説明

超小型飛行機のためのアンテナシステム

【課題】超小型飛行機のためのアンテナシステムを提供する。
【解決手段】超小型飛行機の電波高度計によって選択された周波数に依存して異なる方向に電波信号を選択的に放出する巻き付け式アンテナ(たとえば、MAVの一部分のまわりに巻き付けられる)の形態を取る。レーダ高度計は、パルス式または周波数変調連続波(FMCW)方式とすることができる。巻き付け式アンテナは、放射要素のグループを含み、少なくとも、各グループは、平均高さが、隣接したグループの平均高さと異なる。さらに、空間の所望のセクターがアンテナから放出される信号によってカバーすることができるように、グループの平均高さによって、どのグループが最も効率的に信号を放出することになるかが決定される。レーダ高度計の中心周波数を制御して、空間の所望のセクターを放射要素に連続的にカバーさせることができる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
超小型飛行機(MAV:micro air vehicle)は、無人航空機(UAV:unmanned air vehicle)としても言われることがあり、山岳地帯、市街地や限定空間などの複雑なトポロジー中で動作することができる。例として、MAVは、大気の気体粒子の収集、観測、赤外線画像撮影など、様々な目的のために、無線遠隔制御装置を使用して誘導することができる。MAVは、軍隊または警察が、広々とした、なだらかに起伏した、複雑な、そして市街の地域で偵察、警備や目標捕捉行動のために用いることができる。MAVの有効性や可制御性を高めるために、その構造や制御の構成要素は、できるだけ軽くすべきである。軍事作戦で最近配備された、いくつかのMAVは、直径が約48.3cm(約19インチ)で、自重が約6.35kg(約14ポンド)であった。地形または構造物との衝突によって、MAVがその意図された機能をもう果たすことができなくなり、さらに修復ができない程度までMAVを無能にする、または損傷させる可能性がある。
【0002】
現在のMAVは、都市環境や地形障害物から離れた広々とした地域で飛行するように限定されている、というのは、MAVは、近接する危険を検出する能力がないためである。航空機搭載の近接検出装置は、距離および方向の両方に関して、障害物の場所を広く見つけ出すことができるようにすべきである。大型の航空機の場合、航空機搭載の近接検出装置は、セクターカバーアンテナおよびそれに付随するビーム切り替えハードウェアを含む衝突防止レーダユニットの形態を取ることができる。したがって、アンテナは、航空機の所望のセクター上に配置される複数のアンテナの形態を取る。これらのタイプの衝突防止レーダユニットを使用する1つの主な欠点は、これらが大きく重い、その両方であることである。このタイプのセンサには、MAVが搭載するのに十分軽いと分かっているものはない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明は、一般に、超小型飛行機(MAV)のためのアンテナに関する。アンテナは、従来のレーダ高度計とともに動作し、レーダ高度計は、それの中心周波数を選択的に制御するための制御手段を有した、パルス式または周波数変調連続波(FMCW:frequency modulated continuous wave)式のレーダ高度計とすることができる。アンテナは、送信される信号の周波数に依存して異なる方向に選択的に放射する巻き付け式(wrap-around)アンテナ(たとえば、MAVの一部分のまわりに巻き付けられる)の形態を取ることができる。アンテナは、一実施形態によれば、グループの形で配列され高さが異なり異なる中心周波数で効率的に動作する放射要素を含む。決定論的方法によってレーダ高度計の中心周波数を制御することによって、アンテナ上の放射要素の選択されたグループがより効率的に放射することになり、そしてこの「効率的グループ」は、アンテナ全体にわたって制御可能に移動され、そのようにして所望の放射線放出の方向を実効的に変化させることができる。
【0004】
本発明の一態様では、航空機のためのレーダ測距システムは、レーダ高度計であって、それが出力する信号の中心周波数を選択的に制御するように動作可能である、レーダ高度計と、第1の端部、第2の端部、および第1の端部から第2の端部まで延在した細長い部分を有した細長いアンテナであって、細長い部分は、アンテナが超小型飛行機の一部分のまわりに巻き付けられることができるのに十分な長さであり、したがって第1の端部が第2の端部に近接して配置される、細長いアンテナと、細長いアンテナに結合された複数の放射要素であって、放射要素は、少なくとも2つのグループの形で配列され、それぞれのグループは、アンテナの長さ方向に沿って配列されるときに隣接したグループから離隔される、複数の放射要素と、を含み、各グループは、平均高さが、すべての他のグループの平均高さと少なくともわずかに異なり、放射要素は、レーダ高度計と信号を交信し、中心周波数の変化に応答して、超小型飛行機に対して放射要素から放出される電波信号の超小型飛行機上の基準系に対する信号カバー領域を選択的に変化させる。
【0005】
本発明の他の態様では、航空機のためのレーダ測距システムは、レーダ高度計であって、それが出力する信号の中心周波数を選択的に制御するように動作可能である、レーダ高度計と、第1の端部、第2の端部、および第1の端部から第2の端部まで延在した細長い部分を有した細長いアンテナであって、細長い部分は、アンテナが超小型飛行機の一部分のまわりに巻き付けられることができるのに十分な長さであり、したがって第1の端部が第2の端部に近接して配置される、細長いアンテナと、アンテナの長さ方向に沿って高さによって配列された複数の放射要素であって、放射要素は、レーダ高度計と信号を交信し、中心周波数の変化に応答して、放射要素の所望のグループを選択的に動作させ、それによって超小型飛行機の基準系に対して信号カバー領域を生成し、信号カバー領域は、中心周波数に対応した電波周波数でアンテナから放出される電波信号を含む、複数の放射要素と、を含む。
【0006】
また本発明の他の態様では、超小型飛行機を動作させるための方法は、(1)超小型飛行機の電波高度計のために所望の周波数を選択するステップと、(2)所望の周波数を制御可能に変化させて、第1のグループの放射要素から第2のグループの放射要素に、放出される電波信号を移動させるステップと、(3)物体との超小型飛行機の近接を決定するために、放出される電波信号を用いて超小型飛行機に対して空間のセクターをカバーするステップと、を含む。
【0007】
本発明の好ましい、および代替えの実施形態は、以下の図面を参照して以下に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の例示の実施形態による選択的に制御される巻き付け式(wrap-around)アンテナを有した超小型飛行機の正面図である。
【図2】本発明の例示の実施形態による、巻き付けられていない構成での図1のアンテナの側面図である。
【図3】巻き付けられた構成での図1のアンテナの上面図である。
【図4】放射要素のグループ間での相対的な高さの差をよりよく示す、図1のアンテナの一部分の図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の説明では、ある具体的な細部が、本発明の様々な実施形態について完全な理解を得るために、述べられる。しかし、当業者は、本発明がこれらの細部を用いなくとも、またはこれらの細部を様々に組み合わせて実施することができることを理解されよう。他の例では、アンテナ、レーダ放出装置および超小型飛行機に関するよく知られた構造および方法、ならびにそれらを製作する、および/または動作させる方法が、本発明の実施形態の説明を不必要に分かりにくくすることを避けるために、示されない、または詳細に説明されないことがある。
【0010】
以下の説明は、全体的に超小型飛行機(MAV:micro air vehicle)のためのアンテナを対象としている。アンテナは、従来のレーダ高度計とともに動作し、レーダ高度計は、それが出力する信号の中心周波数を選択的に制御するための制御手段を有した、パルス式または周波数変調連続波(FMCW)式のレーダ高度計とすることができる。アンテナは、それが送信する信号の周波数に依存して異なる方向に選択的に放射する巻き付け式アンテナ(たとえば、MAVの一部分のまわりに巻き付けられる)の形態を取ることができる。具体的にそして一実施形態では、アンテナ上の放射要素の選択されたグループまたは複数のグループが最も効率的に放射するように、決定論的方法でレーダ高度計の中心周波数を制御することができ、この「効率的グループ」は、アンテナ全体にわたって第1の方向から第2の方向に移動され、それによって所望の放射線放出の方向を実効的に変化させることができる。
【0011】
図1に、本体102、および本発明の一実施形態によるアンテナ104を有したダクトファン駆動のMAV100を示す。本体102は、ファンカウリングとして動作し、推進装置106および制御装置108に結合される。MAV100は、垂直に離陸し、本体102から伸びた可撓性のある脚110を使用して着陸する能力を有する。レーダ高度計(図示せず)は、パルス式またはFMCW式のレーダ高度計とすることができ、本発明の一実施形態では制御装置108内に配置される。レーダ高度計は、それの中心周波数を選択的に制御するための制御手段(図示せず)を含む。一実施形態では、中心周波数は、電磁スペクトル上の電波帯域内にある。アンテナ104は、以下でもっと詳細に説明するように、本体102のまわりに巻き付けられ、レーダ高度計が送信する中心周波数と協調する放射要素112を含む。
【0012】
図2に、巻き付け材116上にグループ114の形で放射要素112を配置することによって、アンテナ104の異なる部分から信号を選択的に放出するまたは走査するように動作するアンテナ104を示す。アンテナ104の1つの目的は、物体に対する方向を検出し、MAV100上の基準系に対する物体のおおよその距離を決定することができる大まかな近接センサとして動作することである。一実施形態では、放射要素112は、プリントされた銅パターンまたは同等の他のパターンの形態を取ることができる。同様に、巻き付け材116は、FR4ファイバーガラス・エポキシまたは同等の他の材料など、難燃剤ファイバーガラス・エポキシと結合されたテフロン銅材料の形態を取ることができる。アンテナ104は、アンテナ104の縁部を貫通して本体102中にリベットを配置する、接着剤を用いる、またはその両方を組み合わせるなど、ただしこれらに限定されないが、様々な方法で本体102に取り付けることができる。
【0013】
放射要素112の各グループ114は、同じまたはほぼ同じ周波数で放射する。さらに、各グループ114は、ギャップまたはスペース118によって隣接したグループから離隔され、このスペーシング118は、レーダ高度計の中心周波数と組み合わされて、どの全体的な方向にアンテナ104が放射することになるかを決定する。放射要素112のグループ114の間のスペース118は、アンテナ104の外側表面122(図3)に対して狭い範囲の角度または角度セクター120(図3)にアンテナ104からの放射線を限定させるように、選択的に決定することができる。さらにそして有利にも、放射要素112のグループ114間のスペーシング118は、放射要素の隣接したグループ間での電波漏れを減少させる、またはなくすことさえするように、選択することができる。
【0014】
さらに図2を参照すると、放射要素112は、3つの放射要素112が1つのグループ114を構成するように配列される。しかし、もっと多くまたはより少なく放射要素112を1つのグループ114中に配列することができることを理解されたい。各グループ114内では、放射要素112は、高さ124が同じ、または実質的に同じである。さらにそして一時的に図4を参照すると、第1のグループ128aの平均高さ126aは、隣接したグループ128bの平均高さ126bと異なる(たとえば、より高い、またはより短い)。異なる高さの放射要素112は、異なる周波数で放射する。一実施形態では、放射要素112の高さ124は、所望の周波数の2分の1波長に等しい、またはほぼ等しいように、選択することができる。したがって、アンテナ104の長さ方向に沿って、放射要素112の高さは、個別に、または離隔されたグループ114内で配置されたときにいずれでも、アンテナ104のレーダ放出方向またはセクター120(図3)がレーダ高度計の中心周波数に依存するように、徐々に減らすことができる。したがって、レーダ高度計の中心周波数は、アンテナ104上の放射要素112の選択されたグループまたは複数のグループ114が、異なる高さ124の他のグループ114より効率的に放出するように、決定論的方法で制御することができる。そして、「効率的グループ」114は、アンテナ104の全体にわたって第1の方向から第2の方向に、またはその逆に、矢印130によって示したように、制御可能に移動させることができ、このようにして所望の放射線放出の方向を実効的に変化させる。
【0015】
代替えとして述べると、アンテナ104の縦方向130で(たとえば、アンテナ104がMAV100のまわりに巻き付けられたとき、そのまわりの周方向で)放射要素112の高さを徐々に減らすと、放射線の方向120は、周波数に依存することになる。その結果として、放射要素112の例示の実施形態だけでなく、他の示していない実施形態も、巻き付け材116上に配列されたとき、有利にも、複雑な指向性アンテナ、複雑な周波数切り替え装置、またはその両方を使用することなく、レーダ高度計の中心周波数を制御して、アンテナ104から放出される信号のセクターカバー領域120を選択的に制御することが可能になる。
【0016】
代替え実施形態では、周波数選択トラップ(図示せず)をアンテナ104に結合して、放射要素112が、制御の間、レーダ高度計の選択された中心周波数に基づき最も効率的に動作するように、制御性を高める、または制御を追加することができる。トラップは、周波数選択共振回路の形態を取ることができる。放射要素のグループの長さの変化が、固有周波数が選択される放射要素をもたらすことになるが、放射要素の隣接したグループの長さの差が小さいとき、アンテナの隣接したグループが依然としてわずかに放射することがある。これらの要素からの放射線は、望ましくなく、アンテナから放射されるエネルギーの形状およびエネルギーが放射される方向の両方をゆがめる。放射要素のグループのための給電点と追加の周波数選択共振回路の間に高度に周波数を選択する共振回路を配置することによって、放射要素のグループは、放射要素のそのグループの好ましい放射周波数に同調され、異なる周波数に同調される他の放射要素は、より小さいエネルギーしか受け取らない。したがって、隣接した要素からの不要な放射線が抑制され、アンテナから放射されるエネルギーは、放射要素の1つだけのグループから発されることになり、それによって放射エネルギーの形状および方向の両方が保存される。
【0017】
他の実施形態では、電波周波数(RF)スイッチ(図示せず)を使用して放射要素112を置き換えて、ビーム方向が制御可能なアンテナを形成することができる。そのような実施形態では、アンテナ112は、受動デバイスから、制御信号が必要な複雑な能動アンテナに変換されることになり、おそらく、MAV100にとって全重量の増加になる。
【0018】
有利にも、アンテナ104は、正確な方向情報を犠牲にして方向性をカバーするために使用される従来の指向性アンテナおよびそれらに付随するスイッチをなくすことができる。グループ114の形で放射要素112を配列し、互いに離隔されたグループ間に選択的にスペーシング118を配列することによって、アンテナの分解能を高めるまたは増加させることができ、一方、1つのグループから隣接したグループへの放射線漏れ量を減少させる、またはなくすことさえできる。
【0019】
本発明の好ましい実施形態が、上記のように、示され説明されたが、多くの変更が、本発明の精神および範囲を逸脱せずに実施することができる。したがって、本発明の範囲は、好ましい実施形態の開示によって限定されない。その代わりに、本発明は、以下のクレームを参照して完全に決定すべきである。
【0020】
独占的な権利または恩恵を求める本発明の実施形態は、以下のように定義される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機のためのレーダ測距システムであって、
レーダ高度計であって、それが出力する信号の中心周波数を選択的に制御するように動作可能である、レーダ高度計と、
第1の端部、第2の端部、および前記第1の端部から前記第2の端部に延在した細長い部分を有した細長いアンテナであって、前記細長い部分は、前記アンテナが超小型飛行機の一部分のまわりに巻き付けられることができるのに十分な長さであり、したがって前記第1の端部が前記第2の端部に近接して配置される、細長いアンテナと、
前記細長いアンテナに結合された複数の放射要素であって、前記放射要素は、少なくとも2つのグループの形で配列され、それぞれのグループは、前記アンテナの長さ方向に沿って配列されるときに隣接したグループから離隔される、複数の放射要素と、を含み、
各グループは、平均高さが、他のグループの平均高さと少なくともわずかに異なり、
前記放射要素は、前記レーダ高度計と信号を交信し、前記中心周波数の変化に応答して、前記超小型飛行機に対して前記放射要素から放出される電波信号の前記超小型飛行機上の基準系に対する信号カバー領域を選択的に変化させる、レーダ測距システム。
【請求項2】
航空機のためのレーダ測距システムであって、
レーダ高度計であって、それが出力する信号の中心周波数を選択的に制御するように動作可能である、レーダ高度計と、
第1の端部、第2の端部、および前記第1の端部から前記第2の端部に延在した細長い部分を有した細長いアンテナであって、前記細長い部分は、前記アンテナが超小型飛行機の一部分のまわりに巻き付けられることができるのに十分な長さであり、したがって前記第1の端部が前記第2の端部に近接して配置される、細長いアンテナと、
前記アンテナの長さ方向に沿って高さによって配列された複数の放射要素であって、前記放射要素は、前記レーダ高度計と信号を交信し、前記中心周波数の変化に応答して、放射要素の所望のグループを選択的に動作させ、それによって前記超小型飛行機の基準系に対する信号カバー領域を提供し、前記信号カバー領域は、前記中心周波数に対応した電波周波数で前記アンテナから放出される電波信号を含む、複数の放射要素と、を含む、レーダ測距システム。
【請求項3】
超小型飛行機を動作させるための方法であって、
前記超小型飛行機の電波高度計が出力する電波信号のために、所望の周波数を選択するステップと、
前記所望の周波数を制御可能に変化させて、第1のグループの放射要素から第2のグループの放射要素に、放出される電波信号を移動させるステップと、
物体との前記超小型飛行機の近接を決定するために、前記放出される電波信号を用いて前記超小型飛行機に対する空間のセクターをカバーするステップと、を含む、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−282014(P2009−282014A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−93134(P2009−93134)
【出願日】平成21年4月7日(2009.4.7)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】