレーム平均走査プロトコルとバンド走査プロトコルとの違いは、バンド走査プロトコルにおいては連続的に走査された横列がy方向に距離dtだけ離間している天で異なる。このように、連続的に走査される横列は、離間しているので、走査される横列の露光スポットに対応するサンプルの領域における相互作用領域3030は、相互に影響がでるほどには重複しない。従来のフレーム平均走査プロトコルにおいては、画素あたりの露光時間と、イオンビームが同じ画素を再度照射するのに擁する時間との比率は、約(dv/bv)である。バンド走査プロトコルにおいては、この比率は約(dv/bv)2である。この値は格段に小さい。表1に示すように、バンド走査プロトコルは、高いイオンビーム電流が用いられるようにすると共に、他の走査プロトコルに比較して総取得時間を短縮することができる。
【0123】
図2及び3に概略的に示したチェッカーボード走査プロトコルにおいて、各画像フレームは正方形又は矩形のサブ領域に分割され、イオンビームは、いずれのサブ領域が再度照射されるよりも前に、各サブ領域における類似の対応する位置を照射する。イオンビームによる連続的な照射において、各サブ領域におけるイオンビームの相対的な照射位置は、その前の照射に対して相対的に変化する。このパターンを繰り返すことで、注目領域全体を露光させる。
【0124】
チェッカーボード走査プロトコルは、サンプルのイオンビームへの露光により生じる相互作用領域3030の間の相互作用領域の空間重複を低減させる。露光時間が短ければ、サンプルの画像は複数の画像フレームを統合することにより形成される。表1においては、注入ヘリウム粒子のガス漏れ率のため、イオンビーム電流はバンド走査プロトコルと同じ値に制限されている。しかし、画素あたりの露光時間は、相互作用領域3030の間の重複を更に低減させるために、バンド走査プロトコルの場合よりも長くすることができる。実際、ここでの計算においては、画素あたりの露光時間は、1画素当たりの最小投与粒子数を600個とすることにより制約している。例えば、仮に、1画素当たりの最小投与粒子数を6000個よりも大きくした場合、画素あたりの露光時間は500μ秒にまで増加し、これにより、イオンビームをすばやく移動させることにより生じうる機械ノイズの低減を補助することができる。表1に示した他の走査プロトコルにおいては、画素あたりの露光時間を長くすることはできない。これは他の走査プロトコルにおいては相互作用領域が近接しているからである。
【0125】
発明者らにより、典型的な走査条件下では、イオンビーム照射により生じるサンプルダメージ及び/又は荷電のような効果を緩和するための、領域4000が連続的にイオンビームに露光される時間と、各領域がイオンビームに露光されていない時間との間の関係は一般化することができた。この関係は、サンプルの良好な画像を取得できるようにする。
【0126】
図7Aを参照すると、サンプル180の領域4000は、この領域について1又は複数の画像を取得するために、イオンビーム192に露光される。領域4000は、典型的には、縦R1横R2の矩形又は正方形領域である。領域4000の各部分についての連続露光時間及び非露光時間との間の関係を決定するために、領域4050の横の長さS1を決定する。このとき正方形領域4050は、領域4000を完全に取り囲む最小の正方形領域である。図7Aに示すように、領域4000の最大寸法(例えば、R1、R2)の決定に対応して、矩形又は正方形領域4000正方形領域4050の横の長さS1を決定する。よって、図7Aに示す領域4000については、S1=R1とする。一部の実施形態においては、領域4000は、正方形領域ではないが、多くの場合、正方形領域4050の横の長さを決定することは、領域4000の最大寸法を決定することに対応する。
【0127】
領域4000は、領域Aを有する。手順における次のステップは、正方形領域4050の辺長S1を、下式により設定することである。
【数6】
Fは、簡単に決定することが可能な数字定数である。領域4000が正方形領域であれば、Fの値は1となる。しかし、領域4000が正方形でなければ、Fは1以外の数になる。
【0128】
次に、領域4000はM個の連続した正方形部分に分割される。各正方形部分は、同一面積であり、イオンビーム192に別々に露光される。概して、M個の部分のそれぞれは、領域4000における画素の数に対応する。例えば、一部の実施形態においては、領域4000の画素は全部でU個のピクセルを含み、M個の部分のそれぞれは、画像の画素の4画素〜U/4画素に対応する。
【0129】
一つの画像フレームを形成するための領域4000の露光は以下の手順で行う。領域4000のM個の部分のそれぞれについて、時間t1の間、イオンビームに部分の小集合(一部)を継続的に露光させる。この部分の小集合は1つ又は複数の、部分の画像に含まれる1つ又は複数のピクセルに対応する。そして、イオンビームは、平行移動され、他の部分の小集合を継続的に露光させる。結果的に、イオンビームはM個の部分のそれぞれに戻り、各部分の異なる小集合(例えば、イオンビームに露光されていない部分の小集合)を露光させる。部分の小集合の露光の後に、イオンビームを他の部分に平行移動し、各部分の全小集合をイオンビームに露光させるまで継続し、領域4000の露光を完了して一つの画像フレームを形成する。
【0130】
一部の実施形態においては、各M個の部分の露光された小集合は、同等の数の画素に対応する。一部の実施形態においては、露光された小集合は、様々な数の画素に対応する。M個の部分は、一部の実施形態においては、入射イオンと領域4000の材料との相互作用の大まかな量に基づいて決定される。相互作用の量は、実験的に測定することができ、領域4000における部分Mの数(すなわち、間隔)を決定するために用いられる。代替的又は追加的には、入射イオンと領域4000の材料との相互作用の量は、特定の材料について測定された相互作用量の表のようなデータベースから推定することができる。そのようなデータベースから相互作用の量が推定されると、領域4000における、部分Mの数及び間隔が決定できる。
【0131】
一部の実施形態においては、M個の部分のイオンビームへの連続した露光の間の時間間隔は、一つの部分についての時間間隔と同様であり、領域4000内のM個の部分全てについての時間間隔と同様である。しかし、M個の部分のうち1つを連続且つ継続的にイオンビームに露光する間の時間間隔は、所定の部分については可変でありうる。そして領域4000における部分ごとに可変でありうる。
【0132】
時間間隔t2は、M個の部分のいずれかをイオンビームに連続的に照射する間の最短の時間間隔である。所定の領域4000及び部分数Mについて、異なる露光プロトコルに応じて、t1及びt2の値は広い範囲で可変である。しかし、一般的に時間間隔t1及びt2は、下式を満たすように選択される。
【数7】
【0133】
上記式がイコールの場合、比率t1/(t1+t2)の上限値を示す。この比率は、上記式の右辺の値以下である。例えば、一部の実施形態においては、t1/(t1+t2)の値は、
である。
【0134】
概して、ここで記載するいずれの走査プロトコルも、上述したような、M個の部分の継続露光時間t1と、M個の部分の何れかを連続して露光する間の最短時間間隔t2との間の関係に従って実行される。例えば、チェッカーボード走査プロトコル及びバンド走査プロトコルの両方、及びそれらの変形例は、サンプルダメージ及び荷電を緩和するために、上記数7に示す関係に基づいて実行される。
【0135】
図7Aに、異なる走査プロトコルの比較を示す。図7Aの領域4000は、1000個の画素(F=1)に対応し、M=100個(10×10配列の画素)の部分に分割される。M個の部分のそれぞれは、10000画素(100×100配列の画素)に対応する。各画素は一つの露光スポット(例えば、イオンビームにより、領域4000のスポットを露光させる)。各スポットの露光時間は1μ秒である。よって、ビームの平行移動の時間その他の要素を考慮しなければ、領域4000の全スポット(例えば、領域4000の画像に含まれる全ピクセル)を露光するのに要する時間は、1秒である。明確のため、この例においては、M個の部分のそれぞれは、全て同じ方法でイオンビームに露光される。
【0136】
標準的なピクセル平均走査プロトコルにおいては、領域4000における露光スポットの横列は、イオンビームに連続的に露光される。例えば、図7Bを参照すると、横列は、1−2−3−4−5...1000の順番に露光され、領域4000の画像取得を完了する。領域4000における部分M1を参照すると、横列から横列へと順番に露光していった場合、イオンビームは、部分M2に移動する前に、部分M1において連続的に100個のスポットを露光する。各スポットは1μ秒間露光されるので、t1=100μ秒である。M個の部分の何れかをイオンビームへ連続的に露光する間の間隔で最も短い時間であるt2は、全ての部分について同一である。イオンビームは、各部分M2〜M10のそれぞれについて、100スポットを露光し、領域M1に戻り、横列2の100個のスポットを露光させる。従って、部分M1の連続露光の間の最短時間はt2=900μ秒である。比率t1/(t1+t2)は、値0.1を有し、これは下式の値より大きい。
【数8】
【0137】
標準的な画素平均バンドプロトコルにおいては、部分M1〜M10における、画素の各横列(例えば、横列1〜100)は、イオンビームに連続的に露光される。そして、部分M11〜M20を跳び越し、部分M21〜M30の画素の横列(例えば、列201〜300)をイオンビームに対して連続的に露光させる。しかし、この走査プロトコルについて、時間間隔t1及びt2は、連続したピクセル走査プロトコルと同じ値であり、比率t1/(t1+t2)の値は、0.1であり、これは下式の値よりも大きい。
【数9】
【0138】
図6に概略的に示したプロトコルのような、バンド走査プロトコルにおいては、各M個の部分のスポット列は、M個の部分の追加のスポット列のいずれかが露光される前に、露光される。例えば、図7Bを参照すると、1、101、201、301、・・・901列が露光され、そして、列2、102、202、302・・・901列などが露光される。各部分についての連続露光時間は、t1=100μ秒(各部分の一つの横列における全スポットを露光するために要する時間)である。各部分のそれぞれを連続して照射する間の最短時間は、9900μ秒である。例えば、部分M1を考えると、t2は、部分M1における横列1内の最後のスポットの露光から、部分M1における列2の最初のスポットの露光までの間の時間である。この時間は、900μ秒及び9000μ秒を含む。900μ秒の間、横列1の他のスポット(例えば、部分M2〜M10内のスポット)が露光され、9000μ秒の間、横列101、201、301、・・・901のそれぞれに含まれる1000スポットが露光される。バンド走査プロトコルについては比率t1/(t1+t2)は値0.01を有し、これは下式より小さい。
【数10】
【0139】
図3に概略的に示すプロトコルのような、チェッカーボード走査プロトコルにおいては、各M個の部分内の一つのスポットは、M個の部分のうち追加のスポットが露光される前に露光される。図7Bにおけるスポットの座標系でいえば、スポット(1,1)、(1,101)、(1,201)、・・・(1,901)、(101,1)、(101,101)、(901,901)が露光される。各部分M1〜M100は、まさに、これらのスポットの一つを含んでいる。そして、イオンビームはM1に戻り、スポット(1,2)を露光させ、次に部分M2のスポット(1,102)、次いで、部分M3のスポット(1,202)等を露光させていく。各部分(例えば部分M1)についての継続露光時間は、一つのスポットについての露光時間であり、t1=1μ秒である。M個の部分それぞれの連続的な露光の間の最短時間はt2=99μ秒である。これは、イオンビームが部分M1に戻り、部分M1の第2のスポットを露光するまでには、各部分M2〜M99の対応するスポットを照射するからである。チェッカーボード走査プロトコルについては、比率t1/(t1+t2)は値0.01を有し、これは下式より小さい
【数11】
【0140】
よって、バンド走査及びチェッカーボード走査プロトコルは、数7によって定められる関係を満たし、これにより、イオンビームへの露光によるサンプルダメージ及び/又は荷電を低減する。
【0141】
半導体製造においては、マルチレイヤ半導体装置の所定の層に材料を添加し、及び/又は、層から除去するために、ガスアシスト化学反応がよく用いられている。例えば、ガスアシスト化学反応は、半導体製品(article)に形成されたダメージを受けた、又は誤って製造された回路修正するための、半導体回路の編集に用いられうる。ガスアシスト化学反応はフォトリソグラフィマスク修正にも用いられうる。この場合、ガスアシスト化学反応は、使用又は誤製造による欠陥を修復するために、マスクに材料を添加する、又はマスクから材料を除去するために用いられる。
【0142】
このプロセスは、電子と活性ガスとを相互作用させて、反応ガスを形成し、この反応ガスを、半導体製品の表面における化学反応に作用させて、材料を表面に添加又は表面から除去させるか、或いはその両方をさせる。典型的には、電子は、Gaイオンビームとサンプルとの相互作用により生じる二次電子として生成された電子か、及び/又は、電子ビーム(例えば、SEMから供給された電子ビーム)とサンプルとの相互作用による二次電子として生成された電子である。任意には、適切なポンプシステムを適用して、表面化学反応により生じた、不所望な揮発性生成物を除去することもできる。
【0143】
表面から材料を除去するために用いることができる活性ガスの例としては、Cl2、O2、I2、XeF2、F2、CF4及びH2Oである。例示的には、一部の実施形態においては、クロム、酸化クロム、窒化クロム、及び/又はクロムオキシニトライドにより形成された表面領域は、Cl2、O2と共に、電子と相互作用させることで少なくとも部分的には除去可能であり、また、生じた化学種により表面領域をエッチングすることができる。他の例として、一部の実施形態においては、窒化タンタルによって形成された表面領域は、XeF2、F2、CF4と共に電子と相互作用させることで少なくとも部分的には除去することができ、また、生じた化学種により表面領域をエッチングすることができる。更に他の例として、一部の実施形態においては、炭素含有材料により形成された表面領域は、H2Oと共に電子と相互作用させることで、少なくとも部分的には除去することができ、また、生じた化学種により表面領域をエッチングすることができる。
【0144】
表面に材料を堆積させるために用いられうる活性ガスは、例えば、WF6である(例えば、Wプラグのような、Wを堆積させる)。
【0145】
本願において述べるような、ガス原子と気体電界イオン源(例えば、Heイオン源)とを相互作用させることにより生成されるイオンビームは、ガスアシスト化学反応を実行するために用いられうる。このようなプロセスにおいては、例えば、イオンビームとサンプルとの相互作用によりサンプルから放出される二次電子は、化学反応をアシストするための電子となりうる。このようなイオンビームを用いることで、Gaイオンビームを用いる場合に比較していくつかの有利な効果が生じる。例えば、Heイオンビームを利用した不所望なイオン注入が少なくなる(例えば、低減される)が、他方、Gaイオンビームを用いた場合には不所望なGa注入が一般的な課題である。他の例としては、気体電界イオンビーム(例えば、Heイオンビーム)は、Gaイオンビームに比べて解像度を改善し、及び/又は、正確又は制御可能に化学反応を利用できるようにする入射電子ビーム(例えば、SEMから供給される入射イオンビーム)を提供することができる。これは、例えば、イオンとサンプルの特定部分との間における不所望な相互作用(例えば、Ga注入により半導体製品の性能に問題が生じる、サンプル上の不所望な領域にまでビームプロファイルが延在するGaイオンビームにより引き起こされる相互作用)を減らす(例えば、低減する)ことができる。
【0146】
上述したとおり、イオンビームをサンプル中におけるビームアシスト化学反応を実施するために用いた場合、表面において吸着された化学薬品は、イオンビームにより生成される二次電子と相互作用し、サンプルと化学反応を起こす。化学反応はサンプルの構造を修正することで制御できる。サンプル表面において消費された化学薬品は、追加の薬品にサンプルを曝すことで補充することができる(例えば、ガスフローノズルを利用する)。
【0147】
単純にラインバイライン(標準ラスタパターン)でイオンビームをサンプル表面上で走査させると、イオンビームはサンプル上面の部分(例えば、イオンビームスポット)を探索し、吸着された化学薬品は、イオンビームが近傍位置を露光した際における相互作用により既に消費されている。しかし、本願において開示したような走査プロトコルに基づくイオンビームを走査プロトコルに従ってイオンビームを走査させた場合、連続的なビームスポットは、従来のラスタ走査プロトコルよりも大きい間隔で相互に離間する。この場合、サンプル表面上のイオンビームの各位置において、吸着された化学薬品は、イオンビームによって生成された二次電子と相互作用していないか、又は、イオンビームにより生成された二次電子と相互作用した後に補充されている。よって、サンプルにおけるイオンビーム化学反応の効率は、本願に開示するような走査プロトコルに従って、サンプル表面をイオンビームによって走査することによって促進される。これにより、サンプル上のあらゆる位置における連続的な照射の間のインターバルは比較的長くなる。
【0148】
II.イオンビームシステム
本節では、イオンビームを生成し、且つ、イオンビームへの露光により観察対象のサンプルから放出された粒子を検出するためのシステム及び方法を開示する。本システム及び方法は、サンプルについて1つ又は複数の画像を得るために用いられうる。典型的には、サンプルを探索するために用いられるガスイオンビームは、多目的顕微鏡システムにおいて生成される。
【0149】
サンプル分析(例えば、イメージング)のために用いられうるイオンを生成に気体電界イオン源を用いる顕微鏡システムは、気体電界イオン顕微鏡と称される。気体電界イオン源は、中性気体(neutral gas)類をイオン化してイオン(例えば、イオンビーム)を生成するために用いられうる導電性チップ(典型的には、先端が10以下の原子を有するものである)を備える。イオンの生成にあたって、中性気体類は導電性チップの近傍(例えば、約4〜5Å以内)に集められ、導電性チップの先端には高い陽電位(例えば、抽出器(以下に詳述する)に対して1kV以上)が印加される。
【0150】
図8は、気体電界イオン顕微鏡システム100の概略構成を示す図である。気体電界イオン顕微鏡システム100は、ガス源110、気体電界イオン源120、イオン光学系130、サンプルマニピュレータ140、前側検出器150、後側160、及び通信線172a〜172fを介してシステム100の様々な構成要素に接続された電子制御システム170(例えば、コンピュータのような電子的な処理装置)を備える。サンプル180は、イオン光学系130と検出器150、160との間であって、サンプルマニピュレータ140の中又は上に配置される。使用中、イオンビーム192は、イオン光学系130を通じてサンプル180の表面181に向けられ、イオンビーム192とサンプル180との相互作用により生じる粒子194は、検出器150及び/又は160によって測定される。
【0151】
一般的に、システムを真空にすることでシステム100内における特定の不所望な化学種を抑制することが望ましい。典型的には、システム100の異なる構成要素は異なるバックグラウンド圧力に維持される。例えば、気体電界イオン源120は、約10-10Torrに維持されうる。気体を気体電界イオン源120に導入する際には、バックグラウンド圧力は約10-5Torrまで上昇する。イオン光学系130は、気体電界イオン源120にガスを導入する前は、約10-8Torrのバックグラウンド圧力に維持される。そして、ガスが導入された際には、イオン光学系130のバックグラウンド圧力は、典型的には約10-7Torrまで上昇する。サンプル180は、典型的には約10-6Torrのバックグラウンド圧力に維持されるチャンバ内に配置される。この圧力は、気体電界イオン源120内におけるガスの有無によってはあまり変化しない。
【0152】
図9に示すように、ガス源110は、1又は複数のガス182を気体電界イオン源120に供給するように構成される。以下に詳述するとおり、ガス源110は、ガスを様々な純度、流率、圧力、及び温度で供給するように構成されている。概して、ガス源110によって供給されるガスのうち少なくとも一つは、希ガス(ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe))であり、希ガスのイオンは、望ましくは、イオンビーム192の主要成分である。概して、サンプル180の表面181において測定されるように、イオンビーム192のイオンの電流はシステム100における希ガスの圧力が増加することに従って、単調に増加する。一部の実施形態においては、この関係は、べき乗則(power-law)に従う。この場合、ある範囲の希ガス圧力については、電流はガス圧力に比例して増加する。操作中、希ガスの圧力は、典型的には約10-2Torr以下(例えば、10-3Torr以下、10-4Torr以下)、及び/又は、チップ先端周辺においては、10-7Torr以上(例えば、10-6Torr以上、10-5Torr以上)である(以下に詳述する)。概して、(例えば、システム中における不所望な化学種の存在を低減するために、)比較的高純度のガスを使用することが望ましい。例えば、Heを用いる場合、Heは、少なくとも99.99%の純度(例えば、99.995%純度、99.999%純度、99.9995%純度、99.9999%純度)である。同様に、他の希ガスを用いる場合(Neガス、Arガス、Krガス、Xeガス)には、ガスの純度は市販グレードの高純度であることが望ましい。
【0153】
任意には、ガス源110は、希ガスに加えて、1又は複数のガスを供給できる。以下に更に詳述するように、そのようなガスの一例は窒素である。典型的には、追加のガスは、希ガスにおける不純物を超えるレベルで存在しうるが、ガス源110によって導入されるガス混合物全体のうちのごく少量の成分を構成するに過ぎない。例えば、Heガス及びNeガスがガス源110によって気体電界イオン源120に導入されるような実施形態において、ガス混合物は、全体として20%以下(例えば、15%以下、12%以下)のNe、及び/又は1%以上(例えば、3%以上、8%以上)のNeを含みうる。例えば、Heガス及びNeガスがガス源110によって導入される実施形態において、ガス混合物全体として、5〜15%(例えば、8〜12%、9〜11%)のNeを含みうる。他の例としては、He ガス及び窒素ガスがガス源110によって導入される実施形態において、ガス混合物全体として、1%以下(例えば、0.5%以下、0.1%以下)の窒素、及び/又は0.01%以上(例えば0.05%以上)の窒素を含みうる。例えば、Heガス及び窒素ガスがガス源110によって導入される実施形態において、ガス混合物全体として、0.01〜1%(例えば、0.05〜0.5%、0.08〜0.12%)の窒素を含みうる。一部の実施形態において、追加のガスは、(例えば、ガスを混合し、単一のインレットからシステムに供給するガスマニホールドを用いることによって、)システム100に導入される前に希ガスと混合される。一部の実施形態においては、システム100に導入される前に追加のガスは希ガスと混合されない(例えば、分離インレットを用いてガスをシステム100に注入することによる。この場合、分離インレットは、ガスが、気体電界イオン源120のいかなる要素とも相互作用する前に、混合されるために十分な程度に近接している)。
【0154】
気体電界イオン源120は、1又は複数のガス182をガス源110から受けて、ガス182から気体イオンを生成するように構成されている。気体電界イオン源120は、チップ端187、抽出器190、及び、任意には抑制器を有する導電性チップ186を備える。典型的には、チップ端187からサンプル180(図2には図示しない)の表面181までの距離は、5cm以上(例えば、10cm以上、15cm以上、20cm以上、25cm以上)、及び/又は100cm以下(例えば、80cm以下、60cm以下、50cm以下)である。例えば、一部の実施形態においては、チップ端186からサンプル180の表面181までの距離は5〜100cm(例えば、25〜75cm、40〜60cm、45〜55cm)である。
【0155】
導電性チップ186は、様々な素材によって形成されうる。一部の実施形態においては、チップ186は、金属(例えば、タングステン(W)、タンタル(Ta)、イリジウム(Ir)、レニウム(Rh)、ニオブ(Nb)、プラチナ(Pt)、モリブデン(Mo))により形成される。一部の実施形態においては、導電性チップ186は、合金によって形成されうる。一部の実施形態においては、導電性チップ186は、非金属(例えば、カーボン(C))によって形成されうる。
【0156】
使用中、チップ186には、抽出器190に対して正のバイアスがかかる(例えば、約20kV)。抽出器190には、大地アースに対して、負又は正にバイアスがかかる(例えば、−20kV〜+50kV)。そして、付加的な抑制器188は、チップ186に対して正又は負にバイアスが係る(例えば、−5kV〜+5kV)。チップ186は、導電性金属により掲載されているため、チップ端187におけるチップ186の電場は、チップ端187から外に向かって形成される。チップ186の形状に起因して、電場はチップ端187の付近で最も強い。チップ186の電場の強度は、例えば、チップ186に印加される正電圧を変更することによって調節可能である。この構成によれば、ガス源110によって供給される脱イオン化ガス原子182が、イオン化されて、チップ端187付近において正荷電イオンとなる。この、正荷電イオンは、同じく正に荷電したチップ186によって一斉に押し出され、負に荷電した抽出器190に引き付けられて、チップ186から出てきた正荷電イオンが、イオンビームとして、イオン光学系130に入っていく。抑制器188は、チップ186と抽出器190との間の電場全体を制御を支援し、これにより、チップ186からイオン光学系130へと向かう正荷電イオンの軌道が調節される。一般的に、チップ186と抽出器190との間の電場全体は、チップ端187において正荷電イオンが生成されるような比率であり、チップ186からイオン光学系130に正荷電イオン送られるような効率になるように調整される。
【0157】
特定の理論に縛られることを望むものではないが、例えば、Heイオンは以下のようにして生成されるものとして考えられている。気体電界イオン源120は、チップ端187付近におけるチップ186の電場が、非イオン化Heガス原子182のイオン化電場を越え、チップ186が比較的低温に維持されるように構成されている。脱イオン化Heガス原子182がチップ端187に近接している場合、He原子はチップの電場によって分極し、He原子182とチップ端187との間で弱い引力を生成する。その結果、He原子182は、チップ端187に接触し、暫くの間、その場所に結合したままになる(例えば、物理吸着)。チップ端187の近傍において、電場は、チップ端187に吸着したHe原子をイオン化するのに十分に高くなり、正に荷電したHeイオン(例えば、イオンビーム)を生成する。
【0158】
図10は、チップ端187(W(III)によって形成される)を概略的に示した図である(以下に詳述する)。チップ端187は、原子棚(atomic shelf)を形成するように配置された原子の層を含む。原子142により、末端原子棚(terminal atomic shelf)が形成される。第2の原子棚は原子144により形成され、第3の原子棚は原子146によって形成される。ガス源110によって供給される中性気体原子182は、チップ端187の近傍に存在する。原子182について付した矢印によって示すように、原子182は、チップ端187の電場によって分極され、原子182がチップ187に向かって移動するようにする比較的弱い引力の影響を受ける。
【0159】
チップの電場の強度に依存して、チップ端187付近の原子棚中の各原子は、対応するイオン化ディスク148を有しうる。イオン化ディスク148は、その中に飛び込んだ中性He原子が高確率でイオン化される空間領域である。典型的には、中性He原子は、中性He原子からチップ端原子への電子トンネルを経て生じる。したがって、イオン化ディスク148は、Heイオンが生成され、且つ、そこからHeイオンが発生する空間領域として示される。
【0160】
特定のチップ端原子のためのイオン化ディスク148のサイズは、チップ端187の形状と、チップ端187に印加される電位とに依存する。一般的に、He原子のイオン化は、局所的な電場がHeイオンのイオン化ポテンシャルを超えるチップ端187に近接する空間領域において発生する。従って、チップ端187に印加された高い電気ポテンシャルのため、多くのチップ原子がイオン化ディスクを有するようになる。更に、チップ端187の付近における局所的な電場は、チップ端187の形状に依存する。比較的鋭角のチップ端については、チップ端187の付近における局所的な電場は比較的高い。比較的鈍角のチップ端については、チップ端187付近でさえ、局所的な電場が小さい。
【0161】
図10において、チップ端187の各原子に対応するイオン化ディスク148は、空間的に相互に離間する。一部の実施形態においては、チップ端187の電場が十分に大きければ、一つ以上の原子(例えば、原子142)からのイオン化ディスクは空間的に重複し、複数のチップ端原子の付近の空間領域に延在する、より大きいイオン化ディスクを形成する。チップ端187における電場を低減することにより、イオン化ディスク148によって占有される空間体積が減少し、少ないチップ端のそれぞれが独自の空間的に離れたイオン化ディスクを有する、図10に表したような構造が実現する。多くの例において、チップ端187の形状は、イオン源120の使用中において、簡単には変更されないが、チップ端187の付近における電場は、典型的には、チップ端187に印加される電気ポテンシャルを調整することによって制御される。
【0162】
チップ端187に印加されるポテンシャルを更に減少させることにより、図10に示すイオン化ディスクのうちの幾つかは取り除かれる。例えば、チップ端187は、第2原子棚の原子144の付近にある場合よりも、鋭角ではなく、更に、チップ端187に印加するポテンシャルを減少させることにより、原子144の付近におけるチップ端187の電場は低減され、He原子のイオン化がこれらの領域では発生しない確率が高くなる。これにより、原子144に対応するイオン化ディスクは存在しなくなる。しかし、末端棚原子(terminal shelf atoms)142の付近におけるチップ端187の電場は、He原子のイオン化を生じさせるために十分に高く、これにより、原子142に対応するイオン化ディスク148は残る。チップ端187に印加される電気ポテンシャルを身長に制御することにより、イオン源120は、末端棚原子142に対応して、イオン化ディスクが存在し、末端棚原子に対応するイオン化ディスクが相互に空間的に離間するようになる。この結果、チップ端187付近においてイオン化されたHe原子は、特定の末端棚原子の付近におけるイオン化を経て生成される。
【0163】
中性ヘリウム原子182は、イオン化ディスク148内において、より長時間残留することにより、よりイオン化の影響を受ける確率が高い。He原子の分極化は、チップ端187の電場により誘発され、チップ端187に向かって分極化He原子を移動させる。これにより、分極化He原子がチップ端187に結合したままとなり、He原子182がイオン化ディスク148内に残留し、分極化He原子が長時間を経てイオン化する確率を増大する。
【0164】
分極化He原子は、一つの位置から他の位置へとチップ端187の表面に沿って移動する。分極化He原子とチップ端187との間の引力は、分極化He原子の位置における、チップ端187における電場の強度に依存し、分極化He原子の移動により、局所的な電場が最も強いチップ186のチップ端の先端(例えば、末端棚142)に向かって原子が運ばれる。分極化He原子の移動のメカニズムは、(例えば、末端棚原子142のみに対応する散在するイオン化ディスクが確実に存在するように)、チップ186に印加される電気ポテンシャルを制御することと組み合わせることで、イオン源120を操作するために用いられ、これにより、ガス場イオン化源120によってHeイオンビーム192が生成される。この場合、イオンビームに含まれる各Heイオンは、Heガスと末端棚原子142のうちの一つとの相互作用により生成される。従って、イオンビーム192は、各末端棚原子142からの複数のHeイオンを含み、このとき、各Heイオンは末端棚原子142におけるイオン化によって生じうる。
【0165】
上述したように、一般的に、イオン化ディスク148のサイズ及び形状は、チップ端187に印加される電気ポテンシャルを変更することによって修正することができ、隣接するイオン化ディスク148は、適切な大きさで印加された電位により相互に重複するか、又は、適切な小ささで印加された電位により、空間的に相互に分散して維持される。典型的には、イオン化ディスク148はチップ端142、144、及び146から、約0.4nm離間される。チップ原子に対応する各イオン化ディスクは、所定のディスクと対応する原子とを結んだ線に沿って約0.02nmの厚さを有する。イオン化ディスク148は、典型的には、所定のディスクと対応する原子とを結んだ線の法線に沿って、対応する原子の略等しい直径を有する。
【0166】
図11は、チップ端187の操作構成を示し、チップ186に印加される電気ポテンシャルは3つのイオン化ディスク148を生成し、そのそれぞれが、3つの末端原子棚原子148のうちの1つに対応する。一旦、イオンがチップ端187の付近で生成されると、チップのポテンシャルが高いため、急速に加速され、チップから遠ざかる。Heイオンはチップ端187から複数の軌道を経て加速されて遠ざかる。このような軌道として、2つの軌道156を図11に示す。図11に示すように、軌道156は、中間末端棚原子の半値全幅(FWHM)軌道の分布における左右の限界に対応する。このように、軌道156が、中間末端棚原子の位置に対して(例えば、ライン154に沿って)後退させると、中間末端棚原子の仮想源152が定まる。この仮想源152の直径は、一般的には、中間末端棚原子の直径より小さく、中間末端棚原子の直径よりもかなり小さい(例えば、2倍以上、3倍以上、5倍以上、10倍以上)場合もある。同様のことが、他の末端棚原子についても言え、各末端棚原子は、対応する仮想源サイズを有している。
【0167】
末端棚原子の仮想源サイズが小さいことで、幾つかの有利な点がある。例えば、イオンビーム192の仮想源サイズが小さく、且つ、イオンビーム192を生じさせるイオン化ディスク148の厚さが比較的薄ければ、比較的高輝度且つ比較的エネルギー分布の狭いイオンビーム192を確実に得られる。
【0168】
特定の理論に縛られることを望むものではないが、低すぎるチップ温度は電流の安定性に悪影響を及ぼし、及び/又は、チップにおける不純物の吸着による不所望な影響を増大させる。概して、チップ186の温度は5K以上(例えば、10K以上、25K以上、50K以上、75K以上)、及び/又は100K以下(例えば、90K以下、80K以下)である。例えば、チップ186の温度葉5K〜100K(例えば、25K〜90K、50K〜90K、75K〜80K)である。チップ186の温度は、例えば、液体ヘリウム又は液体窒素のような冷却材と熱結合させることにより達成される。代替的又は追加的には、チップ186は、極低温冷凍庫を用いて熱冷却されうる。
【0169】
チップ186の温度が低すぎれば、吸着されたHe原子が、チップ端187の末端原子棚における末端棚原子142へと移動することにより運ばれる比率が減少し、単位時間当たりに末端棚原子142に到達してイオン化されるHe原子の数が不十分となる。この結果、(フィールドイオン顕微鏡(FIM)技術、又は走査型FIM(SFIM)技術によって)チップ186の放出パターンを観察すると、各末端棚原子からのイオンの存在量(abundance)について、比較的高い存在量から比較的低い存在量が交互に観察される(一般的に、ブリンキングと称される)。このような現象は、例えば、ある時点において、末端棚原子の付近にイオン化することができるHe原子が存在しない場合に生じうる。チップ186の温度が高くなると、He原子が、チップ端187の原子の末端棚に向かって移動する移動率が増加し、上述のように、末端棚原始142からのイオンの存在量が交互に高くなったり低くなったりする現象は低減又は抑制される。
【0170】
また、チップ186の温度が高すぎれば、分極化He原子は、非常に高い動的エネルギーを有するようになると考えられている。この動的エネルギーは、末端棚原子142の付近におけるHe原子を、効率的且つ確実にイオン化するためには十分に長い時間の間、チップ186に対して結合させておくためには高すぎる。また、FIM及び/又はSFIMを用いて観察されたような各末端棚原子からの放出パターンの消失にもつながりうる。よって、末端棚原子142におけるHeイオン化過程において、各末端棚原子142からの安定したイオン電流が確実に生成されるようにするために、チップ186の温度は慎重に制御され、不所望な高温又は低温効果を緩和させる。
【0171】
概して、イオン光学系130は、イオンビーム192をサンプル180の表面181に方向付けるように構成される。以下に更に詳述するように、イオン光学系130は、例えば、イオンビーム192に含まれるイオンをフォーカスし、コリメートし、偏向し、加速し、及び/又は減速させることができる。イオン光学系130は、イオンビーム192におけるイオンの一部のみがイオン光学系130を通過できるようにする。概して、イオン光学系130は、所望に構成された、多様な静電素子及び他のイオン光学素子を含む。イオン光学系130内の、1つ又は複数の素子(例えば、静電偏向器)の電場強度を操作することにより、Heイオンビーム192は、サンプル180の表面181を走査する。例えば、イオン光学系130は、イオンビーム192を2つの直交方向に偏向する2つの偏向器を有する。これらの偏向器は、イオンビーム192が表面181における各領域をラスタ状に横断できるように電場強度を変化させることができる。
【0172】
イオンビーム192がサンプル180に当たると、多様な種類の粒子194が生成されうる。これらの粒子は、例えば、二次電子、オージェ(Auger)電子、二次イオン、二次中性粒子、散乱イオン、及び光子(例えば、X線光子、IR光子、可視光子、UV光子)である。検出器150及び160は、それぞれ、Heイオンビームとサンプル180との相互作用によって生じた1又は複数の様々なタイプの粒子を計測するように、配置及び構成されている。図8に示すように、検出器150は、サンプル180の表面181から主に発生する粒子194を検出するように配置されており、検出器160は、サンプル180の表面183から主に発生する粒子194(放出粒子)を検出するように配置される。以下に更に詳述するように、概して、本願に係る顕微鏡においては、検出器の数及び構成はいかなるものであってもよい。一部の実施形態においては、複数の検出器を用い、そのうちのいくつかは、異なるタイプの粒子を計測するように構成されうる。また、ある実施形態においては、検出器は、粒子についての様々な情報(例えば、粒子エネルギー、所定の粒子の角度分布、所定の粒子の全存在量)を同時に生成するように構成されることも可能である。選択的には、これらのような検出器を組み合わせて用いることも可能である。
【0173】
概して、検出器によって計測される情報は、サンプル180に関する情報を決定するために用いられうる。典型的には、この情報は、サンプル180について、1つ又は複数の画像を取得することにより決定される。表面181上でイオンビーム192をラスタ走査させることにより、離散的なステップにおいて、サンプル180についての画素ごとの情報を取得することができる。検出器150及び160は、各画素において、1又は複数の異なるタイプの粒子194検出するように構成されている。典型的には、画素は正方形であるが、一部の実施形態においては、画素は異なる形状(例えば、矩形)を有しうる。画素の横長に対応する画素サイズは、例えば、100pm〜2μm(例えば、1nm〜1μm)でありうる。一部の実施形態においては、隣接画素の配置は、少なくとも200pm以内(例えば、少なくとも100pm以内、少なくとも75pm以内、少なくとも50pm以内)となるように決定されうる。よって、システムのオペレータは、ビームスポットの中心位置が、少なくとも200pm以内(例えば、100pm以内、75pm以内、50pm以内)と成るように決定しうる。ある実施形態においては、サンプル180の視野(FOV)は、200nm以上(例えば、500nm以上、1μm以上、50μm以上、100μm以上、500μm以上、1mm以上、1.5mm以上)、及び/又は25mm以下(例えば、15mm以下、10mm以下、5mm以下)である。視野とは、イオン顕微鏡によってイメージングされる、サンプル表面の領域を指す。
【0174】
顕微鏡システム100は、典型的には、電子制御システム170を介して制御される。例えば、電子制御システム170は、ガス源110によって供給されるガス、チップ186の温度、チップ186の電気ポテンシャル、抽出器190の電気ポテンシャル、抑制器188の電気ポテンシャル、イオン光学系130の構成素子の設定、サンプルマニピュレータ140の位置、及び/又は検出器150並びに160の位置並びに設定を制御するように構成されている。選択的には、これらのパラメータのうち1つ又は複数は、(例えば、電子制御システム170に一体化されたユーザインタフェースを介して)手動制御されうる。付加的又は代替的には、電子制御システム170は、検出器150並びに160によって収集された情報を(例えば、コンピュータのような電子プロセッサにより)分析して、サンプル180に関する情報(例えば、トポグラフィ情報、材料構成成分情報、結晶情報、電圧コントラスト情報、光学特性情報、磁気情報)を提供するために用いられうる。この情報は、画像、グラフ、表、スプレッドシートなどとして提供されうる。典型的には、電子制御システム170は、表示部又は他の出力装置、入力装置及び記憶媒体を持つユーザインタフェースを有しうる。
【0175】
電子制御システム170は、本明細書に開示した走査プロトコルに従って、イオンビーム192をサンプル180の表面上を走査させるようにも構成される。例えば、電子制御システム170は、部分Mの数や間隔などの様々な走査パラメータを、手動(例えば、操作者のアシストによる)で入力できるように構成される。代替的又は追加的には、電子制御システム170は、多様な走査パラメータ(例えば、部分Mの数及び間隔)を、入力情報(例えば、入射イオンエネルギー、サンプルの素材)に基づいて自動で決定するように構成されることもできる。一般的に、電子制御システム170は、本願に開示したあらゆる走査プロトコルを顕微鏡システム100において実施するように構成され、自動化の程度についても、全自動から手動までの様々な程度において実施するように構成される。
【0176】
A.全体
図12は、Heイオン顕微鏡システム200の概略構成を示す図である。顕微鏡システム200は、Heイオン源及びイオン光学系130を含む第1真空ハウジング202を備え、且つ、サンプル180及び検出器150並びに160を含む第2真空ハウジング204を備える。ガス源110は、供給管228からHeガスを顕微鏡システム200に供給する。フローレギュレータ230は供給管228を経たHeガスの流率を制御し、温度制御器232は、ガス源110内のHeガスの温度を制御する。Heイオン源は、チップマニピュレータ208に添付されたチップ186を含む。イオン光学系130は、第1レンズ216、整列偏向器220及び222、開口224、非点収差補正器218、走査偏向器219並びに222、及び第2レンズ226を含む。開口224は、開口マウント234内に配置される。サンプル180は、第2真空ハウジング203内で、サンプルマニピュレータ140の中又は上に配置される。検出器150及び160も、第2真空ハウジング204内に配置され、サンプル180からの粒子194を検出するように構成されている。典型的には、ガス源110、チップマニピュレータ208、抽出器190、抑制器188、第1レンズ216、整列偏向器220及び222、開口マウント234、非点収差補正器218、走査偏向器219並びに222、サンプルマニピュレータ140、及び/又は、検出器150及び/又は160が、電子制御システム170によって制御される。付加的には、電子制御システム170は、真空ポンプ236並びに237も制御する。これらは、真空ハウジング202並びに204、及びイオン光学系130の内部を減圧状態にするように構成されている。
【0177】
B.イオン源
上述したように、概して、チップ186は、あらゆる導電性材料で形成されうる。ある実施形態においては、チップ186は、単一の結晶金属のような、単一の結晶材料によって形成されうる。典型的には、チップ端187の原子の末端棚における、特定の単一の結晶方向は、チップ186の長軸方向に対して3°以内(例えば、2°以内、1°以内)の方向に整列する。一部の実施形態においては、チップ186の先端187は、特定数の原子(例えば、20原子以下、15原子以下、10原子以下、9原子以下、6原子以下、3原子以下)を有する原子棚に相当する。例えば、チップ186の先端187は、W(III)によって形成され、3つの原子(トリマー)を持つ末端棚を有することができる。図13及び14は、それぞれ、Wで形成されたチップ186の2つの原子棚であって、チップ端に最も近い原子棚を概略的に示す、拡大上面図及び、拡大側面図である。トリマーとして配置された3つのW原子302を含む末端棚は、W(III)表面に相当する。特定の理論に縛られることを望むものではないが、このトリマー表面は(成形、再成形、及び安定性の面で)有利である。これは、W(III)結晶面の表面エネルギーは、好適には、トリマーを形成するように、正三角形に配置された3つのW原子により形成される末端棚を支持している。これらのトリマー原子302は、W原子304の第2棚によって支持される。
【0178】
一部の実施形態においては、チップ186は、3つ未満の原子又は3つ以上の原子を含む末端棚を有しうる。例えば、W(III)チップは、2つの原子を含む末端棚か、又は1だけの原子を含む末端棚を有しうる。或いは、W(III)チップは、4以上の原子(例えば、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、10以上、又は、それ以上の原子)を有しうる。代替的又は付加的には、他のW結晶方向に対応するチップ(例えば、W(112)、W(110)、又はW(100))を用いることも可能であり、このようなチップは、一つ又は複数の原子(例えば、2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、10以上、又は、それ以上の原子)を含む末端棚を有しうる。
【0179】
一部の実施形態においては、単結晶W以外の素材(例えば、上述下金属のうちの一つの単結晶のような、金属単結晶)により形成されるチップを、イオン源において用いることが可能であり、そのようなチップは、1又は複数の原子(例えば2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、10以上、又は、それ以上の原子)を含む末端棚を有しうる。
【0180】
以下に述べるように、チップ端187の形状はイオンビームの品質に影響しうる。イオンビームの品質は、顕微鏡システム200の性能に影響を及ぼしうる。例えば、横から見た場合、チップ端187は、長軸に対して左右対称に形成されるか、長軸に対して左右非対称に形成されうる。ある実施形態においては、1又は複数の側面から見ると、チップ端187は、その長軸に対して左右対称に形成されており、1又は複数の他の側面から見ると、チップ端187は、その長軸に対して左右非対称に形成されていてもよい。
【0181】
図15は、トリマーの末端原子棚を有するW(III)チップを作成するためのプロセス400を示すフローチャートである。第1ステップ402では、単結晶W(III)前駆体線が、サポートアセンブリに取り付けられる。第2ステップ404では、前駆体線からチップを成形するために、前駆体線が電気化学浴中でエッチングされる。そして、プロセス400のステップ406において、エッチングされたチップは検査され、適切な構造的特性を有しているか検証される。構造的特性の検証は、エッチングされたチップの輪郭線画像を取得し、その輪郭線画像から得られたデータに基づいて様々な構造パラメータを計算することによって行う。例えば、この検査はSEMを用いて実施される。
【0182】
その後、ステップ408において、エッチング済前駆体線のチップ端の末端棚はトリマーに形成される。このプロセスは、(例えば、FIM又はSFIMを用いた)チップのイメージング及び、(例えば、電界蒸発を用いた)チップの成形を含む。そして、プロセス400のステップ410において、チップ186の先端187をシステム200内に配置する。顕微鏡システム200内に支持アセンブリが設けられている状態において、顕微鏡システム200は1又は複数の真空ポンプにより真空とされ、そして、チップ187を熱することにより、例えば、酸素、凝縮物、及び/又は他のチップ表面に付着しうる不純物を除去する。典型的には、例えば、チップ186は、900K以上(例えば、1000K以上、1100K以上)まで、10秒以上(例えば、30秒以上、60秒以上)の間、熱せられる。不純物の存在によりチップ形状が劣化した場合に、熱せられることでチップ186は再度削ることができる。
【0183】
システム200内にチップ186が整列された状態において、Heイオンビームは、イオンビーム192の一部は開口224を通るように整列され、プロセス400のステップ412において、顕微鏡システム200はHeイオンモードで操作されうる。
【0184】
チップ186の完全性を検証するために、顕微鏡システムをFIM又はSFIMモードで動作させることにより、チップ186からの電界放出パターンを周期的に監視する。チップ端187におけるトリマー構造が無傷であれば、チップ186はイオンビーム192を顕微鏡システム200に供給するために継続して用いられる。しかし、ある状況下においては、チップ186をFIM又はSFIMでイメージングすることにより、チップ端187のトリマー構造が、既に無傷ではないことを確認することができる。この場合、チップ186は、先ず、電界蒸発されて、チップを丸め、ダメージを受けたトリマー構造を除去し、その場所において(例えば、顕微鏡システム200からチップ186を取り出すことなく)、上述したプロセスにより再度鋭角化する。チップを形成及び検査し、そして、チップを顕微鏡システム内において調整する方法は、例えば、既に組み込んだ、米国特許出願11/600,711(米国特許出願公開第2007/0158558号明細書)、「イオン源、システム及び方法」、ビリーW. Wardら、出願日2006年11月15日、において開示されている。
【0185】
図16を参照すると、顕微鏡システム200内におけるチップ186の調整は、チップ186の長軸207をイオン光学系130の長軸132と整列させることを含む。これにより、チップ186の先端187における、軸207と軸132との間の距離は、2mm以下(例えば、1mm以下、500μm以下、200μm以下)となる。一部の実施形態においては、チップ186の先端187における軸207と軸132との間の角度は2°以下(例えば、1°以下、0.5°以下、0.2°以下)である。
【0186】
抽出器190は、開口191を含む。概して、抽出器290の形状と、開口191の形状は、所望に選択できる。典型的には、これらの特徴は、Heイオンが、確実に、高効率且つ高信頼性でイオン光学系130に方向付けられるように選択される。一部の実施形態においては、図16に示すように、抽出器190は、チップ186よりも+z方向に更に配置される。ある実施形態においては、抽出器190は、チップ186よりも、更に−z方向に配置される。そのような実施形態においては、例えば、チップ186は、抽出器190から突出して、z軸に沿って、抽出器190よりも更に+z方向に延在するようになる。抽出器190は、図16に示すような特定の構造を有するが、一般的に、抽出器190は、どのように設計されていてもよい。例えば、一部の実施形態においては、開口191の側面は、どのような形状の曲面であってもよい。
【0187】
抽出器190は、チップ186に対して、正と負のいずれにバイアスされていてもよい。一部の実施形態においては、抽出器190に印加される電気ポテンシャルは、チップ186に対して、−10KV以上(例えば、−5kV以上、0KV以上)、及び/又は、20KV以下(例えば15kV以下、10KV以下)である。
【0188】
付加的には、抑制器188もチップ186の付近に存在する。抑制器188は、例えば、抑制器188に印加されたポテンシャルを調節することによりチップ186付近における電場分布を変更させるために用いられうる。抑制器188は、抽出器190と共に、チップ186において生成されるHeイオンの軌道を制御するために用いられる。ある実施形態においては、図16に示すように、抑制器188は、+z方向に沿ってチップ186よりも遠くに配置される。一部の実施形態においては、チップ186は、+z方向に沿って抑制器188よりも遠くに配置され、チップ186は、抑制器188を通って+z方向に延在する。
【0189】
概して、顕微鏡システム200は、ビーム192におけるイオンのエネルギーが抽出器190を通過した後に所望の値に選択されるように構成される。典型的には、イオン光学系130の入口開口133を通過後の、イオンビーム192に含まれるイオンの平均エネルギーは、5keV以上(例えば、10KeV以上、20KeV以上、30KeV以上)、及び/又は、100KeV以下(例えば、90KeV以下、80KeV以下、60KeV以下、50KeV以下、40KeV以下、30KeV以下)である。例えば、一部の実施形態においては、入口開口133を通過した後のイオンビーム192に含まれるイオンのエネルギーは、5keV〜100KeV(例えば、10KeV〜90KeV、20KeV〜80KeV)である。例えば、サンプルを透過したイオンを検出することが望ましい実施形態においては、より高いイオンエネルギー(例えば、50KeV〜100KeV)が用いられうる。
【0190】
更に、ある実施形態においては、イオンビーム192のイオンのエネルギーは、イオン電流を変更することなく、変更することができる。すなわち、チップ186に印加される電気ポテンシャルは、実質的にイオンビーム192からのイオンビーム電流を変更することなく、イオンビームの平均エネルギーを加減するために調整されうる。
【0191】
イオン光学系130は、概して、例えば、レンズ、偏向器、フィルタのような、1又は複数の素子を有し、これらの素子は、イオン源120から発せられるイオンビームを、イオンビームがサンプルにあたる前に、コリメート、フォーカス、偏向、及び成形するために用いられうる。
【0192】
例示的な次元において、電圧その他の顕微鏡システム200の様々な構成要素についての設定は、例えば、米国特許出願11/600,711(米国特許出願公開第2007/0158558号明細書)、「イオン源、システム及び方法」、ビリーW. Wardら、出願日2006年11月15日、において開示されている。この開示内容の全体を、参照として本願に組み込む。
【0193】
C.検出器
検出器150及び160を、図12に概略的に示す。検出器150は、サンプル180(この表面にイオンがあたる)の表面181からの粒子を検出するように配置され、検出器160は、サンプル180の表面183からの粒子を検出するように配置される。概して、顕微鏡システム200において、様々な粒子を検出するために多様な検出器を用いることができる。そして、顕微鏡システム200は、いくつの検出器を備えてもよい。上述の多様な検出器は、測定すべき粒子や測定条件に応じて選択することができる。一部の実施形態においては、スペクトル分解検出器を用いることができる。このような検出器は、異なるエネルギー及び/又は波長の粒子を検出し、そして、検出した各粒子のエネルギー及び/又は波長に応じて、粒子を分類(resolve)することができる。ある実施形態においては、スペクトル分解検出器は、粒子のエネルギー及び/又は波長に応じて、粒子を検出器中の異なる領域に移動させることができる構成素子を含んでいる。
【0194】
ある例示的な検出器及び偏向器の構成を以下に示す。検出システム及び方法は、例えば、既に言及した、米国特許出願11/600,711(米国特許出願公開第2007/0158558号明細書)、「イオン源、システム及び方法」、ビリーW. Wardら、出願日2006年11月15日、において開示されている。この開示内容の全体を、参照として本願に組み込む。
【0195】
(i)エバーハート−ソンリー検出器
エバーハート−ソンリー(ET)検出器を、二次電子、イオン、及び/又は中性粒子を検出するために用いることができる。図17は、ET検出器600を概略的に示す図である。ET検出器600は、粒子選択器601、変換材料602、サポート604、光子検出器606、及び電圧源607並びに608を備える。
【0196】
動作中、電圧源607は比較的小さい電圧(例えば、100〜500Vのような500V以下の電圧)を、(導電性材料によって形成される)粒子選択器601に印加する。電圧源608は、比較的大きい電圧(例えば、5kV以上、10KV以上)を変換材料602に印加する。ET検出器がサンプル180からの電子(例えば、二次電子)を検出するために用いられる実施形態においては、粒子選択器601及び変換材料602に対して印加される電圧の符号は、サンプル180に対しては正である。ET検出器がサンプル180からの電子(例えば、二次電子、後方散乱電子)を検出するために用いられる実施形態においては、粒子選択器601及び変換材料602に対して印加される電圧の符号は、サンプル180に対しては負である。ある実施形態においては、サンプル180にも(大地アースに対して)バイアスがかけられ、サンプル180から検出器600への粒子の供給を補助する。例えば、ET検出器がサンプル180からの二次電子を測定するために用いられる場合、サンプルは大地アースと比較して負のバイアスがかけられる。マニピュレータ140に負のポテンシャルバイアスをかけることは特に有益であり、例えば、高アスペクト比のホール部(例えば、深いホール部)又はサンプルのビア部を介して生成された二次電子を検出する場合に有益である。大地アースと比較して負のポテンシャルバイアスは、ホール部又はビア部から放出される電子の加速と、サンプルから遠ざかることとを補助し、電子の検出を容易にする。負のバイアスのない状態では、二次電子の多くは、ホール部又はビア部の壁部付近でサンプル内に再度入り、ホール部又はビア部から放出されず、検出されない。
【0197】
例えば、ET検出器をサンプルからのイオンを検出するために用いた場合、サンプル180には正のバイアスがかけられる。バイアスとしてかけられる電気ポテンシャルの大きさは、、5V以上(例えば、10V以上、15V以上、20V以上、30V以上、50V以上、100V以上)である。
【0198】
サンプル180からの荷電粒子610(例えば、電子又はイオン)は、粒子選択器601に引き付けられ、粒子選択器601を通過して、変換材料602に向かって加速される。そして、荷電粒子610は、変換材料602にあたり、光子612を生成する。光子612は、サポート604を通過して、光子検出器606によって検出される。
【0199】
ET検出器は、中性又は荷電粒子を検出するためには、サンプル180に対してどこに配置してもよい。典型的には、例えば、ET検出器は、イオン光学系130の第2レンズ226に隣接して配置される。選択的には、ET検出器は、サンプル180に向かって僅かに傾斜させて配置してもよい(例えば、図12に示した構成と同様の構成に配置してもよい)。
【0200】
ある実施形態においては、ET検出器をサンプル180の表面183の付近に配置することもできる。このような構成は、例えば、表面183から生じた、サンプル180の二次電子(例えば、サンプル180を透過した後の二次電子)を測定するために探索する場合に望ましい。この場合、ET検出器は、図12に示す検出器160の構成に類似する構成を有しうる。
【0201】
(ii)マイクロチャネルプレート検出器
一部の実施形態においては、マイクロチャネルプレート検出器は、サンプルからの二次電子のフラックス、中性原子、又はイオンを増幅させるために用いられる。マイクロチャネルプレートは、典型的には、融合シリカのような材料から形成され、アレー状に配置された、直径の小さい多くのチャネルを含む。各チャネルに入る粒子は、チャネル壁に衝突し、自由電子を生成する。典型的には、粒子(中性原子、イオン、又は、電子)が一回チャネル壁に衝突する度に、複数の自由電子が生成される。これにより、入力粒子信号の増幅に対応するカスケード電気信号がマイクロチャネルプレートから放出される。
【0202】
マイクロチャネルプレートベースの検出器(1又は複数のマイクロチャネルプレートを備える)は、イオン、二次電子、及び/又はサンプル180からの中性原子を検出するように構成されている。サンプル180から形成された中性粒子及び/又はイオンは(例えば、二次電子及び原子、散乱イオン及び一次原子)は、典型的には、サンプル180の表面181(イオンビームがあたった表面)から放出される。したがって、マイクロチャネルプレートベースの検出器は、サンプル180からの中性子及び/又はイオンを測定するように構成されており、一般的には、図8及び12に示した検出器150の位置と同じ位置に配置される。しかし、ある実施形態においては、中性粒子及び/又はイオン(例えば、透過イオン)を検査することもできる。このような実施形態においては、マイクロチャネルプレートベースの検出器は図8及び12に示す検出器160の位置と同じ位置に配置される。二次電子は、表面181(イオンビームがあたる表面)及び/又はサンプル180の表面183(イオンビームがあたる表面とは逆側の表面)の何れかから検出される。そして、マイクロチャネルプレートベースの検出器は、サンプル180からの二次電子を検出するように構成されており、図10及び14に示す検出器150及び/又は検出器160の位置と同じ位置に配置される。
【0203】
マイクロチャネルプレートは、入力粒子信号を増幅し、入力信号を出力電気信号に変換する。出力電気信号を可視化するために、マイクロチャネルプレートベースの検出器は、変換材料、スクリーン、及び光子検出器(上述参照)も備えうる。
【0204】
一部の実施形態においては、マイクロチャネルプレートは、イオン光学系130の構成要素に直接取り付けられる。図18は、静電レンズ226に直接マウントされたマイクロチャネルプレート検出器620の断面図である。レンズ226は、平坦な下表面622を有する円錐形状である。検出器620は、表面622に直接マウントされる。サンプル180がイオンビーム192に露光されるとき、サンプル180からのイオン、二次電子、及び/又は中性原子(矢印624で集合として示す)は、マイクロチャネルプレート検出器620によって検出されうる。検出器620は、検出された粒子フラックスに比例する電流を記録して、電子制御システム170に伝える。
【0205】
(iii)変換プレート
一部の実施形態において、変換プレートは、サンプル又は中性粒子(例えば、一次中性He原子)からのイオン(例えば、散乱イオン、二次イオン)の検出に用いられうる。典型的には、変換プレートは、入射イオン又は原子が当たった際の二次電子収率の高い薄箔材料により形成されうる。このような材料の一例としては、プラチナが挙げられる。この二次電子収率は、例えば、検出器150及び/又は160(図8及び12)として構成された適切な電子検出器により検出可能な二次電子の量を増加させることができる。
【0206】
(iv)チャンネルトロン検出器
チャンネルトロン検出器は、サンプルから放出される、電子、イオン及び中性原子のような粒子を検出するために用いられうる。チャンネルトロン検出器は、マイクロチャンネルプレート検出器に関して説明したものと同様の、複数の内部での衝突によって粒子信号を増幅することによって機能する。チャンネルトロン検出器から出力される増幅された粒子信号を、(例えば、電子制御システムを用いて)測定することによって、サンプル180からの、比較的弱い二次電子、イオン、又は中性原子フラックスを測定することが可能である。サンプル180からの二次電子を測定する場合、チャンネルトロン検出器は、図10及び14に示す検出器150及び/又は検出器160の位置と同じ位置に配置される。典型的には、サンプル180からのイオン及び/又は中性粒子の測定のために、チャンネルトロン検出器は、図8及び12に示した検出器150の位置及び/又は検出器160の位置と同じ位置に配置される。
【0207】
(v)りん光検出器
りん光ベースの検出器は、透過性基板の上に体積されたりん光材料の薄層を含み、CCDカメラ、PMT、又は1又は複数のダイオードのような光子検出器を用いて、サンプルからのイオン及び/又は中性粒子を検出することができるものである。りん光性層にあたる粒子は、光子検出器によって検出されたりん光性材料から放出された光子を含む。りん光ベースの検出器は、測定される粒子のタイプに応じて(上記参照)、図8及び12に示した検出器150の位置及び/又は検出器160の位置と同じ位置に配置される。
【0208】
(vi)半導体検出器
半導体検出器(SSD)は、サンプルからのイオン及び/又は中性粒子を検出するために用いられうる。半導体検出器は、シリコン又はドープされたシリコン材料によって形成されるセンサによって構成されうる。入射粒子がセンサにあたると、センサ材料内で電子ホールペアが生成され、電子制御システム170により検出されうる電流を供給する。入射粒子によって生成される電子ホールペアの数と、これらにより生成される電流の大きさは、ある程度粒子のエネルギーに依存する。したがって、半導体検出器は、粒子のエネルギー計測に特に有効であり、サンプル180からの高エネルギー粒子(例えば、散乱Heイオン及び中性He原子)を検出するにあたって特に有効である。
【0209】
(vii)シンチレータ検出器
りん光ベースの検出器と同様に、シンチレータベースの検出器は、入射粒子(電子、イオン、又は中性原子)の衝突により光子を生成するシンチレータ素材を含む。適当なシンチレータ素材は、例えば、YAG及びYAPである。シンチレータベースの検出器における光子収率は、入射粒子のエネルギーに依存する。よって、シンチレータ検出器は、粒子のエネルギー計測に有効であり、具体的には、サンプル180からの高エネルギー粒子(例えば、散乱Heイオン及び中性He原子)を検出するにあたって特に有効である。
【0210】
(viii)イオンのためのエネルギー検出器
サンプルからのイオン(例えば、散乱Heイオン)のエネルギー検出を実行するために、様々な検出器及び検出スキームを用いることができる。静電プリズム検出器は、電場及び/又は磁場を用いて入射イオンを偏向させ、それらのエネルギーに依存する偏向量を利用して、異なるエネルギーのイオンを空間的に分離することができる。磁気プリズム検出器も、イオンのエネルギーに基づいてイオンを空間的に分離するために利用することができる。上述した検出器(例えば、マイクロチャンネルプレート、チャンネルトン、その他)の何れかを用いて、偏向されたイオンを検出することができる。
【0211】
四極子検出器は、サンプルからのイオンのエネルギーを分析するためにも用いることができる。四極子検出器において、四極子内の無線周波数(RF)電場は、選択した質量及びエネルギーを有するイオンが、四極子内において、真直ぐな、偏向のない軌道に沿って確実に進むようにする。異なる質量及び/エネルギーのイオンは、四極子内で曲線軌道を進む。四極子分析器内におけるイオンの偏向位置から、イオンのエネルギーを検出することができる。
【0212】
一部の実施形態においては、イオンの飛行経路に沿い、且つ検出器の手前に配置した、正のバイアスをかけた粒子選択器(例えば、導電性材料のスクリーン或いは格子、又は円筒状金属管、又はリング)を配置することによってイオンエネルギーを判定できる。粒子選択器601に印加することが可能な電気ポテンシャルの大きさは、最初は非常に高くすることができ(例えば、サンプル180からのイオンが全く通過できないような値とする)、そして、イオンの検出に適切な検出器(上記参照)を使用している間は、この電気ポテンシャルを減少させることができる。粒子選択器にかけられるポテンシャルバイアスの大きさに応じて、検出器に到達するイオンの電流は、イオンのエネルギーに関する情報を判定するために用いることができる。
【0213】
(ix)電子のためのエネルギー検出器
サンプルからの電子(例えば、二次電子)のエネルギーを測定するために、様々な検出器及び検出スキームを実施することができる。プリズム検出器は、電場及び/又は磁場を用いて入射イオンを偏向させ、それらのエネルギーに依存する偏向量を利用して、異なるエネルギーのイオンを空間的に分離することができる。上述した検出器の何れかを用いて、偏向されたイオンを検出することができる。
【0214】
一部の実施形態においては、イオンの飛行経路に沿い、且つ検出器の手前に配置した、負のバイアスをかけた粒子選択器(例えば、導電性材料のスクリーン或いは格子、又は円筒状金属管、又はリング)を配置することによってイオンエネルギーを判定できる。粒子選択器における電気ポテンシャルの大きさは、最初は非常に高くすることができ(例えば、サンプル180からのイオンが全く通過できないような値とする)、そして、イオンの検出に適切な検出器(上記参照)を使用している間は、この電気ポテンシャルを減少させることができる。粒子選択器にかけられるポテンシャルバイアスの大きさに応じて、検出器に到達するイオンの電流は、イオンのエネルギーに関する情報を判定するために用いることができる。
【0215】
(x)飛行時間検出器
上述した検出器は、二次電子、イオン、中性原子の飛行時間を計測するようにも構成されうる。飛行時間検出を行うために、イオンビーム192をパルスモードで操作する。イオンビーム192は、例えば、1又は複数のビーム偏向器に印加される電気ポテンシャルを迅速に変更させることにより、パルスにすることができる。例えば、これらのポテンシャルを上昇させることで、イオン光学系130における通常の経路とは異ならせて、イオンビーム192を一時的に開口部224から遮ることができる。ポテンシャルを再度上昇させる前の短時間の間、偏向器のポテンシャルを通常の値に戻せば、Heイオンのパルスをサンプル180に供給することができる。
【0216】
同時に、検出器150及び160を電子制御システム170からのクロック信号に同期させることも可能である。このクロック信号は、偏向器に印加するポテンシャルの時間間隔の変化に基づくものである。よって、Heイオンのパルスの発射の間の時間間隔と、サンプル180からの粒子の検出について、正確に測定することができる。イオン光学系130内におけるHeイオンパルスの伝播時間に関して把握した情報から、サンプル180と検出器150及び/又は160との間において検出される粒子の飛行時間を決定することができる。
【0217】
(xi)角度依存計測
サンプルからの粒子の、相対的な存在量及びエネルギーを測定することに加えて、上述したような検出器を用いて角度依存散乱情報を取得することができる。典型的には、角度依存情報を取得するために、検出器はマウント(例えば、スイベルマウント)に取り付けられる。これにより、検出器をサンプル180についての立体角範囲全体で検出器を動かすことができる。ある立体角に対応する、サンプル180ついての所定方向における、粒子の存在量及び/又はエネルギー計測結果が記録される。検出器は、連続的に異なる立体角に配置され、測定された量の角度依存性を決定するために、繰り返し測定する。一部の実施形態においては、ピンホールのような制限された開口部を、散乱粒子の経路において検出器の手前に配置し、サンプル180からの粒子の計測を行う角度範囲を更に制限する。
【0218】
(xii)光子検出器
イオンとサンプル180との相互作用によって生成された光子を検出するために、PMTのような標準的な光子検出器を用いることができる。サンプル180から発せられる光子フラックスが十分に大きければ、ダイオード、ダイオードアレー及びCCDカメラのような、比較的低感度の光子検出器を用いることができる。
【0219】
一部の実施形態においては、光子検出器は、例えば、対象とする特定の光学信号を他の光学信号から独立させるために構成された、様々な光学素子も含みうる。例えば、ある実施形態においては、光子検出器は、サンプル180から発せられる光子信号における特定の波長帯を選択するためのフィルタのような光学素子を備えうる。このフィルタは、サンプル180についての材料の構成成分の情報を提供することができる。このフィルタは、例えば、不所望な波長の光子をブロックすることができる(例えば、不所望な波長の光子を吸着したり、不所望な波長の光子を屈折させたり、不所望な波長の光子を偏向させたりする)。一部の実施形態においては、(1又は複数のグレーチングのような回折素子、及び/又は1又は複数のプリズムのような屈折素子、及び/又は、光子の波長分解検出が可能な1又は複数のスペクトロメータシステムによって)異なる波長を空間的に分散させることにより、(サンプル180により生成された光子のスペクトルを測定するために)光学素子はスペクトル解像度を提供することができる。一部の実施形態においては、光子検出器は、波長板及び/又は偏光子のような偏光操作素子を含みうる。これらの偏光操作素子は、選択された偏光状態の光子のみをPMTに到達させるように構成され、例えば、サンプル180から生じた光子信号について、偏光選択的な検出を行うことを可能にする(これにより、例えば、サンプル180の結晶方向情報の決定が補助される)。一部の実施形態においては、光子検出器は、ミラー、レンズ、ビームスプリッター、その他入射イオンの方向を再度方向付け、操作するための光学素子も備えうる(例えば、検出された光子の立体角を大きくするためである)。
【0220】
一般的に、光子検出器は、サンプル180対してあらゆる角度及び距離の光子を検出するように配置されうる。例えば、ある実施形態においては、光子検出器は、表面181(イオンビーム192が入射する、サンプル180の表面)又は、表面183(イオンビーム192が入射する表面の反t内側に位置する、サンプル180の表面)から発せられた光子を検出するように配置されることも可能である。選択的には、表面181(イオンビームが入射する表面)、表面183(イオンビームが入射する表面の反対側の表面)、及び/又はサンプル180の他の表面から発せられた光子を検出するように、複数の光子検出器を用い、又は、構成することができる。
【0221】
[操作パラメータ]
イオンビーム192は、サンプル180の表面181上において比較的小さいスポットサイズを有しうる。例えば、一部の実施形態においては、イオンビーム192のサンプル180の表面181上におけるスポットサイズは、寸法が10nm以下(例えば、9nm以下、8nm以下、7nm以下、6nm以下、5nm以下、4nm以下、3nm以下、2nm以下、1nm以下)でありうる。ある実施形態においては、サンプル180の表面181におけるイオンビーム192のスポットサイズは、0.5nm以上(例えば、0.1nm以上、0.2nm以上、0.25nm以上、0.5nm以上、0.75nm以上、1nm以上、2nm以上、3nm以上)である。一部の実施形態においては、表面181上のイオンビーム192のスポットサイズは、寸法が、0.05nm〜10nm(例えば、0.1nm〜10nm、0.2nm〜10nm、0.25nm〜3nm、0.25nm〜nm、0.1nm〜0.5nm、0.1nm〜0.2nm)である。本明細書において使用したように、スポットサイズは図19A〜19Cを参照して、以下のように決定されうる。金で形成された島状部1700は、寸法が50nm〜2000nmであり、カーボン表面1710上に配置される。島状金は、例えば、カーボン表面への金蒸着により形成される。カーボンに蒸着された島状部を含む測定サンプルは、本願に示す測定に適しており、且つ、例えば、Structure Probe社(ペンシルバニア州、ウェストチェスター)から入手することができる。イオン顕微鏡を、イオンビーム192が島状金の表面と、島状金の片側上のカーボン表面の部分を走査するように操作する(矢印1730)。二次電子の強度をイオンビームの位置の関数として測定する(図19C)。漸近線1740及び1750は、カーボン及び金の平均総存在量に対応して算出(描画)され、漸近線1760及び1770の間の存在量の違いに関連する、垂線1760及び1770は、総存在量がそれぞれ25%及び75%の位置に対応して算出(描画)される。イオン顕微鏡200のスポットサイズは、垂線1760及び1770の間の距離である。
【0222】
概して、サンプル180の表面181におけるイオンビーム192の電流は、1nA又はそれ以下(例えば、100pA又はそれ以下、50pA又はそれ以下)、及び/又は、0.1fA又はそれ以上(例えば、1fA又はそれ以上、10fA又はそれ以上、50fA又はそれ以上、100fA又はそれ以上、1pA又はそれ以上、10pA又はそれ以上)である。例えば、一部の実施形態においては、サンプル180の表面181におけるイオンビーム192の電流は、0.1fA〜1nA(例えば、10fA〜100pA、100fA〜50pA)である。一部の実施形態においては、サンプルイメージングに当たって、比較的低いビーム電流を用いることが望ましい。例えば、いくつかの生物学的及び/又は薬学的用途においては、(例えば、サンプルに与えるダメージを低減するために、)サンプルイメージングにあたって低い電流を用いることが更に重要である。このような実施形態においては、1つの電流(例えば、10fA以上の電流)が気体電界イオン顕微鏡を使用するための準備に用いられ、これとは異なる大きさの電流(例えば、0・1fAのような、1fA以下の電流)が、サンプルイメージングに用いられうる。
【0223】
概して、イオンビーム192の、サンプル180の表面181におけるエネルギーの広がりは、5eV以下(例えば、5eV以下、3eV以下、2eV以下、1eV以下、0.5eV以下)である。一部の実施形態においては、イオンビーム192の、サンプル180の表面181におけるエネルギーの広がりは、0.1eV以上(0.2eV以上、0.3eV以上、0.4eV以上)である。例えば、イオンビーム192の、サンプル180の表面181におけるエネルギーの広がりは、0.1〜5eV(0.1〜3eV、0.1〜1eV)である。
【0224】
イオンビーム192は、サンプル180の表面181において比較的高い輝度を有する。例えば、イオンビーム192は、サンプル180の表面181において、輝度が1×109A/cm2sr(例えば、1×1010A/cm2sr以上、1×1011A/cm2sr以上)である。一部の実施形態においては、チップ186付近におけるガス圧力を上昇させるか、及び/又はチップ186の温度を低下させることによって、輝度を上昇させることができる。本明細書において参照したように、イオンビームの輝度は以下のように計測する。イオンビーム192におけるイオン軌道の分布のFWHMは、正味の電場が比較的小さく、イオン軌道が略直線に近い、抽出器190と第1レンズ216との間の空間領域においては、x、yの両方向について決定される。全体で100個のイオン軌道が、イオンビーム192におけるイオン軌道の分散からランダムに選択されたx、yの両方向のFWHM幅内に入る。100個のイオン軌道のそれぞれは、略直線であり、チップ端187に向かって突き出している。特定のポイントztにおける軌道のz軸に沿う空間的広がりは、x−y平面に平行であり、且つポイントztを通る平面Ztにおいて、後方に突き出す軌道と平面Ztとが交差するポイントの全てを含む最小の円を生成することによって評価できる。最小直径の円の直径はdsmである。典型的には、ポイントZtがチップ端187に近くなるほど、dsmは小さくなり、ポイントZtがサンプル180に近くなるほど、dsmは大きくなる。Zt=Z0のポイントにおいて、dsmは、最小値d0である。すなわち、x−y平面に平行な平面における軌道の空間的広がりは最小となる。ポイントZ0における、最小直径円の直径d0は、顕微鏡システム200の仮想のソースサイズとして示される。次いで、上述したように、抽出器190と第1レンズ216との間における、イオンビーム192のFWHM領域におけるイオンビーム192の発散及びビーム電流が測定される。最終的に、輝度は、ビーム電流を仮想源サイズ及び立体発散角で割ることによって算出される。
【0225】
イオンビーム192は、サンプル180の表面181において、比較的高い、還元輝度を有する。例えば、イオンビーム192の還元輝度は、サンプル180の表面181において、5×108A/cm2srV以上(例えば、1×109A/cm2srV以上、1×1010A/cm2srV以上)である。本明細書において述べたように、イオンビームの還元輝度は、イオンビームの輝度を、イオンビーム電流を測定した位置におけるイオンビームに含まれるイオンの平均エネルギーで割った値である。
【0226】
イオンビーム192は、抽出器190の遠位端193において比較的エタンデュ(etendue)が低い。例えば、抽出器190の遠位端193における、イオンビーム192のエタンデュは、5×10-21cm2sr以下(例えば、1×10-22cm2sr以下、1×10-23cm2sr以下、1×10-24cm2sr)である。本明細書において述べたように、イオンビームのエタンデュは、輝度の逆数と、ビーム電流の数学的結果として得られる。
【0227】
イオンビーム192は、抽出器190の遠位端193における還元エタンデュが比較的低い。例えば、例えば、抽出器190の遠位端193における、イオンビーム192の還元エタンデュは、1×10-16cm2sr以下(例えば、1×10-17cm2sr以下、1×10-18cm2sr以下、1×10-19cm2sr)である。イオンビームの還元エタンデュは、イオンビームのエタンデュと、ビーム電流を測定した位置におけるイオンビームに含まれるイオンのエネルギー対荷電の平均比率との数学的結果として得られる。
【0228】
イオンビーム192は、サンプル180の表面181に対して、比較的低い角度に集束する。例えば、一部の実施形態においては、イオンビーム192の集束半角は、5mrad以下(例えば、1mrad以下、0.5mrad以下、0.1mrad以下)、及び/又は0.05mrad以上でありうる。本明細書において述べたように、イオンビームの半角集束は以下のように決定される。上述したような、カーボン基板上の島状金を有するサンプルを、イオン顕微鏡200にマウントし、z方向に移動してイオンビーム192の焦点位置が可能な限り金島の直径方向における最高点の付近となるように配置する。イオンビーム192を、金島の直径に沿って直線的に移動し、上述したように、フォーカスされた状態のイオンビームのスポットサイズsfを測定する。そして、サンプルを、イオン光学系130から遠ざかるように、+z方向にsz=1μmだけ移動し、イオンビーム192を、同じ金島の直径に沿って直線的に移動し、フォーカスされていない状態のイオンビームのスポットサイズsdを測定する。集束角度ηは、フォーカスされたスポットサイズ並びにフォーカスされていないスポットサイズの測定と、移動距離と、に基づいて下式のように、三角関数を用いることで決定することができる。
【数12】
ここで、イオン顕微鏡200の集束半角は、η/2である。
【0229】
イオン顕微鏡200は、比較的解像度が良好である。例えば、一部の実施形態においては、イオン顕微鏡200の解像度は、10nm以下(例えば、9nm以下、8nm以下、7nm以下、6nm以下、5nm以下、4nm以下、3nm以下、2nm以下、1nm以下)でありうる。ある実施形態においては、イオン顕微鏡200の解像度は、0.05nm以上(例えば、0.1nm以上、0.2nm以上、0.25nm以上、0.5nm以上、0.75nm以上、1nm以上、2nm以上、3nm以上)である。一部の実施形態においては、イオン顕微鏡200の解像度は、0.05nm〜10nm(例えば、0.1nm〜10nm、0.2nm〜10nm、0.25nm〜3nm、0.25nm〜1nm、0.1nm〜10nm、0.1nm〜0.5nm、0.1nm〜0.2nm)である。以下で言及する、イオンビームの解像度とは、イオン顕微鏡を用いて得られる画像から高い信頼度で計測することができる最も小さい構造の大きさである。同一条件下で計測された10枚の画像において、計測誤差が実際の構造の大きさに対して10%以下であり、測定された大きさの標準偏差が、実際の構造の大きさの5%以下である場合に、その構造のサイズは高い信頼度で計測されたものとする。
【0230】
イオン顕微鏡200は、比較的短時間で高品質の画像を取得するために用いることができる。例えば、イオン顕微鏡200は、品質係数0.25以上(例えば、0.5以上、0.75以上、1以上、1.5以上、2以上)である。本明細書において述べたように、品質係数は以下のようにして算出される。半分がシリコン(Si)で、もう半分が銅(Cu)により形成され、これらの境界はサンプルを横切る直線であるような平面サンプルは、この境界がy軸に平行に成るように配置される。このサンプルは、x−y配列が512×512となるようにサンプル表面をサブ領域に分割して、画素毎にイメージングされる。測定中のピクセル毎の滞留時間は、100nsである。サンプルからの二次電子の総存在量は、サンプル表面おけるイオンビームの位置の関数として測定される。サンプル中のSiに対応する画素については、Si画素輝度の分布に基づく標準偏差SD1と、平均画素輝度G1とを決定する。サンプル中におけるCuに対応する画素については、平均画素輝度G2Cu画素輝度の分布に基づく標準偏差SD2と、平均画素輝度G2とを決定する。そして、下式により、品質係数が算出される。
【数13】
【0231】
イオンビーム192に露光されても、サンプル180の表面181は、比較的小さいダメージを受けるだけである。例えば、ダメージ試験によれば、サンプル180の表面181は、値25nm以下(例えば、20nm以下、15nm以下、10nm以下、5nm以下)でありうる。本明細書において述べたように、ダメージ試験は以下のようにして実施される。4平方μm視野を有する原子平坦シリコン(純度99.99%)サンプルを、サンプル上でのビーム電流が10pA、スポットサイズが10nm以下のイオンビーム電流を用いて、サンプル表面上で画素毎にラスタ走査させて、120秒間イメージングする。ラスタ化のために、4平方μm視野を512×512ピクセル配列に分割する。ダメージ試験の値は、ダメージ試験の実施により得られるシリコンサンプルのイメージングされた部分における最大のエッチング距離に相当する。
【0232】
イオン顕微鏡200は、比較的深いフォーカス深度を有する。例えば、一部の実施形態においては、イオン顕微鏡200のフォーカス深度は5nm以上(例えば、10nm以上、100nm以上、1μm以上)、及び/又は200μm以下(例えば、100μm以下、10μm以下)でありうる。一部の実施形態においては、イオン顕微鏡200のフォーカス深度は、200μm〜5nm(例えば、500μm〜5nm、1mm〜5nm)でありうる。ここで使用したように、イオンビームのフォーカス深度は、以下のようにして測定される。(Heイオンビームスポットサイズの測定に関連して上述したように、)カーボン基板上の島状金を有するサンプルを、Heイオン顕微鏡内に挿入し、Heイオンビームのスポットサイズを、上述の方法で測定する。z軸法クのサンプル位置を、対話的に調整して、最小のHeイオンビームスポットサイズとなるサンプル位置を決定する。このときのz軸における位置をzfと称する。Heイオンビームのzfにおけるスポットサイズは、ssfとして示す。そして、サンプルを、zfに対して−z方向に段階的に移動させる。連続的且つ段階的な移動の後に、Heイオンビームのスポットサイズ計測を(zfの決定のために用いたサンプル上の位置と同じ位置について)行う。サンプルの移動は、計測されたHeイオンビームスポットサイズが、2ssfになった時点で終了する。このときの、z軸方向におけるサンプルの位置は、zuとして示す。そして、サンプルを、zuに対して、ポイントzfを経由して、+z方向に段階的に移動させる。連続的且つ段階的な移動の後に、Heイオンビームのスポットサイズ計測を(zfの決定のために用いたサンプル上の位置と同じ位置について)行う。サンプルの移動は、計測されたHeイオンビームスポットサイズが、2ssfになった時点で終了する。このときの、z軸方向におけるサンプルの位置は、zlとして示す。Heイオン顕微鏡のフォーカス深度dfは、df=|zl−zu|により算出される。
【0233】
一部の実施形態においては、本明細書に示す気体電界イオン顕微鏡(例えば、Heイオン顕微鏡)は、例えば、二次電子収率、散乱イオン存在量、及び/又は角度及びエネルギー分解イオン検出を利用して、原子番号(z値)が非常に近いサンプル内の成分を区別するために用いることができる。例えば、ある実施形態においては、気体電界イオン顕微鏡は、原子番号(z値)が1異なる成分を区別するために用いられる。
【0234】
ある実施形態では、本願に開示したような気体電界イオン顕微鏡(例えば、Heイオン顕微鏡)が、例えば、二次電子収率、散乱イオン存在量、及び/又は角度及びエネルギー分解イオン検出を利用して、質量の非常に近いサンプル内の成分を区別するために用いられうる。ある実施形態においては、気体電界イオン顕微鏡は、1原子質量単位以下(例えば、0.9原子質量単位以下、0.8原子質量単位以下、0.7原子質量単位以下、0.6原子質量単位以下、0.5原子質量単位以下、0.4原子質量単位以下、0.3原子質量単位以下、0.2原子質量単位以下、0.1原子質量単位以下)だけ異なる成分を区別するために用いられうる。一部の実施形態においては、サンプルは、平均質量の異なる領域を有する素材(例えば、合金)により形成されうる。このような実施形態においては、ガスbイオン顕微鏡は、例えば、質量が1原子質量単位以下(例えば、0.9原子質量単位以下、0.8原子質量単位以下、0.7原子質量単位以下、0.6原子質量単位以下、0.5原子質量単位以下、0.4原子質量単位以下、0.3原子質量単位以下、0.2原子質量単位以下、0.1原子質量単位以下)だけ異なる成分を区別するために用いられうる。
【0235】
本願明細書に開示したようなシステム及び方法に関連する追加の走査パラメータは、たとえば、上述した、米国特許出願11/600,711(米国特許出願公開第2007/0158558号明細書)、「イオン源、システム及び方法」、ビリーW.Wardら、出願日2006年11月15日、において開示されている。
【0236】
コンピュータハードウェア及びソフトウェア
概して、上述した分析方法は、コンピュータハードウェア又はソフトウェアにおいて、或いはそれらの組み合わせにより実行されうる。この方法は、標準的なプログラミングテクニックを用いて、本明細書において開示した方法及び図面を参照することにより、コンピュータプログラムに実装可能である。プログラムコードが、入力データに適用され、本明細書に開示したような機能が実行され、出力情報が生成される。出力情報は、1つ又は複数の表示モニタの様な出力装置に適用される。各プログラムは、コンピュータと通信するためのハイレベル手続型言語又はオブジェクト指向言語において実装されうる。しかし、これらのプログラムは、必要に応じて、アセンブリ又はマシン言語においても実装されうる。どのような場合であっても、言語は、コンパイル又は翻訳された言語である。更には、プログラムは、この目的のための専用集積回路において実行することが可能である。
【0237】
このような各コンピュータプログラムは、好適には、一般的又は特定目的のプログラム制御可能なコンピュータによって読み出し可能な、記憶媒体又は装置(例えば、ROM又は磁気ディスケット)に記憶され、記憶媒体又は装置をコンピュータによって読み込んで上述の手順を実行する場合に、コンピュータを構成又は動作させる。このコンピュータプログラムは、プログラム実行中において、キャッシュ又はメインメモリに記憶されうる。分析方法は、コンピュータプログラムの記憶されたコンピュータ可読記憶媒体としても実装可能である。この記憶媒体は、コンピュータを特定且つ予め定められた方法で本明細書に記載したような機能を実行するように動作させるように構成されている。
【0238】
[変形例]
イオンビームを用いる実施形態について記載してきたが、更に一般的には、あらゆる適切に荷電された粒子ビームを利用することができる。例えば、電子ビームを用いることができる。一部の実施形態においては、電子ビームは走査電子顕微鏡を用いて生成することができる。電子ビームを利用する場合は、本明細書に示した走査プロトコルは、電子ビーに露光することによるサンプルダメージ及び/又は荷電の低減を含む、同様の利点を有する。電子ビーム源及び走査電子顕微鏡システムは、例えば、米国特許第7,186,976号明細書、「走査電子顕微鏡」、米国特許第7,105,814号明細書、「電子顕微鏡システム及び電子顕微鏡方法」、米国特許第7,285,780号明細書、「走査電子顕微鏡のための検出システム及び該検出システムを含む走査電子顕微鏡」、及び、米国特許第6,855,938号明細書、「電子顕微鏡システムの対物レンズ及び電子顕微鏡システム」に開示される。これらの米国特許の開示内容は、参照により本明細書に組み入れられる。他の実施形態は、請求の範囲に記載する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直接連続して、サンプル表面の各部分を荷電粒子ビームに露光させるステップを含み、
前記サンプル表面の前記各部分は、第1の方向に列を形成し、
前記荷電粒子ビームが前記サンプル表面において平均スポットサイズfを有し、
前記各部分は、それぞれ隣接部分から、前記第1方向に少なくとも距離dだけ離れており、
比率d/fは2以上である
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、更に、直接連続して、前記サンプル表面の複数の第2部分を前記荷電粒子ビームに露光させるステップを含み、
前記複数の第2部分のうちの各部分は、それぞれ、前記第1方向に少なくとも距離dだけ、前記複数の第2部分のうちの隣接する部分から離れており、前記第1方向に直交する第2方向に、少なくとも距離eだけ前記第1部分から離れている、
ことを特徴とする方法。
【請求項3】
前記サンプル及び前記荷電粒子ビームは、ガス圧力が10-2Torr未満の共通のチャンバ内に配置され、
前記サンプルから放出される複数の粒子が、前記共通のチャンバ内に配置された検出器によって検出される
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記サンプルは、サンプルマウント上に配置されており、
前記サンプルマウントは、前記荷電粒子ビームの入射方向に直交する平面内において、前記サンプルが移動できるようにし、
前記サンプルマウントは、前記サンプルを別のサンプルに交換できるように構成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記サンプルは、サンプルマウント上に配置されており、
前記サンプルマウントは、前記サンプルと、前記サンプルに入射すべき前記荷電粒子ビームを方向づける荷電粒子レンズシステムのレンズと、の間の距離を調整できるように構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
比率e/fは2以上である、ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記eは、前記d以上であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項8】
更に、前記サンプルから放出される複数の粒子に基づいて、前記サンプルの画像を形成するステップを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
更に、電子表示部上において、システム操作者に対して前記サンプルの画像を表示するステップを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
更に、前記サンプルを前記荷電粒子ビームに露光する前に、前記サンプルを電子源に露光するステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
更に、前記サンプルを前記荷電粒子ビームに露光している間に、前記サンプルを電子源に露光させるステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記荷電粒子ビームの荷電粒子電流は、10pA以上であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記荷電粒子電流は、100pA以上であることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記各部分は、100μ秒以下の露光時間の間、前記荷電粒子ビームに対して露光されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記荷電粒子ビームの荷電粒子電流は、1pA以上であり、前記各部分は、100μ秒以下の露光時間の間、前記荷電粒子ビームに対して露光され、前記画像は、全取得時間100秒以下で形成される
ことを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項16】
前記荷電粒子ビームは、希ガスイオンを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記希ガスイオンは、ヘリウムイオンを含むことと特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記荷電粒子ビームは、電子を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記fは、5nm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記dは、10nm以上であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
eは、10nm以上であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
請求項1に記載の方法であって、
前記荷電粒子ビームは、前記サンプルの前記表面において、エネルギーの広がりが5eV以下である
ことを特徴とする方法。
【請求項23】
前記画像の解像度は、3nm以下であることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項24】
前記複数の粒子は、二次電子を含むことを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項25】
前記複数の粒子は、散乱イオン及び散乱中性原子からなる群の要素の少なくとも一つを含むことを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項26】
前記複数の粒子は、光子を含むことを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項27】
前記荷電粒子は、品質係数0.25以上の気体電界イオン顕微鏡によって生成されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記各部分は複数の画素を含むことを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項29】
更に、前記荷電粒子ビームに露光中に、前記サンプルを熱するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
前記荷電粒子ビームは、前記サンプルの前記表面における還元輝度が5×108A/m2srV以上であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
サンプルを、該サンプルの表面における平均スポットサイズfを有する荷電粒子ビームに対して露光させるステップを含み、該ステップは、前記荷電粒子ビームが前記サンプルの前記表面上において複数の露光列を形成するように、前記荷電粒子ビーム及び前記サンプルを相対的に移動させることを特徴とし、
前記連続する露光列のそれぞれは、複数の露光スポットを有し、且つ、前の露光列から第1方向に少なくとも距離dだけ離れており、且つ、比率d/fは2以上であり、
前記サンプル及び前記荷電粒子ビームは、ガス圧が10-2Torr以下の共通のチャンバ内に配置され、且つ、前記サンプルから放出される複数の粒子が、前記共通のチャンバ内に配置された検出器によって検出される
ことを特徴とする方法。
【請求項32】
前記サンプルは、サンプルマウント上に配置されており、
前記サンプルマウントは、前記荷電粒子ビームの入射方向に直交する平面内において、前記サンプルが移動できるようにし、
前記サンプルマウントは、前記サンプルを別のサンプルに交換できるように構成されている、
ことを特徴とする請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記サンプルは、サンプルマウント上に配置されており、
前記サンプルマウントは、前記サンプルと、前記サンプルに入射すべき前記荷電粒子ビームを方向づける荷電粒子レンズシステムのレンズと、の間の距離を調整できるように構成されている
ことを特徴とする請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記露光列は、前記第1方向に直交する第2方向に沿って延在する、ことを特徴とする請求項31に記載の方法。
【請求項35】
前記比率d/fは10以上である、ことを特徴とする請求項31に記載の方法。
【請求項36】
更に、前記サンプルから放出される複数の粒子に基づいて、前記サンプルの画像を形成するステップを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項37】
更に、電子表示部上において、システム操作者に対して前記サンプルの画像を表示するステップを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記荷電粒子ビームは、前記露光列のそれぞれに対応する前記サンプルの領域を露光させるにあたって、前記領域のいずれかをより多くの回数露光させる前に、前記領域を同じ回数だけ露光させる、ことを特徴とする請求項31に記載の方法。
【請求項39】
前記荷電粒子ビームは、前記サンプルの領域を露光させるにあたって、前記露光列の第1のサブセットに対応する前記サンプルの領域を露光させて、第1画像フレームを形成し、前記露光列の第2のサブセットに対応する前記サンプルの領域を露光させて、第2画像フレームを形成し、前記画像は、前記第1及び第2画像フレームを結合することによって形成される、ことを特徴とする請求項36に記載の方法。
【請求項40】
更に、前記荷電粒子ビームに露光中に、前記サンプルを熱するステップを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項41】
更に、前記サンプルを前記荷電粒子ビームに露光する前に、前記サンプルを電子源に露光するステップを含むことを特徴とする請求項31に記載の方法。
【請求項42】
更に、前記サンプルを前記荷電粒子ビームに露光している間に、前記サンプルを電子源に露光させるステップを含むことを特徴とする請求項31に記載の方法。
【請求項43】
前記荷電粒子ビームの荷電粒子電流は、10pA以上であることを特徴とする請求項31に記載の方法。
【請求項44】
前記荷電粒子電流は、100pA以上であることを特徴とする請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記荷電粒子ビームは希ガスイオンを含むことを特徴とする、請求項31に記載の方法。
【請求項46】
前記希ガスイオンは、ヘリウムイオンを含むことと特徴とする、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記荷電粒子ビームは、電子を含むことを特徴とする、請求項31に記載の方法。
【請求項48】
前記fは、5nm以下であることを特徴とする、請求項31に記載の方法。
【請求項49】
前記dは、10nm以上であることを特徴とする、請求項31に記載の方法。
【請求項50】
前記複数の粒子は、二次電子を含むことを特徴とする、請求項31に記載の方法。
【請求項51】
前記複数の粒子は、散乱イオン及び散乱中性原子からなる群の要素の少なくとも一つを含むことを特徴とする、請求項31に記載の方法。
【請求項52】
前記複数の粒子は、光子を含むことを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項53】
前記荷電粒子は、品質係数0.25以上の気体電界イオン顕微鏡によって生成されることを特徴とする、請求項31に記載の方法。
【請求項54】
前記品質係数は、1以上であることを特徴とする、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記荷電粒子ビームは、前記サンプルの前記表面におけるエネルギー拡散が5eV以下であることを特徴とする、請求項31に記載の方法。
【請求項56】
前記画像の解像度は、3nm以下であることを特徴とする、請求項36に記載の方法。
【請求項57】
前記荷電粒子ビームは、前記サンプルの前記表面における還元輝度が5×108A/m2srV以上であることを特徴とする、請求項31に記載の方法。
【請求項58】
前記露光列のそれぞれは、前記第1方向における平均厚さgを有し、比率d/gが2以上であることを特徴とする、請求項31に記載の方法。
【請求項59】
前記荷電粒子ビームは、最初に、各前記露光列の第1部分に対応する前記サンプルの領域を露光させ、そして、各前記露光列の第2部分に対応する前記サンプルの領域を露光させる、ことを特徴とする、請求項31に記載の方法。
【請求項60】
サンプルの領域を包含する最小の正方形の辺長
【数14】
(Aは前記領域の面積、Fは定数)
を決定するステップと、
前記サンプルの前記領域のM個の部分のそれぞれを、荷電粒子ビームに露光させるステップであって、前記M個の部分のそれぞれは、前記荷電粒子ビームに対して、期間t1の間、連続的に露光され、前記M個の部分のいずれか一つを、前記荷電粒子ビームに対して、連続的に露光させる間の最短期間は、t2であり、期間t1及びt2は、
比率t1/(t1+t2)が、
【数15】
以下となるように選択されることを特徴とするステップと、
を含む方法。
【請求項61】
前記比率t1/(t1+t2)は、
【数16】
以下であることを特徴とする、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記サンプル及び前記荷電粒子ビームは、ガス圧が10-2Torr以下の共通のチャンバ内に配置され、
前記サンプルから放出される複数の粒子は、前記共通のチャンバ内に配置された検出器によって検出される
ことを特徴とする、請求項60に記載の方法。
【請求項63】
前記サンプルは、サンプルマウント上に配置されており、
前記サンプルマウントは、前記荷電粒子ビームの入射方向に直交する平面内において、前記サンプルが移動できるようにし、
前記サンプルマウントは、前記サンプルを別のサンプルに交換できるように構成されている、
ことを特徴とする請求項60に記載の方法。
【請求項64】
前記サンプルは、サンプルマウント上に配置されており、
前記サンプルマウントは、前記サンプルと、前記サンプルに入射すべき前記荷電粒子ビームを方向づける荷電粒子レンズシステムのレンズと、の間の距離を調整できるように構成されている
ことを特徴とする請求項60に記載の方法。
【請求項65】
更に、前記領域から放出される複数の粒子に基づいて、前記領域の画像を形成するステップを含む、請求項60に記載の方法。
【請求項66】
更に、電子表示部上において、システム操作者に対して前記サンプルの画像を表示するステップを含む、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
更に、前記領域を前記荷電粒子ビームに露光する前に、前記領域を電子源に露光するステップを含むことを特徴とする請求項60に記載の方法。
【請求項68】
更に、前記領域を前記荷電粒子ビームに露光している間に、前記領域を電子源に露光させるステップを含むことを特徴とする請求項60に記載の方法。
【請求項69】
前記荷電粒子ビームの荷電粒子電流は、10pA以上であることを特徴とする請求項60に記載の方法。
【請求項70】
前記荷電粒子電流は、100pA以上であることを特徴とする請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記領域の前記M個の部分のそれぞれは、100μ秒以下の露光時間の間、前記荷電粒子ビームに対して露光されることを特徴とする請求項60に記載の方法。
【請求項72】
前記荷電粒子ビームの荷電粒子電流は、1pA以上であり、前記M個の部分のそれぞれは、100μ秒以下の露光時間の間、前記荷電粒子ビームに対して露光され、前記画像は、全取得時間100秒以下で形成される
ことを特徴とする、請求項65に記載の方法。
【請求項73】
前記荷電粒子ビームは、希ガスイオンを含むことを特徴とする、請求項60に記載の方法。
【請求項74】
前記希ガスイオンは、ヘリウムイオンを含むことと特徴とする、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記荷電粒子ビームは、電子を含むことを特徴とする、請求項60に記載の方法。
【請求項76】
請求項60に記載の方法であって、
前記荷電粒子ビームは、前記サンプルの前記表面において、エネルギーの広がりが5eV以下である
ことを特徴とする方法。
【請求項77】
前記画像の解像度は、3nm以下であることを特徴とする、請求項65に記載の方法。
【請求項78】
前記複数の粒子は、二次電子を含むことを特徴とする、請求項65に記載の方法。
【請求項79】
前記複数の粒子は、散乱イオン及び散乱中性原子からなる群の要素の少なくとも一つを含むことを特徴とする、請求項65に記載の方法。
【請求項80】
前記複数の粒子は、光子を含むことを特徴とする、請求項65に記載の方法。
【請求項81】
前記荷電粒子は、品質係数0.25以上の気体電界イオン顕微鏡によって生成されることを特徴とする、請求項60に記載の方法。
【請求項82】
前記M個の部分のそれぞれは、複数の画素を含むことを特徴とする、請求項65に記載の方法。
【請求項83】
更に、前記荷電粒子ビームに露光中に、前記サンプルを熱するステップを含む、請求項60に記載の方法。
【請求項84】
前記荷電粒子ビームは、前記サンプルの前記表面における還元輝度が5×108A/m2srV以上であることを特徴とする、請求項60に記載の方法。
【請求項85】
前記最小の正方形の前記辺長を決定するステップは、前記領域の最大の大きさを決定するステップを含む、ことを特徴とする、請求項60に記載の方法。
【請求項86】
請求項60に記載の方法であって、更に、
直接連続して、前記M個の部分のうちの第1の複数部分を荷電粒子ビームに露光させるステップを含み、
前記第1の複数部分は、第1方向に列を形成し、
前記荷電粒子ビームが前記サンプル表面において平均スポットサイズfを有し、
前記第1の複数部分は、それぞれ隣接部分から、第1方向に少なくとも距離dだけ離れており、
比率d/fは2以上である
ことを特徴とする方法。
【請求項87】
請求項86に記載の方法であって、更に、
直接連続して、前記M個の部分のうちの第2の複数部分を荷電粒子ビームに露光させるステップを含み、
前記第2の複数部分は、前記第1方向において、前記第1の複数部分により形成される前記列に平行な列を形成し、
前記第2の複数部分のうちの各部分は、それぞれ、前記第1方向に少なくとも距離dだけ、前記第2の複数部分のうちの隣接する部分から離れており、前記第1方向に直交する第2方向に、少なくとも距離eだけ前記第1の複数部分から離れている、
ことを特徴とする方法。
【請求項88】
前記eは、前記dよりも大きいことを特徴とする、請求項87に記載の方法。
【請求項89】
前記fは5nm以下であり、前記dは10nm以上、前記eは10nm以上であることを特徴とする、請求項87に記載の方法。
【請求項1】
直接連続して、サンプル表面の各部分を荷電粒子ビームに露光させるステップを含み、
前記サンプル表面の前記各部分は、第1の方向に列を形成し、
前記荷電粒子ビームが前記サンプル表面において平均スポットサイズfを有し、
前記各部分は、それぞれ隣接部分から、前記第1方向に少なくとも距離dだけ離れており、
比率d/fは2以上である
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、更に、直接連続して、前記サンプル表面の複数の第2部分を前記荷電粒子ビームに露光させるステップを含み、
前記複数の第2部分のうちの各部分は、それぞれ、前記第1方向に少なくとも距離dだけ、前記複数の第2部分のうちの隣接する部分から離れており、前記第1方向に直交する第2方向に、少なくとも距離eだけ前記第1部分から離れている、
ことを特徴とする方法。
【請求項3】
前記サンプル及び前記荷電粒子ビームは、ガス圧力が10-2Torr未満の共通のチャンバ内に配置され、
前記サンプルから放出される複数の粒子が、前記共通のチャンバ内に配置された検出器によって検出される
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記サンプルは、サンプルマウント上に配置されており、
前記サンプルマウントは、前記荷電粒子ビームの入射方向に直交する平面内において、前記サンプルが移動できるようにし、
前記サンプルマウントは、前記サンプルを別のサンプルに交換できるように構成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記サンプルは、サンプルマウント上に配置されており、
前記サンプルマウントは、前記サンプルと、前記サンプルに入射すべき前記荷電粒子ビームを方向づける荷電粒子レンズシステムのレンズと、の間の距離を調整できるように構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
比率e/fは2以上である、ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記eは、前記d以上であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項8】
更に、前記サンプルから放出される複数の粒子に基づいて、前記サンプルの画像を形成するステップを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
更に、電子表示部上において、システム操作者に対して前記サンプルの画像を表示するステップを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
更に、前記サンプルを前記荷電粒子ビームに露光する前に、前記サンプルを電子源に露光するステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
更に、前記サンプルを前記荷電粒子ビームに露光している間に、前記サンプルを電子源に露光させるステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記荷電粒子ビームの荷電粒子電流は、10pA以上であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記荷電粒子電流は、100pA以上であることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記各部分は、100μ秒以下の露光時間の間、前記荷電粒子ビームに対して露光されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記荷電粒子ビームの荷電粒子電流は、1pA以上であり、前記各部分は、100μ秒以下の露光時間の間、前記荷電粒子ビームに対して露光され、前記画像は、全取得時間100秒以下で形成される
ことを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項16】
前記荷電粒子ビームは、希ガスイオンを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記希ガスイオンは、ヘリウムイオンを含むことと特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記荷電粒子ビームは、電子を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記fは、5nm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記dは、10nm以上であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
eは、10nm以上であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
請求項1に記載の方法であって、
前記荷電粒子ビームは、前記サンプルの前記表面において、エネルギーの広がりが5eV以下である
ことを特徴とする方法。
【請求項23】
前記画像の解像度は、3nm以下であることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項24】
前記複数の粒子は、二次電子を含むことを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項25】
前記複数の粒子は、散乱イオン及び散乱中性原子からなる群の要素の少なくとも一つを含むことを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項26】
前記複数の粒子は、光子を含むことを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項27】
前記荷電粒子は、品質係数0.25以上の気体電界イオン顕微鏡によって生成されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記各部分は複数の画素を含むことを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項29】
更に、前記荷電粒子ビームに露光中に、前記サンプルを熱するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
前記荷電粒子ビームは、前記サンプルの前記表面における還元輝度が5×108A/m2srV以上であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
サンプルを、該サンプルの表面における平均スポットサイズfを有する荷電粒子ビームに対して露光させるステップを含み、該ステップは、前記荷電粒子ビームが前記サンプルの前記表面上において複数の露光列を形成するように、前記荷電粒子ビーム及び前記サンプルを相対的に移動させることを特徴とし、
前記連続する露光列のそれぞれは、複数の露光スポットを有し、且つ、前の露光列から第1方向に少なくとも距離dだけ離れており、且つ、比率d/fは2以上であり、
前記サンプル及び前記荷電粒子ビームは、ガス圧が10-2Torr以下の共通のチャンバ内に配置され、且つ、前記サンプルから放出される複数の粒子が、前記共通のチャンバ内に配置された検出器によって検出される
ことを特徴とする方法。
【請求項32】
前記サンプルは、サンプルマウント上に配置されており、
前記サンプルマウントは、前記荷電粒子ビームの入射方向に直交する平面内において、前記サンプルが移動できるようにし、
前記サンプルマウントは、前記サンプルを別のサンプルに交換できるように構成されている、
ことを特徴とする請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記サンプルは、サンプルマウント上に配置されており、
前記サンプルマウントは、前記サンプルと、前記サンプルに入射すべき前記荷電粒子ビームを方向づける荷電粒子レンズシステムのレンズと、の間の距離を調整できるように構成されている
ことを特徴とする請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記露光列は、前記第1方向に直交する第2方向に沿って延在する、ことを特徴とする請求項31に記載の方法。
【請求項35】
前記比率d/fは10以上である、ことを特徴とする請求項31に記載の方法。
【請求項36】
更に、前記サンプルから放出される複数の粒子に基づいて、前記サンプルの画像を形成するステップを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項37】
更に、電子表示部上において、システム操作者に対して前記サンプルの画像を表示するステップを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記荷電粒子ビームは、前記露光列のそれぞれに対応する前記サンプルの領域を露光させるにあたって、前記領域のいずれかをより多くの回数露光させる前に、前記領域を同じ回数だけ露光させる、ことを特徴とする請求項31に記載の方法。
【請求項39】
前記荷電粒子ビームは、前記サンプルの領域を露光させるにあたって、前記露光列の第1のサブセットに対応する前記サンプルの領域を露光させて、第1画像フレームを形成し、前記露光列の第2のサブセットに対応する前記サンプルの領域を露光させて、第2画像フレームを形成し、前記画像は、前記第1及び第2画像フレームを結合することによって形成される、ことを特徴とする請求項36に記載の方法。
【請求項40】
更に、前記荷電粒子ビームに露光中に、前記サンプルを熱するステップを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項41】
更に、前記サンプルを前記荷電粒子ビームに露光する前に、前記サンプルを電子源に露光するステップを含むことを特徴とする請求項31に記載の方法。
【請求項42】
更に、前記サンプルを前記荷電粒子ビームに露光している間に、前記サンプルを電子源に露光させるステップを含むことを特徴とする請求項31に記載の方法。
【請求項43】
前記荷電粒子ビームの荷電粒子電流は、10pA以上であることを特徴とする請求項31に記載の方法。
【請求項44】
前記荷電粒子電流は、100pA以上であることを特徴とする請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記荷電粒子ビームは希ガスイオンを含むことを特徴とする、請求項31に記載の方法。
【請求項46】
前記希ガスイオンは、ヘリウムイオンを含むことと特徴とする、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記荷電粒子ビームは、電子を含むことを特徴とする、請求項31に記載の方法。
【請求項48】
前記fは、5nm以下であることを特徴とする、請求項31に記載の方法。
【請求項49】
前記dは、10nm以上であることを特徴とする、請求項31に記載の方法。
【請求項50】
前記複数の粒子は、二次電子を含むことを特徴とする、請求項31に記載の方法。
【請求項51】
前記複数の粒子は、散乱イオン及び散乱中性原子からなる群の要素の少なくとも一つを含むことを特徴とする、請求項31に記載の方法。
【請求項52】
前記複数の粒子は、光子を含むことを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項53】
前記荷電粒子は、品質係数0.25以上の気体電界イオン顕微鏡によって生成されることを特徴とする、請求項31に記載の方法。
【請求項54】
前記品質係数は、1以上であることを特徴とする、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記荷電粒子ビームは、前記サンプルの前記表面におけるエネルギー拡散が5eV以下であることを特徴とする、請求項31に記載の方法。
【請求項56】
前記画像の解像度は、3nm以下であることを特徴とする、請求項36に記載の方法。
【請求項57】
前記荷電粒子ビームは、前記サンプルの前記表面における還元輝度が5×108A/m2srV以上であることを特徴とする、請求項31に記載の方法。
【請求項58】
前記露光列のそれぞれは、前記第1方向における平均厚さgを有し、比率d/gが2以上であることを特徴とする、請求項31に記載の方法。
【請求項59】
前記荷電粒子ビームは、最初に、各前記露光列の第1部分に対応する前記サンプルの領域を露光させ、そして、各前記露光列の第2部分に対応する前記サンプルの領域を露光させる、ことを特徴とする、請求項31に記載の方法。
【請求項60】
サンプルの領域を包含する最小の正方形の辺長
【数14】
(Aは前記領域の面積、Fは定数)
を決定するステップと、
前記サンプルの前記領域のM個の部分のそれぞれを、荷電粒子ビームに露光させるステップであって、前記M個の部分のそれぞれは、前記荷電粒子ビームに対して、期間t1の間、連続的に露光され、前記M個の部分のいずれか一つを、前記荷電粒子ビームに対して、連続的に露光させる間の最短期間は、t2であり、期間t1及びt2は、
比率t1/(t1+t2)が、
【数15】
以下となるように選択されることを特徴とするステップと、
を含む方法。
【請求項61】
前記比率t1/(t1+t2)は、
【数16】
以下であることを特徴とする、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記サンプル及び前記荷電粒子ビームは、ガス圧が10-2Torr以下の共通のチャンバ内に配置され、
前記サンプルから放出される複数の粒子は、前記共通のチャンバ内に配置された検出器によって検出される
ことを特徴とする、請求項60に記載の方法。
【請求項63】
前記サンプルは、サンプルマウント上に配置されており、
前記サンプルマウントは、前記荷電粒子ビームの入射方向に直交する平面内において、前記サンプルが移動できるようにし、
前記サンプルマウントは、前記サンプルを別のサンプルに交換できるように構成されている、
ことを特徴とする請求項60に記載の方法。
【請求項64】
前記サンプルは、サンプルマウント上に配置されており、
前記サンプルマウントは、前記サンプルと、前記サンプルに入射すべき前記荷電粒子ビームを方向づける荷電粒子レンズシステムのレンズと、の間の距離を調整できるように構成されている
ことを特徴とする請求項60に記載の方法。
【請求項65】
更に、前記領域から放出される複数の粒子に基づいて、前記領域の画像を形成するステップを含む、請求項60に記載の方法。
【請求項66】
更に、電子表示部上において、システム操作者に対して前記サンプルの画像を表示するステップを含む、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
更に、前記領域を前記荷電粒子ビームに露光する前に、前記領域を電子源に露光するステップを含むことを特徴とする請求項60に記載の方法。
【請求項68】
更に、前記領域を前記荷電粒子ビームに露光している間に、前記領域を電子源に露光させるステップを含むことを特徴とする請求項60に記載の方法。
【請求項69】
前記荷電粒子ビームの荷電粒子電流は、10pA以上であることを特徴とする請求項60に記載の方法。
【請求項70】
前記荷電粒子電流は、100pA以上であることを特徴とする請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記領域の前記M個の部分のそれぞれは、100μ秒以下の露光時間の間、前記荷電粒子ビームに対して露光されることを特徴とする請求項60に記載の方法。
【請求項72】
前記荷電粒子ビームの荷電粒子電流は、1pA以上であり、前記M個の部分のそれぞれは、100μ秒以下の露光時間の間、前記荷電粒子ビームに対して露光され、前記画像は、全取得時間100秒以下で形成される
ことを特徴とする、請求項65に記載の方法。
【請求項73】
前記荷電粒子ビームは、希ガスイオンを含むことを特徴とする、請求項60に記載の方法。
【請求項74】
前記希ガスイオンは、ヘリウムイオンを含むことと特徴とする、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記荷電粒子ビームは、電子を含むことを特徴とする、請求項60に記載の方法。
【請求項76】
請求項60に記載の方法であって、
前記荷電粒子ビームは、前記サンプルの前記表面において、エネルギーの広がりが5eV以下である
ことを特徴とする方法。
【請求項77】
前記画像の解像度は、3nm以下であることを特徴とする、請求項65に記載の方法。
【請求項78】
前記複数の粒子は、二次電子を含むことを特徴とする、請求項65に記載の方法。
【請求項79】
前記複数の粒子は、散乱イオン及び散乱中性原子からなる群の要素の少なくとも一つを含むことを特徴とする、請求項65に記載の方法。
【請求項80】
前記複数の粒子は、光子を含むことを特徴とする、請求項65に記載の方法。
【請求項81】
前記荷電粒子は、品質係数0.25以上の気体電界イオン顕微鏡によって生成されることを特徴とする、請求項60に記載の方法。
【請求項82】
前記M個の部分のそれぞれは、複数の画素を含むことを特徴とする、請求項65に記載の方法。
【請求項83】
更に、前記荷電粒子ビームに露光中に、前記サンプルを熱するステップを含む、請求項60に記載の方法。
【請求項84】
前記荷電粒子ビームは、前記サンプルの前記表面における還元輝度が5×108A/m2srV以上であることを特徴とする、請求項60に記載の方法。
【請求項85】
前記最小の正方形の前記辺長を決定するステップは、前記領域の最大の大きさを決定するステップを含む、ことを特徴とする、請求項60に記載の方法。
【請求項86】
請求項60に記載の方法であって、更に、
直接連続して、前記M個の部分のうちの第1の複数部分を荷電粒子ビームに露光させるステップを含み、
前記第1の複数部分は、第1方向に列を形成し、
前記荷電粒子ビームが前記サンプル表面において平均スポットサイズfを有し、
前記第1の複数部分は、それぞれ隣接部分から、第1方向に少なくとも距離dだけ離れており、
比率d/fは2以上である
ことを特徴とする方法。
【請求項87】
請求項86に記載の方法であって、更に、
直接連続して、前記M個の部分のうちの第2の複数部分を荷電粒子ビームに露光させるステップを含み、
前記第2の複数部分は、前記第1方向において、前記第1の複数部分により形成される前記列に平行な列を形成し、
前記第2の複数部分のうちの各部分は、それぞれ、前記第1方向に少なくとも距離dだけ、前記第2の複数部分のうちの隣接する部分から離れており、前記第1方向に直交する第2方向に、少なくとも距離eだけ前記第1の複数部分から離れている、
ことを特徴とする方法。
【請求項88】
前記eは、前記dよりも大きいことを特徴とする、請求項87に記載の方法。
【請求項89】
前記fは5nm以下であり、前記dは10nm以上、前記eは10nm以上であることを特徴とする、請求項87に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19A】
【図19B】
【図19C】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19A】
【図19B】
【図19C】
【公表番号】特表2011−507202(P2011−507202A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538606(P2010−538606)
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【国際出願番号】PCT/EP2008/067419
【国際公開番号】WO2009/077450
【国際公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(504020452)カール・ツァイス・エヌティーエス・ゲーエムベーハー (36)
【氏名又は名称原語表記】Carl Zeiss NTS GmbH
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【国際出願番号】PCT/EP2008/067419
【国際公開番号】WO2009/077450
【国際公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(504020452)カール・ツァイス・エヌティーエス・ゲーエムベーハー (36)
【氏名又は名称原語表記】Carl Zeiss NTS GmbH
【Fターム(参考)】
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