説明

超音波用探触子及び超音波撮像装置

【課題】超音波用探触子の小型化や回路素子の高密度実装を実現しつつ、回路素子の破損を防止する。
【解決手段】印加される駆動信号に従って超音波を送信し、超音波を受信して受信信号を生成する複数の超音波トランスデューサを有する超音波トランスデューサアレイと、複数の配線パターンを有し集積回路が実装された基板とを具備する超音波用探触子において、基板に凹部が形成されており、超音波トランスデューサアレイが、バッキング材上に配置され、超音波トランスデューサアレイ及びバッキング材が、基板の凹部に挿入されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を送信及び/又は受信する複数の超音波トランスデューサを含む超音波用探触子に関する。さらに、本発明は、そのような超音波用探触子と本体装置とによって構成される医療用や構造物探傷用の超音波撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、超音波を送受信することによって画像情報を得る超音波用探触子(プローブ)においては、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等の圧電体を用いた複数の素子(超音波トランスデューサ)が1次元状に配列された1次元センサアレイを用いることが一般的であった。さらに、そのような1次元センサアレイを機械的に移動させることにより2次元画像を取得し、複数の2次元画像を合成することにより3次元画像を得ていた。
【0003】
しかしながら、この手法によれば、1次元センサアレイの移動方向にタイムラグがあるので、異なる時刻における断面像を合成することになり、合成画像がぼけたものとなってしまう。従って、超音波診断医療において超音波エコー観察を行う場合のように、生体を対象とする被写体には適していない。
【0004】
そこで、近年、超音波を送受信する素子が2次元に配列された2次元センサアレイを用いて、超音波を電気的にステアリングさせると共に、深さ方向についてもダイナミックフォーカス等の手法を用いることにより、超音波画像の画質を向上させる試みが行われている。
【0005】
2次元センサアレイを用いることにより、センサアレイを機械的に移動させることなく、高品位な3次元画像を得ることができる。そのような2次元センサアレイを有する超音波用探触子を実用化するためには、多数の素子を高集積化し、それらの素子と超音波撮像装置本体との間で信号を送受信することが必要である。
【0006】
また、医療分野においては、例えば、血管内に挿入されるカテーテル型の超音波用探触子も実現されており、動脈硬化等の診断に役立っている。このように患者の体内に挿入されて用いられるカテーテル型の超音波用探触子や超音波内視鏡においては、超音波用探触子の小型化が求められている。
【0007】
さらに、医療用の超音波用探触子においては、超音波用探触子の発熱に対する患者の安全性の確保や、発熱による性能劣化を防ぐために、温度センサやペルチェ素子等の温度調節回路を搭載することも検討されており、回路素子の高密度実装が求められている。そこで、超音波用探触子の小型化や回路素子の高密度実装を実現するために、様々な技術が開発されている。
【0008】
関連する技術として、下記の特許文献1には、人体の冠状動脈に近似した寸法の小さい空洞部に挿入させるためのプローブ本体と、プローブ本体に搭載されたトランスデューサ要素の配列と、プローブ本体に搭載され、トランスデューサ要素の配列に近接している手段であって、トランスデューサ要素の配列からの電気的信号を受けて、イメージ化情報についての重大な損失をもたらすことなく、それらの電気的信号をケーブルにおける少なくとも1本のチャンネルに沿って伝送されるように変換する手段とを含み、超音波の反射の検出に応答して利用可能なイメージを生成するイメージ化装置が開示されている。このイメージ化装置によれば、カテーテル型のプローブとイメージ化装置本体とを接続するためのケーブルの本数を低減することができる。
【0009】
しかしながら、特許文献1の図7に示されているように、トランスデューサ要素の配列と集積回路チップとが、プローブ本体の異なる位置に搭載されるので、超音波用探触子の小型化が十分に達成されているとは言い難い。
【0010】
また、下記の特許文献2には、背面負荷材と複合圧電体と整合層とを備える超音波用探触子と、超音波用探触子と一体化されたシリコン基板と、シリコン基板上に載置された電気回路とを備えた電気回路一体型複合圧電体超音波用探触子が開示されている。特許文献2には、シリコン基板の一部にエッチング処理を施し、エッチングされたシリコン基板を型として圧電体を注型して焼成することによって微細な構造の超音波用探触子を作製した後に、シリコン基板の残りの表面に電気回路を形成することにより、電気回路一体型の超音波用探触子を製造できると記載されている。
【0011】
しかしながら、圧電素子が形成されたシリコン基板に集積回路を形成する場合には、集積回路を形成する際の絶縁膜形成、ドーパント拡散、又は、電極の形成のために、約500℃以上の温度が必要とされる。そのため、圧電素子に用いられているエポキシ樹脂等が、その温度によって損傷してしまうという問題が考えられる。一方、集積回路が形成されたシリコン基板上に圧電素子を形成する場合には、圧電体粉を焼結するために、約1000℃の温度が必要とされる。そのため、集積回路を構成するトランジスタ等が、その温度によって損傷してしまうという問題が考えられる。
【0012】
さらに、下記の特許文献3には、トランジスタ等が形成された半導体のウエハと、ウエハの基板側に露出されている埋込層に接続された一方の信号電極を有する圧電振動子と、マトリクスアレイトランスデューサのピッチに対応して作成された素子用ICと、素子用ICを駆動する制御回路及び加算回路とを具備する超音波用探触子が開示されている。特許文献3には、電子回路を形成したウエハを、導電接着剤を介して圧電振動子の信号電極上に貼り付けることにより、圧電振動子と電子回路とを1対1で対応させているので、配線の必要をなくすことができると記載されている。
【0013】
しかしながら、集積回路直下に圧電振動子が形成されるので、圧電振動子を駆動する際に、振動が集積回路に直接伝わり、その結果、集積回路が破損してしまうという問題が考えられる。従って、実用性及び信頼性が低いと考えられる。
【特許文献1】特表平2−502078号公報(第1頁、図7)
【特許文献2】特開2000−298119号公報(第2、4頁、図1)
【特許文献3】特開平5−103397号公報(第2頁、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
そこで、上記の点に鑑み、本発明は、超音波用探触子の小型化や回路素子の高密度実装を実現しつつ、回路素子の破損を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため、本発明の1つの観点に係る超音波用探触子は、印加される駆動信号に従って超音波を送信し、超音波を受信して受信信号を生成する複数の超音波トランスデューサを有する超音波トランスデューサアレイと、複数の配線パターンを有し集積回路が実装された基板とを具備する超音波用探触子において、基板に凹部が形成されており、超音波トランスデューサアレイが、バッキング材上に配置され、超音波トランスデューサアレイ及びバッキング材が、基板の凹部に挿入されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、超音波トランスデューサアレイ及びバッキング材を、基板の凹部に挿入することにより、超音波用探触子の小型化や回路素子の高密度実装を実現しつつ、回路素子の破損を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。なお、同一の構成要素には同一の参照番号を付して、説明を省略する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る超音波用探触子の構成例を示す図である。この超音波用探触子1は、例えば、患者の体内に挿入されるカテーテル型の超音波用探触子であって、外部に設置された超音波撮像装置本体に複数のケーブルを介して接続される。図1に示すように、超音波撮像装置本体と超音波用探触子1との間で送受信される駆動信号及び受信信号は、同軸ケーブルを用いて伝送され、超音波撮像装置本体から超音波用探触子1に送信される制御信号は、単線ケーブルを用いて伝送される。
【0018】
超音波用探触子1は、複数の入出力端子にそれぞれ接続された複数のインピーダンス整合回路2と、それらのインピーダンス整合回路2にそれぞれ接続された複数のマルチプレクサ(切換回路)3と、各々のマルチプレクサ3に接続されたそれぞれの組の振動子(超音波トランスデューサ)11とを含んでいる。
【0019】
超音波用探触子1に含まれている複数組の振動子11は、1次元又は2次元状に配列されて、超音波トランスデューサアレイを構成する。各々の振動子11は、超音波撮像装置本体から供給される駆動信号に基づいて超音波を発生し、被検体に向けて超音波を送信する。また、各々の振動子11は、被検体によって反射された超音波エコーを受信して、超音波撮像装置本体に受信信号を出力する。振動子11の詳細な構造については後述する。
【0020】
インピーダンス整合回路2は、例えば、図2A〜図2Dに示すように、インダクタンスと抵抗とコンデンサとの内の少なくとも1つで構成される回路であって、それぞれの信号経路において、同軸ケーブルの特性インピーダンスと振動子11のインピーダンスとを整合させることにより、信号の伝送効率を向上させることができる。なお、図1においては、インピーダンス整合回路2が、同軸ケーブルとマルチプレクサ3との間に接続されているが、インピーダンス整合回路2は、マルチプレクサ3と振動子11との間に接続されるようにしても良い。
【0021】
図2Aに示すインピーダンス整合回路においては、インダクタンスL及び抵抗Rが、マルチプレクサ3を介して振動子と並列に接続される。振動子の容量とインダクタンスLとの共振周波数においてこれらのインピーダンスが極大になるので、同軸ケーブルは抵抗Rによって終端されることになる。そこで、抵抗Rの値を同軸ケーブルの特性インピーダンスの値に近くしておけば、共振周波数においてインピーダンスマッチングを達成し、同軸ケーブルの端部における信号の反射を防止することができる。また、図2Bに示すインピーダンス整合回路は、図2Aに示すインピーダンス整合回路を簡略化したものであり、抵抗Rが、マルチプレクサ3を介して振動子と並列に接続される。
【0022】
図2Cに示すインピーダンス整合回路においては、インダクタンスLとコンデンサCと抵抗Rとの直列回路が、マルチプレクサ3を介して振動子と並列に接続される。コンデンサCは、共振周波数を調整したり、超音波撮像装置本体の駆動回路から直流成分が印加される場合に、超音波用探触子1に直流成分を流さないために挿入される。
【0023】
図2Dに示すインピーダンス整合回路においては、インダクタンスL1とインダクタンスL2との直列回路が、マルチプレクサ3を介して振動子と直列に接続され、インダクタンスL1とインダクタンスL2との接続点とアース端子との間に、コンデンサCが接続されている。以上の他にも、様々なインピーダンス整合回路を用いることが可能である。
【0024】
再び図1を参照すると、マルチプレクサ3は、超音波撮像装置本体から供給される制御信号に基づいて、1組(図1においては4個)の振動子の内から1つの振動子11を選択し、同軸ケーブルを介して超音波撮像装置本体に接続する。マルチプレクサ3を用いることにより、同軸ケーブルの本数を削減して、ケーブル全体の大型化を抑えることができる。ただし、1つのマルチプレクサ3に接続されている4個の振動子11は、同時に動作することができないので、超音波の送信パターンや受信パターンに基づいて、1つのマルチプレクサ3に接続される振動子11の数と配置が決定される。
【0025】
図3は、本発明の第1の実施形態に係る超音波用探触子の他の構成例を示す図である。
図3においては、図1に示す構成に対して、増幅回路(プリアンプ)4が追加されている。増幅回路4は、振動子11が超音波を受信して発生する受信信号を、マルチプレクサ3を介して入力し、これを増幅して受信信号用の同軸ケーブルに出力する。その際に、増幅回路4の出力インピーダンスを受信信号用の同軸ケーブルの特性インピーダンスに合わせておけば、同軸ケーブルとの間でインピーダンスマッチングを達成することができる。駆動信号用の同軸ケーブルは別途設けられており、駆動信号用の同軸ケーブルとマルチプレクサ3との間に、インピーダンス整合回路2が接続されている。
【0026】
図4は、図1又は図3に示す超音波用探触子と超音波撮像装置本体とが接続された状態を示す図である。図4に示すように、超音波用探触子1は、複数のケーブル5を介して超音波撮像装置本体6に電気的に接続されている。それらのケーブル5は、超音波用探触子1と超音波撮像装置本体6との間で複数の駆動信号及び複数の受信信号を伝送する同軸ケーブルと、超音波撮像装置本体6から超音波用探触子1に送信される制御信号を伝送する単線ケーブルとを含んでおり、保護用のケーブルカバー5aで覆われている。
【0027】
超音波撮像装置本体6は、駆動信号生成部61と、送受信切換部62と、受信信号処理部63と、画像生成部64と、表示部65と、制御部66とを含んでいる。駆動信号生成部61は、例えば、複数の駆動回路(パルサー等)を含み、複数の超音波トランスデューサをそれぞれ駆動するために用いられる複数の駆動信号を生成する。送受信切換部62は、超音波用探触子1への駆動信号の出力と、超音波用探触子1からの受信信号の入力とを切り換える。
【0028】
受信信号処理部63は、例えば、複数のプリアンプと複数のA/D変換器とディジタル信号処理回路又はCPUとを含み、複数の超音波トランスデューサから出力される受信信号について、増幅、整相加算、検波等の所定の信号処理を施す。画像生成部64は、所定の信号処理が施された受信信号に基づいて、超音波画像を表す画像データを生成する。表示部65は、そのようにして生成された画像データに基づいて、超音波画像を表示する。以上において、制御部66は、システム全体の動作を制御すると共に、超音波用探触子1の動作を制御するための制御信号を生成して、制御信号を超音波用探触子1に送信する。
【0029】
図5は、本発明の第1の実施形態に係る超音波用探触子において用いられる超音波素子の内部構造を示す斜視図である。図5に示すように、超音波素子10は、複数の振動子11と、それらの振動子11と被検体との間で音響インピーダンスを整合させることにより超音波の伝播効率を高める音響整合層15と、それらの振動子11から発生する不要な超音波を減衰させるバッキング材16とを含んでいる。各々の振動子11は、圧電効果により伸縮して超音波を発生する圧電体12と、圧電体12の両端に形成された信号電極13及び共通電極14とによって構成される。一般に、共通電極14は接地電位に接続される。
【0030】
この超音波素子10は、さらに、複数の振動子11の間における干渉を低減し、振動子11の横方向の振動を抑えて振動子11を縦方向のみに振動させるために、複数の振動子11の間に充填された充填材を含んでいても良い。また、音響整合層15の上に、超音波を集束させるための音響レンズを含んでいても良い。さらに、音響整合層15が、超音波の伝播効率を上げるために、多層構造となっていても良い。
【0031】
圧電体12の材料としては、圧電セラミック又は高分子圧電材料が用いられる。特に、圧電セラミックは、電気/機械エネルギー変換能力が高いので、体内の深部まで到達可能な超音波を発生することができ、また、受信感度も高い。具体的な材料としては、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛:Pb(Ti,Zr)O)や、同様のペロブスカイト系結晶構造を有する変成組成の材料や、一般にリラクサ系材料と呼ばれている材料等を用いることができる。
【0032】
音響整合層15の材料としては、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコン、アクリル樹脂等の有機材料に、高い音響インピーダンスを有する材料粉末(タングステン、フェライト粉等)を混ぜ合わせた材料が用いられる。また、バッキング材16の材料としては、音響減衰の大きいエポキシ樹脂やゴム等が用いられる。
【0033】
図6は、本発明の第1の実施形態に係る超音波用探触子の内部構造を示す斜視図である。本実施形態に係る超音波用探触子においては、超音波素子10及び集積回路20が、ガラスエポキシ樹脂、セラミック、又は、シリコンを含む材料で形成された基板40上に実装されている。基板40には、少なくとも1層の配線層が設けられており、配線パターンと、部品取付け用のランド(基板電極)とが形成されている。
【0034】
集積回路20は、ICチップとして形成されても良いし、ICチップ及びチップ部品をセラミック等の基板に搭載したハイブリッドICとして形成されても良い。集積回路20には、必要に応じて、図1〜図3に示すインピーダンス整合回路2、マルチプレクサ3、及び、増幅回路4の内の少なくとも1つが内蔵される。なお、集積回路20は、基板40の側面又は内部に実装されるようにしても良い。
【0035】
本実施形態においては、信号電極13及び共通電極14と基板40との間が、フレキシブル基板31及び32によってそれぞれ接続されており、集積回路20から信号電極13及び共通電極14に駆動信号を出力し、信号電極13及び共通電極14から集積回路20に受信信号を出力することができる。さらに、フレキシブル基板33を介して、集積回路20と超音波撮像装置本体との間の通信が行われる。
【0036】
フレキシブル基板31〜33のランド(基板電極)及び集積回路20の端子は、導電ペースト(例えば、銀ペースト)や半田のような機能性接合材料を用いて、基板40上のランドに接合される。その際の接合温度は200℃程度であるので、超音波素子10及び集積回路20の温度による損傷は問題とならない。なお、フレキシブル基板31及び32の替わりに、ワイヤボンディングによって信号電極13及び共通電極14と基板40との間を接続しても良い。
【0037】
このように、超音波素子10と集積回路20とを別々に作製して基板40に実装することによって、振動子及びICチップを作製する際に必要となる温度に関する問題を回避することができる。また、ICチップの直上又は直下に振動子が形成される構造とした場合には、振動子が超音波を送信する際の振動がICチップに直接伝わるので、ICチップが破損してしまうおそれがある。しかしながら、本実施形態においては、超音波素子10と集積回路20との間に基板40が介在し、さらに、振動子11と基板40との間にバッキング材16が介在するので(図5参照)、集積回路20が破損することはない。
【0038】
図7Aは、本発明の第2の実施形態に係る超音波用探触子の内部構造を示す斜視図であり、図7Bは、本発明の第2の実施形態に係る超音波用探触子の断面図である。
第2の実施形態においては、超音波素子10の主面(前面)の面積よりもやや大きい面積を有する凹部40aが、基板40に形成されている。その凹部40aに、超音波素子10が挿入されており、基板40の上面とほぼ等しい高さに共通電極14が位置するようになっている。
【0039】
超音波素子10の信号電極13は、フレキシブル基板31を介して、基板40上に形成されたランド(基板端子)41に接続されている。また、超音波素子10の共通電極14は、1箇所又は複数箇所において、基板40上に形成されたアースライン42に、リード線34を用いてワイヤボンディングにより接続されている。なお、フレキシブル基板31の替わりに、ワイヤボンディングによって信号電極13と基板40との間を接続しても良い。その他の点に関しては、図6に示す第1の実施形態と同様である。
【0040】
第2の実施形態においては、基板40に形成された凹部40aに超音波素子10を挿入することにより、超音波用探触子の主面をほぼ同一平面とすることができ、超音波用探触子をより小型化することができる。また、超音波素子10を凹部40aに挿入すると、共通電極14の位置と基板40上に形成されたアースライン42の位置とが整合するので、共通電極14とアースライン42との接続が容易である。さらに、超音波素子10と基板40との接合強度を高めることができるので、超音波用探触子に機械的な衝撃が加わっても、超音波素子10と基板40とが離れ難くなる。
【0041】
本実施形態においても、超音波素子10のバッキング材16が、不要な超音波を減衰させているので、振動子11から発生した振動により集積回路20が損傷することはない。また、基板40の材料としてエポキシ樹脂が用いられる場合には、振動の問題をより効果的に解決することができる。
【0042】
図8Aは、本発明の第3の実施形態に係る超音波用探触子の内部構造を示す斜視図であり、図8Bは、本発明の第3の実施形態に係る超音波用探触子の断面図である。
第3の実施形態においては、基板40として、複数の配線層を有する多層基板が用いられる。図8Bにおいては、第1の配線層43と第2の配線層45とが示されており、第1の配線層43の配線パターンは、スルーホール44を介して、第2の配線層45の配線パターンに接続される。
【0043】
超音波素子10において、信号電極13は、バッキング材16の側面等に形成された配線パターンを介して、バッキング材16の裏面に形成された電極端子17に接続されている。電極端子17は、導電ペーストや半田等の機能性接合材料を用いて、第1の配線層43に形成されたランド(基板端子)に接合され、さらに、スルーホール44及び第2の配線層45の配線パターンを介して、集積回路20に接続されている。また、超音波素子10の共通電極14と、基板40上に形成されたアースライン42とは、1箇所又は複数箇所において、リード線34を用いてワイヤボンディングにより接続されている。その他の点に関しては、図7A及び図7Bに示す第2の実施形態と同様である。
【0044】
第3の実施形態においては、第2の実施形態について説明した特徴に加えて、超音波素子10の底面に形成された電極端子17が、基板40に形成された第1の配線層43、スルーホール44、及び、第2の配線層45を介して、集積回路20に接続されるので、配線が容易であり、かつ、基板40の表面上におけるICチップ等の回路部品の実装面積をより広く確保することができる。また、超音波素子10を基板40の凹部40aに挿入すると、超音波素子10の電極端子17と基板40のランドとが自然に整合するので、これらの間の位置ずれが起こり難い。
【0045】
図9は、本発明の第4の実施形態に係る超音波用探触子の内部構造を示す斜視図である。
第4の実施形態においては、複数の超音波素子10と複数の集積回路20とが、基板40に実装されている。複数の超音波素子10は、同一構造であっても良いし、異なる構造であっても良い。その他の点に関しては、図8A及び図8Bに示す第3の実施形態と同様である。このように、複数の超音波素子10を基板40に実装することにより、多数の振動子を有する超音波用探触子を実現することができる。なお、図7A及び図7Bに示す第2の実施形態と同様に、複数の超音波素子10と基板40とが、フレキシブル基板31を用いて接合されるようにしても良い。
【0046】
図10は、本発明の第5の実施形態に係る超音波用探触子の内部構造を示す斜視図である。
第5の実施形態においては、複数の超音波素子10と複数の集積回路20とが実装された基板40が、2つ組み合わされて立体構造を形成している。これらの基板40同士は、例えば、接着剤によって接合されている。その他の点に関しては、図9に示す第4の実施形態と同様である。
【0047】
図11は、本発明の第6の実施形態に係る超音波用探触子の側面図である。
第6の実施形態においては、基板40の両面に凹部40aが形成され、それらの凹部40a内に、複数の超音波素子10及び複数の集積回路20が実装されている。さらに、一部の集積回路20は、基板40の内部に実装されている。超音波素子10と基板40との接続の態様は、図8A及び図8Bに示す第3の実施形態と同様であるが、図7A及び図7Bに示す第2の実施形態のように、フレキシブル基板31とリード線34とによって超音波素子10と基板40とを接続しても良い。
【0048】
図12は、本発明の第7の実施形態に係る超音波用探触子の側面図である。
第7の実施形態においては、基板40の断面が5角形以上の多角形となっており、基板40が7面体以上の多面体となっている。図12には、8面体の基板40が示されているが、その内の3つの面において凹部40aが形成されている。あるいは、基板40が曲面を有し、曲面において凹部40aが形成されても良い。これにより、基板40の複数の平面又は1つの曲面に取り付けられた複数の超音波素子10の間で、複数の振動子の主面が互いに異なる角度を有するようになる。このような構造は、超音波を広い角度範囲に渡って送受信するために適している。超音波素子10と基板40との接続の態様は、図8A及び図8Bに示す第3の実施形態と同様であるが、図7A及び図7Bに示す第2の実施形態のように、フレキシブル基板31とリード線34とによって超音波素子10と基板40とを接続しても良い。
【0049】
さらに、図10〜図12に示す第5〜第7の実施形態を組み合わせても良い。第5〜第7の実施形態を組み合わせることによって、超音波用探触子の形状の自由度を広げることができ、超音波用探触子が用いられる様々な診断箇所に適応した形状を実現することができる。
【0050】
図13は、本発明の第8の実施形態に係る超音波用探触子の側面図である。
第8の実施形態においては、複数の凹部40a〜40cが基板40の表面及び裏面に形成されており、凹部40aに超音波素子10が挿入され、凹部40bに温度センサ21が挿入され、凹部40cに温度調節素子22が挿入されている。温度センサ21及び温度調節素子22の底面には、複数の電極端子が形成されており、導電ペースト又は半田等の機能性接合材料を用いて、それらの電極端子が基板40のランドに接合されている。また、温度センサ21の周辺回路を集積化したICチップ23が、基板40の裏面(側面又は内部でも良い)に実装されている。
【0051】
人体に使用される超音波用探触子においては、超音波用探触子の発熱による患者の安全性を考慮して、超音波用探触子に温度センサ等が搭載される場合がある。また、超音波用探触子の発熱を抑えるために、超音波用探触子に温度調節素子が搭載される場合もある。本実施形態においては、温度センサ21及び温度調節素子22が超音波用探触子内に設けられているが、温度センサ21と温度調節素子22との内の一方を設けるようにしても良い。
【0052】
温度センサ21は、超音波用探触子の内部温度を感知し、ICチップ23に温度情報を出力する。ICチップ23内の回路は、入力された温度情報を、図4に示す超音波撮像装置本体6に送信し、超音波撮像装置本体6に設けられている制御部66が、超音波用探触子の送信動作を制限して発熱を抑えたり、超音波用探触子を冷却するように温度調節素子22を動作させることにより、患者の安全性を確保することができる。温度調節素子22としては、例えば、ヒータやペルチェ素子が用いられる。また、そのような温度調節素子22と温度センサ21とが連携動作をする場合もある。
【0053】
本実施形態によれば、基板40に形成された凹部40a〜40cに、超音波素子10、温度センサ21、及び、温度調節素子22を挿入して実装することにより、それらの部品の高さが基板40の表面又は裏面とほぼ同一位置になるので、超音波用探触子を小型化することができる。なお、温度センサに限らず、超音波用探触子の用途に応じて、例えば、CCD(Charge Coupled Device:電荷結合素子)センサ、サーモセンサ、焦電センサ、OCT(Optical Coherence Tomography:光コヒーレンス・トモグラフィ)センサ等を設けるようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、超音波を送信及び/又は受信する複数の超音波トランスデューサを含む超音波用探触子、及び、そのような超音波用探触子と本体装置とによって構成される医療用や構造物探傷用の超音波撮像装置において利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る超音波用探触子の構成例を示す図である。
【図2A】本発明の第1の実施形態に係る超音波用探触子におけるインピーダンス整合回路の第1の構成例を示す図である。
【図2B】本発明の第1の実施形態に係る超音波用探触子におけるインピーダンス整合回路の第2の構成例を示す図である。
【図2C】本発明の第1の実施形態に係る超音波用探触子におけるインピーダンス整合回路の第3の構成例を示す図である。
【図2D】本発明の第1の実施形態に係る超音波用探触子におけるインピーダンス整合回路の第4の構成例を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る超音波用探触子の他の構成例を示す図である。
【図4】図1又は図3に示す超音波用探触子と超音波撮像装置本体とが接続された状態を示す図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る超音波用探触子において用いられる超音波素子の内部構造を示す斜視図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る超音波用探触子の内部構造を示す斜視図である。
【図7A】本発明の第2の実施形態に係る超音波用探触子の内部構造を示す斜視図である。
【図7B】本発明の第2の実施形態に係る超音波用探触子の断面図である。
【図8A】本発明の第3の実施形態に係る超音波用探触子の内部構造を示す斜視図である。
【図8B】本発明の第3の実施形態に係る超音波用探触子の断面図である。
【図9】本発明の第4の実施形態に係る超音波用探触子の内部構造を示す斜視図である。
【図10】本発明の第5の実施形態に係る超音波用探触子の内部構造を示す斜視図である。
【図11】本発明の第6の実施形態に係る超音波用探触子の側面図である。
【図12】本発明の第7の実施形態に係る超音波用探触子の側面図である。
【図13】本発明の第8の実施形態に係る超音波用探触子の側面図である。
【符号の説明】
【0056】
1 超音波用探触子
2 インピーダンス整合回路
3 マルチプレクサ
4 増幅回路
5 ケーブル
5a ケーブルカバー
6 超音波撮像装置本体
10 超音波素子
11 振動子
12 圧電体
13 信号電極
14 共通電極
15 音響整合層
16 バッキング材
17 電極端子
21 温度センサ
22 温度調節素子
23 ICチップ
31〜33 フレキシブル基板
34 リード線
40 基板
40a〜40c 凹部
41 基板端子
42 アースライン
43 第1の配線層
44 スルーホール
45 第2の配線層
61 駆動信号生成部
62 送受信切換部
63 受信信号処理部
64 画像生成部
65 表示部
66 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印加される駆動信号に従って超音波を送信し、超音波を受信して受信信号を生成する複数の超音波トランスデューサを有する超音波トランスデューサアレイと、複数の配線パターンを有し集積回路が実装された基板とを具備する超音波用探触子において、
前記基板に凹部が形成されており、
前記超音波トランスデューサアレイが、バッキング材上に配置され、前記超音波トランスデューサアレイ及び前記バッキング材が、前記基板の凹部に挿入されていることを特徴とする超音波用探触子。
【請求項2】
前記バッキング材が、複数の駆動信号を前記複数の超音波トランスデューサに入力すると共に前記複数の超音波トランスデューサから複数の受信信号を出力するための複数の端子を1つの面に有し、
前記基板が、前記凹部の底面において前記バッキング材の複数の端子に接続される第1群のランドと、前記基板の表面において前記集積回路及び/又はフレキシブル基板に接続される第2群のランドとをさらに有する、請求項1記載の超音波用探触子。
【請求項3】
前記集積回路が、外部から供給される駆動信号を前記複数の超音波トランスデューサの内から選択された一群の超音波トランスデューサに供給し、前記複数の超音波トランスデューサの内から選択された一群の超音波トランスデューサから出力される受信信号を外部に出力する切換回路を含む、請求項1又は2記載の超音波用探触子。
【請求項4】
前記集積回路が、前記複数の超音波トランスデューサの内の少なくとも1つから出力される受信信号を増幅する増幅回路を含む、請求項1〜3のいずれか1項記載の超音波用探触子。
【請求項5】
前記基板の1つの面に複数の凹部が形成されており、
前記複数の凹部にそれぞれ挿入されている複数の超音波トランスデューサアレイを具備する請求項1〜4のいずれか1項記載の超音波用探触子。
【請求項6】
前記基板の複数の面に複数の凹部が形成されており、
前記基板の前記複数の面の内の1つに形成された少なくとも1つの凹部に挿入されている少なくとも1つの超音波トランスデューサアレイと、前記基板の前記複数の面の内の他の1つに形成された少なくとも1つの凹部に挿入されている少なくとも1つの超音波トランスデューサアレイとを具備する請求項1〜5のいずれか1項記載の超音波用探触子。
【請求項7】
前記基板の複数の平面又は1つの曲面に形成された複数の凹部にそれぞれ挿入されている複数の超音波トランスデューサアレイを具備し、前記複数の超音波トランスデューサアレイの間で前記複数の超音波トランスデューサの超音波送受信面が互いに異なる角度を有する、請求項1〜4のいずれか1項記載の超音波用探触子。
【請求項8】
複数の前記基板が互いに接合されて立体構造を有する、請求項1〜7のいずれか1項記載の超音波用探触子。
【請求項9】
前記基板に形成された凹部に挿入されているセンサをさらに具備する請求項1〜8のいずれか1項記載の超音波用探触子。
【請求項10】
前記基板に形成された凹部に挿入され、超音波用探触子内部の温度を調節するための温度調節回路をさらに具備する請求項1〜9のいずれか1項記載の超音波用探触子。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項記載の超音波用探触子と、
前記複数の超音波トランスデューサに複数の駆動信号をそれぞれ供給する駆動信号供給手段と、
前記複数の超音波トランスデューサからそれぞれ出力される複数の受信信号を処理することにより、超音波画像を表す画像データを生成する信号処理手段と、
を具備する超音波撮像装置。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−79909(P2008−79909A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−264559(P2006−264559)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】