説明

走行状態検出装置及び運転支援装置

【課題】車線の減少状態を的確に検出し、車線変更方向を即時に判断することができる走行状態検出装置及び運転支援装置を提供する。
【解決手段】 運転支援装置1のECU6は、白線認識カメラ2により取得された白線画像から走行路の車線の情報を検出する車線情報検出部11と、車速センサ3及び横加速度センサ4の検出値に基づいて自車両の旋回Rを求める車両旋回状態検出部12と、車線情報検出部11及び車両旋回状態検出部12の検出結果に基づいて走行路の車線の減少状況を判定する車線状況判定部13と、車線状況判定部13の判定結果に基づいて車線変更すべき方向を判断する支援判断部14と、レーダ5の測定値に基づいて周辺車両の情報を取得する周辺車両情報取得部15と、支援判断部14及び周辺車両情報取得部15の処理結果に基づいて運転支援を制御する警報・支援制御部16とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車線逸脱防止支援システム等に適用される走行状態検出装置及び運転支援装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の走行状態検出装置としては、例えば特許文献1に記載されているように、走行路の撮影画像における走行区分線を認識し、自車両の車速及びヨーレートに基づいて自車軌跡を予測し、走行区分線と自車軌跡との平均偏差を求め、この平均偏差を閾値と比較することで自車両の車線変更を判断するようにしたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−29347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術においては、道路における合流地点や工事地点等による車線減少区間での車線変更については何ら考慮されていない。そのような車線減少区間では、左車線及び右車線のうち減少するほうの車線を的確に検出し、車線変更すべき方向を即時に判断する必要がある。
【0005】
本発明の目的は、車線の減少状態を的確に検出し、車線変更方向を即時に判断することができる走行状態検出装置及び運転支援装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、自車両の走行状態を検出する走行状態検出装置において、自車両の走行軌跡を検出する走行軌跡検出手段と、自車両が走行する走行路の左右幅端の形状を検出する走行路形状検出手段と、走行軌跡検出手段により検出された自車両の走行軌跡と走行路形状検出手段により検出された走行路の左右幅端の形状とに基づいて、走行路の状態を判断する走行路状態判断手段とを備えることを特徴とするものである。
【0007】
このような本発明の走行状態検出装置においては、自車両の走行軌跡を検出すると共に、自車両が走行する走行路の左右幅端の形状を検出し、これらの検出結果に基づいて走行路の状態を判断する。このため、道路における合流地点や工事地点等の車線減少区間では、自車両の走行軌跡と走行路の左右幅端の形状とに基づいて、左車線及び右車線のうち減少するほうの車線を的確に検出することができる。これにより、自車両が車線変更すべき方向を即時に判断することができる。
【0008】
また、本発明は、自車両の運転支援を行う運転支援装置において、自車両の走行軌跡を検出する走行軌跡検出手段と、自車両が走行する走行路の左右幅端の形状を検出する走行路形状検出手段と、走行軌跡検出手段により検出された自車両の走行軌跡と走行路形状検出手段により検出された走行路の左右幅端の形状とに基づいて、車線減少区間を含む走行路の状態を判断する走行路状態判断手段と、走行路状態判断手段により判断された車線減少区間に対する自車両の位置に応じて、自車両の運転支援内容を変更する支援内容変更手段とを備えることを特徴とするものである。
【0009】
このような本発明の運転支援装置においては、自車両の走行軌跡を検出すると共に、自車両が走行する走行路の左右幅端の形状を検出し、これらの検出結果に基づいて走行路の状態を判断する。このため、道路における合流地点や工事地点等の車線減少区間では、自車両の走行軌跡と走行路の左右幅端の形状とに基づいて、左車線及び右車線のうち減少するほうの車線を的確に検出することができる。これにより、自車両が車線変更すべき方向を即時に判断することができる。また、走行路の車線減少区間に対する自車両の位置に応じて自車両の運転支援内容を変更することにより、車線減少区間の終点までの距離に応じた適切な運転支援を実施することができる。
【0010】
好ましくは、走行路の車線減少側に他車両が存在するか否かを検出する周辺車両検出手段を更に備え、支援内容変更手段は、走行路の車線減少側に他車両が存在するか否かによっても自車両の運転支援内容を変更する。この場合には、走行路の車線減少側を他車両が走行していても、その他車両を考慮して自車両の運転支援内容が決定されるので、より適切な運転支援を実施することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、車線の減少状態を的確に検出し、車線変更方向を即時に判断することができる。これにより、車線逸脱防止支援等の運転支援を適切に実施することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係わる運転支援装置の一実施形態を示すブロック図である。
【図2】車線減少区間の一例を示す概念図である。
【図3】車線減少区間の前方画像の一例を示す図である。
【図4】図1に示した車線状況判定部による車線状況判定処理の手順を示すフローチャートである。
【図5】図1に示した支援判断部によって車線減少区間に設定される複数の支援区間を示す概念図である。
【図6】図1に示した周辺車両情報取得部による周辺車両情報取得処理の手順を示すフローチャートである。
【図7】図1に示した警報・支援制御部による警報・支援制御処理の手順を示すフローチャートである。
【図8】図7に示した警報・支援制御部により運転支援内容を決定する際に使用される減速制御マップの一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係わる走行状態検出装置及び運転支援装置の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明に係わる運転支援装置の一実施形態を示すブロック図である。同図において、本実施形態の運転支援装置1は、自車両が走行する走行路の車線が減少する車線減少区間において自車両の運転支援を行う装置である。車線減少区間としては、例えば図2(a)に示すような高速道路等の合流路や、図2(b)に示すような高速道路等における工事実施区間などがある。
【0015】
運転支援装置1は、白線認識カメラ2と、車速センサ3と、横加速度センサ4と、レーダ5と、ECU(Electronic Control Unit)6と、警報部7と、運転支援部8とを備えている。
【0016】
白線認識カメラ2は、自車両の前部に搭載され、自車両前方の白線を撮像して白線画像を取得する。車速センサ3は、自車両の車速を検出し、横加速度センサ4は、自車両の横加速度を検出する。レーダ5は、ミリ波等の電磁波を自車両の周辺に照射し、その反射波を受けることで、自車両の周辺を走行する他車両までの距離や方向等を測定する。
【0017】
ECU6は、CPU、ROMやRAM等のメモリ及び入出力回路等により構成されている。ECU6は、白線認識カメラ2により取得された白線画像、車速センサ3及び横加速度センサ4の検出値、レーダ5の測定値を入力し、所定の処理を行い、警報部7及び運転支援部8を制御する。
【0018】
警報部7は、ECU6からの制御信号に応じて警報音を発生させる。運転支援部8は、ECU6からの制御信号に応じてステアリングやアクセル、ブレーキを制御する。
【0019】
ECU6は、車線情報検出部11と、車両旋回状態検出部12と、車線状況判定部13と、支援判断部14と、周辺車両情報取得部15と、警報・支援制御部16とを有している。
【0020】
車線情報検出部11は、白線認識カメラ2により取得された白線画像から、自車両が走行する走行路の車線の情報を検出する。白線画像の一例を図3に示す。同図に示す白線画像は、図2(b)に示した車線減少区間の前方を撮像して取得された画像である。車線の情報としては、右車線のカーブR(RR)、左車線のカーブR(RL)、車線幅W等が検出される。
【0021】
車両旋回状態検出部12は、車速センサ3及び横加速度センサ4の検出値に基づいて、自車両の旋回R(Rv)を走行軌跡として求める。自車両の車速をV、自車両の横加速度をGyとすると、自車両の旋回R(Rv)は、下記式から算出される。
Rv=V*V/Gy
【0022】
車線状況判定部13は、車線情報検出部11及び車両旋回状態検出部12の検出結果に基づいて、走行路の車線の減少状況を判定する。車線状況判定部13による車線状況判定処理の手順を図4に示す。
【0023】
同図において、まず今回検出された車線幅をW(i)、前回検出された車線幅をW(i-1)としたときに、W(i)がW(i-1)よりも小さく、且つW(i)−W(i-1)の絶対値が閾値dWthよりも大きいかどうかを判定する(手順S21)。これらの式を満たさないときは、本処理を終了する。
【0024】
W(i)がW(i-1)よりも小さく、且つW(i)−W(i-1)の絶対値が閾値dWthよりも大きいときは、自車両の旋回Rが右車線のカーブRよりも大きいか、或いは自車両の旋回Rが左車線のカーブRよりも大きいかどうかを判定する(手順S22)。これらの式を満たさないときは、本処理を終了する。
【0025】
自車両の旋回Rが右車線のカーブRよりも大きいか、或いは自車両の旋回Rが左車線のカーブRよりも大きいときは、左車線のカーブRが右車線のカーブRよりも小さいかどうかを判定する(手順S23)。左車線のカーブRが右車線のカーブRよりも小さいときは、左車線が減少するものと判断し(手順S24)、右車線のカーブRが左車線のカーブRよりも小さいときは、右車線が減少するものと判断する(手順S25)。つまり、左車線及び右車線うちカーブRの小さいほうの車線(形状変化の大きいほうの車線)が減少すると判断される。
【0026】
続いて、左車線及び右車線のうち減少する車線の減少終点(図5のE点)を検出し(手順S26)、車線状況判定処理を終了する。
【0027】
図1に戻り、支援判断部14は、車線状況判定部13の判定結果に基づいて、自車両が車線変更すべき方向を判断する。具体的には、支援判断部14は、左車線及び右車線うちカーブRの大きいほうの車線つまり形状変化の小さいほうの車線の方向を車線変更すべき方向とする。
【0028】
また、支援判断部14は、図5に示すように、車線減少終点Eまでの距離と自車両の車速とに基づいて、車線減少区間において3つの支援区間を設定する。これらの支援区間としては、車線減少終点Eに向かって逸脱警報区間、車線変更支援区間、逸脱防止支援区間となっており、減少する車線のカーブRの変化点を基にして区分される。
【0029】
周辺車両情報取得部15は、レーダ5の測定値に基づいて、自車両の周辺を走行する他車両(周辺車両)の情報を取得する。周辺車両情報取得部15による周辺車両情報取得処理の手順を図6に示す。
【0030】
同図において、まずレーダ5の測定値から、周辺車両の位置、周辺車両と自車両との相対速度を検出する(手順S31)。続いて、支援判断部14で判断された自車両の車線変更側に隣接する走行レーン上に他車両が存在するかどうかを判定する(手順S32)。自車両の車線変更側に隣接する走行レーン上に他車両が存在するときは、当該他車両と自車両との相対速度がゼロ以上であるかどうか、つまり当該他車両が自車両に接近しているかどうかを判定する(手順S33)。
【0031】
当該他車両と自車両との相対速度がゼロ以上であるときは、周辺車両flagをonとする(手順S34)。一方、手順S32において自車両の車線変更側に隣接する走行レーン上に他車両が存在していないと判定されたとき、手順S33において他車両と自車両との相対速度がゼロ以上でないと判定されたときは、周辺車両flagをoffとする(手順S35)。
【0032】
図1に戻り、警報・支援制御部16は、支援判断部14の処理結果と周辺車両情報取得部15の処理結果とに基づいて、警報部7及び運転支援部8を制御する。警報・支援制御部16による警報・支援制御処理の手順を図7に示す。
【0033】
同図において、まず周辺車両flagがonであるかどうかを判定し(手順S41)、周辺車両flagがonではなくoffであるときは、自車両に対して通常の運転支援を行う(手順S42)。
【0034】
具体的には、車線減少区間前半の逸脱警報区間では、車線が減少する旨の警報を発するように警報部7を制御する。車線減少区間中間の車線変更支援区間では、車線変更すべき側(車線減少側)へ操舵操作を促すように運転支援部8を制御する。例えば、運転者がオーバーライド可能な所定の微小トルクをステアリングに加える。車線減少区間後半の逸脱防止支援区間では、車線変更すべき側への自動操舵を実施するように運転支援部8を制御する。
【0035】
一方、周辺車両flagがonであると判定されたときは、周辺車両flagがoffである場合よりも効果的な運転支援を自車両に対して行う(手順S43)。
【0036】
具体的には、逸脱警報区間では、周辺車両flagがoffである場合よりも早い段階で警報を発するように警報部7を制御する。車線変更支援区間では、車線変更すべき側(車線減少側)へ操舵操作を促すように運転支援部8を制御する。例えば、運転者がオーバーライド可能な所定の微小トルクをステアリングに加える。逸脱防止支援区間では、車線変更すべき側へ運転操作を促すように運転支援部8を制御すると共に、図8に示すような減速制御マップを用いて、車線減少終点Eまでの距離と自車両の車速とに応じて自車両を減速させるように運転支援部8を制御する。
【0037】
以上において、車速センサ3、横加速度センサ4及びECU6の車両旋回状態検出部12は、自車両の走行軌跡を検出する走行軌跡検出手段を構成する。白線認識カメラ2及びECU6の車線情報検出部11は、自車両が走行する走行路の左右幅端の形状を検出する走行路形状検出手段を構成する。ECU6の車線状況判定部13は、走行軌跡検出手段により検出された自車両の走行軌跡と走行路形状検出手段により検出された走行路の左右幅端の形状とに基づいて、走行路の状態を判断する走行路状態判断手段を構成する。そして、それらの要素によって走行状態検出装置が構成される。
【0038】
また、ECU6の支援判断部14及び警報・支援制御部16は、走行路状態判断手段により判断された車線減少区間に対する自車両の位置に応じて、自車両の運転支援内容を変更する支援内容変更手段を構成する。レーダ5及びECU6の周辺車両情報取得部15は、走行路の車線減少側に他車両が存在するか否かを検出する周辺車両検出手段を構成する。
【0039】
以上のように本実施形態にあっては、左車線及び右車線のカーブRと自車両の旋回Rとに基づき、左車線及び右車線のうち減少する車線を判断するので、高速道路等における本線への合流路や道路の工事区間による車線減少区間において、左側/右側通行の違い等に関係なく、車線の減少状態を的確に判断することができる。また、ナビゲーションや路車間通信等のインフラ設備に依存すること無く、自車両が車線変更すべき方向を車線の減少状態から即時に判断することができる。
【0040】
また、車線減少区間において逸脱警報区間、車線変更支援区間、逸脱防止支援区間を設定すると共に、自車両が車線変更する側に自車両に接近する他車両が存在するか否かを検出し、車線減少区間における自車両の位置と自車両に接近する他車両の有無状況とに応じて、自車両の運転支援内容を変更するので、自車両に対して適切な運転支援を実施することができる。これにより、例えば運転者による運転操作への対応が容易に行えるようになる。
【0041】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、左車線及び右車線のカーブR(形状変化)を検出し、左車線及び右車線のうちカーブRが小さいほうの車線を減少する車線と判断し、減少する車線の反対側を車線変更の方向と判断したが、これ以外にも、例えば左車線及び右車線の線種(実線及び破線)を検出し、破線からなる車線側を車線変更の方向と判断しても良い。
【符号の説明】
【0042】
1…運転支援装置、2…白線認識カメラ(走行路形状検出手段、走行状態検出装置)、3…車速センサ(走行軌跡検出手段、走行状態検出装置)、4…横加速度センサ(走行軌跡検出手段、走行状態検出装置)、5…レーダ(周辺車両検出手段)、6…ECU、7…警報部(支援内容変更手段)、8…運転支援部(支援内容変更手段)、11…車線情報検出部(走行路形状検出手段、走行状態検出装置)、12…車両旋回状態検出部(走行軌跡検出手段、走行状態検出装置)、13…車線状況判定部(走行路状態判断手段、走行状態検出装置)、14…支援判断部(支援内容変更手段)、15…周辺車両情報取得部(周辺車両検出手段)、16…警報・支援制御部(支援内容変更手段)。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の走行状態を検出する走行状態検出装置において、
前記自車両の走行軌跡を検出する走行軌跡検出手段と、
前記自車両が走行する走行路の左右幅端の形状を検出する走行路形状検出手段と、
前記走行軌跡検出手段により検出された前記自車両の走行軌跡と前記走行路形状検出手段により検出された前記走行路の左右幅端の形状とに基づいて、前記走行路の状態を判断する走行路状態判断手段とを備えることを特徴とする走行状態検出装置。
【請求項2】
自車両の運転支援を行う運転支援装置において、
前記自車両の走行軌跡を検出する走行軌跡検出手段と、
前記自車両が走行する走行路の左右幅端の形状を検出する走行路形状検出手段と、
前記走行軌跡検出手段により検出された前記自車両の走行軌跡と前記走行路形状検出手段により検出された前記走行路の左右幅端の形状とに基づいて、車線減少区間を含む前記走行路の状態を判断する走行路状態判断手段と、
前記走行路状態判断手段により判断された前記車線減少区間に対する前記自車両の位置に応じて、前記自車両の運転支援内容を変更する支援内容変更手段とを備えることを特徴とする運転支援装置。
【請求項3】
前記走行路の車線減少側に他車両が存在するか否かを検出する周辺車両検出手段を更に備え、
前記支援内容変更手段は、前記走行路の車線減少側に他車両が存在するか否かによっても前記自車両の運転支援内容を変更することを特徴とする請求項2記載の運転支援装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−231561(P2010−231561A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−79135(P2009−79135)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】