説明

走行用HST回路

【課題】前進・後進の切換指令に応じて走行モータの容量の油圧制御を行うためのモータ容量制御回路の配管を簡素化できる走行用HST回路を提供すること。
【解決手段】メインポンプ22に走行モータが1対のメイン油圧管路30A,30Bを介して閉回路接続されたメイン回路20と、低圧側のメイン油圧管路30Aまたは30Bに作動油を供給するチャージ回路40と、低圧側のメイン油圧管路30Aまたは30Bを作動油タンク64も戻すフラッシング回路60と、前進・後進の切換指令時に、指令された走行方向に係る走行モータ26の容量制御が可能な状態とするモータ容量制御回路70とを備えている。モータ容量制御回路70はフラッシング回路60から分岐した枝管路72を有し、フラッシング回路60に導入された低圧側のメイン油圧管路30Aまたは30Bの圧力を、枝管路72を介してパイロット圧として導入し、走行モータ26の容量の制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホイールローダ、転圧機械および農業車両等のHST車両に設けられ、前進・後進の切換指令に応じて走行用油圧モータの容量を制御する走行用HST回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の走行用HST回路は、吸込み口と吐出し口を逆転可能な可変容量型油圧ポンプからなるメインポンプに、可変容量型油圧モータからなる走行モータが、1対のメイン油圧管路を介して閉回路接続されたメイン回路を備えている。さらに、前進・後進の切換指令により指令された走行方向に対応した前記走行モータの容量制御が可能な状態とするモータ容量制御回路を備えている。
【0003】
メインポンプは、油圧パイロット式の容量可変機構部として、ポンプ傾転を操作するポンプ用サーボピストンを備えている。このポンプ用サーボピストンのパイロット圧は、HST車両の前進・後進の切換指令に応じてメインポンプの吐出方向が切り換わるように制御されるようになっている。
【0004】
走行モータは、油圧パイロット式の容量可変機構部として、走行モータの傾転を操作するモータ用サーボピストンを備えている。モータ容量制御回路は、そのモータ用サーボピストンのパイロット圧を制御する油圧パイロット式のモータ容量制御弁を備えている。モータ容量制御弁のパイロット圧としては、ポンプ用サーボピストンにパイロット圧油を導く1対のパイロット管路のそれぞれの圧力、および、1対のメイン油圧管路のそれぞれの圧力が用いられる。これらの圧力は切換弁を介してモータ容量制御弁に付与されるようになっている。この切換弁は油圧パイロット式である。ポンプ用サーボピストンにパイロット圧を導く前記1対のパイロット管路のそれぞれからは管路が分枝していて、これらの管路のそれぞれが1対のパイロット管路のそれぞれの圧力を、切換弁にパイロット圧として導くようになっている。
【0005】
切換弁は前進・後進の切換指令に応じて切り換わるようになっている。切換弁の切換りに伴い、1対のメイン油圧管路のうちの高圧側の圧力が、モータ容量制御弁にパイロット圧として付与される。これにより、モータ容量制御弁の弁位置が前進時には前進時に高圧側となるメイン油圧管路の圧力に応じて変化し、後進時には後進時に高圧側となるメイン油圧管路の圧力に応じて変化する。モータ容量制御弁は、パイロット圧として付与される高圧側のメイン油圧管路の圧力が高いほど、走行モータの容量を増大させる。
【0006】
この種の従来の走行用HST回路については特許文献1を参照されたい。
【特許文献1】特開2004−293661号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述した従来の走行用HST回路において、モータ容量制御回路の切換弁にパイロット圧としての圧力を導くための管路は、ポンプ用サーボピストンにパイロット圧を導く1対のパイロット管路のそれぞれから分岐したものである。これらの管路は、メインポンプ側から走行モータ側にわたる長い管路であり、配管結合部の多い複雑なものに形成されやすい。管路の配管結合部が多いほど油漏れのリスクが高まる。
【0008】
本発明の第1の目的は、前進・後進の切換指令に応じて走行モータの容量の油圧制御を行うためのモータ容量制御回路の配管を簡素化できる走行用HST回路を提供することにある。
【0009】
また、前述した従来の走行用HST回路では、前進・後進の切換指令に応じて切換弁が切り換わり、1対のメイン油圧管路のうちの高圧側の圧力がパイロット圧としてモータ容量制御弁に付与されると、モータ容量制御弁の弁位置が変化して走行モータの容量が変化する。走行モータの容量は高圧側のメイン油圧管路の圧力が高いほど大きくなるため、前進・後進の急逆切換時に走行モータにブレーキ圧が作用して走行モータの容量が増大し、これに伴って制動力が増大する。この結果、HST車両が急減速し、この急減速がオペレータに不快感を与える。
【0010】
前進・後進の急逆切換時のブレーキ圧の上昇について、後進から前進への急逆切換時を例に挙げて次に説明する。
【0011】
HST車両の後進中、メインポンプは1対のメイン油圧管路のうちの一方のメイン油圧管路から作動油を吸込み、他方のメイン油圧管路から作動油を吐出している。切換弁は、高圧側である他方のメイン油圧管路の圧力をモータ容量制御弁にパイロット圧として導いている。これにより、走行モータの容量は、他方のメイン油圧管路の圧力に応じて調整される状態である。
【0012】
この状態で、後進から前進への急逆切換指令があると、メインポンプでは吸込み口と吐出し口が後進に対応する状態から逆転して前進に対応する状態に切り換わる。但し、直ちに状態が切り換わるわけではなく、操作感を考慮して多少の切換時間を持たせているのが一般的である。つまり、メインポンプの吸込みは、一方のメイン油圧管路から吸い込んでいたものが、吸込み量0まで減少した後、他方のメイン油圧管路から作動油を吸い込むようになる、同様に、メインポンプの吐出は他方のメイン油圧管路に吐出していたものが、吐出し量0まで減少した後、一方のメイン油圧管路から作動油を吐出す状態になる、このとき、切換弁は、他方のメイン油圧管路の圧力をモータ容量制御弁にパイロット圧として導く状態から、一方のメイン油圧管路の圧力をモータ容量制御弁にパイロット圧として導く状態に切換わる。これに伴い、走行モータの容量は、一方のメイン油圧管路の圧力に応じて調整される状態になる。切換弁の切換速度はメインポンプの吐出方向切換速度に比べて十分に早いので、直ちに切換わるとみなせる。
【0013】
走行モータは、メインポンプの吸込み口と吐出し口が前進に対応するよう逆転したことに伴って、直ちに前進に対応する方向に回転するのではなく、慣性によって後進に対応する方向への回転を続けるため、走行モータにポンプ作用が生じる。この際、メインポンプの吐出、吸込量は0になろうとしているのに、走行モータはポンプ作用により急逆切換指令前と同じ方向に同じ流量の油を流そうとするために、−方のメイン油圧管路内の圧力は上昇し、逆に他方のメイン油圧管路の圧力は低下する。したがってこの時一方のメイン油圧管路に立つ圧力により、制動力いわゆるエンジンブレーキがかかる。急逆切換指令時の走行速度が大きいほどこの圧力が大きくなるため、モータ容量制御弁が大容量側に制御される。この結果、走行モータの容量が急増し、制動力が増大する。この制動力の増大により、HST車両の後進速度が急減速し、この急減速がオペレータに不快感を与えることになる。
【0014】
特に、HST車両であるホイールローダを用いた作業では、地山を掘削させたホイールローダを後進させた後、後進から前進への急逆切換えを行って放土先のダンプトラック等に向って走行させる、ということが頻繁に行われるため、オペレータに頻繁に不快感を与えることになる。
【0015】
また、ポンプ作用時の走行モータの容量が増大すると、走行モータの吸込み側のメイン油圧管路(他方のメイン油圧管路)の圧力が急激に低下してキャビテーションが発生し、これに伴ってエロージョンや騒音が発生することがある。
【0016】
本発明の第2の目的は、前進・後進の急逆切換時のHST車両の急減速を抑えることができる走行用HST回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の走行用HST回路は前述の目的を達成するために次のように構成されている。
【0018】
〔1〕 前述した第1の目的を達成するために、本発明は、吸込み口と吐出し口を逆転可能な可変容量型油圧ポンプからなるメインポンプに、可変容量型油圧モータからなる走行モータが、1対のメイン油圧管路を介して閉回路接続されたメイン回路と、前記1対のメイン油圧管路のうちの低圧側のメイン油圧管路に作動油を供給するチャージ回路と、前記低圧側のメイン油圧管路の圧油を作動油タンクに戻すフラッシング回路と、前進・後進の切換指令時に、指令された走行方向に係る前記走行モータの容量制御が可能な状態とするモータ容量制御回路とを備えた走行用HSTにおいて、前記モータ容量制御回路は、前記フラッシング回路から分岐した枝管路を有し、前記フラッシング回路に導入された前記低圧側のメイン油圧管路の圧力を、前記枝管路によりパイロット圧として導入し、前記走行モータの容量の制御を行うよう設定されたことを特徴とする。
【0019】
走行用HST回路ではフラッシング回路がメインポンプよりも走行モータの近くに設けられているのが一般的なので、「〔1〕」に記載された本発明における枝管路は、メインポンプよりも走行モータの近くに位置した既設のフラッシング回路から分岐した管路となる。これにより、走行用HST回路におけるモータ容量制御回路の配管を簡素化できる。
【0020】
〔2〕 本発明は「〔1〕」に記載の発明において、前記走行モータは、この走行モータの容量を可変にする油圧パイロット式の容量可変機構部を有し、前記フラッシング回路は、前記低圧側のメイン油圧管路から前記フラッシング回路に圧油を導入するための入口を形成する低圧選択弁と、前記入口から導入された圧力が所定圧力以上のときに、前記フラッシング回路の圧油を前記作動油タンクに導く出口を形成するフラッシングリリーフ弁とを有し、前記枝管路は、前記フラッシングリリーフ弁の上流側から分岐した管路からなり、前記モータ容量制御回路は、前記容量可変機構部のパイロット圧を制御する油圧パイロット式の制御弁からなるモータ容量制御弁と、前記低圧選択弁により導入された前記低圧側のメイン油圧管路の圧力を、前記枝管路によりパイロット圧として導入して作動し、前記1対のメイン油圧管路のそれぞれの圧力を選択的に前記モータ容量制御弁にパイロット圧として導くことが可能な油圧パイロット式の切換弁とを有することを特徴とするものであってもよい。
【0021】
〔3〕 前述した第2の目的を達成するために、本発明は「〔2〕」に記載の発明において、前記モータ容量制御回路は、前記枝管路に設けられた電磁弁と、この電磁弁を制御する制御手段とを有し、前記電磁弁は、前記フラッシングリリーフ弁の上流側の圧力を前記切換弁にパイロット圧として導く状態と導かない状態とを切換可能に設定され、前記制御手段は、前進・後進の切換指令に対して前記電磁弁が任意のタイミングで作動可能としたことを特徴とする。
【0022】
この「〔3〕」に記載された本発明では、前進・後進の急逆切換指令時に制御手段が前進・後進の切換指令に対する電磁弁の作動のタイミングを、例えば遅らせる。これにより、切換弁の作動も遅れる。この切換弁の作動の遅れは、ブレーキ圧がパイロット圧としてモータ容量制御弁に付与されるタイミングを遅らせる。ブレーキ圧は時間の経過とともに低下するので、ブレーキ圧がパイロット圧としてモータ容量制御弁に付与されるタイミングが遅れれば、走行モータ容量の急増、すなわち制動力の増大が抑えられる。したがって、「〔3〕」に記載された本発明によれば、前進・後進の急逆切換時のHST車両の急減速を抑えることができ、オペレータに与える不快感を低減できる。また、キャビテーションの発生を抑えエロージョンや騒音が発生を低減できる。
【0023】
また例えば、低速走行時の急逆切換は高速走行時に比べて制動時間すなわちブレーキ圧の高い時間が短く、高速時に設定した遅延タイミングでは走行モータの回転方向が既に逆転しているにもかかわらず切換弁が作動せず、モータ容量が大とならないため、加速時の操作感が悪くなる可能性がある。動作タイミングの設定は常に一定でなく、車両の速度に応じて変化させることが有効である。
【0024】
また、「〔3〕」に記載の本発明において、切換弁は油圧パイロット式であり、この切換弁へのパイロット圧の付与を電磁弁により行うようにしたので、切換弁を電磁操作式とする場合よりも確実に切換弁の操作力を確保することができるとともに、コンタミナントによる弁体の摺動抵抗の増大や振動による切換弁の動作不良を生じにくくすることができる。
【0025】
〔4〕 本発明は「〔2〕」または「〔3〕」に記載の発明において、前記切換弁の初期位置は、前進の指令に対応していることを特徴とするものであってもよい。
【0026】
この「〔4〕」に記載された本発明によれば、後進から前進への急逆切換時にフラツシング回路における異常な圧力低下により切換弁に十分なパイロット圧が供給されなくても、切換弁の弁位置を前進の指令に対応する初期位置に保持することができ、前進に対応するメイン油圧管路の圧をモータ制御弁に導くことができる。
【0027】
このように後進から前進への急逆切換時にフラツシング回路における異常な圧力低下が生じても、切換弁の弁位置を前進の指令に対応する初期位置に保持することができ、前進に対応するメイン油圧管路の圧をモータ制御弁に導くことができるので、ホイールローダのように後進から前進への急逆切換を行う頻度の高いHST車両に有効である。
【発明の効果】
【0028】
本発明は、モータ容量制御回路がフラッシング回路から分岐した枝管路を有し、フラッシング回路に導入された低圧側のメイン油圧管路の圧力を、枝管路を介してパイロット圧として導入し、走行モータの容量の制御を行うよう設定されている。これにより、モータ容量制御回路の配管を簡素化できる。この結果、モータ容量制御回路にパイロット圧を導くための管路の油漏れのリスクを低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
図1は本発明の一実施形態に係る走行用HST回路が設けられるHST車両の一例であるホイールローダの左側面図である。
【0030】
図1示すように、ホイールローダ1は、運転室2と、掘削作業等に用いられる作業機3と、前輪9および後輪10とを備えている。
【0031】
作業機3は、ホイールローダ1の前部に上下方向に回動可能に結合したリフトアーム4と、このリフトアーム4の先端部に回動可能に結合したバケット5とを備えている。リフトアーム4はリフトアームシリンダ6(油圧シリンダ)により駆動されるようになっている。バケット5はバケットシリンダ(油圧シリンダ)の動作をベルクランク8により伝達されて駆動されるようになっている。
【0032】
前輪9および後輪10はそれぞれアクスル(図示していない)に設けられている。アクスルはドライブシャフトの動力を伝達されて駆動される。
【0033】
図2は本発明の一実施形態に係る走行用HST回路の油圧回路図である。この図2に示す走行用HST回路20は、前輪9および後輪10の一方が設けられたアクスルに対応するドライブシャフトを駆動するためのものであり、他方に関する構成は省略してある。
【0034】
走行用HST回路20は、メインポンプ22と走行モータ26とが1対のメイン油圧管路30A,30Bを介して閉回路接続されたメイン回路20を備えている。
【0035】
メインポンプ22は、吸込み口と吐出し口を逆転可能な可変容量型油圧ポンプ、例えば両傾転形で斜板式の可変容量形油圧ポンプからなる。メインポンプ22の容量を可変にするポンプ容量可変機構部23は、油圧パイロット式でスプリングリターン式のポンプ用サーボピストン24を操作して斜板25の傾角を制御するものである。操作力が働いていないときのポンプ用サーボピストン24の位置(図2に示す位置)は、最小ポンプ容量に対応している。
【0036】
走行モータ26は斜軸式可変容量型油圧モータからなる。走行モータ26の容量を可変にするモータ容量可変機構部27は油圧パイロット式であり、モータ用サーボピストン28をパイロット圧で操作することによって斜軸29の傾角が制御される。モータ用サーボピストン28は、パイロット圧を受ける大受圧部28aと、この大受圧部28aよりも受圧面積の小さな小受圧部28bとを有する。大受圧部28aに作用するパイロット圧はモータ用サーボピストン28を、走行モータ26の容量が小さくなる方向に押圧する。小受圧部28bに作用するパイロット圧はモータ用サーボピストン28を、走行モータ26の容量が大きくなる方向に押圧する。
【0037】
走行用HST回路20は、さらに、1対のメイン油圧管路30A,30Bのうちの低圧側のメイン油圧管路30Aまたは30Bに作動油を供給するチャージ回路40を備えている。このチャージ回路40は、定容量型油圧ポンプからなるチャージポンプ41と、このチャージポンプ41を1対のメイン油圧管路30A,30Bの両方に接続する、2股に分岐したチャージ油路42とを備えている。チャージ油路42は、幹油路42aと、この幹油路42aから分岐した枝油路42b,42cとから構成されている。枝油路42b,42cのそれぞれには、チェック弁43A,43Bがそれぞれ設けられている。チェック弁43Aは枝油路42bにおける圧油の流れの方向を、幹油路42aからメイン油圧管路30Aに向かう方向に限定している。チェック弁43Bは枝油路42cにおける圧油の流れの方向を、幹油路42aからメイン油圧管路30Bに向かう方向に限定している。幹油路42aには、チャージポンプ41とチェック弁43A,43Bとの間の圧力、すなわちチャージ圧を規定するチャージリリーフ弁44が設けられている。
【0038】
走行用HST回路20は、さらに、運転室2に設けられた前進・後進切換レバー装置50からの前進・後進の指令に応じて、メイン回路20における作動油の循環方向を切り換える循環方向制御回路51を有する。この循環方向制御回路51はポンプ用サーボピストン24のパイロット圧の制御する方向制御弁52を有する。この方向制御弁52にはAS弁53を介してチャージポンプ41の吐出圧が導かれるようになっている。方向制御弁52は電磁操作式、スプリングセンタ式および3位置の弁であり、前進・後進切換レバー装置50の中立指令に対応するノーマル位置N(中央位置)、前進指令に対応する前進側作動位置F、および、後進指令に対応する後進側作動位置Rへの切換が可能になっている。前進の指令は、方向制御弁52の弁体を前進側作動位置Fに移動させるソレノイドに、駆動電力Wfを供給することからなる。後進の指令は、方向制御弁52の弁体を後進側作動位置Rに移動させるソレノイドに、駆動電力Wrを供給することからなる。中立の指令は方向制御弁52のどちらのソレノイドにも駆動電力Wf,Wrを供給しないことからなる。
【0039】
走行用HST回路20は、さらに、前記低圧側のメイン油圧管路をドレン回路63に連通させることが可能なフラッシング回路60を備えている。このフラッシング回路60は、低圧側のメイン油圧管路30Aまたは30Bからフラッシング回路60に圧油を導入するための入口を形成する低圧選択弁61と、その入口から導入された圧力が所定圧力以上のときに、フラッシング回路60を作動油タンク64に導くドレン回路63に連通させる出口を形成するフラッシングリリーフ弁62とを有する。ここで、所定圧力はフラッシングリリーフ弁62のリリーフ圧、いわゆるフラッシング圧であり、チャージ圧よりも低い圧力に設定されている。つまり、フラッシング回路60は、低圧側のメイン油圧管路30Aまたは30Bの圧油を低圧選択弁61により導入し、導入した圧油の圧力がフラッシング圧以上のときに、その圧油をドレン回路63を介して作動油タンク64に戻すようになっている。
【0040】
走行用HST回路20は、さらに、前進・後進切換レバー装置50からの、前進・後進・中立の切換指令に応じて、走行モータ26の容量を制御するモータ容量制御回路70を備えている。
【0041】
このモータ容量制御回路70は、モータ用サーボピストン28のパイロット圧を制御するモータ容量制御弁71を有する。このモータ容量制御弁71は油圧パイロット式でスプリングリターン式の制御弁からなり、後述する切換弁73からの圧油を大受圧部28aと小受圧部28bとの両方に導くノーマル位置A1(図2に示す位置)と、大受圧部28a側の圧油をドレン回路63に排出しつつ、切換弁73からの圧油を小受圧部28bに圧油を導く作動位置A2との間で弁位置との2位置の切換えが可能になっている。
【0042】
モータ容量制御回路70は、さらに、フラッシング回路60のフラッシングリリーフ弁62の上流側から分岐した枝管路72と、この枝管路72をより導かれた圧力をパイロット圧として切り換わる切換弁73とを有する。切換弁73は油圧パイロット式でスプリングリターン式の制御弁である。この切換弁73には、低圧選択弁61により導入された低圧側のメイン油圧管路30Aまたは30Bの圧力が、枝管路72によりパイロット圧として導かれるようになっている。また、この切換弁73は、1対のメイン油圧管路30A,30Bの両方に接続されていて、これら1対のメイン油圧管路30A,30Bのそれぞれの圧力を選択的にモータ容量制御弁71にパイロット圧として導くことが可能に設定されている。切換弁73のノーマル位置B1は、前進時に高圧側のメイン油圧管路30Aの圧力をパイロット圧としてモータ容量制御弁71に導く状態とし、同作動位置B2はメイン油圧管路30Bの圧力をパイロット圧としてモータ容量制御弁71に導く状態とする。なお、切換弁73は、その弁位置がノーマル位置B1のときに、前進時に高圧側のメイン油圧管路30Aの圧力をパイロット圧としてモータ容量制御弁71に導く状態とする。つまり、切換弁73の初期位置は前進の指令に対応する弁位置に設定されている。
【0043】
モータ容量制御回路70は、前述の構成によって、フラッシング回路60に導入された低圧側のメイン油圧管路30Aまたは30Bの圧力を、枝管路72を介してパイロット圧として導入し、走行モータ26の容量の制御を行うようになっている。
【0044】
モータ容量制御回路70は、さらに、枝管路72に設けられたスプリングリターン式の電磁弁74と、この電磁弁74を制御する制御手段としてのコントローラ75とを有する。
【0045】
電磁弁74は、フラッシングリリーフ弁62の上流側の圧力を切換弁73にパイロット圧として導く状態と導かない状態とを切換可能に設定されている。電磁弁74のノーマル位置C1は枝管路72の途中をドレン回路63に連通させて前記導かない状態とし、同作動位置C2は枝管路72とドレン回路63との間を遮断し、枝管路72を開通させて前記導く状態とする。
【0046】
コントローラ75は、CPU,RAM,ROM等から構成された演算処理部を有し、ROMに書き込まれたコンピュータプログラムに従って動作する装置である。このコントローラ75は、前進・後進切換レバー装置50に電気的に接続されていて、前進の指令、後進の指令および中立の指令をそれぞれ検知可能に設定されているとともに、前進・後進の急逆切換指令を検知可能に設定されている。前進の指令の検知は方向制御弁52の駆動電力Wfを検知することであり、後進の指令の検知は方向制御弁52への駆動電力Wrを検知することである。中立の指令の検知は駆動電力Wf,Wrがどちらも検知されない状態を検知することである。前進・後進の急逆切換指令の検知は、駆動電力Wf,Wrの切換りが所定時間(瞬間的な時間)内に行われたかどうかを判定して、その判定結果が真となることである。
【0047】
そして、コントローラ75は、後進の指令を検知したとき、および、中立の指令を検知したときに、電磁弁74に駆動電力Wを供給するになっていて、前進の指令を検知したときには駆動電力Wの供給を停止するようになっている。また、前進から後進への急逆切換指令を検知したときには、電磁弁74への駆動電力Wの供給、すなわち、電磁弁74の弁位置がノーマル位置C1から作動位置C2に切り換る作動を遅らせるよう設定されている。さらに、後進から前進の急逆切換指令を検知したときには、電磁弁74への駆動電力Wの供給停止、すなわち、電磁弁74が作動位置C2からノーマル位置C1に復帰する作動を遅らせるよう設定されている。電磁弁の作動の遅れは、前進・後進の切換指令時点からブレーキ圧が走行モータ26の駆動圧の上限まで低下するのに必要な時間として予め設定された時間分の遅れである。
【0048】
本実施形態に係る走行用HST回路20の動作について説明する。
【0049】
〔後進〕
はじめにホイールローダ1が後進する際の動作について説明する。
【0050】
オペレータにより前進・後進切換レバー装置50の操作レバー50aが中立位置Npから後進位置Rpに切り換えられる。これに伴い、方向制御弁52に駆動電力Wrが供給され、この方向制御弁52の弁位置はノーマル位置Nから後進側作動位置Rとなる。これによりポンプ用サーボピストン24が移動し、メインポンプ22の斜板25を後進に対応する方向に傾転する。この結果、メインポンプ22はメイン油圧管路30Aから作動油を吸込んでメイン油圧管路30Bに吐出し、メインポンプ22と走行モータ26との間に矢印Fr方向の作動油の循環が生じる。このとき、メイン油圧管路30Aが低圧側となり、メイン油圧管路30Bが高圧側となる。
【0051】
また、前進・後進切換レバー装置50の操作レバー50aが中立位置Npから後進位置Rpに切り換えられると、コントローラ75は後進の指令(駆動電力Wr)を検知し、モータ容量制御回路70の電磁弁74に駆動電力Wを供給する。これにより、モータ容量制御回路70では、電磁弁74の弁位置が作動位置C2となり、フラッシングリリーフ弁62の上流側の圧力が枝管路72により切換弁73にパイロット圧として導かれる状態が形成される。
【0052】
前述したようにメインポンプ22がメイン油圧管路30Aから作動油を吸込んでメイン油圧管路30Bに吐出するようになると、フラッシング回路60では、低圧選択弁61が高圧側のメイン油圧管路30Bの圧力をパイロット圧として切換り、低圧側のメイン油圧管路30Aの圧油をフラッシング回路60内に導入する。低圧側のメイン油圧管路30Aの圧力はチャージ圧となっていて、チャージ圧はフラッシング圧よりも高いので、フラッシング回路60に導入された圧油はフラッシングリリーフ弁62を通じてドレン回路63に導かれる。
【0053】
このとき、モータ容量制御回路70では、前述したように電磁弁74の弁位置が作動位置C2となっているので、フラッシングリリーフ弁62の上流側の圧力(フラッシング圧)が枝管路72により切換弁73にパイロット圧として導かれ、切換弁73の弁位置が作動位置B2となる。これにより、後進時の高圧側であるメイン油圧管路30Bの圧力が切換弁73を通じてモータ容量制御弁71にパイロット圧として付与され、この圧力に応じてモータ容量制御弁71の弁位置がノーマル位置A1と作動位置A2との間で変化するようになる。これに伴い、後進時に高圧側のメイン油圧管路30Bの圧力がモータ容量制御弁71を通じてモータ用サーボピストン28にパイロット圧として供給される状態になり、モータ用サーボピストン28の位置は大受圧部28a側の油圧力と小受圧部28b側の油圧力がバランスする位置に決まる。このようにして走行モータ26の容量が、後進時に高圧側のメイン油圧管路30Bの圧力に応じて調整される。
【0054】
〔前進〕
次にホイールローダ1が前進する際の動作について説明する。
【0055】
オペレータにより前進・後進切換レバー装置50の操作レバー50aが中立位置Npから前進位置Fpに切り換えられる。これに伴い、方向制御弁52に駆動電力Wfが供給され、この方向制御弁52の弁位置はノーマル位置Nから前進側作動位置Fとなる。これにより、ポンプ用サーボピストン24が後進時とは反対側に移動し、メインポンプ22の斜板が前進に対応する方向に傾転する。この結果、メインポンプ22はメイン油圧管路30Bから作動油を吸込んでメイン油圧管路30Aに吐出し、メインポンプ22と走行モータ26との間で矢印Ff方向の作動油の循環が生じる。このとき、メイン油圧管路30Aが高圧側となり、メイン油圧管路30Bが低圧側となる。
【0056】
また、前進・後進切換レバー装置50の操作レバー50aが中立位置Npから前進位置Fpに切り換えられると、コントローラ75は前進指令(駆動電力Wf)を検知し、モータ容量制御回路70の電磁弁74への駆動電力Wの供給を停止する。これにより、モータ容量制御回路70では、電磁弁74の弁位置がノーマル位置C1となって、切換弁73のパイロット圧は電磁弁74を通じてドレン回路63に排出され、フラッシングリリーフ弁62の上流側の圧力が切換弁73にパイロット圧として導かれる状態ではなくなる。この結果、切換弁73の弁位置はノーマル位置B1となる。
【0057】
前述したようにメインポンプ22がメイン油圧管路30Bから作動油を吸込んでメイン油圧管路30Aに吐出するようになると、フラッシング回路60では、低圧選択弁61が高圧側のメイン油圧管路30Aの圧力をパイロット圧として切換り、低圧側のメイン油圧管路30Bの圧油をフラッシング回路60内に導入する。低圧側のメイン油圧管路30Bの圧力はチャージ圧となっていて、チャージ圧はフラッシング圧よりも高いので、フラッシング回路60に導入された圧油はフラッシングリリーフ弁62を通じてドレン回路63に導かれる。
【0058】
このとき、モータ容量制御回路70では、前述したように電磁弁74の弁位置がノーマル位置C1となっているので、フラッシングリリーフ弁62の上流側の圧力(フラッシング圧)は枝管路72により切換弁73にパイロット圧として導かれることはなく、したがって、切換弁73の弁位置はノーマル位置B1に維持される。これにより、前進時の高圧側であるメイン油圧管路30Aの圧力が切換弁73を通じてモータ容量制御弁71にパイロット圧として付与され、この圧力に応じてモータ容量制御弁71の弁位置がノーマル位置A1と作動位置A2と間で変化するようになる。これに伴い、前進時に高圧側のメイン油圧管路30Aの圧力がモータ容量制御弁71を通じてモータ用サーボピストン28にパイロット圧として供給される状態になり、モータ用サーボピストン28の位置は大受圧部28a側の油圧力と小受圧部28b側の油圧力がバランスする位置に決まる。このようにして走行モータ26の容量が、前進時に高圧側のメイン油圧管路30Aの圧力に応じて調整される。
【0059】
〔前進から後進への急逆切換え〕
次に前進から後進への急逆切換えの際の動作について説明する。
【0060】
前進・後進切換レバー装置50の操作レバー50aが前進位置Fpから後進位置Rpに急逆切換操作されると、方向制御弁52の弁位置は前進時作動位置Fから後進時作動位置Rに切り換わる。これにより、ポンプ用サーボピストン24が前進時とは反対側に移動し、メインポンプ22の斜板25が前進側から後進側に傾転する。つまり、メインポンプ22は吸込み口と吐出し口とを逆転させ、メイン油圧管路30Aから作動油を吸込んでメイン油圧管路30Bに吐出すようになる。
【0061】
コントローラ75は、前進・後進切換レバー装置50の操作レバー50aが前進位置Fpから後進位置Rpに急逆切換操作されると、方向制御弁52への駆動電力Wf,Wrの供給状態の変化とこの変化にかかった時間とに基づき、後進から前進への急逆切換指令を検知し、電磁弁74への駆動電力Wの供給を遅らせる。これに伴い、切換弁73の弁位置がノーマル位置B1から作動位置B2に変化するのも遅れる。そして、駆動電力Wの供給により切換弁73の弁位置が作動位置B2となると、走行モータ26の容量が後進時に高圧側のメイン油圧管路30Bの圧力に応じて調整されるようになる。
【0062】
〔後進から前進への急逆切換え〕
次に後進から前進への急逆切換えの際の動作について説明する。
【0063】
前進・後進切換レバー装置50の操作レバー50aが後進位置Rpから前進位置Fpに急逆切換操作されると、方向制御弁52の弁位置は、後進時作動位置Rから前進時作動位置Fに切り換わる。これにより、ポンプ用サーボピストン24は後進時とは反対側に移動し、メインポンプ22の斜板25が後進側から前進側に傾転する。つまり、メインポンプ22は吸込み口と吐出し口とを逆転させ、メイン油圧管路30Bから作動油を吸込んでメイン油圧管路30Aに吐出すようになる。
【0064】
コントローラ75は、前進・後進切換レバー装置50の操作レバー50aが後進位置Rpから前進位置Fpに急逆切換操作されると、方向制御弁52に対する駆動電力Wf,Wrの供給状態の変化とこの変化にかかった時間とに基づき、後進から前進への急逆切換指令を検知し、電磁弁74への駆動電力Wの供給停止を遅らせる。これに伴い、切換弁73の弁位置が作動位置B2からノーマル位置B1に復帰するのも遅れる。そして、駆動電力Wの供給停止により切換弁73の弁位置がノーマル位置B1となると、走行モータ26の容量が前進時に高圧側のメイン油圧管路30Aの圧力に応じて調整されるようになる。
【0065】
本実施形態に係る走行用HST回路20によれば次の効果を得られる。
【0066】
走行用HST回路ではフラッシング回路がメインポンプよりも走行モータの近くに設けられているのが一般的なので、本実施形態に係る走行用HST回路20の枝管路72は、メインポンプよりも走行モータの近くに位置した既設のフラッシング回路から分岐した管路となる。これにより、走行用HST回路におけるモータ容量制御回路の配管を簡素化できる。
【0067】
モータ容量制御回路70は、コントローラ75によって前進・後進の急逆切換指令時に電磁弁74の作動を遅らせて、切換弁73の作動を遅らせる。この切換弁73の作動の遅れは、高圧側のメイン油圧管路30Aまたは30Bに生じたブレーキ圧がパイロット圧としてモータ容量制御弁71に付与されるタイミングを遅らせる。ブレーキ圧は時間の経過とともに低下するので、ブレーキ圧がパイロット圧としてモータ容量制御弁71に付与されるタイミングが遅れれば、走行モータ容量の急増、すなわち制動力の増大を抑えられる。したがって、本実施形態に係る走行用HST回路20によれば、前進・後進の急逆切換時のHST車両の急減速を抑えることができ、オペレータに与える不快感を低減できる。また、ポンプ作用時の走行モータ26の容量の急増が抑えられるので、走行モータ26の吸込み側(低圧側)のメイン油圧管路30Aまたは30Bにおけるキャビテーションの発生を抑え、エロージョンや騒音の発生を低減できる。
【0068】
切換弁73は油圧パイロット式であり、この切換弁73へのパイロット圧の付与を電磁弁74により行うようにしたので、切換弁73を電磁操作式とする場合よりも確実に切換弁73の操作力を確保することができるとともに、コンタミナントによる弁体の摺動抵抗の増大や振動による切換弁73の動作不良を生じにくくすることができる。
【0069】
フラッシング回路60における異常な圧力低下により切換弁73に十分なパイロット圧が供給されなくても、切換弁73の弁位置を前進の指令に対応する初期位置、すなわちノーマル位置B1に保持することができ、所望の性能を満足させることができる。
【0070】
ホイールローダ1を用いた作業では、地山を掘削させたホイールローダ1を後進させた後、その後進から前進への急逆切換えを行って、放土先のダンプトラック等に向って走行させる、ということが頻繁に行われる。本実施形態に係る走行用HST回路20は、後進中にフラッシング回路60に異常な圧力低下が生じても、後進から前進に切り換えることができるので、ホイールローダに有効である。
【0071】
なお、前述の実施形態に係る走行用HST回路20はホイールローダ1に設けられているが、これは本発明の走行用HST回路をホイールローダに設けられるものに限定するものではない。本発明の走行用HST回路は転圧機械や農業車両等のHST車両に設けられてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の一実施形態に係る走行用HST回路が設けられるHST車両の一例であるホイールローダの左側面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る走行用HST回路の油圧回路図である。
【符号の説明】
【0073】
1 ホイールローダ
2 運転室
3 作業機
4 リフトアーム
5 バケット
6 リフトアームシリンダ
7 バケットシリンダ
8 ベルクランク
9 前輪
10 後輪
20 走行用HST回路
21 メイン回路
22 メインポンプ
23 ポンプ容量可変機構部
24 ポンプ用サーボピストン
25 斜板
26 走行モータ
27 モータ容量可変機構部
28 モータ用サーボピストン
28a 大受圧部
28b 小受圧部
29 斜軸
30A,30B メイン油圧管路
40 チャージ回路
41 チャージポンプ
42 チャージ油路
42a 幹油路
42b,42c 枝油路
43A,43B チェック弁
44 チャージリリーフ弁
50 前進・後進切換レバー装置
50a 操作レバー
51 循環方向制御回路
52 方向制御弁
53 AS弁
60 フラッシング回路
61 低圧選択弁
62 フラッシングリリーフ弁
63 ドレン回路
64 作動油タンク
70 モータ容量制御回路
71 モータ容量制御弁
72 枝管路
73 切換弁
74 電磁弁
75 コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸込み口と吐出し口を逆転可能な可変容量型油圧ポンプからなるメインポンプに、可変容量型油圧モータからなる走行モータが、1対のメイン油圧管路を介して閉回路接続されたメイン回路と、前記1対のメイン油圧管路のうちの低圧側のメイン油圧管路に作動油を供給するチャージ回路と、前記低圧側のメイン油圧管路の圧油を作動油タンクに戻すフラッシング回路と、前進・後進の切換指令時に、指令された走行方向に係る前記走行モータの容量制御が可能な状態とするモータ容量制御回路とを備えた走行用HSTにおいて、
前記モータ容量制御回路は、前記フラッシング回路から分岐した枝管路を有し、前記フラッシング回路に導入された前記低圧側のメイン油圧管路の圧力を、前記枝管路によりパイロット圧として導入し、前記走行モータの容量の制御を行うよう設定された
ことを特徴とする走行用HST回路。
【請求項2】
請求項1に記載の発明において、
前記走行モータは、この走行モータの容量を可変にする油圧パイロット式の容量可変機構部を有し、
前記フラッシング回路は、前記低圧側のメイン油圧管路から前記フラッシング回路に圧油を導入するための入口を形成する低圧選択弁と、前記入口から導入された圧力が所定圧力以上のときに、前記フラッシング回路の圧油を前記作動油タンクに導く出口を形成するフラッシングリリーフ弁とを有し、
前記枝管路は、前記フラッシングリリーフ弁の上流側から分岐した管路からなり、
前記モータ容量制御回路は、前記容量可変機構部のパイロット圧を制御する油圧パイロット式の制御弁からなるモータ容量制御弁と、前記低圧選択弁により導入された前記低圧側のメイン油圧管路の圧力を、前記枝管路によりパイロット圧として導入して作動し、前記1対のメイン油圧管路のそれぞれの圧力を選択的に前記モータ容量制御弁にパイロット圧として導くことが可能な油圧パイロット式の切換弁とを有する
ことを特徴とする走行用HST回路。
【請求項3】
請求項2に記載の発明において、
前記モータ容量制御回路は、前記枝管路に設けられた電磁弁と、この電磁弁を制御する制御手段とを有し、
前記電磁弁は、前記フラッシングリリーフ弁の上流側の圧力を前記切換弁にパイロット圧として導く状態と導かない状態とを切換可能に設定され、
前記制御手段は、前進・後進の切換指令に対して前記電磁弁が任意のタイミングで作動可能とした
ことを特徴とする走行用HST回路。
【請求項4】
請求項2または3に記載の発明において、
前記切換弁の初期位置は、前進の指令に対応している
ことを特徴とする走行用HST回路。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−38203(P2010−38203A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−199724(P2008−199724)
【出願日】平成20年8月1日(2008.8.1)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】