説明

超音波センサー

【課題】超音波を良好に受発信できる超音波センサーを提供すること。
【解決手段】開口部211を有するセンサーアレイ基板2と、センサーアレイ基板2上に設けられて、開口部211を閉塞する支持膜3と、支持膜3の厚み方向から見る平面視において、開口部211の内側領域に設けられ、支持膜3上に形成される圧電体と、平面視において、少なくとも開口部211が形成される領域において、支持膜3との間で、外部空間から密閉される第1空間S1を形成するとともに、開口部211に対向して、手指に接触可能な接触部522を備える第1樹脂部52と、第1空間S1に連通し、外部空間から密閉される第2空間S2を形成する第2樹脂部53と、第1空間S1及び第2空間S2に充填される超音波伝達媒体6と、を備える。第2樹脂部53の少なくとも一部には、支持膜3の膜厚方向の剛性よりも小さい剛性の可撓部532が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波センサーに関し、特に生体に対して超音波を受発信する超音波センサーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、超音波を受発信する超音波トランスデューサーを用いて、検査対象の位置や状態などを検出する超音波センサーが知られている(例えば、特許文献1参照)。
この特許文献1には、超音波トランスデューサーを備える超音波出力部と、超音波出力部上に設けられる音響インピーダンス整合層とで構成される液体検知ユニット(超音波センサー)が開示されている。この液体検知ユニットでは、超音波出力部の一面側の一部に超音波受発信面が形成されている。また、音響インピーダンス整合層は、超音波出力部の一面側に形成され、超音波出力部と接する面と反対側に、超音波を出力する出力面を有している。この出力面には、流動性結合剤保持凹部が形成され、液体検知ユニットの出力面を容器に接触させる際、流動性結合材保持凹部に流動性結合剤を充填して、出力面を容器に接触させる。
また、超音波出力部の一面側に筒状の凹部形成用部材を設け、この凹部形成用部材の内部に音響インピーダンス層を充填することで、流動性結合剤保持凹部を形成し、出力面を容器に接触させる際、流動性結合材保持凹部に流動性結合剤を充填する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−25179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、超音波トランスデューサーを用いて生体の状態を検出する場合には、特許文献1に記載の液体ユニットの出力面を生体に接触させて、超音波を受発信することが考えられる。生体の状態を良好に検出するには、出力面を生体に密着させることが好ましい。
しかしながら、上述した特許文献1では、出力面には、流動性結合剤保持凹部が形成されており、この流動性結合剤保持凹部に流動性結合剤を充填して生体と接触させる。この場合、流動性結合剤が流動性結合剤保持凹部から流れ出ると、生体と出力面とを密着させることができなかったり、生体と出力面との間に気泡が生じ、気泡により超音波が反射されて正しい検出処理を行えないという問題がある。そこで、凹部を設けず、出力面を平坦にし、生体を出力面に押し付けて密着させることが考えられる。しかしながら、この場合には、生体と出力面とが密着するものの、出力面が内側に撓み、音響インピーダンス層に隣接して設けられた超音波トランスデューサーの超音波受発信面も変形してしまう。
また、筒状の凹部形成用部材を超音波出力部の超音波受発信面が設けられる一面側に形成し、凹部形成用部材の端部に出力面を形成して凹部形成用部材の内部を密閉し、かつこの密閉された凹部形成用部材の内部に液体の音響インピーダンス層を設ける構成も考えられる。しかし、この場合でも出力面に生体を密着させると、出力面の撓みにより液体の音響インピーダンス層の内圧が高くなり、この内圧により超音波受発信面も変形する。
このように、超音波トランスデューサーが変形すると、超音波受発信面の振動の変位量が小さくなり、超音波を良好に受発信できないという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、超音波を良好に受発信できる超音波センサーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の超音波センサーは、開口部を有する支持体と、前記支持体上に設けられて、前記開口部を閉塞する支持膜と、前記支持膜の厚み方向から見る平面視において、前記開口部の内側領域に設けられ、前記支持膜に下部電極、圧電膜、及び上部電極を順に積層して形成される圧電体と、前記平面視において、少なくとも前記開口部が形成される領域において、前記支持膜との間で、外部空間から密閉される第1空間を形成するとともに、前記開口部に対向して、検査対象に当接可能な当接部を備える第1樹脂材と、前記第1空間に連通し、外部空間から密閉される第2空間を形成する第2樹脂材と、前記第1空間及び前記第2空間に充填される超音波伝達媒体と、を備え、前記第2樹脂材の少なくとも一部には、前記支持膜の膜厚方向の剛性よりも小さい剛性の可撓部が設けられることを特徴とする。
【0007】
本発明では、支持膜の少なくとも開口部を閉塞する領域と第1樹脂材との間で第1空間が形成され、この第1空間には、超音波伝達媒体が充填されている。この超音波伝達媒体としては、例えば、超音波を効率よく伝達させるための水や生理食塩水等が用いることができ、超音波を減衰させることなく良好に伝達できる。また、第1樹脂材の開口部に対向する領域には当接部が設けられ、この当接部に検査対象が密着することで、支持膜の振動により発生する超音波を検査対象に伝達させ、検査対象で反射される超音波を支持膜に伝達させることができる。
ここで、上述のように、検査対象を第1樹脂材の当接部に接触させると、当接部が撓み、第1空間内の内圧が高くなる。ところが、本発明では、第2樹脂材により、第1空間と連通する第2空間が設けられ、この第2樹脂材には、支持膜よりも剛性が小さい可撓部が設けられている。このため、第1空間内の内圧が高くなった場合でも、可撓部が外部空間側に膨出し、第1空間内の超音波伝達媒体が第2空間に流れる。
従って、検査対象が当接部に密着され、第1空間内の内圧が高くなった場合でも、支持膜の変形を抑制できる。したがって、圧電体に電圧を印加して支持膜を振動させる場合や、超音波を支持膜で受信して振動させる場合に、支持膜の振動が減衰せず、超音波を良好に受発信できる。
【0008】
本発明の超音波センサーにおいて、前記支持膜は、前記支持体の一面側を覆い、前記第1樹脂材は、前記支持膜に対して開口するとともに、この開口端が前記支持膜に接続されることで前記第1空間を形成する第1凹部を有し、前記第2樹脂材は、前記支持膜に対して開口するとともに、この開口端が前記支持膜に接続されることで前記第2空間を形成する第2凹部を有し、前記第1樹脂材及び前記第2樹脂材は、一体的に形成されることが好ましい。
【0009】
本発明では、第1樹脂材及び第2樹脂材が一体的に形成されているので、同一の材質の樹脂材を用いることができ、製造コストを低減できる。また、第1樹脂材の第1凹部及び第2樹脂材の第2凹部の開口端を支持膜で閉塞する工程のみで、第1空間及び第2空間を容易に形成でき、製造工程を容易にできる。
【0010】
本発明の超音波センサーにおいて、前記支持体の開口部は、前記支持体の厚み方向に貫通して形成され、前記支持膜は、前記支持体の一面側を覆い、前記第1樹脂材は、前記支持膜に対して開口するとともに、この開口端が前記支持体の一面側と反対側の他面側に接続されることで前記第1空間を形成する第1凹部を有し、前記第2樹脂材は、前記支持膜に対して開口するとともに、この開口端が前記支持体の他面側に接続されることで前記第2空間を形成する第2凹部を有することが好ましい。
【0011】
ところで、各凹部の開口端が支持体の一面側を覆う支持膜に接続されている場合において、検査対象を支持体の開口部に対向する第1樹脂材の当接部に対して強く密着させると、当接部が支持膜に接触し、支持膜に設けられた圧電体に接触するおそれがある。これにより、支持膜や圧電体を破損することがある。
本発明では、第1樹脂材の第1凹部及び第2樹脂材の第2凹部の開口端は、支持膜が覆っていない側の支持体の他面側に接続されている。このため、第1空間は、第1凹部の内部に加えて、開口部の内側領域も含んで形成される。そして、検査対象が、第1樹脂材の当接部に対して強く密着し、当接部が押圧されて支持膜側に大きく撓んだ場合、当接部が支持体に接触することとなる。すなわち、当接部が支持膜や圧電体に接触することがなく、支持膜や圧電体が破損することを防止できる。
【0012】
本発明の超音波センサーにおいて、前記可撓部の変位を検出する変位検出手段と、前記変位検出手段により前記可撓部の変位を検出すると、前記圧電体への電圧印加処理、または、前記圧電体から出力される信号の検出処理のいずれか一方を実施する超音波発信手段とを備えることが好ましい。
【0013】
本発明では、可撓部の変位を検出する変位検出手段を備えている。このため、変位検出手段が第2樹脂材の可撓部の変位を検出すると、検査対象が当接部に当接したことを検出できる。したがって、変位検出手段により、検査対象の当接を検出した後、超音波発信手段により超音波の発信を行う電圧印加処理を実施することで、検査対象に対して確実に超音波を到達させることができる。
【0014】
本発明の超音波センサーにおいて、前記変位検出手段は、前記可撓部の変位量を検出し、当該超音波センサーは、前記可撓部の変位量が所定の閾値の範囲内であるか否かを判定する判定部を備え、前記超音波発信手段は、前記判定部により前記可撓部の変位量が所定の閾値の範囲内であると判定されると、前記電圧印加処理、または前記検出処理のいずれか一方を実施することが好ましい。
【0015】
ところで、検査対象が第1樹脂材の当接部に対して強く当接すると、圧電体が設けられた支持膜が大きく撓むおそれがある。このような状態で超音波を検査対象に発信しても検査対象で反射された超音波が支持膜に良好に伝達されず、正確な検出処理が実施できないおそれがある。
本発明では、変位検出手段は、可撓部の変位量を検出し、判定部は、この変位量が所定の閾値の範囲内であるか否かを判定する。そして、超音波発信手段は、判定部により変位量が所定の閾値の範囲内であると判定された場合に、超音波の発信を行う電圧印加処理または検出処理のいずれか一方を実施する。すなわち、変位量が所定の閾値の範囲外である場合に、超音波発信手段は、電圧印加処理及び検出処理を実施せず、変位量が所定の閾値の範囲内である場合にのみ、電圧印加処理を実施でき、正確な検出処理を実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態に係る生体検査装置の外観を示す外観図。
【図2】前記第1実施形態に係る前記生体検査装置が人体に装着されている状態を示す図。
【図3】前記第1実施形態に係る前記生体検査装置を模式的に示す断面図。
【図4】前記第1実施形態に係る超音波トランスデューサーを示す断面図。
【図5】前記第1実施形態に係る超音波トランスデューサーの配置レイアウトを示す模式図。
【図6】前記第1実施形態に係る前記生体検査装置の作用を模式的に示す断面図。
【図7】本発明の第2実施形態に係る生体検査装置の作用を模式的に示す断面図。
【図8】前記第2実施形態に係る前記生体検査装置の変形例の作用を模式的に示す断面図。
【図9】本発明の第3実施形態に係る生体検査装置のブロック図。
【図10】本発明の第4実施形態に係る生体検査装置の作用を模式的に示す断面図。
【図11】前記第4実施形態に係る生体検査装置のブロック図。
【図12】前記第4実施形態に係る生体検査装置のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1実施形態]
以下、本発明に係る第1実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、第1実施形態に係る超音波センサーである生体検査装置1の外観を示す外観図であり、図2は、生体検査装置1が手指に装着されている状態を示す図である。図3は、生体検査装置1に組み込まれる超音波受発信部10を模式的に示す断面図である。なお、図3では、図示の都合上、バンド200の図示を省略している。
【0018】
[生体検査装置の構成]
本実施形態の生体検査装置1は、図1、2に示すように、人体の手指にバンド200を用いて装着される装置である。この生体検査装置1は、装置本体100と、装置本体100を手指に装着するためのバンド200とを備えており、装置本体100には、超音波受発信部10と、超音波受発信部10を制御して、生体検査を実施する制御部(図示せず)と、当該生体検査装置1を操作するための入力ボタンや検査結果を表示する表示パネルが設けられるフロントパネル20と、を備えている。
そして、この生体検査装置1では、手指に対して超音波を発信するとともに、例えば手指内の血管などの生体構成物で反射された超音波を受信し、例えば脈拍や血圧などの血流状態の検査、その他、生体の状態を検査する。
なお、本実施形態では、生体検査装置1として、人体の手指に装着する装置を一例として説明するが、これに限定されるものではなく、例えば手首、足首、足指等の他の部分に装着してもよく、例えばバンド200などの装着器具が設けられず、検査者が超音波受発信部10を生体に押し付けて、例えば生体の内蔵状態や胎児状態を超音波により検査する装置などであってもよい。さらには、生体を対象としたものに限られず、検査対象の内部または表面部を超音波により検査するいかなる装置に設けられてもよい。
【0019】
超音波受発信部10は、生体検査装置1を手指に装着された際に、手指に当接する一面側に設けられており、図1に示すように、後述する当接部としての接触部522及び可撓部532を備えている。そして、バンド200により装置本体100を手指に圧接させることで、例えば検査者が超音波受発信部10を押し付ける操作などすることなく、容易に、接触部522と手指とを密着させることが可能となり、生体と超音波受発信部10との間で超音波を伝達させることが可能となる。
【0020】
制御部は、超音波受発信部10やフロントパネル20の各構成に電気的に接続され、これらの動作を制御する。具体的には、制御部は、超音波受発信部10での動作を、超音波発信モードおよび超音波受信モードのいずれかに切り替える制御を実施し、超音波発信モードにおいて超音波を発信させ、超音波受信モードにおいて超音波を受信させる制御をする。また、超音波受信モードにおいて、超音波受発信部10から出力される検出信号に基づいて、脈拍や血圧などの血流状態を計測する。
また、制御部は、フロントパネル20に設けられる入力ボタンから入力される操作信号に基づいて、例えば検査の開始、終了、表示パネルへの検査結果の表示制御などをも実施する。
【0021】
[超音波受発信部の構成]
生体検査装置1の超音波受発信部10は、図3に示すように、支持体としてのセンサーアレイ基板2と、センサーアレイ基板2に積層される支持膜3と、支持膜3に配置され、超音波の受発信を行う複数の超音波トランスデューサー4と、支持膜3を覆って支持膜3との間で空間Sを形成する樹脂材5と、空間Sに充填される超音波伝達媒体6とで概略構成される。なお、超音波トランスデューサー4の構成については、後述する。
【0022】
センサーアレイ基板2は、複数の超音波トランスデューサー4が配置される領域である第1支持部21と、第1支持部21の外周部に隣接する第2支持部22とで構成され、例えば単結晶シリコン(Si)などの半導体形成素材により形成される。また、センサーアレイ基板2には、後述する超音波トランスデューサー4の形成位置に対応し、センサーアレイ基板2の基板面に対して直交する方向から当該センサーアレイ基板2を見た平面視(センサー平面視)で略円形となる開口部211が形成されている。なお、この開口部211の半径aとして、例えば50μmに形成されている。
【0023】
また、センサーアレイ基板2上には、支持膜3が一様の厚み寸法で形成される。これにより、開口部211は、支持膜3により閉塞される。支持膜3の厚み寸法hとして、例えば2μmに形成されている。また、以降の説明において、支持膜3のうち、開口部211を閉塞する領域をダイアフラム30と称する。
具体的には、この支持膜3は、センサーアレイ基板2上に形成されるSiO層と、SiO層上に形成されるZrO層とを備えた二層構造により形成されている。このような支持膜3は、例えば、Siにより形成されるセンサーアレイ基板2を熱酸化することでSiO層を形成した後、Zr層を成膜し、Zr層を熱酸化してZrO層とすることで形成される。
また、支持膜3は、SiO層とZrO層とを備えた二層構造であるが、本実施形態での以下の演算では、支持膜3のヤング率Eとしては、支持膜3の二層を合わせて、約70GPaとする。また、上述したように、開口部211の半径aは、50μmであるため、ダイアフラム30の半径aも同様に、50μmであり、面積は7.85×10−3(mm)となる。この場合、ダイアフラム30の曲げ剛性Dは、ポアソン比νを0.3として、以下の式(1)から算出すると、5.13×10−8(Pa・m)となる。
なお、本実施形態では、この開口部211として、ダイアフラム30が撓む際の応力バランスが良好な円形に形成される例を示すが、例えば矩形状や楕円形状に形成される形状としてもよい。
【0024】
【数1】


D:曲げ剛性(Pa・m)、E:ヤング率(Pa)、h:厚さ寸法(m)、ν:ポアソン比
【0025】
そして、曲げ剛性Dに基づいて、開口部211を閉塞するダイアフラム30の最大撓み量ωmaxは、以下の式(2)から算出すると、1.9×10−12×q(m)となる。
【0026】
【数2】


ωmax:最大撓み量(m)、q:単位面積当たりの荷重(Pa)、a:開口部、可撓部の半径(m)
【0027】
樹脂材5は、センサーアレイ基板2上の支持膜3の外周縁に密着して、センサーアレイ基板2を囲んで形成され、センサーアレイ基板2との間で外部空間から密閉される空間Sを形成する。そして、空間Sには、超音波伝達媒体6が充填されている。この樹脂材5としては、例えば、シリコーンゴムにより形成されている。
より具体的には、樹脂材5は、空間Sを第1空間S1及び第2空間S2に区画するとともに、各空間S1,S2を連通する連通孔511が形成された区画部51と、区画部51及び支持膜3とともに、第1支持部21上に第1空間S1を形成する第1樹脂部52と、区画部51及び支持膜3とともに、第2支持部22上に第2空間S2を形成する第2樹脂部53とを備える。
【0028】
第1樹脂部52は、センサーアレイ基板2の第1支持部21の外周縁上に立設される第1樹脂壁部521と、第1支持部21に対向し、装置本体100の一面側に臨む接触部522とを備える。ここで、接触部522は、第1樹脂壁部521の支持膜3から離れる側の端部から、区画部51の支持膜3から離れる側の端部に亘って、形成されている。すなわち、これらの第1樹脂壁部521、接触部522、及び区画部51は、本発明の第1樹脂材を構成し、第1樹脂壁部521、接触部522、及び区画部51で形成される部分は、本発明の第1凹部である。また、第1樹脂壁部521、接触部522、及び区画部51は、センサーアレイ基板2上に形成される支持膜3との間に、外部空間から密閉された第1空間S1を形成している。
【0029】
第2樹脂部53は、支持膜3上で、第1支持部21の面外方向に設けられる第2支持部22の外周縁に沿って立設される第2樹脂壁部531と、第2支持部21に対向し、装置本体100の一面側に臨む可撓部532とを備える。ここで、可撓部532は、第2樹脂壁部531の支持膜3から離れる側の端部から、区画部51の支持膜3から離れる側の端部に亘って、形成されている。すなわち、これらの第2樹脂壁部531、可撓部532、及び区画部51は、本発明の第2樹脂材を構成し、第2樹脂壁部531、可撓部532、及び区画部51で形成される部分は、本発明の第2凹部である。また、第2樹脂壁部531、可撓部532、及び区画部51は、センサーアレイ基板2上に形成される支持膜3との間に、外部空間から密閉された第2空間S2を形成している。
【0030】
区画部51は、上述したように、空間Sを第1空間S1及び第2空間S2に区画する部分であり、支持膜3上で、センサー平面視において、第1支持部21と、第2支持部22との境界部に沿って形成されている。また、この区画部51に形成される連通孔511は、図3に示すように、支持膜3と区画部51との間に形成されていたが、区画部51を貫通させて形成してもよい。また、連通孔511が形成される数についても、第1空間S1及び第2空間S2を連通する複数の連通孔511が形成される構成であってもよく、例えば、区画部51の壁面方向(図3において紙面に直交する方向)に沿って長手状となる1つの連通孔511が形成される構成であってもよい。
【0031】
上述したような樹脂材5は、第1樹脂壁部521及び第2樹脂壁部531の壁厚み寸法Tは、例えば1mmに形成され、接触部522及び可撓部532の厚み寸法hも同様に、1mmに形成されている。また、樹脂材5が支持膜3を覆う高さ寸法H(第1樹脂壁部521、第2樹脂壁部531、及び区画部51の支持膜3からの高さ寸法H)は、2mmである。また、センサー平面視において、接触部522のサイズは、3mm×3mmに形成され、可撓部532のサイズは、3mm×2mmに形成される。すなわち、可撓部532の面積は、6(mm)となる。また、上述したように、樹脂材5としては、シリコーンゴムが用いられるが、このシリコーンゴムの常温でのヤング率Eは、常温から人体の体温の温度条件下で、約4.0×10(Pa)となる。この場合、可撓部532の曲げ剛性Dは、ポアソン比νを0.5として、上述の式(1)を用いて算出すると、4.44×10−4(Pa・m)となる。
なお、本実施形態では、可撓部532の形状はセンサー平面視矩形状であるが、可撓部532をセンサー平面視円形状のダイアフラム30と対比し易くするために、可撓部532の面積が6(mm)であることに基づいて、ここでは、可撓部532を円形状であると仮定して、半径aを1.5×10−3(m)とする。
そして、曲げ剛性Dに基づいて、可撓部532の最大撓み量ωmaxは、上述の式(1)から)を用いて算出すると、1.78×10−10×q(m)となる。
なお、本実施形態では、樹脂材5にシリコーンゴムが用いられていたが、これに限定されるものではなく、同様の物性を持つ材質であればよい。
【0032】
また、本実施形態では、第1空間S1の容積は、第2空間S2の容積よりも大きくなるように形成されている。各空間S1,S2の容積についても、これに限定されるものではなく、第2空間S2の容積が第1空間S1の容積よりも大きく形成してもよく、両者を略同容積としてもよい。
なお、本実施形態では、第2空間S2は、1箇所のみ形成されたが、例えば、第2空間S2を、第1空間S1を挟んで2箇所形成する構成としてもよく、第1空間S1の外周全周に亘って形成する構成などとしてもよい。
【0033】
超音波伝達媒体6は、超音波を効率よく伝達させるためのものである。本実施形態では、人体の内部を超音波により検査する装置であるため、例えば水や生理食塩水等の人体の音響インピーダンスと略等しい音響インピーダンスを有する液体が用いられる。また、超音波伝達媒体6として、粘度の高いカルボキシルメチルセルロース水溶液、ひまし油、流動パラフィン等が用いられていてもよい。
【0034】
図4は、超音波トランスデューサー4を示す断面図である。図5は、超音波トランスデューサー4の配置レイアウトを示す模式図である。
超音波トランスデューサー4は、例えば、制御部からの信号に基づいて超音波を発信したり、超音波を受信して演算制御部に出力する素子である。この超音波トランスデューサー4は、図3に示すように、センサーアレイ基板2の第1支持部21上に複数設けられ、例えば、センサー平面視において、図3、5に示すように、縦方向に10個、横方向に10個配置されている。
このような超音波トランスデューサー4は、センサーアレイ基板2の第1支持部21と、支持膜3と、圧電体41とにより構成されている。
第1支持部21は、上述したように、センサーアレイ基板2の超音波トランスデューサー4が配置される部分であり、各超音波トランスデューサー4の形成位置に開口部211が形成されている。
支持膜3は、上述したように、センサーアレイ基板2上に形成され、開口部211を閉塞するダイアフラム30を形成する。
【0035】
圧電体41は、ダイアフラム30上で、ダイアフラム30の中心位置に形成される膜状部材である。この圧電体41は、径寸法Lが例えば80μmの平面視円形状に形成され、開口部211の径寸法(100μm)よりも小さく形成されている。また、各圧電体41のピッチPが200μmとなるように、各圧電体41が配置されている。この圧電体41は、圧電膜411と、圧電膜411に電圧を印加する電極(下部電極412及び上部電極413)とを備えている。
【0036】
圧電膜411は、例えばPZT(ジルコン酸チタン酸鉛:lead zirconate titanate)を膜状にして形成されている。なお、本実施形態では、圧電膜411としてPZTを用いるが、電圧を印加することで、面方向に収縮することが可能な素材であれば、いかなる素材を用いてもよく、例えばチタン酸鉛(PbTiO)、ジルコン酸鉛(PbZrO)、チタン酸鉛ランタン((Pb、La)TiO)などを用いてもよい。
下部電極412及び上部電極413は、圧電膜411を挟んで形成される電極である。これらの上部電極413および下部電極412は、それぞれ開口部211側に形成される図示しない引出部により引き出されて、生体検査装置1の制御部に接続されている。
【0037】
超音波トランスデューサー4では、制御部から圧電体41の電極412,413間に所定の駆動電圧が印加されると、圧電膜411が面方向に伸長したり、収縮したりする。これにより、ダイアフラム30が膜厚方向に振動し、ダイアフラム30から所定の駆動電圧の周期に応じた振動数の超音波が接触部522に向けて発信される。すなわち、超音波トランスデューサー4は、手指へ向けて超音波を発信する発信部として機能する。
また、この超音波トランスデューサー4は、手指の内部の血管等で反射された超音波を受信する受信部としても機能する。この場合、反射された超音波によりダイアフラム30が振動し、その振幅や周波数に応じた電気信号が圧電体41から下部電極412及び上部電極413を介して制御部に出力される。
ここで、制御部は、超音波トランスデューサー4のモードを超音波発信モード及び超音波受信モードのいずれかに切り替えることにより、超音波トランスデューサー4が、受信部及び発信部のいずれかとして機能する。
なお、本実施形態では、各超音波トランスデューサー4は、超音波の発信部及び受信部の両方を兼用し、制御部によりいずれか一方の機能に切り替える構成を例示したが、例えば、超音波発信専用の発信トランスデューサーと、超音波受信専用の受信トランスデューサーとが複数配置される構成などとしてもよい。また、この場合、これらの発信トランスデューサーと受信トランスデューサーとを例えば交互に配置するなどして、1つのアレイ基板に配置する構成としてもよく、複数の発信トランスデューサーにより構成される発信アレイ基板と、複数の受信トランスデューサーにより構成される受信アレイ基板とを、異なる位置に配置する構成などとしてもよい。
【0038】
[生体検査装置の動作]
図6は、生体検査装置1の動作を模式的に示す断面図である。
上述した生体検査装置1により、血管状態を検査するためには、まず、生体検査装置1を人体の手指にバンド200(図1参照)を用いて装着する。この際、バンド200の締め付け力を適宜調整することで、手指が生体検査装置1の接触部522に密着するように、生体検査装置1を装着し固定する。この時、バンド200による締め付け力により、ダイアフラム30の撓み量は変化するが、通常、ダイアフラム30の最大撓み量ωmaxが1.9×10−12×q(m)程度であれば、手指が接触部522に密着された状態となる。
【0039】
このように生体検査装置1を装着することで、接触部522が支持膜3側に撓む。これにより、第1空間S1の容積が小さくなるとともに、第1空間S1の内圧が上昇する。
ここで、上述したように、ダイアフラム30の曲げ剛性Dは、可撓部532の曲げ剛性Dよりも十分に大きくなる。このため、第1空間S1の内圧の上昇により第1空間S1の超音波伝達媒体6が連通孔511を介して第2空間S2へ流れ、曲げ剛性Dが小さい可撓部532が外部空間に向かって膨出する。また、上記のように、ダイアフラム30の最大撓み量ωmaxが1.9×10−12×q(m)程度であり、可撓部532の最大撓み量ωmaxが1.78×10−10×q(m)程度であるので、可撓部532のみが膨出し、ダイアフラム30には撓みが生じない。
【0040】
そして、例えば、利用者により、フロントパネル20(図2参照)に設けられる入力ボタンが操作され、測定を開始する旨の操作信号が制御部に入力されると、制御部は、圧電体41の電極412,413間に所定の駆動電圧を印加する。これにより、各超音波トランスデューサー4は、ダイアフラム30から手指に向けて超音波を発信する。そして、超音波は音響インピーダンスが人体と略同等である超音波伝達媒体6、接触部522を介して、接触部522に密着された手指の内部に伝達される。また、この超音波の発信直後、制御部は、超音波トランスデューサー4の電極412,413への電圧印加を停止させる。すなわち、制御部は、超音波トランスデューサー4を超音波発信モードから超音波受信モードに切り替える。
一方、超音波トランスデューサー4から発信された超音波は、手指内の例えば血管で反射されると、再び接触部522から超音波伝達媒体6を伝搬し、ダイアフラム30にて受信される。これにより、ダイアフラム30は、受信した超音波の強さに応じて振動し、ダイアフラム30上の圧電体41から検出信号(電流)が制御部に出力される。そして、制御部は、この入力された検出信号に基づいて、脈拍や血圧などの血流状態を計測し、例えばフロントパネル20に設けられる表示パネルに計測結果を表示させる制御を実施する。
【0041】
[第1実施形態の作用効果]
上述した第1実施形態の生体検査装置1によれば、以下の効果を奏する。
本実施形態では、支持膜3の開口部211を閉塞する領域と第1樹脂部52との間で第1空間S1が形成され、この第1空間S1には、超音波伝達媒体6が充填されている。この超音波伝達媒体6には、人体の音響インピーダンスと略等しい音響インピーダンスを有する液体が用いられているので、超音波を減衰させることなく良好に伝達できる。また、第1樹脂部52の開口部211に対向する領域には接触部522が設けられ、この接触部522に手指が密着することで、ダイアフラム30の振動により発生する超音波を手指内部に伝達させ、手指の血管で反射される超音波をダイアフラム30に伝達させることができる。
ここで、上述のように、手指を第1樹脂部52の接触部522に接触させると、接触部522が撓み、第1空間S1内の内圧が高くなる。ところが、本実施形態では、第2樹脂部53により、第1空間S1と連通する第2空間S2が設けられ、この第2樹脂部53には、ダイアフラム30の曲げ剛性Dよりも小さい曲げ剛性Dを有する可撓部532が設けられている。このため、第1空間S1内の内圧が高くなった場合でも、可撓部532が外部空間側に膨出し、第1空間S1内の超音波伝達媒体6が第2空間S2に流れる。
従って、手指が接触部522に密着され、第1空間S1内の内圧が高くなった場合でも、ダイアフラム30の変形を抑制できる。したがって、圧電体41に電圧を印加してダイアフラム30を振動させる場合や、超音波をダイアフラム30で受信して振動させる場合に、ダイアフラム30の振動が減衰せず、超音波を良好に受発信できる。
【0042】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係る生体検査装置1Aについて、図面に基づいて説明する。
図7は、第2実施形態に係る生体検査装置1Aの作用を模式的に示す断面図である。図の説明にあたって、前記実施形態と同一構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。以下の実施形態についても同様である。
第2実施形態での生体検査装置1Aは、センサーアレイ基板2と樹脂材5との間に空間Sを形成し、支持膜3をセンサーアレイ基板2の外部空間側の面上に配置する点で、前記第1実施形態と相違する。すなわち、前記第1実施形態の超音波トランスデューサー4の配置位置を変更したものである。
【0043】
生体検査装置1Aは、支持膜3がセンサーアレイ基板2の外部空間側の面上に配置され、圧電体41が支持膜3において、第1樹脂部52の接触部522と対向する側と反対側の面上に配置される構成を備えている。すなわち、圧電体41は、第1空間S1の外部に配置されている。これらの構成では、第1支持部21の開口部211内も第1空間S1となり、開口部211内にも超音波伝達媒体6が充填される。
また、前記第1実施形態での超音波トランスデューサー4は、圧電膜411の支持膜3に対向する側と反対側の面から超音波が発信されたが、本実施形態での超音波トランスデューサー4は、圧電膜411の支持膜3に対向する側の面から超音波が発信される。
【0044】
上述した第2実施形態の生体検査装置1Aによれば、圧電膜411の支持膜3に対向する側の面から超音波が発信される構成においても、前記第1実施形態と同様の効果を奏する。
さらに、手指が接触部522に強く密着することで、接触部522が押圧されて支持膜3側に大きく撓んだ場合でも、接触部522がセンサーアレイ基板2の第1支持部21に接触するので、圧電体41や支持膜3に接触することがなく、圧電体41や支持膜3が破損することを防止できる。
【0045】
[第2実施形態の変形例]
図8は、第2実施形態の変形例に係る生体検査装置1Bの作用を模式的に示す断面図である。
本変形例では、第1支持部21には、支持膜3の膜厚方向と直交する方向に貫通する貫通孔212が形成されている。
【0046】
ここで、手指が接触部522を強く押圧した場合に、図8に示すように、接触部522が第1支持部21に接触することがある。この場合において、前記第2実施形態の構成では、第1空間S1が第1樹脂部52により区画されてしまい、第1空間S1の第2空間S2側の超音波伝達媒体6は、第2空間S2へ流れやすいものの、第1空間S1の第2空間S2側と反対側の超音波伝達媒体6は、第1支持部21により第2空間S2へ流れにくくなるおそれがある。さらに、接触部522が第1支持部21に接触することで、接触部522が開口部211を閉塞してしまい、ダイアフラム30が第1空間S1の内圧の上昇により撓んでしまうおそれがある。
【0047】
本変形例の構成によれば、接触部522が第1支持部21に接触した場合でも、第1支持部21に貫通孔212が形成されているので、第1空間S1の第2空間S2側と反対側の超音波伝達媒体6は、貫通孔212を介して、第2空間S2へ向けて流れることができる。従って、前記各実施形態と同様の効果を奏することができる。
また、接触部522が第1支持部21に接触した場合に、接触部522が開口部211を閉塞することで、ダイアフラム30が第1空間S1の内圧の上昇により撓んでしまうことも防止できる。
【0048】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態に係る生体検査装置1Cについて、図面に基づいて説明する。以下では、図3、4も適宜参照して説明する。
図9は、第3実施形態に係る生体検査装置1Cのブロック図である。
第3実施形態での生体検査装置1Cには、第2樹脂材52の変位を検出する変位検出手段としての変位センサー7と、変位センサー7からの検出信号を検出して生体検査装置1Cを制御する制御部8とが設けられている点で前記各実施形態と相違する。
【0049】
変位センサー7は、第2樹脂部53の可撓部532の変位を検出するものである。この変位センサー7は、可撓部532の変位を検出すると、制御部8へ検出信号を出力する。
ここで、変位センサー7としては、接触型のセンサーが用いられ、差動トランス方式によるものが例示できる。この場合には、電磁誘導によって2つのコイルに生じる電圧差により変位を検出する。なお、接触型のセンサーに限定されず、非接触型のセンサーを用いてもよく、例えば静電容量の変化により変位を検出する静電容量式や、超音波センサーを用いて超音波の反射時間により変位を検出するものや、可撓部532に歪検出素子を配置して、変位を検出するものであってもよい。
【0050】
制御部8は、超音波トランスデューサー4の電極412,413へ電圧信号を出力(電圧印加処理)、及び、圧電体41から出力される電圧信号に基づいて、脈拍や血圧などの血流状態を計測する処理(検出処理)を実施する超音波発信手段としての駆動電圧出力部81を備えている。
駆動電圧出力部81は、変位センサー7からの検出信号が入力されると、超音波トランスデューサー4の電極412,413へ電圧信号を出力する。一方、駆動電圧出力部81は、変位センサー7から検出信号の入力がない場合には、手指が接触部522から離れたことを検知して、電極412,413へ電圧信号の出力を停止する処理を実施する。
また、駆動電圧出力部81は、超音波を受信した圧電体41から出力される電圧信号を検出して、この電圧信号に基づいて、脈拍や血圧などの血流状態を計測する処理を実施する。
【0051】
まず、手指を接触部522に接触させると、接触部522が内側に撓み、第1空間S1の超音波伝達媒体6が連通孔511を介して、第2空間S2へ流れる。
そして、第2空間S2を構成する可撓部532が膨出して、変位センサー7は、この変位を検出し、制御部8の駆動電圧出力部81へ検出信号を出力する。
駆動電圧出力部81は、変位センサー7から検出信号が入力されると、手指が接触部522に接触したことを検知し、超音波トランスデューサー4を超音波発信モードに切り替えるとともに、超音波トランスデューサー4の電極412,413へ電圧信号を出力する。これにより、上述したように、電極412,413は、入力された電圧信号に基づいて、圧電膜411に所定の電圧を印加し、ダイアフラム30から超音波が接触部522へ発信される。そして、駆動電圧出力部81は、超音波トランスデューサー4を超音波受信モードに切り替える。
一方、接触部522に接触する手指から反射された超音波をダイアフラム30が受信すると、制御部8の駆動電圧出力部81へ電圧信号を出力し、駆動電圧出力部81は、この電圧信号に基づいて、脈拍や血圧などの血流状態を計測する処理を実施する。
【0052】
上述した第3実施形態の生体検査装置1Cによれば、前記第1実施形態での効果に加えて、以下の効果を奏する。
本実施形態によれば、制御部8は、手指が接触部522に接触したことを検知でき、制御部8の駆動電圧出力部81が電極412,413へ電圧信号を出力する。このため、手指が接触部522に接触している場合のみにおいて、超音波を確実に発信でき、手指に超音波を確実に到達できる。
【0053】
[第4実施形態]
次に、第4実施形態に係る生体検査装置1Dについて、図10及び図11に基づいて説明する。
第4実施形態での生体検査装置1Dには、第2樹脂部53の可撓部532の変位量を検出する変位検出手段としての距離検出センサー9と、距離検出センサー9からの検出信号を検出して生体検査装置1Dを制御する制御部8Aとが設けられている点で前記各実施形態と相違する。
特に、前記第3実施形態では、第2樹脂部53の可撓部532が変位したことを変位センサー7により検出されると、制御部8が超音波トランスデューサー4を超音波発信モードに切り替えていたが、本実施形態では、第2樹脂部53の可撓部532の撓み量(変位量)を距離検出センサー9により計測することで、この撓み量に応じて、制御部8Aが超音波トランスデューサー4を超音波発信モードに切り替える点で相違する。
【0054】
距離検出センサー9は、第2樹脂部53の可撓部532の撓み量を検出するものである。この距離検出センサー9は、可撓部532の撓み量を検出すると、制御部8Aへ検出信号を出力する。
ここで、距離検出センサー9としては、超音波センサーを用いて超音波の反射時間により可撓部532の撓み量を検出するものが例示でき、図10に示すように、支持膜3の第2支持部22に設けられる。また、距離検出センサー9としては、超音波センサーを用いるものの他、静電容量の変化により撓み量を検出する静電容量式のセンサーであってもよい。
なお、距離検出センサー9としては、第1支持部21に配置された複数の超音波トランスデューサー4を第2支持部22にも設ける構成としてもよい。この場合には、第2支持部22に第1支持部21に形成された開口部211を形成し、支持膜3のうち、開口部211を閉塞した領域をダイアフラム30として、ダイアフラム30上に超音波トランスデューサー4を配置すればよい。このような構成によれば、第1支持部21及び第2支持部22を同一構成とでき、ダイアフラム30上に超音波トランスデューサー4を設ければよいため、超音波トランスデューサー4を第1支持部21に設ける工程で、同時に距離検出センサー9を第2支持部22に設けることができ、製造工程を簡略化できる。
【0055】
制御部8Aは、駆動電圧出力部81Aと、判定部82と、記憶部83とを備えている。
記憶部83は、例えばメモリーやハードディスクなどの記録媒体を備えて構成され、判定部82の処理に必要な変位量閾値データ831(所定の閾値)及びプログラムを適宜読み出し可能に記憶する。この変位量閾値データ831は、第1樹脂部52の接触部522に手指が接触した際に、支持膜3に影響を与えない範囲で、第2樹脂部53の可撓部532が撓む撓み量(変位量)のデータである。
【0056】
駆動電圧出力部81Aは、フロントパネル20(図2参照)の入力ボタンが操作されると、距離検出センサー9に電圧信号を出力する。また、駆動電圧出力部81Aは、判定部82の判定信号に基づいて、超音波トランスデューサー4の電極412,413へ電圧信号を出力する処理(電圧印加処理)を実施する。
さらに、駆動電圧出力部81Aは、超音波を受信した圧電体41から出力される電圧信号を検出して、この電圧信号に基づいて、脈拍や血圧などの血流状態を計測する処理(検出処理)を実施する。
【0057】
判定部82は、距離検出センサー9から検出信号が入力されると、記憶部83から変位量閾値データ831を読み出し、変位量閾値データ831と可撓部532の撓み量とを比較する。そして、判定部82は、可撓部532の撓み量が変位量閾値データ831の範囲内であると判定すると、判定信号を駆動電圧出力部81Aに出力する。一方、判定部82は、可撓部532の撓み量が変位量閾値データ831の範囲外であると判定すると、フロントパネル20(図2参照)の表示パネルに手指の装着をやり直す旨の警告を表示する。
【0058】
次に、第4実施形態に係る生体検査装置1Dの動作について、図12に示すフローチャートを参照して説明する。
まず、フロントパネル20(図2参照)の入力ボタンが操作されると、駆動電圧出力部81Aは、距離検出センサー9を起動する(ステップS1)。
次に、判定部82は、距離検出センサー9から検出信号が入力されると、変位量閾値データ831と可撓部532の撓み量とを比較する(ステップS2)。
比較した結果、可撓部532の撓み量が変位量閾値データ831の範囲内であると判定されると、駆動電圧出力部81Aは、超音波トランスデューサー4を超音波発信モードに切り替えるとともに、超音波トランスデューサー4の電極412,413へ電圧信号を出力する(ステップS3)。
そして、駆動電圧出力部81Aは、超音波トランスデューサー4を超音波受信モードに切り替え、圧電体41から入力される電圧信号に基づいて、脈拍や血圧などの血流状態を計測する処理を実施する(ステップS4)。
一方、比較した結果、可撓部532の撓み量が変位量閾値データ831の範囲外であると判定されると、判定部82は、表示パネルに手指の装着をやり直す旨の警告を表示する(ステップS5)。
【0059】
上述した第4実施形態の生体検査装置1Dによれば、前記第1実施形態での効果に加えて、以下の効果を奏する。
本実施形態によれば、距離計測センサー9は、可撓部532の撓み量を検出し、判定部82は、この撓み量と変位量閾値データ831とを比較して、可撓部532の撓み量が変位量閾値データ831の範囲外であると判定すると、手指が可撓部532に押し付けすぎであると警告する。そして、この場合には、駆動電圧出力部81Aは、超音波の発信を行う電圧印加処理を実施しない。従って、可撓部532の撓み量が変位量閾値データ831の範囲外である場合に、駆動電圧出力部81Aは、電圧印加処理及び検出処理を実施せず、撓み量が変位量閾値データ831の範囲内である場合にのみ、電圧印加処理を実施でき、正確な検出処理を実施できる。
【0060】
[実施形態の変形]
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
前記各実施形態では、空間Sを区画部51で第1空間S1及び第2空間S2に区画していたが、区画部51を設けない構成であってもよい。この場合でも、接触部522に手指が接触して、接触部522が内側に撓んだ場合に、超音波伝達媒体6が空間S内で流動でき、可撓部532を膨出させる。
前記各実施形態では、第1樹脂部52と第2樹脂部53とを同一の材質、同一の厚み寸法h,Tで構成したが、異なる材質、また異なる厚み寸法であってもよい。また、可撓部532のみを異なる材質、異なる厚み寸法にしてもよい。また、可撓部532をセンサー平面視円形状に形成してもよい。
【0061】
前記各実施形態では、可撓部532は、第2支持部22と対向するように形成されていたが、第2樹脂部53の側方に形成してもよい。
前記各実施形態では、センサー平面視において、第1樹脂部52の接触部522のサイズは、3mm×3mmに形成されていたが、これに限定されず、接触部522に接触する検査対象の形状や大きさに応じて形成してもよい。
前記各実施形態では、第1空間S1及び第2空間S2を連通する連通孔511を設けたが、チューブ等の管状部材により第1空間S1及び第2空間S2を連通してもよく、この場合には、第2空間S2が袋状に形成された第2樹脂部53のみにより構成され、第2樹脂部53が支持膜3やセンサーアレイ基板2に固定されていなくてもよい。
【0062】
前記各実施形態では、第2空間S2は第2支持部22上に形成されたが、これに限定されず、例えば、装置本体100の側面部に設けられ、可撓部532が装置本体100の側面に露出する構成や、装置本体100のフロントパネル20の一部に可撓部532が露出する構成としてもよい。この場合、可撓部532の変位量を例えば目視で確認することで、接触部522に手指等が密着したか否かを判断することができる。
前記各実施形態では、支持膜3がセンサーアレイ基板2上に配置されたが、第1支持部21の開口部211を閉塞する箇所のみに配置されてもよい。
前記各実施形態では、開口部211はセンサーアレイ基板2を貫通するように形成していたが、これに限定されず、凹部として形成してもよい。この場合には、支持膜3は凹部の開口を閉塞するように形成される。また、支持膜3は凹部の底面に形成されてもよい。
【符号の説明】
【0063】
1,1A,1B,1C…超音波センサー、2…センサーアレイ基板(支持体)、3…支持膜、5…樹脂材、6…超音波伝達媒体、7…変位センサー(変位検出手段)、9…距離検出センサー(変位検出手段)、41…圧電体、52…第1樹脂部(第1樹脂材)、53…第2樹脂部(第2樹脂材)、81,81A…駆動電圧出力部(超音波発信手段)、82…判定部、211…開口部、412…下部電極、413…上部電極、522…接触部(当接部)、532…可撓部、S1…第1空間、S2…第2空間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有する支持体と、
前記支持体上に設けられて、前記開口部を閉塞する支持膜と、
前記支持膜の厚み方向から見る平面視において、前記開口部の内側領域に設けられ、前記支持膜に下部電極、圧電膜、及び上部電極を順に積層して形成される圧電体と、
前記平面視において、少なくとも前記開口部が形成される領域において、前記支持膜との間で、外部空間から密閉される第1空間を形成するとともに、前記開口部に対向して、検査対象に当接可能な当接部を備える第1樹脂材と、
前記第1空間に連通し、外部空間から密閉される第2空間を形成する第2樹脂材と、
前記第1空間及び前記第2空間に充填される超音波伝達媒体と、を備え、
前記第2樹脂材の少なくとも一部には、前記支持膜の膜厚方向の剛性よりも小さい剛性の可撓部が設けられる
ことを特徴とする超音波センサー。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波センサーにおいて、
前記支持膜は、前記支持体の一面側を覆い、
前記第1樹脂材は、前記支持膜に対して開口するとともに、この開口端が前記支持膜に接続されることで前記第1空間を形成する第1凹部を有し、
前記第2樹脂材は、前記支持膜に対して開口するとともに、この開口端が前記支持膜に接続されることで前記第2空間を形成する第2凹部を有し、
前記第1樹脂材及び前記第2樹脂材は、一体的に形成される
ことを特徴とする超音波センサー。
【請求項3】
請求項1に記載の超音波センサーにおいて、
前記支持体の開口部は、前記支持体の厚み方向に貫通して形成され、
前記支持膜は、前記支持体の一面側を覆い、
前記第1樹脂材は、前記支持膜に対して開口するとともに、この開口端が前記支持体の一面側と反対側の他面側に接続されることで前記第1空間を形成する第1凹部を有し、
前記第2樹脂材は、前記支持膜に対して開口するとともに、この開口端が前記支持体の他面側に接続されることで前記第2空間を形成する第2凹部を有する
ことを特徴とする超音波センサー。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の超音波センサーにおいて、
前記可撓部の変位を検出する変位検出手段と、
前記変位検出手段により前記可撓部の変位を検出すると、前記圧電体への電圧印加処理、または、前記圧電体から出力される信号の検出処理のいずれか一方を実施する超音波発信手段とを備える
ことを特徴とする超音波センサー。
【請求項5】
請求項4に記載の超音波センサーにおいて、
前記変位検出手段は、前記可撓部の変位量を検出し、
当該超音波センサーは、前記可撓部の変位量が所定の閾値の範囲内であるか否かを判定する判定部を備え、
前記超音波発信手段は、前記判定部により前記可撓部の変位量が所定の閾値の範囲内であると判定されると、前記電圧印加処理、または前記検出処理のいずれか一方を実施する
ことを特徴とする超音波センサー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−217351(P2011−217351A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−287179(P2010−287179)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】