説明

走行支援装置

【課題】路面被覆物を回避する場合に、より安全に自動車の走行の支援を行うことが可能な走行支援装置を提供する。
【解決手段】走行支援装置1は、道路201の形状を取得する側方直近用レーダ12と、道路201を覆う雪301を検出し、雪301に覆われていない走行可能領域211を抽出する前方監視用レーダ11と、道路201の形状と走行可能領域211とを対比して得られる対比情報に基づいて、走行支援を実施する車両制御ECU18とを備えている。車両制御ECU18は、雪301に覆われていない領域である走行可能領域211が走行車線202に位置するのか追越車線203に位置するのかという情報を加味してブレーキアクチュエータ21と、ステアリングアクチュエータ22と、エンジン制御ECU23とを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積雪や氷等の路面被覆物を回避して走行するための走行支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、雪や氷等の路面被覆物を検知し、それらを回避するように自動車の走行を支援する技術が開示されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、積雪時に生じる轍を利用し、あらかじめ記憶されている轍部分及び非轍部分の画像データと、エッジ抽出処理によって抽出された轍部分の画像データとを比較することによって容易に積雪部分を検出する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−275691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の画像処理装置による積雪部分の検出結果に基づいて、積雪部分の位置を特定し、その積雪部分を回避できたとしても、その回避先が、例えば、図7に示すような対向車線等である場合には適切な走行支援ができないおそれがある。
【0006】
本発明の課題は、積雪や氷等の路面被覆物を回避する場合に、適切に自動車の走行支援を行うことが可能な走行支援装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の走行支援装置は、走行路を覆う路面被覆物を回避して走行するように走行支援を行う走行支援装置において、走行路の形状を取得する道路形状取得手段と、走行路を覆う路面被覆物を検出し、路面被覆物に覆われていない走行可能領域を抽出する走行可能領域取得手段と、走行路の形状と走行可能領域とを対比して得られる対比情報に基づいて、走行支援を実施する走行支援手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
このような走行支援装置によれば、路面被覆物に覆われていない走行可能領域に従って走行支援が実行されるだけでなく、走行路の形状と走行可能領域とを対比して得られる対比情報も加味して走行支援が実行される。これにより、積雪や氷等の路面被覆物を回避する場合に、適切に自動車の走行支援を行うことが可能となる。
【0009】
また、本発明の走行支援装置は、自動車の走行方向により走行する車線が定められている車線情報を記憶する記憶手段をさらに備えており、走行支援手段は、車線情報と走行路の形状と走行可能領域とを対比して得られる、走行可能領域がどの車線に位置するかという車線対比情報に基づいて走行支援を実施することが好ましい。これにより、走行支援装置は、例えば、できるだけ対向車線に侵入しないように路面被覆物を回避したり、走行支援を行うと対向車線に侵入してしまうような場合には、走行支援を中止したりすることができるようになる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、より安全に自動車の走行支援を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る走行支援装置を示す概略構成図である。
【図2】図1の走行支援装置の機能構成を示したブロック図である。
【図3】図1の走行支援装置による走行支援の一例を説明する図である。
【図4】図1の走行支援装置における動作を示したフローチャートである。
【図5】図1の側方直近用レーダが検出する固定式視線誘導柱を説明する図である。
【図6】図5の固定式視線誘導柱の位置に基づいた走行支援の一例を説明する図である。
【図7】図1の走行支援装置による走行支援の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態に係る走行支援装置1について、図1〜図4を用いて説明する。図1は、本発明に係る走行支援装置1を示す概略構成図である。図2は、本発明に係る走行支援装置1の機能構成を示したブロック図である。図3は、図1の走行支援装置による走行支援の一例を説明する図である。
【0013】
走行支援装置1は、図3に示すように、道路(走行路)201を覆う雪や氷等(路面被覆物)301を回避して走行するように走行支援を行う。以下の説明では、道路201に雪301が堆積している例を挙げて説明する。
【0014】
走行支援装置1は、図1,図2に示すように、前方監視用レーダ11と、側方直近用レーダ12と、GPS(Global Positioning System)受信機13と、地図情報記憶部14と、ナビゲーションECU(ElectronicControl Unit)15と、ヨー/Gセンサ16と、速度センサ17と、車両制御ECU(Electronic Control Unit)18と、ブレーキアクチュエータ21と、ステアリングアクチュエータ22と、エンジン制御ECU(ElectronicControl Unit)23と、を含んで構成されている。
【0015】
前方監視用レーダ(走行可能領域取得手段)11は、図1に示すように、自車両100の前面に配置されており、道路201を覆う雪301を検出する。具体的には、前方監視用レーダ11は、自車両100前方に雪301の表面で反射しやすい特性の電磁波を照射し、雪301の表面で反射されてくる電磁波を受信して積雪の外形位置301aを検出する。雪301の表面で反射しやすい特性の電磁波には、例えば、赤外光がある。前方監視用レーダ11は、検出した雪301の外形位置301aに関する情報を車両制御ECU18に送出する。
【0016】
側方直近用レーダ(道路形状取得手段)12は、図1に示すように、自車両100の側面に配置されており、道路201の形状を取得する。具体的には、側方直近用レーダ12は、自車両100の側方及び前方に向けて雪301を透過しやすい特性の電磁波を照射し、雪301の背面にある道路固定物205で反射されてくる電磁波を受信して道路固定物205の位置を検出する。雪301を透過しやすい特性の電磁波には、例えば、1GHz〜2GHz帯域の電磁波がある。側方直近用レーダ12は、検出した構造物の位置に関する情報を車両制御ECU18に送出する。
【0017】
GPS受信機13は、GPS衛星から衛星の軌道と時刻のデータを含む電波信号を受信する。GPS受信機13は、受信した電波信号をナビゲーションECU15に送出する。
【0018】
地図情報記憶部(記憶手段)14は、道路構造情報14a、道路周辺情報14b、交通ルール情報14c等に関する情報等を格納する。地図情報記憶部14に記憶された各種情報14a,14b,14cは、ナビゲーションECU15によって読み出される。道路構造情報14aは、例えば、道路201に付属する道路固定物205に関する情報を含んでいる。道路固定物205には、例えば、防護柵、中央分離帯、植栽、スノーポール等が含まれる。道路周辺情報14bは、道路201周辺の地形情報を含んでいる。交通ルール情報14cは、道路201の車線に関する情報、例えば、走行車線202の位置、追越車線203の位置に関する情報を含んでいる。
【0019】
ナビゲーションECU15は、GPS受信機13から送信されてくる電波信号を演算して、自車両100の現在位置を定期的に特定する。そして、ナビゲーションECU15は、地図情報記憶部14から各種情報14a,14b,14cを適時読み出して、自車両100の現在位置、道路固定物205等の情報を車両制御ECU18に送出する。
【0020】
ヨー/Gセンサ16は、走行方向において左右方向の重力、走行方向において前後方向の重力を検知する。また、ヨー/Gセンサ16は、ヨーレートを検知する。そして、ヨー/Gセンサ16は、検出した各重力情報及びヨーレート情報を車両制御ECU18に送出する。
【0021】
速度センサ17は、自車両100の速度を検出する。速度センサ17は、検出した速度情報を車両制御ECU18に送出する。
【0022】
車両制御ECU(走行支援手段、走行可能領域取得手段)18は、前方監視用レーダ11において取得された積雪の外形位置301aに基づいて、雪301に覆われていない領域である走行可能領域211を抽出する。そして、車両制御ECU18は、側方直近用レーダ12によって取得された道路201の形状と走行可能領域211とを対比して得られる対比情報に基づいて、自車両100の走行支援を実施する。車両制御ECU18は、図示しないCPU、ROM、RAMおよび入出力インターフェース等により構成されている。走行支援装置1による走行支援制御は、例えば、ROMに記憶されたプログラムをCPUがRAM上に展開され、ブレーキアクチュエータ21、ステアリングアクチュエータ22、エンジン制御ECU23と、を制御することにより実現される。
【0023】
ブレーキアクチュエータ21は、各輪のホイールシリンダのブレーキ油圧を調整するアクチュエータである。ブレーキアクチュエータ21では、車両制御ECU18からの目標油圧信号に応じて作動し、ホイールシリンダのブレーキ油圧を調整する。
【0024】
ステアリングアクチュエータ22は、電動パワーステアリング装置(図示せず)において、運転者の操舵操作をアシストする操舵トルクを付与するアクチュエータである。そして、ステアリングアクチュエータ22は、車両制御ECU18からの操舵トルク制御信号に応じて作動し、電動パワーステアリング装置に操舵トルクを付与する。
【0025】
エンジン制御ECU23は、エンジンを制御する制御装置である。エンジン制御ECU23では、車両制御ECU18からの目標加速度に応じて作動し、その目標加速度になるために必要なスロットルバルブ(図示せず)の目標開度を設定し、その目標開度を目標スロットル開度信号としてスロットルアクチュエータ(図示せず)に送信する。
【0026】
次に、走行支援装置1の動作について、図4を用いて説明する。
【0027】
図4は、走行支援装置1が実行する特徴的な処理の流れを示すフローチャートである。
【0028】
なお、走行支援装置1による走行支援処理は、道路201上の正確な位置を算出するフェーズ(S01〜S06)と、走行可能領域211を抽出するフェーズ(S07、S08)と、走行可能領域211における車線情報を判定するフェーズ(S09〜S13)とにより構成される。
【0029】
まず、ナビゲーションECU15は、GPS受信機13から送信されてくる電波信号を演算して、自車両100の現在の概略位置を取得し、地図上に自車両100の位置をマッピングする(S01)。
【0030】
次に、側方直近用レーダ12は、自車両100の側方に雪301を透過しやすい特性の電磁波を照射する。側方直近用レーダ12から照射される電磁波は、雪301を透過する。側方直近用レーダ12は、雪301の背面にある道路固定物205等で反射された電磁波を受信して道路固定物205の位置を検出する。これにより、車両制御ECU18は、道路端201aの情報を取得することができる。さらに、車両制御ECU18は、GPS受信機13と、ヨー/Gセンサ16と、車速センサ17とから送出される情報及び地図情報記憶部14に記憶されている情報とから自車両100周辺の雪301に覆われていない状態の道路201の形状を取得する。
【0031】
次に、車両制御ECU18は、ステップS02において取得された道路201の形状に関する情報が自車両100を走行支援するにあたって十分に取得できているかどうかを判定する(S03)。
【0032】
ここで、車両制御ECU18が、「十分な情報量が取得できていない」と判定した場合(S03:NO)、車両制御ECU18は、自車両100が徐行走行をするようにブレーキアクチュエータ21と、ステアリングアクチュエータ22と、エンジン制御ECU23とを制御して(S04)、再度、ステップS02において、道路201の形状を取得する。
【0033】
一方、車両制御ECU18が、「十分な情報量が取得できている」と判定した場合(S03:YES)、ステップS05に移動する。車両制御ECU18は、地図情報記憶部14に記憶されている道路構造情報14aとのマッチング処理を実行する(S05)。これにより、車両制御ECU18は、道路固定物205の位置に基づいて道路201における正確な自車両100の位置を認識する。
【0034】
次に、車両制御ECU18は、ステップS05におけるマッチング処理の結果に基づいて、自車両100が道路201上の走行車線202に位置しているのか、追越車線203に位置しているかを認識する(S06)。
【0035】
次に、前方監視用レーダ11は、自車両100前方に、例えば、赤外光等の電磁波を照射し、堆積する雪301の表面で反射された電磁波を受信し、積雪の外形位置301aを検出する(S07)。
【0036】
次に、車両制御ECU18は、ステップS07において検出された積雪の外形位置301aとステップS06において取得された自車両100の位置とに基づいて、雪301に覆われていない領域である自車両走行可能領域211を抽出する(S08)。
【0037】
次に、車両制御ECU18は、ステップS06において抽出された走行車線202または追越車線203の情報とステップS08において抽出された走行可能領域211とをマッピングする(S09)。
【0038】
次に、車両制御ECU18は、ステップS08において抽出された走行可能領域211に基づいて、自車両100の走行可能経路Rを算出する(S10)。
【0039】
次に、ステップS10において算出された走行可能経路Rが、走行車線202なのか追越車線203なのかを判定し、走行車線202から追越車線203へのレーンチェンジが発生するかどうかを判定する(S11)。
【0040】
ここで、車両制御ECU18が、ステップS11にいてレーンチェンジが発生しないと判断した場合(S11:無)には、ステップS10において算出された走行可能経路Rを追従するように、ブレーキアクチュエータ21と、ステアリングアクチュエータ22と、エンジン制御ECU23とを制御する(S12)。
【0041】
一方、車両制御ECU18が、ステップS11にいてレーンチェンジが発生すると判断した場合(S11:有)には、ブレーキアクチュエータ21と、ステアリングアクチュエータ22と、エンジン制御ECU23とを制御しないで走行支援を中止する(S13)。
【0042】
以上に説明したように、本実施例の走行支援装置1によれば、雪301に覆われていない領域である走行可能領域211に従って自車両100の走行支援が実行されるのではなく、道路201の形状と対比して得られる対比情報、すなわち、走行可能領域211が走行車線202なのか追越車線203なのかという情報を加味して、ブレーキアクチュエータ21と、ステアリングアクチュエータ22と、エンジン制御ECU23とが制御される。これにより、走行車線202を走行して雪301を回避するといった制御を実行することができるようになり、走行ルールを守りながら自車両100の走行を支援することができる。また、追越車線203にレーンチェンジするような経路を走行可能経路Rとして抽出した場合には、自車両100の走行支援を中止するような処理を施すこともできる。この結果、積雪301を回避する場合に、より適切に自車両100の走行支援を行うことが可能となる。
【0043】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0044】
例えば、走行支援装置1では、側方直近用レーダ12が、図5に示すような、固定式視線誘導柱206における矢羽根206aの位置を検出するようにしてもよい。固定式視線誘導柱206は、積雪や吹雪による視程障害に対して、道路線形や走行位置を明らかにするために道路管理者によって設置されている。
【0045】
この場合であっても、車両制御ECU18は、側方直近用レーダ12が取得した矢羽根206aの位置と、地図情報記憶部14に記憶されている道路構造情報14aとのマッチング処理を実行し、道路201における正確な自車両100の位置を認識する。そして、車両制御ECU18は、図6に示すように、雪301に覆われていない領域である走行可能領域211が走行車線202なのか追越車線203なのかという情報を加味して、ブレーキアクチュエータ21と、ステアリングアクチュエータ22と、エンジン制御ECU23とを制御する。これにより、上記実施形態の走行支援装置1と同様の効果を得ることができる。また、上記固定式視線誘導柱206における矢羽根206aは、積雪により埋雪してしまう可能性が低いので、自車両100の位置を把握する上で基準となる位置を抽出し易くすることができる。
【0046】
また、上記実施形態の走行支援装置1では、走行可能領域211が走行車線202なのか追越車線203なのかという情報を加味して走行支援を挙げて説明したが、例えば、図7に示すように、走行可能領域が走行車線202なのか対向車線204なのかという情報を加味して走行支援を実行してもよい。
【0047】
また、上記実施形態の走行支援装置1では、追越車線203にレーンチェンジするような経路が走行可能経路Rとして抽出された場合、走行支援を中止する例を挙げて説明したが、これに限られるものではなく、例えば、徐行状態で追越車線203に侵入するように、ブレーキアクチュエータ21と、ステアリングアクチュエータ22と、エンジン制御ECU23とを制御してもよい。また、走行支援装置1は、追越車線203にレーンチェンジするような経路が走行可能経路Rとして抽出された場合、運転者に対して注意を促すような警報を発したり、警告表示をするようにしてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1…走行支援装置、11…前方監視用レーダ、12…側方直近用レーダ、13…GPS受信機、14…地図情報記憶部、15…ナビゲーションECU、16…ヨー/Gセンサ、17…速度センサ、18…車両制御ECU、21…ブレーキアクチュエータ、22…ステアリングアクチュエータ、23…エンジン制御ECU、100…自車両、201…道路、201a…道路端、202…走行車線、203…追越車線、204…対向車線、205…道路固定物、206…固定式視線誘導柱、206a…矢羽根、211…走行可能領域、301…雪、301a…外形位置、R…走行可能経路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行路を覆う路面被覆物を回避して走行するように走行支援を行う走行支援装置において、
前記走行路の形状を取得する道路形状取得手段と
前記走行路を覆う前記路面被覆物を検出し、前記路面被覆物に覆われていない走行可能領域を抽出する走行可能領域取得手段と、
前記走行路の形状と前記走行可能領域とを対比して得られる対比情報に基づいて、走行支援を実施する走行支援手段と、
を備えることを特徴とする、走行支援装置。
【請求項2】
自動車の走行方向により走行する車線が定められている車線情報を記憶する記憶手段をさらに備えており、
前記走行支援手段は、前記記憶情報と前記走行路の形状と前記走行可能領域とを対比して得られる、前記走行可能領域がどの車線に位置するかという車線対比情報に基づいて走行支援を実施する、
請求項1に記載の走行支援装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−247580(P2010−247580A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−97079(P2009−97079)
【出願日】平成21年4月13日(2009.4.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】