説明

走行支援装置

【課題】目的地に早く到着することができる走行支援装置を提供する。
【解決手段】走行支援装置は、ECUとアクチュエータとを備え、ECUによって、複数の進路候補Sが取得され、進路候補Sが複数の位置候補P1〜Pkに離散化され、これらの位置候補P1〜Pkから目的地までの各総和距離が算出され、算出した総和距離が最小となる進路候補が、複数の進路候補Sから選択される。よって、走行支援装置によれば、進路候補Sを評価するに際して進路候補S上の複数の位置が考慮され、車両が目的地Tに向かって短時間で近づくこととなる。その結果、例えば、進路候補Sの終点Pkに車両が到達する前に進路候補Sが更新されても、目的地に向かって車両が僅かしか進まないことが防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体の走行を支援するための走行支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の走行支援装置としては、例えば特許文献1に記載されたものが知られている。このような走行支援装置では、進路候補取得手段によって移動体の目的地までの進路候補(誘導経路)が複数取得され、これら複数の進路候補の走行負荷がナビゲーションシステムでそれぞれ算出される。そして、算出された走行負荷に基づいて進路候補が選択され、選択された進路候補がディスプレイ上に表示される。
【特許文献1】特開2007−113964号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述したような走行支援装置では、次の問題がある。すなわち、進路候補を評価するに当り、進路候補の終点のみ評価され、終点以外の各位置については考慮されていない。そのため、図4(b)に示すように、例えば、進路候補S0に基づいて走行支援がなされる場合、終点Pk前の位置P1に移動体10が位置するときに進路候補Sが更新されたとすると、目的地Tに向かって移動体10が僅かしか進むことができないことがある。よって、目的地に到着するのに時間がかかるという問題がある。
【0004】
そこで、本発明は、目的地に早く到着することができる走行支援装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明に係る走行支援装置は、移動体の目的地までの進路候補を複数取得する進路候補取得手段と、進路候補取得手段で取得した複数の進路候補を評価する進路候補評価手段と、進路候補評価手段による評価結果に基づいて移動体の走行を支援する走行支援手段と、を備え、進路候補評価手段は、進路候補を複数の位置候補に離散化し、離散化した複数の位置候補のそれぞれから目的地までの距離の総和を算出し、算出した距離の総和に基づいて進路候補を評価すること、を特徴とする。
【0006】
この走行支援装置では、移動体の目的地までの進路候補が複数取得され、進路候補が複数の位置候補に離散化される。そして、これらの複数の位置候補から目的地までの各距離の総和に基づいて、進路候補が評価される。つまり、かかる進路候補の評価に、進路候補上の複数位置が位置候補として考慮される。よって、この評価結果に基づいて移動体の走行が支援されることで、例えば図4(a)に示すように、目的地Tに向かって速やかに近づくように移動体10を走行させることができる。その結果、進路候補が更新されて移動体が僅かしか進まないということを防止でき、目的地に早く到着することが可能となる。
【0007】
ここで、進路候補評価手段は、進路候補の終点である第1位置候補と、第1位置候補とは異なる複数の第2位置候補と、に進路候補を離散化すること、が好ましい。この場合、複数の進路候補の評価する際に進路候補上の複数位置が一層考慮され、目的地に一層早く到着することが可能となる。
【0008】
ここで、進路候補評価手段は、進路候補の終点である第1位置候補と、第1位置候補とは異なる第3位置候補と、に進路候補を離散化すること、が好ましい。この場合、複数の前記進路候補を評価するに際し、計算コストを低減させつつ進路候補上の複数位置が考慮される。
【0009】
また、上記作用効果を好適に奏する構成としては、進路候補評価手段は、複数の前記進路候補から距離の総和が最小となる進路候補を選択し、走行支援手段は、進路候補評価手段で選択した進路候補に基づいて移動体が走行するように当該移動体の走行を支援する構成が挙げられる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、目的地に早く到着することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面において、同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0012】
まず、本発明の第1実施形態に係る走行支援装置について説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る走行支援装置の概略構成を示すブロック図である。本実施形態の走行支援装置は、自動車等の車両の走行を支援するためのものであり、ここでの走行支援装置は、車両を自動運転させるために用いられている。図1に示すように、走行支援装置1は、車両10に搭載され、車両状態取得ユニット2、目的地取得ユニット3、周囲環境取得ユニット4、ECU(Electronic Control Unit)5及びアクチュエータ6を備えている。
【0013】
車両状態取得ユニット2は、車両10の位置、速度及び向き等の車両状態情報を取得する。ここでは、車両状態取得ユニット2として、GPS(Global Positioning System)を利用する機器、車速センサ、オドメトリ及びヨーレートセンサ等が用いられている。また、車両状態取得ユニット2は、ECU5に接続されており、取得した車両状態情報をECU5へ出力する。
【0014】
目的地取得ユニット3は、車両10の目的地に関する情報である目的地情報を取得する。具体的には、目的地取得ユニット3は、目的地情報を、経由地を含む複数の座標として取得する。ここでの目的地取得ユニット3としては、カーナビゲーションシステムが利用されている。また、目的地取得ユニット3は、ECU5に接続されており、取得した目的地情報をECU5へ出力する。
【0015】
周囲環境取得ユニット4は、車両10の周囲環境に関する情報である周囲環境情報を取得する。ここでは、周囲環境取得ユニット4として、車車間通信や路車間通信を利用する機器が用いられている。また、周囲環境取得ユニット4は、ECU5に接続されており、取得した周囲環境情報をECU5へ出力する。なお、周囲環境情報としては、例えば、周囲の交通状況、信号機の点灯状況等が挙げられる。
【0016】
ECU5は、例えばCPU、ROM、及びRAM等から構成されている。ECU5は、各ユニット2,3,4から入力された各情報に基づいて、車両10における目的地までの進路の候補である進路候補を複数取得し、これらの複数の進路候補を評価する。具体的には、所定周期で更新するようにして複数の進路候補を取得し、進路候補上の複数の位置である位地候補に進路候補を離散化し、離散化した複数の位置候補のそれぞれから目的地までの距離の総和を算出する。そして、この距離の総和が最小となる進路候補を複数の進路候補から選択する(詳しくは後述)。また、ECU5は、アクチュエータ6に接続されており、選択した進路候補に基づいて車両10が自動走行するように、アクチュエータ6を制御する。
【0017】
アクチュエータ6は、車両10の走行制御を実行する。具体的には、アクチュエータ6は、ECU5で制御され、車両10の制動力、駆動力若しくは操舵力等を調整する。このアクチュエータ6としては、例えば、ブレーキ油圧を調整するブレーキアクチュエータ、エンジンのスロットルバルブの開度を調整するアクチュエータ、サスペンションの減衰力を調整するサスペンションアクアチュエータ等が挙げられる。
【0018】
次に、上述した走行支援装置1の動作について説明する。
【0019】
まず、車両状態情報、目的地情報及び周囲環境情報が各ユニット2,3,4で取得される(S1)。続いて、これらの情報に基づいて、ECU5によって進路候補が複数取得されて評価される。具体的には、ECU5にて以下の処理が実行される。
【0020】
すなわち、車両10の現在位置から目的地までの経路において、車両10が一定時間t経過後に位置し得る地点までの軌跡が、進路候補としてn本(但し、nは2以上の整数)生成され取得される(S2)。ここでは、車両10の位置し得る地点は、例えば、車両10が許容し得るあらゆる操作を考慮しつつ繰り返し計算することで求められている。
【0021】
図3は、図1の走行支援装置において取得された進路候補の一例を示す図である。図3では、取得したn本の進路候補Sのうち、任意の1本の進路候補Sを例示している。図3に示すように、生成する進路候補Sにあっては、時間及び距離(距離x成分及び距離y成分)から構成される時空間において、時間経過とともに車両10が取り得る位置の変化として生成されている。つまり、進路候補Sは、現在の位置P0を始点とし、一定時間t後の位置候補Pkを終点とする時空間上の曲線で表されることになる。この一定時間tは、周囲の交通状況の変化や、進路候補Sの更新周期等に対応するような時間に設定されている。ちなみに、進路候補Sは、一定時間t後の位置を位置候補Pkとせずに、目的地をPkとしてもよい。
【0022】
続いて、取得されたn本の進路候補Sのそれぞれが、所定の時間間隔dtでk個の位置候補P1〜Pkに離散化される(S3)。つまり、進路候補S(曲線)のそれぞれにおいて、所定の時間間隔dt経過毎に車両10が位置すると推定される位置(点)が、位置候補P1〜Pkとして抽出される。離散化される位置候補の個数kは、少なくとも3つ以上となっており、ここでは、計算コストの点でECU5が許容しうる最大個数となっている。つまり、図3に示すように、進路候補Sの終点である位置候補(第1位置候補)Pkと、車両10の現在位置P0及び位置候補Pk間に位置する複数の位置候補(第2位置候補)P1〜Pk−1と、が抽出されている。なお、所定の時間間隔dtは、進路候補Sの更新周期以下が好ましく、ここでは、より好ましいとして進路候補の更新周期と等しくされている。
【0023】
続いて、各進路候補Sにて、離散化した位置候補P1〜Pkのそれぞれから目的地までの距離の総和(以下、単に「総和距離」という)が算出される(S4)。位置候補P1〜Pkのそれぞれから目的地までの距離は、2点間のユーグリット距離とする場合や、ユーグリット距離に車両10の現在の向き(車両10の角度等)を加味した距離とする場合がある。
【0024】
続いて、算出した総和距離が最小となる進路候補Sop(図4(a)参照)が複数の進路候補Sから選択される(S5)。つまり、総和距離に基づいて進路候補Sが評価され、進路候補Sopが評価結果として選択される。そして、この選択された進路候補Sopで走行するように、アクチュエータ6が制御される(S6)。これにより、車両10にあっては、進路候補Sopに基づいた自動運転がなされることとなる。
【0025】
なお、本実施形態の走行支援装置1は、車両10を自動運転させるものであるが、車両10の走行をアシスト(誘導支援)するものでもよい。誘導支援する場合には、例えば、カーナビゲーションシステムのディスプレイ等の表示器に、選択された進路候補Sopや総和距離を表示させてもよい。さらに、この場合、例えば、総和距離が閾値よりも小さい1つ又は2つ以上の進路候補Sopを選択し、ディスプレイ等に表示させてもよく、進路候補Sopを2つ以上とした場合には、これらの進路候補Sopから何れか一つを運転者に選択させてもよい。
【0026】
以上において、車両10の目的地Tまでの複数の進路候補Sを取得するECU5が、進路候補取得手段を構成する。複数の進路候補Sを評価するECU5が、進路候補評価手段を構成する。評価結果に基づいてアクチュエータ6を制御するECU5及びアクチュエータ6が、走行支援手段を構成する。
【0027】
以上、本実施形態の走行支援装置1によれば、複数の進路候補Sが取得され、進路候補Sが複数の位置候補P1〜Pkに離散化され、これらの位置候補P1〜Pkから目的地までの総和距離が算出される。そして、算出した総和距離が最小化するように、複数の進路候補Sから進路候補Sopが選択される。すなわち、位置候補P1〜Pkから目的地までの各総和距離に基づいて進路候補Sが評価される。よって、進路候補Sの評価に、進路候補S上の複数の位置が考慮され、図4(a)に示すように、選択された進路候補Sopでは、車両10が目的地Tに向かって短時間で近づくこととなる。
【0028】
その結果、例えば、進路候補Sの終点Pkに車両10が到達する前に進路候補Sが更新されたときに、目的地Tに向かって移動体10が僅かしか進まないこと(図4(b)参照)が防止される。従って、走行支援装置1によれば、効率的且つ速やかに目的地Tに近づいて、目的地Tに早く到着することが可能となる。
【0029】
また、走行支援装置1では、上述したように、進路候補Sの終点である位置候補Pkと、車両10の現在位置P0及び位置候補Pk間に位置する(位置候補Pkとは異なる)複数の位置候補P1〜Pk−1と、に進路候補Sが離散化されている。そして、上記のように、位置候補の個数kが、計算コストの点でECU5が許容しうる最大個数となっている。従って、複数の進路候補Sの評価する際に、進路候補S上の複数の位置が最も考慮され、目的地Tに最も早く到着することが可能となる。
【0030】
また、走行支援装置1では、離散化における所定の時間間隔dtが、進路候補Sの更新周期と等しくされている。この場合、複数の進路候補Sの評価する際に、進路候補S上の複数の位置が好適に考慮されることになる。これは、所定の時間間隔dtが更新周期よりも長いと、最初の位置候補P1に車両10が到達する前に進路候補Sが更新されてしまう一方、更新周期よりも短いと、計算コスト点で好ましくないためである。
【0031】
ここで、一般的に、交差点のような複雑な交通環境にて車両10が右折する場合、車両10に求められる挙動は、交差点内の右折開始位置まで速やかに進入し、その位置にて対向車両をやり過ごし、右折実行後に速やかに交差点から離脱するというものである。このような複雑で細かい制御を実現するためには、所定の位置(右折停止線や一時停止線)まで速やかに移動することが不可欠である。この点において、走行支援装置1では、かかる挙動、すなわち速やかに進入して速やかに離脱するという挙動が、交差点内の滞留時間の制限や停止線までの距離に応じた制御等を行うことなく、簡易に実現される。従って、走行支援装置1では、運転者が実際に運転する感覚に近い自然な自動運転を簡易に実現可能である。
【0032】
ところで、従来の走行支援装置は、あくまで人による運転が前提とされているものであるのに対し、本実施形態の走行支援装置1は、上述したように、人が運転することのみでなく、制御による誘導支援や自動運転が可能なものである。つまり、走行支援装置1においては、目的地Tに向かうために車両10が進路候補Sをどのように走行するかをも踏まえて、進路候補Sopが決定されているといえる。
【0033】
次に、本発明の第2実施形態に係る走行支援装置について説明する。本実施形態の走行支援装置が上記走行支援装置1と異なる点は、ECU5が、図5に示すように、進路候補Sの終点である位置候補Pkと、車両10の現在位置P0及び位置候補Pk間の中間に位置する(位置候補Pkとは異なる)位置候補(第3位置候補)Pcと、の2つの位置候補Pk,Pcに進路候補Sを離散化する点である。
【0034】
本実施形態の走行支援装置においても、上記効果と同様な効果、すなわち、目的地Tに早く到着するという効果を奏する。また、上述したように、進路候補Sを評価するに際し、2つの位置候補Pk,Pcに限定して進路候補Sを離散化するため、計算コストを低減させつつ進路候補上の複数位置が考慮される。つまり、目的地に早く到着することと計算コストを低減させることとの好適なバランスを確保することができる。
【0035】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、所定の時間間隔dtで進路候補Sを離散化したが、所定の距離間隔で離散化してもよく、任意の複数の位置候補が抽出されるように離散化すればよい。なお、これらの場合には、車両10の加速や減速等による過渡応答性(非線形性)から、実質的に互いに等しく扱うことができる場合がある。
【0036】
また、上記実施形態では、車両10の走行を支援したが、車両10でなくとも、自律移動体(ロボット)等でもよく、要は、移動体であればよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の第1実施形態に係る走行支援装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】図1の走行支援装置の動作フローを示すフローチャートである。
【図3】図1の走行支援装置において取得された進路候補の一例を示す図である。
【図4】(a)は、図1の走行支援装置による車両挙動の一例を説明する図であり、(b)は、従来の走行支援装置による車両挙動の一例を説明する図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る走行支援装置において取得された進路候補の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0038】
1…走行支援装置、5…ECU(進路候補取得手段、進路候補評価手段、走行支援手段)、6…アクチュエータ(走行支援手段)、10…車両(移動体)、P…位置候補、P1〜Pk−1…位置候補(第2位置候補)、Pc…位置候補(第3位置候補)、Pk…位置候補(第1位置候補)、S,S0,Sop…進路候補、T…目的地。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の目的地までの進路候補を複数取得する進路候補取得手段と、
前記進路候補取得手段で取得した複数の前記進路候補を評価する進路候補評価手段と、
前記進路候補評価手段による評価結果に基づいて前記移動体の走行を支援する走行支援手段と、を備え、
前記進路候補評価手段は、
前記進路候補を複数の位置候補に離散化し、
離散化した複数の前記位置候補のそれぞれから前記目的地までの距離の総和を算出し、
算出した前記距離の総和に基づいて前記進路候補を評価すること、を特徴とする走行支援装置。
【請求項2】
前記進路候補評価手段は、前記進路候補の終点である第1位置候補と、前記第1位置候補とは異なる複数の第2位置候補と、に前記進路候補を離散化すること、を特徴とする請求項1記載の走行支援装置。
【請求項3】
前記進路候補評価手段は、前記進路候補の終点である第1位置候補と、前記第1位置候補とは異なる第3位置候補と、に前記進路候補を離散化すること、を特徴とする請求項1記載の走行支援装置。
【請求項4】
前記進路候補評価手段は、複数の前記進路候補から前記距離の総和が最小となる進路候補を選択し、
前記走行支援手段は、前記進路候補評価手段で選択した前記進路候補に基づいて前記移動体が走行するように当該移動体の走行を支援すること、を特徴とする請求項1〜3の何れか一項記載の走行支援装置。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−216593(P2009−216593A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−61500(P2008−61500)
【出願日】平成20年3月11日(2008.3.11)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】