説明

起動回路

【課題】消費電力を比較的小さくして、確実に起動電流を制御する。
【解決手段】電源電圧Vddが立ち上がると、MOSトランジスタM1が電流を流し、MOSトランジスタM4がオンしてMOSトランジスタM5がオンし、バンドギャップ回路10に起動電流が供給される。バンドギャップ回路10が起動すると、MOSトランジスタM6にバンドギャップ回路10の定電流に応じた電流が流れ、これがMOSトランジスタM7に流れることによって、MOSトランジスタM2がオフして、MOSトランジスタM5がオフする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バンドギャップ回路を起動するための起動回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体集積回路において、温度に依存しない定電流や定電圧を出力するためにバンドギャップ回路が広く用いられている。このバンドギャップ回路では、回路が収束する点として、回路が動作しない点と、所望の動作点の2点が存在する。このため、バンドギャップ回路の解を所望の動作点へ収束させるための起動回路が必要となる。
【0003】
図1に、一般的なバンドギャップ回路と、その起動回路の一例を示す。
【0004】
まず、起動回路について説明する。電源電圧Vddが供給される電源ラインVddには、抵抗R11を介しダイオードD11のアノードが接続され(a点)、ダイオードD11のカソードはグランドに接続されている。また、電源ラインVddには、抵抗R12を介し、NPNトランジスタQ11のコレクタが接続され(b点)、このトランジスタQ11のエミッタは抵抗R13を介しグランドに接続されている。また、トランジスタQ11のベースは、抵抗R11とダイオードD11のアノードの接続点(a点)に接続されている。抵抗R12とトランジスタQ11のコレクタの接続点(b点)には、P型MOSトランジスタM11のゲートが接続され、このMOSトランジスタM11のソースは電源ラインVddに接続されている。さらに、ソースが電源ラインVddに接続されたP型MOSトランジスタM12のドレイン(c点)がトランジスタQ11のエミッタと抵抗R13の接続点に接続されている。
【0005】
次に、バンドギャップ回路10について、説明する。なお、バンドギャップ回路10は、図1において破線で囲んで示してある。ソースが電源ラインVddに接続され、ドレイン、ゲート間が接続された(ダイオード接続された)P型MOSトランジスタM13のドレインは、NPNトランジスタQ12のコレクタに接続され、トランジスタQ12のエミッタはグランドに接続されている。ソースが電源ラインVddに接続されたP型のMOSトランジスタM14のゲートは、MOSトランジスタM13のゲートに接続され、このMOSトランジスタM14のソースは、抵抗R14を介し、NPNトランジスタQ13のコレクタに接続され、このトランジスタQ13のエミッタがグランドに接続されている。また、トランジスタQ13のベースは、MOSトランジスタM14のドレインと抵抗R14の接続点に接続されている。
【0006】
MOSトランジスタM11のドレインがトランジスタQ12にベースに接続されるとともに、抵抗R14とトランジスタQ13のコレクタの接続点に接続されている。また、MOSトランジスタM13,M14のゲートには、MOSトランジスタM12のゲートも共通接続されている。
【0007】
まず、バンドギャップ回路10の動作について、説明する。この回路において、トランジスタQ13のコレクタの電圧(抵抗R13の下側電圧)は、トランジスタQ12のVBEで決定され、抵抗R13の上側電圧はトランジスタQ13のVBEで決定される。従って、トランジスタQ12,Q13のサイズおよび特性が同じであれば、抵抗R14に流れる電流は0となるはずである。このため、バンドギャップ回路では、このトランジスタQ12、Q13のサイズを異ならせる。すなわち、トランジスタQ12のサイズを大きく、トランジスタQ13のサイズを小さくすることで、トランジスタQ12のVBEは小さく、トランジスタQ13のVBEは大きくなる。このようにすると、抵抗R14には、2つのトランジスタQ12,Q13のサイズによるVBEの差分の電圧が印加され、この電圧差に応じた電流が流れることになり、これが電流I1となる。そして、温度によってトランジスタQ12,Q13のVBEは同様に変化するため、抵抗R14に流れる電流I1は変化せず、温度異存のない定電流(バンドギャップ電流)が得られる。
【0008】
一方、システムが立ち上がるときには、電源電圧Vddが立ち上がる。これにより、トランジスタQ11がオンし、b点の電位が下がる。従って、MOSトランジスタM11がオンし、バンドギャップ回路10に起動電流が供給され、トランジスタQ12が電流を流し、電流I1がMOSトランジスタM13,M14に流れる。
【0009】
MOSトランジスタM12は、MOSトランジスタM13とカレントミラーを構成しているため、このMOSトランジスタM12にも、電流I1が流れ、これによって電流I1が抵抗R13に流れ、c点の電位が上昇する。これに伴い、トランジスタQ11のVBEが小さくなり、バンドギャップ回路10の電流I1が所望のバンドギャップ電流となった場合に、トランジスタQ11はオフする。さらに、トランジスタQ11がオフすることによって、MOSトランジスタM11がオフして起動回路が停止する。
【0010】
このようにして、起動時において、MOSトランジスタM11がオンして、起動電流をバンドギャップ回路10に供給し、バンドギャップ回路10が所望のバンドギャップ電流を流すことによって起動回路をオフすることができる。
【0011】
【特許文献1】特開2001−273041号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
図1の回路では、電源Vddの立ち上がり時にMOSトランジスタM11をオンさせるために、b点の電位をMOSトランジスタM11のしきい値電圧以下にする必要がある。b点の電位は、抵抗R12の抵抗値と、トランジスタQ11により供給されるコレクタ電流によって決定される。このため、トランジスタQ11のコレクタ電流を大きくし、MOSトランジスタM11のVgsを大きくしたい。この場合、抵抗R13の抵抗値を小さくしなければならなくなる。
【0013】
一方、抵抗R13を小さくした場合、起動回路をオフさせるために、MOSトランジスタM12から供給される電流を大きくしなければならない。また、MOSトランジスタM12から供給される電流は、起動回路がオフした後も流れ続ける。このため、MOSトランジスタM12からの電流値を増やすことはそれだけ無駄な消費電流が大きくなる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、電源ラインにソースが接続され、ゲートに所定のバイアス電圧が供給されて抵抗として機能するP型の第1MOSトランジスタと、この第1MOSトランジスタのドレインに、ドレインが接続され、ソースがグランドに接続されたN型の第2MOSトランジスタと、電源ラインにソースが接続され、ゲートに所定のバイアス電圧が供給されて抵抗として機能するP型の第3MOSトランジスタと、この第3MOSトランジスタのドレインに、ドレインが接続され、ソースがグランドに接続されたN型の第4MOSトランジスタと、前記第3MOSトランジスタと第4MOSトランジスタの接続点にゲートが接続され、ソースが電源ラインに接続されたP型の第5MOSトランジスタと、バンドギャップ回路に流れる定電流に対応した電流を流す第6MOSトランジスタと、この第6MOSトランジスタにドレインが接続され、ゲートに所定のバイアス電圧が供給され抵抗として機能するN型の第7MOSトランジスタと、を含み、第1MOSトランジスタと第2MOSトランジスタの接続点を前記第4MOSトランジスタのゲートに接続し、前記第6MOSトランジスタと第7MOSトランジスタの接続点を前記第2MOSトランジスタのゲートに接続し、前記第5MOSトランジスタから、前記バンドギャップ回路を起動するための起動電流を出力することを特徴とする。
【0015】
また、前記第1MOSトランジスタと第3MOSトランジスタのゲートには、共通のバイアスラインから同一のバイアス電圧が供給されることが好適である。
【0016】
また、前記第6MOSトランジスタは、ソースが電源ラインに接続され、バンドギャップ回路における定電流を流すMOSトランジスタとカレントミラー接続されたP型MOSトランジスタであることが好適である。
【発明の効果】
【0017】
このように、本発明によれば、起動回路がMOSトランジスタで構成されている。従って、集積化が容易であり、全体としてチップサイズを小さくできる。また、抵抗値の設定も容易となる。また、第2トランジスタをスイッチングすることによって、起動電流を制御できるため、その設定が容易となり、消費電力を小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。
【0019】
実施形態に係る回路を図2に示す。この図2において、トランジスタQ1,Q2、MOSトランジスタM8,M9、抵抗R1からバンドギャップ回路10が構成され、このバンドギャップ回路10は、図1において、トランジスタQ12,Q13、MOSトランジスタM13,M14、抵抗R14から構成されるバンドギャップ回路10と同一である。なお、図2においても、バンドギャップ回路10について、破線で囲んで示してある。
【0020】
また、起動回路における起動電流を出力するMOSトランジスタM5は、図1のMOSトランジスタM11と同様にP型MOSトランジスタであり、ソースが電源ラインVddに接続され、ドレインがトランジスタQ1(図1のQ11に対応するトランジスタ)のベースに接続されている。さらに、MOSトランジスタM6は、図1のMOSトランジスタM12に対応しMOSトランジスタM8,M9(図1のM13、M14に対応するトランジスタ)とゲートが共通接続されており、ソースが電源ラインVddに接続されている。
【0021】
そして、抵抗R11に代えてP型のMOSトランジスタM1、抵抗R12に代えてP型のMOSトランジスタM3が採用されている。MOSトランジスタM1,M3は、そのソースが電源ラインVddに接続され、これらMOSトランジスタM1およびM3のゲートは、所定のバイアス電圧が供給されるバイアスラインBias1に接続されている。
【0022】
また、ダイオードD11に代えてN型のMOSトランジスタM2が採用され、このMOSトランジスタM1のドレインに、MOSトランジスタM2のドレインが接続されている。MOSトランジスタM2のソースはグランドに接続されている。さらに、トランジスタQ11に代えてN型のMOSトランジスタM4が採用され、このMOSトランジスタM4のドレインがMOSトランジスタM3のドレインに接続されている。MOSトランジスタM4のソースは直接グランドに接続されている。また、MOSトランジスタM5のゲートは、MOSトランジスタM3のドレインと、MOSトランジスタM4のドレインの接続点であるb点に接続されている。
【0023】
MOSトランジスタM6のドレインには、N型のMOSトランジスタM7のドレイン(c点)が接続されており、このMOSトランジスタM7のソースは、グランドに接続されている。そして、このc点にMOSトランジスタM2のゲートが接続されている。
【0024】
このように、本実施形態の回路では、起動回路で使用するトランジスタ、抵抗を全てMOSトランジスタで構成している。そして、MOSトランジスタM1,M2のゲートをバイアスラインBias1,MOSトランジスタM7のゲートをバイアスラインBias2により所望の電圧にバイアスして、これらMOSトランジスタM1,M2,M7の抵抗値を設定している。
【0025】
このような回路において、電源電圧がVddが立ち上がったときには、MOSトランジスタM1がBias1によりオンし、これによってMOSトランジスタM4のゲート(a点)はプルアップされ、MOSトランジスタM4はオンする。なお、Bias1は、電源電圧Vddが立ち上がったときに、MOSトランジスタM1,M3がオンする電圧に設定されている。
【0026】
これによって、MOSトランジスタM4のドレイン電流が流れ始め、b点の電位は下がり、MOSトランジスタM5がオンする。MOSトランジスタM5のドレイン電流は、バンドギャップ回路10に供給されこれを起動し、これによってMOSトランジスタM6,M8,M9にバンドギャップ電流I1が流れる。なお、バンドギャップ電流I1は、MOSトランジスタM6と同様に、MOSトランジスタM8にカレントミラー接続される出力トランジスタにより各種回路に出力される。なお、この出力されるバンドギャップ電流を電圧に変換することでバンドギャップ電圧を出力することができる。
【0027】
このようにして、MOSトランジスタM7に電流が流れると、c点の電位が上昇し、MOSトランジスタM2がオンし、a点電位が下がる。そして、a点電位が下がることによって、MOSトランジスタM4,M5がオフし、バンドギャップ回路10への起動電流が停止する。
【0028】
このように、本実施形態の起動回路は、部品点数は、図1の起動回路と同一である。そして、全ての部品がMOSトランジスタで構成されている。MOSトランジスタM1〜M4は、小さな電流を流せばよく、そのサイズを小さくでき、全体としてチップ面積を小さくすることができる。また、MOSトランジスタM7は、電流I1を流したときにMOSトランジスタM2をオンできればよい。従って、MOSトランジスタM7の抵抗値をBias2の電圧によって調整すれば、ここに流れる電流を小さく設定することが可能になる。例えば、MOSトランジスタM6のサイズを小さくし、バンドギャップ電流I1の数分の1に設定することも可能になる。そして、このMOSトランジスタM6の電流値が小さくても、MOSトランジスタM2をオンできれば、MOSトランジスタM5をオフすることができる。このように、MOSトランジスタM2のスイッチングによりバンドギャップ回路10の起動電流のオンオフを制御することができ、確実な制御が可能になる。なお、MOSトランジスタM7を高抵抗にするためには、ゲート長Lを比較的長くすればよい。このため、Bias2の電圧を設定可能な低電圧に設定しておきながら、MOSトランジスタM7の抵抗値を所定のものに設定することができる。また、抵抗として機能するMOSトランジスタM1,M3,M7はバイアス電圧Bias1,2によって、抵抗値を設定することができるため、その精度が比較的低くでき、また抵抗に比べサイズを小さくできる。
【0029】
なお、MOSトランジスタM1,M3のゲート電圧を異なるものに設定することも可能である。バンドギャップ回路10としては、他のタイプのものを採用することもでき、バンドギャップ電流を出力するものでなく、バンドギャップ電圧を出力する回路でもよい。また、バンドギャップ回路10によっては、バンドギャップ電流をN型のトランジスタから取り出すことも可能であり、この場合図3のように回路を構成すればよい。
【0030】
すなわち、図3に示すように、反転出力回路30を設ける。反転出力回路30は、MOSトランジスタM8とベースが共通接続され、ソースが電源ラインVddに接続されたP型MOSトランジスタM30を有している。従って、このMOSトランジスタM30は、MOSトランジスタM8とカレントミラーを構成する。MOSトランジスタM30のドレインには、ソースがグランドに接続されたN型MOSトランジスタM31のドレインが接続されている。このMOSトランジスタM31は、ベース・ドレイン間が短絡されており、そのベースには、ソースがグランドに接続されたN型MOSトランジスタM32のベースが共通接続されている。
【0031】
従って、バンドギャップ回路10の出力電流である電流I1がMOSトランジスタM30、M31、M32に流れ、N型MOSトランジスタM30からバンドギャップ電流I1が取り出される。
【0032】
なお、図3は、反転出力回路30のMOSトランジスタM30をMOSトランジスタM6,M8の間に配置した例であり、MOSトランジスタM30は、MOSトランジスタM8とカレントミラーを構成すれば、どこに配置してもよい。
【0033】
このように、本実施形態の起動回路によれば、バンドギャップ回路10に起動電流を低消費電力で確実に出力することができる。従って、バンドギャップ回路10を搭載する各種の半導体集積回路(IC)に好適に採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】従来のバンドギャップ回路の起動回路の構成を示す図である。
【図2】実施形態に係るバンドギャップ回路の起動回路の構成を示す図である。
【図3】出力電流を反転する構成の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0035】
10 バンドギャップ回路、D11 ダイオード、M1〜M9 MOSトランジスタ、Q1,Q2,Q11〜Q13 トランジスタ、R1,R11〜R14 抵抗。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源ラインにソースが接続され、ゲートに所定のバイアス電圧が供給されて抵抗として機能するP型の第1MOSトランジスタと、
この第1MOSトランジスタのドレインに、ドレインが接続され、ソースがグランドに接続されたN型の第2MOSトランジスタと、
電源ラインにソースが接続され、ゲートに所定のバイアス電圧が供給されて抵抗として機能するP型の第3MOSトランジスタと、
この第3MOSトランジスタのドレインに、ドレインが接続され、ソースがグランドに接続されたN型の第4MOSトランジスタと、
前記第3MOSトランジスタと第4MOSトランジスタの接続点にゲートが接続され、ソースが電源ラインに接続されたP型の第5MOSトランジスタと、
バンドギャップ回路に流れる定電流に対応した電流を流す第6MOSトランジスタと、
この第6MOSトランジスタにドレインが接続され、ゲートに所定のバイアス電圧が供給され抵抗として機能するN型の第7MOSトランジスタと、
を含み、
第1MOSトランジスタと第2MOSトランジスタの接続点を前記第4MOSトランジスタのゲートに接続し、
前記第6MOSトランジスタと第7MOSトランジスタの接続点を前記第2MOSトランジスタのゲートに接続し、前記第5MOSトランジスタから、前記バンドギャップ回路を起動するための起動電流を出力することを特徴とする起動回路。
【請求項2】
請求項1に記載の起動回路において、
前記第1MOSトランジスタと第3MOSトランジスタのゲートには、共通のバイアスラインから同一のバイアス電圧が供給されることを特徴とする起動回路。
【請求項3】
請求項1または2に記載の起動回路において、
前記第6MOSトランジスタは、ソースが電源ラインに接続され、バンドギャップ回路における定電流を流すMOSトランジスタとカレントミラー接続されたP型MOSトランジスタであることを特徴とする起動回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−32148(P2009−32148A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−197239(P2007−197239)
【出願日】平成19年7月30日(2007.7.30)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(506227884)三洋半導体株式会社 (1,155)
【Fターム(参考)】