説明

超音波基板処理ユニット及び超音波基板処理装置

【課題】重量の増加を抑制しつつ、超音波を放射する放射面を大きく確保できる超音波基板処理ユニット及び超音波基板処理装置を提供する。
【解決手段】超音波基板処理ユニット10は、対向する半導体ウェハWHの表面WSに超音波を放射する放射面31を有する振動体30と、これを超音波振動させて、放射面31から超音波を放射させる複数の超音波振動子21とを備える。振動体30は、クサビ形状で、放射面31を複数の分割放射面に仮想的に分割する複数のクサビ部からなる。クサビ部は、分割放射面、これと鋭角αをなし、超音波振動子21で加振される加振面、分割放射面と鋭角βをなし、加振面とも角γをなし、分割放射面及び加振面に直交する仮想直交面に対して直交し、加振面から離れるほど分割放射面に近づく平坦なクサビ面、で囲まれる形態とされてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェハ等の被処理基板の被処理表面に、純水や薬液を介して超音波を照射し、この基板の被処理表面の洗浄や処理を行う超音波基板処理ユニット、及びこれを備えて被処理基板を処理する超音波基板処理装置に関し、特に、被処理基板の広い範囲を処理できる超音波基板処理ユニット及び超音波基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェハやガラス基板等の基板の表面を洗浄等する基板処理装置や洗浄装置として、たとえば、特許文献1,2が知られている。これらに記載のものでは、三角柱状(くさび形)の振動体の取付面(背面)に超音波振動子を取り付け、これを振動させて、基板に対向させた基板対向面(平行面)から超音波を放射させて、基板を洗浄等する。
これらの装置では、取付面(背面)の大きさに比して、広い放射面から超音波を放射できるので、基板の広い範囲に亘って洗浄等を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−163195号公報(図1参照)
【特許文献2】特開2004−356592号公報(図1参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1,2に記載されているように、基板が振動体よりも大きい場合には、基板を回転させて、基板全体の洗浄等を行うことにならざるを得ない。
しかしながら、処理のスループット向上の要請や、半導体ウェハなどの被処理基板の大型化に伴い、さらに大きな放射面を有する超音波基板処理ユニット及びこれを備えた超音波基板処理装置が求められている。
これに対応するに当たり、単に、振動体を比例的に大型化する、例えば、振動体の各部の寸法を2倍とすると、放射面の大きさは4倍(22倍)とすることができる。しかし、振動体の重量は8倍(23倍)になるというように、単に放射面の大きさを大きくするだけでは、振動体の重量の増加の方が大きく影響し、振動体の吊り下げ等、振動体の保持が難しくなる不具合がある。
【0005】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであって、重量の増加を抑制しつつ、超音波を放射する放射面を大きく確保できる超音波基板処理ユニット及び超音波基板処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
その解決手段の一態様は、被処理基板の被処理表面に対向させて、上記被処理表面に向けて超音波を放射する平坦な単一の放射面を有する一体の振動体と、上記振動体を超音波振動させて、上記放射面から超音波を放射させる複数の超音波振動子と、を備える超音波基板処理ユニットであって、上記振動体は、クサビ形状をなし、上記放射面を複数の分割放射面に仮想的に分割する、複数のクサビ部からなり、複数の上記クサビ部は、それぞれ、上記分割放射面と、上記分割放射面と鋭角をなし、少なくとも1つの上記超音波振動子の超音波振動が加えられる平坦な加振面と、上記分割放射面と鋭角をなし、上記加振面とも角をなし、上記分割放射面及び上記加振面に直交する仮想直交面に対して直交し、上記加振面から離れるほど上記分割放射面に近づく平坦なクサビ面と、で囲まれる形態とされてなる超音波基板処理ユニットである。
【0007】
この超音波基板処理ユニットでは、単一の放射面を有する振動体を用いながらも、この振動体は、放射面を複数の分割放射面に仮想的に分割する複数のクサビ部からなっている。なお、このクサビ部は、分割放射面と加振面及びクサビ面とで囲まれ、クサビ形状をなしている。
従って、各々クサビ部の加振面を、それぞれ少なくとも1つの超音波振動子で加振することで、各々のクサビ部の分割放射面から超音波が放射されるから、従来に比して、さらに広い面積に亘って、被処理基板を処理(洗浄等)することができる。
しかも、例えば、放射面の面積を2倍としても、振動体の重量もこれに比例して2倍程度となるだけに止めることができる。かくして、重量の増加を抑制しつつ、超音波を放射する放射面を大きく確保した超音波基板処理ユニットとすることができる。従って、振動体の保持も容易である。
さらに、振動体を一体としているので、従来のクサビ形の振動体を複数同時に用いたとした場合よりも、振動体の扱いや処理が容易である。また、被処理基板の被処理表面が、放射面よりも小さい場合には、被処理基板を回転させることなく一度に洗浄等の処理を行うことができる。
【0008】
なお、振動体を上述のように構成したので、各クサビ部は、各分割放射面で単一の放射面を形成する一方、加振面は互いに異なる方向を向いている。また、クサビ面も互いに異なる方向を向いている。
この振動体は、一体の部材とされてなり、たとえば、全体を金属塊からの削り出しで形成した金属体や一体に鋳造した金属体、一体焼結したセラミックス体が挙げられる。
【0009】
また、加振面に超音波振動を加える超音波振動子は、接着剤等によって、加振面に直接固着されていても良いし、振動伝達部材を介して接続されていても良い。
超音波振動子としては、たとえば、板状の圧電セラミックスからなるものが挙げられる。その他、積層型、ボルト締めランジュバン形振動子などの超音波振動子を用いることもできる。また、1つの加振面に、複数の超音波振動子を接続しても良い。そのほか、クサビ部の加振面に接続する超音波振動子の共振周波数を、各クサビ部のうち、一部について異ならせる、或いは、いずれのクサビ部についても互いに異ならせるようにすることもできる。
なお、各クサビ部の加振面に接続された各超音波振動子を、駆動するパターンとしては様々なパターンを用いることができる。たとえば、各超音波振動子を、同時に駆動しても良いし、交互に駆動したり、順次駆動する、或いは一部のみ駆動するなどの駆動パターンとすることができる。
【0010】
振動体は、各クサビ部の分割放射面が互いに同じ面積となる形態とするのが好ましく、さらには、各クサビ部が互いに同様の形態となるのが好ましい。
また、クサビ面と加振面とのなす角は、鋭角、鈍角のいずれとしても良いが、90度近くの大きさとするのが好ましく、特に、90度とすると良い。このようにすると、加振面から入射した超音波を、クサビ面で反射することなく、このクサビ面に沿ってクサビ部の先端に向けて進行させることができる。このため、クサビ部のうち先端部分まで直接超音波を伝えることが出来る上、クサビ面での超音波の反射に伴って、分割放射面から放射される超音波の強度が場所的に不均一となるのを防止し、分割放射面の各所から均一に超音波を放射させることができる。
【0011】
また、上述の超音波基板処理ユニットであって、前記クサビ部は、前記クサビ面と前記加振面とのなす角が90度である超音波基板処理ユニットとすると良い。
【0012】
この超音波基板処理ユニットでは、クサビ部において、加振面がクサビ面と直交している。なお、加振面は分割放射面と鋭角に交叉している。このため、加振面からこの加振面に直交する方向に入射した超音波は、(クサビ面が加振面に直交しているから)クサビ面に沿って、このクサビ面と分割放射面が接近する先細の先端側に向けてクサビ部(振動体)内を進行する。すると、超音波が進行するに従って、分割放射面のうち加振面に近い部位から順に、超音波の一部が到達するので、ここから、この分割放射面と被処理基板との間に保持される純水などの媒体を介して、被処理基板に向けて超音波が放射される。そして、クサビ部内を進行する超音波は、クサビ面と加振面とがなす角を鈍角である場合と異なり、加振面から最も離れた先端部(クサビ面と分割放射面が交叉する付近)まで直接届くため、分割放射面について、その加振面側から先端部まで、全体に亘って均一に超音波を放射することができる。しかも、クサビ面と加振面とがなす角を鋭角とした場合と異なり、クサビ部内を進行する超音波が、クサビ面に反射されることなくクサビ面に沿って進行するので、反射波との干渉等による超音波強度の場所的な不均一が生じにくく、分割放射面の各部から放射される超音波の強度が、加振面からの距離に影響されにくい。
【0013】
さらに、上述のいずれかに記載の超音波基板処理ユニットであって、前記振動体は、各々の前記クサビ部のうち前記加振面から最も離れた先端部が、いずれも前記放射面の径方向の中央部分に集まった形態とされてなる超音波基板処理ユニットとすると良い。
【0014】
この超音波基板処理ユニットでは、各クサビ部の先端部が、放射面の径方向の中央部分に集まった形態とされている。この先端部は、放射面とクサビ面との間の距離(厚み)が薄くなっている。従って、この振動体は、周囲が厚く、中央部分が薄い形態となっている。
また、この振動体は、放射面の径方向の外側、つまり振動体の外周に各クサビ部の加振面が位置している形態となる。このため、複数のクサビ部が含まれていながら、各加振面の面積を十分に確保できるから、より大きな超音波振動子で加振面全体を加振できるので、各クサビ部を、従って、振動体全体を、各超音波振動子で十分に加振できる。かくして、各分割放射面から、従って放射面から、強力な超音波を放射させることができる。
【0015】
さらに、上述の超音波基板処理ユニットであって、前記振動体は、各々の前記クサビ部の前記分割放射面およびクサビ面が三角形状をなす形態とされてなる超音波基板処理ユニットとすると良い。
【0016】
従来(特許文献1,2参照)の三角柱状(クサビ状)の振動体と比較すれば判るように、この超音波基板処理ユニットでは、上述の形態の振動体を有するので、各クサビ部において、分割放射面の大きさの割に、加振面を大きく確保できるから、より大きな超音波振動子で加振面全体を加振できるので、各クサビ部を、従って、振動体全体を、各超音波振動子で十分に加振できる。かくして、各分割放射面から、従って放射面から、強力な超音波を放射させることができる。
【0017】
さらに、上述の超音波基板処理ユニットであって、前記振動体は、各々の前記クサビ部が、互いに同形状となる形態とされてなり、各々のクサビ部の前記加振面に接続される前記超音波振動子も、互いに同等である超音波基板処理ユニットとすると良い。
【0018】
この超音波基板処理ユニットでは、振動体は、各クサビ部の先端部が中央に集まり、各分割放射面が三角形状で、しかも各クサビ部が同形状となる形態とされてなる。このような形態の振動体では、放射面が正多角形(たとえば正方形)となる。しかも、各クサビ部において、加振面に接続される超音波振動子も互いに同等である。
このため、この超音波基板処理ユニットでは、同形状の各クサビ部を、同等の超音波振動子で超音波振動させることができるので、放射面全体に亘って、均一に超音波を放射させることができる。
【0019】
さらに、上述のいずれか1項に記載の超音波基板処理ユニットであって、前記振動体は、前記放射面の大きさが、前記被処理基板の前記被処理表面よりも、大きくされてなる超音波基板処理ユニットとすると良い。
【0020】
この超音波基板処理ユニットでは、振動体の放射面が、被処理基板の被処理表面よりも大きくされている。このため、振動体の放射面で被処理表面全体を覆うようにして、超音波によって洗浄等の処理を行うことで、従来のように、被処理基板を回転させることなく、容易にかつ早く、被処理表面全体を処理することができる。
【0021】
さらに、上述のいずれか1項に記載の超音波基板処理ユニットと、前記超音波振動子を駆動する駆動装置と、を備える超音波基板処理装置とすると良い。
【0022】
前述の超音波基板処理ユニットを備える超音波基板処理装置では、振動板の放射面の大きさを大きく確保できる一方で、振動体の重量増加を抑制した超音波基板処理装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施形態にかかる超音波基板処理装置を示す説明図である。
【図2】実施形態にかかる超音波基板処理装置のうち、振動体及び超音波振動子を有する超音波基板処理ユニットの斜視図である。
【図3】実施形態にかかる超音波基板処理装置のうち、超音波基板処理ユニットの平面図である。
【図4】実施形態にかかる超音波基板処理装置のうち、超音波基板処理ユニットの側面図である。
【図5】実施形態にかかり、振動体の放射面における分割の様子を示す説明図である。
【図6】実施形態にかかり、振動体の分割放射面及び加振面と、これらに直交する仮想直交面との関係を示す説明図である。
【図7】実施形態にかかり、振動体を複数のクサビ部に仮想的に分割した場合の、クサビ部の形状を示す、クサビ部及び振動子ユニットの仮想的な側面図である。
【図8】変形形態1にかかり、振動体の放射面における分割の様子を示す説明図である。
【図9】変形形態2にかかり、振動体の放射面における分割の様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(実施形態)
超音波基板処理ユニット及びこれを用いた超音波基板処理装置についての実施の形態を、図1〜図7を参照して説明する。
図1に示す超音波基板処理装置1は、主として、超音波基板処理ユニット10と、これを駆動する駆動装置2と、洗浄液CWを供給する洗浄液供給装置5からなる。このうち、図2〜図4に示す超音波処理ユニット10は、大略、正方形椀状とされた振動体30と、その側面33にそれぞれ固着された4つの超音波振動子21をそれぞれ含む4つの振動子ユニット20とからなる。駆動装置2は、各々超音波振動子21を駆動する発振回路ユニット4と、これらの駆動を総合的に制御する駆動制御装置3とを含んでいる。
【0025】
洗浄液供給装置5は、供給配管6を通じて、洗浄液CWを振動体30の供給孔34Hに供給する。供給された洗浄液CWは、振動体30の放射面31(図1中、下面)と、これに対向する半導体ウェハWHの表面WSとの間を満たして、放射面31から放射された超音波を半導体ウェハWHの表面WSに伝える媒体として機能する。
一方、この洗浄液CWは、排出孔35Hを通じて、排出配管7から排出される。
【0026】
次いで、超音波処理ユニット10について、図2〜図4を参照して説明する。この超音波処理ユニット10は、前述したように、振動体30と、4つの振動子ユニット20(20A,20B,20C,20D)とならなる。
このうち、振動体30は、金属塊から削り出されて一体に形成されている。この振動体30は、厚み方向一方側(図4中、下側)の放射面31が平坦な平面とされている一方、その逆側の面は、中央が凹んだ凹形面32とされている。さらに具体的には、凹形面32は、これによって形成される空間が、概略、四角錐台となる凹形状を有しており、中央に向かう4つの稜線32Rが形成されている。
次述する給液孔34H,排出孔35H、及び保持ネジ孔36Hは、いずれも、この稜線32R上に形成されている。これらを、後述する各クサビ部40A,40B,40C,40D同士の境界となる稜線32R上に形成することで、各クサビ部40A等を伝わる超音波振動への影響を少なくすることができるからである。
【0027】
振動体30の径方向DRの中央部分(稜線32Rの交点)には、供給配管6を接続する給液部34が形成されており、その中心(振動体30の径方向DRの中心)には、放射面31まで届く給液孔34Hが穿孔されている。
また、稜線32R上には、排出配管7を接続し、排出孔35Hを通じて放射面31側からの洗浄液CWを排出する排出部35がそれぞれ形成されている。
さらに、この稜線32R上には、保持ネジ孔36Hがそれぞれ形成されており、図1に示すように、これにユニット保持具8を締結して、超音波処理ユニット10を所定位置に保持する。
また、振動体30の側面33(加振面42)には、矩形板状で、圧電セラミックスからなる超音波振動子21(図4において、21B,21Dのみ破線で示す)が、接着剤(図示しない)により固着されている。
【0028】
この超音波振動子21は、防水カバー24(24A,24B,24C,24D)により、液密に包囲されている。超音波振動子21は、それぞれ、この防水カバー24に形成した接続端子22(22A,22B,22C,22D)、及び、接続ケーブル23(23A,23B,23C,23D)を介して、駆動装置2の発振回路ユニット4に接続されている。このため、駆動制御装置3の指示に従って、発振回路ユニット4が作動することにより、超音波振動子21を駆動し、この超音波振動子21に超音波振動を生じさせることができる。
【0029】
この振動体30について、さらに詳細に説明する。図5に示すように、振動体30を、その放射面31において、対角線に相当する分割線LL,MMで仮想的に分割する。すると、振動体30は、4つの互いに同一形態のクサビ部40(40A,40B,40C,40D)に、仮想的に分割され、放射面31は、分割放射面41(41A,41B,41C,41D)に分割される。図7に示すように、各クサビ部40(40A…)には、それぞれ振動子ユニット20(20A,20B,20C,20D)が配置され、その加振面42(42A…)に、超音波振動子21(21A…)が1つずつ固着されている。
【0030】
この振動体30を仮想的に分割したクサビ部40について説明する。本実施形態では、振動体30をなす各クサビ部40は、側面視、図7に示すように、略三角形状をなしている。具体的には、分割放射面41(放射面31)と加振面42(側面33)とがなす角αは、鋭角(たとえば、70度)とされている。また、加振面42(側面33)と、凹形面32の一部をなすクサビ面43とがなす角γは、直角とされている。従って、分割放射面41(放射面31)とクサビ面43とがなす角βは、鋭角(たとえば20度)とされている。このクサビ面43は、加振面42から離れるほど分割放射面41に近づく平坦なクサビ面となっている。しかも、このクサビ面43は、図6に示すように、分割放射面41(放射面31)及び加振面42に直交する仮想直交面HPに対して直交している。
なお、クサビ部40において、加振面42から離れる側(図7中、左側)を先端側と表現することとする。
また、本実施形態では、各クサビ部40(40A…)は、各分割放射面41(41A…)で単一の放射面31を形成する一方、加振面42は互いに異なる方向を向いている。また、クサビ面43も互いに異なる方向を向いている。
【0031】
また、このクサビ部40のうち、加振面42には、図7において破線で示すように、超音波振動子21が固着されている。従って、この超音波振動子21を駆動装置2で駆動して超音波振動させると、加振面42から進行超音波US1が、この加振面42に直交する方向に進行する。ここで、前述したように、本実施形態では、加振面42とクサビ面43とがなす角γが直角とされている。このため、進行超音波US1は、クサビ面43に沿って先端側(図7中、左下方向)に向けて進行する。従って、本実施形態の超音波基板処理ユニット20(振動体30)では、進行超音波US1が、クサビ面43で反射されること無く、クサビ面43と分割放射面が接近する先細の先端側に向けて、クサビ部40内を進行する。
【0032】
すると、進行超音波US1が進行するに従って、分割放射面41のうち加振面42に近い部位から順に、進行超音波US1の一部が到達するので、ここから、この分割放射面41と半導体ウェハWHの表面WSとの間に保持される洗浄液CWを介して、半導体ウェハWHの表面WSに向けて放射超音波US2が放射される(放射の際、超音波は屈折する)。
そして、クサビ部40内を進行する進行超音波US1は、角γを鈍角とした場合と異なり、クサビ面43に沿って、加振面42から最も離れた先端部45(クサビ面43と分割放射面41が交叉する付近)まで直接届くため、分割放射面41について、その加振面42側から先端部45まで、全体に亘って均一に放射超音波US2を放射することができる。しかも、角γを鋭角とした場合と異なり、クサビ部40内を進行する進行超音波US1が、クサビ面43に反射されることなくクサビ面43に沿って進行するので、反射波との干渉等による超音波強度の場所的な不均一が生じにくく、分割放射面42の各部から放射される放射超音波US2の強度が、加振面42からの距離に影響されにくくなっている。
【0033】
しかも、この超音波基板処理ユニット10では、単一の放射面31を有する振動体30を用いながらも、この振動体30は、放射面31を4つの分割放射面41に仮想的に分割する4つのクサビ部40(40A,40B,40C,40D)からなっている。
従って、各々クサビ部40の加振面43を、超音波振動子21で加振することで、各々のクサビ部40の分割放射面41から放射超音波US2を放射させることができるから、従来に比して、さらに広い面積に亘って、半導体ウェハWHを洗浄することができる。
しかも、本実施形態の超音波基板処理ユニット10では、例えば、放射面31の大きさを、1つのクサビ部の分割放射面の4倍としているが、振動体30の重量もこれに比例して、1つのクサビ部の4倍程度となるに止めることができる。かくして、重量の増加を抑制しつつ、超音波を放射する放射面を大きく確保できる超音波基板処理ユニット10とすることができる。従って、ユニット保持具8による振動体30の保持も容易である。また、この超音波基板処理ユニット10を用いた本実施形態の超音波基板処理装置1でも、振動板30の放射面31の大きさを大きく確保できる一方で、振動体30の重量増加を抑制することができる。
【0034】
さらに、たとえば、クサビ部40に相当する個別のクサビ形の振動体を4つ並べて用いた場合に比して、本実施形態では、振動体30を一体としているので、振動体30の扱いや処理が容易である。また、本実施形態では、図5に破線で示すように(図1、図7も参照)、半導体ウェハWHの表面WSが、放射面31よりも小さいので、この半導体ウェハWHを回転させることなく一度に洗浄処理を行うことができる。
【0035】
さらに、本実施形態の超音波基板処理ユニット10では、各クサビ部40の先端部45(45A…)が、放射面31の径方向DRの中央部分に集まった形態とされている(図5参照)。この先端部45は、他に比して、放射面41とクサビ面43との間の距離(厚み)が薄くなっている。つまり、この振動体30は、周囲が厚く、中央部分が薄い形態となっている。
その一方、この振動体30は、放射面31の径方向DRの外側、つまり振動体30の外周に各クサビ部40の加振面42が位置している形態となる。このため、複数のクサビ部40(40A…)が含まれていながら、各加振面42の面積を十分に確保できるから、より大きな超音波振動子21で加振面42全体を加振できるので、各クサビ部40を、従って、振動体30全体を、各超音波振動子21で十分に加振できる。かくして、各分割放射面41(41A…)から、従って放射面31から、強力な放射超音波US2を放射させることができる。
【0036】
また、本実施形態では、各クサビ部40は、分割放射面41(41A…)が互いに同じ同形であり同面積とされている。このため、各クサビ部40に関する特性を同じとすることができ、取り扱いが容易である。
【0037】
さらに、本実施形態の超音波基板処理ユニット10では、振動体30は、各々のクサビ部40の分割放射面41およびクサビ面43が三角形状をなす形態とされてなる。
従来(特許文献1,2参照)の三角柱状(クサビ状)の振動体と比較すれば判るように、この超音波基板処理ユニット10では、上述の形態の振動体30を有するので、各クサビ部40において、分割放射面41の大きさの割に、加振面42を大きく確保できるから、より大きな超音波振動子21で加振面42全体を加振できるので、各クサビ部40を、従って、振動体10全体を、各超音波振動子21で十分に加振できる。かくして、各分割放射面41から、従って放射面31から、強力な放射超音波US2を放射させることができる。
【0038】
しかも、この実施形態では、振動体30は、の各々のクサビ部40が、互いに同形状となる形態とされている上、各々のクサビ部40(40A…)の加振面42(42A…)に接続される超音波振動子21(21A…)も、互いに同等(同形状、同特性)とされている。
即ち、本実施形態の超音波基板処理ユニット10では、振動体30は、各クサビ部40(40A…)の先端部45が中央に集まり、各分割放射面41が三角形状で、しかも各クサビ部40が互いに同形状となる形態とされてなる。このような形態の振動体30では、放射面31が正多角形(たとえば正方形)となる。しかも、各クサビ部40において、加振面42に接続される超音波振動子21(21A…)も互いに同等である。
このように超音波基板処理ユニット10では、同形状の各クサビ部40を、同等の超音波振動子21で超音波振動させることができるので、放射面31全体に亘って、均一に放射超音波US2を放射させることができる。
【0039】
なお、本実施形態の超音波基板処理装置1では、駆動装置2(駆動制御回路3)による各発振回路ユニットの駆動パターンを変えることによって、放射面31(分割放射面41)から放射させる放射超音波US2の放射パターンや放射タイミングを制御することができる。たとえば、最も単純には、4つの発振回路ユニット4を同時に駆動して、各超音波振動子21(21A…)をいずれも振動させて、放射面31全面から同時に放射超音波US2を放射させるパターンが挙げられる。また、4つの発振回路ユニット4を順に駆動して、各超音波振動子21(21A…)を順に振動させて、放射面31の各分割放射面41から順に放射超音波US2を放射させるパターンが挙げられる。あるいは、2つの発振回路ユニット4毎に駆動して、各超音波振動子21(21A…)を2つずつ交互に振動させて、放射面31の分割放射面41の2つずつから交互に放射超音波US2を放射させるパターンも挙げられる。
【0040】
(変形形態1)
上述した実施形態では、振動体30として、2本の仮想分割線LL、MMにより、正方形状の放射面31が、4つの三角形状の分割放射面41(41A…)に仮想的に分割されて、4つのクサビ部40(40A…)から構成される形態とした。
【0041】
これに対し、本変形形態1の超音波基板処理ユニット110における振動体130では、図8に示すように、2本の仮想分割線NN,PPにより、正方形状の放射面131を4つの正方形状の分割放射面141(141A,141B,141C,141D)に仮想的に分割されて、4つの互いに同形状のクサビ部140(140A,140B,140C,140D)を含む形態とされている。
各クサビ部140における各クサビ面の傾斜方向は、各クサビ部140中を進行する進行超音波US1の進行方向を、図8中に示すことで、判るようにしてある。
この変形形態1にかかる超音波基板処理ユニット110でも、実施形態と同様、各々クサビ部140の各分割放射面141から放射超音波US2が放射されるから、従来に比して、さらに広い面積に亘って、半導体ウェハWHを処理することができる。
【0042】
但し、本変形形態1では、4つの互いに同等の超音波振動子121(121A,121B,121C,121D)の長さが、放射面131の各辺の約1/2の大きさとなるので、前述の実施形態における超音波振動子21よりも小さくなっている(約半分)。このため、放射面131から放射できる放射超音波US2の強度が、実施形態よりも小さくなる。
【0043】
(変形形態2)
本変形形態2の超音波基板処理ユニット210における振動体230は、図9に示すように、正六角形状の放射面231を有する。この振動体230は、この放射面231の中心を通る対角線を3本の仮想分割線QQ,RR,SSにより、この放射面231が、6つの三角形状の分割放射面241(241A,241B,241C,241D,241E,241F)に仮想的に分割されて、6つの互いに同形状のクサビ部240(240A,240B,240C,240D,240E,240F)を含む形態とされている。なお、容易に理解出来るように、各クサビ部240におけるクサビ面(図示しない)の三角形状となる。
【0044】
本変形形態2における振動体230は、実施形態の振動体30と同様、中央部分の厚みが薄くされた形態となっている。また、6つの同等の超音波振動子221(221A,221B,221C,221D,221E,221F)が、振動体230のうち放射面231の外周をなす加振面242(242A…)にそれぞれ接続されている。従って、各クサビ部240中を進行する進行超音波US1は、図9中に示すように、いずれも放射面231の径方向の中央部分の先端部245に向かってそれぞれ進行する。
【0045】
この変形形態2にかかる超音波基板処理ユニット210でも、実施形態と同様、各々クサビ部240の各分割放射面241から放射超音波US2が放射されるから、従来に比して、さらに広い面積に亘って、半導体ウェハWHを処理することができる。また、実施形態と同様な部分については同様の作用効果を奏する。
【0046】
以上において、本発明を実施形態及び変形形態1,2に即して説明したが、本発明は上記実施形態等に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることはいうまでもない。
例えば、実施形態では、超音波基板処理装置1として、半導体ウェハWHを洗浄するものを示したが、薬液等を用いて、被処理基板を超音波(放射超音波)で処理するものとしても良い。また、超音波振動子21として、板状の圧電セラミックス体を加振面42に直接接着した例を示したが、ボルト締めランジュバン形振動子などを用いることもできる。
また、実施形態では、振動体30の中央に1つの給液孔34H(給液部34)を、振動体30の周囲部分に4つの排出孔(排出部35)を設けた例を示した。しかし、例えば、図1に破線に矢印で示すように、この逆に、周囲部分に給液孔(給液部)を設け、中央に排出孔(排出部)を設けるようにしても良い。また、実施形態における4つの排出孔35Hのうち、2つを排出孔ままとし、他の2つを給液孔に代えるようにすることもできる。
なお、いずれの場合も、給液孔34H及び排出孔35Hは、各クサビ部40A等の境界に形成される稜線32R上に形成するのが好ましい。
【符号の説明】
【0047】
WH 半導体ウェハ(被処理基板)
WS (半導体ウェハの)表面(被処理表面)
CW 洗浄液(媒体)
1 超音波基板処理装置
2 駆動装置
3 駆動制御装置
10,110,210 超音波基板処理ユニット
20,20A,20B,20C,20D 振動子ユニット
21,21A,21B,21C,21D,121A,121B,121C,121D,221A,221B,221C,221D,221E,221F 超音波振動子
30,130,230 振動体
31,131,231 放射面
32 凹形面
33 側面(加振面)
40,40A,40B,40C,40D,140,140A,140B,140C,140D,240,240A,240B,240C,240D,240E,240F クサビ部
41,41A,41B,41C,41D,141,141A,141B,141C,141D,241,241A,241B,241C,241D,241E,241F 分割放射面
42,42A,42B,42C,42D 加振面
43,43A,43B,43C,43D クサビ面
α 分割放射面と加振面とがなす角
β 分割放射面とクサビ面とがなす角
γ 加振面とクサビ面とがなす角
US1 (クサビ部(振動体)を伝わる)進行超音波
US2 (クサビ部(分割放射面)から放射された)放射超音波
HP (分割放射面及び加振面に直交する)仮想直交面
45,45A,45B,45C,45D (クサビ部の)先端部
DR (放射面の)径方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理基板の被処理表面に対向させて、上記被処理表面に向けて超音波を放射する平坦な単一の放射面を有する一体の振動体と、
上記振動体を超音波振動させて、上記放射面から超音波を放射させる複数の超音波振動子と、を備える
超音波基板処理ユニットであって、
上記振動体は、
クサビ形状をなし、上記放射面を複数の分割放射面に仮想的に分割する、複数のクサビ部からなり、
複数の上記クサビ部は、それぞれ、
上記分割放射面と、
上記分割放射面と鋭角αをなし、少なくとも1つの上記超音波振動子の超音波振動が加えられる平坦な加振面と、
上記分割放射面と鋭角βをなし、上記加振面とも角γをなし、上記分割放射面及び上記加振面に直交する仮想直交面に対して直交し、上記加振面から離れるほど上記分割放射面に近づく平坦なクサビ面と、
で囲まれる形態とされてなる
超音波基板処理ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波基板処理ユニットであって、
前記クサビ部は、
前記クサビ面と前記加振面とのなす角γが90度である
超音波基板処理ユニット。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の超音波基板処理ユニットであって、
前記振動体は、
各々の前記クサビ部のうち前記加振面から最も離れた先端部が、いずれも前記放射面の径方向の内側部分に集まった形態とされてなる
超音波基板処理ユニット。
【請求項4】
請求項3に記載の超音波基板処理ユニットであって、
前記振動体は、
各々の前記クサビ部の前記分割放射面およびクサビ面が三角形状をなす形態とされてなる
超音波基板処理ユニット。
【請求項5】
請求項4に記載の超音波基板処理ユニットであって、
前記振動体は、
各々の前記クサビ部が、互いに同形状となる形態とされてなり、
各々のクサビ部の前記加振面に接続される前記超音波振動子も、互いに同等である
超音波基板処理ユニット。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の超音波基板処理ユニットであって、
前記振動体は、
前記放射面の大きさが、前記被処理基板の前記被処理表面よりも、大きくされてなる
超音波基板処理ユニット。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の超音波基板処理ユニットと、
前記超音波振動子を駆動する駆動装置と、を備える
超音波基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−9507(P2012−9507A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−141871(P2010−141871)
【出願日】平成22年6月22日(2010.6.22)
【出願人】(000243364)本多電子株式会社 (255)
【Fターム(参考)】