説明

走行区分帯検出装置及び走行区分帯検出装置用プログラム

【課題】自車両の周囲の明るさに関わらず的確に走行区分帯を検出できる走行区分帯検出装置を提供する。
【解決手段】自車両の周囲の明るさを表すマップ番号(マップNo.)が判別値D以下であれば現在が夜間であると判別されるため、明部検出閾値は他の時間帯よりも大きい値a(0.5)に設定される。夜間であればキャッツアイなどの反射板が走行区分帯として設置してある道路において反射光を認識することからコントラストは大きくなり、明部検出閾値を大きく設定することによりノイズを走行区分帯と誤認識することがなくなる。またマップ番号が判別値Bと判別値Cとの間であれば現在が薄暗い夕方の時間帯であると判別されるため、明部検出閾値は他の時間帯よりも小さい値c(0.15)に設定され、的確に走行区分線(白線)を検出できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前方の撮影画像から道路の走行区分帯を検出する走行区分帯検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自車両の前方を撮影した画像から道路の走行区分帯を検出する装置として、例えば特許文献1記載の白線検出装置があった。この白線検出装置は、道路の走行区分帯としての白線を認識するものであり、前方を撮影した画像から路面領域の画素値を検出し、白線領域の画素値との区別が可能となる閾値を設定して、白線の認識を行っている。
【特許文献1】特開2005−157670号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の白線検出装置では、自車両の周囲の明るさに関係なく閾値が設定されるため、走行区分帯が正確に検出できないおそれがあった。
本発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、自車両の周囲の明るさに関わらず的確に走行区分帯を検出できる走行区分帯検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するためになされた本発明の請求項1記載の走行区分帯検出装置は、取得手段が自車両の前方の道路を含む領域を撮影した前方画像をカメラから取得し、認識手段が取得手段により取得された前方画像において明部と暗部とのコントラストを算出し、そのコントラストが閾値を超える部分を走行区分帯と認識する。そしてさらに判別手段と夜間設定手段を備え、判別手段が現在の時間帯を判別し、夜間設定手段が、判別手段により現在が夜間であると判別された場合に閾値を他の時間帯よりも大きく設定する。
【0005】
ここでコントラストとは、明部と暗部との明るさの相対的な差異を表す値であればよく、明るさ(例えば画素値)の比だけでなく、差やそれらを組み合わせたものも含むし、例えば基準との差を算出した上で比を求めてもよい。
【0006】
また走行区分帯とは、車両が走行する走路部分において車線を区分する境界をいい、昼間や夕方であれば白線、夜間であればキャッツアイなど反射板による反射光により示される。
【0007】
かかる請求項1記載の発明によれば、白線認識が困難な夜間においても、キャッツアイなど反射板が走行区分帯として設置されている道路であれば、走行区分帯を的確に検出することができる。
【0008】
すなわち、夜間は周囲の明るさが十分でなく、走路部分と白線部分とのコントラストが十分でないため、閾値を小さく設定しても白線認識を行うことは困難となる。そのため夜間では閾値を小さく設定しても白線認識ができないばかりか、前方画像のノイズを誤って走行区分帯と認識してしまう可能性があった。一方、キャッツアイなど反射板が走行区分帯として設置されている道路であれば、走路部分と走行区分帯としての反射板とのコントラストはかなり大きくなる。
【0009】
そこで、請求項1記載の発明では、夜間の閾値を他の時間帯よりも大きく設定する。これにより、ノイズを誤って認識することなく、反射板が走行区分帯として設置されている道路の走行区分帯を的確に検出することができる。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の走行区分帯検出装置において、さらにカメラ設定手段を備える。そしてそのカメラ設定手段は、走行区分帯としての反射板の反射光が夜間において前方画像内で白線として認識される程度に伸びるようにカメラのシャッタースピードを設定する。
【0011】
ここにいう夜間においてとは、請求項1の判別手段により現在が夜間であると判別された場合でもよいし、この判別手段とは別の基準により夜間であると判断してもよい。
かかる請求項2記載の発明によれば、夜間には反射板の反射光が白線として認識される程度に伸びるようにカメラのシャッタースピードが設定されるので、キャッツアイなど反射板が設置してある道路であれば、夜間であっても既存の白線認識により走行区分帯を検出できる。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の走行区分帯検出装置において、さらに夕方設定手段を備える。そしてその夕方設定手段は、判別手段により現在が夕方であると判別された場合に閾値を他の時間帯よりも小さく設定する。
【0013】
かかる請求項3記載の発明によれば、走路部分と白線部分とのコントラストが比較的小さい夕方の時間帯であっても的確に走行区分帯としての白線を検出できる。
すなわち、明るい昼間は走路部分と白線部分とのコントラストが大きいため、閾値も大きく設定することができるが、この閾値のままで、薄暗い夕方に白線認識を実行しようとすると、走路部分と白線部分とのコントラストが昼間ほど大きくないため、白線が的確に認識できない可能性があった。また逆に、薄暗い夕方に合わせて閾値を小さく設定してしまうと、明るい昼間に轍などを誤って白線と認識してしまう可能性もあった。
【0014】
そこで、請求項3記載の発明では、夕方の閾値を他の時間帯よりも小さく設定する。これにより、的確に走行区分帯としての白線を検出することができる。
請求項4記載の発明は、取得手段が自車両の前方の道路を含む領域を撮影した前方画像をカメラから取得し、認識手段が取得手段により取得された前方画像において明部と暗部とのコントラストを算出し、そのコントラストが閾値を超える部分を走行区分帯と認識する。そしてさらに判別手段と夕方設定手段を備え、判別手段が現在の時間帯を判別し、夕方設定手段が判別手段により現在が夕方であると判別された場合に閾値を他の時間帯よりも小さく設定する。
【0015】
かかる請求項4記載の発明によれば、現在が薄暗い夕方であると判別された場合に閾値が他の時間帯よりも小さく設定されるので、走路部分と白線部分とのコントラストが比較的小さい夕方の時間帯であっても的確に走行区分帯としての白線を検出できる。
【0016】
請求項5記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか記載の走行区分帯検出装置であり、過渡設定手段を備える。そしてその過渡設定手段は、判別手段により現在が過渡時間帯であると判別された場合に閾値を時間の経過に応じて変化させて設定する。
【0017】
ここで過渡時間帯とは、例えば、昼間から夕方、夕方から夜間など、自車両の周囲の明るさが短時間で変化する時間帯をいい、季節によって変化しうる。
また、時間の経過に応じて変化させる方法としては例えば、周期的に周囲の明るさを検出し、線形補間により明るさの変化に応じて閾値を変化させることができる。
【0018】
かかる請求項5記載の発明によれば、短時間で周囲の明るさが大きく変化する過渡時間帯であっても、的確な閾値が設定されることになるため、走行区分帯を正確に検出することが可能となる。
【0019】
請求項6記載の発明は、請求項1乃至5のいずれか記載の走行区分帯検出装置であり、判別手段が、前方画像の明るさを基に現在の時間帯を判別する。
かかる請求項6記載の発明によれば、前方画像から現在の時間帯を判別するので、例えば昼間であっても悪天候などで周囲が暗ければ夕方又は夜間と判別して適切な閾値が設定されるし、逆に夜間であっても街中などで周囲が明るければ昼間又は夕方と判別して適切な閾値が設定される。また前方画像を用いることで、新たに他のセンサを設置する必要がなくなり、装置の簡素化につながる。
【0020】
請求項7記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか記載の走行区分検出装置であり、判別手段が、自車両のライトの点灯状態に基づき現在の時間帯を判別する。
かかる請求項7記載の発明によれば、自車両のライトの点灯状態に基づき判別するので、現在の時間帯を判別するための他の装置が不要となる。
【0021】
請求項8記載の発明は、自車両の前方の道路を含む領域を撮影した前方画像をカメラから取得する取得手段と取得手段により取得された前方画像において明部と暗部とのコントラストを算出し、そのコントラストが閾値を超える部分を走行区分帯と認識する認識手段としてコンピュータを機能させる走行区分帯検出装置用プログラムであり、さらに、現在の時間帯を判別する判別手段と、判別手段により現在が夜間であると判別された場合に閾値を他の時間帯よりも大きく設定する夜間設定手段としてコンピュータを機能させる。
【0022】
かかる請求項8記載の発明によれば、請求項1と同様の効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
[1 構成]
図1は、実施形態の走行区分帯検出システム1の構成を機能的に説明した機能ブロック図である。
【0024】
走行区分帯検出システム1は、前方監視カメラ2及び走行区分帯検出装置3を備え、自車両に搭載される。走行区分帯検出装置3は、明るさ制御部4及び走行区分帯認識部5を備え、走行区分帯認識部5は閾値算出部6及び認識部7を備える。また、ライトスイッチ8からスイッチ信号が走行区分帯認識部5に入力される。
【0025】
なお、走行区分帯検出装置3は、図示しない電子制御ユニット(以下「ECU」という。)を備えており、実際には、このECUが、明るさ制御部4、閾値算出部6及び認識部7として機能する。すなわち、これら各構成要素は、それぞれ独立したハードウェアで構成する必要はなく、ソフトウエアとして共通化して実現することが可能である。
【0026】
前方監視カメラ2はCCDカメラやCMOSカメラなどによって構成されており、これにより、例えば図2に示すような車両前方の画像(以下「前方画像」という。)を撮影し、撮影した前方画像を信号として走行区分帯検出装置3に送信する。
【0027】
走行区分帯検出装置3は、前方監視カメラ2から送信される前方画像を基に、前方監視カメラ2に制御情報を送信し、また前方画像から道路の走行区分帯を認識する処理を実行する。
【0028】
具体的には、前方監視カメラ2で撮影された前方画像は、走行区分帯検出装置3に送信され、内部の明るさ制御部4及び走行区分帯認識部5にそれぞれ送信される。送信された前方画像を基に、明るさ制御部4により前方監視カメラ2に対してフィードバック制御が行われ、走行区分帯認識部5により走行区分帯の認識処理が行われる。検出された走行区分帯は、自車両の自動走行システムなど自車両の運転制御全般に用いられる。
【0029】
明るさ制御部4は、前方監視カメラ2から前方画像を入力して、その前方画像から明るさを検出して、前方監視カメラ2のシャッタースピードやゲインなどの制御情報をフィードバックする。具体的には、前方監視カメラ2から前方画像を受け取って、これが表す例えば図2に示す前方画像において、前方の道路を含む明るさを算出するための領域(以下「明るさ算出領域」という。)を設定し、その明るさ算出領域内の画素平均値を算出し、この値を自車両の周囲の明るさとして、制御情報を決定する。
【0030】
閾値算出部6は、前方画像において暗部としての走路部分と明部としての走行区分帯(白線又は反射板)とのコントラストから、明部としての走行区分帯を認識するための明部検出閾値を算出する。
【0031】
認識部7では、前方画像を例えば横方向に走査して、閾値算出部6で算出した明部検出閾値以上のコントラストがある部分を走行区分帯(白線又は反射板)として認識し検出する処理を行う。
【0032】
ライトスイッチ8は、自車両のヘッドライト(図示せず)及びスモールライト(図示せず)が、それぞれ手動/自動によりオン/オフとするためのスイッチである。このスイッチが点灯状態にあるか又は消灯状態にあるかについては、スイッチ信号として走行区分帯検出装置3の走行区分帯認識部5に送信される。
【0033】
[2 処理]
図3は、ECUが実行する明るさ制御処理を示すフローチャートである。この明るさ制御処理は車両のイグニションスイッチがONにされると開始される。
【0034】
まずS100では、現在の前方画像を前方監視カメラ2から取得し、図2に示した明るさ算出領域内の明るさ平均(画素平均値)を算出する。ここで算出した画素平均値が、自車両の現在の周囲の明るさを表していることになる。図2で前方画像の全体ではなく、前方の道路を含む一部の領域となる明るさ算出領域内で明るさ平均を算出したのは、例えば前方にトンネルがあったり、道路の横に建物があったりした場合、トンネルや建物の色や明るさに影響を受けて、正確に自車両の周囲の明るさを検出できない可能性があるからである。この明るさ算出領域を設定する方法としては、例えば、画像内の消失点(無限遠点ともいう)からやや下方の一定領域とすることができる。
【0035】
次にS110で、現在の周囲の明るさ平均(画素平均値)が現在設定されているマップ番号の明るさ目標値に不感帯の数値を加えた数値以上であるか否かを判断する。現在設定されているマップ番号の初期値としては例えば、前回終了時のマップ番号を用いることができるし、その値もない場合は便宜的に仮のマップ番号を用いればよい。明るさのマップと制御情報との関係は図4に示すとおりである。
【0036】
図4に示す「NO」の部分がマップ番号であり、各マップ番号に応じて制御情報としてのゲインとシャッタースピードが決まる。マップ番号は0〜92の整数で表され、値が小さいほど暗い時、値が大きくなるほど明るい時の制御情報(ゲインとシャッタースピード)となる。すなわち、暗い時ほどシャッタースピードは長く(遅く)なり、ゲインも大きくなるのに対し、逆に明るい時ほどシャッタースピードは短く(速く)なり、ゲインも小さくなる。例えば、マップ番号が「30」であれば、ゲインが「A33」、シャッタースピードが「B33」の制御情報が前方監視カメラ2にフィードバックされる。
【0037】
またS110に示した明るさ目標値とは、マップ番号に対応した画素値(明るさ)であり、また不感帯とは、明るさ制御状態が頻繁に変化するのを防止するため、カメラ制御を実行すべきか否かの判定用閾値として利用されるものである。具体的には、現在使用中のN番目のマップ番号と、明るさ目標値とに基づき判断される撮影対象の明るさを基準として、その前後1段分のマップ番号に相当する明るさの範囲を不感帯として算出する。つまり、N−1番目のマップ番号と明るさ目標値とに基づき判断される撮影対象の明るさから、N+1番目のマップ番号と明るさ目標値とに基づき判断される撮影対象の明るさまでの範囲を、不感帯として算出する。現在の周囲の明るさ(画素値)が明るさ目標値に不感帯の数値を加えた値以上となった場合に、マップ番号を加えて、より明るい時の制御情報を前方監視カメラ2にフィードバックすることになる。
【0038】
S110で、現在の画素平均値が、明るさ目標値と不感帯の数値とを加えた数値以上であれば(S110:YES)、S120に進み、そうでなければ(S110:NO)、S130に進む。
【0039】
S120では、現在の画素平均値からみて、周囲の明るさが現在のマップ番号が予定している明るさよりも明るいことになるため、現在のマップ番号(マップNo.)を1つだけ増加(インクリメント)して、S160に進む。
【0040】
またS130では、周囲の明るさ平均(画素平均値)が現在設定されているマップ番号の明るさ目標値から不感帯の数値を引いた数値以下であるか否かを判断する。ここでは現在の周囲の明るさが現在のマップ番号が予定している明るさよりも暗いか否かを判断することになる。S130で、現在の画素平均値が明るさ目標値から不感帯の数値を引いた数値以下であれば(S130:YES)、S140に進み、そうでなければ(S130:NO)、S150に進む。
【0041】
S140では、現在の画素平均値からみて、周囲の明るさが現在のマップ番号が予定している明るさよりも暗いことになるため、現在のマップ番号(マップNo.)を1つだけ減少(デクリメント)して、S160に進む。このS140の処理により、明るさ平均(画素平均値)が小さく暗いほど、マップ番号は小さい値となり、シャッタースピードが長く設定されることになるが、特に夜間に相当するマップ番号では、走行区分帯としての反射板の反射光が前方画像内で既存の白線認識処理により白線として認識される程度に伸びるように前方監視カメラのシャッタースピードが設定される。
【0042】
またS150では、周囲の明るさが現在のマップ番号が予定している明るさの範囲内にあることになるため、マップ番号を変更せずに、そのままS160に進む。
最後にS160では、算出されたマップ番号にしたがって、カメラ制御情報を読み取り、前方監視カメラ2に制御情報としてゲインとシャッタースピードを送信(フィードバック)して、終了する。この明るさ制御処理は一定の周期(例えば100ms)で繰り返して処理することで、現在の周囲の明るさであるマップ番号に応じた制御情報が前方監視カメラ2にフィードバックされることになる。
【0043】
図5は、ECUが実行する閾値算出処理を示すフローチャートである。この閾値算出処理も車両のイグニションスイッチがONにされると開始される。
まずS200で、明るさ制御部4により算出された現在の周囲の明るさを示すマップ番号(マップNo.)を取得し、S210に進む。
【0044】
次にS210で、マップ番号(マップNo.)が昼間に相当する判別値A以上であるか否かを判断する。このマップ番号と判別値との関係は図6に示すようにマップ番号が大きいほど外部が明るいことから、例えば判別値Aを50と設定して、50以上であれば現在が昼間と判別することが考えられる。
【0045】
S210でマップ番号が判別値A以上であれば(S210:YES)、S220に進み、判別値A以上でなければ(S210:NO)、S230に進む。
S220では、明部検出閾値をbと設定し、処理の最初に戻る。このS220では、マップ番号から現在が昼間と判別された場合であり、昼間の明部検出閾値としては例えば、0.35を用いることができ、この場合の明部検出閾値は比較的大きいが、夜間よりは小さい値に設定される。
【0046】
S230では、マップ番号が昼間から夕方の過渡時間帯に相当する判別値B以上であるか否かを判断する。図6の例でいえば、マップ番号としての判別値Bが35と設定され、マップ番号が35以上50未満であれば、昼間から夕方への過渡時間帯であることになる。
【0047】
S230で、マップ番号が判別値B以上であれば(S230:YES)、S240に進み、判別値B以上でなければ(S230:NO)、S250に進む。
S240では、A・B間のマップ番号に対応させてb・c間で明部検出閾値を線形補間により算出する。ここではbを0.35、cを0.15と設定しており、これは現在が昼間から夕方にかけての過渡時間帯であることを考慮して、明部検出閾値を周囲の明るさに対応して変化させて設定するものである。
【0048】
次にS250では、マップ番号が夕方の明るさに相当する判別値C以上であるか否かが判別される。マップ番号が判別値C以上であれば(S250:YES)、S260に進み、判別値C以上でなければ(S250:NO)、S270に進む。
【0049】
S260では、明部検出閾値をcと設定し、処理を終了する。このS260では、マップ番号から現在が夕方であると判別された場合であり、夕方の明部検出閾値としては例えば、0.15を用いることができ、この場合の明部検出閾値は他の時間帯よりも小さい値に設定される。
【0050】
S270では、マップ番号が昼間から夜間の過渡時間帯に相当する判別値D以上であるか否かを判断する。図6の例でいえば、マップ番号としての判別値Dが15と設定され、マップ番号が15以上20未満であれば、夕方から夜間への過渡時間帯であることになる。
【0051】
S270で、マップ番号が判別値D以上であれば(S270:YES)、S280に進み、判別値D以上でなければ(S270:NO)、S290に進む。
S280では、図6に示すように、C・D間のマップ番号に対応してc・a間で明部検出閾値を線形補間により算出する。ここではcを0.15、aを0.5と設定している。これは現在が夕方から夜間にかけての過渡時間帯であることを考慮して、明部検出閾値を周囲の明るさに対応して変化させて設定するものである。
【0052】
次にS290では、マップ番号が判別値15未満であることから夜間であると判別された場合であり、明部検出閾値をaと設定する。夜間の明部検出閾値としては例えば、0.5を用いることができ、明部検出閾値は他の時間帯よりも大きい値に設定される。夜間は白線認識が困難であることから、他の時間帯よりも明部検出閾値を大きくして、キャッツアイなど反射板の反射光を認識して検出する。この場合、走路部分の暗部と反射光部分の明部とのコントラストは極めて大きくなるため、明部検出閾値も大きく設定して、ノイズを誤って認識してしまうことを回避する。また前述のとおり、夜間であればマップ番号が大きくなり、反射光が延びるようにシャッタースピードが設定されるので、図7に示すように、走行している自車両から前方監視カメラ2による撮影を行った場合、反射光が残像として前方画像内に残るため、昼間と同じ白線認識のプログラムをそのまま応用して走行区分帯を検出することができる。
【0053】
図8は認識部7が実行する走行区分認識処理を示す説明図である。走行区分帯を検出する処理は周知の技術であり詳述しないが、図8(a)に例示する前方画像を前方監視カメラ2から取得して、走行区分帯の検出を行う。具体的には前方画像を横方向(X軸)に走査して、暗部としての走路部分と明部としての走行区分帯とのコントラストが閾値算出部6で算出した明部検出閾値を超える部分を走行区分帯と認識し検出する。
【0054】
図8(b)は走行区分帯を認識する処理を示す説明図である。図示するように、横軸を前方画像の横方向(X軸)、縦軸を画素値としてグラフを作成した場合、路面部分は暗く、白線部分は明るくなるため、白線部分は画素値が高くなる。そして、白線部分の画素値と路面部分の画素値との差を白線値(1)、黒レベルの画素値と路面との画素値との差を走路値(2)とし、コントラスト=白線値(1)/走路値(2)で計算して、閾値算出部6で算出した明部検出閾値と比較することにより走行区分帯を認識し検出する。
【0055】
[3 効果]
以上説明したように、本実施形態の走行区分帯検出システム1によれば、夜間の明部検出閾値が他の時間帯よりも大きく設定されるので(S290)、白線認識が困難な夜間においても、キャッツアイなど反射板が走行区分帯として設置されている道路であれば、ノイズを誤って認識することなく、走行区分帯を的確に検出することができる。
【0056】
また夕方の明部検出閾値が他の時間帯よりも小さく設定されるので(S260)、走路部分と白線部分とのコントラストが比較的小さい夕方の時間帯であっても的確に走行区分帯としての白線を検出できる。
【0057】
そして、短時間で周囲の明るさが大きく変化する過渡時間帯であっても、変化に応じた的確な明部検出閾値が設定されることになるため(S240,S280)、走行区分帯を正確に検出することが可能となる。
【0058】
さらに前方監視カメラ2で撮影した前方画像から現在の時間帯を判別するので、例えば昼間であっても悪天候などで周囲が暗ければ夕方又は夜間と判別して適切な明部検出閾値が設定されるし、逆に夜間であっても街中などで周囲が明るければ昼間又は夕方と判別して適切な明部検出閾値が設定される。また前方画像を用いることで、新たに他のセンサを設置する必要がなくなり、装置の簡素化につながる。
【0059】
また、暗い夜間には反射板の反射光が既存の白線認識処理により白線として認識される程度に伸びるようにカメラのシャッタースピードが設定されるので(S140,S160)、キャッツアイなど反射板が設置してある道路であれば、夜間であっても既存の白線認識により走行区分帯を検出できる。
【0060】
[4 特許請求の範囲との対応]
なお、本実施形態の走行区分帯検出システム1において、走行区分認識処理を実行するECUが取得手段及び認識手段に相当する。また、S210、S230、S250及びS270を実行するECUが判別手段に相当し、S290を実行するECUが夜間設定手段、S260を実行するECUが夕方設定手段、S240及びS280を実行するECUが過渡時間帯設定手段に相当する。また、S160を実行するECUがカメラ設定手段に相当する。
【0061】
[5 他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0062】
例えば、現在が夜間又は夕方であることを判別する方法としては、自車両のヘッドライト及びスモールライトの点灯状態/消灯状態を検出することにより行なうことが考えられる。その場合システムは、前述の実施形態の走行区分帯検出システムと比較すると、現在の時間帯を、マップ番号ではなく、ライトスイッチ8から入力されるスイッチ信号に基づき判別する点のみが異なる。具体的には、図5に示した閾値算出処理におけるS210の処理で、スイッチ信号に基づきスモールライトが消灯状態か否かを判断し、スモールライトが消灯状態の場合に昼間であると判断する(S210:YES)。また、S250の処理で、ヘッドライトが消灯状態か否かを判断し、ヘッドライトが消灯状態の場合には夕方であると判断し(S250:YES)、ヘッドライトが点灯状態の場合には夜間であると判断する(S250:NO)。なお、この場合、過渡時間帯の判断はしないため、S230、S240、S270及びS280の処理はなくなり、他の処理は図5と同様になる。その他の構成は前述の実施形態と同じである。
【0063】
かかる実施形態の走行区分帯検出システムによれば自車両のライトを基に判別するので、現在の時間帯を判別するための他の装置が不要である。
他にも、昼間、夕方、夜間、過渡時間帯を判別する方法としては、例えば、日の出・日の入りの時刻、光センサ(図示せず)により明るさを検出したり、外気の温度や湿度を検出したり、センタなど外部から現在の時間帯に関する情報をデータ通信により受信したりする方法などが考えられる。
【0064】
この場合、シャッタースピードを制御する条件としての夜間の判断と、明部検出閾値を設定する条件としての時間帯の判別とは、必ずしも一致させる必要はない。また、両者の判断・判別について、異なるセンサを用いることもできる。
【0065】
また、本実施形態では、コントラストとして、暗部と明部との差異(1)と黒レベルと暗部との差異(2)との比を用いたが、コントラストとして暗部と明部との相対的な差異を示す値であれば、暗部の画素値と明部の画素値との差や比をそのまま用いてもよいし、これらを組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本実施形態の走行区分帯検出システムの構成を機能的に説明した機能ブロック図である。
【図2】前方画像の一例を示す説明図である。
【図3】明るさ制御部が実行する明るさ制御処理を示すフローチャートである。
【図4】マップ番号と制御情報としてのゲイン及びシャッタースピードとの関係を示す説明図である。
【図5】閾値算出部が実行する閾値算出処理を示すフローチャートである。
【図6】マップ番号から明部検出閾値を算出する過程を示す説明図である。
【図7】夜間の前方画像の一例を示す説明図である。
【図8】認識部が実行する走行区分認識処理を示す説明図である。
【符号の説明】
【0067】
1…走行区分帯検出システム、2…前方監視カメラ、3…走行区分帯検出装置、4…明るさ制御部、5…走行区分帯認識部、6…閾値算出部、7…認識部、8…ライトスイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の前方の道路を含む領域を撮影した前方画像をカメラから取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された前方画像において明部と暗部とのコントラストを算出し、そのコントラストが閾値を超える部分を走行区分帯と認識する認識手段と
を備えた走行区分帯検出装置であって、
現在の時間帯を判別する判別手段と、
前記判別手段により現在が夜間であると判別された場合に前記閾値を他の時間帯よりも大きく設定する夜間設定手段と
を備えたことを特徴とする走行区分帯検出装置。
【請求項2】
走行区分帯としての反射板の反射光が夜間において前記前方画像内で白線として認識される程度に伸びるように前記カメラのシャッタースピードを設定するカメラ設定手段を備えたこと
を特徴とする請求項1記載の走行区分帯検出装置。
【請求項3】
前記判別手段により現在が夕方であると判別された場合に前記閾値を他の時間帯よりも小さく設定する夕方設定手段を備えたこと
を特徴とする請求項1又は2記載の走行区分帯検出装置。
【請求項4】
自車両の前方の道路を含む領域を撮影した前方画像をカメラから取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された前方画像において明部と暗部とのコントラストを算出し、そのコントラストが閾値を超える部分を走行区分帯と認識する認識手段と
を備えた走行区分帯検出装置であって、
現在の時間帯を判別する判別手段と、
前記判別手段により現在が夕方であると判別された場合に前記閾値を他の時間帯よりも小さく設定する夕方設定手段と
を備えたことを特徴とする走行区分帯検出装置。
【請求項5】
前記判別手段により現在が過渡時間帯であると判別された場合に前記閾値を時間の経過に応じて変化させて設定する過渡設定手段を備えたこと
を特徴とする請求項1乃至4のいずれか記載の走行区分帯検出装置。
【請求項6】
前記判別手段は、前記前方画像の明るさを基に現在の時間帯を判別することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか記載の走行区分帯検出装置。
【請求項7】
前記判別手段は、自車両のライトの点灯状態に基づき現在の時間帯を判別することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか記載の走行区分検出装置。
【請求項8】
自車両の前方の道路を含む領域を撮影した前方画像をカメラから取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された前方画像において明部と暗部とのコントラストを算出し、そのコントラストが閾値を超える部分を走行区分帯と認識する認識手段としてコンピュータを機能させる走行区分帯検出装置用プログラムであって、
現在の時間帯を判別する判別手段と、
前記判別手段により現在が夜間であると判別された場合に前記閾値を他の時間帯よりも大きく設定する夜間設定手段としてコンピュータを機能させることを特徴とする走行区分帯検出装置用プログラム。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図2】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−55377(P2010−55377A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−219700(P2008−219700)
【出願日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】