説明

超音波診断装置及びその制御プログラム

【課題】適切な状況下においてのみ、エラーフレームの弾性画像に代えて、所定の代替弾性画像を表示することができる超音波診断装置を提供する。
【解決手段】生体組織に超音波を送信して得られたエコー信号に基づいて、生体組織の弾性に関する物理量を算出する物理量データ処理部と、所定の基準を満たさないと判定されるエラーフレームであるフレームFnにおいて、このフレームFnについて算出された前記物理量に基づく弾性画像に代えて表示される所定の代替弾性画像の表示と非表示とを、フレームFn,F(n−1),F(n−2),F(n−3),F(n−4)の合計5フレームにおける非エラーフレームの割合又はエラーフレームの割合に基づいて制御する表示画像制御部と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波診断装置に関し、特に生体組織の硬さ又は軟らかさを表す弾性画像を表示する超音波診断装置及びその制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
通常のBモード画像と、生体組織の硬さ又は軟らかさを表す弾性画像とを合成して表示させる超音波診断装置が、例えば特許文献1などに開示されている。この種の超音波診断装置において、弾性画像は次のようにして作成される。先ず、生体組織に対し、例えば超音波プローブによる圧迫とその弛緩を繰り返しながら超音波の送受信を行ってエコーを取得する。そして、得られたエコーデータに基づいて、生体組織の弾性に関する物理量を算出し、この物理量を色相情報に変換してカラーの弾性画像を作成する。ちなみに、生体組織の弾性に関する物理量としては、例えば生体組織の歪みなどを算出している。
【0003】
ところで、圧迫動作から弛緩動作に変わるとき、あるいはその反対に弛緩動作から圧迫動作に変わるときは、圧迫動作も弛緩動作もなされない瞬間が存在することがある。また、特に慣れていない操作者が操作を行なう場合には圧迫及びその弛緩が弱いことがある。このように圧迫又は弛緩の度合いが足りず、生体組織の変形が不十分な場合には、相関演算の算出値が生体組織の弾性の違いに応じた差となって現れないことがある。この場合、算出された物理量は、生体組織の弾性を正確に反映したものとならない。
【0004】
一方、圧迫とその弛緩の度合いが過剰である場合には、生体組織に横ずれが生じることがある。このような場合に取得されたエコー信号には横ずれによるノイズが含まれ、相関演算における相関係数が低くなるおそれがある。また、圧迫とその弛緩の度合いが過剰であると、生体組織の変形が大きすぎ、二つのエコー信号に設定される相関ウィンドウのマッチングがとれずに相関係数が低くなるおそれがある。ここで、相関演算における相関係数が低くなると、生体組織の弾性を正確に反映した物理量を得ることができない。
【0005】
また、超音波の反射体が少ない領域や送信超音波が減衰によって到達しにくい生体組織の深部などにおいては、エコー信号の強度が不十分となる。このように信号強度が不十分なエコー信号についての相関演算の相関係数は低くなる。また、前記超音波プローブの圧迫とその弛緩の方向が超音波の音線方向と一致していない場合、上述の横ずれが生じるため、このような状態で取得されたエコー信号についての相関演算の相関係数も低くなる。従って、これらの場合にも、生体組織の弾性を正確に反映した物理量を得ることができない。
【0006】
以上のように、生体組織の弾性を正確に反映していない物理量が得られ、このような物理量に基づいて作成された弾性画像は、実際の生体組織の弾性を反映した画像になっていない。従って、生体組織の弾性を正確に把握することができないおそれがある。そこで、特許文献2に示すように、エコー信号の信頼度に基づいてフレーム単位で重み付け係数を設定して、複数フレームのデータを重み付け加算して作成された代替弾性画像を表示する超音波診断装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3932482号公報
【特許文献2】特開2010−99378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、複数フレームのデータを重み付け加算して作成された代替弾性画像をいかなる場合にも表示すると不都合な場合もある。例えば、エコー信号の信頼度が低いエラーフレームの割合が大きい状況においても、複数フレームのデータを加算して作成された代替弾性画像を表示させ続けることは適切ではない。そこで、適切な状況下においてのみ、エラーフレームの弾性画像に代えて、所定の代替弾性画像を表示することができる超音波診断装置及びその制御プログラムが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を解決するためになされた第1の観点の発明は、生体組織に超音波を送信して得られたエコー信号に基づいて、生体組織の弾性に関する物理量を算出する物理量算出部と、所定の基準を満たさないと判定されるエラーフレームにおいて、該エラーフレームについて算出された前記物理量に基づく弾性画像に代えて表示される所定の代替弾性画像の表示と非表示とを、所定の複数フレームにおける非エラーフレームの割合又はエラーフレームの割合に基づいて制御する表示画像制御部と、を備えることを特徴とする超音波診断装置である。
【0010】
第2の観点の発明によれば、第1の観点の発明において、前記所定の複数フレームは、現フレームを含む直近の複数のフレームであることを特徴とする超音波診断装置である。
【0011】
第3の観点の発明は、第1の観点の発明において、前記所定の複数フレームは、現フレームを含まない直近の複数のフレームであることを特徴とする超音波診断装置である。
【0012】
第4の観点の発明は、第1〜3のいずれか一の観点の発明において、前記所定の代替弾性画像は、複数フレームの弾性画像を加算して得られた画像であることを特徴とする超音波診断装置である。
【0013】
第5の観点の発明は、第1〜4の観点の発明において、前記エラーフレームの判定部を有し、該判定部は、判定対象のフレームの弾性画像が、生体組織の弾性を適切に反映した画像であるかという観点に基づいて、エラーフレームであるか否かの判定を行なうことを特徴とする超音波診断装置である。
【0014】
第6の観点の発明によれば、第5の観点の発明において、前記物理量算出部は、同一音線上の時間的に異なるエコー信号に相関ウィンドウを設定し、該相関ウィンドウ間で相関演算を行なって前記物理量の算出を行なうものであり、前記超音波診断装置にあっては、前記物理量の平均をフレーム毎に算出する物理量平均部と、該物理量平均部による算出値を、予め設定された前記物理量の平均値と比較する比較部と、をさらに備えており、前記判定部は、前記比較部による比較結果に基づいて前記判定を行なうことを特徴とする超音波診断装置である。
【0015】
第7の観点の発明は、第5の観点の発明において、前記物理量算出部は、同一音線上の時間的に異なるエコー信号に相関ウィンドウを設定し、該相関ウィンドウ間で相関演算を行なって前記物理量の算出を行なうものであり、前記超音波診断装置にあっては、前記相関ウィンドウ間の相関演算における相関係数の平均をフレーム毎に算出する相関係数平均部をさらに備えており、前記判定部は、前記相関係数平均部で得られた平均値に基づいて前記判定を行なうことを特徴とする超音波診断装置である。
【0016】
第8の観点の発明は、第5の観点の発明において、前記物理量算出部は、同一音線上の時間的に異なるエコー信号に相関ウィンドウを設定し、該相関ウィンドウ間で相関演算を行なって前記物理量の算出を行なうものであり、前記超音波診断装置にあっては、所定の閾値以上の相関係数の相関演算が行なわれた相関ウィンドウについて得られた物理量の平均をフレーム毎に算出する物理量平均部と、予め設定された前記物理量の平均値に対する前記物理量平均部による算出値の比を算出する比算出部と、前記相関ウィンドウ間の相関演算における相関係数の平均をフレーム毎に算出する相関係数平均部と、前記比算出部の算出値と、前記相関係数平均部の算出値とを乗算する乗算部と、をさらに備え、前記判定部は、前記乗算部による算出値に基づいて前記判定を行なうことを特徴とする超音波診断装置である。
【0017】
第9の観点の発明は、第5の観点の発明において、前記物理量算出部は、同一音線上の時間的に異なるエコー信号に相関ウィンドウを設定し、該相関ウィンドウ間で相関演算を行なって、前記物理量として正負の符合を伴う物理量の算出を行なうものであり、前記判定部は、一のフレームにおける前記正負の符号の割合に基づいて前記判定を行なうことを特徴とする超音波診断装置である。
【0018】
第10の観点の発明は、第5の観点の発明において、前記判定部は、各画素についてエラー画素であるか否かの判定を行ない、一のフレームにおけるエラー画素又は非エラー画素の割合に基づいてエラーフレームであるか否かの判定を行なうことを特徴とする超音波診断装置である。
【0019】
第11の観点の発明は、第10の観点の発明において、前記判定部は、各画素について算出された前記物理量に基づいて、エラー画素であるか否かの判定を行なうことを特徴とする超音波診断装置である。
【0020】
第12の観点の発明は、第10の観点の発明において、前記物理量算出部は、同一音線上の時間的に異なるエコー信号に相関ウィンドウを設定し、該相関ウィンドウ間で相関演算を行なって各画素について前記物理量の算出を行なうものであり、前記判定部は、各画素について行なわれた相関演算における相関係数に基づいてエラー画素であるか否かの判定を行なうことを特徴とする超音波診断装置である。
【0021】
第13の観点の発明は、第1〜12のいずれか一の観点の発明において、前記表示画像制御部は、非エラーフレームについては、該非エラーフレームについて算出された前記物理量に基づく弾性画像を表示することを特徴とする超音波診断装置である。
【0022】
第14の観点の発明は、コンピュータに、生体組織に超音波を送信して得られたエコー信号に基づいて、生体組織の弾性に関する物理量を算出する物理量算出機能と、所定の基準を満たさないと判定されるエラーフレームにおいて、該エラーフレームについて算出された前記物理量に基づく弾性画像に代えて表示される所定の代替弾性画像の表示と非表示とを、所定の複数フレームにおける非エラーフレームの割合又はエラーフレームの割合に基づいて制御する表示画像制御機能と、を実行させることを特徴とする超音波診断装置の制御プログラムである。
【発明の効果】
【0023】
上記観点の発明によれば、所定の基準を満たさないと判定されるエラーフレームの弾性画像に代えて表示される所定の代替弾性画像の表示と非表示とが、所定の複数フレームにおける非エラーフレームの割合又はエラーフレームの割合に基づいて制御されるので、適切な状況においてのみ、前記代替弾性画像を表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る超音波診断装置の実施形態の概略構成の一例を示すブロック図である。
【図2】歪みの算出を説明するための図である。
【図3】Bモード画像データ及び弾性画像データの作成の説明図である。
【図4】第一実施形態の超音波診断装置における表示制御部の構成を示すブロック図である。
【図5】図1に示す超音波診断装置における表示部の表示の一例を示す図である。
【図6】図1に示す超音波診断装置における表示部の表示の他例を示す図である。
【図7】図1に示す超音波診断装置における表示部の表示の他例を示す図である。
【図8】比算出部で用いられる関数のグラフを示す図である。
【図9】本発明における超音波診断装置の実施の形態の作用を示すフローチャートである。
【図10】図8のステップS3における割合判定部による判定を説明するための図である。
【図11】図8のステップS3における割合判定部による判定と、ステップS4,S5における超音波画像の表示とを具体的に説明するための図である。
【図12】図8のステップS3における割合判定部による判定と、ステップS4,S5における超音波画像の表示とを具体的に説明するための図である。
【図13】図8のステップS3における割合判定部による判定と、ステップS4,S5における超音波画像の表示とを具体的に説明するための図である。
【図14】第二実施形態における表示制御部の構成を示すブロック図である。
【図15】第三実施形態における表示制御部の構成を示すブロック図である。
【図16】第四実施形態における表示制御部の構成を示すブロック図である。
【図17】第五実施形態における表示制御部の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて詳細に説明する。
(第一実施形態)
先ず、第一実施形態について図1〜図13に基づいて説明する。図1に示す超音波診断装置1は、超音波プローブ2、送受信部3、Bモードデータ処理部4、物理量データ処理部5、表示制御部6、表示部7、操作部8、制御部9及びHDD(Hard Disk Drive)10を備える。
【0026】
前記超音波プローブ2は、生体組織に対して超音波を送信しそのエコーを受信する。この超音波プローブ2を生体組織の表面に当接させた状態で圧迫と弛緩を繰り返したり、この超音波プローブ2から生体組織へ音響放射圧を加えたりして、生体組織を変形させながら超音波の送受信を行なって取得されたエコーデータに基づいて、後述のように弾性画像が作成される。
【0027】
前記送受信部3は、前記超音波プローブ2を所定の走査条件で駆動させて音線毎の超音波の走査を行なう。また、前記超音波プローブ2で受信したエコー信号について、整相加算処理等の信号処理を行なう。前記送受信部3で信号処理されたエコー信号は、前記Bモード画像処理部4及び前記弾性画像処理部5に出力される。
【0028】
前記Bモードデータ処理部4は、前記送受信部3から出力されたエコー信号に対し、対数圧縮処理、包絡線検波処理等のBモード処理を行なってBモードデータを作成する。Bモードデータは、前記Bモードデータ処理部4から前記表示制御部6へ出力される。
【0029】
前記物理量データ処理部5は、前記送受信部3から出力されたエコーデータに基づいて、生体組織における各部の弾性に関する物理量を算出して物理量データを作成する(物理量算出機能)。前記物理量データ処理部5は、例えば特開2008−126079号公報に記載されているように、一の走査面における同一音線上の時間的に異なるエコーデータに相関ウィンドウを設定し、この相関ウィンドウ間で相関演算を行なって前記弾性に関する物理量を画素毎に算出し、一フレーム分の物理量データを作成する。前記物理量データ処理部5は、前記弾性に関する物理量として、本例では歪みStを算出する。前記物理量データ処理部5は、本発明における物理量算出部の実施の形態の一例であり、また前記物理量算出機能は本発明における物理量算出機能の実施の形態の一例である。
【0030】
前記歪みStの算出の一例について詳しく説明する。前記物理量データ処理部5は、図2に示すように、フレーム(i),(ii)に属するエコー信号のそれぞれに相関ウィンドウを設定する。具体的には、前記物理量データ処理部5は、前記フレーム(i)に属するエコー信号に相関ウィンドウW1を設定し、前記フレーム(ii)に属するエコー信号に相関ウィンドウW2を設定する。これら相関ウィンドウW1,W2は一画素に対応する。そして、前記物理量データ処理部5は、前記相関ウィンドウW1,W2間で相関演算を行なって前記歪みStを算出する。
【0031】
ここで、図2において、前記フレーム(i),(ii)は、複数本の音線上において取得されたエコー信号からなる。図2では、前記フレーム(i)における複数本の音線の一部として、五本の音線L1a,L1b,L1c,L1d,L1eが示され、また前記フレーム(ii)において前記音線L1a〜L1eに対応する音線として、音線L2a,L2b,L2c,L2d,L2eが示されている。すなわち、前記音線L1a及び前記音線L2a、前記音線L1b及び前記音線L2b、前記音線L1c及び前記音線L2c、前記音線L1d及び前記音線L2d、前記音線L1e及び前記音線L2eは、異なる二つのフレームに属し、時間的に異なる同一音線に該当する。また、図2においてR(i),R(ii)は、後述する弾性画像表示領域R(図5,6参照)に対応する領域を示している。
【0032】
例えば、前記音線L1c上のエコー信号に、前記相関ウィンドウW1として相関ウィンドウW1cが設定され、前記音線L2c上のエコー信号に、前記相関ウィンドウW2として相関ウィンドウW2cが設定されたとする。前記物理量データ処理部5は、前記相関ウィンドウW1c,W2c間で相関演算を行ない、歪みStを算出する。前記物理量データ処理部5は、前記音線L1c,L2c上において、前記領域R(i),R(ii)の上端100から下端101まで相関ウィンドウW1c,W2cを順次設定し、歪みStを算出する。また、前記物理量データ処理部5は、前記領域R(i),R(ii)内の他の音線についても同様にして歪みStを算出する。
【0033】
ここで、前記物理量データ処理部5によって算出される歪みStは、生体組織が変形する方向に応じた正負の符号を伴って算出される。例えば、生体組織が圧縮される方向である場合には主に負の符号の変位が算出され、その反対に生体組織が圧縮前の状態に戻る場合には主に正の符号の変位が算出される。
【0034】
ちなみに、図3に示すように、異なる二つのフレーム(i),(ii)に属するエコー信号から一フレーム分の後述する弾性画像データが作成される。一方で、後述のBモード画像データは、前記フレーム(i),(ii)のいずれかのエコー信号から作成される。
【0035】
前記表示制御部6には、前記Bモードデータ処理部4からのBモードデータ及び前記物理量データ処理部5からの物理量データが入力されるようになっている。前記表示制御部6は、図4に示すようにメモリ611、Bモード画像データ作成部612、弾性画像データ作成部613、表示画像制御部614、物理量平均部615、比算出部616、エラー判定部617、割合判定部618を有している。
【0036】
前記メモリ611には、前記Bモードデータ及び前記物理量データが記憶される。これらBモードデータ及び物理量データは、音線毎のデータとして前記メモリ611に記憶される。ちなみに、後述するように、スキャンコンバータによりBモード画像データに走査変換される前の前記Bモードデータ及び弾性画像データに走査変換される前の前記物理量データをローデータ(Raw Data)と云うものとする。
【0037】
前記メモリ611は、例えばRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)などの半導体メモリで構成されている。ちなみに、前記Bモードデータ及び前記物理量データは、前記HDD10に記憶されるようになっていてもよい。
【0038】
前記Bモード画像データ作成部612は、前記Bモードデータについてスキャンコンバータによる走査変換を行ない、エコーの信号強度に応じた輝度情報を有するBモード画像データに変換する。前記Bモード画像データは例えば256階調の輝度情報を有する。
【0039】
前記弾性画像データ作成部613は、スキャンコンバータによる走査変換を行ない、前記物理量データを歪みに応じた色相情報を有するカラー弾性画像データに変換する。前記カラー弾性画像データは例えば256階調の色相情報を有する。
【0040】
前記表示画像制御部614は、表示画像制御機能を実行するものであり、図5〜図7に示す超音波画像G1,G2,G3のいずれかの超音波画像を前記表示部7に表示する。前記表示画像制御部614は、後述するように非エラーフレームについては、前記Bモード画像データ及び前記カラー弾性画像データを加算処理することによって合成し、前記表示部7に表示する超音波画像G1の画像データを作成する。そして、前記表示画像制御部614は、前記画像データを、図5に示すように、白黒のBモード画像BGとカラーの弾性画像EGとが合成された超音波画像G1として前記表示部7に表示する(表示画像制御機能)。すなわち、非エラーフレームについては、この非エラーフレームについて算出された歪みStに基づく弾性画像EGとBモード画像BGとが表示される。前記弾性画像EGは、前記Bモード画像BGに設定された弾性画像表示領域R内に半透明で(背景のBモード画像が透けた状態で)表示される。
【0041】
また、前記表示画像制御部614は、エラーフレームについては、このエラーフレームについて算出された歪みStに基づく弾性画像EGに代えて、図6に示すように所定の代替弾性画像EG′と前記Bモード画像BGとを合成した超音波画像G2を表示するか、図7に示すように、弾性画像EG及び代替弾性画像EG′は表示せずにBモード画像BGのみからなる超音波画像G3を表示する(表示画像制御機能)。詳細は後述する。前記表示画像制御部614は、本発明における表示画像制御部の実施の形態の一例であり、また前記表示画像制御機能は本発明における表示画像制御機能の実施の形態の一例である。
【0042】
前記物理量平均部615は、弾性画像EGにおける歪みの平均値RStAVをフレーム毎に算出する。具体的には、前記物理量平均部615は、前記弾性画像EGを表示する領域である弾性画像表示領域R内の各画素について算出された歪みの平均値RStAVを算出する。ちなみに、歪みStは負になることもあることから、前記平均値RStAVは負になることもあるものとする。前記物理量平均部615は、本発明における物理量平均部の実施の形態の一例である。
【0043】
ただし、前記物理量平均部615は、前記弾性画像作成領域R(前記領域R(i),R(ii))内において、歪みStを算出するための相関演算における相関係数C(0≦C≦1)が所定値以上である画素の歪みStの平均値RStAVを算出してもよい。
【0044】
前記比算出部616は、歪みの平均の理想値IStAVに対する前記平均値RStAVの比Ra=RStAV/IStAVを算出し、さらに(式1)の演算を行なって算出値Yをフレーム毎に算出する。
Y=1.0−|log10|Ra||・・・(式1)
前記比算出部616は、本発明における比較部及び比算出部の実施の形態の一例である。また、前記理想値IStAVは、本発明における予め設定された物理量の平均値の実施の形態の一例である。さらに、前記算出値Yは、本発明における比較部の比較結果及び比算出部の算出値の実施の形態の一例である。
【0045】
ここで、前記理想値IStAVについて説明する。生体組織の変形の度合いが小さすぎると、生体組織の弾性をより正確に反映した弾性画像を得ることができない。また、特に超音波プローブ2による生体組織への圧迫とその弛緩によって生体組織を変形させる場合には、圧迫とその弛緩の度合いが過剰であると生体組織に横ずれが生じ、この状態で得られたエコー信号に基づく弾性画像は、生体組織の弾性をより正確に反映した画像にならない。従って、生体組織の弾性をより正確に反映した弾性画像を得るためには、生体組織を適度に変形させることが必要である。前記理想値IStAVは、生体組織の弾性をより正確に反映した弾性画像を得ることができる程度に適度に生体組織を変形させて超音波の送受信を行なった場合に、任意に設定される領域において得られる歪みStの平均値である。この理想値IStAVは、例えば実際の生体組織と同様に、腫瘍と同じ硬さの部分や正常組織と同じ硬さの部分などを有するファントム等を対象として実験を行ない、経験上得られる値である。また、この理想値IStAVは、操作者が前記操作部8において設定できるようになっていてもよいし、デフォルトとして装置に記憶されていてもよい。
【0046】
前記(式1)について説明すると、この(式1)は、前記比Raを0から1までの範囲にするためのものであり、この(式1)で得られるYは、前記理想値IStAVに対する前記平均値RStAVの比と同等である。この(式1)で表される関数をグラフで表すと、図8に示すグラフとなる。この図8に示すように、0≦Y≦1となる。
【0047】
また、0.1≦|Ra|≦10であるものとし、|Ra|がこの範囲を超えた場合、Yは零とする。
【0048】
前記比算出部616の算出値Yは、弾性画像のクオリティを表す数値であり、この算出値Yにより、生体組織の弾性をどの程度正確に反映した弾性画像であるかを知ることができる。具体的には、算出値Yが1に近くなるほど、弾性画像のクオリティとしては良好であることを意味し、一方で算出値Yが0に近くなるほど、弾性画像のクオリティとしては悪くなることを意味する。ここで、弾性画像のクオリティが良好であるとは、生体組織の弾性をより正確に反映した弾性画像であることを意味し、一方で弾性画像のクオリティが悪いとは、生体組織の弾性を正確に反映した弾性画像ではないことを意味する。
【0049】
算出値Yと弾性画像のクオリティとの関係についてより詳細に説明すると、図8のグラフから分かるように、前記平均値RStAVが前記理想値IStAVと等しい場合(すなわち、|Ra|が1)、算出値Yは1となる。従って、算出値Yが1、または1に近い値であれば、生体組織の変形の程度が適切であり、生体組織の弾性を正確に反映した弾性画像が得られていることになる。
【0050】
一方で、前記平均値RStAVが前記理想値IStAVと離れた値になるほど(すなわち、|Ra|が1から離れた値になるほど)、算出値Yは零に近づく。ここで、前記平均値RStAVが前記理想値IStAVと離れた値になるということは、生体組織の変形の程度が適切ではないことを意味する。従って、算出値Yが零に近づくほど、生体組織の変形の程度が適切ではない結果、生体組織の弾性を正確に反映した弾性画像が得られていないことになる。
【0051】
前記エラー判定部617は、エラーフレームであるか否かを判定する。前記エラー判定部617は、各フレームにおけるエコー信号が、生体組織の弾性を適切に反映した弾性画像を得られるものであるかという観点に基づいて、エラーフレームであるか否かの判定を行なう。前記エラー判定部617は、本発明における判定部の実施の形態の一例である。
【0052】
ここで、上述のように前記算出値Yにより、弾性画像が生体組織の弾性をどの程度正確に反映した画像であるかが分かる。従って、本例において、前記エラー判定部617は、前記算出値Yに基づいて、エラーフレームであるか否かを判定する。
【0053】
前記割合判定部618は、所定の複数フレームにおける非エラーフレームの割合を算出し、所定の割合以上であるか否かを判定する。詳細は後述する。
【0054】
前記表示部7は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)やCRT(Cathode Ray Tube)などで構成される。前記操作部8は、操作者が指示や情報を入力するためのキーボード及びポインティングデバイス(図示省略)などを含んで構成されている。
【0055】
前記制御部9は、CPU(Central Processing Unit)を有して構成され、前記HDD10に記憶された制御プログラムを読み出し、前記物理量算出機能や前記表示画像制御機能などをはじめとする前記超音波診断装置1の各部における機能を実行させる。
【0056】
さて、本例の超音波診断装置1の作用について説明する。先ず、前記送受信部3が、前記超音波プローブ2から被検体の生体組織へ超音波を送信させ、そのエコー信号を取得する。この時、生体組織を変形させながら超音波の送受信を行なう。生体組織を変形させる手法としては、例えば前記超音波プローブ2により、被検体への圧迫とその弛緩を繰り返す手法や、前記超音波プローブ2により被検体へ音響放射圧を加える手法などが挙げられる。
【0057】
エコー信号が取得されると、前記Bモードデータ処理部4が前記Bモードデータを作成し、また前記物理量データ処理部5が前記物理量データを作成する。さらに、前記Bモード画像データ作成部612が前記Bモード画像データを作成し、前記弾性画像データ作成部613が前記カラー弾性画像データを作成する。そして、前記表示画像制御部614は、前記表示部7に超音波画像G1〜G3のいずれかの超音波画像を表示する。
【0058】
前記超音波画像の表示について、図9のフローチャートに基づいて説明する。前記超音波診断装置1においては、フレーム毎に図9に示す処理を行い、前記超音波画像G1〜G3のいずれかの超音波画像を表示する。具体的に説明すると、先ず、ステップS1では、前記エラー判定部617は前記算出値Yに基づいてエラーフレームであるか否かの判定を行なう。具体的には、前記エラー判定部617は、前記算出値Yが閾値YTH以下である場合、エラーフレームであると判定する。
【0059】
前記閾値YTHについて説明すると、この閾値YTHは、この閾値YTHを超えるの算出値Yになっているフレームの弾性画像は、生体組織の弾性をある程度正確に表わしているとされる値に設定される。0≦Y≦1であるため、閾値YTHも0以上1以下の範囲で設定される。前記閾値YTHは、前記HDD10などに予め記憶されていてもよいし、操作者が前記操作部8において入力することによって設定されてもよい。
【0060】
前記ステップS1においてエラーフレームではないと判定された場合(ステップS1でNO)、ステップS2の処理へ移行する。一方、前記ステップS1においてエラーフレームであると判定された場合(ステップS1でYES)、ステップS3の処理へ移行する。
【0061】
前記ステップS2では、前記表示画像制御部614は前記超音波画像G1を表示する。一方、前記ステップS3では、前記割合判定部618は、所定の複数フレームとして、現フレームであるフレームFnを含む直近の複数フレーム、すなわち現在のフレームFnを含み、この現在のフレームFnから所定のフレーム数だけ時間的にさかのぼったフレームまでの複数フレームにおける非エラーフレームの割合を算出し、所定の割合以上であるか否かを判定する。非エラーフレームとは、算出値Yが前記閾値YTHを超えるフレームである。例えば、前記割合判定部618は、所定の複数フレームとして、図10に示すように、現在のフレームFn及びこの現在のフレームFnから4フレーム前までのフレームF(n−1),F(n−2),F(n−3),F(n−4)の合計5フレームにおける非エラーフレームの割合を算出する。そして、前記割合判定部618は、非エラーフレームの割合が5分のm(mは2,3,4のいずれか)以上であるか否かを判定する。
【0062】
前記ステップS3において、非エラーフレームの割合が所定の割合以上であると判定されれば(ステップS3においてYES)、ステップS4の処理へ移行する。一方で、前記ステップS3において、非エラーフレームの割合が所定の割合未満であると判定されれば(ステップS3においてNO)、ステップS5の処理へ移行する。前記ステップS4では、前記表示画像制御部614は、所定の代替弾性画像EG′とBモード画像BGとを合成した超音波画像G2を表示する。一方、前記ステップS5では、前記表示画像制御部614は、Bモード画像BGのみからなる超音波画像G3を表示する。
【0063】
ここで、前記所定の代替弾性画像EG′について説明する。前記代替弾性画像EG′は、複数フレームのカラー弾性画像データを重み付け加算処理して得られるデータに基づく画像である。この重み付け加算処理は、エラーフレームである現在のフレームFnを含む直近の複数フレームについて行なってもよいし、現在のフレームFnを含まない直近の複数フレームについて行なってもよい。重み付け加算処理においては、エラーフレームの重み付け係数を非エラーフレームよりも低くすることが好ましい。
【0064】
具体的に、前記ステップS3における前記割合判定部618による判定と、前記ステップS4,S5における超音波画像G2,G3の表示について、図11〜図13に基づいて説明する。図11〜図13において、実線が引かれたフレームは非エラーフレームであり、当該フレームの弾性画像EGとBモード画像BGとが合成された超音波画像G1が表示されたフレームであることを意味する。また、破線が引かれたフレームはエラーフレームであり、当該フレームのカラー弾性画像データに基づく弾性画像EGに代えて、前記代替弾性画像EG′がBモード画像BGと合成された超音波画像G2が表示されたフレームであることを意味する。線が無いフレームはエラーフレームであり、Bモード画像のみからなる超音波画像G3が表示されたフレーム(弾性画像が表示されないフレーム)であることを意味する。
【0065】
ここで、前記割合判定部618は、S3において、非エラーフレームの割合が5分の2以上であるか否かを判定するものとし、5分の2以上であればステップS4の処理へ移行し、5分の2未満であればステップS5の処理へ移行する。
【0066】
図11において、フレームFn,F(n−1),F(n−2),F(n−3),F(n−4)における非エラーフレームの割合は5分の3である。従って、ステップS4の処理へ移行し、前記代替弾性画像EG′が表示された前記超音波画像G2が表示される。また、図12において、フレームFn,F(n−1),F(n−2),F(n−3),F(n−4)における非エラーフレームの割合は5分の1である。従って、ステップS5の処理へ以降し、Bモード画像BGのみの前記超音波画像G3が表示される。さらに、図13において、フレームFn,F(n−1),F(n−2),F(n−3),F(n−4)における非エラーフレームの割合は5分の2である。従って、ステップS4の処理へ移行し、前記代替弾性画像EG′が表示された前記超音波画像G2が表示される。
【0067】
図11〜図13についてさらに説明する。先ず、図11において、フレームF(n+1),F(n+2)はエラーフレームである。フレームF(n+1),Fn,F(n−1),F(n−2),F(n−3)における非エラーフレームの割合は5分の2であり、フレームF(n+1)においては前記超音波画像G2が表示される。一方、F(n+2),F(n+1),Fn,F(n−1),F(n−2)における非エラーフレームの割合は5分の1であり、フレームF(n+2)においては前記超音波画像G3が表示される。図11に示すように、フレームF(n−5)〜F(n−2)までは、連続して非エラーフレームであったにもかかわらず、フレームF(n−1)以降はエラーフレームになった場合、途中までは代替弾性画像EG′が表示されるものの、ある時点からは代替弾性画像EG′は表示されなくなる。
【0068】
ここで、超音波画像を表示しながらスキャン位置を変えて腫瘍などの病変部を探すスクリーニングを行なう場合においては、Bモード画像のみを観察することにより病変部を探したいという要請がある。従って、操作者が、スクリーニング時に、例えば前記超音波プローブ2による圧迫とその弛緩を一旦止めれば、前記算出値Yは閾値YTH以下になり、図11に示すフレームF(n−1)以降のフレームのようにエラーフレームが連続して、Bモード画像BGのみからなる超音波画像G3を自動的に表示させることができる。従って、非エラーフレームの割合が所定の割合以上である適切な状況においてのみ前記代替弾性画像EG′を表示させることができる。
【0069】
次に、図12において、フレームF(n−4)〜F(n−2)はエラーフレームである。フレームF(n−4),F(n−5),F(n−6),F(n−7),F(n−8)における非エラーフレームの割合は5分の1であり、フレームF(n−4)においては前記超音波画像G3が表示される。また、F(n−3),F(n−4),F(n−5),F(n−6),F(n−7)における非エラーフレームの割合は5分の1であり、フレームF(n−3)においては前記超音波画像G3が表示される。また、F(n−2),F(n−3),F(n−4),F(n−5),F(n−6)における非エラーフレームの割合は5分の1であり、フレームF(n−2)においては前記超音波画像G3が表示される。図12に示すように、飛び飛びで非エラーフレームになっている場合は、スクリーニングなどを行なっている最中に、操作者が意図せずに前記超音波プローブ2の圧迫及びその弛緩を行なってしまう場合が考えられる。このような場合であっても、Bモード画像BGのみからなる前記超音波画像G3を表示させることができるので、スクリーニングの妨げになりにくい。以上より、非エラーフレームの割合が所定の割合以上である
適切な状況においてのみ前記代替弾性画像EG′を表示させることができる。
【0070】
次に、図13において、フレームF(n−8)〜F(n−6),F(n−3),F(n−2),F(n+1)はエラーフレームである。前記フレームF(n−8)〜F(n−6),F(n−3),F(n−2)においては、非エラーフレームの割合が5分の2以上になっており、前記超音波画像G2が表示される。一方、前記フレームF(n+1)においては、非エラーフレームの割合が5分の1になっており、前記超音波画像G3が表示される。図13に示すように、次第にエラーフレームの割合が増える場合、前記超音波プローブ2による圧迫とその弛緩を行なって弾性画像を表示させている状態から、スクリーニングへ移行する時である場合が考えられる。このような場合、非エラーフレームの割合が所定の割合以上である場合には、代替弾性画像EG′が表示されるものの、非エラーフレームの割合が所定の割合未満になるとBモード画像BGのみの表示になり、スクリーニングの妨げになりにくい。従って、適切な状況においてのみ前記代替弾性画像EG′を表示させることができる。
【0071】
以上説明した本実施形態によれば、非エラーフレームの割合が所定の割合以上である場合には、エラーフレームについて前記代替弾性画像EG′を表示するので、実際の生体組織の弾性をできるだけ正確に反映した弾性画像を表示させることができる。一方、非エラーフレームの割合が所定の割合以上ではなくなると、Bモード画像BGのみが表示されるので、エラーフレームの割合が増えた状況においては、代替弾性画像EG′を表示させ続けることを防止することができる。従って、適切な状況においてのみ代替弾性画像EG′を表示させることができる。
【0072】
(第二実施形態)
次に、第二実施形態について図14に基づいて説明する。なお、第一実施形態と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0073】
本例において、前記表示制御部6は、前記メモリ611、前記Bモード画像データ作成部612、前記弾性画像データ作成部613、前記表示画像制御部614、エラー判定部617、割合判定部618のほか、相関係数平均部619を備えている。この相関係数平均部619は、本発明における相関係数平均部の実施の形態の一例である。
【0074】
前記相関係数平均部619は、前記物理量データ処理部5によって行なわれた各画素毎の相関演算における相関係数Cの前記弾性画像表示領域R(前記領域R(i),前記R(ii))における平均値CAVをフレーム毎に算出する。ここで、0≦C≦1であるので、0≦CAV≦1である。相関演算における相関係数は、1に近づくほど生体組織の弾性をより正確に反映した変位を得ることができ、一方で零に近づくほど生体組織の弾性を正確に反映した変位を得ることができなくなる。従って、前記平均値CAVが1に近づくほど弾性画像EGのクオリティが良好になり、一方で前記平均値CAVが零に近づくほど弾性画像EGのクオリティが悪くなる。
【0075】
本例では、図9に示す前記ステップS1において、前記エラー判定部617は前記相関係数Cの平均値CAVに基づいてエラーフレームであるか否かの判定を行なう。前記エラー判定部617は、前記平均値CAVが閾値CTH以下である場合、エラーフレームであると判定する。
【0076】
ここで、上述のように前記相関係数Cにより、前記弾性画像が生体組織の弾性をどの程度正確に反映した画像であるかが分かる。従って、本例では、前記エラー判定部617は、前記相関係数Cの平均値CAVに基づいてエラーフレームであるか否かの判定を行なう。
【0077】
前記閾値CTHについて説明すると、この閾値CTHは、この閾値CTHを超える平均値CAVになっているフレームの弾性画像は、生体組織の弾性をある程度正確に表わしているとされる値に設定される。
【0078】
以上説明した第二実施形態においても、第一実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0079】
(第三実施形態)
次に、第三実施形態について図15に基づいて説明する。なお、第一、第二実施形態と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0080】
本例において、前記表示制御部6は、前記メモリ611、前記Bモード画像データ作成部612、前記弾性画像データ作成部613、前記表示画像制御部614、前記物理量平均部615、前記比算出部616、前記エラー判定部617、前記割合判定部618、前記相関係数平均部619のほか、乗算部620を有している。前記乗算部620は、本発明における乗算部の実施の形態の一例である。
【0081】
本例において、前記物理量平均部615は、前記弾性画像表示領域R(前記領域R(i),前記領域R(ii))において、相関係数Cが所定値以上である相関演算が行なわれた画素(相関ウィンドウ)の歪みStの平均値RStAV′を算出する。そして、前記比算出部616が前記平均値RStAV′を前記平均値RStAVの代わりに用いて前記比Raを算出し、前記(式1)から前記算出値Yを算出する。また、前記相関係数平均部619は第二実施形態と同様に相関係数Cの平均値CAVを算出する。
【0082】
前記乗算部620は、前記比算出部616で得られた算出値Yと、前記相関係数平均部619で得られた相関係数Cの平均値CAVとを乗算し、乗算値Mを算出する。この乗算値Mはフレーム毎に算出される。
【0083】
前記乗算部620は、前記算出値Yと前記相関係数Cの平均値CAVとを乗算する時に、重み付けをして乗算してもよい。
【0084】
ここで、0≦Y≦1、0≦CAV≦1であるので、0≦M≦1となる。前記乗算値Mは、前記算出値Yと前記平均値CAVとの乗算値であるため、乗算値Mが1に近づくほど弾性画像EGのクオリティが良好になり、一方で乗算値Mが零に近づくほど弾性画像EGのクオリティが悪くなる。
【0085】
本例では、図9に示す前記ステップS1において、前記エラー判定部617は前記乗算値Mに基づいてエラーフレームであるか否かの判定を行なう。前記エラー判定部617は、前記乗算値Mが閾値MTH以下である場合、エラーフレームであると判定する。
【0086】
ここで、上述のように前記算出値Y及び前記相関係数Cにより、弾性画像が生体組織の弾性をどの程度正確に反映した画像であるかが分かるため、前記乗算値Mによっても、弾性画像が生体組織の弾性をどの程度正確に反映した弾性画像であるかが分かる。従って、本例では、前記エラー判定部617は、前記乗算値Mに基づいてエラーフレームであるか否かの判定を行なう。
【0087】
前記閾値MTHについて説明すると、この閾値MTHは、この閾値MTHを超える乗算値Mになっているフレームの弾性画像は、生体組織の弾性をある程度正確に表わしているとされる値に設定される。
【0088】
以上説明した第三実施形態においても、第一、二実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0089】
(第四実施形態)
次に、第四実施形態について図16に基づいて説明する。なお、第一〜第三実施形態と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0090】
本例において、前記表示制御部6は、前記メモリ611、前記Bモード画像データ作成部612、前記弾性画像データ作成部613、前記表示画像制御部614、前記エラー判定部617、前記割合判定部618のほか、符号個数算出部621を有している。前記符号個数算出部621は、一のフレームにおいて画素毎に算出された歪みStについて、正の符号の個数と負の符号の個数を求める。
【0091】
本例では、図9に示す前記ステップS1において、前記エラー判定部617は、正の符号の個数と負の符号の個数の割合に基づいてエラーフレームであるか否かの判定を行なう。具体的には、以下の(式2)又は(式3)のいずれか一方の条件を満たせば、そのフレームを非エラーフレームであると判定し、一方で(式2)及び(式3)のいずれの条件も満たさない場合、そのフレームをエラーフレームであると判定する。
正の個数>x×負の個数・・・(式2)
負の個数>x×正の個数・・・(式3)
ただし、(式2)及び(式3)において、x≧1である。このxは操作者が前記操作部8において入力されて設定されてもよいし、予め前記HDD10などに記憶されていてもよい。
【0092】
ここで、一のフレームにおける歪みStの符号の割合と弾性画像EGのクオリティとの関係について説明する。例えば、前記超音波プローブ2による圧迫とその弛緩が適切になされていれば、一のフレームにおける歪みStの符合の割合としては、正又は負のいずれか一方の符合の割合が大きくなる。しかし、前記超音波プローブ2による圧迫とその弛緩の方向が適切でなく、生体組織に横ずれなどが生じている場合には、一のフレームにおける歪みStの符合の割合は、正又は負のいずれか一方に偏らず、双方の符号の割合が拮抗したものになってくる。従って、正負の符合の割合により、弾性画像が生体組織の弾性をどの程度正確に反映した画像であるかが分かる。以上より、(式2)及び(式3)のいずれの条件も満たさない場合には、正負の符号の割合が拮抗するものになることから、そのフレームをエラーフレームと判定することにしたものである。
【0093】
以上説明した第四実施形態においても、第一〜第三実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0094】
(第五実施形態)
次に、第五実施形態について図17に基づいて説明する。なお、第一〜第四実施形態と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0095】
本例において、前記表示制御部6は、前記メモリ611、前記Bモード画像データ作成部612、前記弾性画像データ作成部613、前記表示画像制御部614、エラー判定部617、割合判定部618を有する。
【0096】
本例では、図9に示す前記ステップS1において、前記エラー判定部617は、前記第一〜第四実施形態とは異なり、先ず一のフレームの前記弾性画像作成領域R(前記領域R(i),R(ii))内における各画素についてエラー画素であるか否かの判定を行なう。そして、エラーと判定された画素(エラー画素)又はエラーと判定されなかった画素(非エラー画素)の割合に基づいて、エラーフレームであるか否かを判定する。
【0097】
本例では、前記エラー判定部617は、各画素毎に算出された歪みStに基づいてエラー画素であるか否かの判定を行なう。例えば、前記エラー判定部617は、歪みStが、予め設定された所定の範囲内にない場合にはエラー画素と判定する。或いは、前記エラー判定部617は、前記弾性画像作成領域R(前記領域R(i),前記領域R(ii))内の歪みStの統計分布に基づいて、各画素についてエラー画素であるか否かを判定してもよい。このように歪みStの統計分布に基づいて判定を行なう場合には、例えば歪みStの統計分布において、上位のpパーセント又は下位のpパーセントに属する歪みが算出された画素をエラーとしてもよい。なお、pは任意に設定される値である。
【0098】
以上説明した第五実施形態においても、第一〜第四実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0099】
次に、第五実施形態の変形例について説明する。この変形例では、前記エラー判定部617は、各画素について行なわれた相関演算における相関係数Cに基づいてエラー画素であるか否かの判定を行なう。例えば、前記エラー判定部617は、相関係数Cが、所定値以下である場合にはエラー画素と判定する。
【0100】
以上、本発明を前記各実施形態によって説明したが、本発明はその主旨を変更しない範囲で種々変更実施可能なことはもちろんである。例えば、前記割合判定部618は、非エラーフレームの割合ではなく、エラーフレームの割合を算出し、このエラーフレームの割合が所定の割合以下であるか否かを判定してもよい。この場合、前記表示画像制御部614は、エラーフレームの割合が所定の割合以下なら、前記所定の代替弾性画像EG′とBモード画像BGとを合成した超音波画像G2を表示し、エラーフレームの割合が所定の割合を超えていれば、Bモード画像BGのみからなる超音波画像G3を表示してもよい。
【0101】
また、前記各実施形態において、非エラーフレームについては、そのフレームのデータのみに基づく弾性画像EGが表示されるようになっているが、現フレームである非エラーフレームのカラー弾性画像データを、この現フレームの直前のフレームにおいて表示された弾性画像のカラー弾性画像データと重み付け加算して得られたデータに基づく弾性画像を表示するようにしてもよい。この場合、非エラーフレームについての重み付け係数は、エラーフレームについて重み付け加算処理を行なう場合におけるエラーフレームの重み付け係数よりも大きい値に設定する。
【0102】
また、重み付け加算処理はカラー弾性画像データを対象にするのではなく、このカラー弾性画像データに走査変換される前の物理量データを対象にして行ってもよい。
【0103】
また、前記物理量データ処理部5は、生体組織の弾性に関する物理量として、歪みの代わりに生体組織の変形による変位や弾性率などを算出してもよく、また他の公知の手法によって生体組織の弾性に関する物理量を算出してもよい。
【0104】
さらに、前記割合判定部618は、所定の複数フレームとして、現フレームであるフレームFnを含まない直近の複数フレーム、すなわち現在のフレームFnを含まず、この現在のフレームFnから所定のフレーム数だけ時間的にさかのぼったフレームまでの複数フレームにおける非エラーフレーム又はエラーフレームの割合を算出してもよい。
【符号の説明】
【0105】
1 超音波診断装置
5 物理量データ処理部(物理量算出部)
614 表示画像制御部
615 物理量平均部
616 比算出部
617 エラー判定部
619 相関係数平均部
620 乗算部
EG 弾性画像
EG′ 代替弾性画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体組織に超音波を送信して得られたエコー信号に基づいて、生体組織の弾性に関する物理量を算出する物理量算出部と、
所定の基準を満たさないと判定されるエラーフレームにおいて、該エラーフレームについて算出された前記物理量に基づく弾性画像に代えて表示される所定の代替弾性画像の表示と非表示とを、所定の複数フレームにおける非エラーフレームの割合又はエラーフレームの割合に基づいて制御する表示画像制御部と、
を備えることを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記所定の複数フレームは、現フレームを含む直近の複数のフレームであることを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記所定の複数フレームは、現フレームを含まない直近の複数のフレームであることを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記所定の代替弾性画像は、複数フレームの弾性画像を加算して得られた画像であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記エラーフレームの判定部を有し、該判定部は、判定対象のフレームの弾性画像が、生体組織の弾性を適切に反映した画像であるかという観点に基づいて、エラーフレームであるか否かの判定を行なうことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記物理量算出部は、同一音線上の時間的に異なるエコー信号に相関ウィンドウを設定し、該相関ウィンドウ間で相関演算を行なって前記物理量の算出を行なうものであり、
前記超音波診断装置にあっては、前記物理量の平均をフレーム毎に算出する物理量平均部と、該物理量平均部による算出値を、予め設定された前記物理量の平均値と比較する比較部と、をさらに備えており、
前記判定部は、前記比較部による比較結果に基づいて前記判定を行なう
ことを特徴とする請求項5に記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記物理量算出部は、同一音線上の時間的に異なるエコー信号に相関ウィンドウを設定し、該相関ウィンドウ間で相関演算を行なって前記物理量の算出を行なうものであり、
前記超音波診断装置にあっては、前記相関ウィンドウ間の相関演算における相関係数の平均をフレーム毎に算出する相関係数平均部をさらに備えており、
前記判定部は、前記相関係数平均部で得られた平均値に基づいて前記判定を行なう
ことを特徴とする請求項5に記載の超音波診断装置。
【請求項8】
前記物理量算出部は、同一音線上の時間的に異なるエコー信号に相関ウィンドウを設定し、該相関ウィンドウ間で相関演算を行なって前記物理量の算出を行なうものであり、
前記超音波診断装置にあっては、所定の閾値以上の相関係数の相関演算が行なわれた相関ウィンドウについて得られた物理量の平均をフレーム毎に算出する物理量平均部と、予め設定された前記物理量の平均値に対する前記物理量平均部による算出値の比を算出する比算出部と、前記相関ウィンドウ間の相関演算における相関係数の平均をフレーム毎に算出する相関係数平均部と、前記比算出部の算出値と、前記相関係数平均部の算出値とを乗算する乗算部と、をさらに備え、
前記判定部は、前記乗算部による算出値に基づいて前記判定を行なう
ことを特徴とする請求項5に記載の超音波診断装置。
【請求項9】
前記物理量算出部は、同一音線上の時間的に異なるエコー信号に相関ウィンドウを設定し、該相関ウィンドウ間で相関演算を行なって、前記物理量として正負の符合を伴う物理量の算出を行なうものであり、
前記判定部は、一のフレームにおける前記正負の符号の割合に基づいて前記判定を行なう
ことを特徴とする請求項5に記載の超音波診断装置。
【請求項10】
前記判定部は、各画素についてエラー画素であるか否かの判定を行ない、一のフレームにおけるエラー画素又は非エラー画素の割合に基づいてエラーフレームであるか否かの判定を行なうことを特徴とする請求項5に記載の超音波診断装置。
【請求項11】
前記判定部は、各画素について算出された前記物理量に基づいて、エラー画素であるか否かの判定を行なうことを特徴とする請求項10に記載の超音波診断装置。
【請求項12】
前記物理量算出部は、同一音線上の時間的に異なるエコー信号に相関ウィンドウを設定し、該相関ウィンドウ間で相関演算を行なって各画素について前記物理量の算出を行なうものであり、
前記判定部は、各画素について行なわれた相関演算における相関係数に基づいてエラー画素であるか否かの判定を行なう
ことを特徴とする請求項10に記載の超音波診断装置。
【請求項13】
前記表示画像制御部は、非エラーフレームについては、該非エラーフレームについて算出された前記物理量に基づく弾性画像を表示することを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項14】
コンピュータに、
生体組織に超音波を送信して得られたエコー信号に基づいて、生体組織の弾性に関する物理量を算出する物理量算出機能と、
所定の基準を満たさないと判定されるエラーフレームにおいて、該エラーフレームについて算出された前記物理量に基づく弾性画像に代えて表示される所定の代替弾性画像の表示と非表示とを、所定の複数フレームにおける非エラーフレームの割合又はエラーフレームの割合に基づいて制御する表示画像制御機能と、
を実行させることを特徴とする超音波診断装置の制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−19873(P2012−19873A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−158869(P2010−158869)
【出願日】平成22年7月13日(2010.7.13)
【出願人】(300019238)ジーイー・メディカル・システムズ・グローバル・テクノロジー・カンパニー・エルエルシー (1,125)
【Fターム(参考)】