説明

走行支援装置、方法およびプログラム

【課題】有効期間が過ぎた交通情報のみを蓄積している自車両において交通情報を有効に利用することができなかった。
【解決手段】自車両の現在位置を含む領域の交通情報であるとともに有効期間が決められた交通情報を通信によって取得して記録媒体に記録し、前記自車両の動作に基づいて特定した走行状況を取得し、前記有効期間が経過していない前記交通情報が前記記録媒体に記録されている場合には当該有効期間が経過していない前記交通情報を表示部に表示させ、前記有効期間が経過していない前記交通情報が前記記録媒体に記録されていない場合は、さらに、前記記録媒体に記録されている前記交通情報が示す状況と前記走行状況とが一致している場合に、前記記録媒体に記録されている前記交通情報を前記表示部に表示させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交通情報を表示して走行を支援する走行支援装置、方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ナビゲーション装置においては、通信によってVICS(VICSは登録商標)情報やプローブ情報を取得して渋滞情報等の交通情報を取得し、当該交通情報を地図とともに表示するなどして自車両の走行を支援している。一般に、このような交通情報には有効期間が対応づけられており、有効期間内の交通情報を利用して案内を行う構成となっている。また、当該有効期間を動的に決定する技術が知られており、特許文献1においては、路上センサの情報から交通状況の変化を検出し、当該交通状況の変化に基づいて有効期間の長さを決定している。
【特許文献1】特開2007−286531号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の技術においては、記録媒体に記録されている交通情報の有効期限が経過している場合に当該交通情報を有効に利用することができなかった。
すなわち、特許文献1に開示された技術においては、路上センサによって検出した交通状況の変化に基づいてセンター装置において交通情報の有効期間を決定している。このため、自車両に搭載されたナビゲーション装置にて交通情報を取得した時点で当該交通情報の有効期間は固定的に決定されている。従って、ある交通情報を自車両にて取得した後、通信障害等によって有効期間内に次の交通情報を取得できなかった場合には、ナビゲーション装置の記録媒体に交通情報が記録されていても交通情報を利用した案内等を行うことはできない。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、記録媒体に記録されている交通情報の有効期限が経過している場合であっても当該交通情報を有効に利用することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の目的を達成するため、本発明においては、有効期間が経過していない交通情報が記録媒体に記録されている場合には当該有効期間が経過していない交通情報を表示部に表示させる構成とし、有効期間が経過していない交通情報が記録媒体に記録されていない場合は、さらに、前記記録媒体に記録されている交通情報が示す状況と自車両の動作に基づいて特定された走行状況とが一致している場合に、前記記録媒体に記録されている交通情報を表示部に表示させる。すなわち、交通情報に対応づけられている有効期間が経過した場合であっても、前記記録媒体に記録されている交通情報が示す状況と自車両の動作に基づいて特定された走行状況とが一致する場合には当該前記記録媒体に記録されている交通情報の信頼性は低下していない。そこで、交通情報の信頼性が低下していない場合には、有効期間が経過している場合であっても前記記録媒体に記録されている交通情報の有効期間を実質的に延長することとした。このため、有効期間が過ぎた交通情報のみを蓄積している自車両において交通情報を有効に利用することが可能である。
【0005】
ここで、交通情報記録手段は、通信によって交通情報を取得して記録媒体に記録することができればよく、任意のタイミングで交通情報の管理センターと通信を行って当該交通情報を取得すればよい。交通情報は、自車両の現在位置を含む領域についての交通情報であって、有効期間が決められていればよい。有効期間は予め決められていればよく、交通情報内に当該有効期間を含む情報が含まれていてもよいし、交通情報を利用可能な期間として予め既定の有効期間が決められていてもよい。交通情報は、自車両の現在位置を含む領域内の交通に関する情報や交通に影響を与える要素の情報であり、例えば、渋滞度や平均旅行時間、天候等を示す情報である。自車両の現在位置を含む領域は、所定の広さを持った領域でもよいし、自車両が存在する道路区間とその周辺の道路区間によって構成される領域であってもよく、種々の構成を採用可能である。
【0006】
走行状況取得手段は、自車両の動作に基づいて特定した走行状況を取得することができればよい。走行状況は、自車両の動作に対応した走行状況であればよい。自車両の動作は自車両に搭載されたセンサによって検出可能な動作であり、例えば、自車両の現在位置、車速、加速度やワイパー等の電装品の動作等が自車両の動作に該当する。なお、走行状況は、交通情報が示す状況と比較可能な種類の状況である。すなわち、交通情報と直接的に比較できるように自車両の動作から走行状況を特定すればよい。例えば、交通情報が渋滞度など自車両の動作に基づいて間接的に特定される情報を示しているのであれば自車両の動作から渋滞度を算出して走行状況とすればよいし、交通情報が車両の車速など車両の動作と直接的に比較可能な情報であれば、自車両の車速などを走行状況として取得すればよい。
【0007】
交通情報表示手段は、有効期間に従って交通情報を表示部に表示させるが、有効期間が経過していない交通情報が記録媒体に記録されていない場合に、前記記録媒体に記録されている交通情報が示す状況を特定し、自車両の動作に基づいて特定された走行状況と一致している場合に、前記記録媒体に記録されている交通情報を前記表示部に表示させることができればよい。前記記録媒体に記録されている交通情報が示す状況と、自車両の動作に基づいて特定された走行状況とは、互いに対応する位置についての状況であってもよいし、異なる位置についても状況であってもよい。すなわち、状況を比較することによって前記記録媒体に記録されている交通情報の信頼性を評価することができればよい。走行状況は自車両の動作に基づいて特定されるため、当該走行状況は自車両の現在位置あるいは自車両が走行済の経路についての走行状況となる。従って、自車両の現在位置あるいは自車両が走行済の経路上の位置について走行状況と前記記録媒体に記録されている交通情報が示す状況とを比較すれば、互いに対応する位置について状況を比較していることになる。一方、自車両の現在位置より前の位置について走行状況と前記記録媒体に記録されている交通情報が示す状況とを比較すれば、互いに異なる位置について状況を比較していることになる。
【0008】
なお、交通情報は、任意のタイミングで交通情報を取得することによって記録媒体上の交通情報を逐次更新してもよいし、記録媒体に蓄積してもよい。異なるタイミングで取得され、かつ、有効期間が経過した複数の交通情報が記録媒体に蓄積されている場合には、最も現在時刻に近い過去の時間に取得した交通情報、すなわち、交通情報の有効期間が経過した場合に、最も信頼性が高い交通情報が有効期間の延長候補となる。
【0009】
さらに、前記記録媒体に記録されている交通情報を表示部に表示させる際に、表示対象とする交通情報は当該交通情報の全部であってもよいし一部であってもよい。例えば、有効期間が経過していない交通情報が記録媒体に記録されていない場合に、前記記録媒体に記録されている交通情報に基づいて自車両の現在位置の前方における交通情報を特定して表示部に表示させる構成としてもよい。すなわち、自車両の現在位置の前方における交通情報は自車両の運転者にとって重要度の高い交通情報であるため、当該重要度の高い交通情報については前記記録媒体に記録されている交通情報を参照して交通情報の有効期間を実質的に延長する構成とする。
【0010】
さらに、自車両の運転者にとって重要度の高い交通情報について、当該交通情報の信頼性に応じて有効期間を実質的に延長する構成としてもよい。例えば、自車両の現在位置から前方の連続する区間について前記記録媒体に記録されている前記交通情報が示す状況と、自車両の現在位置における自車両の動作から特定される走行状況とが一致している場合には、当該連続する区間について前記記録媒体に記録されている交通情報を表示部に表示させる構成とする。すなわち、自車両の現在位置について、走行状況と一致する状況が前記記録媒体に記録されている交通情報によって示されており、前記記録媒体に記録されている交通情報から特定される自車両の現在位置から前方の状況が当該走行状況と連続して一致している場合、当該連続して一致している区間内では、自車両の現在の走行状況と同じ状況が続いていることが想定される。従って、有効期間が経過していたとしても、前記記録媒体に記録されている交通情報を当該区間内についての比較的信頼性の高い交通情報として流用することが可能である。
【0011】
さらに、自車両の現在位置までの走行履歴に基づいて有効期間を延長する交通情報を決定してもよい。例えば、走行状況の履歴を取得し、当該履歴が示す各位置の走行状況と、前記記録媒体に記録されている前記交通情報が示す各位置における車両の状況との一致率が大きいほど広い範囲についての前記交通情報を前記表示部に表示させる構成を採用可能である。
【0012】
すなわち、自車両の走行状況の履歴を取得すれば、自車両の後方の各位置における走行状況の履歴を特定することができる。一方、前記記録媒体に記録されている交通情報に基づいて自車両の後方の各位置における車両の状況を特定すれば、前記記録媒体に記録されている交通情報が示す車両の状況と、自車両の走行状況の履歴とが一致するか否かを位置毎に判定することができる。そして、その一致率が大きい場合には過去から現在までの自車両の走行状況と前記記録媒体に記録されている交通情報が示す状況とに大きな乖離がないことになる。従って、一致率が大きいほど前記記録媒体に記録されている交通情報の信頼性が高いと言える。そこで、一致率が大きいほど広い範囲についての交通情報を表示部に表示させる構成とすることにより、交通情報の信頼度に応じて多くの交通情報を流用する構成とすることが可能である。
【0013】
なお、本発明のように、自車両の動作に基づいて特定された走行状況と、有効期間が経過した交通情報が示す状況とが一致している場合に有効期間を実質的に延長する手法は、この処理を行う方法やプログラムとしても適用可能である。また、以上のような走行支援装置、方法、プログラムは、単独の装置として実現される場合もあれば、車両に備えられる各部と共有の部品を利用して実現される場合もあれば、車両に搭載されない各部と連携して実現される場合もあり、各種の態様を含むものである。また、一部がソフトウェアであり一部がハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。さらに、走行支援装置を制御するプログラムの記録媒体としても発明は成立する。むろん、そのソフトウェアの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし光磁気記録媒体であってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)走行支援装置の構成:
(2)走行支援処理:
(3)他の実施形態:
【0015】
(1)走行支援装置の構成:
図1は、自車両に搭載された走行支援装置の構成を示すブロック図である。本実施形態において走行支援装置は、ナビゲーション装置10によって実現される。ナビゲーション装置10は、CPU、RAM、ROM等を備える制御部20と記録媒体30とを備えており、記録媒体30やROMに記録されたプログラムを制御部20で実行することができる。本実施形態においては、このプログラムの一つとして走行支援プログラム21を実行可能である。
【0016】
自車両には、走行支援プログラム21によって、交通情報の管理センターから交通情報を受信してその有効期間を管理しながら表示部に表示させるために、通信部40とGPS受信部41と車速センサ42とジャイロセンサ43と表示部44とスピーカー45とが備えられている。
【0017】
通信部40は、図示しない外部の交通情報の管理センターと無線通信を行う回路を備えており、制御部20は、通信部40を制御して交通情報の管理センターから送信される交通情報を取得し、記録媒体30に記録する(図1に示す交通情報30b)。
【0018】
GPS受信部41は、GPS衛星からの電波を受信し、図示しないインタフェースを介して自車両の現在位置を算出するための信号や現在時刻を示す信号を出力する。制御部20は、この信号を取得して自車両の現在位置および現在時刻を取得する。車速センサ42は、自車両が備える車輪の回転速度に対応した信号を出力する。制御部20は、図示しないインタフェースを介してこの信号を取得し、自車両の速度を取得する。ジャイロセンサ43は、自車両の水平面内の旋回についての角加速度を検出し、自車両の向きに対応した信号を出力する。制御部20は図示しないインタフェースを介してこの信号を取得し、自車両の走行方向を取得する。車速センサ42およびジャイロセンサ43は、GPS受信部41の出力信号から特定される自車両の現在位置を補正するためなどに利用される。
【0019】
また、制御部20は、所定の出力を表示部44およびスピーカー45に対して出力して当該表示部44にて任意の画像を表示させ、スピーカー45にて任意の音声を出力させる。本実施形態において制御部20は、後述する地図情報30aが示す地図を表示部44に表示させるとともに、交通情報30bが示す渋滞度を示す情報を表示部44上に表示させる。
【0020】
制御部20は、走行支援プログラム21を実行することにより、有効期間を管理しながら道路情報を表示する。このため、当該走行支援プログラム21は、交通情報記録部21aと走行状況取得部21bと交通情報表示部21cとを備えており、記録媒体30には予め地図情報30aが記録され、通信部40によって取得した交通情報30bが記録される。
【0021】
地図情報30aは、自車両が走行する道路上に設定されたノードを示すノードデータ、ノード間の道路の形状を特定するための形状補間点データ、ノード同士の連結を示すリンクデータ、道路やその周辺に存在する地物を示すデータ等を含み、自車両の現在位置から目的地までの経路の探索や経路案内等に利用される。
【0022】
交通情報30bは、各リンクに相当する道路の渋滞度を示す情報であり、本実施形態において渋滞度は、車両の量が少ない順に「空き」、「渋滞」と定義されている。また、当該交通情報30bの有効期間は予め決められている。すなわち、交通情報30bは表示部44に表示されて運転者の走行を支援するための情報として利用され、通信部40を介して逐次ナビゲーション装置10にて取得されるが、渋滞度等の交通情報は時間変化するため、情報の信頼度が維持できる期間として予め有効期間が決められている。本実施形態においては、交通情報の管理センターにおいて交通情報を送信する際に予め有効期間を示す情報が特定され、交通情報とともに送信される構成である。なお、交通情報30bは、VICS情報やプローブ情報(プローブ情報によって特定された渋滞度を示す情報)等によって構成することができる。
【0023】
交通情報記録部21aは、通信部40を制御して交通情報の管理センターと通信を行って、自車両の現在位置を含む領域の交通情報を取得して記録媒体30に記録させる機能を制御部20に実現させるモジュールである。すなわち、交通情報の管理センターが送信する交通情報から自車両の現在位置が存在する道路およびその周辺の予め決められた道路に相当するリンクの渋滞度を示す情報を取得して交通情報30bとする。本実施形態においては、記録媒体30に交通情報30bが記録されている状態で新たに交通情報30bを取得すると、新たに取得した交通情報30bで既存の交通情報30bを上書きする。従って、記録媒体30に記録された交通情報30bは最も現在時刻に近い過去の時間に取得した交通情報となっている。
【0024】
走行状況取得部21bは、自車両の動作に基づいて自車両の走行状況を特定し、当該走行状況を示す情報を取得する機能を制御部20に実現させるモジュールである。本実施形態において、制御部20は、GPS受信部41,車速センサ42,ジャイロセンサ43の出力信号に基づいて自車両の現在位置を特定する。また、制御部20は、地図情報30aを参照して自車両の現在位置を道路上の位置に適合させるマッチング補正を行い、任意のリンクに対して当該適合が行われている時間と当該リンクに相当する道路での走行距離とに基づいてリンク旅行時間を取得する。そして、予め決められた渋滞度毎の閾値と当該リンク旅行時間とを比較することによって渋滞度を特定する。すなわち、当該渋滞度が、自車両の動作に基づいて特定される走行状況となる。なお、リンクに対する適合の開始時刻と終了時刻との差分に基づいてリンク旅行時間を特定する構成を採用することも可能である。
【0025】
交通情報表示部21cは、有効期間を管理しながら交通情報を表示部44に表示させる機能を制御部20に実現させるモジュールである。本実施形態において制御部20は、記録媒体30に記録された交通情報30bを参照し、有効期間が経過していなければ当該交通情報30bが示す渋滞度を表示部44に表示させる。一方、有効期間が経過している場合、すなわち、既存の交通情報30bの有効期間が経過する以前に、有効期間が経過していない交通情報30bを取得できない場合、有効期間が経過していない交通情報30bが記録媒体30に記録されていない状態となる。この場合、記録媒体30に記録されている交通情報30bの信頼性に応じて有効期間を実質的に延長する処理を行う。
【0026】
具体的には、上述のように、新たな交通情報30bが取得されるたびに記録媒体30に記録された交通情報30bは上書きされるため、記録媒体30に記録されている交通情報30bの有効期間が経過している場合が、有効期間が経過していない交通情報30bが記録媒体30に記録されていない場合に相当する。そこで、制御部20が、交通情報30bを参照して当該交通情報30bの有効期間が経過していると判定される場合に、交通情報30bが示す渋滞度と自車両の動作に基づいて特定した渋滞度(走行状況取得部21bの処理によって取得した渋滞度)とが一致しているか否かを判定する。すなわち、交通情報30bの有効期間が経過したとしても、当該交通情報30bが示す渋滞度が自車両の動作に基づいて特定した渋滞度と一致しているのであれば、交通情報30bが示す渋滞度が変化していないと考えられる。そこで、本実施形態においては、交通情報30bが示す渋滞度と自車両の動作に基づいて特定した渋滞度とが一致している場合に信頼性が高いとみなして交通情報30bが示す渋滞度を表示部44に表示させる。すなわち、実質的に有効期間を延長する。このため、有効期間が過ぎた交通情報のみを蓄積している自車両において交通情報を有効に利用することが可能である。
【0027】
(2)走行支援処理:
次に、以上の構成においてナビゲーション装置10が実施する走行支援処理について説明する。図2は、走行支援処理を示すフローチャートである。当該走行支援処理は、ナビゲーション装置10において経路案内等のナビゲーション処理を実行している過程で実行される。走行支援処理が実行されると、まず、制御部20は、交通情報30bを受信するための処理を行う(ステップS100)。すなわち、交通情報記録部21aの処理によって、制御部20が交通情報30bを取得して記録媒体30に上書きする。このとき、通信障害等によって交通情報30bが取得されなければ交通情報30bは上書きされない。
【0028】
次に、制御部20は、交通情報表示部21cの処理により、交通情報30bが示す渋滞度を表示部44に表示させる(ステップS105)。図3Aは、当該ステップS105によって表示部44に表示される渋滞度を示す図である。同図3Aに示す表示例においては、画面上下方向に延びる道路R1と画面左右方向に延びる道路R2とが表示されており、道路R1上に自車両の現在位置P1が示されている。本実施形態においては、このような地図上において各道路区間に隣接する線分で渋滞度を示す構成となっている。図3Aにおいては、自車両の現在位置P1の直前の交差点より前方の道路区間の交通情報30bとして、「渋滞」であることを示す線分Tjが当該道路区間に隣接する位置に表示されている。なお、本実施形態において、道路区間が「空き」である場合には当該道路区間に隣接する位置に線分は表示されない。
【0029】
次に、制御部20は、交通情報表示部21cの処理により、交通情報30bの有効期間が経過したか否かを判別する(ステップS110)。すなわち、制御部20は、図示しない計時回路によって現在の時刻を計時可能であり、記録媒体30に記録された交通情報30bが取得された時刻に対して有効期間を加えた時刻(有効期限)を特定し、現在の時刻が有効期限を越えているか否かを判別する。ステップS110にて、有効期間が経過したと判別されないときには、ステップS100以降の処理を繰り返す。
【0030】
ステップS110にて、有効期間が経過したと判別されたとき、制御部20は、交通情報表示部21cの処理により、表示部44における交通情報30bの表示を停止させる(ステップS115)。次に、制御部20は、走行状況取得部21bの処理により、自車両が現在走行している道路区間の走行状況を取得する(ステップS120)。すなわち、制御部20は、GPS受信部41,車速センサ42,ジャイロセンサ43の出力信号に基づいて自車両の現在位置および現在位置における動作を特定するとともに、地図情報30aを参照して当該動作に対応する走行状況(渋滞度)を特定する。
【0031】
次に、制御部20は、交通情報表示部21cの処理により、特定された走行状況が「渋滞」を示しているか否かを判別し(ステップS125)、走行状況が「渋滞」であると判別されない場合にはステップS130〜S140をスキップする。すなわち、交通情報30bの有効期間は延長されない。
【0032】
ステップS125において、走行状況が「渋滞」であると判別されたとき、さらに、制御部20は、交通情報表示部21cの処理により、交通情報30bが示す自車両が走行中の道路区間の状況が「渋滞」であるか否かを判別する(ステップS130)。すなわち、制御部20は交通情報30bを参照し、自車両が走行している道路区間についての渋滞度を取得して当該渋滞度が「渋滞」を示しているか否か判別する。
【0033】
ステップS130において、交通情報30bが示す自車両が走行中の道路区間の状況が「渋滞」であると判別されない場合にはステップS135,S140をスキップし、交通情報30bの有効期間を延長しない。ステップS130において、交通情報30bが示す自車両が走行中の道路区間の状況が「渋滞」であると判別された場合、自車両の動作に基づいて特定された走行状況と、交通情報30bが示す状況とが一致しているため、有効期間が経過している交通情報30bを表示部44に表示させるための処理を行う。
【0034】
本実施形態においては、このとき、交通情報30bの中から信頼性の高い情報を抽出して表示するため、自車両の現在位置から前方の連続して「渋滞」となっている区間(交通情報30bが示す状況と自車両の動作に基づいて特定された走行状況とが一致している区間)を抽出し、当該区間について交通情報30bを表示する構成としている。このため、制御部20は、交通情報表示部21cの処理により、交通情報30bを参照して自車両の現在位置から連続して「渋滞」となっている渋滞連続区間を取得する。
【0035】
そして、制御部20は、交通情報表示部21cの処理により、渋滞連続区間の交通情報30bを表示部44に表示させる。すなわち、当該渋滞連続区間の渋滞度が「渋滞」であることを示す情報を表示部44に表示させる。以上の処理は、電源がオフにされるまで制御部20によって繰り返される(ステップS145)。以上の処理によれば、有効期間が経過した交通情報30bであっても、その信頼性が高いときには再び当該交通情報30bが表示部44に表示される。このため、交通情報30bを有効に利用することが可能である。
【0036】
図3B,図3Cは、図3Aに示す状況より後の状況を例示する図である。すなわち、図3B,3Cにおいては、図3Aにて線分Tjによって「渋滞」であることが示されていた道路区間に自車両が到達し、当該道路区間上で交通情報30bの有効期間が経過した場合の例を説明するための図である。図3Bは交通情報30bの有効期間が経過する直前の渋滞度を示す例であり、同図3Bでは線分Tj1,線分Tj2,線分Tj3に対応する道路区間が「渋滞」であることを示している。
【0037】
この状態で交通情報30bの有効期間が経過すると、ステップS115において一旦交通情報30bの表示が停止されるが、ステップS120〜S145の処理により、交通情報30bの信頼性の高い交通情報30bについては有効期間が延長される。すなわち、図3Bに示す例においては自車両の現在位置P1が存在する道路区間が「渋滞」であり、当該現在位置P1の前方において線分Tj1に対応する道路区間〜線分Tj2に対応する道路区間まで連続して「渋滞」となっているため、線分Tj1,線分Tj2に対応する道路区間については交通情報30bが延長される。一方、線分Tj3に対応する道路区間は、現在位置P1から連続して「渋滞」となっておらず、道路R3上に「空き」の道路区間が存在する。このため、自車両の現在位置P1における「渋滞」と、線分Tj3に対応する道路区間における「渋滞」とでは渋滞の原因が異なると考え、関連性が低いとみなして交通情報30bの有効期間を延長しない。従って、図3Bに示すような交通情報30bの表示がステップS115にて一旦停止された後、図3Cに示すように、線分Tj1,線分Tj2に対応する道路区間の交通情報30bは引き続き表示され、線分Tj3に対応する道路区間の交通情報30bは表示されない状態となる。
【0038】
なお、ステップS115にて表示が一旦停止されたとしても、ステップS140において交通情報30bを再び表示するまでのタイムラグは極めて短いため、運転者は表示が停止され、再度表示される様子を認識することはない。むろん、ここでは、交通情報30bの信頼性に応じて有効期間を実質的に延長することができればよいため、ステップS115を省略し、ステップS140にて渋滞連続区間の交通情報30bを「渋滞」として継続的に表示させ、他の交通情報30bの表示を停止する構成であってもよい。
【0039】
(3)他の実施形態:
以上の実施形態は、本発明を実施するための一例であり、自車両の動作に基づいて特定された走行状況と、有効期間が経過した交通情報が示す状況とが一致している場合に有効期間を実質的に延長する限りにおいて他にも種々の実施形態を採用可能である。例えば、交通情報が示す渋滞度は「渋滞」「空き」に限定されず、「渋滞」「混雑」「空き」によって表現されていてもよい。
【0040】
有効期間が経過した交通情報を表示部44に表示させる際に表示対象となる交通情報は、上述の渋滞連続区間についての交通情報に限定されない。例えば、交通情報の全部を表示対象としてもよいし、一部を表示対象としてもよい。より具体的には、有効期間が経過した交通情報が示す状況と自車両の動作に基づいて特定された走行状況とが一致している場合に、有効期間が経過した交通情報を参照し、表示部44にて表示中の地図に含まれる道路区間の総てについて有効期間が経過した交通情報を取得して表示する構成としてもよい。
【0041】
また、有効期間が経過した交通情報を参照し、表示部44にて表示中の地図に含まれる道路区間であって、自車両の現在位置の前方に存在する道路区間についての交通情報を取得して表示する構成としてもよい。すなわち、自車両の現在位置の前方における交通情報は自車両の運転者にとって重要度の高い交通情報であるため、当該重要度の高い交通情報については有効期間が経過した交通情報を参照して交通情報の有効期間を実質的に延長する構成としてもよい。
【0042】
さらに、交通情報の有効期間は予め決められていればよく、交通情報を利用可能な期間として予め既定の有効期間が決められていてもよい。交通情報は、自車両の現在位置を含む領域内の交通に関する情報や交通に影響を与える要素の情報であればよく、渋滞度の他、平均旅行時間、天候等を示す情報であってもよい。自車両の現在位置を含む領域は、所定の広さを持った領域でもよいし、自車両が存在する道路区間とその周辺の道路区間によって構成される領域であってもよく、種々の構成を採用可能である。
【0043】
走行状況は、自車両の動作に対応した走行状況であればよく、自車両の現在位置、車速、加速度の任意の情報の組み合わせによって特定される走行状況であってもよいし、ワイパー等の電装品の動作に基づいて特定される走行状況であってもよい。さらに、走行状況は、交通情報が示す状況と直接的に比較できるように自車両の動作から特定されればよい。例えば、交通情報が自車両の車速など自車両の動作と直接的に比較可能な情報であれば、自車両の車速などを走行状況として取得すればよい。
【0044】
さらに、記録媒体に記録されている交通情報が示す状況と、自車両の動作に基づいて特定された走行状況とは、互いに対応する位置についての状況であってもよいし、異なる位置についても状況であってもよい。すなわち、状況を比較することによって記録媒体に記録されている交通情報の信頼性を評価することができればよい。従って、上述のように自車両の現在位置および現在位置の前方において状況を比較する構成の他、自車両の現在位置について走行状況と記録媒体に記録されている交通情報が示す状況とを比較する構成や、自車両が走行済の経路上の位置について走行状況と記録媒体に記録されている交通情報が示す状況とを比較する構成等を採用しても良い。
【0045】
さらに、自車両の現在位置までの走行履歴に基づいて特定される情報の信頼性に基づいて有効期間を延長する交通情報を決定してもよい。例えば、自車両の動作に基づいて特定される走行状況の履歴を取得し、当該履歴が示す各位置の走行状況と、記録媒体に記録されている前記交通情報が示す各位置における車両の状況との一致率が大きいほど広い範囲についての交通情報を表示部に表示させる構成を採用可能である。
【0046】
すなわち、自車両の走行状況の履歴を取得すれば、自車両の後方の各位置における走行状況の履歴を特定することができる。また、記録媒体に記録されている交通情報を参照すれば、自車両の後方の各位置における車両の状況を特定することができる。従って、特定された結果を比較すれば、自車両の走行状況の履歴と記録媒体に記録されている交通情報が示す車両の状況とが一致するか否かを位置毎に判定することができる。そして、その一致率が大きい場合には過去から現在までの自車両の走行状況と記録媒体に記録されている交通情報が示す状況とに大きな乖離がないことになる。従って、一致率が大きいほど記録媒体に記録されている交通情報の信頼性が高いと言える。そこで、一致率が大きいほど広い範囲についての交通情報を表示部に表示させる構成とすることにより、交通情報の信頼度に応じて多くの交通情報を流用する構成とすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】走行支援装置を示すブロック図である。
【図2】走行支援処理を示すフローチャートである。
【図3】(3A)〜(3C)は地図および交通情報の表示例を示す図である。
【符号の説明】
【0048】
10…ナビゲーション装置、20…制御部、21…走行支援プログラム、21a…交通情報記録部、21b…走行状況取得部、21c…交通情報表示部、30…記録媒体、30a…地図情報、30b…交通情報、40…通信部、41…受信部、42…車速センサ、43…ジャイロセンサ、44…表示部、45…スピーカー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の現在位置を含む領域の交通情報であるとともに有効期間が決められた交通情報を通信によって取得して記録媒体に記録する交通情報記録手段と、
前記自車両の動作に基づいて特定した走行状況を取得する走行状況取得手段と、
前記有効期間が経過していない前記交通情報が前記記録媒体に記録されている場合には当該有効期間が経過していない前記交通情報を表示部に表示させ、前記有効期間が経過していない前記交通情報が前記記録媒体に記録されていない場合は、さらに、前記記録媒体に記録されている前記交通情報が示す状況と前記走行状況とが一致している場合に、前記記録媒体に記録されている前記交通情報を前記表示部に表示させる交通情報表示手段と、
を備える走行支援装置。
【請求項2】
前記交通情報表示手段は、前記有効期間が経過していない前記交通情報が前記記録媒体に記録されていない場合に、前記記録媒体に記録されている前記交通情報に基づいて前記自車両の現在位置の前方における交通情報を特定して前記表示部に表示させる、
請求項1に記載の走行支援装置。
【請求項3】
前記走行状況取得手段は、前記自車両の現在位置における動作に基づいて特定された前記走行状況を取得し、
前記交通情報表示手段は、前記有効期間が経過していない前記交通情報が前記記録媒体に記録されていない場合に、前記自車両の現在位置から前方の連続する区間について前記記録媒体に記録されている前記交通情報が示す状況と前記現在位置における前記走行状況とが一致している場合に、前記連続する区間について前記記録媒体に記録されている前記交通情報を前記表示部に表示させる、
請求項2に記載の走行支援装置。
【請求項4】
前記走行状況取得手段は、前記走行状況の履歴を取得し、
前記交通情報表示手段は、前記履歴が示す各位置の走行状況と、前記記録媒体に記録されている前記交通情報が示す各位置における車両の状況との一致率が大きいほど広い範囲についての前記交通情報を前記表示部に表示させる、
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の走行支援装置。
【請求項5】
自車両の現在位置を含む領域の交通情報であるとともに有効期間が決められた交通情報を通信によって取得して記録媒体に記録する交通情報記録工程と、
前記自車両の動作に基づいて特定した走行状況を取得する走行状況取得工程と、
前記有効期間が経過していない前記交通情報が前記記録媒体に記録されている場合には当該有効期間が経過していない前記交通情報を表示部に表示させ、前記有効期間が経過していない前記交通情報が前記記録媒体に記録されていない場合は、さらに、前記記録媒体に記録されている前記交通情報が示す状況と前記走行状況とが一致している場合に、前記記録媒体に記録されている前記交通情報を前記表示部に表示させる交通情報表示工程と、
を含む走行支援方法。
【請求項6】
自車両の現在位置を含む領域の交通情報であるとともに有効期間が決められた交通情報を通信によって取得して記録媒体に記録する交通情報記録機能と、
前記自車両の動作に基づいて特定した走行状況を取得する走行状況取得機能と、
前記有効期間が経過していない前記交通情報が前記記録媒体に記録されている場合には当該有効期間が経過していない前記交通情報を表示部に表示させ、前記有効期間が経過していない前記交通情報が前記記録媒体に記録されていない場合は、さらに、前記記録媒体に記録されている前記交通情報が示す状況と前記走行状況とが一致している場合に、前記記録媒体に記録されている前記交通情報を前記表示部に表示させる交通情報表示機能と、
をコンピュータに実現させる走行支援プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−145325(P2010−145325A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−325244(P2008−325244)
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】