説明

走査電子顕微鏡装置及びそれを用いた画像取得方法

【課題】電子ビーム装置を用いたパターンの寸法計測または、形状観察において、高スループット化を可能にする。
【解決手段】試料の表面に走査電子顕微鏡(SEM)の収束させた電子ビームを照射し走査して試料から発生する二次電子または反射電子を検出して試料のSEM画像を取得し、取得したSEM画像を処理して画像取得条件を設定し、設定した画像取得条件に基づいて走査電子顕微鏡で試料のSEM画像を取得し、設定した画像取得条件に基づいて取得したSEM画像を処理する走査電子顕微鏡(SEM)を用いて試料を撮像して得たSEM画像を処理する走査電子顕微鏡装置及びその画像取得方法において、画像取得条件を設定するためのSEM画像を取得するときの電子ビームの走査条件と、画像取得条件を設定するためのSEM画像を取得するときの電子ビームの走査条件を変えてSEM画像を取得するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細なパターンを有する半導体装置、基板、ホトマスク(露光マスク)、液晶等を計測又は検査又は観察するのに好適な走査電子顕微鏡装置及びそれを用いた画像取得方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体集積回路の微細化、高集積化が進む中で、半導体集積回路の製造過程における異常や不良発生を早期に、あるいは事前に検知するため、各製造過程の終了時に半導体ウエア上のパターンを観測し測長及び検査が行われる。これらは電子ビーム技術を用いた走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope、以下SEMと略す)などを用いて検査対象領域の画像情報を取得することで行われる。
【0003】
半導体集積回路の製造におけるプロセスパターンの寸法管理においても、電子ビーム技術を用いたSEMを半導体専用に特化した測長SEM(Critical-Dimension SEM、CD−SEMと略す)が用いられる。CD−SEMはプロセスパターンの観察や、精度の高い寸法測定を行うものである。
【0004】
また、半導体集積回路の歩留り等のプロセス管理においても、電子ビーム技術を用いたSEMによりチップの素子パターン上の欠陥を検出するために、例えば欠陥検査SEM(Defect Review SEM、DR−SEM)といった検査装置が使用されている。
【0005】
これら走査電子顕微鏡(SEM)を用いた装置においては、複数の走査ラインに沿って所定の加速電圧で順次電子ビームを照射して、半導体ウエハ上の検査対象領域を走査(スキャン)し、出射される二次電子を検出して検査対象領域の検査を行っているが、近年の半導体ウエハの大口径化と回路パターンの微細化に追随して装置の高スループット化が求められている。高スループット化では、電子ビームを走査(スキャン)するためのスキャン制御の高速化と、取得した画像情報を演算する画像処理の高速化が必須である。
【0006】
電子ビームを用いて画像取得を行う際の画像サイズは、目的毎にサイズが異なり様々な種類がある。垂直サイズのみで10種類以上あり、水平サイズとの組み合わせでは100種類以上となる。これら画像サイズを変更しながら画像取得する場合もあるため、画像サイズを設定する設定時間は、電子ビーム装置の処理時間に影響を与える。
【0007】
一方、画像取得を行う際には、画像がぼやけるのを防止するために、試料表面上に正確に焦点を合わせたり、正確な測定・検査を行うために画像の明るさやコントラストを調整する必要がある。これら調整には、測定対象に電子ビームを走査して得られた画像を用いて、焦点の評価値や明るさ、コントラスト等の特徴量を算出して調整を行う。
これら特徴量を算出するための電子ビームの走査は、特許文献1のように、特徴量を算出する場合であっても検査・測長時と同様に一定方向へ予め規定された範囲に電子ビーム走査を行い、画像を取得する。このため、通常の画像取得と同じスキャン時間が必要であり、装置の高スループット化に影響する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−142038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
試料上に形成されたパターンの寸法を計測したり、パターンの形状を観察するためにSEM1で画像取得を行う際には、画像がぼやけるのを防止するために、試料表面上に正確に焦点を合わせたり、正確な測定・検査を行うために画像の明るさやコントラストを調整する必要がある。これら調整は、測定対象に電子ビームを照射し走査して得られた画像を用いて、焦点の評価値や明るさ、コントラスト等の特徴量を算出して調整を行う。
これら特徴量を算出するための電子ビームの走査は、特許文献1のように、パターンの寸法を計測したり、パターンの形状を観察するときと同様に一定方向へ予め規定された範囲に電子ビーム走査(ラスタスキャン)を行い、画像を取得する。このため、通常の画像取得と同じスキャン時間が必要であり、パターンの寸法計測または、形状観察時に装置の高スループット化を図る上で障害となる。
【0010】
本発明の目的は、上記した従来技術の課題を解決して、パターンの寸法計測または、形状観察時の高スループット化を可能にする走査電子顕微鏡装置及びそれを用いた画像取得方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するため、スキャン座標の最大及び最小値から取得範囲を算出する手段と、算出した取得範囲から有効データを生成する手段を設ける。また、スキャン座標により入力された画像データの並べ替え手段を設け、スキャン座標に基づいて入力された画像データの並べ替えを行う構成とする。
【0012】
即ち、上記目的を達成するために、本発明では、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて試料を撮像して得たSEM画像を処理する装置において、試料の表面に収束させた電子ビームを照射して走査し、試料から発生する二次電子または反射電子を検出して試料のSEM画像を取得する走査電子顕微鏡手段と、電子ビームの走査条件を制御するスキャン制御手段と、走査電子顕微鏡手段で取得するSEM画像の画像取得条件を設定する画像取得条件設定手段と、画像取得条件設定手段で設定した条件に基づいて走査電子顕微鏡手段で取得したSEM画像を処理する画像処理手段を備え、スキャン制御手段は、走査電子顕微鏡手段の電子ビームの走査を制御して、画像取得条件設定手段で画像取得条件を設定するためのSEM画像を取得するときと、画像処理手段で画像処理するためのSEM画像を取得するときとで電子ビームの走査条件を変えて取得するようにした。
【0013】
又、上記目的を達成するために、本発明では、試料の表面に走査電子顕微鏡(SEM)の収束させた電子ビームを照射し走査して試料から発生する二次電子または反射電子を検出して試料のSEM画像を取得し、取得したSEM画像を処理して画像取得条件を設定し、設定した画像取得条件に基づいて走査電子顕微鏡で試料のSEM画像を取得し、設定した画像取得条件に基づいて取得したSEM画像を処理する走査電子顕微鏡(SEM)を用いて試料を撮像して得たSEM画像を処理する走査電子顕微鏡装置の画像取得方法において、画像取得条件を設定するためのSEM画像を取得するときの電子ビームの走査条件と、画像取得条件を設定するためのSEM画像を取得するときの電子ビームの走査条件を変えてSEM画像を取得するようにした。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、取得画像の特徴量に必要な画像データのみスキャンして画像処理を行うことで、取得画像の特徴量を高速に算出し、装置の高スループット化を実現することができた。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例に係る電子ビーム装置の概略の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施例に係る画像処理システムの最大/最小値算出手段の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施例に係る画像処理システムの取得範囲算出、有効データ信号生成手段の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施例に係る画像処理システムのメモリ制御手段の構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の実施例に係るスキャン制御手段の構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の実施例に係る座標変換手段の例として(a)ルックアップテーブル(LUT)による変換のれいと、(b)座標演算による変換の例を示す図である。
【図7】本発明の実施例に係る特徴量算出の例(b)を従来技術による特徴算出の例(a)と比較して示した図である。
【図8】本発明の実施例に係る特徴量算出の例における動作概要(b)を従来技術における動作概要(a)と比較して示した図である。る。
【図9】本発明の実施例に係る電子ビーム装置の概略の構成を示し、特にGUI画面を拡大して表示したブロック図である。
【図10】本発明の実施例に係る処理の流れを示すフロー図である。
【図11】本発明の実施例に係る特徴量算出及び画像取得の動作概要を従来技術と比較して示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の実施例を、図を用いて説明する。
本発明に係る画像処理システム及び電子ビーム装置の基本構成を図1を用いて説明する。
図1において、電子ビーム装置は、SEM1、画像生成部2、電子ビーム制御部3、画像処理システム9、及び表示部であるディスプレイを有するパーソナルコンテュータ10(以下、PCを略す)を備えて構成される。画像処理システム9は、AD変換器4、画像データ並び換え部5、画像処理部6、画像転送部7、スキャン制御部8で構成され、画像データ並び替え部5は、タイミング調整部11、ブランキング検出部12、最大/最小値算出部13、取得範囲算出部14、有効データ信号生成部15を備えて構成される。
【0017】
SEM1は、電子ビームを出射する電子銃101と、電子銃101から出射された電子ビーム102の照射位置を制御する走査コイル(偏向電極)103と、電子ビーム102の照射により試料100から出射される二次電子104を検出する二次電子検出部105、試料100を載置してXY平面内で移動可能なステージ部106を備えて構成される。半導体集積回路の製造過程における異常や不良発生を早期に、あるいは事前に検知するため、各製造過程の終了時に電子ビーム装置を使用して半導体集積回路の観測が行われるが、観測方法としては、SEM1を用いて複数のラインに沿って電子ビーム102を走査(ラスタスキャン)しながら被対象物(試料)100に照射して試料100から発生した2次電子105または反射電子を二次電子検出部105で検出し、画像生成部2を介して。画像処理システム9でスキャン制御部8から電子ビーム制御部3へ出力される偏向電極103のスキャン制御信号と同期させて処理して試料100上の対象領域の画像情報を取得することで行う。
【0018】
画像情報の取得は、電子ビーム装置にて処理が行われる単位で行う。例えば、ウェハ上に形成された半導体集積回路を観察する場合、一度にウエハ全体の画像を取得することができないため、512×512等の画像サイズ単位に分割して複数の分割画像を取得する。分割された画像サイズを一つの単位とし、この範囲、即ち対象領域で電子ビームを走査(スキャン)させて画像を取得する。分割された単位の対象領域の基準点が電子銃101から出射された電子ビーム102の照射範囲に入るようにするための試料100の位置合せは、ステージ部106をPC10と接続しているステージ制御部110により制御されたステージ駆動部111で駆動することで行われる。分割画像の画像サイズは、対象となる半導体集積回路の微細化に伴い、512×512から4096×4096のサイズへと拡大している。
【0019】
以下、分割された単位である、一つの分割画像の画像サイズ内で行われる走査(スキャン)について説明する。
【0020】
まず、スキャン制御部8では、SEM1の走査(スキャン)を行うためスキャン座標及びスキャン制御信号を生成する。生成されたスキャン座標及びスキャン制御信号は、電子ビーム制御部3にてディジタル信号からアナログ信号へ変換され、電子ビームの走査を行う。例えば画像サイズが512×512の場合での通常のスキャンでは、X及びY座標を0とし、X座標を0から511まで順番に生成する。次にY座標を1とし、同様にX座標を0から511まで順番に生成する。これを繰り返してY座標が511になるまで座標を生成する。このようにX及びY座標を0から順番に行うスキャンをラスタスキャンと呼ぶ場合がある。
【0021】
一方、背景技術で前述したように、試料100上に形成されたパターンの寸法を計測したり、パターンの形状を観察するためにSEM1で画像取得を行う際には、画像がぼやけるのを防止するために、試料100の表面上に正確に焦点を合わせたり、正確な測定・検査を行うために画像の明るさやコントラストを調整する必要がある。
【0022】
これらの調整には、測定対象である試料100に電子ビーム102を走査して得られた画像を用いて、焦点の評価値や明るさ、コントラスト等の特徴量を算出して調整を行う。例えば、画像サイズが512×512の画像を取得する場合、まず画像取得と同様に512×512の画像サイズを取得して特徴量を算出し調整を行う。このため、画像の特徴量を算出する場合でも通常の画像取得と同じスキャン時間が必要となる。すなわち、パターンの寸法計測または形状観察することに直接係らない準備作業用のために、パターンの寸法計測や形状観察する場合と同程度の画像取得時間を費やすことになり、パターンの寸法計測や形状観察する場合のスループットを低下させる原因となっている。
【0023】
そこで、本実施例においては、画像の特徴量を算出する時間を短縮するため、取得画像の特徴量を算出するために必要な画像データのみスキャンし、入力された画像データの並び替えを行って特徴量を算出するようにした。
【0024】
以下、図1から図8を用いてこれら取得画像の特徴量を算出するためのスキャン方法及び画像データ並び替えについて説明する。
【0025】
図1に示した画像処理システム9は、任意の画像サイズ、スキャン種類に対応するための画像データ並び替え手段を備えている。
【0026】
画像処理システム9は、二次電子を検出したSEM1の二次電子検出部105からの出力を受けて画像生成部2で生成した画像信号を入力してA/D変換して画像データを生成するA/D変換部4と、A/D変換部4で生成した画像のデータを並び替える画像データ並び替え部5と、画像データ並び替え部5で並び替えられた画像を処理する画像処理部6と、処理された画像をPC10に転送する画像転送部7と、電子ビーム制御部3で偏向電極103を駆動して電子ビーム102の偏向を制御するためのスキャン制御信号を発生させるスキャン制御部8を備えている。
【0027】
また、画像データ並び替え部5は、スキャン制御部8からのスキャン制御信号を受けて画像データ並び替え部5の内部のスキャン制御信号を発生するタイミング調整部11と、タイミング調整部11からのスキャン制御信号を受けてSEM1の電子ビーム102のブランキングの状態を検出するブランキング検出部12、タイミング調整部11からのスキャン制御信号を受けてSEM1の電子ビーム102のスキャン範囲の最大値と最小値とを算出する最大値/最小値算出部13、最大値/最小値算出部13からのスキャン範囲の最大値と最小値との情報を受けてSEM画像の取得範囲を算出する取得範囲算出部14、ブランキング検出部12からの電子ビーム102のブランキングに関する情報と取得範囲算出部14で算出したSEM画像の取得範囲の情報とを用いて有効データ信号生成部15、A/D変換部4からの画像データとタイミング調整部11からのスキャン座標情報と最大値/最小値算出部13と有効データ信号生成部15からの信号を受けて処理した画像データを画像メモリ17に記憶させるメモリ制御部16を備えている。
【0028】
画像データ並び替え部5では、まず、スキャン制御部8からのスキャン座標及びスキャン制御信号を入力し、タイミング調整部11にて、スキャン制御部8から電子ビーム制御部3、SEM1、画像生成部2、AD変換器4を経由して入力される画像データのタイミングを合わせるための調整を行う。次にメモリ制御部16にて入力された画像データをスキャン座標に対応したアドレスの画像メモリ17へ格納する。また、最大/最小値算出部13にて、スキャン座標の最大及び最小値を算出して取得範囲算出部14へ入力する。取得範囲算出部14では、スキャン座標の最大及び最小値から入力された画像データを含む画像範囲を算出し、有効データ信号生成部15にて有効データ信号を生成する。最後に、メモリ制御部16で、生成された有効データ信号を基に画像メモリ17から画像データの読み出しを行い、有効データ信号と共に画像処理部6へ画像データを転送する。
【0029】
以上により、画像データ並び替え部5では、入力された画像データを含む取得範囲をスキャン座標から算出し、有効データ信号と共に画像処理部6へ出力することが可能である。
【0030】
ここで、電子ビーム102をラスタースキャンして画像を取得する通常の画像取得を行う場合には、AD変換器4からの画像データを直接画像処理部6に入力することも可能である。
【0031】
図2は、最大/最小値算出部13の構成を示した図である。最大/最小値算出部13は、X座標最大/最小値算出部18、Y座標最大/最小値算出部19で構成され、各々の最大/最小値算出部18及び19は、比較器20、セレクタ21、レジスタ22で構成される(図2においては、図示を簡略化するために、Y座標最大/最小値算出部19の内部の構成について記載を省略してあるが、その内部の構成は、X座標最大/最小値算出部18に示した構成と同じである)。スキャン制御部8から入力されたスキャン座標情報から、X座標最大/最小値算出部18及びY座標最大/最小値算出部19でそれぞれX座標及びY座標におけるスキャン座標の最大及び最小値を算出し、取得範囲算出部14へ出力する。
【0032】
図3は、取得範囲算出部14及び有効データ信号生成部15の構成を示した図である。取得範囲算出部14は、減算器23、レジスタ22を備え、有効データ信号生成部15は、水平(X)カウンタ24、垂直(Y)カウンタ25でを備えて構成される。取得範囲算出部14では、X座標最大/最小値算出部18及びY座標最大/最小値算出部19からのX座標及びY座標の最大/最小値を入力し、各々最大値から最小値を減算し、その結果をX及びYサイズとしてレジスタ22に格納する。
【0033】
有効データ信号生成部15では、レジスタ22に格納されたXサイズ及びYサイズの値をカウントしたものを有効データ信号としてメモリ制御部16へ出力する。
【0034】
図4は、メモリ制御部16の構成を示した図である。メモリ制御部16は、ライト制御部26、固定値を格納するレジスタ22、リード制御部27を備えている。ライト制御部26では、タイミング調整部11より入力されたスキャン座標をメモリアドレスとして、A/D変換部4より入力された画像データを画像メモリ17に格納する制御を行う。このとき、画像メモリ17には、予めレジスタ22に設定されている、例えば‘0’等の固定値をライト制御部26を介して格納しておく。これにより、タイミング調整部11からのスキャン座標が入力されない画像メモリ17のメモリアドレスには、レジスタ22で設定された値が格納される。リード制御部27は、最大値/最小値算出部13からの最大/最小値の情報、及び有効データ信号生成部15からの有効データ信号を基に、画像メモリ17から画像データを読み出す。
【0035】
ここで、メモリ制御部16においては、画像メモリ17へ画像データを書き込むためのライトクロックと画像メモリ17から画像データを読み出すためのリードクロックが異なる。これは、画像メモリ17へ書込みを行う画像データは電子ビーム102のスキャンクロックに従って入力されるため、画像メモリ17への書込み速度はスキャン速度によって決まり、これに対してリードクロックは、画像メモリ17に画像データが格納された後に読み出しを行うため、スキャン速度に合わせる必要がないためである。電子ビーム制御部3では、電子ビーム102のスキャンの制御をアナログ処理で行うためにスキャン速度を上げるには限界があり、電子ビーム102のスキャン速度を高速化することは難しい。つまり、読み出し側のクロックはスキャン速度に影響されないためクロック速度をあげることができるが、書込み側のライトクロックはクロック速度を上げることが困難である。本発明では特徴量を算出する場合に、書込み側の画像データの数を低減することでスキャン時間の短縮を図る。
【0036】
図5は、スキャン制御部8の構成を示した図である。スキャン制御部8は、基本座標を生成する基本座標生成部28、スキャンの水平方向であるX座標を変換するX座標変換部30、スキャンの垂直方向であるY座標を変換するY座標変換部31、制御回路29、出力部32を備えている。スキャン制御部8では、基本座標生成部28により生成された基本座標をX座標変換部30及びY座標変換部31により座標変換を行い出力部32から出力する。以下、図6を用いてスキャン制御部8におけるX及びY座標の変換について説明する。
【0037】
図6は、X及びY座標変換の方法について示した図である。図6では、変換方法の例として、(a)にLUT(Look Up Table)による変換方法と、(b)に傾き係数を乗算する方法を示している。(a)に示したLUTによる変換方法は、予めLUT34に変換する座標を格納しておき、基本座標生成部28からの基本座標341をリードアドレス342として、格納されたデータを読み出すことでスキャン座標343に座標変換を行う。(b)に示した傾き係数を乗算する方法は、レジスタ22に予め設定された傾き係数351と基本座標352を乗算器35により乗算することでスキャン座標353に座標変換を行う。
【0038】
特徴量を算出するために必要なスキャン座標343又は353は、画像取得する半導体集積回路のパターンの種類や、観察する倍率等により様々であり、これら条件毎のスキャン座標を予め装置の予備実験またはCAD等の設計データにより求め、これら求められたスキャン座標を、全体制御を行なうPC10に条件毎のスキャン座標として格納しておき、測長及び検査時にソフトウエア処理によりスキャン制御部8のメモリまたはレジスタ(図示せず)へ設定することで行う。
図7(b)は、本実施例による特徴量算出の例を示した図である。ここでは、画像サイズを8×8とし、取得画像の明るさ(輝度)の平均値を求める場合の例について説明する。図7(a)には比較のために従来のラスタスキャン方式を示す。従来のラスタスキャンではX及びY座標を0から7までスキャンを行い、64個の画像データにおける明るさの平均値を求める。これに対し、(b)に示した本実施例によるスキャン方式では、スキャンを斜め方向に間引きスキャンを行い、15個の画像データにより明るさの平均値を求めている。ここで、取得した画像データ15個は前述した画像メモリ17に格納され、最大/最小値算出部13でスキャン座標よりX座標の最小値は2、最大値は5を算出し、Xサイズは4となる。同様にY座標の最小値は0、最大値は7を算出し、Yサイズは8となる。取得範囲算出部14及び有効データ信号生成部15では、Xサイズ4、Yサイズ8を取得範囲とし、画像メモリ17から4×8=32個の範囲で画像データの読み出しを行う。これにより、必要最小限の画像データで特徴量を算出することができる。
【0039】
図8(a)および(b)は、図7(a)および(b)で示した特徴量算出の例におけるスキャン時間とスループットの概要を示した図である。 図8(a)に示した従来の構成の場合、64画素の画像データを取得するため、64個のスキャンクロックが必要となる。また、画像データの有効範囲を示すフレーム信号も同様に64クロック分となる。これに対し、図8(b)に示した本実施例の場合、15画素の画像データを取得するための15個のスキャンクロックでよい。
【0040】
画像データの取得時間はスキャンクロック周期に画素数をかけたものであるため、図8(b)の場合図8(a)の例に比べて、49個のスキャンクロックの周期の時間を短縮することが可能となる。ここで、本実施例のフレーム信号は取得する画素数分のみであるため、画像処理を行うためには取得範囲を算出する必要があるが、前述した最大/最小値算出部13及び取得範囲算出部14にて算出することが可能である。
以上のように、本実施例によれば、取得画像の特徴量に必要な画像データのみスキャンして画像処理を行うことで、取得画像の特徴量を高速に算出することが可能である。
【0041】
図9は、電子ビーム装置の全体制御を行うPC10の表示部(ディスプレイ)130に表示されるGUI(グラフィックユーザインタフェース)画面33の概略を示した図である。本実施例における電子ビーム装置では、特徴量を算出してから画像を取得するまでを一括して行うモード(オートモード)910と、特徴量を種類毎に求め、各々算出した特徴量毎に調整を行うモード(マニュアルモード)920とを備え、ユーザがこのGUI画面33を用い、オートモード910またはマニュアルモード920により特徴量算出から画像取得を行う。
【0042】
マニュアルモード920においては、複数の特徴量算出を行うモード930,940を備えており、各々の特徴量算出では、まず、焦点の評価値や明るさ、コントラスト等の特徴量931を指定し、次に、特徴量を算出する位置932を指定する。更に、スキャンの種別933を指定する。この特徴量算出位置932は、半導体のウエハの位置の指定やチップの指定、さらにはチップ内のパターンの指定を行う。従来はスキャンの種別933を指定することができず、取得画像の特徴量算出する場合でも画像取得と同様のスキャン時間が必要であるため、ウエハ上の数か所のみ特徴量を算出て調整を行っている。
【0043】
そのため、実際の画像取得位置での特徴量と異なった値で調整され、取得画像による検査・測長の精度が劣化する可能性がある。これに対し、本実施例によれば、取得画像の特徴量に必要な画像データのみスキャンして画像処理を行うことで、取得画像の特徴量を高速に算出できるため、実際の画像取得位置での特徴量を算出することが可能になる。
【0044】
特徴量算出を行う条件930,940を設定した後、画像取得ボタン960をクリックすると、マニュアルモードでの画像取得が行われる。
【0045】
図10は、上記に説明した方法で取得した画像を用いて決定した画像取得条件に基づいて試料のSEM画像を取得して試料上に形成されたパターンの測長または検査・観察を行う処理のフローを示した図である。
【0046】
試料のSEM画像を取得して測長または検査・観察を行う際には、まず、焦点の評価値や明るさ、上記に説明した方法で画像を取得しこの画像を用いてコントラスト等の特徴量を算出(S110、S120)し、これら算出した特徴量を用いてPC10でSEM1を制御して電子ビーム102の焦点位置や加速エネルギなどのSEM画像取得条件の調整を行う(S130)。その後、調整した条件に基づいてSEM画像を取得してこのSEM画像から試料上に形成されたパターンの測長及び検査を行う(S140)。上記に説明した方法で画像を取得して特徴量を算出するフロー(S110,S120)について、詳細に説明する。S110とS120とでは,指定する特徴量が異なるだけで、処理のステップは実質的に同じであるので、S110の例について説明する。
S110の特徴量算出(1)では、前述したように、まず、焦点の評価値や明るさ、コントラスト等の特徴量を指定し(S111)、次に、ウエハ位置やチップ位置、パターン指定など特徴量を算出する位置を指定する(S112)、その後、特徴量を算出するために必要なスキャンを行うスキャン種別を指定(S113)、特徴量を算出して、その結果を保存する(S114)。これら算出された特徴量は、S130の明るさ、コントラスト、終点等の調整に使用される。
【0047】
図11は、特徴量算出及び画像取得の動作概要を従来の方式と本実施例による方式とで比較して示した図である。画像取得を行う前に、焦点の評価値や明るさ、コントラスト等の特徴量を算出するが、本実施例により、これら特徴量算出の時間を短縮することが可能である。図11に示した例では、特徴量として(1)と(2)とを算出する例を示したが、更に多くの特徴量を算出して画像取得条件を決める場合には、本実施例による時間短縮の効果がより顕著に現れる。
【0048】
特徴量の算出時間Tは、画像サイズA、スキャンクロック周期S、特徴量を算出するために必要なスキャン数Kとすると、以下の式であらわされる。
T=A×S×(K/A) ・・・(数1)
ここで、K/Aは1以下の値であり、従来のスキャン時間に対する短縮時間Bは、以下の式であらわされる。
B=(A×S)−(A×S×(K/A))
=(A×S)×(1−K/A) ・・・(数2)
以上により、特徴量を算出するための時間は、画像サイズとスキャンクロック周期に比例することがわかる。
【0049】
例えば、図7及び図8で示した明るさの特徴量算出の例では、画像サイズ64(8×8)、スキャンクロック周期50ns(20MHz)、明るさの特徴量を算出するために必要なスキャン数15(4×8)となり、特徴量算出時間Tは、
T=64×50ns×(15/64)
=750ns ・・・(数3)
従来のスキャン時間に対する短縮時間Bは、
B=64×50ns×(1−15/64)
=2450ns ・・・(数4)
となる。
【0050】
通常の画像取得は画像サイズ512×512であり、特徴量を算出するために必要なスキャン数は、特徴量の種類によって様々である。例えばK/Aを0.5〜0.9とした場合、従来のスキャン時間に対する短縮時間Bは、
B(0.5)=512×512×50ns×(1−0.5)
=6.55ms ・・・(数5)
B(0.9)=512×512×50ns×(1−0.9)
=1.31ms ・・・(数6)
となる。特徴量の算出は、画像取得する半導体集積回路のパターンの種類や、観察する倍率等により、数十種類の特徴量を算出する場合があり、その場合、数十msの時間を短縮することが可能である。
【0051】
以上により、本発明によれば、取得画像の特徴量に必要な画像データのみスキャンして画像処理を行うことで、取得画像の特徴量を高速に算出することが可能であり、これにより装置の高スループット化が可能となる。
【符号の説明】
【0052】
1・・・SEM 2・・・画像生成部 3・・・電子ビーム制御部 4・・・A/D変換部 5・・・画像データ並び換え部 6・・・画像処理部 7・・・画像転送部 8・・・スキャン制御部 9・・・画像処理システム 10・・・PC
11・・・タイミング調整部 12・・・ブランキング検出部 13・・・最大/最小値検出部 14・・・取得範囲算出部 15・・・有効データ信号生成
16・・・メモリ制御部 17・・・画像メモリ部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走査電子顕微鏡(SEM)を用いて試料を撮像して得たSEM画像を処理する装置であって、
試料の表面に収束させた電子ビームを照射して走査し、前記試料から発生する二次電子または反射電子を検出して前記試料のSEM画像を取得する走査電子顕微鏡手段と、
前記電子ビームの走査条件を制御するスキャン制御手段と、
該走査電子顕微鏡手段で取得するSEM画像の画像取得条件を設定する画像取得条件設定手段と、
該画像取得条件設定手段で設定した条件に基づいて前記走査電子顕微鏡手段で取得したSEM画像を処理する画像処理手段を備え、
前記スキャン制御手段は、前記走査電子顕微鏡手段の前記電子ビームの走査を制御して、前記画像取得条件設定手段で画像取得条件を設定するためのSEM画像を取得するときと、前記画像処理手段で画像処理するためのSEM画像を取得するときとで前記電子ビームの走査条件を変えて取得することを特徴とする走査電子顕微鏡装置。
【請求項2】
前記スキャン制御手段は、前記走査電子顕微鏡手段の前記電子ビームの走査を制御して、前記画像取得条件設定手段で画像取得条件を設定するためのSEM画像を取得するときの前記電子ビームの走査回数を、前記画像処理手段で画像処理するためのSEM画像を取得するときの前記電子ビームの走査回数よりも少ない回数でSEM画像を取得することを特徴とする請求項1記載の走査電子顕微鏡装置。
【請求項3】
前記画像取得条件設定手段で画像取得条件を設定するために取得したSEM画像の画像データを並び替える画像データ並び替え手段を更に備えることを特徴とする請求項1または2に記載の走査電子顕微鏡装置。
【請求項4】
前記画像取得条件設定手段は、前記データ並び替え手段で並び替えたSEM画像を用いて画像取得条件を設定することを特徴とする請求項3記載の走査電子顕微鏡装置。
【請求項5】
前記画像処理手段は、前記SEM画像を処理して前記試料上の形成されたパターンの寸法の計測、または前記パターンの検査、または前記パターンの観察のいずれかを行うことを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の走査電子顕微鏡装置。
【請求項6】
前記走査電子顕微鏡手段は、画像処理手段で処理するために取得するSEM画像の取得時間よりも短い時間で前記画像取得条件設定手段で画像取得条件を設定するためのSEM画像を取得することを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の走査電子顕微鏡装置。
【請求項7】
試料の表面に走査電子顕微鏡(SEM)の収束させた電子ビームを照射し走査して前記試料から発生する二次電子または反射電子を検出して前記試料のSEM画像を取得し、
該取得したSEM画像を処理して画像取得条件を設定し、
該設定した画像取得条件に基づいて前記走査電子顕微鏡で前記試料のSEM画像を取得し、
該設定した画像取得条件に基づいて取得したSEM画像を処理する
走査電子顕微鏡(SEM)を用いて試料を撮像して得たSEM画像を処理する方法であって、
前記画像取得条件を設定するためのSEM画像を取得するときの前記電子ビームの走査条件と、前記画像取得条件を設定するためのSEM画像を取得するときの前記電子ビームの走査条件を変えて前記SEM画像を取得することを特徴とする走査電子顕微鏡装置の画像取得方法。
【請求項8】
前記画像取得条件を設定するためのSEM画像を取得するときの前記電子ビームの走査回数を、前記画像取得条件を設定するためのSEM画像を取得するときの前記電子ビームの走査回数よりも少なくして前記SEM画像を取得することを特徴とする請求項7記載の走査電子顕微鏡装置の画像取得方法。
【請求項9】
前記画像取得条件を設定するために取得したSEM画像データを並び替え、該並び替えた画像データを用いて前記画像取得条件を設定することを特徴とする請求項7または8に記載の走査電子顕微鏡装置の画像取得方法。
【請求項10】
前記設定した画像取得条件に基づいて取得したSEM画像を処理することが、前記試料上の形成されたパターンの寸法の計測、または前記パターンの検査、または前記パターンの観察のいずれかであることを特徴とする請求項7乃至9の何れかに記載の走査電子顕微鏡装置の画像取得方法。
【請求項11】
前記設定した画像取得条件に基づいて取得するSEM画像の取得時間よりも短い時間で前記画像取得条件を設定するためのSEM画像を取得することを特徴とする請求項7乃至10の何れかに記載の走査電子顕微鏡装置の画像取得方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−54174(P2012−54174A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−197334(P2010−197334)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】