説明

超音波溶着装置

【課題】飲料用パウチ等を製造するため、ホイル層を溶着するにあたり、溶着シームの品質を高めるための超音波溶着装置を提供する。
【解決手段】ソノトロード8とアンビル7とを備え、力を印可することによってホイル層を互いに溶着する超音波溶着装置を用いて、ソノトロード8の有効平面11とアンビル7の有効平面12との間に設けられている、収容間隙部6の中に位置しているホイル層を、重力Gの方向とは反対向きの力の印加の成分gが生成されるように、ソノトロード8とアンビル7とを配置して溶着する超音波溶着装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文に記載されているタイプの超音波溶着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波溶着は、好ましくは熱可塑性材料、あるいは金属(アルミニウムなど)から作製されている、限られた厚さのホイル層またはその他の材料を接合するために使用されることが好ましい。超音波溶着の特に好ましい使用分野は、食品用のホイルバッグ、特に、周知の飲料パウチの製造である。超音波溶着装置は、通常、超音波振動を発生させるソノトロードを備えている。ソノトロードとアンビルとの間に位置しているホイル層に、ソノトロードを特定の圧力で押し付け、溶着時、ソノトロードおよびアンビルの両方が、重力方向に対して90度の角度でホイル層に作用する。アンビルは振動するように取り付けられ、ソノトロードの方向に(例えばばねによって)荷重されている。超音波振動によって、ホイル層の間の接合面に摩擦熱が発生し、これにより材料の粘性流を生じさせ、冷却後にホイルが接合される。しかしながら、たとえホイル層が保持手段によって保持されている、あるいはコンベアベルトなどによって支持されていても、振動の衝撃と重力とに起因してホイル層が依然として動きうることが判明しており、状況によっては、これによって溶着線が不正確に形成されうる。このことは、特に、例えばホイルバッグの製造において、充填済みバッグを密封する場合に悪影響を及ぼす。充填済みバッグは、その性質上、直立した状態で搬送する必要があり、従って、充填済みバッグの重量の少なくとも一部を、溶着シーム(welding seam)の領域の材料によって担持しなければならない。この領域は、超音波振動によって材料の粘性流が生じるため、たとえバッグが最適に支持されていても、溶着シームの位置ずれを高い信頼性で防止することが常に可能であるとは限らない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、本発明の目的は、適正な溶着シームを生成する超音波溶着装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、請求項1に定義されている特徴によって達成される。
【0005】
本発明の実施形態によると、超音波溶着において、溶着する材料に溶着力の力成分を印加し、この力成分は、重力の方向とは反対に作用し、少なくとも、溶着シームが所定の位置に正確に形成される程度まで、重力の影響を排除するのに十分なものである。本発明による実施形態では、例えば、ソノトロードの超音波振動に関する機械系(荷重装置を備えたアンビル)の振動挙動における大きな慣性に起因して、溶着間隙部内でホイル層が短期解放(short-term release)の影響を補償することにより、重力の影響下で溶着シームが上方にそれないようにできることが判明した。
【0006】
本発明の有利な実施形態は、従属請求項に定義されている。
【0007】
通常では重力に対して垂直に延びる方向から溶着力を印加する角度を、比較的小さく偏位させることにより、本発明における目的の効果が十分に達成されることが判明した。
【0008】
構造的な側面として、角度偏位は、ソノトロードもしくはアンビルもしくは荷重装置またはその両方を傾けることによって、特に容易に達成される。
【0009】
しかしながら、収容間隙部の中に位置しているホイル層の曲がりを回避するため、ソノトロードもしくはアンビルまたはその両方の有効平面(effective plane)は、重力の方向に平行に延びていることが好ましい。
【0010】
本発明は、複数の溶着シームを同時に形成する場合にも適用することができ、これは、縦方向に互いに間隔を置いて取り付けられている少なくとも2つの密封唇部によって達成される。
【0011】
本発明による超音波溶着装置は、コンベアシステムにおいてホイルバッグを直立状態で搬送するホイルバッグ処理装置において、特に有利に使用することができる。
【0012】
充填済みホイルバッグチを、適切に実施されているコンベアシステムによって、重力の影響に対抗してさらに支持し、この支持は、例えば、ホイルバッグを側部において締め付ける締め付け装置によって達成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を用いてさらに詳しく説明する。
【0014】
図1は、本発明による超音波溶着装置1を極めて概略的に表しており、この装置は、ホイルバッグ2の充填穴2aの両側のホイル層を互いに溶着する。ホイルバッグ2は、ホイル材から作製されている壁を含んでおり、この壁は、同じ材料または異なる材料(例:熱可塑性ホイル、金属ホイルなど)の1つ以上の層を備えていることができる。場合によっては必要である側部シーム2cおよび下部シーム2dは、すでに密封されている。ホイルバッグ2は、通常の飲料パウチの1つであることが好ましい。
【0015】
ホイルバッグ2は、すでに充填された状態(すなわち側壁が膨らんでいる状態)で、かつ直立した状態(すなわち充填穴2aが上方を向いた状態)で、コンベアシステム3によって超音波溶着装置1まで搬送される。コンベアシステム3は、任意の様式で設計することができ、搬送する製品に適合させることができる。図示した実施形態においては、コンベアシステム3は、少なくとも1つの把持部4を備えていることが好ましく、この把持部は、ホイルバッグ2が超音波溶着装置1を通過するとき、ホイルバッグ2の片側または両側における側部シーム2cと係合することにより、ホイルバッグ2を移動させる、または支持する。さらに、コンベアシステム3は、ホイルバッグ2およびその充填物の重量がコンベアシステム3によって担持されるように、例えば搬送ベルトなどの形態の支持面5を備えていることもできる。
【0016】
コンベアシステム3は、互いに溶着させる領域(図示した実施形態においては、充填穴2aの下の領域における対向する壁部分のホイル層)が、超音波溶着装置1のアンビル7とソノトロード8(超音波ハンマ)との間の収容間隙部6に、図1の投影面に垂直に送り込まれるように、ホイルバッグ2を超音波溶着装置1に搬送する。超音波溶着装置1の動作態様は公知であり、さらに詳しく説明する必要はない。要約すれば、ソノトロード8の超音波振動によって、アンビル7に対するソノトロード8の接触圧力の影響下で、溶着する材料に、溶着に必要な超音波エネルギが供給される。接触圧力は、予荷重手段9によって決定、緩和され(buffered)、予荷重手段9は、ばねによって振動するよう荷重されて、アンビル7をソノトロード8の方向にあらかじめ荷重することが好ましい。アンビル7には、ホイルバッグ2に面する基面10aに、溶着シームの位置とその数とを決定する密封唇部10が設けられている。図示した例示的な実施形態においては、少なくとも2つ(または少なくとも2グループ)の溶着唇部が、縦方向に互いに間隔を置いて設けられている。
【0017】
図2〜図4において理解できるように、超音波溶着装置1は、重力Gの方向とは反対向きの溶着力成分gが印加されるように設計されており、この場合、溶着(加圧)力は、主として収容間隙部6における接触力から生じる。重力の方向とは反対向きの力成分gを印加することにより、例えば、ソノトロードおよびアンビルの異なる慣性の衝撃と、内容物によって側壁が膨らむことによってホイル層にかかる張力の衝撃と、下から支持されていないバッグ2による重力の衝撃とが補償されるように、互いに溶着するホイル層を下側端部から上側端部に斜めに支持し、これにより、「所定の位置からはずれる」ことのない、まっすぐに延びる溶着線が可能となる。この目的には、通常では水平に(すなわち重力Gの方向に垂直に)延びる力の印加を、斜め上に比較的小さな角度だけ偏位させることで十分であることが判明した。特に良好な結果は、角度偏位がわずか約2°であるとき、すなわち、重力Gの方向に対する角度αが約88°であるときに得られた。しかしながら、角度αは、例えば、70°以上、80°〜89.5°の間、85°〜89°の間、あるいは87°〜89°の間とすることもできる。
【0018】
重力の作用とは反対向きの成分gは、力の印加が中心線に平行である場合、この中心線を重力Gの方向に対して角度αだけ傾けて配置することによって得ることが好ましい。最も容易な方法においては、これは、ソノトロード8を傾けることによって、すなわち、力の印加の中心線に平行なその中心線8aを角度αの方向に向けることによって達成される。この方式では、成分gは、アンビル7に対する接触圧力と、超音波振動に起因する音圧の両方によって生成される。しかしながら、これに加えて、あるいはこれに代えて、角度αの向きの反対力をアンビル7によって印加することも同様に可能であり、この場合、アンビル7もしくは予荷重手段9またはその両方を傾けることが好ましい。
【0019】
図示した例示的な実施形態においては、収容間隙部6が重力Gの方向に実質的に一定の幅で延びるように、ソノトロード8の有効平面11とアンビル7の有効平面12は、重力Gの方向に平行に、従って互いに平行に延びている。有効平面11,12として定義される平面は、溶着を実質的に形成するポイントがソノトロード8およびアンビル7上に位置する平面である。すなわち、ソノトロード8のヘッド8bは、有効平面11内にあるその前面がソノトロード8の中心線8aに対して角度αをなすように実施されている。しかしながら、ソノトロードもしくはアンビルまたはその両方の有効平面を、重力の方向に対して傾ける方法も、それによって生じる溶着シームの上の領域のわずかな曲がりが、溶着シームの下の領域に影響を及ぼさないならば、可能である。
【0020】
ホイル層を溶着してホイルバッグ2とする場合、ホイル層をコンベアシステム3によって収容間隙部6に送り込み、斜め上向きの溶着力を印加することによって接合する。理想的な場合、下方に「落ち込むこと」に対して本発明に従ってホイル層が固定されるのみならず、ホイル層が上方に押されることもないように、すなわち、斜め上向きの溶着力の力成分によって、下向きの力(重力、張力など)の影響が補償されるように、ホイル層を引っ張る力(例えば、内容物によるバッグの側壁の膨らみ、ホイルバッグ2の重量)に応じて、角度αを調節する。しかしながら、安全性のため、これらの力の影響よりも斜め上向きの力成分を大きく選択することができ、さらに、適切な保持手段によって、例えば、側部もしくは上部またはその両方の溶着シームと係合する把持部4(ホイル層が持ち上がることを防止する)によって、十分な対抗力を発生させることができる。
【0021】
図示および上述した例示的な実施形態の変形形態によると、重力とは反対向きの成分gは、互いに平行な有効平面の両方を傾けることによって達成することもできる。すなわち、収容間隙部を傾ける。この実施形態においては、接触力のみが、重力とは反対向きの力成分を発生させる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明による超音波溶着装置の極めて概略的な側面図を示している。
【図2】図1の細部Aの拡大図である。
【図3】ソノトロードからアンビルを離した状態として図2の装置を示している。
【図4】一般的な力の印加を表している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソノトロード(8)とアンビル(7)とを備え、前記ソノトロード(8)の有効平面(11)と前記アンビル(7)の有効平面(12)との間に設けられている収容間隙部(6)の中に位置しているホイル層を、力を印加することによって互いに溶着する超音波溶着装置(1)であって、
溶着時における前記力の印加の成分(g)が、重力(G)の方向とは反対向きであることを特徴とする超音波溶着装置。
【請求項2】
溶着時の前記力の印加が、重力(G)の方向に対して70°以上の角度(α)、好ましくは80°〜89.5°の間の角度(α)、好ましくは85°〜89°の間の角度(α)、好ましくは87°〜89°の間の角度(α)、特に好ましくは88°の角度(α)において実行されることを特徴とする請求項1に記載の超音波溶着装置。
【請求項3】
前記ソノトロード(8)が、重力(G)の方向に対して0°〜90°偏位した角度(α)だけ傾いていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の超音波溶着装置。
【請求項4】
前記ソノトロード(8)の前記有効平面(11)が、重力(G)の方向に平行に延びていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の超音波溶着装置。
【請求項5】
前記アンビル(7)もしくはその予荷重手段(9)またはその両方が、重力(G)の方向に対して0°〜90°偏位した角度(α)だけ傾いていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の超音波溶着装置。
【請求項6】
前記アンビル(7)の前記有効平面(12)が、重力(G)の方向に平行に延びていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の超音波溶着装置。
【請求項7】
前記アンビル(7)もしくは前記ソノトロード(8)またはその両方に、基面(10a)と、縦方向に互いに間隔を置いて取り付けられている少なくとも2つの溶着唇部(10)とが設けられていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の超音波溶着装置。
【請求項8】
充填済みホイルバッグ(2)を直立状態において搬送するコンベアシステム(3)と、前記ホイルバッグ(2)を密封する請求項1から請求項7のいずれかに記載の超音波溶着装置(1)と、を備えているホイルバッグ処理装置。
【請求項9】
前記コンベアシステム(3)が、前記ホイルバッグ(2)を側部において締め付ける締め付け装置(4)を備えていることを特徴とする請求項8に記載のホイルバッグ処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−143174(P2008−143174A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−307735(P2007−307735)
【出願日】平成19年11月28日(2007.11.28)
【出願人】(506321805)インダグ ゲゼルシャフト フィア インダストリーベダルフ エムベーハー ウント カンパニー ベトリープス カーゲー (10)
【Fターム(参考)】