説明

超音波洗浄装置

【課題】メタルマスク版などの被洗浄物を少量の洗浄液で短時間に洗浄でき、また、洗浄を行った後、そのままの位置で短時間に乾燥を行うことができる超音波洗浄装置を提供する。
【解決手段】超音波洗浄ユニット30は、メタルマスク版Mの洗浄面に略平行に間隙を存して対向配置され且つ超音波振動子32が取り付けられた振動板31を有する振動部33と、振動板31とメタルマスク版Mの洗浄面との間隙に洗浄液を供給する洗浄媒体供給部34と、振動部33の下方に配置され、メタルマスク版Mの洗浄面に付着した洗浄液を吸引除去する吸引除去部37とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタルマスク版などの被洗浄物を超音波で洗浄する超音波洗浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、メタルマスク版を用いて印刷配線基板にクリーム半田や部品接着用の接着剤を印刷する技術が知られている。このメタルマスク版にはステンレス、ニッケル板等の金属製の版が用いられている。ここで、例えばクリーム半田を印刷配線基板上に印刷するときには、時間の経過とともにクリーム半田の溶剤が揮散してメタルマスク版が目詰まりを起こしてしまい所望の印刷品質が得られなくなる。したがって、このような印刷に用いるメタルマスク版は、所定回数や所定時間ごとに洗浄して乾燥させる必要がある。
【0003】
具体的に、従来は、メタルマスク版が収容できる大きさの金属製の容器に洗浄液を満たし、容器の底面に結合した超音波振動子を振動させて洗浄液を介してメタルマスク版に振動を与えて超音波洗浄していた。その後、特許文献1に示すように、洗浄済みの版を容器から取り出してクリーニング装置に水平にセットし、版に空気を噴射したり洗浄液を吸引除去することで版を乾燥させていた。
【特許文献1】特開2001−225454号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の超音波洗浄装置では、メタルマスク版を洗浄する洗浄工程と、洗浄後のメタルマスク版を乾燥させる乾燥工程とを別々の装置で行っているため、洗浄後のメタルマスク版を洗浄用の容器から取り出して乾燥工程を行うクリーニング装置にセットし直す作業が必要であり、作業工数が増大していた。
【0005】
さらに、従来の超音波洗浄装置では、通常、1枚のメタルマスク版を洗浄して乾燥させるまでに10〜20分ほどの時間がかかっており、洗浄すべきメタルマスク版の枚数が多くなると処理能力が不足してしまうという問題があり、短時間で洗浄から乾燥までを行うことができる処理能力の高い超音波洗浄装置の開発が望まれていた。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、メタルマスク版などの被洗浄物を少量の洗浄液で短時間に洗浄でき、また、洗浄を行った後、そのままの位置で短時間に乾燥を行うことができる超音波洗浄装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するため、本発明は、被洗浄物を超音波洗浄する超音波洗浄ユニットに、被洗浄物の洗浄面に付着した洗浄媒体を吸引除去する吸引除去手段を設けるようにした。
【0008】
具体的に、本発明は、平板状の被洗浄物を洗浄するための超音波洗浄装置を対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0009】
すなわち、請求項1の発明は、前記被洗浄物の洗浄面に洗浄媒体を供給して超音波振動により該被洗浄物を超音波洗浄する超音波洗浄ユニットと、
前記超音波洗浄ユニットで供給された洗浄媒体が前記被洗浄物の洗浄面に沿って自重で流下するように、該被洗浄物を略垂直又は所定角度傾斜させた状態で保持する保持ユニットと、
前記超音波洗浄ユニットを前記被洗浄物の洗浄面に沿って上下方向に往復移動させる移動ユニットとを備え、
前記超音波洗浄ユニットは、
前記被洗浄物の洗浄面に略平行に間隙を存して対向配置され且つ超音波振動子が取り付けられた振動板を有する振動手段と、
前記振動板と前記被洗浄物の洗浄面との間隙に洗浄媒体を供給する洗浄媒体供給手段と、
前記振動手段の下方に配置され、前記被洗浄物の洗浄面に付着した洗浄媒体を吸引除去する吸引除去手段とを有していることを特徴とするものである。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1において、
前記超音波洗浄ユニットは、前記振動手段と前記吸引除去手段との間に配置され前記被洗浄物の洗浄面に当接させて該洗浄面に付着した洗浄媒体を摺動除去する摺動除去手段を有していることを特徴とするものである。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1又は2において、
前記被洗浄物の前記超音波洗浄ユニットと対向する面の反対側の裏側洗浄面に対向配置された反射洗浄ユニットを備え、
前記移動ユニットは、前記超音波洗浄ユニット及び前記反射洗浄ユニットを互いに対向させた状態で同期して上下方向に往復移動させるように構成され、
前記反射洗浄ユニットは、
前記被洗浄物を挟んで前記振動板に対向し且つ該被洗浄物の裏側洗浄面に略平行に間隙を存して配置された反射板を有する反射手段と、
前記反射板と前記被洗浄物の裏側洗浄面との間隙に洗浄媒体を供給する洗浄媒体供給手段と、
前記反射手段の下方に配置され、前記被洗浄物の裏側洗浄面に付着した洗浄媒体を吸引除去する吸引除去手段とを有していることを特徴とするものである。
【0012】
請求項4の発明は、請求項3において、
前記反射洗浄ユニットの反射板には超音波振動子が取り付けられていることを特徴とするものである。
【0013】
請求項5の発明は、請求項3又は4において、
前記反射洗浄ユニットは、前記反射手段と前記吸引除去手段との間に配置され前記被洗浄物の裏側洗浄面に当接させて該裏側洗浄面に付着した洗浄媒体を摺動除去する摺動除去手段を有していることを特徴とするものである。
【0014】
請求項6の発明は、請求項1乃至5のうち何れか1項において、
前記超音波振動ユニットは、前記洗浄媒体供給手段で供給した洗浄媒体を気化させるように動作することを特徴とするものである。
【0015】
請求項7の発明は、請求項1乃至6のうち何れか1項において、
前記洗浄媒体供給手段は、前記洗浄媒体としてミスト状の洗浄液を供給するように構成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明によれば、超音波洗浄ユニットに振動手段、洗浄媒体供給手段、及び吸引除去手段を設け、被洗浄物の洗浄面に沿って超音波洗浄ユニットを移動させるようにしたから、洗浄面を超音波洗浄しながら同時に洗浄面に付着した洗浄媒体を吸引除去して乾燥させることができる。このため、超音波洗浄を行った後、被洗浄物をそのままの位置で短時間に乾燥させることができ、被洗浄物をセットし直す作業が必要なく作業性が向上する。
【0017】
また、被洗浄物の洗浄面と振動板との間隙に洗浄媒体を供給させるので、被洗浄物を少量の洗浄液で洗浄でき、より短時間に良好な乾燥状態が得られるため実用性が高い。具体的に、本発明では、1枚のメタルマスク版の洗浄から乾燥までを1〜2分で行うことができ、従来の超音波洗浄装置に比べて10分の1程度の時間で効率良く洗浄することができて処理能力が大幅に向上する。さらに、洗浄液の廃棄量が大幅に低減でき、環境対策の観点からも有利な効果が得られる。
【0018】
請求項2に係る発明によれば、振動手段と吸引除去手段との間に摺動除去手段を設けたから、振動手段から洗浄面に沿って流下した洗浄媒体の大半が摺動除去手段で除去され、その後、被洗浄物としてのメタルマスク版に開口したマスク孔内に残存した洗浄媒体のみを吸引除去手段で吸引除去すればよく、さらに短時間で乾燥させることができる。
【0019】
請求項3に係る発明によれば、被洗浄物の超音波洗浄ユニットと対向する面の反対側の裏側洗浄面に反射洗浄ユニットを対向配置したから、超音波洗浄ユニット側から洗浄媒体及び被洗浄物を介して反射洗浄ユニットに伝達された振動が反射板で反射され、被洗浄物の裏側洗浄面に付着したクリーム半田などの付着物を剥離させることができ、被洗浄物の両面を同時に効率良く洗浄することができ、さらなる洗浄時間及び乾燥時間の短縮を図ることができる。
【0020】
請求項4に係る発明によれば、反射洗浄ユニットの反射板に超音波振動子を取り付けたから、被洗浄物の裏面洗浄面の汚れが激しい場合には、超音波洗浄ユニットからの超音波振動の伝達を待つことなく、反射洗浄ユニット側の超音波振動子を作動させることで積極的に裏面洗浄面を超音波洗浄することができる。
【0021】
請求項5に係る発明によれば、反射手段と吸引除去手段との間に摺動除去手段を設けたから、反射手段から洗浄面に沿って流下した洗浄媒体の大半が摺動除去手段で除去され、その後、被洗浄物としてのメタルマスク版に開口したマスク孔内に残存した洗浄媒体のみを吸引除去手段で吸引除去すればよく、さらに短時間で乾燥させることができる。
【0022】
請求項6に係る発明によれば、洗浄媒体供給手段で供給した洗浄媒体を気化させるように超音波振動ユニットを動作させるから、被洗浄物の乾燥時間がさらに短縮される。すなわち、超音波振動を与え続けることで、被洗浄物としてのメタルマスク版に開口したマスク孔の内周縁では超音波エネルギーが密となって空気分子の動きが激しくなり、洗浄媒体供給手段から供給された後で洗浄面の付着物の剥離作用に寄与していない洗浄媒体を振動手段の超音波振動により気化させることができる。これにより、吸引除去手段で吸引する前に洗浄媒体の一部が気化した状態となることから、乾燥時間をさらに短縮することができる。
【0023】
請求項7に係る発明によれば、洗浄媒体供給手段でミスト状の洗浄液を供給するようにしたから、洗浄能力を確保しつつ、液滴の洗浄液を供給した場合に比べて乾燥時間を短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0025】
図1は本発明の超音波洗浄装置の概略構成を示す正面図、図2は側面図である。図1及び図2に示すように、この超音波洗浄装置10は、複数の本体フレーム11を組み合わせて形成した直方体状の本体架台12を備えている。
【0026】
前記本体架台12は、図1において左右方向の中央位置を上下方向に延びる中間柱材13によって左部室12aと右部室12bとに区画されている。また、この右部室12bは、上下方向の中央位置を左右方向に延びる中間床材14によって上部室13aと下部室13bとに区画されている。
【0027】
前記上部室13a内には、超音波洗浄ユニット30、反射洗浄ユニット40、保持ユニット50、移動ユニット55、供給ポンプ23が配設されている。下部室13b内には、廃液分離タンク22、排水タンク25が配設されている。左部室12a内には、吸引ポンプ21が配設されている。
【0028】
前記保持ユニット50は、被洗浄物としてのメタルマスク版Mを超音波洗浄装置10内の洗浄位置で保持するためのものであり、上下方向に一対で配置されている。このメタルマスク版Mは、略正方形状で平板状に形成されたマスク板Maと、マスク板Maの外周縁に沿って設けられた版枠Mbとを備えている。そして、上下一対の保持ユニット50,50には、メタルマスク版Mの版枠Mbの上端部及び下端部にそれぞれ嵌合する嵌合凹溝50a,50aが形成されている。
【0029】
ここで、本体架台12の右側壁には、保持ユニット50に対応する位置に上部室13aと連通する挿通口15が開口しており、この挿通口15を介して作業者がメタルマスク版Mの交換やメンテナンスができるようになっている。
【0030】
なお、図2では、メタルマスク版Mを略垂直に保持するようにした構成について説明しているが、メタルマスク版Mを所定角度傾斜させた状態で保持する構成にしても構わない。
【0031】
前記移動ユニット55は、上下一対の保持ユニット50,50に跨って架設された2本のガイドレール55a,55aと、ガイドレール55aに沿って超音波洗浄ユニット30及び反射洗浄ユニット40を同期させて上下方向に往復移動させる駆動部55bとを備えている。この駆動部55bは超音波洗浄ユニット30(及び反射洗浄ユニット40)に接続されている。
【0032】
前記超音波洗浄ユニット30は、超音波振動子32が取り付けられた振動板31を有する振動部33と、アルコールや水などの洗浄液を供給する洗浄媒体供給部34と、振動部33の下方に配置され、メタルマスク版Mの洗浄面に当接させて洗浄面に付着した洗浄液を摺動除去する摺動除去部35と、摺動除去部35の下方に配置された吸引除去部37とを備えている。
【0033】
前記振動部33は、メタルマスク版Mの洗浄面に付着した付着物を剥離するために洗浄面に超音波振動を与えるためのものであり、振動板31が洗浄面に略平行に間隙を存して対向配置されている。この振動部33は有底筒状に形成され、その筒底板が振動板31を構成している。この振動板31には、長手方向(図3では左右方向)に互いに間隔をあけて4つの超音波振動子32が取り付けられている。
【0034】
なお、この振動部33では、洗浄液を介して洗浄面に振動を伝達することで、洗浄液を気化させてメタルマスク版Mの乾燥時間をさらに短縮することもできる。すなわち、超音波振動を与え続けることで、メタルマスク版Mに開口したマスク孔の内周縁では超音波エネルギーが密となって空気分子の動きが激しくなり、洗浄媒体供給部34から供給された後で洗浄面の付着物の剥離作用に寄与していない洗浄液を超音波振動により気化させることができる。これにより、摺動除去部35及び吸引除去部37で洗浄液を吸引除去する前に洗浄液の一部が気化した状態となることから、乾燥時間をさらに短縮することができる。
【0035】
そして、前記振動部33の上面板31aは、メタルマスク版Mに向かうにつれて下方に傾斜するように形成されている。また、下面板31bはメタルマスク版Mに向かうにつれて上方に傾斜するように形成されている。このような傾斜を形成することで、洗浄媒体供給部34から供給された洗浄液が上面板31aの傾斜に沿って振動板31とメタルマスク版Mとの間隙に流下しやすくなる一方、振動板31とメタルマスク版Mとの間隙を流下した洗浄液は、下面板31bの傾斜により排水部分の開口面積が徐々に大きくなっていることから排水がしやすくなる。
【0036】
また、前記振動部33の上面板31aの長手方向の両端部には、洗浄媒体供給部34から供給された洗浄液が上面板31aの長手方向端部から流出するのを防止するためのガイド板33a,33aが取り付けられている。
【0037】
前記洗浄媒体供給部34は、振動板31とメタルマスク版Mの洗浄面との間隙に洗浄液を供給するためのものであり、長手方向に多数の細孔(不図示)が設けられた供給ノズル34aを備えている。供給ノズル34aの長手方向の長さは、メタルマスク版Mの洗浄面の洗浄すべき部分の幅よりも広い範囲をカバーできるように設定されている。そして、供給ノズル34aの多数の細孔からメタルマスク版Mの洗浄面に均等に洗浄液が流出散布されるようになっている。
【0038】
また、この洗浄媒体供給部34の供給ノズル34aは、供給配管28を介して供給ポンプ23と接続されており、洗浄作業後の廃液を回収して洗浄液と付着物とを濾過フィルタ等で分離する廃液分離タンク22から汲み上げた洗浄液を利用できるようになっている。これにより、洗浄液の廃棄量が大幅に低減でき、環境対策としても有利な効果が得られる。
【0039】
なお、この洗浄媒体供給部34では、洗浄媒体としてアルコール等の洗浄液を供給する他、ミスト状の洗浄液を供給するようにしても構わない。ミスト状の洗浄液を供給すれば、洗浄能力を確保しつつ、液滴の洗浄液を供給した場合に比べて乾燥時間を短縮することができる。
【0040】
前記振動部33の下方には、摺動除去部35と吸引除去部37とが順に配設されている。この摺動除去部35は、メタルマスク版Mの洗浄面に当接する摺動ブレード36と、洗浄後の洗浄液を廃液分離タンク22に回収する廃液回収配管26とを備えている。
【0041】
前記摺動ブレード36は、振動部33の振動板31とメタルマスク版Mの洗浄面との間隙から流下した洗浄液を受ける底板部35aと、底板部35aの長手方向の両端部から上方に立設した側壁部35b,35bとを備えている。この側壁部35bにより、振動部33と洗浄面との間隙から流下した洗浄液が摺動ブレード36の長手方向両端部よりも外側に流出しないようになっている。この摺動ブレード36は、移動ユニット55により超音波洗浄ユニット30とともに洗浄面に沿って上方方向に摺動自在に往復移動する。この摺動ブレード36で回収した洗浄液は、廃液回収配管26を流通して廃液分離タンク22に貯留される。
【0042】
前記吸引除去部37は、摺動除去部35よりも下方に配設されている。この吸引除去部37は、摺動除去部35の摺動ブレード36で除去しきれなかった、メタルマスク版Mの図示しないマスク孔内に残留している洗浄液及びクリーム半田などの付着物を吸引除去するためのものであり、吸引ノズル38と、負圧により吸引する吸引ポンプ21と、吸引ノズル38と吸引ポンプ21とを接続する吸引配管27とを備えている。
【0043】
前記吸引ノズル38は、メタルマスク版Mと対向する側が開口され、その上端部が摺動ブレード36の底板下面に取り付けられている。この吸引ノズル38は、メタルマスク版Mの洗浄面と間隙を存して配置されており、吸引ポンプ21を作動させることで、吸引ノズル38と洗浄面との間隙から吸引ノズル38周辺の空気が吸引され、メタルマスク版Mに付着している洗浄液及び付着物が吸引ポンプ21に吸引されるようになっている。吸引ポンプ21に吸引された空気は、排気ダクト21aから排気される。
【0044】
なお、本実施形態では、振動部33の下方に摺動除去部35及び吸引除去部37を設けた構成について説明したが、摺動除去部35を設けない構成としても構わない。すなわち、振動部33から流下した洗浄液を全て吸引除去部37で吸引除去するようにしてもよい。
【0045】
一方、超音波洗浄ユニット30とメタルマスク版Mを挟んで対向する位置には、反射板41を有する反射洗浄ユニット40が配設されている。反射洗浄ユニット40の基本的な構造は超音波洗浄ユニット30と略同様であるため、説明は省略する。
【0046】
なお、図2では、反射洗浄ユニット40の反射板41に超音波振動子32を取り付けた構成について記載しているが、超音波振動子32を取り付けない構成としてもよい。この場合には、超音波洗浄ユニット30側から洗浄液及びメタルマスク版Mを介して伝達された振動が反射洗浄ユニット40の反射板41で反射され、メタルマスク版Mの裏側洗浄面を洗浄することができるようになっている。このように、反射洗浄ユニット40に超音波振動子32を取り付けない構成とすれば、超音波振動子32の個数を低減したり制御用の電力を削減できる等、コストを低減する上で有利となる。
【0047】
また、前記本体架台12の中間床材14には、上部室13aと下部室13bとを連通する排水口56が形成され、排水口56には排水管57が接続されている。この排水管57の下流側端部は下部室13bに配設された排水タンク25に接続されている。ここで、超音波洗浄ユニット30及び反射洗浄ユニット40で供給された洗浄液の一部が上部室13a内に飛散した場合に、その洗浄液が上部室13aの床面(中間床材14の上面)で集められ、排水口56を通って排水タンク25に回収されるようになっている。
【0048】
以下、本実施形態に係る超音波洗浄装置10を用いたメタルマスク版Mの洗浄及び乾燥動作について説明する。まず、洗浄すべきメタルマスク版Mを、本体架台12の右側壁の挿通口15からスライド挿入し、上下一対の保持ユニット50,50間の洗浄位置に位置付ける。
【0049】
次に、超音波洗浄ユニット30及び反射洗浄ユニット40をメタルマスク版Mの洗浄面の最下端の待機位置に位置付け、図示しないコントロールボックスを操作して洗浄動作を開始する。
【0050】
具体的には、供給ポンプ23を作動させ、洗浄媒体供給部34の供給ノズル34aから洗浄液を振動板31(及び反射板41)とメタルマスク版Mの洗浄面(及び裏側洗浄面)との間隙に供給しながら、超音波振動子32を振動させてメタルマスク版Mの洗浄面(及び裏側洗浄面)に対して超音波振動を与える。この超音波振動により、付着物の付着界面において振動起伏のずれによってマイクロクラックが発生して、その隙間に洗浄液が侵入して化学溶解し、付着物は付着力の限界を超えて洗浄面から剥離洗浄される。洗浄面から剥離した付着物は、洗浄液とともに振動部33の下方に流出する。
【0051】
ここで、振動部33において超音波振動を与え続けて洗浄液を気化させることで、乾燥時間をさらに短縮することもできる。すなわち、メタルマスク版Mに開口したマスク孔の内周縁では超音波エネルギーが密となって空気分子の動きが激しくなることを利用して、洗浄媒体供給部34から供給された後で洗浄面の付着物の剥離作用に寄与していない洗浄液を超音波振動により気化させるようにすればよい。
【0052】
そして、超音波洗浄を行いながら、移動ユニット55を作動させて超音波洗浄ユニット30及び反射洗浄ユニット40を同期させて洗浄面に沿って上方に移動させていく。このように、超音波洗浄ユニット30及び反射洗浄ユニット40を洗浄面に沿って上方に移動させていくと、メタルマスク版Mの洗浄に使用された洗浄液が摺動ブレード36で受け止められて廃液分離タンク22に回収される。一方、摺動ブレード36で回収しきれずに、メタルマスク版Mのマスク孔内に残留した洗浄液や付着物は、吸引除去部37の吸引ポンプ21で吸引除去される。
【0053】
このように、超音波洗浄ユニット30及び反射洗浄ユニット40での超音波洗浄作業、摺動除去部35や吸引除去部37での付着物を含む洗浄液の回収作業及びメタルマスク版Mの乾燥作業を連続して行いながら、移動ユニット55により超音波洗浄ユニット30及び反射洗浄ユニット40が洗浄面の最上端の終了位置まで移動すると、洗浄作業及び乾燥作業が完了する。
【0054】
以上のように、本発明の実施形態に係る超音波洗浄装置10によれば、超音波洗浄ユニット30に振動部33、洗浄媒体供給部34、摺動除去部35、及び吸引除去部37を設け、メタルマスク版Mの洗浄面に沿って超音波洗浄ユニット30を上下方向に移動させるようにしたから、洗浄面を超音波洗浄しながら同時に洗浄面に付着した洗浄液を吸引除去して乾燥させることができる。このため、超音波洗浄を行った後、メタルマスク版Mをそのままの位置で短時間に乾燥させることができ、メタルマスク版Mをセットし直す作業が必要なく作業性が向上する。
【0055】
また、メタルマスク版Mの洗浄面と振動板31との間隙に洗浄液を供給させるので、メタルマスク版Mを少量の洗浄液で洗浄でき、さらに、短時間に良好な乾燥状態が得られるため実用性が高い。
【0056】
なお、本実施形態では、被洗浄物としてメタルマスク版Mを用いているが、例えば、半導体ウェハの表面洗浄等、様々な被洗浄物に対して本発明を適用することができる。
【0057】
なお、本実施形態の変形例として、図4に示すように、廃液分離タンク22と吸引ポンプ21とを分岐配管29で接続するようにすれば、廃液分離タンク22内の空気が分岐配管29を介して吸引ポンプ21で吸引され、この吸引作用により、摺動除去部35で回収された洗浄液が廃液分離タンク22内に積極的に引き込まれるようになる。このため、摺動除去部35から廃液分離タンク22への洗浄液の回収をスムーズに行うことができて好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
以上説明したように、本発明は、メタルマスク版などの被洗浄物を少量の洗浄液で短時間に洗浄でき、また、洗浄を行った後、そのままの位置で短時間に乾燥を行うことができる超音波洗浄装置を提供することができるという実用性の高い効果が得られることから、きわめて有用で産業上の利用可能性は高い。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の実施形態に係る超音波洗浄装置の概略構成を示す正面図である。
【図2】本実施形態に係る超音波洗浄装置の概略構成を示す側面図である。
【図3】超音波洗浄ユニットの概略構成を示す正面図である。
【図4】本発明の変形例に係る図1相当図である。
【符号の説明】
【0060】
10 超音波洗浄装置
30 超音波洗浄ユニット
31 振動板
32 超音波振動子
33 振動部(反射部)
34 洗浄媒体供給部
35 摺動除去部
36 摺動ブレード
37 吸引除去部
38 吸引ノズル
40 反射洗浄ユニット
41 反射板
50 保持ユニット
55 移動ユニット
M メタルマスク版(被洗浄物)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状の被洗浄物を洗浄するための超音波洗浄装置であって、
前記被洗浄物の洗浄面に洗浄媒体を供給して超音波振動により該被洗浄物を超音波洗浄する超音波洗浄ユニットと、
前記超音波洗浄ユニットで供給された洗浄媒体が前記被洗浄物の洗浄面に沿って自重で流下するように、該被洗浄物を略垂直又は所定角度傾斜させた状態で保持する保持ユニットと、
前記超音波洗浄ユニットを前記被洗浄物の洗浄面に沿って上下方向に往復移動させる移動ユニットとを備え、
前記超音波洗浄ユニットは、
前記被洗浄物の洗浄面に略平行に間隙を存して対向配置され且つ超音波振動子が取り付けられた振動板を有する振動手段と、
前記振動板と前記被洗浄物の洗浄面との間隙に洗浄媒体を供給する洗浄媒体供給手段と、
前記振動手段の下方に配置され、前記被洗浄物の洗浄面に付着した洗浄媒体を吸引除去する吸引除去手段とを有していることを特徴とする超音波洗浄装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記超音波洗浄ユニットは、前記振動手段と前記吸引除去手段との間に配置され前記被洗浄物の洗浄面に当接させて該洗浄面に付着した洗浄媒体を摺動除去する摺動除去手段を有していることを特徴とする超音波洗浄装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記被洗浄物の前記超音波洗浄ユニットと対向する面の反対側の裏側洗浄面に対向配置された反射洗浄ユニットを備え、
前記移動ユニットは、前記超音波洗浄ユニット及び前記反射洗浄ユニットを互いに対向させた状態で同期して上下方向に往復移動させるように構成され、
前記反射洗浄ユニットは、
前記被洗浄物を挟んで前記振動板に対向し且つ該被洗浄物の裏側洗浄面に略平行に間隙を存して配置された反射板を有する反射手段と、
前記反射板と前記被洗浄物の裏側洗浄面との間隙に洗浄媒体を供給する洗浄媒体供給手段と、
前記反射手段の下方に配置され、前記被洗浄物の裏側洗浄面に付着した洗浄媒体を吸引除去する吸引除去手段とを有していることを特徴とする超音波洗浄装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記反射洗浄ユニットの反射板には超音波振動子が取り付けられていることを特徴とする超音波洗浄装置。
【請求項5】
請求項3又は4において、
前記反射洗浄ユニットは、前記反射手段と前記吸引除去手段との間に配置され前記被洗浄物の裏側洗浄面に当接させて該裏側洗浄面に付着した洗浄媒体を摺動除去する摺動除去手段を有していることを特徴とする超音波洗浄装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のうち何れか1項において、
前記超音波振動ユニットは、前記洗浄媒体供給手段で供給した洗浄媒体を気化させるように動作することを特徴とする超音波洗浄装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のうち何れか1項において、
前記洗浄媒体供給手段は、前記洗浄媒体としてミスト状の洗浄液を供給するように構成されていることを特徴とする超音波洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−95720(P2009−95720A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−267841(P2007−267841)
【出願日】平成19年10月15日(2007.10.15)
【出願人】(591230675)株式会社サワーコーポレーション (9)
【Fターム(参考)】