説明

超音波探触子及び超音波診断装置

【課題】プローブヘッドを観察しただけで走査面の形態を直感的に認識できるようにし、またプローブヘッドのグリップ感を高める。
【解決手段】プローブヘッドにおける走査面と平行な関係にある2つの側面42A,42Bにはマークセット48が設けられている。マークセット48は走査面と同じ形態をもった走査面マーク50と、超音波の波面を模擬した波マーク52,54とで構成される。走査面マーク50により走査方式を直感的に理解できる。マークセット48が凹凸形状を有するため、それ自体滑り止め手段として機能する。プローブヘッドに設けられた走査面マーク50とプローブコネクタに設けられた走査面マークとが同じ形態を有するため、両者の対応関係を容易に認識できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は超音波探触子及び超音波診断装置に関し、特に超音波探触子の取り扱い性を向上する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波探触子(プローブ)としては、リニア走査型プローブ、セクタ走査型プローブ、コンベックス走査型プローブなどが知られている。リニア走査型プローブは、直線的に整列した複数の振動素子からなる1Dアレイ振動子を有する。その1Dアレイ振動子によって形成される超音波ビームが電子リニア走査方式に従って直線的に電子走査される。これにより、矩形の走査面が形成される。セクタ走査型プローブは、上記同様の1Dアレイ振動子を有するが、その1Dアレイ振動子によって形成される超音波ビームは電子セクタ走査方式に従って円弧状に電子走査される。これにより、セクタ形状をもった走査面が形成される。コンベックス走査型プローブは、円弧状に整列した複数の振動素子からなる1Dアレイ振動子を有する。その1Dアレイ振動子によって形成される超音波ビームが電子リニア走査方式に従って電子走査される。これにより、コンベックス形状をもった走査面が形成される。
【0003】
最近では、三次元エコーデータ取込用プローブ(3Dプローブ)も実用化されている。そのような3Dプローブとしては、二次元に超音波ビームを電子走査することにより三次元エコーデータ取込空間(3D空間)を形成するものや、リニア走査、セクタ走査あるいはコンベックス走査が適用される1Dアレイ振動子を機械的に運動させて、つまり超音波ビームの電子走査によって形成される走査面を機械的に運動(例えば平行運動、揺動運動など)させて、三次元エコーデータ取込空間(3D空間)を形成するもの、などが知られている。上記の他にも、診断部位等に応じた各種の超音波探触子が実用化されている。
【0004】
ところで、超音波探触子は、一般に、超音波振動子を収容したプローブヘッド、装置本体に脱着されるプローブコネクタ(コネクタボックス)、及び、それらの間に設けられたプローブケーブルを有する。装置本体には、複数の本体コネクタが設けられ、各本体コネクタに対して任意のプローブ(プローブコネクタ)を接続することが可能である。例えば、装置本体に対して3個あるいは4個のプローブが同時に接続され、それらの中から操作パネル上のユーザー操作などによって実際に使用する超音波探触子が選択される。その選択されたプローブに対して送信信号が供給され、またそのプローブからの受信信号が処理される。
【0005】
下記の特許文献の図5には、コネクタボックスの表面上に、第1表示及び第2表示を設けることが記載されている。ここで、第1表示は、電子走査方式を示す形状を有し、中心周波数に対応する着色が施されたマークによって構成される。第2表示は、周波数帯域を周波数軸上に表したグラデーション表示である。この特許文献1においては、上記のようにコネクタボックスに対するマーク表示について記載されているものの、プローブヘッドへのマーク表示(特にプローブの取り扱い性を向上するためのマーク表示)については記載されていない。
【0006】
【特許文献1】特開2000−237190号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
プローブヘッドは一般に走査方式を反映した形態を有しているため、プローブヘッドの外形を観察することにより、プローブの種別や走査方式をある程度特定することができ、これにより、複数のプローブの中から目的とするプローブを選択することができる。しかし、最近、非常に多くのプローブが開発・提供されており、プローブヘッドの形態によってプローブの種別特定やプローブ選択を行うことが難しくなってきている。特に、音響媒体室内で1Dアレイ振動子を機械走査する3Dプローブの場合、プローブヘッドの先端部の形状が類似しており、つまり、走査方式がリニア走査、セクタ走査、コンベックス走査のいずれであっても、プローブヘッドの形状に顕著な違いは生じない。つまり、プローブヘッドの形状から、プローブの種別や走査方式を識別・特定することが困難である。
【0008】
その一方、上記特許文献1に示される構成では、コネクタボックス上に第1表示及び第2表示が設けられているため、コネクタボックス上のラベル内容を観察することによって、プローブの種別を容易に特定することができる。しかしながら、装置本体に対し複数のプローブが接続されている状態では、一般に、複数のプローブケーブルが絡み合っており、各コネクタボックス上で種別を特定できても、各プローブヘッドがどのコネクタボックスに対応するものであるのかを容易に特定できない場合が多い。別の見方をすれば、複数のプローブが接続された状態において、各コネクタボックスと各プローブヘッドとの対応関係が多くの場合に不明瞭となる。
【0009】
本発明の目的は、超音波探触子の取り扱い性を向上することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、プローブヘッドを観察しただけでプローブ種別(あるいは走査方式)を容易に認識できるようにすることにある。
【0011】
本発明の他の目的は、プローブヘッドを観察しただけでプローブヘッドにて形成される走査面あるいはエコーデータ取込空間の形態や態様を直感的に認識できるようにすることにある。
【0012】
本発明の他の目的は、プローブヘッドのグリップ性を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1)本発明は、超音波診断装置の装置本体に対して接続される超音波探触子において、超音波の送受波を行う超音波振動子を収容したプローブヘッドを含み、前記プローブヘッドには、当該超音波探触子における走査方式を示す形状をもった少なくとも1つのマークが設けられたことを特徴とする。
【0014】
上記構成によれば、プローブコネクタ上に付されるマークに代えてあるいはそのマークと共に、プローブヘッド上にマークが設けられているので、超音波探触子の使用時に走査方式を容易に認識できる。すなわち、プローブヘッドはユーザーが実際に操作する部分であり、その部分にプローブ識別のためのグラフィカルな情報を付与すればユーザーの直感的な認識が容易となる。
【0015】
望ましくは、前記プローブヘッドのケースは、前記超音波探触子によって形成されるビーム走査面と平行な関係をもった2つ特定側面を有し、前記2つの特定側面の内で少なくとも1つの特定側面に、前記ビーム走査面と同じ向きで前記マークが設けられる。
【0016】
上記構成によれば、ビーム走査面と平行な関係でマークが設けられるので、マークを観察することによって、プローブヘッドの下方に形成されるビーム走査面の姿勢あるいは向きを間接的に認識できる。ここで、上記の平行な関係は、ビーム走査面が揺動走査される場合においては、その揺動範囲の中心(基準位置)におけるビーム走査面と上記マークとが平行となる関係を意味し、厳密な意味で常に平行となる関係を意味するものではない。ここで、各側面は丸みを帯びた面であってもよい。
【0017】
望ましくは、前記2つの特定側面のそれぞれに前記マークが設けられる。この構成によれば、プローブヘッドをその表側、裏側のいずれから観察してもマークを視認できる。
【0018】
なお、メカニカルタイプの3Dプローブにおいて、4つの側面の内で上記2つの特定側面以外の2つの側面上に更に何らかの情報を表示してもよい。例えば、メカニカル走査方式を示すマークを表示するようにしてもよい。この構成によれば、ある側面上のマーク形状から電子走査による走査面形状を認識でき、同時に、その側面に直交する側面上のマーク形状から機械走査における走査面移動軌跡を認識でき、両者合わせて三次元空間を把握することができる。
【0019】
望ましくは、前記マークは凹形状を有する。着色ラベルなどを単にケース表面上に貼付すると、どうしても剥がれやすくあるいはプローブヘッドの操作に支障を生じさせるが、窪んだ所にラベルを貼付すればそのような問題が生じるおそれを解消、軽減できる。なお、グリップ部分の凹形状を滑り止め構造の一部として機能させるのが望ましい。望ましくは、前記マークは超音波の周波数を示す色を有する。この構成によれば、マークの形状と色を用いてプローブ種別の情報をユーザーに提供できる。特に、走査方式の直感的理解と中心周波数の直感的認識を行える。
【0020】
(2)本発明は、超音波診断装置の装置本体に対して接続される超音波探触子において、超音波の送受波を行う超音波振動子を収容したプローブヘッドを含み、前記プローブヘッドの少なくとも1つの特定側面にマークセットが設けられ、前記マークセットは、当該超音波探触子によって形成されるビーム走査面の形状に対応した形状を有する走査面マークと、前記走査面マークに隣接して設けられ、超音波の波面を模擬した形状を有する少なくとも1つの波マークと、で構成されたことを特徴とする。
【0021】
上記構成によれば、プローブヘッドの特定側面に走査面を模擬した第1のマークと超音波の波を模擬した第2のマークとが並んで設けられ、プローブヘッドの観察時に走査面の形態と超音波の放射方向とを直感的に認識することができる。波マークは、円弧状、バナナ形状、三日月形状など、点音源からの波面(の断面)に似たような形態とするのが望ましい。
【0022】
望ましくは、前記走査面マークは、前記超音波探触子によって形成されるビーム走査面と平行な関係をもってそれと同じ向きで設けられ、前記波マークは、超音波送波方向を下方とした場合に、前記走査面マークの下方に設けられる。
【0023】
上記構成によれば、マークセットの観察により、実際の走査面の姿勢や向きを間接的に認識でき、同時に走査面との関係で超音波の伝搬方向を認識できる。
【0024】
望ましくは、前記マークセットは、前記走査面マークと、前記走査面マークの下方に並んで設けられた複数の波マークと、で構成される。望ましくは、前記走査面マークは凸形状又は凹形状を有し、前記波マークは凸形状又は凹形状を有する。望ましくは、前記マークセットは前記プローブケースにおけるグリップ部分に形成され、前記マークセットが滑り止め構造として機能する。この構成によれば、マークセットが表示機能と滑り止め機能とを有するので合理的である。
【0025】
(3)望ましくは、装置本体とそれに接続される超音波探触子とで構成される超音波診断装置において、前記超音波探触子は、超音波振動子及びそれを収容したケースを有するプローブヘッドと、前記プローブヘッドに一方端側が接続されたプローブケーブルと、前記プローブケーブルの他方端側に接続され、前記装置本体に対して着脱自在に接続されるプローブコネクタと、を有し、前記プローブコネクタには当該超音波探触子の種別を示す第1のマークが設けられ、前記プローブケースには前記第1のマークと同じ形態を有する第2のマークが設けられる。
【0026】
上記構成によれば、プローブコネクタとプローブヘッドとに同じ形態をもったマークが設けられるので、両者の対応関係を容易に特定できる。よって、プローブケーブルの絡み合いあるいは交錯状態において、一方からプローブケーブルを辿って他方を特定するような煩雑な作業を解消できる。
【0027】
望ましくは、前記第1のマークと前記第2のマークは前記超音波探触子における走査方式に対応した形状を有する。望ましくは、前記第1のマークと前記第2のマークは超音波の周波数を示す色を有する。
【0028】
(4)本発明は、装置本体とそれに接続される互いに異なる種別の複数の超音波探触子とで構成される超音波診断装置において、前記各超音波探触子は、超音波振動子を収容したプローブヘッドと、前記プローブヘッドに一方端側が接続されたプローブケーブルと、前記プローブケーブルの他方端側に接続され、前記装置本体に対して着脱自在に接続されるプローブコネクタと、を有し、前記各超音波探触子のプローブコネクタ及びプローブヘッドには、当該超音波探触子を識別する同一のマークが設けられたことを特徴とする。
【0029】
上記構成において、対応関係にあるプローブコネクタとプローブヘッドとが同じマーク(プローブ識別用のマーク)を有するので、両者の対応関係を容易に特定できる。各プローブを識別できる態様をもったマークが最低限利用されるが、各プローブの種別や走査方式を具体的に表すマークであるのが望ましい。
【発明の効果】
【0030】
以上説明したように、本発明によれば、超音波探触子の取り扱い性を向上できる。本発明によれば、プローブヘッドを観察しただけでプローブ種別を容易に認識できる。本発明によれば、プローブヘッドを見ただけでそれにより形成される走査面あるいはエコーデータ取込空間の形態や姿勢を直感的に認識できる。あるいは、本発明によれば、プローブヘッドのグリップ性を高められる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
【0032】
図1には、本発明に係る超音波診断装置の好適な実施形態が示されており、図1はその斜視図である。この超音波診断装置は、生体に対して超音波の送受波を行って、超音波画像を形成し、その超音波画像を表示するものである。
【0033】
図1において、超音波診断装置は、本体10と、操作パネル12と、複数の超音波探触子(プローブ)16,18,20とを有している。操作パネル12はキーボードやトラックボールなどを有する。表示器14には超音波の送受波により形成された超音波画像が表示される。なお、各プローブ16,18,20は図示されていないプローブホルダによって本体10に保持されている。
【0034】
図1に示す例において、プローブ16はリニア走査型プローブであり、プローブ18はセクタ走査型プローブであり、プローブ20はコンベックス走査型プローブである。この図1に示される各プローブ16,18,20は二次元の走査面を形成する1Dアレイ振動子を有している。勿論、各プローブが3Dプローブであってもよい。3Dプローブの実施形態については後に図2及び図6を用いて説明する。
【0035】
プローブ16を代表させてその具体的な構成について説明する。プローブ16は、プローブヘッド22と、プローブコネクタ26と、それらを接続するプローブケーブル24とを有している。プローブコネクタ26は本体10に形成されたコネクタに着脱自在に接続される。プローブコネクタ26は図示されるようにコネクタボックスの形態を有している。その表面上には本実施形態においてマーク32が設けられている。プローブ16はリニア走査型プローブであるため、そのプローブ16によって矩形形状の走査面が形成される。マーク32はその矩形形状の走査面に対応した矩形の形態を有している。
【0036】
一方、プローブヘッド22が有するケース上にはマーク30が設けられている。このマーク30は矩形の形状を有しており、上記マーク32と同じ形態を持っている。マーク32及びマーク30は互いに同じ色を有しており、その色は超音波の中心周波数、すなわちプローブ16が有する超音波帯域における中心周波数を表している。本実施形態において、例えば、中心周波数と色との関係については、2.5MHzに赤が対応づけられ、3.5MHzに緑が対応づけられ、5MHzに橙が対応づけられ、7.5MHzに青が対応づけられ、10MHzに黄が対応づけられている。このような対応関係は一例である。
【0037】
以上説明したプローブ16と同様に、他のプローブ18,20においても、それが有するプローブヘッド及びプローブコネクタに同じマークが付されている。プローブ18においてはセクタ形状のマークが付されており、そのマークには中心周波数を表す着色が施されている。これと同様に、プローブ20におけるプローブヘッドとプローブコネクタには互いに同じマークが付されており、そのマークの形状はコンベックス形状である。またそのプローブ20における中心周波数がそのマークの着色として表現されている。
【0038】
従って、それぞれのプローブ16,18,20において、ユーザーによって把持されるプローブヘッドに対して走査方式あるいはプローブ種別を示すマークが付与されているため、ユーザーはプローブヘッドを握る時点においてそのプローブがどのような機能を持っているプローブであるのかについて容易に認識して取り違いを防止することが可能となる。その場合、マークの形状が走査面の形状に対応づけられているため、マークの形状から直感的に走査面の形状を認識することができる。加えて、マークの色が中心周波数に対応づけられているためマークの色を認識することにより中心周波数を容易に理解できるという利点がある。
【0039】
また、上記の構成によれば、各プローブにおいてプローブヘッドとプローブコネクタとに同じマークが設けられているため、図1に示されるように複数のプローブ間においてプローブケーブルが絡まっていたりあるいは密集していたような場合においても、プローブケーブルをたどることなくプローブヘッドとプローブコネクタとの対応関係を速やかに認識することができる。
【0040】
次に、図2乃至図6を用いて他の実施形態について説明する。それらの図に示される実施形態においても、プローブがプローブヘッド、プローブケーブル、プローブコネクタによって構成され、プローブヘッドとプローブコネクタとに走査面の形状および中心周波数を表す同じマークが設けられている。図2に示すプローブ及び後に説明する図6に示すプローブはいずれも3Dプローブである。
【0041】
図2に示すプローブは、プローブヘッド40のケースを構成する上ケース42と下ケース44とを有している。下ケース44の下面は送受波面46である。上ケース42はグリップ部分43を有しており、その中央部がややくびれている。
【0042】
プローブケース内には、セクタ走査に対応した1Dアレイ振動子が設けられている。その1Dアレイ振動子は機械走査される。図2において、Z方向が超音波の放射方向を表しており、X方向が超音波ビームの電子走査方向を表しており、Y方向が1Dアレイ振動子の機械的な運動方向を表している。但し、1Dアレイ振動子はX方向に平行な回転軸を中心として回転運動しており、すなわちY方向に揺動運動している。
【0043】
プローブヘッド40のケースは全体として丸みを帯びつつも4つの側面を有している。すなわちX方向に平行な2つの側面42A,42Bとそれ以外のY方向に平行な2つの側面とを有している。ここで、2つの側面42A,42Bは、上述した1Dアレイ振動子により超音波ビームを電子走査して走査面を形成した場合、その走査面と平行な関係にある面である。但し、上述したように走査面は揺動運動するため、厳密に平行となるのは、走査面がZ方向に一致した場合である。
【0044】
図2に示す例において、側面42A,42Bにはそれぞれマークセット48が設けられている。マークセット48は、上下方向に並んだ3つのマークによって構成され、具体的には、走査面マーク50、波マーク52及び波マーク54によって構成されている。走査面マーク50は図2に示されるプローブ40によって形成される走査面の形状を模擬したセクタ状の形態を有している。また、各波マーク52,54はそれぞれプローブ40から放射される超音波の波を模擬した形態を有しており、具体的には下方に凸形状をもったゆるやかな円弧状の形態、三日月形状あるいはバナナ形状を有している。
【0045】
以上のように、走査面マーク50の下方に一定間隔を隔てて2つの波マーク52,54が設けられており、それらの各マーク52,54は超音波の放射方向に合致した向きで表されているため、それらのマークセットを観察した場合にプローブ40から放射される超音波を直感的にイメージすることが可能であり、同時にそのような超音波の送波によって形成される走査面の形状を直感的に認識することができる。
【0046】
後に図3を用いて説明するように、走査面マーク50は凹部として構成されており、その一方、波マーク52,54はいずれもゆるやかに丸みを帯びて突出した凸部として構成されている。すなわち側面上においてそのような凹凸形状が設けられていることにより、グリップ部分43を把持した場合においてそれらのマーク50,52,54によって滑り止め機能を発揮させることができる。すなわちマークセット48は別の見方をすれば滑り止め構造あるいは滑り止め手段として理解される。そのようなマークセット48は、上述したように、一方の側面42Aの他に、他方の側面42Bにおいても形成されており、グリップ部分43を握った状態においてはそれらのマークセット48によってグリップ感を高めることが出来る。
【0047】
ちなみに、図2において符号55A,55Bで示されている突起は走査面における表面及び裏面を識別するマークであり、図2に示す例では側面42A側に2つの突起55A,55Bが設けられており、その反対側の側面42Bにおいては同様の高さ位置に1つの突起が設けられている。この図2に示すプローブ40においても、プローブコネクタ上には走査面マーク50と同じマークが設けられており、両者間の対応関係は一目瞭然である。また、プローブヘッドに設けられている走査面マークとプローブコネクタに設けられている走査面マークのいずれも同一の着色が施されている。その色は中心周波数に対応している。
【0048】
図3には、図2に示したマークセット48の断面が示されている。図3に示されるように、走査面マーク50は凹部として構成され、その底面には銘板としてのラベル51が貼付されている。このような窪み内部にラベル51を貼り付けることにより、操作時におけるラベルの剥がれといった問題を未然に防止することが可能となる。波マーク52,54はそれぞれゆるやかに膨らんだ突起として構成されている。
【0049】
図4及び図5にはマークセットについての変形例が示されている。図4に示されるマークセット57においては、波マーク52,54はそれぞれ凸部として構成されており、それと同様に走査面マーク56も凸部として構成されている。滑り止め構造という観点から見ればこのような構成によっても良好なグリップ感を得ることができる。図5に示す例では、すべてのマーク58,60,62がそれぞれ凹部として構成されている。このような構成によっても良好なグリップ感を得られる。ちなみに、走査面マーク58内にはその底面に上述したラベル51が貼り付けられている。ラベル51には予め所定色が印刷されており、そのようなラベルの貼付によってプローブケース自体に着色を施すことなく走査面マークの色を容易に設定できるという利点がある。
【0050】
図6に示すプローブは、図2に示したプローブと同様に3Dプローブである。
【0051】
図6に示すプローブヘッド70における2つの側面72A,72Bは走査面と平行な関係にある面であり、それらの側面72A,72Bにはマークセット76が形成されている。マークセット76は、走査面マーク78と波マーク80,82とで構成されている。この例ではプローブヘッド内に設けられている1Dアレイ振動子がコンベックスタイプであるため、扇状の形態をもって走査面マーク78が構成されている。走査面マーク78は凹部として構成されている。波マーク80,82は図2に示した波マーク52,54と同様の形態を有しており、すなわち円弧状あるいは三日月型の形態をもって形成され、超音波の伝搬方向にその向きが合わせられている。このマークセット76も上述したように凹凸形状を有しているため、そのようなマークセット76は滑り止め手段として機能する。
【0052】
ちなみに、この図6に示す構成では、プローブケースが上ケース72と下ケース74とで構成され、送受波面76は球面形態を有している。グリップ部分75における下方側にはゆるやかな段差が生じている。この実施形態においてもプローブヘッドに設けられた走査面マーク78と図示されていないプローブコネクタに設けられた走査面マークとが同一の形態(形状及び色)を有している。
【0053】
上記の各実施形態においては、プローブケースにおいて走査面と平行な関係にある2つの側面にのみマークが設けられていたが、残りの2つの側面にも何らかのマークを設けるようにしてもよい。例えば、それらの2つの側面に機械走査における走査面の移動経路を表すマークを設ければ、直交する2つの側面に形成された2つのマークを観察することにより3Dプローブにて形成される三次元空間の全体形状を認識することが可能となる。
【0054】
上記の実施形態においては、走査方式及び中心周波数が単一のマークの形態によって表されていたが、上述した特開2000−237190号に記載されたように更に周波数帯域に関する情報を別のマークとして表示するようにしてもよい。
【0055】
以上説明した各実施形態によれば、装置本体に対して複数のプローブが接続されている状態においても、すなわち装置本体に設けられた複数のプローブホルダに複数のプローブヘッドが収容されるような場合においても、各プローブの側面に形成されたマークを観察することによって各プローブの種別あるいは走査方式を容易に認識できるという利点がある。またプローブヘッドとプローブコネクタとに同じマークが付されているため両者の対応関係を容易に特定できるという利点がある。更に、プローブヘッドにマークを設ける場合において凹形状あるいは凸形状を採用することによりそのマークを滑り止め手段として機能させることが可能である。よって、グリップの為の凹凸形態を別途設けるとマークの視認性が低下したりあるいは構造が複雑となったりする場合があるが、上記実施形態によれば1又は複数のマークによって情報の表示と同時に滑り止めという機能を発揮させることができるので極めて合理的である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明に係る超音波診断装置の概略的な構成を示す斜視図である。
【図2】3Dプローブの一例を示す図である。
【図3】マークセットを示す断面図である。
【図4】マークセットの変形例を示す断面図である。
【図5】マークセットの他の変形例を示す断面図である。
【図6】他の3Dプローブを示す図である。
【符号の説明】
【0057】
10 本体、12 操作パネル、14 表示器、16 超音波探触子、30,32 マーク、48 マークセット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波診断装置の装置本体に対して接続される超音波探触子において、
超音波の送受波を行う超音波振動子を収容したプローブヘッドを含み、
前記プローブヘッドには、当該超音波探触子における走査方式を示す形状をもった少なくとも1つのマークが設けられたことを特徴とする超音波探触子。
【請求項2】
請求項1記載の超音波探触子において、
前記プローブヘッドのケースは、前記超音波探触子によって形成されるビーム走査面と平行な関係をもった2つ特定側面を有し、
前記2つの特定側面の内で少なくとも1つの特定側面に、前記ビーム走査面と同じ向きで前記マークが設けられたことを特徴とする超音波探触子。
【請求項3】
請求項1又は2記載の超音波探触子において、
前記マークは凹形状を有することを特徴とする超音波探触子。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の超音波探触子において、
前記マークは超音波の周波数を示す色を有することを特徴とする超音波探触子。
【請求項5】
超音波診断装置の装置本体に対して接続される超音波探触子において、
超音波の送受波を行う超音波振動子を収容したプローブヘッドを含み、
前記プローブヘッドの少なくとも1つの特定側面にマークセットが設けられ、
前記マークセットは、
当該超音波探触子によって形成されるビーム走査面の形状に対応した形状を有する走査面マークと、
前記走査面マークに隣接して設けられ、超音波の波面を模擬した形状を有する少なくとも1つの波マークと、
で構成されたことを特徴とする超音波探触子。
【請求項6】
請求項5記載の超音波探触子において、
前記走査面マークは、前記超音波探触子によって形成されるビーム走査面と平行な関係をもってそれと同じ向きで設けられ、
前記波マークは、超音波送波方向を下方とした場合に、前記走査面マークの下方に設けられたことを特徴とする超音波探触子。
【請求項7】
請求項5記載の超音波探触子において、
前記走査面マークは凸形状又は凹形状を有し、
前記波マークは凸形状又は凹形状を有することを特徴とする超音波探触子。
【請求項8】
請求項7記載の超音波探触子において、
前記マークセットは前記プローブケースにおけるグリップ部分に形成され、前記マークセットが滑り止め構造として機能することを特徴とする超音波探触子。
【請求項9】
装置本体とそれに接続される互いに異なる種別の複数の超音波探触子とで構成される超音波診断装置において、
前記各超音波探触子は、
超音波振動子を収容したプローブヘッドと、
前記プローブヘッドに一方端側が接続されたプローブケーブルと、
前記プローブケーブルの他方端側に接続され、前記装置本体に対して着脱自在に接続されるプローブコネクタと、
を有し、
前記各超音波探触子のプローブコネクタ及びプローブヘッドには、当該超音波探触子を識別する同一のマークが設けられたことを特徴とする超音波診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−26236(P2006−26236A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−212148(P2004−212148)
【出願日】平成16年7月20日(2004.7.20)
【出願人】(390029791)アロカ株式会社 (899)
【Fターム(参考)】