走行支援装置
【課題】運転者が煩わしくない態様で対向車両の接近を警告する走行支援装置を提供すること。
【解決手段】対向車線にはみ出し走行する際に乗員に対向車線情報を提供する走行支援装置において、追い越しが可能な道路環境か否かを判定する手段と、周囲の車両走行環境から、追い越し対象の車両が走行しているか否かを判定する手段と、追い越しが可能な道路環境であると判定され、かつ、追い越し対象の車両が走行していると判定された場合、前記対向車線情報の提供を許可する手段と、を有することを特徴とする走行支援装置100を提供する。
【解決手段】対向車線にはみ出し走行する際に乗員に対向車線情報を提供する走行支援装置において、追い越しが可能な道路環境か否かを判定する手段と、周囲の車両走行環境から、追い越し対象の車両が走行しているか否かを判定する手段と、追い越しが可能な道路環境であると判定され、かつ、追い越し対象の車両が走行していると判定された場合、前記対向車線情報の提供を許可する手段と、を有することを特徴とする走行支援装置100を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対向車線にはみ出し走行する際に乗員に対向車線情報を提供する走行支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自車線に車両が駐車していたり、前方の車両が低速走行している場合、車線を変更して隣接車線や対向車線に進入せざるを得ない場合がある。しかし、隣接車線にはみ出せば後方から追突されるおそれがあり、対向車線にはみ出した場合は対向車両と正面衝突するおそれがある。自車両の運転者は、隣接車線の後方の状況であればバックミラーや目視により把握できるが、対向車線の状況は先行する車両に視界を遮られるため、目視できないことが多い。この点について、バスなどの大型の先行車両に対向車を検知するセンサと、対向車の検知結果を後続車両に提供する提供装置と配置することで、後続車両の運転者が検知結果を把握できる対向車接近警告システムが考えられている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−178863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の対向車接近警告システムでは、対向車両の有無を通知することしかできないので、対向車線や走行車線の状況変化に対応しにくいという問題がある。
【0005】
また、自車両の運転者に対向車両の存在を通知する場合、自車両が車線をはみ出すことが明らかになってから通知することが考えられるが、自車両が車線をはみ出すことが分かってから通知しても、運転者の運転行動が間に合わないという問題がある。一方で、対向車両が検知される度に運転者に通知すると、先行車両を追い越すつもりのない運転者にとって非常に煩わしい。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑み、運転者が煩わしくない態様で対向車両の接近を警告する走行支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題に鑑み、本発明は、対向車線にはみ出し走行する際に乗員に対向車線情報を提供する走行支援装置において、追い越しが可能な道路環境か否かを判定する手段と、周囲の車両走行環境から、追い越し対象の車両が走行しているか否かを判定する手段と、追い越しが可能な道路環境であると判定され、かつ、追い越し対象の車両が走行していると判定された場合、前記対向車線情報の提供を許可する手段と、を有することを特徴とする走行支援装置を提供する。
【発明の効果】
【0008】
運転者が煩わしくない態様で対向車両の接近を警告する走行支援装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】対向車線情報の提供を模式的に示す図の一例である。
【図2】車両Aがはみ出し走行するか否かを走行支援装置が予測する手順を示すフローチャート図の一例である。
【図3】車両Cとの関係における走行支援を模式的に説明する図の一例である。
【図4】車両Cとの関係において車両Aの運転者に情報提供するか否かを判定する手順を示すフローチャート図の一例である。
【図5】対向車線に合流する車両Dを模式的に説明する図の一例である。
【図6】車両Dとの関係における走行支援を模式的に説明する図の一例である。
【図7】車両D〜Fとの関係において車両Aの運転者に情報提供するか否かを判定する手順を示すフローチャート図の一例である。
【図8】自車遷移に合流する車両Gを模式的に説明する図の一例である。
【図9】車両Gとの関係における走行支援を模式的に説明する図の一例である。
【図10】車両Gとの関係において車両Aの運転者に情報提供するか否かを判定する手順を示すフローチャート図の一例である。
【図11】車両走行環境の変化を模式的に説明する図の一例である。
【図12】車両走行環境の変化が生じた場合の走行支援を模式的に説明する図の一例である。
【図13】追い越し中の車両Aの運転者に情報提供するか否かを判定する手順を示すフローチャート図の一である。
【図14】右折を遅らせる車両Dを模式的に説明する図の一例である。
【図15】車両Dの出会い頭衝突防止システムを模式的に説明する図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら実施例を挙げて説明する。
【0011】
本実施形態の走行支援装置は、走行している道路の道路環境と周囲の車両走行環境から、自車両が対向車線にはみ出すか否かを予測し、はみ出すと予測された場合にのみ、追い越しのタイミングとして適切か否かの情報(以下、「対向車線情報」という)を提供する。自車線を走行している安全な状態から、対向車線にはみ出るという、走行状況の急激な変化が起こっても(遷移している間の時間が短い)、対向車線にはみ出すという運転行動に出る前に情報提供できるので、運転者が余裕を持って運転操作を中止することができる。また、自車両が対向車線にはみ出す可能性が高い場合にのみ情報提供するので、運転者に煩わしさを感じさせることを低減できる。
【実施例1】
【0012】
図1は、対向車線情報の提供を模式的に示す図の一例である。図1において、車両Aは自車両、車両Bは先行車両、車両Cが対向車両である。車両Aには、走行支援装置100が搭載されている。走行支援装置100は、車両Cと異常接近するおそれがあると判定すると、表示装置にメッセージ「対向車に注意!」を表示したり警報音を吹鳴する。
【0013】
走行支援装置100は、道路環境と周囲の車両走行環境から、車両Aがはみ出し走行するか否かを予測する。そして、はみ出し走行すると予測された場合にのみ、走行支援装置100は対向車線情報を車両Aの乗員に提供する。なお、車両Aがはみ出し走行すると予測した場合、走行支援装置100は「追い越し予測フラグ」をオンにする。追い越し予測フラグは、車両Aの運転者がはみ出し走行する可能性が高い場合にオンとなるフラグである。
【0014】
道路環境> まず、走行支援装置100は、道路環境から、追い越しが合法的に行えるか否かを判定する。合法的に車両Bを追い越すためには、追い越しが禁止される場所でない必要がある。例えば、中央分離帯のある道路、黄色線の中央線がペイントされている道路、交差点とその手前30メートル以内等、は追い越しが禁止されている。また、片側が2車線以上あれば、対向車線にはみ出す必要がないので、片側一車線の道路を走行していることが条件となる。
【0015】
周囲の車両走行環境> 走行支援装置100は、周囲の車両走行環境から、車両Bが追い越ししたくなる車両か否かを判定する。車両Aの運転者が車両Bを追い越ししたくなる場合とは、例えば次のような車両走行環境である。
・車両Bが左のウィンカを出して減速した場合(左折や店舗11に寄るための減速等)
・車両Bとの速度差が大きい場合(車両Bの前方に駐車車両がある、前方が渋滞している等)
・車両Bの挙動が不規則な場合(車両Bの速度が不規則、ふらついている等)
走行支援装置100は、道路環境と周囲の車両走行環境の両方において、いずれの条件も成立すると判定した場合、車両Aがはみ出し走行すると予測し、追い越し予測フラグをオンにする。
【0016】
なお、道路環境については、ナビゲーション装置が検出した自車両の位置が、道路地図DBにおいて追い越しが禁止された道路か否か、から判定される。また、車両Aが路車間通信して、路側の装置から、車両Aが走行している道路が追い越し禁止か否かの情報を取得してもよい。
【0017】
周囲の車両走行環境の取得方法は、車両走行環境に応じて種々のものがある。車両Bが左ウィンカを出したことは、例えば、車両Aと車両Bが車車間通信することで検出できる。また、車両Aが前方を撮影可能なカメラを搭載している場合、カメラが撮影した画像を解析して左ウィンカの位置を特定し、それが点滅していることから検出してもよい。また、車両Bが減速したことは、車車間通信により受信した車両Bの車速情報から検出してもよいし、車両Aが搭載しているレーダセンサが測定した相対速度から検出してもよい。車両Bとの速度差が大きいことも、車車間通信やレーダセンサから検出できる。また、車両Bの挙動が不規則なことは、車車間通信により受信した車両Bのヨーレート情報や操舵角情報から検出してもよいし、カメラが撮影した画像を解析して走行レーンの幅員方向に対する車両Bの位置を時系列に監視することで検出してもよい。
【0018】
図2は、車両Aがはみ出し走行するか否かを走行支援装置100が予測する手順を示すフローチャート図の一例を示す。図2の手順は、例えば、車両Aが走行を開始すると繰り返し実行される。
【0019】
まず、走行支援装置100は、合法的に追い越し可能な道路環境を走行しているか否かを判定する(S10)。すなわち、道路環境から、追い越しが合法的に行える道路を走行しているか否かを判定する。合法的に追い越し可能な道路環境の道路を走行していない場合(S10のNo)、追い越しを支援すべきでないので図2の手順はそのまま終了する。
【0020】
合法的に追い越し可能な道路環境の道路を走行している場合(S10のYes)、車両走行環境によっては追い越しを支援すべきなので、走行支援装置100は、追い越したくなる車両Bが前方を走行しているか否かを判定する(S20)。追い越したくなる車両Bが前方を走行していない場合(S20のNo)、追い越しを支援する必要がないので図2の手順はそのまま終了する。
【0021】
追い越したくなる車両Bが前方を走行している場合(S20のYes)、車両Aの運転者が追い越しする可能性が高いので、走行支援装置100は追い越し予測フラグを「オン」に操作する(S30)。
【0022】
追い越し予測フラグがオンになったことで、車両Cの速度、位置に対する車両Aの速度、位置の関係に基づき(以下、単に「車両Cとの関係において」という)走行支援が可能となる。
【0023】
図3は、車両Cとの関係における走行支援を模式的に説明する図の一例である。車両Cが、速度Vc〔m/s〕で対向車線を走行している。また、車両Aは、店舗11に立ち寄る車両Bを追い越しするため、現在地から追い越し完了地点Pまでの距離L1〔m〕の間、はみ出し走行するものとする。車両Aの速度はVa〔m/s〕である。また、車両Cと、車両Aがはみ出し走行を終了する追い越し完了地点Pまでは距離はL2〔m〕である。したがって、車両CがL2〔m〕走行する前に、車両AがL1〔m〕走行できれば、車両Aは安全にはみ出し走行できることになる。
【0024】
なお、車両Cの位置や速度は、車両Aと車両Cの車車間通信、又は、車両Aと路側の装置及び車両Cと路側の装置の路車間通信により、車両Aの走行支援装置100が取得できる。
【0025】
また、追い越し完了予測地点Pまでの距離L1は、車両Bと車両Aの相対速度と相対距離から求める方法と、地図DBから求める方法がある。前者の場合、走行支援装置100は、相対距離/相対速度で車両Aが車両Bを追い越すまでの時間を求め、その時間に車両Aの速度Vaを乗じることで、追い越し完了予測地点Pまでの距離L1を求める。また、後者の場合、追い越し完了地点Pまでの距離L1は、走行支援装置100が車両Bの車両走行環境をもたらした理由を推定することで求める。すなわち、車両Bがウィンカを出した場合は、前方の店舗11や交差点の存在が、ウィンカを出した理由であると推定し、店舗11又は交差点までの距離L1を求めればよい。店舗11や交差点までの距離L1は道路地図DBから読み出すことができる。
【0026】
図4は、車両Cとの関係において車両Aの運転者に情報提供するか否かを判定する手順を示すフローチャート図の一例を示す。図4のフローチャート図は、図2のフローチャート図に続いて実行される。
【0027】
まず、走行支援装置100は、追い越し予測フラグがオンか否かを判定する(S110)。追い越し予測フラグがオンでない場合(S110のNo)、車両Aの運転者がはみ出し走行する可能性が低いので、車両Cとの関係において情報を提供する必要はない。このため、図4のフローチャート図はこのまま終了する。
【0028】
追い越し予測フラグがオンの場合(S110のYes)、車両Aの運転者がはみ出し走行する可能性が高いので、走行支援装置100は次の2つの時間を求める演算を実行する(S120、S130)。
(1)車両Aの追い越し完了予測時間T〔s〕
(2)車両Cの到着予測時間t〔s〕
図3から、追い越し完了予測時間Tは、T=L1/Va
到着予測時間tは、t=L2/Vc
である。
【0029】
そして、走行支援装置100は、T〔s〕>t〔s〕か否かを判定する(S140)。追い越し完了予測時間T〔s〕の方が、到着予測時間t〔s〕より長い場合、車両Cと車両Aが異常接近するおそれがあることになる。このため、T〔s〕>t〔s〕の場合(S140のYes)、走行支援装置100は情報提供フラグをオンに操作する(S150)。情報提供フラグはオンの場合に、走行支援装置100は、はみ出し走行において車両Cの接近を車両Aの運転者に注意喚起する。走行支援装置100は、例えば、警報音の吹鳴、警告ランプの点灯、メッセージ「対向車線を車両が接近しています」等の表示、により情報を提供する。これにより、車両Aの運転者は、運転行動に出ることなく追い越しを中止することができる。
【0030】
一方、T〔s〕>t〔s〕でない場合(S140のNo)、車両Aと車両Cが異常接近するおそれが少ないので、注意喚起のための対向車線情報を提供することなく、図4の処理を終了する。したがって、この場合、車両Aの運転者は、はみ出し走行して車両Bを追い越すことができる。
【0031】
本実施例の走行支援装置100は、車両Aが対向車線にはみ出す可能性が高い場合にのみ情報提供するので、運転者に煩わしさを感じさせることを低減できる。また、対向車線にはみ出すという運転行動に出る前に情報提供できるので、運転者が余裕を持って運転操作を中止することができる。
【実施例2】
【0032】
実施例1にて説明したように、対向車線を元から走行している車両Cに対しては、走行支援装置100が、運転者に適切に注意喚起するための対向車線情報を提供できる。しかしながら、対向車線に合流車両(以下、車両Dという)が合流した場合、車両Dと車両Aが異常接近するおそれがある。
【0033】
図5は、対向車線に合流する車両Dを模式的に説明する図の一例である。車両Cが走行していないので車両Aが、左折する車両Bの追い越しを始めた後、車両Dが右折して対向車線に合流している。本実施例では、このような状況に対しても、車両Aの運転者が運転行動に出る前に対向車線情報を提供できる走行支援装置100について説明する。
【0034】
本実施例の走行支援装置100は、対向車線を走行していない車両Dが対向車線に合流してくることが予測される場合、情報提供フラグをオンにする。対向車線を走行していない車両Dが対向車線に合流する場合とは、例えば、前方に直交道路があり車両Dが交差点に向けて走行している場合、前方に店舗11があり店舗11から出てくる車両Dが存在する場合、等である。
【0035】
このような場合に情報提供フラグをオンにすることで、前方の状況を予測して、注意喚起のための対向車線情報を提供することができる。また、前方の状況を予測するので、対向車線にはみ出すという運転行動に出る前に情報提供できる。
【0036】
図6は、車両Dとの関係における走行支援を模式的に説明する図の一例である。車両Dが、前方の直交道路を交差点に向けて走行しており、交差点を右折する。また、前方右側の店舗11に駐車された2台の車両のうち車両Eが対向車線に進入し、車両Fが自車線に進入する。店舗11でなく、直交道路から左折して合流する車両が存在してもよい。車両Bは交差点を左折するためウィンカを出しているので、車両Aの走行支援装置100は追い越し予測フラグをオンに操作する。追い越し予測フラグがオンになると、走行支援装置100は車両Aの前方の直交道路や店舗11を探索し、対向車線に進入する車両D、車両Eの候補を絞り込むことができる。また、交差点や店舗11までの距離Lを道路地図DBから読み出してもよい。図6のような周囲の車両走行環境において、走行支援装置100は、車両D〜Fの存在を予測して、情報提供フラグをオンにする。
【0037】
車両D〜Fの存在を予測できれば、車車間通信により位置情報、速度、操舵角等の情報を車両Aが受信することで、車両Aの前方の距離Lまでの間に対向車線に合流する車両D車両Eを特定することができる。
【0038】
図7は、車両D〜Fとの関係において車両Aの運転者に情報提供するか否かを判定する手順を示すフローチャート図の一例を示す。なお、既に、追い越し予測フラグをオンにするか否かの判定は終了しており、図7のフローチャート図は、図2のフローチャート図に続いて実行される。また、図7において、図4と同一ステップには同一の符号を付しその説明は省略する。
【0039】
図7では、ステップS130の後、ステップS160において、走行支援装置100は、車両Aが距離L1走行する間に、「直交道路の左方から交差点を右折する車両D」、又は、「右方から合流する車両E」が存在するか否かを判定する(S160)。車両D及び車両Eが存在しない場合(S160のNo)、走行支援装置100は注意喚起のための対向車線情報を提供する必要がないので、情報提供フラグをオンに操作することなく、図7の処理を終了する。
【0040】
車両D又は車両Eが存在する場合(S160のYes)、走行支援装置100は情報提供フラグをオンに操作する(S150)。すなわち、ステップS140においてT〔s〕>t〔s〕であるため、車両Cとの関係においては注意喚起のための対向車線情報を提供する必要がなくても、車両D又は車両Eが存在する場合には、注意喚起のための対向車線情報を提供することができる。
【0041】
本実施例の走行支援装置100によれば、実施例1の効果に加え、対向車線を走行していない車両D、Eが対向車線に合流してくることを予測して、車両Aが対向車線にはみ出す可能性が高い場合にのみ情報提供することができる。
【実施例3】
【0042】
本実施例では、追い越し完了地点Pまでの距離L1が延長されることを予測して情報提供フラグをオンにする走行支援装置100について説明する。
【0043】
図8は、自車線に合流する車両Gを模式的に説明する図の一例である。車両Aが走路Bにて、左折する車両Bの追い越しを始めた後、車両Gが左折して自車線に合流している。この場合、車両Bを追い越した車両Aは、車両Gも追い越す必要が生じる場合があるので、走路を走路Aに変更する。対向車線を走行する時間と距離が伸びるので、車両Aが車両Cと異常接近するおそれが高くなる。
【0044】
本実施例の走行支援装置100は、自車線を走行していない車両Gが自車線に合流してくることが予測される場合、車両Gを追い越す必要があるか否かを判定し、追い越す必要がある場合は、追い越し完了地点Pまでの距離L1を延長する。距離L1を延長することで、車両Cとの異常接近を予測可能となる。
【0045】
図9は、車両Gとの関係における走行支援を模式的に説明する図の一例である。車両Gが、前方の直交道路を交差点に向けて走行しており、交差点を左折する。車両Bは交差点を左折するためウィンカを出しているので、車両Aの走行支援装置100は追い越し予測フラグをオンに操作する。
【0046】
車両Aから交差点(追い越し完了地点P)までの距離はL1〔m〕、交差点から車両Cまでの距離はL2〔m〕、車両Aが車両Gを追い越した場合の追い越し完了地点P‘までの距離はL1’〔m〕、追い越し完了地点P‘から車両Cまでの距離はL2’〔m〕、である。
【0047】
車両Gを追い越す必要があるか否かの判定について説明する。車両Aが走路Bで交差点に到達する前に、車両Gが交差点を左折した場合、車両Aが車両Gを追い越す必要があると考えられる。したがって、
「車両Aが交差点に達するまでの予想時間>車両Gが交差点に達するまでの予想時間」
が成立する場合、走行支援装置100は、車両Aが車両Gを追い越す必要があること、すなわち、追い越し完了地点をPからP‘に変更する必要があると判定する。
【0048】
なお、追い越し完了地点P‘は、追い越し完了地点Pに、{「車両Aが交差点に達するまでの予想時間」−「車両Gが交差点に達するまでの予想時間」}に車両Gの速度を乗じた距離、を加えた地点である。車両Gの速度は車車間通信等により取得できる。
【0049】
図10は、車両Gとの関係において車両Aの運転者に情報提供するか否かを判定する手順を示すフローチャート図の一例を示す。なお、既に、追い越し予測フラグをオンにするか否かの判定は終了しており、図10のフローチャート図は、図2のフローチャート図に続いて実行される。また、図10において、図4と同一ステップには同一の符号を付しその説明は省略する。
【0050】
ステップS110において、追い越し予測フラグがオンの場合、走行支援装置100は、車両Gを追い越す必要があるか否かを判定する(S115)。車両Gを追い越す必要がない場合(S115のNo)、車両Bとの関係において注意喚起のための対向車線情報を提供すればよいので、以降の処理は実施例1の図4と同じである。
【0051】
車両Gを追い越す必要がある場合(S115のYes)、走路Bに対し、走行支援装置100は次の2つの時間を求める演算を実行する(S121、S131)。
(1‘)車両Aの追い越し完了予測時間T’〔s〕
(2‘)車両Cの到着予測時間t’〔s〕
図9から、追い越し完了予測時間T‘は、T’=L1‘/Va
到着予測時間t‘は、t’=L2‘/Vc
である。
【0052】
そして、走行支援装置100は、T‘〔s〕>t’〔s〕か否かを判定する(S141)。追い越し完了予測時間T‘〔s〕の方が、到着予測時間t’〔s〕より長い場合、走路Bにおいて、車両Cと車両Aが異常接近するおそれがあることになる。このため、T‘〔s〕>t’〔s〕の場合(S141のYes)、走行支援装置100は情報提供フラグをオンに操作する(S150)。一方、T‘〔s〕>t’〔s〕でない場合(S141のNo)、車両Aと車両Cが異常接近するおそれが少ないので、注意喚起のための対向車線情報を提供することなく、図4の処理を終了する。したがって、この場合、車両Aの運転者は、走路Bではみ出し走行して車両Bを追い越すことができる。
【0053】
本実施例の走行支援装置100によれば、実施例1の効果に加え、車両Gが自車線上に合流することを予測して、車両Cと異常接近するおそれが高い場合にのみ情報提供することができる。
【実施例4】
【0054】
ところで、車両Aが追い越しをいったん始めた後は車両Bを完全に追い越すまで自車線に戻ることができないので、追い越しには時間がかかり、その間に周囲の車両走行環境が変化することがある。
【0055】
図11は、車両走行環境の変化を模式的に説明する図の一例である。車両Aの走行支援装置100は、車両Bが追い越ししたくなる車両であるが、車両Cとの異常接近のおそれがないとして、注意喚起のための対向車線情報を提供しなかった。しかしながら、車両Bが何らかの理由で左折を中止し、自車線を直進走行する場合、追い越し完了地点Pまでに車両Aが追い越しを完了させることができない。このため、車両Aが追い越しを始めた時は車両Cと異常接近するおそれがなくても、追い越し完了までに時間がかかることになり、車両Cと異常接近するおそれが生じてしまう。
【0056】
そこで、本実施例では、車両Aが追い越しを始めた後、車両走行環境を監視して、追い越しが困難になる車両走行環境の変化が生じた場合、即座に追い越しを中断するよう追い越し注意情報を提供する走行支援装置100について説明する。こうすることで、追い越し中も異常接近のおそれがあるか否かを判定でき、追い越しの中断を促すよう追い越し注意情報を提供できる。
【0057】
図12は、車両走行環境の変化が生じた場合の走行支援を模式的に説明する図の一例である。車両Aはすでに追い越しを開始しているので、車両Aは対向車線の車両Bのすぐ後ろに到達している。車両Aが車両Cとの異常接近を回避するためには、車両Aが加速した車両Bを追い越すために必要な時間T〔s〕が、車両Cが追い越し完了地点Pに到達するまでの時間t〔s〕よりも短ければよい。
【0058】
そこで、走行支援装置100は、車両Aが加速した車両Bを追い越すために必要な時間T〔s〕を算出する。走行支援装置100は、時間T〔s〕を算出するため、追い越し完了地点Pを推定する。図示するように、追い越し完了地点Pは、車両Bまでの距離βと、車両Bの前方のマージンαの合計である。追い越ししている車両Aから追い越し完了地点Pまでの距離をL1〔m〕とすると、距離L1〔m〕と時間T〔s〕は次式で表すことができる。
距離L1〔m〕= 車両Bまでの距離β〔m〕+車両Bの前方のマージンα
時間T〔s〕= 距離L1〔m〕/相対速度〔m/s〕
一方、車両Cが追い越し完了地点Pに到達するまでの時間t〔s〕は、車両Cと追い越し完了地点Pまでの距離L2〔m〕から、t= L2/Vc となる。したがって、車両Aが追い越している間、刻々と変化するT〔s〕とt(s)を比較すれば、異常接近のおそれがあるか否かを判定でき、追い越しの中断を促すよう追い越し注意情報を提供できる。
【0059】
図13は、追い越し中の車両Aの運転者に情報提供するか否かを判定する手順を示すフローチャート図の一例を示す。図13のフローチャート図は、例えば、図4の手順の後、実行される。
【0060】
まず、走行支援装置100は、車両Aが追い越し中か否かを判定する(S210)。追い越し中か否かは、自車両の位置が対向車線か否か等から判定される。追い越し中でない場合(S210のYes)、追い越し中の情報提供は不要なので図13の処理は終了する。
【0061】
追い越し中の場合(S210のNo)、追い越し中の情報提供が必要か否かを判定するため、まず、走行支援装置100は、車両Bと車両Aの相対速度を算出する(S220)。走行支援装置100はレーダセンサや車車間通信により相対速度を算出することができる。
【0062】
ついで、走行支援装置100は、相対速度が所定の速度Vo〔m/s〕より小さいか否かを判定する(S230)。この速度Vo〔m/s〕は、車両Aと車両Bがほぼ同速度であるか否かを判定するための閾値であり、例えば、1〜5〔m/s〕程度の小さい値である。
【0063】
したがって、相対速度が速度Vo〔m/s〕より小さい場合(S230のYes)、時間をかけても車両Aが車両Bを追い越すことは困難なので、走行支援装置100は、追い越し注意情報提供フラグをオンに操作する(S240)。追い越し注意情報提供フラグについては後述する。
【0064】
ステップS230に戻り、相対速度が速度Vo〔m/s〕より小さくない場合(S230のNo)、時間をかければ車両Aが車両Bを追い越すことができるが、車両Cとの関係が問題になる。このため、走行支援装置100は次の2つの時間を求める演算を実行する(S250、S260)。
(3)車両Aが加速した車両Bを追い越すために必要な時間T〔s〕
(4)車両Cが追い越し完了地点Pに到達するまでの時間t〔s〕
算出方法は上記のとおりである。
【0065】
そして、走行支援装置100は、T〔s〕>t〔s〕か否かを判定する(S270)。時間T〔s〕の方が、時間t〔s〕より長い場合、車両Cと車両Aが異常接近するおそれがあることになる。このため、T〔s〕>t〔s〕の場合(S270のYes)、走行支援装置100は追い越し注意情報提供フラグをオンに操作する(S240)。
【0066】
一方、T〔s〕>t〔s〕でない場合(S270のNo)、車両Aと車両Cが異常接近するおそれが少ないので、図13の処理を終了する。
【0067】
なお、追い越し注意情報提供フラグは、走行支援装置100が追い越しを即座に中止するよう情報提供するか否かを判定するためのフラグである。すなわち、追い越し注意情報提供フラグがオンの場合、走行支援装置100は、即座に、例えば、警報音の吹鳴、警告ランプの点灯、メッセージ「車両Bの加速のため追い越しが困難になりました」等の表示、により追い越し注意情報を提供する。これにより、車両Aの運転者は即座に追い越しを中止することができる。
【0068】
本実施例の走行支援装置100は、車両Aが追い越しを始めた後、車両走行環境を監視して、追い越しが困難になる車両走行環境の変化が生じた場合、即座に追い越しを中断するよう情報を提供することができる。
【実施例5】
【0069】
実施例1〜4では、車両Aの走行支援装置100が車両Aの運転者に対向車線情報又は追い越し注意情報を提供したが、異常接近することが好ましくないのは車両C〜Eにとっても同じである。車両Cについては、実施例1の走行支援装置100でほぼ確実に車両Aと車両Cの異常接近を回避できるが、対向車線に合流する車両Dや車両Eの存在に対し、車両Aが追い越しを中止するのでなく、車両Dや車両Eが対応してもよい。このため、車両D、Eには、出会い頭衝突防止システムが搭載されている。
【0070】
図14は、右折を遅らせる車両Dを模式的に説明する図の一例である。例えば、右折する直前の車両Dに対し、追い越しの運転行動を起こす直前の車両Aが車両Aの存在を通知する。こうすることで、車両Dの出会い頭衝突防止システムが車両Aを検出して、車両Dが車両Aとの接近を回避することができる。なお、この通知は車車間通信を利用すればよい。
【0071】
例えば、車両Aの走行支援装置100は、追い越し予測フラグがオンになると、周囲の車両に追い越し予測フラグがオンであることを示す情報を送信する。したがって、周囲の車両は、車両Aの追い越しが自車に影響するか否かを判定し、影響があると判定した場合は車両Dの出会い頭衝突防止システムが車両Dの運転者に車両Aが追い越しして来るという情報を提供する。
【0072】
車両Aが追い越しの可能性を周囲の車両に通知することで、車両Dはそれまで出会い頭衝突防止システムの対象として捉えていなかった車両Aを対象として捉えることができる。車両Dの出会い頭衝突防止システムは、車両Aと自車の衝突判定をすることで、衝突の可能性が高い場合には車両Dの運転者に情報を提供することができる。この場合、車両Dの運転者は、慎重に右折するので、車両Aが車両Bを追い越することが可能になる。
【0073】
図15は、車両Dの出会い頭衝突防止システムを模式的に説明する図の一例である。図15(a)は左折時の出会い頭衝突防止システムを、図15(b)は右折時の出会い頭衝突防止システムを、それぞれ示す。
【0074】
車両Dの出会い頭衝突防止システムは、実線のエリアの車両に対し衝突判定を行う。これに対し、車両Dが車両Aから追い越し予測フラグがオンであることを示す情報を受信すると、出会い頭に衝突するおそれのある車両を検知するエリアを破線の領域まで拡大する。
【0075】
車両Dが左折する際は、左方から来る車両の追い越しによってその車両と出会い頭の衝突が生じるおそれがある。しかし、従来、このような車両は目視可能なので、車両Dの左折時には左方から来る車両に対し、注意喚起のための対向車線情報を提供していない。これに対し、左方から来る車両が追い越し予測フラグがオンであることを示す情報を送信した場合、左方から来る車両と車両Dが出会い頭に衝突する可能性が増すので、車両Dの出会い頭衝突防止システムは、追い越し予測フラグがオンであることを示す情報を受信した場合、破線の車両の全てに対し衝突判定する。
【0076】
そして、車両Dの出会い頭衝突防止システムは左方に注意喚起させる情報を車両Dの運転者に提供する。図15(a)では、例えば、車両Dの表示装置にアニメーションと共に「左方 車両注意!」と表示される。
【0077】
また、右折時には、車両Dが車両Aから追い越し予測フラグがオンであることを示す情報を受信すると、車両Dの出会い頭衝突防止システムは衝突判定のエリアを破線の領域まで広げる。そして、車両Dの出会い頭衝突防止システムは右方に注意喚起させる情報を車両Dの運転者に提供する。図15(b)では、例えば、車両Dの表示装置にアニメーションと共に「右方 車両注意!」と表示される。
【0078】
本実施例によれば、車両Aの走行支援装置100が追い越し予測フラグがオンであることを示す情報を周囲の車両に送信するので、周囲の車両は、衝突判定の対象を拡大し、出会い頭による車両Aとの異常接近を防止しやすくできる。
【符号の説明】
【0079】
11 店舗
A〜G 車両
100 走行支援装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、対向車線にはみ出し走行する際に乗員に対向車線情報を提供する走行支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自車線に車両が駐車していたり、前方の車両が低速走行している場合、車線を変更して隣接車線や対向車線に進入せざるを得ない場合がある。しかし、隣接車線にはみ出せば後方から追突されるおそれがあり、対向車線にはみ出した場合は対向車両と正面衝突するおそれがある。自車両の運転者は、隣接車線の後方の状況であればバックミラーや目視により把握できるが、対向車線の状況は先行する車両に視界を遮られるため、目視できないことが多い。この点について、バスなどの大型の先行車両に対向車を検知するセンサと、対向車の検知結果を後続車両に提供する提供装置と配置することで、後続車両の運転者が検知結果を把握できる対向車接近警告システムが考えられている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−178863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の対向車接近警告システムでは、対向車両の有無を通知することしかできないので、対向車線や走行車線の状況変化に対応しにくいという問題がある。
【0005】
また、自車両の運転者に対向車両の存在を通知する場合、自車両が車線をはみ出すことが明らかになってから通知することが考えられるが、自車両が車線をはみ出すことが分かってから通知しても、運転者の運転行動が間に合わないという問題がある。一方で、対向車両が検知される度に運転者に通知すると、先行車両を追い越すつもりのない運転者にとって非常に煩わしい。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑み、運転者が煩わしくない態様で対向車両の接近を警告する走行支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題に鑑み、本発明は、対向車線にはみ出し走行する際に乗員に対向車線情報を提供する走行支援装置において、追い越しが可能な道路環境か否かを判定する手段と、周囲の車両走行環境から、追い越し対象の車両が走行しているか否かを判定する手段と、追い越しが可能な道路環境であると判定され、かつ、追い越し対象の車両が走行していると判定された場合、前記対向車線情報の提供を許可する手段と、を有することを特徴とする走行支援装置を提供する。
【発明の効果】
【0008】
運転者が煩わしくない態様で対向車両の接近を警告する走行支援装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】対向車線情報の提供を模式的に示す図の一例である。
【図2】車両Aがはみ出し走行するか否かを走行支援装置が予測する手順を示すフローチャート図の一例である。
【図3】車両Cとの関係における走行支援を模式的に説明する図の一例である。
【図4】車両Cとの関係において車両Aの運転者に情報提供するか否かを判定する手順を示すフローチャート図の一例である。
【図5】対向車線に合流する車両Dを模式的に説明する図の一例である。
【図6】車両Dとの関係における走行支援を模式的に説明する図の一例である。
【図7】車両D〜Fとの関係において車両Aの運転者に情報提供するか否かを判定する手順を示すフローチャート図の一例である。
【図8】自車遷移に合流する車両Gを模式的に説明する図の一例である。
【図9】車両Gとの関係における走行支援を模式的に説明する図の一例である。
【図10】車両Gとの関係において車両Aの運転者に情報提供するか否かを判定する手順を示すフローチャート図の一例である。
【図11】車両走行環境の変化を模式的に説明する図の一例である。
【図12】車両走行環境の変化が生じた場合の走行支援を模式的に説明する図の一例である。
【図13】追い越し中の車両Aの運転者に情報提供するか否かを判定する手順を示すフローチャート図の一である。
【図14】右折を遅らせる車両Dを模式的に説明する図の一例である。
【図15】車両Dの出会い頭衝突防止システムを模式的に説明する図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら実施例を挙げて説明する。
【0011】
本実施形態の走行支援装置は、走行している道路の道路環境と周囲の車両走行環境から、自車両が対向車線にはみ出すか否かを予測し、はみ出すと予測された場合にのみ、追い越しのタイミングとして適切か否かの情報(以下、「対向車線情報」という)を提供する。自車線を走行している安全な状態から、対向車線にはみ出るという、走行状況の急激な変化が起こっても(遷移している間の時間が短い)、対向車線にはみ出すという運転行動に出る前に情報提供できるので、運転者が余裕を持って運転操作を中止することができる。また、自車両が対向車線にはみ出す可能性が高い場合にのみ情報提供するので、運転者に煩わしさを感じさせることを低減できる。
【実施例1】
【0012】
図1は、対向車線情報の提供を模式的に示す図の一例である。図1において、車両Aは自車両、車両Bは先行車両、車両Cが対向車両である。車両Aには、走行支援装置100が搭載されている。走行支援装置100は、車両Cと異常接近するおそれがあると判定すると、表示装置にメッセージ「対向車に注意!」を表示したり警報音を吹鳴する。
【0013】
走行支援装置100は、道路環境と周囲の車両走行環境から、車両Aがはみ出し走行するか否かを予測する。そして、はみ出し走行すると予測された場合にのみ、走行支援装置100は対向車線情報を車両Aの乗員に提供する。なお、車両Aがはみ出し走行すると予測した場合、走行支援装置100は「追い越し予測フラグ」をオンにする。追い越し予測フラグは、車両Aの運転者がはみ出し走行する可能性が高い場合にオンとなるフラグである。
【0014】
道路環境> まず、走行支援装置100は、道路環境から、追い越しが合法的に行えるか否かを判定する。合法的に車両Bを追い越すためには、追い越しが禁止される場所でない必要がある。例えば、中央分離帯のある道路、黄色線の中央線がペイントされている道路、交差点とその手前30メートル以内等、は追い越しが禁止されている。また、片側が2車線以上あれば、対向車線にはみ出す必要がないので、片側一車線の道路を走行していることが条件となる。
【0015】
周囲の車両走行環境> 走行支援装置100は、周囲の車両走行環境から、車両Bが追い越ししたくなる車両か否かを判定する。車両Aの運転者が車両Bを追い越ししたくなる場合とは、例えば次のような車両走行環境である。
・車両Bが左のウィンカを出して減速した場合(左折や店舗11に寄るための減速等)
・車両Bとの速度差が大きい場合(車両Bの前方に駐車車両がある、前方が渋滞している等)
・車両Bの挙動が不規則な場合(車両Bの速度が不規則、ふらついている等)
走行支援装置100は、道路環境と周囲の車両走行環境の両方において、いずれの条件も成立すると判定した場合、車両Aがはみ出し走行すると予測し、追い越し予測フラグをオンにする。
【0016】
なお、道路環境については、ナビゲーション装置が検出した自車両の位置が、道路地図DBにおいて追い越しが禁止された道路か否か、から判定される。また、車両Aが路車間通信して、路側の装置から、車両Aが走行している道路が追い越し禁止か否かの情報を取得してもよい。
【0017】
周囲の車両走行環境の取得方法は、車両走行環境に応じて種々のものがある。車両Bが左ウィンカを出したことは、例えば、車両Aと車両Bが車車間通信することで検出できる。また、車両Aが前方を撮影可能なカメラを搭載している場合、カメラが撮影した画像を解析して左ウィンカの位置を特定し、それが点滅していることから検出してもよい。また、車両Bが減速したことは、車車間通信により受信した車両Bの車速情報から検出してもよいし、車両Aが搭載しているレーダセンサが測定した相対速度から検出してもよい。車両Bとの速度差が大きいことも、車車間通信やレーダセンサから検出できる。また、車両Bの挙動が不規則なことは、車車間通信により受信した車両Bのヨーレート情報や操舵角情報から検出してもよいし、カメラが撮影した画像を解析して走行レーンの幅員方向に対する車両Bの位置を時系列に監視することで検出してもよい。
【0018】
図2は、車両Aがはみ出し走行するか否かを走行支援装置100が予測する手順を示すフローチャート図の一例を示す。図2の手順は、例えば、車両Aが走行を開始すると繰り返し実行される。
【0019】
まず、走行支援装置100は、合法的に追い越し可能な道路環境を走行しているか否かを判定する(S10)。すなわち、道路環境から、追い越しが合法的に行える道路を走行しているか否かを判定する。合法的に追い越し可能な道路環境の道路を走行していない場合(S10のNo)、追い越しを支援すべきでないので図2の手順はそのまま終了する。
【0020】
合法的に追い越し可能な道路環境の道路を走行している場合(S10のYes)、車両走行環境によっては追い越しを支援すべきなので、走行支援装置100は、追い越したくなる車両Bが前方を走行しているか否かを判定する(S20)。追い越したくなる車両Bが前方を走行していない場合(S20のNo)、追い越しを支援する必要がないので図2の手順はそのまま終了する。
【0021】
追い越したくなる車両Bが前方を走行している場合(S20のYes)、車両Aの運転者が追い越しする可能性が高いので、走行支援装置100は追い越し予測フラグを「オン」に操作する(S30)。
【0022】
追い越し予測フラグがオンになったことで、車両Cの速度、位置に対する車両Aの速度、位置の関係に基づき(以下、単に「車両Cとの関係において」という)走行支援が可能となる。
【0023】
図3は、車両Cとの関係における走行支援を模式的に説明する図の一例である。車両Cが、速度Vc〔m/s〕で対向車線を走行している。また、車両Aは、店舗11に立ち寄る車両Bを追い越しするため、現在地から追い越し完了地点Pまでの距離L1〔m〕の間、はみ出し走行するものとする。車両Aの速度はVa〔m/s〕である。また、車両Cと、車両Aがはみ出し走行を終了する追い越し完了地点Pまでは距離はL2〔m〕である。したがって、車両CがL2〔m〕走行する前に、車両AがL1〔m〕走行できれば、車両Aは安全にはみ出し走行できることになる。
【0024】
なお、車両Cの位置や速度は、車両Aと車両Cの車車間通信、又は、車両Aと路側の装置及び車両Cと路側の装置の路車間通信により、車両Aの走行支援装置100が取得できる。
【0025】
また、追い越し完了予測地点Pまでの距離L1は、車両Bと車両Aの相対速度と相対距離から求める方法と、地図DBから求める方法がある。前者の場合、走行支援装置100は、相対距離/相対速度で車両Aが車両Bを追い越すまでの時間を求め、その時間に車両Aの速度Vaを乗じることで、追い越し完了予測地点Pまでの距離L1を求める。また、後者の場合、追い越し完了地点Pまでの距離L1は、走行支援装置100が車両Bの車両走行環境をもたらした理由を推定することで求める。すなわち、車両Bがウィンカを出した場合は、前方の店舗11や交差点の存在が、ウィンカを出した理由であると推定し、店舗11又は交差点までの距離L1を求めればよい。店舗11や交差点までの距離L1は道路地図DBから読み出すことができる。
【0026】
図4は、車両Cとの関係において車両Aの運転者に情報提供するか否かを判定する手順を示すフローチャート図の一例を示す。図4のフローチャート図は、図2のフローチャート図に続いて実行される。
【0027】
まず、走行支援装置100は、追い越し予測フラグがオンか否かを判定する(S110)。追い越し予測フラグがオンでない場合(S110のNo)、車両Aの運転者がはみ出し走行する可能性が低いので、車両Cとの関係において情報を提供する必要はない。このため、図4のフローチャート図はこのまま終了する。
【0028】
追い越し予測フラグがオンの場合(S110のYes)、車両Aの運転者がはみ出し走行する可能性が高いので、走行支援装置100は次の2つの時間を求める演算を実行する(S120、S130)。
(1)車両Aの追い越し完了予測時間T〔s〕
(2)車両Cの到着予測時間t〔s〕
図3から、追い越し完了予測時間Tは、T=L1/Va
到着予測時間tは、t=L2/Vc
である。
【0029】
そして、走行支援装置100は、T〔s〕>t〔s〕か否かを判定する(S140)。追い越し完了予測時間T〔s〕の方が、到着予測時間t〔s〕より長い場合、車両Cと車両Aが異常接近するおそれがあることになる。このため、T〔s〕>t〔s〕の場合(S140のYes)、走行支援装置100は情報提供フラグをオンに操作する(S150)。情報提供フラグはオンの場合に、走行支援装置100は、はみ出し走行において車両Cの接近を車両Aの運転者に注意喚起する。走行支援装置100は、例えば、警報音の吹鳴、警告ランプの点灯、メッセージ「対向車線を車両が接近しています」等の表示、により情報を提供する。これにより、車両Aの運転者は、運転行動に出ることなく追い越しを中止することができる。
【0030】
一方、T〔s〕>t〔s〕でない場合(S140のNo)、車両Aと車両Cが異常接近するおそれが少ないので、注意喚起のための対向車線情報を提供することなく、図4の処理を終了する。したがって、この場合、車両Aの運転者は、はみ出し走行して車両Bを追い越すことができる。
【0031】
本実施例の走行支援装置100は、車両Aが対向車線にはみ出す可能性が高い場合にのみ情報提供するので、運転者に煩わしさを感じさせることを低減できる。また、対向車線にはみ出すという運転行動に出る前に情報提供できるので、運転者が余裕を持って運転操作を中止することができる。
【実施例2】
【0032】
実施例1にて説明したように、対向車線を元から走行している車両Cに対しては、走行支援装置100が、運転者に適切に注意喚起するための対向車線情報を提供できる。しかしながら、対向車線に合流車両(以下、車両Dという)が合流した場合、車両Dと車両Aが異常接近するおそれがある。
【0033】
図5は、対向車線に合流する車両Dを模式的に説明する図の一例である。車両Cが走行していないので車両Aが、左折する車両Bの追い越しを始めた後、車両Dが右折して対向車線に合流している。本実施例では、このような状況に対しても、車両Aの運転者が運転行動に出る前に対向車線情報を提供できる走行支援装置100について説明する。
【0034】
本実施例の走行支援装置100は、対向車線を走行していない車両Dが対向車線に合流してくることが予測される場合、情報提供フラグをオンにする。対向車線を走行していない車両Dが対向車線に合流する場合とは、例えば、前方に直交道路があり車両Dが交差点に向けて走行している場合、前方に店舗11があり店舗11から出てくる車両Dが存在する場合、等である。
【0035】
このような場合に情報提供フラグをオンにすることで、前方の状況を予測して、注意喚起のための対向車線情報を提供することができる。また、前方の状況を予測するので、対向車線にはみ出すという運転行動に出る前に情報提供できる。
【0036】
図6は、車両Dとの関係における走行支援を模式的に説明する図の一例である。車両Dが、前方の直交道路を交差点に向けて走行しており、交差点を右折する。また、前方右側の店舗11に駐車された2台の車両のうち車両Eが対向車線に進入し、車両Fが自車線に進入する。店舗11でなく、直交道路から左折して合流する車両が存在してもよい。車両Bは交差点を左折するためウィンカを出しているので、車両Aの走行支援装置100は追い越し予測フラグをオンに操作する。追い越し予測フラグがオンになると、走行支援装置100は車両Aの前方の直交道路や店舗11を探索し、対向車線に進入する車両D、車両Eの候補を絞り込むことができる。また、交差点や店舗11までの距離Lを道路地図DBから読み出してもよい。図6のような周囲の車両走行環境において、走行支援装置100は、車両D〜Fの存在を予測して、情報提供フラグをオンにする。
【0037】
車両D〜Fの存在を予測できれば、車車間通信により位置情報、速度、操舵角等の情報を車両Aが受信することで、車両Aの前方の距離Lまでの間に対向車線に合流する車両D車両Eを特定することができる。
【0038】
図7は、車両D〜Fとの関係において車両Aの運転者に情報提供するか否かを判定する手順を示すフローチャート図の一例を示す。なお、既に、追い越し予測フラグをオンにするか否かの判定は終了しており、図7のフローチャート図は、図2のフローチャート図に続いて実行される。また、図7において、図4と同一ステップには同一の符号を付しその説明は省略する。
【0039】
図7では、ステップS130の後、ステップS160において、走行支援装置100は、車両Aが距離L1走行する間に、「直交道路の左方から交差点を右折する車両D」、又は、「右方から合流する車両E」が存在するか否かを判定する(S160)。車両D及び車両Eが存在しない場合(S160のNo)、走行支援装置100は注意喚起のための対向車線情報を提供する必要がないので、情報提供フラグをオンに操作することなく、図7の処理を終了する。
【0040】
車両D又は車両Eが存在する場合(S160のYes)、走行支援装置100は情報提供フラグをオンに操作する(S150)。すなわち、ステップS140においてT〔s〕>t〔s〕であるため、車両Cとの関係においては注意喚起のための対向車線情報を提供する必要がなくても、車両D又は車両Eが存在する場合には、注意喚起のための対向車線情報を提供することができる。
【0041】
本実施例の走行支援装置100によれば、実施例1の効果に加え、対向車線を走行していない車両D、Eが対向車線に合流してくることを予測して、車両Aが対向車線にはみ出す可能性が高い場合にのみ情報提供することができる。
【実施例3】
【0042】
本実施例では、追い越し完了地点Pまでの距離L1が延長されることを予測して情報提供フラグをオンにする走行支援装置100について説明する。
【0043】
図8は、自車線に合流する車両Gを模式的に説明する図の一例である。車両Aが走路Bにて、左折する車両Bの追い越しを始めた後、車両Gが左折して自車線に合流している。この場合、車両Bを追い越した車両Aは、車両Gも追い越す必要が生じる場合があるので、走路を走路Aに変更する。対向車線を走行する時間と距離が伸びるので、車両Aが車両Cと異常接近するおそれが高くなる。
【0044】
本実施例の走行支援装置100は、自車線を走行していない車両Gが自車線に合流してくることが予測される場合、車両Gを追い越す必要があるか否かを判定し、追い越す必要がある場合は、追い越し完了地点Pまでの距離L1を延長する。距離L1を延長することで、車両Cとの異常接近を予測可能となる。
【0045】
図9は、車両Gとの関係における走行支援を模式的に説明する図の一例である。車両Gが、前方の直交道路を交差点に向けて走行しており、交差点を左折する。車両Bは交差点を左折するためウィンカを出しているので、車両Aの走行支援装置100は追い越し予測フラグをオンに操作する。
【0046】
車両Aから交差点(追い越し完了地点P)までの距離はL1〔m〕、交差点から車両Cまでの距離はL2〔m〕、車両Aが車両Gを追い越した場合の追い越し完了地点P‘までの距離はL1’〔m〕、追い越し完了地点P‘から車両Cまでの距離はL2’〔m〕、である。
【0047】
車両Gを追い越す必要があるか否かの判定について説明する。車両Aが走路Bで交差点に到達する前に、車両Gが交差点を左折した場合、車両Aが車両Gを追い越す必要があると考えられる。したがって、
「車両Aが交差点に達するまでの予想時間>車両Gが交差点に達するまでの予想時間」
が成立する場合、走行支援装置100は、車両Aが車両Gを追い越す必要があること、すなわち、追い越し完了地点をPからP‘に変更する必要があると判定する。
【0048】
なお、追い越し完了地点P‘は、追い越し完了地点Pに、{「車両Aが交差点に達するまでの予想時間」−「車両Gが交差点に達するまでの予想時間」}に車両Gの速度を乗じた距離、を加えた地点である。車両Gの速度は車車間通信等により取得できる。
【0049】
図10は、車両Gとの関係において車両Aの運転者に情報提供するか否かを判定する手順を示すフローチャート図の一例を示す。なお、既に、追い越し予測フラグをオンにするか否かの判定は終了しており、図10のフローチャート図は、図2のフローチャート図に続いて実行される。また、図10において、図4と同一ステップには同一の符号を付しその説明は省略する。
【0050】
ステップS110において、追い越し予測フラグがオンの場合、走行支援装置100は、車両Gを追い越す必要があるか否かを判定する(S115)。車両Gを追い越す必要がない場合(S115のNo)、車両Bとの関係において注意喚起のための対向車線情報を提供すればよいので、以降の処理は実施例1の図4と同じである。
【0051】
車両Gを追い越す必要がある場合(S115のYes)、走路Bに対し、走行支援装置100は次の2つの時間を求める演算を実行する(S121、S131)。
(1‘)車両Aの追い越し完了予測時間T’〔s〕
(2‘)車両Cの到着予測時間t’〔s〕
図9から、追い越し完了予測時間T‘は、T’=L1‘/Va
到着予測時間t‘は、t’=L2‘/Vc
である。
【0052】
そして、走行支援装置100は、T‘〔s〕>t’〔s〕か否かを判定する(S141)。追い越し完了予測時間T‘〔s〕の方が、到着予測時間t’〔s〕より長い場合、走路Bにおいて、車両Cと車両Aが異常接近するおそれがあることになる。このため、T‘〔s〕>t’〔s〕の場合(S141のYes)、走行支援装置100は情報提供フラグをオンに操作する(S150)。一方、T‘〔s〕>t’〔s〕でない場合(S141のNo)、車両Aと車両Cが異常接近するおそれが少ないので、注意喚起のための対向車線情報を提供することなく、図4の処理を終了する。したがって、この場合、車両Aの運転者は、走路Bではみ出し走行して車両Bを追い越すことができる。
【0053】
本実施例の走行支援装置100によれば、実施例1の効果に加え、車両Gが自車線上に合流することを予測して、車両Cと異常接近するおそれが高い場合にのみ情報提供することができる。
【実施例4】
【0054】
ところで、車両Aが追い越しをいったん始めた後は車両Bを完全に追い越すまで自車線に戻ることができないので、追い越しには時間がかかり、その間に周囲の車両走行環境が変化することがある。
【0055】
図11は、車両走行環境の変化を模式的に説明する図の一例である。車両Aの走行支援装置100は、車両Bが追い越ししたくなる車両であるが、車両Cとの異常接近のおそれがないとして、注意喚起のための対向車線情報を提供しなかった。しかしながら、車両Bが何らかの理由で左折を中止し、自車線を直進走行する場合、追い越し完了地点Pまでに車両Aが追い越しを完了させることができない。このため、車両Aが追い越しを始めた時は車両Cと異常接近するおそれがなくても、追い越し完了までに時間がかかることになり、車両Cと異常接近するおそれが生じてしまう。
【0056】
そこで、本実施例では、車両Aが追い越しを始めた後、車両走行環境を監視して、追い越しが困難になる車両走行環境の変化が生じた場合、即座に追い越しを中断するよう追い越し注意情報を提供する走行支援装置100について説明する。こうすることで、追い越し中も異常接近のおそれがあるか否かを判定でき、追い越しの中断を促すよう追い越し注意情報を提供できる。
【0057】
図12は、車両走行環境の変化が生じた場合の走行支援を模式的に説明する図の一例である。車両Aはすでに追い越しを開始しているので、車両Aは対向車線の車両Bのすぐ後ろに到達している。車両Aが車両Cとの異常接近を回避するためには、車両Aが加速した車両Bを追い越すために必要な時間T〔s〕が、車両Cが追い越し完了地点Pに到達するまでの時間t〔s〕よりも短ければよい。
【0058】
そこで、走行支援装置100は、車両Aが加速した車両Bを追い越すために必要な時間T〔s〕を算出する。走行支援装置100は、時間T〔s〕を算出するため、追い越し完了地点Pを推定する。図示するように、追い越し完了地点Pは、車両Bまでの距離βと、車両Bの前方のマージンαの合計である。追い越ししている車両Aから追い越し完了地点Pまでの距離をL1〔m〕とすると、距離L1〔m〕と時間T〔s〕は次式で表すことができる。
距離L1〔m〕= 車両Bまでの距離β〔m〕+車両Bの前方のマージンα
時間T〔s〕= 距離L1〔m〕/相対速度〔m/s〕
一方、車両Cが追い越し完了地点Pに到達するまでの時間t〔s〕は、車両Cと追い越し完了地点Pまでの距離L2〔m〕から、t= L2/Vc となる。したがって、車両Aが追い越している間、刻々と変化するT〔s〕とt(s)を比較すれば、異常接近のおそれがあるか否かを判定でき、追い越しの中断を促すよう追い越し注意情報を提供できる。
【0059】
図13は、追い越し中の車両Aの運転者に情報提供するか否かを判定する手順を示すフローチャート図の一例を示す。図13のフローチャート図は、例えば、図4の手順の後、実行される。
【0060】
まず、走行支援装置100は、車両Aが追い越し中か否かを判定する(S210)。追い越し中か否かは、自車両の位置が対向車線か否か等から判定される。追い越し中でない場合(S210のYes)、追い越し中の情報提供は不要なので図13の処理は終了する。
【0061】
追い越し中の場合(S210のNo)、追い越し中の情報提供が必要か否かを判定するため、まず、走行支援装置100は、車両Bと車両Aの相対速度を算出する(S220)。走行支援装置100はレーダセンサや車車間通信により相対速度を算出することができる。
【0062】
ついで、走行支援装置100は、相対速度が所定の速度Vo〔m/s〕より小さいか否かを判定する(S230)。この速度Vo〔m/s〕は、車両Aと車両Bがほぼ同速度であるか否かを判定するための閾値であり、例えば、1〜5〔m/s〕程度の小さい値である。
【0063】
したがって、相対速度が速度Vo〔m/s〕より小さい場合(S230のYes)、時間をかけても車両Aが車両Bを追い越すことは困難なので、走行支援装置100は、追い越し注意情報提供フラグをオンに操作する(S240)。追い越し注意情報提供フラグについては後述する。
【0064】
ステップS230に戻り、相対速度が速度Vo〔m/s〕より小さくない場合(S230のNo)、時間をかければ車両Aが車両Bを追い越すことができるが、車両Cとの関係が問題になる。このため、走行支援装置100は次の2つの時間を求める演算を実行する(S250、S260)。
(3)車両Aが加速した車両Bを追い越すために必要な時間T〔s〕
(4)車両Cが追い越し完了地点Pに到達するまでの時間t〔s〕
算出方法は上記のとおりである。
【0065】
そして、走行支援装置100は、T〔s〕>t〔s〕か否かを判定する(S270)。時間T〔s〕の方が、時間t〔s〕より長い場合、車両Cと車両Aが異常接近するおそれがあることになる。このため、T〔s〕>t〔s〕の場合(S270のYes)、走行支援装置100は追い越し注意情報提供フラグをオンに操作する(S240)。
【0066】
一方、T〔s〕>t〔s〕でない場合(S270のNo)、車両Aと車両Cが異常接近するおそれが少ないので、図13の処理を終了する。
【0067】
なお、追い越し注意情報提供フラグは、走行支援装置100が追い越しを即座に中止するよう情報提供するか否かを判定するためのフラグである。すなわち、追い越し注意情報提供フラグがオンの場合、走行支援装置100は、即座に、例えば、警報音の吹鳴、警告ランプの点灯、メッセージ「車両Bの加速のため追い越しが困難になりました」等の表示、により追い越し注意情報を提供する。これにより、車両Aの運転者は即座に追い越しを中止することができる。
【0068】
本実施例の走行支援装置100は、車両Aが追い越しを始めた後、車両走行環境を監視して、追い越しが困難になる車両走行環境の変化が生じた場合、即座に追い越しを中断するよう情報を提供することができる。
【実施例5】
【0069】
実施例1〜4では、車両Aの走行支援装置100が車両Aの運転者に対向車線情報又は追い越し注意情報を提供したが、異常接近することが好ましくないのは車両C〜Eにとっても同じである。車両Cについては、実施例1の走行支援装置100でほぼ確実に車両Aと車両Cの異常接近を回避できるが、対向車線に合流する車両Dや車両Eの存在に対し、車両Aが追い越しを中止するのでなく、車両Dや車両Eが対応してもよい。このため、車両D、Eには、出会い頭衝突防止システムが搭載されている。
【0070】
図14は、右折を遅らせる車両Dを模式的に説明する図の一例である。例えば、右折する直前の車両Dに対し、追い越しの運転行動を起こす直前の車両Aが車両Aの存在を通知する。こうすることで、車両Dの出会い頭衝突防止システムが車両Aを検出して、車両Dが車両Aとの接近を回避することができる。なお、この通知は車車間通信を利用すればよい。
【0071】
例えば、車両Aの走行支援装置100は、追い越し予測フラグがオンになると、周囲の車両に追い越し予測フラグがオンであることを示す情報を送信する。したがって、周囲の車両は、車両Aの追い越しが自車に影響するか否かを判定し、影響があると判定した場合は車両Dの出会い頭衝突防止システムが車両Dの運転者に車両Aが追い越しして来るという情報を提供する。
【0072】
車両Aが追い越しの可能性を周囲の車両に通知することで、車両Dはそれまで出会い頭衝突防止システムの対象として捉えていなかった車両Aを対象として捉えることができる。車両Dの出会い頭衝突防止システムは、車両Aと自車の衝突判定をすることで、衝突の可能性が高い場合には車両Dの運転者に情報を提供することができる。この場合、車両Dの運転者は、慎重に右折するので、車両Aが車両Bを追い越することが可能になる。
【0073】
図15は、車両Dの出会い頭衝突防止システムを模式的に説明する図の一例である。図15(a)は左折時の出会い頭衝突防止システムを、図15(b)は右折時の出会い頭衝突防止システムを、それぞれ示す。
【0074】
車両Dの出会い頭衝突防止システムは、実線のエリアの車両に対し衝突判定を行う。これに対し、車両Dが車両Aから追い越し予測フラグがオンであることを示す情報を受信すると、出会い頭に衝突するおそれのある車両を検知するエリアを破線の領域まで拡大する。
【0075】
車両Dが左折する際は、左方から来る車両の追い越しによってその車両と出会い頭の衝突が生じるおそれがある。しかし、従来、このような車両は目視可能なので、車両Dの左折時には左方から来る車両に対し、注意喚起のための対向車線情報を提供していない。これに対し、左方から来る車両が追い越し予測フラグがオンであることを示す情報を送信した場合、左方から来る車両と車両Dが出会い頭に衝突する可能性が増すので、車両Dの出会い頭衝突防止システムは、追い越し予測フラグがオンであることを示す情報を受信した場合、破線の車両の全てに対し衝突判定する。
【0076】
そして、車両Dの出会い頭衝突防止システムは左方に注意喚起させる情報を車両Dの運転者に提供する。図15(a)では、例えば、車両Dの表示装置にアニメーションと共に「左方 車両注意!」と表示される。
【0077】
また、右折時には、車両Dが車両Aから追い越し予測フラグがオンであることを示す情報を受信すると、車両Dの出会い頭衝突防止システムは衝突判定のエリアを破線の領域まで広げる。そして、車両Dの出会い頭衝突防止システムは右方に注意喚起させる情報を車両Dの運転者に提供する。図15(b)では、例えば、車両Dの表示装置にアニメーションと共に「右方 車両注意!」と表示される。
【0078】
本実施例によれば、車両Aの走行支援装置100が追い越し予測フラグがオンであることを示す情報を周囲の車両に送信するので、周囲の車両は、衝突判定の対象を拡大し、出会い頭による車両Aとの異常接近を防止しやすくできる。
【符号の説明】
【0079】
11 店舗
A〜G 車両
100 走行支援装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向車線にはみ出し走行する際に乗員に対向車線情報を提供する走行支援装置において、
追い越しが可能な道路環境か否かを判定する手段と、
周囲の車両走行環境から、追い越し対象の車両が走行しているか否かを判定する手段と、
追い越しが可能な道路環境であると判定され、かつ、追い越し対象の車両が走行していると判定された場合、前記対向車線情報の提供を許可する手段と、
を有することを特徴とする走行支援装置。
【請求項2】
前記対向車線情報の提供が許可された場合、
追い越し対象の車両の前方に進入してくる車両を検出し、前記対向車線情報を乗員に提供する、
ことを特徴とする請求項1記載の走行支援装置。
【請求項3】
追い越ししている間、追い越しが完了するまでの完了時間、及び、追い越し対象の車両を追い越す位置に対向車線の車両が到達するまでの到着時間、をそれぞれ予測し、
前記完了時間の方が前記到着時間より長い場合、追い越しを中断するよう要求する情報を乗員に提供する、
ことを特徴とする請求項1記載の走行支援装置。
【請求項1】
対向車線にはみ出し走行する際に乗員に対向車線情報を提供する走行支援装置において、
追い越しが可能な道路環境か否かを判定する手段と、
周囲の車両走行環境から、追い越し対象の車両が走行しているか否かを判定する手段と、
追い越しが可能な道路環境であると判定され、かつ、追い越し対象の車両が走行していると判定された場合、前記対向車線情報の提供を許可する手段と、
を有することを特徴とする走行支援装置。
【請求項2】
前記対向車線情報の提供が許可された場合、
追い越し対象の車両の前方に進入してくる車両を検出し、前記対向車線情報を乗員に提供する、
ことを特徴とする請求項1記載の走行支援装置。
【請求項3】
追い越ししている間、追い越しが完了するまでの完了時間、及び、追い越し対象の車両を追い越す位置に対向車線の車両が到達するまでの到着時間、をそれぞれ予測し、
前記完了時間の方が前記到着時間より長い場合、追い越しを中断するよう要求する情報を乗員に提供する、
ことを特徴とする請求項1記載の走行支援装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図7】
【公開番号】特開2010−211297(P2010−211297A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−53860(P2009−53860)
【出願日】平成21年3月6日(2009.3.6)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月6日(2009.3.6)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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