説明

超音波フリップチップ接合装置

【課題】 半導体チップを破損することなく、半導体チップと回路基板とを確実にフリップチップ接合することができる超音波フリップチップ接合装置を提供する。
【解決手段】 超音波ホーン22は、超音波振動子25の超音波振動によって超音波振動方向Aに共振する。超音波ホーン22には、チップ保持体27が設けられる。チップ保持体27は、半導体チップ23を超音波振動方向Aに平行に保持し、基板保持体28は、回路基板24を半導体チップ23に対して平行に保持し、押圧手段29は、半導体チップ23を回路基板24に押圧する。このような接合装置21で、超音波ホーン22の腹位置の部分が、超音波振動方向Aに振動可能となるように、支持手段26によって支持される。また超音波振動子25は、超音波ホーン22の節位置に配置され、超音波振動方向Aの両端部25a,25bが超音波ホーン22に接触した状態で超音波ホーン22に設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体チップと回路基板とを超音波振動を利用してフリップチップ接合する超音波フリップチップ接合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップと回路基板とを接合する接合方式には、ワイヤボンディング方式およびフリップチップ接合方式がある。ワイヤボンディング方式は、半導体チップの電極と回路基板の電極とを、ワイヤを介して接合する方式である。フリップチップ接合方式は、半導体チップの電極と回路基板の電極とを、バンプを介して接合する方式である。
【0003】
フリップチップ接合方式では、ワイヤボンディング方式に比べて、実装面積を小さくすることができ、また配線長を短くすることもできる。さらにフリップチップ接合方式では、半導体チップの電極群と回路基板の電極群とを一括して接合するので、このフリップチップ接合方式は、ワイヤボンディング方式に比べて生産性の点で優れている。このようなフリップチップ接合方式は、高密度実装、および高速半導体チップの実装に適している。
【0004】
フリップチップ接合方式には、熱圧着接合方式および超音波接合方式がある。特に、超音波接合方式では、150℃よりも低い温度での接合が可能であり、接合に要する接合時間が1秒前後と短い。このような超音波接合方式は、接合生産性の観点から、昨今、注目を浴びている。フリップチップ接合方式の中の超音波接合方式は、超音波フリップチップ接合方式とも呼ばれる。
【0005】
近年、超音波フリップチップ接合方式を実現するための超音波フリップチップ接合装置が、種々、開発されている。
【0006】
第1の従来技術は、特許文献1に開示される。この従来技術の超音波接合装置では、超音波ホーンは、超音波の1波長分の長さを有する。この超音波ホーンの中央には、被接合部材と係合する係合チップが設けられる。超音波ホーンの両端には、超音波ホーンと同軸上に、ブースタがそれぞれ連結される。各ブースタは、超音波の半波長の長さを有し、その両端が共振の腹となり、中央が共振の節となる。各ブースタの中央部は、一対の支持部材に、直接機械的に強靭にそれぞれクランプされている。一方のブースタには、このブースタと同軸上に、超音波振動子が連結される。加圧手段は、被接合部材を載置した受台と、各支持部材とを相対的に移動させて、前記係合用チップが被接合部材を加圧するように構成される。
【0007】
図8は、第2の従来技術の超音波接合装置1の構成を簡略化して示す正面図である。第2の従来技術は、特許文献2に開示される。この従来技術の超音波接合装置1では、超音波ホーン2は、超音波の1波長分の長さに予め設定され、その両端および中央が共振の腹となる。超音波ホーン2の中央部には、接合作用部3が設けられる。超音波ホーン2の一端部には、同軸上に超音波振動子4が連結される。超音波振動子4は、超音波ホーン2を横振動させる。超音波ホーンの節となる2つの部分は、支持部材5a,5bによってそれぞれ固定される。加圧手段6は、受台7に載置されたプリント基板8と、接合作用部3によって保持されるベアチップ9とを接触させ、両者を加圧するように構成される。
【0008】
【特許文献1】特許第2583398号公報
【特許文献2】特開2004−330228号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記第1の従来技術では、超音波振動子が超音波ホーンの外部に設けられるので、超音波振動子は、超音波振動方向の片側から支持される。したがって超音波振動のときに超音波振動子が変位してしまうので、共振の安定性が低く、被接合部材の安定した接合が得にくいという問題がある。
【0010】
また前記第1の従来技術では、各ブースタは、共振の節となる中央部で、各支持部材にそれぞれ固定されるので、超音波振動方向に垂直な方向の振動が発生する。したがって被接合部材が破損しやすいという問題がある。
【0011】
詳細に述べると、各ブースタの共振の節となる部分は、振動しないけれども、圧力が最も変化する。各ブースタは、剛性の高い材質から成るので、非圧縮性を有し、圧力の変化に対して体積の変化がごく僅かである。このような各ブースタでは、共振の節において、圧力変化が、超音波振動方向に垂直な断面の面積の変化となって現れる。したがって各ブースタを共振の節で各支持部材に固定すると、超音波振動方向に垂直な方向の振動が発生する。これによって被接合部材が破損しやすい。
【0012】
前記第2の従来技術では、超音波振動子4が超音波ホーン2の外部に設けられるので、超音波振動子4は、超音波振動方向の片側から支持される。したがって第1の従来技術と類似の問題、すなわちプリント基板8とベアチップ9との安定した接合が得にくいという問題がある。
【0013】
また前記第2の従来技術では、超音波ホーン2は、共振の節で、各支持部材5a,5bによって固定される。したがって第1の従来技術と類似の問題、すなわちベアチップ9が破損しやすいという問題がある。
【0014】
詳細に述べると、超音波ホーン2の共振の節となる部分は、振動しないけれども、圧力が最も変化する。超音波ホーン2は、剛性の高い材質から成るので、非圧縮性を有し、圧力の変化に対して体積の変化がごく僅かである。このような超音波ホーン2では、共振の節において、圧力変化が、超音波振動方向に垂直な断面の面積の変化となって現れる。したがって超音波ホーン2を共振の節で各支持部材5a,5bに固定すると、超音波振動方向に垂直な方向の振動が発生する。これによってベアチップ9が破損しやすい。
【0015】
したがって本発明の目的は、半導体チップを破損することなく、半導体チップと回路基板とを確実にフリップチップ接合することができ、これによって歩留まりを向上させることができる超音波フリップチップ接合装置を提供することである。
【0016】
また前記第1および第2の従来技術では、超音波振動子4が超音波ホーン2の外部に設けられるので、超音波振動子4は、超音波振動方向の片側から支持される。したがって超音波振動子4の超音波振動が片側だけ有効となるので、超音波振動の伝達効率が悪いという問題がある。
【0017】
したがって本発明の他の目的は、超音波振動の伝達効率を向上させることができる超音波フリップチップ接合装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、半導体チップと回路基板とを超音波振動を利用してフリップチップ接合する超音波フリップチップ接合装置であって、
超音波振動する超音波振動子と、
超音波振動子による超音波振動によって超音波振動方向に共振する超音波ホーンと、
超音波ホーンを支持する支持手段と、
超音波ホーンに設けられ、半導体チップを、超音波振動方向に平行に保持するチップ保持体と、
回路基板を、チップ保持体によって保持される半導体チップに対して平行に保持する基板保持体と、
チップ保持体によって保持される半導体チップを、基板保持体によって保持される回路基板に押圧する押圧手段とを含み、
支持手段は、超音波ホーンにおける共振の腹位置の部分が超音波振動方向に振動可能となるように、超音波ホーンの前記腹位置の部分を支持し、
超音波振動子は、超音波ホーンにおける共振の節位置に配置され、超音波振動方向の両端部が超音波ホーンに接触した状態で超音波ホーンに設けられることを特徴とする超音波フリップチップ接合装置である。
【0019】
また本発明は、超音波ホーンにおける共振の節位置が複数、存在する場合、
超音波振動子は、複数の節位置のうちチップ保持体から最も離れた節位置に配置されることを特徴とする。
【0020】
また本発明は、支持手段は、超音波ホーンの超音波振動方向の両端部を支持することを特徴とする。
【0021】
また本発明は、超音波ホーンの慣性質量は、装置全体の慣性質量の1.0%以下に選ばれることを特徴とする。
【0022】
また本発明は、支持手段は、
超音波ホーンの前記腹位置の部分に連結されて半導体チップの押圧方向に延び、超音波振動方向に可撓性を有する支持部材と、
支持部材の超音波ホーンに連結される側とは反対側の端部に連結されるホルダとを含み、
基板保持体は、支持部材の超音波ホーンに連結される側とは反対側の端部よりも、半導体チップの押圧方向とは反対方向に退避した位置で、回路基板を保持することを特徴とする。
【0023】
また本発明は、半導体チップと回路基板とを超音波振動を利用してフリップチップ接合する超音波フリップチップ接合装置であって、
超音波振動する超音波振動子と、
超音波振動子による超音波振動によって超音波振動方向に共振する超音波ホーンと、
超音波ホーンに設けられ、半導体チップを、超音波振動方向に平行に保持するチップ保持体と、
回路基板を、チップ保持体によって保持される半導体チップに対して平行に保持する基板保持体と、
チップ保持体によって保持される半導体チップを、基板保持体によって保持される回路基板に押圧する押圧手段とを含み、
超音波振動子は、超音波ホーンにおける共振の節位置に配置され、超音波振動方向の両端部が超音波ホーンに接触した状態で超音波ホーンに設けられることを特徴とする超音波フリップチップ接合装置である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、超音波振動子が超音波振動する。この超音波振動子の超音波振動によって、超音波ホーンが超音波振動方向に共振する。超音波ホーンには、チップ保持体が設けられる。このチップ保持体は、超音波ホーンとともに共振する。
【0025】
チップ保持体は、半導体チップを、超音波振動方向に平行に保持する。基板保持体は、回路基板を、チップ保持体によって保持される半導体チップに対して平行に保持する。押圧手段は、チップ保持体によって保持される半導体チップを、基板保持体によって保持される回路基板に押圧する。
【0026】
したがって半導体チップを回路基板に押圧した押圧状態で、前記半導体チップをこの半導体チップに対して平行な方向に振動させることができる。これによって半導体チップと回路基板とをフリップチップ接合することができる。
【0027】
超音波ホーンの腹位置の部分は、残余の部分に比べて、超音波振動方向に垂直な方向への振動が小さい。これを考慮して、前記腹位置の部分を支持手段によって支持する。これによって前記押圧状態で半導体チップがこの半導体チップに対して垂直な方向に振動してしまうという不具合を可及的に抑制することができる。したがって半導体チップの破損を防ぐことができる。
【0028】
超音波ホーンの腹位置の部分は、超音波振動方向に振動する。これを考慮して、前記腹位置の部分が超音波振動方向に振動可能となるように、前記腹位置の部分を支持手段によって支持する。これによって超音波ホーンを支持する支持手段が超音波ホーンの共振に与える影響を抑えることができる。
【0029】
超音波振動子は、超音波ホーンにおける共振の節位置に配置される。超音波ホーンの節位置の部分での微小な振動は、超音波ホーンの腹位置の部分で大きな振動になる。したがって超音波振動子の超音波振動を有効に利用することができ、超音波振動の伝達効率を向上させることができる。
【0030】
しかも超音波振動子は、超音波振動方向の両端部が超音波ホーンに接触した状態で超音波ホーンに設けられる。このように超音波振動子が超音波振動方向の両側から支持されるので、超音波振動のときに超音波振動子が変位してしまうという不具合が防がれる。これによって共振の安定性を向上させることができ、半導体チップと回路基板とを確実にフリップチップ接合することができる。また前記不具合が防がれるので、超音波振動子の超音波振動をさらに有効に利用することができ、超音波振動の伝達効率をさらに向上させることができる。
【0031】
このような本発明では、半導体チップを破損することなく、半導体チップと回路基板とを確実にフリップチップ接合することができる。したがって歩留まりを向上させ、生産コストを低減することができる。
【0032】
また本発明によれば、超音波ホーンにおける共振の節位置が複数、存在する場合、複数の節位置のうちチップ保持体から最も離れた節位置に、超音波振動子が配置される。したがって超音波振動子がチップ保持体から受ける影響を抑えることができる。たとえば、チップ保持体が加熱される場合、超音波振動子までも加熱されてしまうという不具合が防がれる。前記不具合が防がれるので、耐熱性の低い圧電素子でも超音波振動子として用いることができる。
【0033】
また本発明によれば、超音波ホーンの超音波振動方向の両端部は、共振の腹位置の部分であり、支持手段によって支持するのは、前記超音波ホーンの超音波振動方向の両端部であるので、ボルト部材を用いた締結などによって、超音波ホーンと支持手段とを容易に連結することができる。
【0034】
また本発明によれば、超音波ホーンの慣性質量は、装置全体の慣性質量の1.0%以下に選ばれる。超音波ホーンは、共振しているとき、重心が不変であるけれども、前記腹位置の部分は、超音波振動方向に振動する。したがって支持手段には、振動が伝達されることになる。この振動によって、装置全体のうち超音波ホーンを除く残余の部分が振動することがある。超音波ホーンの慣性質量が装置全体の慣性質量の1.0%を超えると、前記残余の部分が超音波ホーンの共振に伴って振動してしまう。超音波ホーンの慣性質量を装置全体の慣性質量の1.0%以下にすると、前記残余の部分が超音波ホーンの共振に伴って振動してしまうという不具合が防がれる。
【0035】
また本発明によれば、支持部材は、超音波ホーンの前記腹位置の部分に連結されて半導体チップの押圧方向に延びる。この支持部材の超音波ホーンに連結される側とは反対側の端部には、ホルダが連結される。基板保持体は、支持部材の超音波ホーンに連結される側とは反対側の端部よりも、半導体チップの押圧方向とは反対方向に退避した位置で、回路基板を保持する。したがって装置全体を大形化することなく、基板保持体を大きくして基板保持体の慣性質量を大きくすることができる。
【0036】
このように基板保持体の慣性質量を大きくすることによって、超音波フリップチップ接合時に発生する基板保持体の振動を抑えることができる。これによって半導体チップと回路基板との相対振動の低下を抑え、半導体チップと回路基板とを確実にフリップチップ接合することができる。したがって高い信頼性を有するモジュールを得ることができ、歩留まりを向上させることができる。
【0037】
本発明によれば、超音波振動子が超音波振動する。この超音波振動子の超音波振動によって、超音波ホーンが超音波振動方向に共振する。超音波ホーンには、チップ保持体が設けられる。このチップ保持体は、超音波ホーンとともに共振する。
【0038】
チップ保持体は、半導体チップを、超音波振動方向に平行に保持する。基板保持体は、回路基板を、チップ保持体によって保持される半導体チップに対して平行に保持する。押圧手段は、チップ保持体によって保持される半導体チップを、基板保持体によって保持される回路基板に押圧する。
【0039】
したがって半導体チップを回路基板に押圧した押圧状態で、前記半導体チップをこの半導体チップに対して平行な方向に振動させることができる。これによって半導体チップと回路基板とをフリップチップ接合することができる。
【0040】
超音波振動子は、超音波ホーンにおける共振の節位置に配置される。超音波ホーンの節位置の部分での微小な振動は、超音波ホーンの腹位置の部分で大きな振動になる。したがって超音波振動子の超音波振動を有効に利用することができ、超音波振動の伝達効率を向上させることができる。
【0041】
しかも超音波振動子は、超音波振動方向の両端部が超音波ホーンに接触した状態で超音波ホーンに設けられる。このように超音波振動子が超音波振動方向の両側から支持されるので、超音波振動のときに超音波振動子が変位してしまうという不具合が防がれる。これによって、超音波振動子の超音波振動をさらに有効に利用することができ、超音波振動の伝達効率をさらに向上させることができる。また前記不具合が防がれるので、共振の安定性を向上させることができ、半導体チップと回路基板とを確実にフリップチップ接合することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
図1は、本発明の実施の一形態の超音波フリップチップ接合装置21の構成を説明するための図であり、図1(1)は超音波ホーン22付近の正面図であり、図1(2)は超音波ホーン22に生じる定常波の波形を示す図である。本実施の形態の超音波フリップチップ接合装置(以下「接合装置」という)21は、半導体チップ23と回路基板24とをフリップチップ接合するために用いられる。
【0043】
半導体チップ23は、たとえばシリコン基板に微細な電子回路パターンが形成されて構成される。この半導体チップ23の一表面には、複数の電極が形成される。回路基板24は、たとえば有機基板に配線パターンが形成されて構成される。この回路基板24の一表面には、複数の電極が形成される。半導体チップ23の各電極には、バンプがそれぞれ設けられる。バンプは、たとえばAuボールバンプである。Auボールバンプの径は、たとえば60μmである。フリップチップ接合では、半導体チップ23の各電極と回路基板24の各電極とが、各バンプを介してそれぞれ接合される。
【0044】
本実施の形態の接合装置21は、半導体チップ23と回路基板24とをフリップチップ接合するにあたって、超音波振動を利用する。この接合装置21は、超音波振動する超音波振動子25と、超音波振動子25による超音波振動によって超音波振動方向Aに共振する超音波ホーン22と、超音波ホーン22を支持する支持手段26と、超音波ホーン22に設けられ、半導体チップ23を保持するチップ保持体27と、回路基板24を保持する基板保持体28と、チップ保持体27によって保持される半導体チップ23を、基板保持体28によって保持される回路基板24に押圧する押圧手段29とを含む。
【0045】
このような接合装置21では、各バンプを介して半導体チップ23の各電極を回路基板24の各電極に押圧した押圧状態で、前記半導体チップ23および各バンプを半導体チップ23に対して平行な方向に振動させることができる。これによって各バンプと回路基板24の各電極とが擦れ合い、各バンプの表面を覆っている汚染層と回路基板24の各電極の表面を覆っている汚染層とが除去され、各バンプと回路基板24の各電極とが接合される。このようにして半導体チップ23と回路基板24とが接合される。
【0046】
前記超音波振動子25は、予め定める周波数で超音波振動する。予め定める周波数は、たとえば、50kHzに選ばれる。超音波振動子25は、圧電素子によって実現される。圧電素子は、ピエゾ素子とも呼ばれる。圧電素子は、電気エネルギーを機械エネルギーに変換するエネルギー変換器である。超音波振動子25は、たとえばジルコンチタン酸鉛の圧電素子によって実現される。
【0047】
前記超音波ホーン22は、超音波振動子25の超音波振動方向Aに関して、超音波の1波長分の長さD1を有する。したがって超音波ホーン22は、超音波振動子25による超音波振動によって超音波振動方向Aに共振することができる。超音波ホーン22の長さの基準となる超音波の波長は、超音波振動子25の超音波振動によって超音波ホーン22を伝わる超音波の波長である。超音波ホーン22は、略円柱状であり、その軸線方向が超音波振動方向Aに一致する。超音波ホーン22は、たとえば鉄から成る。超音波ホーン22の慣性質量は、超音波ホール22の所要の剛性が得られる範囲内で、接合装置21全体の慣性質量の1.0%以下に選ばれる。
【0048】
前記支持手段26は、超音波ホーン22の超音波振動方向Aの両端部22a,22bが超音波振動方向Aに振動可能となるように、超音波ホーン22の前記両端部22a,22bを支持する。したがって超音波ホーン22は、超音波振動子25による超音波振動によって、その超音波振動方向Aの両端を自由端として、超音波振動方向Aに共振することができる。
【0049】
前記チップ保持体27は、超音波ホーン22の超音波振動方向Aの両端部22a,22b間の中央部22cに設けられる。チップ保持体27は、超音波振動方向Aに平行なチップ保持面27aが形成される。チップ保持面27aの面積は、半導体チップ23のチップ面積よりも大きい。チップ保持面27aには、半導体チップ23の他表面が当接する。したがってチップ保持体27は、半導体チップ23を、超音波振動方向Aに平行に保持することができる。本実施の形態では、チップ保持面27aは水平な一平面を成し、チップ保持体27は、半導体チップ23を水平に保持し、この半導体チップ23の一表面は下方に臨む。チップ保持体27は、たとえば鉄から成る。チップ保持体27は、前記超音波ホーン22と一体的に形成される。
【0050】
前記基板保持体28は、超音波振動方向Aに平行な基板保持面28aが形成される。基板保持面28aの面積は、回路基板24の基板面積よりも大きい。基板保持面28aには、回路基板24の他表面が当接する。したがって基板保持体28は、回路基板24を、チップ保持体27によって保持される半導体チップ23に対して平行に保持することができる。本実施の形態では、基板保持面28aは水平な一平面を成し、基板保持体28は、回路基板24を水平に保持し、この回路基板24の一表面は上方に臨む。基板保持体28は、たとえばステンレス鋼(SUS)から成る。基板保持体28は、ボンディグステージとも呼ばれる。
【0051】
前記押圧手段29は、基準軸線L1に沿う押圧方向B1の押圧力を、支持手段26および超音波ホーン22を介して、チップ保持体27に与える。基準軸線L1は、前記チップ保持面27aに垂直であり、超音波ホーン22の超音波振動方向Aの中央で超音波ホーン22の軸線と交差する。このような押圧手段29によって、チップ保持体27に保持される半導体チップ23を、基板保持体28に保持される回路基板24に押圧することができる。
【0052】
図2は、支持部材31aを示す斜視図である。図1をも参照して、前記支持手段26は、一対の支持部材31a,31bと、一対の連結部材32a,32bと、ホルダ33とを有する。本実施の形態では、支持手段26は、予め定める仮想一平面に関して面対称に構成される。予め定める仮想一平面は、基準軸線L1を含み、かつ超音波振動方向Aに垂直である。
【0053】
各支持部材31a,31bは、超音波ホーン22の超音波振動方向Aの両端部22a,22bにボルト部材によってそれぞれ連結されて、押圧方向B1にそれぞれ延びる。各連結部材32a,32bは、各支持部材31a,31bの超音波ホーン22に連結される側とは反対側の端部にボルト部材によってそれぞれ連結されて、互いに離反する方向にそれぞれ延びる。
【0054】
ホルダ33は、大略的にC字状であり、超音波ホーン22を外囲するように設けられる。ホルダ33は、超音波振動方向Aに延びる天板34と、この天板34の超音波振動方向Aの両端部に屈曲して連なって押圧方向B1に延びる一対の側板35a,35bとを有する。各側板35a,35bの天板34に連なる側とは反対側の端部には、各連結部材32a,32bの各支持部材31a,31bに連結される側とは反対側の端部が、ボルト部材によってそれぞれ連結される。
【0055】
各支持部材31a,31bは、鉄から成る偏平な板状体である。一例として述べると、各支持部材31a,31bの厚さT1は、5〜15mmである。このような各支持部材31a,31bは、厚み方向Cには可撓性を有し、かつ厚み方向Cに垂直な方向には剛性を有する。
【0056】
各支持部材31a,31bは、それらの厚み方向Cが超音波振動方向Aに一致した状態で、超音波ホーン22の超音波振動方向Aの両端部22a,22bにそれぞれ連結される。したがって各支持部材31a,31bは、超音波ホーン22の前記両端部22a,22bが超音波振動方向Aに振動可能となるように、超音波ホーン22の前記両端部22a,22bを支持することができる。
【0057】
各支持部材31a,31bは、同一であるので、一方の支持部材31aについて詳細に説明し、他方の支持部材31bについては詳細な説明を省略する。支持部材31aの長手方向一端部36には、厚み方向Cに貫通する第1貫通孔37が形成される。この第1貫通孔37には、超音波ホーン22と支持部材31aとを連結するためのボルト部材のねじ部が緩やかに挿通される。支持部材31aの長手方向他端部38には、厚み方向Cに貫通する第2貫通孔39が形成される。この第2貫通孔39には、支持部材31aと連結部材32aとを連結するためのボルト部材のねじ部が緩やかに挿通される。
【0058】
図3は、超音波ホーン22の超音波振動方向Aの一端部22aを拡大して示す断面図である。超音波ホーン22は、挿入孔41が形成されるホーン本体42と、このホーン本体42の前記挿入孔41に挿し込まれるプラグ43とを有する。
【0059】
ホーン本体42の超音波振動方向Aの一端面44には、開口45が形成される。開口45には、超音波振動方向Aに延びる挿入孔41が連通する。開口45から、予め定める退避量D2だけ、ホーン本体42の超音波振動方向Aの他端面に向かって退避した位置には、底面46が形成される。この底面46は、前記開口45および挿入孔41が形成される凹部47の底面である。底面46は、超音波振動方向Aに垂直な一平面を成す。
【0060】
挿入孔41には、開口45を介して、超音波振動子25が挿入されて、さらにプラグ43が挿し込まれる。このプラグ43によって、超音波振動子25に予圧力を与えることができる。挿入孔41にプラグ43が挿し込まれた状態では、プラグ43の先端面48は、超音波振動方向Aに垂直な一平面を成す。
【0061】
超音波振動子25の超音波振動方向Aの一端部25aは、プラグ43の先端面48に接触する。超音波振動子25の超音波振動方向Aの他端部25bは、凹部47の底面46に接触する。したがって超音波振動子25は、その超音波振動方向Aの両端部25a,25bが超音波ホーン22に接触した状態で超音波ホーン22に内蔵される。
【0062】
前記予め定める退避量D2は、超音波の1/4波長分の長さD3に超音波振動子25の超音波振動方向Aの寸法の1/2の長さD4を加えた長さに選ばれる。したがって超音波振動子25の超音波振動方向Aの中央を、超音波ホーン22の超音波振動方向Aの一端から1/4波長分だけ他端に近寄った位置に配置することができる。
【0063】
凹部47の底面46およびプラグ43の先端面48は、超音波ホーン22の超音波振動方向Aに垂直な断面上の中央に配置される。したがって超音波ホーン22を、前記断面上の中央に配置することができる。これによって、超音波ホーン22全体を安定して共振させることができる。
【0064】
ホーン本体42の挿入孔41の周囲には、前記挿入孔41に連通する引出孔49が形成される。引出孔49は、超音波振動方向Aに関して、超音波振動子25と同じ位置に配置される。ホーン本体42の引出孔49に臨む内周面には、電気絶縁性を有する樹脂層が形成される。
【0065】
超音波振動子25には、ケーブル50が電気的に接続される。ケーブル50は、引出孔49を挿通して、ホーン本体42の外部に引き出される。ホーン本体42の外部に引き出されたケーブル50は、少し弛んだ状態で、高周波発生装置51まで導かれる。これによって超音波ホーン22の超音波振動方向Aに垂直な方向への振動を許容することができる。
【0066】
ケーブル50は、高周波発生装置51に電気的に接続される。高周波発生装置51は、ケーブル50を介して、高周波の電気信号を超音波振動子25に与える。超音波振動子25は、高周波発生装置51から与えられる高周波の電気信号に応じて機械振動、すなわち超音波振動する。
【0067】
図4は、チップ保持体27の断面図である。前記図1をも参照して、チップ保持体27は、短四角柱状であり、超音波ホーン22の外周面から外方に突出する。チップ保持体27の先端面は、前記チップ保持面27aである。
【0068】
チップ保持面27aには、開口61が形成される。開口61は、チップ保持面27aの中央に配置される。開口61には、基準軸線L1に沿って延びる第1吸着孔62が連通する。第1吸着孔62には、超音波振動方向Aに延びる第2吸着孔63が連通する。第2吸着孔63には、チップ保持面27aに平行かつ超音波振動方向Aに垂直な方向に延びる第3吸着孔64が連通する。第3吸着孔64には、管路65を介して真空源66が接続される。したがってチップ保持面27aに当接する半導体チップ23を真空吸着することができる。
【0069】
図5は、接合装置21の全体の構成を簡略化して示す正面図である。接合装置21は、テーブル71をさらに含む。テーブル71は、可動テーブルである。テーブル71には、基板保持体28が載置される。テーブル71は、基板保持体28を、X方向およびY方向に移動させる。X方向およびY方向は、基板保持面28aに平行な方向であり、直交する2軸方向である。このようなテーブル71によって、半導体チップ23と回路基板24とを位置合わせすることができる。
【0070】
前記押圧手段29は、基台72と、この基台72に基準軸線L1に沿って移動可能に設けられる可動体73と、可動体73を基台72に対して基準軸線L1に沿って変位させる変位駆動手段74とを有する。
【0071】
基台72は、固定基板75と、この固定基板75に連なって基準軸線L1に沿って押圧方向B1に延びる一対の案内部材76a,76bとを有する。可動体73には、各案内部材76a,76bが挿通する挿通孔77a,77bが形成される。可動体73は、各案内部材76a,76bによって案内される。可動体73には、ホルダ33の天板34が連結される。
【0072】
変位駆動手段74は、固定基板75に固定されるモータ78と、このモータ78の出力軸に連結されるおねじ部79と、おねじ部79が挿通して螺合するめねじ部80とを有する。おねじ部79は、基準軸線L1と同軸である。めねじ部80は、可動体73と一体的に形成される。このような変位駆動手段74によって、チップ保持体27を、基板保持体28に対して基準軸線L1に沿って前進および後退させることができる。また変位駆動手段74によって、半導体チップ23を回路基板24に押圧することができる。
【0073】
前記基板保持体28は、各支持部材31a,31bの超音波ホーン22に連結される側とは反対側の端部68,69よりも、押圧方向B1とは反対方向B2に退避した位置で、回路基板24を保持する。これによってチップ保持体27のチップ保持面27aと基板保持体28の基板保持面28aとの間の距離を小さくして、必要とされるチップ保持体27の移動量を小さくすることができる。
【0074】
図6は、接合装置21の電気的構成を示すブロック図である。接合装置21は、前記真空源66と、カメラ81と、カメラ移動装置82と、圧力センサ83と、前記高周波発生装置51と、制御手段84とをさらに含む。カメラ81は、半導体チップ23および回路基板24を撮像する。カメラ移動装置82は、カメラ81を、撮像位置と退避位置とにわたって移動させる。圧力センサ83は、回路基板24に対する半導体チップ23の押圧力を検出する。
【0075】
制御手段84は、中央演算処理装置(Central Processing Unit、略称CPU)などによって構成される。制御手段84は、カメラ81から撮像結果を与えられ、圧力センサ83から検出結果を与えられる。制御手段84は、真空源66、テーブル71、モータ78カメラ移動装置82および高周波発生装置51を制御する。制御手段84は、タイマ85を有する。
【0076】
図7は、接合装置21の接合動作を説明するためのフローチャートである。接合動作は、チップ保持体27によって半導体チップ23が保持され、基板保持体28によって回路基板24が保持された状態で、開始される。この状態では、半導体チップ23の一表面は下方に臨み、回路基板24の一表面は上方に臨み、半導体チップ23の一表面と回路基板24の一表面とは対向する。半導体チップ23の保持にあたっては、チップ保持体27のチップ保持面27aに半導体チップ23の他表面が当接された状態で、真空源66によって吸引する。
【0077】
接合動作を開始すると、ステップa1で、半導体チップ23と回路基板24とを位置合わせする。このステップa1では、まず、カメラ移動装置82によって、カメラ81を退避位置から撮像位置に移動させ、これによってカメラ81を、半導体チップ23と回路基板24との間の空間に非接触で侵入させる。次に、カメラ81によって、半導体チップ23と回路基板24とを撮像する。カメラ81から撮像結果を与えられると、撮像結果に基づいて、半導体チップ23と回路基板24との相対的な位置ずれを検出する。そして前記検出結果に基づいて、半導体チップ23を基準にして回路基板24の位置ずれを補正するように、テーブル71を制御する。位置合わせが終了すると、カメラ移動装置82によって、カメラ81を撮像位置から退避位置に移動させ、ステップa2に進む。
【0078】
ステップa2では、モータ78によるチップ保持体27の前進を開始し、ステップa3に進む。ステップa3では、圧力センサ83から与えられる検出結果に基づいて、回路基板24に対する半導体チップ23の押圧力が予め定める押圧値を超えたか否かを判定する。前記予め定める押圧値を超えるまで、ステップa3の動作を繰り返し実行し、前記予め定める押圧値を超えたと判定すると、ステップa4に進む。ステップa4では、モータ78によるチップ保持体27の前進を終了し、ステップa5に進む。
【0079】
ステップa5では、高周波発生装置51による超音波振動子25の超音波振動を開始し、ステップa6に進む。ステップa6では、タイマ85によって計時し、超音波振動子25による超音波振動を開始してから予め定める接合時間を経過したか否かを判定する。前記予め定める接合時間を経過するまで、ステップa6の動作を繰り返し実行し、前記予め定める接合時間を経過したと判定すると、ステップa7に進む。ステップa7では、高周波発生装置51による超音波振動子25の超音波振動を終了し、ステップa8に進む。ステップa8では、モータ78によって、チップ保持体27を後退させ、接合動作を終了する。
【0080】
このような接合動作では、前記ステップa3で前記予め定める押圧値を超えたと判定すると前記ステップa4でモータ78によるチップ保持体27の前進を終了するけれども、前記判定後も、前記予め定める押圧値よりも高い予め定める他の押圧値になるまで、チップ保持体27の前進を継続してもよい。
【0081】
本実施の形態では、超音波ホーン22には、図1(2)に示すような定常波が生じる。図1(2)は、超音波ホーン22内の各点の変位を示す。図1(2)において、横軸は、各点の静止時の位置を示し、縦軸は、各点の、静止時の位置からの変位を示す。縦軸では、静止時の位置から超音波振動方向一方A1への変位を正とし、静止時の位置から超音波振動方向他方A2への変位を負とする。図1(2)では、各点の、静止時の位置からの変位が最大となる第1および第2時刻t1,t2における定常波の波形だけを示す。
【0082】
第1時刻t1における定常波の波形は、実線91で示すような正弦曲線となり、第2時刻t2における定常波の波形は、仮想線92で示すような正弦曲線となる。第1時刻t1では、超音波ホーン22の超音波振動方向Aの両端で、超音波振動方向一方A1への変位が最大となり、前記両端間の中央で、超音波振動方向他方A2への変位が最大となる。第2時刻t2では、超音波ホーン22の超音波振動方向Aの両端で、超音波振動方向他方A2への変位が最大となり、前記両端間の中央で、超音波振動方向一方A1への変位が最大となる。
【0083】
超音波ホーン22内の各点の中には、共振時に超音波振動方向Aに最も振動する点が存在する。前記最も振動する点の静止時の位置は、超音波ホーン22における共振の腹位置という。本実施の形態では、超音波ホーン22の超音波振動方向Aの両端P1,P2と、前記両端間の中央P3とが、腹位置となる。超音波ホーン22の腹位置の部分は、残余の部分に比べて、圧力変化が小さく、したがって圧力変化に起因する超音波振動方向Aに垂直な方向への振動が小さい。
【0084】
超音波ホーン22内の各点の中には、共振時に超音波振動方向Aに振動しない点が存在する。前記振動しない点の静止時の位置は、超音波ホーン22における共振の節位置という。本実施の形態では、超音波ホーン22の超音波振動方向Aの一端から1/4波長分だけ他端に近寄った位置P4と、超音波ホーン22の超音波振動方向Aの他端から1/4波長分だけ一端に近寄った位置P5とが、節位置となる。超音波ホーン22の節位置の部分は、圧力変化が最も大きく、したがって圧力変化に起因する超音波振動方向Aに垂直な方向への振動が最も大きい。
【0085】
以上のような本実施の形態によれば、超音波ホーン22の超音波振動方向Aの両端部22a,22bを、支持手段26によって支持する。超音波ホーン22の前記両端部22a,22bは、超音波ホーン22の腹位置の部分である。超音波ホーン22の腹位置の部分は、残余の部分に比べて、超音波振動方向Aに垂直な方向への振動が小さい。したがって押圧状態で半導体チップ23がこの半導体チップ23に対して垂直な方向に振動してしまうという不具合を可及的に抑制することができる。したがって半導体チップ23の破損を防ぐことができる。
【0086】
超音波ホーン22の前記両端部22a,22bは、超音波ホーン22の腹位置の部分であり、したがって超音波振動方向Aに振動する。これを考慮して、超音波ホーン22の前記両端部22a,22bが超音波振動方向Aに振動可能となるように、超音波ホーン22の前記両端部22a,22bを支持手段26によって支持する。これによって超音波ホーン22の前記両端部22a,22bの振動を許容し、超音波ホーン22を支持する支持手段26が超音波ホーン22の共振に与える影響を抑えることができる。
【0087】
超音波振動子25は、超音波ホーン22の超音波振動方向Aの一端から1/4波長分だけ他端に近寄った位置に配置される。この位置は、超音波ホーン22の節位置である。超音波ホーン22の節位置の部分での微小な振動は、超音波ホーン22の腹位置の部分で大きな振動になる。したがって超音波振動子25の超音波振動を有効に利用することができ、超音波振動の伝達効率を向上させることができる。
【0088】
しかも超音波振動子25は、その超音波振動方向Aの両端部25a,25bが超音波ホーン22に接触した状態で超音波ホーン22に内蔵される。このように超音波振動子25が超音波振動方向Aの両側から支持されるので、超音波振動のときに超音波振動子25が変位してしまうという不具合が防がれる。これによって共振の安定性を向上させることができ、半導体チップ23と回路基板24とを確実にフリップチップ接合することができる。また前記不具合が防がれるので、超音波振動子25の超音波振動をさらに有効に利用することができ、超音波振動の伝達効率をさらに向上させることができる。
【0089】
このような本実施の形態では、半導体チップ23を破損することなく、半導体チップ23と回路基板24とを確実にフリップチップ接合することができる。したがって歩留まりを向上させ、生産コストを低減することができる。
【0090】
また本実施の形態によれば、超音波ホーン22の超音波振動方向Aの両端部22a,22bは、共振の腹位置の部分であり、支持手段26によって支持するのは、前記超音波ホーン22の超音波振動方向Aの両端部22a,22bであるので、ボルト部材を用いた締結によって、超音波ホーン22と支持手段26とを容易に連結することができる。
【0091】
また本実施の形態によれば、超音波ホーン22の慣性質量は、接合装置21全体の慣性質量の1.0%以下に選ばれる。超音波ホーン22は、共振しているとき、重心が不変であるけれども、腹位置の部分は、超音波振動方向Aに振動する。したがって支持手段26には、振動が伝達されることになる。この振動によって、接合装置21全体のうち超音波ホーン22を除く残余の部分が振動することがある。
【0092】
特に、本実施の形態のように、各支持部材31a,31b間の距離が超音波の波長の自然数倍の長さに相当する場合、各支持部材31a,31bに連結される超音波ホーン22の超音波振動方向Aの両端部22a,22bは、同一方向に振動する。したがって前記残余の部分が振動することがある。
【0093】
超音波ホーン22の慣性質量が接合装置21全体の慣性質量の1.0%を超えると、前記残余の部分が超音波ホーン22の共振に伴って振動してしまう。超音波ホーン22の慣性質量を接合装置21全体の慣性質量の1.0%以下すると、前記残余の部分が超音波ホーン22の共振に伴って振動してしまうという不具合が防がれる。
【0094】
さらに言えば、可動体73が基台72と剛な構造である場合、前記残余の部分の慣性質量は、可動体73と基台72とを合わせた慣性質量とみなすことができる。これに対して、可動体73が基台72に柔に取付けられる場合、前記残余の部分の慣性質量は、可動体73の慣性質量とみなすべきである。この場合は、超音波ホーン22の慣性質量は、可動体73の慣性質量よりも十分(2桁以上)小さくなるように選ばれる。具体的には、超音波ホーン22の慣性質量は、可動体73の慣性質量の1%以下に選ばれる。
【0095】
また本実施の形態によれば、各支持部材31a,31bは、超音波ホーン22の前記両端部22a,22bにそれぞれ連結されて半導体チップ23の押圧方向B1に延びる。この支持部材31a,31bの超音波ホーン22に連結される側とは反対側の端部には、各連結部材32a,32bを介してホルダ33が連結される。基板保持体28は、支持部材31a,31bの超音波ホーン22に連結される側とは反対側の端部68,69よりも、押圧方向B1とは反対方向B2に退避した位置で、回路基板24を保持する。接合装置21全体を大形化することなく、基板保持体28を大きくして基板保持体28の慣性質量を大きくすることができる。
【0096】
このように基板保持体28の慣性質量を大きくすることによって、超音波フリップチップ接合時に発生する基板保持体28の振動を抑えることができる。これによって半導体チップ23と回路基板24との相対振動の低下を抑え、半導体チップ23と回路基板24とを確実にフリップチップ接合することができる。したがって高い信頼性を有するモジュールを得ることができ、歩留まりを向上させることができる。
【0097】
表1は、本実施の形態の接合装置21および従来の接合装置を用いてそれぞれ作成したサンプルについての、せん断強度と、半導体チップの破損発生率とを示す。本実施の形態の接合装置21を用いて、予め定める接合条件で、50個のサンプルを作成した。また比較のために、図8に示すような従来の接合装置を用いて、前記予め定める接合条件と同一の接合条件で、50個のサンプルを作成した。これらの各サンプルから、せん断強度と、半導体チップの破損発生率とを求めた。サンプルの作成には、以下のような半導体チップおよび回路基板を用いた。
【0098】
半導体チップの外形寸法は、10×10×0.1(mm)である。半導体チップの一表面には、350個の電極が形成される。各電極は、スパッタリングによって形成され、アルミニウムから成る。各電極は、90μm角であり、厚みが1μmである。各電極には、直径60μm、高さ30μmの金ボールバンプがそれぞれ設けられる。
【0099】
回路基板の外形寸法は、14×14×0.1(mm)である。回路基板は、ガラスエポキシ基板などから成り、回路基板の一表面には、350個の電極が形成される。各電極は、回路基板の一表面に形成される銅配線上に、ニッケル(Ni)および金(Au)を順次、めっきすることによって形成される。最表層に形成される金は、たとえば無電解めっき法で0.5μm厚に形成される。
【0100】
半導体チップと回路基板とを接合するにあたっては、半導体チップと回路基板とを位置合わせした後、半導体チップに設けられる各バンプへの加圧を開始し、バンプ1個あたりの加圧力が30MPaに達すると、超音波振動を開始した。超音波出力は1Wとし、この出力を500ms間、維持した。バンプ1個あたりの加圧力は、最終的に90MPaまで上昇させた。
【0101】
せん断強度を測定するにあたっては、半導体チップと回路基板とをフリップチップ接合した後、まず、半導体チップを、各バンプを残して除去した。そして各バンプと、回路基板の各電極との接合部のせん断強度を、シェアツールを用いて測定した。前記接合部のせん断強度は、接合強度に相当する。
【0102】
【表1】

【0103】
表1に示すように、従来の接合装置を用いた場合は、せん断強度は充分高いけれども、50個のうち8個に、断線などの破損が散見された。これに対して、本実施の形態の接合装置21を用いた場合は、従来の接合装置を用いた場合よりも高いせん断強度が得られ、かつ半導体チップの破損は見られなかった。
【0104】
表2は、超音波出力を下げた場合の、せん断強度と、半導体チップの破損発生率とを示す。本実施の形態の接合装置21を用いて、前記予め定める接合条件と類似の接合条件で、50個のサンプルを作成した。前記予め定める接合条件と異なるのは、超音波出力を、1Wの半分である500mWにした点である。前記作成した各サンプルから、せん断強度と、半導体チップの破損発生率とを求めた。
【0105】
【表2】

【0106】
表2に示すように、超音波出力を500mWに下げた場合でも、表1の従来の接合装置を用いた場合と、同等のせん断強度が得られた。このことから、本実施の形態の接合装置21を用いた場合は、従来の接合装置に比べて、超音波振動の伝達効率が約2倍、向上され、低い超音波エネルギーにてフリップチップ接合が可能であることが判る。また超音波出力を500mWに下げた場合も、半導体チップの破損は見られなかった。
【0107】
前述の実施の形態は、本発明の例示に過ぎず、本発明の範囲内において構成を変更することができる。超音波ホーン22と各支持部材31a,31bとの連結については、強固に固定することができればよく、超音波ホーン22と各支持部材31a,31bとは、たとえば溶接によって連結されてもよい。各支持部材31a,31bと各連結部材32a,32bとの連結、および各連結部材32a,32bとホルダ33との連結についても、同様である。
【0108】
超音波振動子25は、圧電素子に限らず、たとえば磁歪素子であってもよい。超音波ホーン22の材質は、鉄に限らず、たとえばアルミニウム合金、黄銅、ステンレス鋼およびチタン合金であってもよい。
【0109】
超音波ホーン22は、超音波振動方向Aに関して、超音波の波長の自然数倍の長さ、および超音波の波長の自然数倍に超音波の半波長を加えた長さのいずれか一方の長さを有していればよい。超音波ホーン22における共振の節位置が複数、存在する場合、複数の節位置のうちチップ保持体27から最も離れた節位置に、超音波振動子25が配置される。したがって超音波振動子25がチップ保持体27から受ける影響を抑えることができる。
【0110】
超音波フリップチップ接合時に、加熱手段によって回路基板24を加熱してもよい。この場合、回路基板24の温度を温度計によって計測し、制御手段84は、タイマによる計時結果と、温度計による計測結果とに基づいて、接合時間を決定してもよい。
【0111】
回路基板24が加熱される場合、各バンプおよび半導体チップ23を介してチップ保持体27も加熱されてしまう。これを考慮して、前述のように、複数の節位置のうちチップ保持体27から最も離れた節位置に、超音波振動子25を配置することよって、超音波振動子25とチップ保持体27との間の距離を大きくする。
【0112】
このように超音波振動子25とチップ保持体27との間の距離を大きくすることによって、超音波振動子25までも加熱されてしまうという不具合が防がれる。また超音波振動子25とチップ保持体27との間の距離を大きくし、冷却ファンなどの冷却手段を用いて、超音波ホーン22における超音波振動子25の周囲の部分に風を送ることによって、超音波振動子25までも加熱されてしまうという不具合がより確実に防がれる。前記冷却手段は、たとえばホルダ33に取付けられる。
【0113】
前述のように、超音波振動子25までも加熱されてしまうという不具合が防がれるので、耐熱性の低い圧電素子でも超音波振動子25として用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】本発明の実施の一形態の超音波フリップチップ接合装置21の構成を説明するための図である。
【図2】支持部材31aを示す斜視図である。
【図3】超音波ホーン22の超音波振動方向Aの一端部22aを拡大して示す断面図である。
【図4】チップ保持体27の断面図である。
【図5】接合装置21の全体の構成を簡略化して示す正面図である。
【図6】接合装置21の電気的構成を示すブロック図である。
【図7】接合装置21の接合動作を説明するためのフローチャートである。
【図8】第2の従来技術の超音波接合装置1の構成を簡略化して示す正面図である。
【符号の説明】
【0115】
21 超音波フリップチップ接合装置
22 超音波ホーン
23 半導体チップ
24 回路基板
25 超音波振動子
26 支持手段
27 チップ保持体
28 基板保持体
29 押圧手段
31a,31b 支持部材
32a,32b 連結部材
33 ホルダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップと回路基板とを超音波振動を利用してフリップチップ接合する超音波フリップチップ接合装置であって、
超音波振動する超音波振動子と、
超音波振動子による超音波振動によって超音波振動方向に共振する超音波ホーンと、
超音波ホーンを支持する支持手段と、
超音波ホーンに設けられ、半導体チップを、超音波振動方向に平行に保持するチップ保持体と、
回路基板を、チップ保持体によって保持される半導体チップに対して平行に保持する基板保持体と、
チップ保持体によって保持される半導体チップを、基板保持体によって保持される回路基板に押圧する押圧手段とを含み、
支持手段は、超音波ホーンにおける共振の腹位置の部分が超音波振動方向に振動可能となるように、超音波ホーンの前記腹位置の部分を支持し、
超音波振動子は、超音波ホーンにおける共振の節位置に配置され、超音波振動方向の両端部が超音波ホーンに接触した状態で超音波ホーンに設けられることを特徴とする超音波フリップチップ接合装置。
【請求項2】
超音波ホーンにおける共振の節位置が複数、存在する場合、
超音波振動子は、複数の節位置のうちチップ保持体から最も離れた節位置に配置されることを特徴とする請求項1記載の超音波フリップチップ接合装置。
【請求項3】
支持手段は、超音波ホーンの超音波振動方向の両端部を支持することを特徴とする請求項1または2記載の超音波フリップチップ接合装置。
【請求項4】
超音波ホーンの慣性質量は、装置全体の慣性質量の1.0%以下に選ばれることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の超音波フリップチップ接合装置。
【請求項5】
支持手段は、
超音波ホーンの前記腹位置の部分に連結されて半導体チップの押圧方向に延び、超音波振動方向に可撓性を有する支持部材と、
支持部材の超音波ホーンに連結される側とは反対側の端部に連結されるホルダとを含み、
基板保持体は、支持部材の超音波ホーンに連結される側とは反対側の端部よりも、半導体チップの押圧方向とは反対方向に退避した位置で、回路基板を保持することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の超音波フリップチップ接合装置。
【請求項6】
半導体チップと回路基板とを超音波振動を利用してフリップチップ接合する超音波フリップチップ接合装置であって、
超音波振動する超音波振動子と、
超音波振動子による超音波振動によって超音波振動方向に共振する超音波ホーンと、
超音波ホーンに設けられ、半導体チップを、超音波振動方向に平行に保持するチップ保持体と、
回路基板を、チップ保持体によって保持される半導体チップに対して平行に保持する基板保持体と、
チップ保持体によって保持される半導体チップを、基板保持体によって保持される回路基板に押圧する押圧手段とを含み、
超音波振動子は、超音波ホーンにおける共振の節位置に配置され、超音波振動方向の両端部が超音波ホーンに接触した状態で超音波ホーンに設けられることを特徴とする超音波フリップチップ接合装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−5546(P2007−5546A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−183503(P2005−183503)
【出願日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】