説明

路車間通信システム及び路車間通信方法とこれに用いる光ビーコン

【課題】 光信号による路車間通信だけで、車両の走行速度に関する速度情報を精度よく計測できるようにする。
【解決手段】 本発明は、道路Rの所定範囲に設定された通信領域Aにおいて、車両Cに搭載された車載機2と光ビーコン4の投受光器8との間で光信号による双方向通信を行うシステムに関する。光ビーコン4は、車載機2から複数回にわたってアップリンク情報UO1,UO2を受信するとともに、その複数のアップリンク情報UO1,UO2の送信時における車両Cの走行位置に応じた走行位置情報を取得し、その取得した走行位置情報に基づいて車両Cの走行速度に関する速度情報を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路側に設置された光ビーコンと車両に搭載された車載機との間で光信号による双方向通信を行う路車間通信システム及び路車間通信方法と、これに用いる光ビーコンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
路車間通信システムを利用した交通情報サービスとして、光ビーコン、電波ビーコン又はFM多重放送を用いたいわゆるVICS(Vehicle Information and Communication System)が既に展開されている。このうち、光ビーコンは近赤外線を通信媒体とした光通信を採用しており、車載機との双方向通信が可能となっている。
具体的には、車両の保持するビーコン間の旅行時間情報等を含むアップリンク情報が車載機からインフラ側の光ビーコンに送信され、逆に、渋滞情報、区間旅行時間情報、事象規制情報及び車線通知情報等を含むダウンリンク情報が光ビーコンから車載機に送信されるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記光ビーコンは、車載機との間で双方向通信を行うビーコンヘッド(投受光器)を備えており、この投受光器は、ダウンリンク情報を送出する発光ダイオード(LED)と、車載機からのアップリンク情報を受信するフォトセンサとを備えている。
例えば図13に示すように、光ビーコン4のビーコンヘッド(投受光器)8は、通常、その直下よりも上流側よりに通信領域Aが設定されている。光ビーコン(光学式車両感知器)8の「近赤外線式インタフェース規格」によれば、アップリンク領域UAは、ダウンリンク領域DAの車両進行方向の上流部分(図13の右側部分)と重複し、ダウンリンク領域DAとアップリンク領域UAの上流端は互いに一致するものとされている。
【0004】
従って、ダウンリンク領域DAの車両進行方向長さは通信領域A全体の同方向長さと一致する。また、上記規格によれば、一般道向けの光ビーコン4の場合で、ダウンリンク領域DAの下流端aは、ビーコンヘッド108の直下の1.0〜1.3m上流側に位置し、ダウンリンク領域DAの下流端aからアップリンク領域UAの下流端bまでの距離は2.1mと規定され、アップリンク領域UAの下流端bから同領域UAの上流端cまでの距離は1.6mと規定されている。従って、この場合、通信領域Aの車両進行方向の全長は3.7mとなる。
【0005】
もっとも、実際には、現在設定されているダウンリンク領域DAの上流端は、アップリンク領域UAの上流端cよりも上流側(例えば、図13のc′)に設定されている場合が多い。
【特許文献1】特開2005−268925号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記路車間通信システムでは、通信領域Aにおいて光ビーコン4と車載機2との間で次のような双方向通信が行われる。
まず、光ビーコン4は、車線通知情報(車両ID無し)を含む第1のダウンリンク情報を道路のダウンリンク領域DAに所定の送信周期で常時送信している。そのダウンリンク領域DAに車両Cが進入すると、車両Cに搭載された車載機2の投受光器(車載ヘッド)が第1のダウンリンク情報を受信し、当該車載機2は、自己の車両IDを格納した車線通知情報を含むアップリンク情報35の送信を開始する。
【0007】
そして、光ビーコン4のビーコンヘッド8が上記アップリンク情報35を受信すると、光ビーコン4はダウンリンクの切り替えを行い、車載機2に対して上記車両IDを有する車線通知情報を含む第2のダウンリンク情報36の送信を開始する。この第2のダウンリンク情報は、所定時間内において可能な限り繰り返し送信され、車載機102において受信される。
ところで、本出願人は、上記路車間通信システムを利用してドライバに安全運転支援を行う運転支援システムを既に提案している(特願2006−121700号及び特願2007−20910号参照)。
【0008】
この運転支援システムでは、例えば図13に示すように、光ビーコン4が、アップリンク情報35の送信時における車両Cの走行位置と対応するように定められた始点位置P1から、その下流側の所定位置P0(例えば、信号機手前の停止線40)までの距離L1を記憶しており、この距離L1に関する情報を第2のダウンリンク情報36に含めて車載機2に送信する。
そして、上記第2のダウンリンク情報36を受信した車載機2は、上記距離L1や車両Cの走行速度に基づいて、車両Cが停止線40で適切に停止できるか否かを判定し、停止線40の手前で強制停止するように車両Cを制動させたり、ドライバに停止や減速を促す報知を行ったりして、ドライバに安全運転支援を行うようになっている。
【0009】
しかし、かかる運転支援システムを採用する場合、次のような問題がある。
すなわち、上記安全運転支援において、車両Cが停止線40の手前で適切に停止できるか否かを判定するには、ビーコン4側から提供される距離L1の他に、始点位置P1の通過時における車両Cの走行速度が必要であるが、かかる走行速度は、通常、車輪の回転数を計数して車速を求める車速センサや、GPSシステムで計測した移動距離に基づいて車速を求めるナビゲーション装置から取得される。
【0010】
ところが、上記車速センサやナビゲーション装置から得られる走行速度には誤差が含まれているので、ビーコン4側から提供される距離L1が正確であっても、停止線40の手前で停止させる安全運転支援を精度よく行えないことがある。
例えば、上記車速センサの場合には、車輪の回転数に基づいて車速を求めるので、車両Cのドライバが通常と径が異なるタイヤを装着している場合には、車速センサで実測される走行速度は実際の速度とは異なるものになってしまう。
【0011】
そこで、始点位置P1の通過時における車両Cの走行速度についてもインフラ側で測定し、これを第2のダウンリンク情報36に含めて車両Cに送信することが好ましいが、車両Cの走行速度を高精度に計測できるスピードメータ(例えば、ドップラーメータ)は一般に高価であり、このような高価な計測機器を光ビーコン4に対応してインフラ側に設けるとなると、路車間通信システムの構築コストが高騰化するという欠点がある。
【0012】
本発明は、このような実情に鑑み、高価なスピードメータを設けなくても、光信号による路車間通信だけで車両の走行速度に関する速度情報を精度よく計測できる路車間通信システム及び路車間通信方法と、これに用いる光ビーコンを提供することを第1の目的とする。
また、本発明は、光ビーコン側で正確に求めた速度情報を利用して、ドライバに対する安全運転支援を精度よく行うことができる路車間通信システムを提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記した通り、光ビーコンを用いた従来の路車間通信では、通常、光ビーコンは、投受光器がアップリンク情報を受信すると無条件にダウンリンクの切り替えを行い、車載機に対して第2のダウンリンク情報の送信を開始する。
これに対して、本発明では、投受光器がアップリンク情報を受信しても直ぐにダウンリンクの切り替えを行うのではなく、車載機がアップリンク情報を複数回送信できる通信手順を採用し、この複数回にわたって送信されるアップリンク情報を利用して、光ビーコンが車両の走行速度に関する速度情報を求めるシステムを採用した。
【0014】
すなわち、本発明の路車間通信システム(請求項1)は、道路を走行する車両の車載機と、前記道路の所定範囲に通信領域が設定された投受光器を有する光ビーコンとを備え、前記通信領域において前記車載機と前記光ビーコンの投受光器との間で光信号による双方向通信を行う路車間通信システムであって、
前記光ビーコンは、前記車載機から複数回にわたってアップリンク情報を受信可能な受信部と、受信された複数のアップリンク情報の送信時における前記車両の走行位置に応じた走行位置情報を取得する取得部と、取得された走行位置情報に基づいて前記車両の走行速度に関する速度情報を算出する算出部とを有することを特徴とする。
【0015】
上記路車間通信システムよれば、光ビーコンの取得部が、受信された複数のアップリンク情報の送信時における車両の走行位置に応じた走行位置情報を取得し、光ビーコンの算出部が、取得された走行位置情報に基づいて車両の走行速度に関する速度情報を算出するので、光信号による路車間通信を利用して、車両の走行速度に関する速度情報をビーコン側で正確に算出することができる。
このため、高価なスピードメータを設けなくても、光信号による路車間通信だけで車両の走行速度を精度よく計測できるようになる。
【0016】
本発明の路車間通信システムでは、上記の通り、複数のアップリンク情報を利用して速度情報を生成するものであるから、複数のアップリンク情報の受信が余り遅くなり過ぎると、その後のダウンリンクの切り替えタイミングも遅れてしまう。従って、この場合、通信領域内で第2のダウンリンク情報の送信ができなくなり、そのダウンリンク情報に渋滞情報等の所定情報を含めて車載機に送るという本来的な路車間通信が阻害され得る。
そこで、本発明の路車間通信システムにおいて、前記算出部は、前記受信部が最初に受信したアップリンク情報に応じて得られる走行位置情報に基づいて把握される前記車両の走行位置が、前記アップリンク領域内の上流側よりである場合に限り、前記車両の走行速度に関する速度情報を算出することが好ましい(請求項2)。
【0017】
本発明の路車間通信システムにおいて、前記受信部は、例えば、後述する第1実施形態(図1〜図6)に示すように、前記アップリンク領域を車両走行方向に分割してなる各分割領域に対応する複数のフォトダイオードにより構成することができる(請求項3)。
この場合、前記取得部としては、前記複数のフォトダイオードのうちのどのダイオードでアップリンク光が受信されたかによって前記車両の走行位置に応じた走行位置情報を取得するものを採用すればよい。
【0018】
また、本発明の路車間通信システムにおいて、前記受信部は、後述する第2実施形態(図7及び図8)に示すように、アップリンク光の受光面に対する受光位置に対応して前記車両の走行位置が特定可能なフォトダイオードにより構成することにしてもよい(請求項4)。
この場合、前記取得部としては、前記アップリンク光の受光位置に基づいて前記車両の走行位置に応じた走行位置情報を取得するものを採用すればよい。
【0019】
更に、本発明の路車間通信システムにおいて、前記受信部は、後述する第3実施形態(図9〜図13)に示すように、アップリンク光の入射角度に対応して検出レベル差が生じるフォトダイオードにより構成することにしてもよい(請求項5)。
この場合、前記取得部としては、その検出レベル差に基づいて前記車両の走行位置に応じた走行位置情報を取得するものを採用すればよい。
【0020】
本発明の路車間通信システムにおいて、前記光ビーコンが、前記受信部がアップリンク情報を受信した後に所定のダウンリンク情報を前記投受光器に送信させる通信制御部を有している場合には、前記所定のダウンリンク情報に、算出された前記車両の走行速度に関する速度情報や、前記車両の走行位置からその下流側の所定位置までの距離に関する距離情報を含ませることにすればよい(請求項6及び7)。
この場合、車載機は、所定位置までの距離に関する距離情報だけでなく、アップリンク情報の送信時における自身の走行速度に関する速度情報をも光ビーコンから提供されることになるので、より正確な情報に基づいて安全運転支援を実施することができ、ドライバに対する安全運転支援を精度よく行うことができる。
【0021】
本発明の光ビーコン(請求項8)は、前記路車間通信システム(請求項1)の主たる構成要素となる光ビーコンであり、同システムと同様の作用効果を奏する。
また、本発明の路車間通信方法(請求項9)は、前記路車間通信システム(請求項1)において行われる通信方法であり、同システムと同様の作用効果を奏する。
【発明の効果】
【0022】
以上の通り、本発明によれば、高価なスピードメータを設けなくても、光信号による路車間通信だけで車両の走行速度に関する速度情報を生成できるので、車両の速度情報を生成する光ビーコンによる路車間通信システムを安価に構築することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
〔第1実施形態〕
〔システムの全体構成〕
図1は、第1実施形態に係る路車間通信システムの全体構成を示すブロック図である。
図1に示すように、この路車間通信システムは、インフラ側の交通管制システム1と、道路Rを走行する各車両Cに搭載された車載機2とを備えて構成されている。
交通管制システム1は、管制室に設けられた中央装置3と、道路Rの各所に多数設置された光ビーコン(光学式車両感知器)4とを有している。光ビーコン4は、近赤外線を通信媒体とした光通信によって車載機2との間で双方向通信を行う。なお、中央装置3は交通管制室に設けられている。
【0024】
〔光ビーコンの構成〕
光ビーコン4は、電話回線等の通信回線5を介して中央装置3と接続された通信インタフェースである通信部6と、この通信部6が接続されたビーコン制御機7と、このビーコン制御機7のセンサ用インタフェースに接続された複数(図例では4つ)のビーコンヘッド(投受光器)8とを備えている。
各ビーコンヘッド8は、発光ダイオード(LED)10とフォトセンサ(受信部)11を筐体の内部に収納している(図3参照)。このうち、LED10は、近赤外線よりなるダウンリンク光DO(ダウンリンク情報34,36を構成する光信号)を後述する通信領域Aに発光し、フォトセンサ11は、車載機2からの近赤外線よりなるアップリンク光UO(アップリンク情報35を構成する光信号)を受光する。また、本実施形態のビーコンヘッド8には、複数(図例では4つ)のフォトセンサ11が設けられている。
【0025】
図2は、上記光ビーコン4の平面図である。
図2に示すように、本実施形態の光ビーコン4は、同じ方向の複数(図例では4つ)の車線R1〜R4を有する道路Rに設置されており、各車線R1〜R4に対応して設けられた前記複数のビーコンヘッド8と、これらビーコンヘッド8を一括制御する制御部である一台の前記ビーコン制御機7とを備えている。
上記ビーコン制御機7は、CPU、メモリ(RAM)及び記憶装置(ROM)を有するプログラマブルなマイコンよりなり、通信部6(図1)による中央装置3との双方向通信と、ビーコンヘッド8による車載機2との路車間通信を行う通信制御部としての機能を有する。なお、このビーコン制御機7による路車間通信の内容については後述する。
【0026】
また、ビーコン制御機7は、所定の各機能を実行するコンピュータプログラムを記憶装置に格納しており、このプログラムが実行する機能部として、上記通信制御部としての機能部の他に、更に、双方向通信を通じて車両Cの複数の走行位置を検出する検出部15と、検出された車両Cの走行位置の距離差に基づいて車両Cの走行速度に関する速度情報を算出する算出部16とを備えている(図4参照)。
なお、これらの各機能部15,16の処理内容についても後述する。
【0027】
ビーコン制御機7は、道路脇に立設した支柱13に設置されており、各ビーコンヘッド8は、支柱13から道路R側に水平に架設した架設バー14に取り付けられ、道路Rの各車線R1〜R4の直上に配置されている。
各ビーコンヘッド8のLED10は、各車線R1〜R4の直下よりも車両進行方向の上流側に向けて近赤外線を発光しており、これにより、車載機2との間で路車間通信を行うための通信領域Aが当該ヘッド8の上流側に設定されている。
【0028】
〔通信領域について〕
図3は、光ビーコン4の通信領域Aを示す側面図である。
図3に示すように、光ビーコン4の通信領域Aは、車載機2の投受光器である車載ヘッド27がダウンリンク情報を受信することができるダウンリンク領域(図3において実線のハッチングを設けた領域)DAと、光ビーコン4のビーコンヘッド8が車載ヘッド27からのアップリンク情報を受信することができるアップリンク領域(図3において破線のハッチングを設けた領域)UAとからなる。
【0029】
ダウンリンク領域DAは、ビーコンヘッド8の投受光位置d、道路R上の位置a及びcを頂点とする△dacで示された範囲に設定されている。また、アップリンク領域UAは、前記位置dと、道路R上の位置b及びcを頂点とする△dbcで示された範囲に設定されている。
従って、ダウンリンク領域DAとアップリンク領域UAの上流端cは互いに一致し、アップリンク領域UAは、ダウンリンク領域DAの車両進行方向の上流部分(図3の右側部分)と重複している。また、ダウンリンク領域DAの車両進行方向長さは通信領域A全体の同方向長さと一致している。
【0030】
光ビーコン(光学式車両感知器)4の「近赤外線式インタフェース規格」によれば、ダウンリンク領域DA及びアップリンク領域UAの正式な領域寸法が規定されている。この規定では、一般道向けの光ビーコン4の場合で、ダウンリンク領域DAの下流端aは、ビーコンヘッド8の直下の1.0〜1.3m上流側に位置し、ダウンリンク領域DAの下流端aからアップリンク領域UAの下流端bまでの距離は2.1mと規定されている。
また、アップリンク領域UAの下流端bから同領域UAの上流端cまでの距離は1.6mと規定されている。従って、正式な通信領域Aの車両進行方向の全長(ac間の長さ)は3.7mとなる。
【0031】
しかしながら、本実施形態では、アップリンク領域UAの下流端bから同領域UAの上流端cまでの距離は、上記規定よりも上流側及び下流側へ長く設定されている。その結果、アップリンク領域UAは上記規定よりも車両進行方向に広がり、同時にダウンリンク領域DAも上記規定よりも車両進行方向に広がっている。
このようにアップリンク領域UA及びダウンリンク領域DAが広くなると、車載機2と光ビーコン4との間のアップリンク情報35及びダウンリンク情報34,36の送受信の確実性が増すことになる。
【0032】
更に、アップリンク領域UAは、車両Cの走行位置が特定可能な程度に当該領域UAを車両進行方向に複数に分割してなる分割領域UA1〜UA4よりなる。具体的には、本実施形態のアップリンク領域UAは、位置dを上端とし、道路R上の位置e1〜e3を下端とする3本の境界線(境界部)Kによって4つに分割されている。
ビーコンヘッド8に設けられた4つのフォトセンサ11(図1参照)は、それぞれアップリンク領域UAの各分割領域UA1〜UA4を受信領域としている。従って、例えば、分割領域UA1内で車載ヘッド27から送信されたアップリンク光UOは、この分割領域UA1に対応するフォトセンサ11によって受光される。
【0033】
〔車載機及び車両の構成〕
図4は、光ビーコン4と路車間通信する前記車載機2と、この車載機2が搭載された車両Cの概略構成図である。
図4に示すように、この車両Cは、ドライバの搭乗席(図示せず)を有する車体21と、この車体21に搭載された前記車載機2と、車両Cの各部を統合制御する電子制御装置(ECU)22と、車体21を駆動するエンジン23と、車体21を制動するブレーキ装置24と、車両Cの現時の速度を常時検出している速度検出器25とを備えている。ECU22は、ドライバのアクセル操作に基づくエンジン23の駆動制御や、ブレーキ操作に基づく制動制御等、車両Cに対する各種の制御を行う。
【0034】
車載機2は、車載コンピュータ26と、このコンピュータ26のセンサ用インタフェースに接続された車載ヘッド(投受光器)27と、搭乗席のドライバに対するヒューマンインタフェースとしてのディスプレイ28及びスピーカ装置29とを備えている。
上記車載ヘッド27は、光ビーコンの投受光器8と同様に、発光ダイオード(LED)とフォトセンサを備えている(図示せず)。このうち、LEDは、近赤外線よりなるアップリンク情報を発光し、フォトセンサは、通信領域Aに発光された近赤外線よりなるダウンリンク情報を受光する。
【0035】
車載コンピュータ26は、CPU、メモリ(RAM)及び記憶装置(ROM)を有するプログラマブルなマイコンよりなり、車載ヘッド27による光ビーコン4との路車間通信の制御処理を行う。
また、車載コンピュータ26は、所定の各機能を実行するプログラムを記憶装置に格納しており、このプログラムが実行する機能部として、距離認識部30、補正部31及び支援制御部32を備えている。なお、これらの各機能部30,31,32の処理内容については後述する。
【0036】
〔路車間通信の内容〕
図5は、通信領域Aにおいて、ビーコンヘッド8と車載ヘッド27との間で行われる双方向での路車間通信の手順を示している。以下、図5を参照しつつ、本実施形態の路車間通信の内容を説明する。
まず、光ビーコン4のビーコン制御機7は、各車線R1〜R4に対応するビーコンヘッド8から、ダウンリンクの切り替え前の第1情報として、車線通知情報を含む第1のダウンリンク情報34を、各車線R1〜R4のダウンリンク領域DAに所定の送信周期で常に送信し続けている(図5のF1)。なお、この段階では、車線通知情報には未だ車両IDは格納されていない。
【0037】
車載機2を搭載した車両Cが実際のダウンリンク領域DAに進入すると、車載機2の車載ヘッド27が車線通知情報(車両ID無し)を含む第1のダウンリンク情報34を受信する。
この際、車載機2の車載コンピュータ26は、当該車両Cが実際の通信領域A内に存在していることを認識する。その後、車載コンピュータ26は、アップリンク情報35の送信を開始し(図5のF2)、このアップリンク情報35をビーコンヘッド8に対して所定の送信周期(アップリンク送信周期)で送信する(図5のF3)。
【0038】
車載コンピュータ26は、車両Cに特定の車両IDを上記アップリンク情報35に格納して当該アップリンク情報35を送信し、ビーコン間の旅行時間情報を有している場合には、この情報もアップリンク情報35に含ませる。また、車載コンピュータ26は、光ビーコン4のビーコン制御機7がダウンリンクの切り替えを行ったことを認識するまで、当該アップリンク情報35を送信し続ける。
【0039】
一方、光ビーコン4のビーコンヘッド8がアップリンク情報35受信すると(図5のF4)、ビーコン制御機7は、従来のように初回のアップリンク情報35を受信したときに即座にダウンリンクの切り替えを行うのではなく、複数回目(本実施形態では2回目)のアップリンク情報35を受信したとき(図5のF4)に、ダウンリンクの切り替えを行い(図5のF5)、第2情報として、車両ID情報を有する車線通知情報を含む第2のダウンリンク情報36の送信を開始し、この第2のダウンリンク情報36の送信を所定時間内において可能な限り繰り返す(図5のF6)。
【0040】
上記車線通知情報には、車線R1〜R4(図2)ごとに車両IDを格納するフィールドがあり、各車両IDに対して車線番号を付与することができる。このため、異なる車線R1〜R4を走行する各車両Cの車載コンピュータ26は、その格納フィールド内のいずれに自車両の車両IDが含まれるかを判断することにより、自車両がどの車線R1〜R4を走行しているかを認識できる。
【0041】
第2のダウンリンク情報36には、車両IDを含む車線通知情報の他に、渋滞情報、区間旅行時間情報、事象規制情報、及び、ドライバに対する安全運転支援のための支援情報等が含まれている。
この支援情報には、光ビーコン4より下流側の信号機の灯色が変わるタイミング情報である信号情報の他、アップリンク領域UAからその下流側の所定位置(例えば、停止線)までの長さ情報である距離情報、及び、アップリンク領域UAの通過時における車両Cの走行速度に関する速度情報等が含まれている。
【0042】
図5に示すように、第2のダウンリンク情報36は、単一又は複数の最小フレーム37で構成されている。前記「近赤外線式インタフェース規格」によれば、この最小フレーム37のデータ量は合計128バイトと規定され、ヘッダ部38に5バイト、実データ部39に123バイトが割り当てられている。
前記規格によれば、第2のダウンリンク情報36は、1〜80個の最小フレーム37で構成することができ、送信可能時間は250msに設定されている。また、このダウンリンク情報36は送信すべき情報量に対応した任意数の最小フレーム37で構成され、上記送信可能時間の範囲内で繰り返し送信される。
【0043】
最小フレーム37の送信周期は約1msである。従って、例えば、三つの最小フレーム37で一つのダウンリンク情報36を構成する場合には、ダウンリンク情報36の送信周期は約3msになるので、当該ダウンリンク情報36は所定の送信可能時間(250ms)の間に約80回繰り返して送信されることになる。
車載機2の車載コンピュータ26は、第2のダウンリンク情報36を受信した時点(図6のF7)で光ビーコン4でのダウンリンクの切り替えを認識し、この時点でアップリンク情報35の送信を停止する。
【0044】
本実施形態の路車間通信システムは、図3に示すように、通信領域Aからその下流側の所定位置P0までの距離を認識して位置標定を行い(図5のF8)、これに基づいて、ドライバに対する安全運転支援を行う距離認識システムとして機能している。
以下、前記した距離情報及び速度情報の内容と、これに基づいて車載機2が行う安全運転支援のための距離認識について説明する。
【0045】
〔距離情報の内容〕
図3に示すように、光ビーコン4のビーコン制御機7は、通信領域Aの所定位置P1〜P4からその下流側の所定位置P0までの距離L1〜L4の数値である前記距離情報を予め記憶装置に記憶している。そして、この距離L1〜L4についての距離情報を第2のダウンリンク情報36の送信フレームに格納して、当該フレームをビーコンヘッド8から繰り返し送出する。
距離L1〜L4の下流端(終点)P0は、光ビーコン4の下流側に設置された、例えば信号機手前の停止線40の位置に設定されている。
【0046】
また、距離L1〜L4の上流端(始点)P1〜P4は、アップリンク領域UAの各分割領域UA1〜UA4に応じて4カ所に設定されている。具体的に上流端P1〜P4の位置は、各分割領域UA1〜UA4における道路R上の車両進行方向の略中央位置に設定されている。
ビーコン制御機7は、予め記憶した複数の距離L1〜L4についての距離情報のうちいずれかを選択し、第2のダウンリンク情報36の送信フレームに格納する。そして、どの距離L1〜L4を選択するかは、ダウンリンクの切り換え前にアップリンク情報35を受信したフォトセンサ11に基づいて決定される。
【0047】
例えば、図6に示すように、最上流側の分割領域UA1に対応するフォトセンサ11が初回のアップリンク光UO1(図3の実線矢印)を受光し、その次の分割領域UA2に対応するフォトセンサ11が2回目のアップリンク光UO2(図3の仮想線矢印)を受光した場合、ビーコン制御機(通信制御部)7は、その2回目のアップリンク光UO2を受光したフォトセンサ11に対応する距離情報L3を選択するとともに、ダウンリンクを切り換え、LED10を介して距離L3についての距離情報を含む第2のダウンリンク情報36を送信する。
【0048】
なお、2回目のアップリンク情報35を受光したフォトセンサ11が、他の分割領域UA2又は分割領域UA4である場合には、ビーコン制御機7は、上流点がP2又はP4となるいずれかの距離L2又は距離L4を選択し、当該距離L2又は距離L4についての距離情報を含む第2のダウンリンク情報36を送信する。
【0049】
〔速度情報の内容〕
一方、ビーコン制御機7の検出部15は、ダウンリンク切り替え前の上記双方向通信を通じて車両Cの走行位置を検出する。
すなわち、図3及び図6に例示した場合では、初回のアップリンク情報35の送信地点が上流点P1であり、2回目のアップリンク情報35の送信始点が上流点P3となっているので、この場合、検出部15は、これらの上流点P1,P3の位置をそれぞれ各アップリンク情報35の送信時における走行位置に特定する。
【0050】
次に、ビーコン制御機7の算出部16は、初回と2回目のアップリンク情報35の受光時刻をそれぞれ特定してその時刻差Δtを演算し、上記地点P1とP3の距離差ΔL(=L1−L3)をその時間差Δtで除することにより、アップリンク領域UAを通過する車両Cの走行速度vを算出する。
ビーコン制御機7は、算出部16で算出された上記走行速度vを速度情報とし、ダウンリンクの切り換え後の第2のダウンリンク情報36にその速度情報を含め、当該ダウンリンク情報36を、LED10を介して車載機2に送信する。
【0051】
なお、算出部16では、距離差ΔLと時間差Δtの演算までを行い、これらに基づく走行速度vの演算は車載機2側で行うことにしてもよい。従って、この場合、光ビーコン4側から車載機2に提供される速度情報は、走行速度vそのものではなく、距離差ΔLと時間差Δtで構成されることになる。
また、本実施形態において、車両Cの走行位置P1,P3やその距離差ΔLを特定しなくても、2つのアップリンク情報35の受信時間差Δと2つのアップリンク情報35をそれぞれ受信したフォトセンサ11の組み合わせとから走行速度vを求めることもできる。
すなわち、2つのアップリンク情報35を受信した組み合わせ毎に、参照テーブル(受信時間差Δtに応じた速度を格納したテーブル)を保持しておき、算出部16が、受信時間差Δtに基づいて当該テーブルから速度vを取得する、という方法である。
更に、アップリンク情報35の送信間隔がすべての車両Cで固定である場合には、複数回のアップリンク情報35をそれぞれどのフォトセンサ11で受光したかが分かれば、車両Cの走行速度vを求めることができる。
【0052】
〔安全運転支援の内容〕
図4に示すように、上記距離情報及び速度情報を含む第2のダウンリンク情報36を車載ヘッド27が受信すると、車載コンピュータ26の距離認識部30は、そのダウンリンク情報36のフレームに含まれている距離情報を抽出して、前記距離L2〜L4を認識する。
また、車載コンピュータ26の補正部31は、第2のダウンリンク情報36に含まれている速度情報を抽出して、前記走行速度vを認識するとともに、自身の速度検出器25が検出する走行速度と比較し、両者に相違があれば、速度情報の走行速度vに適合するように速度検出器25を補正する。
【0053】
そして、車載コンピュータ26の支援制御部32は距離L2〜L4及び走行速度vを利用して、ドライバに対する安全運転支援を行う。
例えば、支援制御部32は、停止線40までの距離L1〜L4と現時点の車両Cの走行速度vとから、その停止線40の手前で停止するための減速度(負の加速度)を算出し、その減速度をECU22に通知する。ECU22は、当該減速度となるようにブレーキ装置24を作動させ、これにより、車両Cを停止線40の手前で自動停止させることができる。
【0054】
また、支援制御部32の安全運転支援としては、ディスプレイ28やスピーカ装置29を用いたドライバに対する注意喚起であってもよい。
例えば、支援制御部32により、停止線40までの距離L1をディスプレイ28に表示させてもよい。また、現時の車両Cの走行速度が速すぎる場合には、支援制御部32により、停車や減速を促す注意喚起をディスプレイ28に表示させたり、その注意喚起をスピーカ装置29から音声出力させたりしてもよい。
【0055】
また、支援制御部32は、前記距離情報及び速度情報と共に、第2のダウンリンク情報に含まれる信号情報を用いて安全運転支援を行うこともできる。
ここで、信号情報とは、交通信号機が表示する現在又は将来の信号灯色に関する情報を指し、各信号灯色の表示継続予定期間や表示する順序等に関する情報(表示予定情報)等を含む。例えば、「現在灯色が青信号で継続予定時間が5秒であり、次の灯色が黄信号で継続予定時間が8秒であり、その次の灯色が右折青矢印灯で継続予定時間10秒である」といった情報である。
【0056】
この信号情報を受信した車載コンピュータ27の支援制御部32は、停止線40までの距離L1〜L4と車両Cの走行速度v等から、停止線40に到着するまでの所要時間を推定した上で、当該所要時間経過後の信号灯色を推定することができる。
そして、例えば、現在の信号灯色は青信号であるが、停止線40に到着する時点で信号灯色が赤信号と予測されるような場合には、安全に停止線40の手前で停止することができるように、車両Cを制動するための制御を行う。逆に、減速しなければ安全に交差点を通過できると判断できるような場合には、車両Cの速度を維持するための制御を行うことができる。
【0057】
車両Cを制動したり速度を維持したりするため、支援制御部32は、車両のブレーキ装置24(図4)やアクセルに対して直接的に制御を行ってもよい。
また、支援制御部32では単に制動や速度維持に関する情報を生成し、その情報をECU22に通知することによってECU22でブレーキ装置24やアクセルを制御するものであってもよい。すなわち、支援制御部32は、間接的な制御を行うものであってもよい。また、支援制御部32は、車載装置の主導による制御のみならず、ブレーキアシストなど、ドライバの運転動作を補助する動作をしても良い。
【0058】
支援制御部32は、車両Cの搭乗者に対して、信号灯色の推定の結果を音声や画像情報によって通知するようにしても良い。例えば、「間もなく信号が変わるので停止すべきである」といった内容の音声をスピーカ装置29からドライバに向けて発したり、ヘッドアップディスプレイやナビゲーション装置等のディスプレイ28に文字や図柄で表示したりすることができる。
安全運転の支援については、不適切なタイミングや内容でドライバに情報を通知することのないようなヒューマンインタフェースとするため、例えば低速走行時には音声や画像表示による報知を行わないようにすることができる。
【0059】
なお、信号情報は、現在表示している灯色とその継続時間だけとしても良いし、1サイクル分の情報をまとめて提供するようにしても良い。また、これらの情報に加えて、地点感応制御を実施している地点では、当該制御に関するパラメータ情報や制御を実施する時間帯の情報等を含ませても良い。
また、信号情報は、光ビーコンから取得するものであってもよいし、光ビーコン以外のインフラ装置等から取得するものであってもよい。後者の場合、例えば、信号機の信号制御機が無線通信機を備えている場合には、当該無線通信機から取得してもよいし、前記信号情報を取得した先行車両から車々間通信によって取得してもよい。信号情報を受信する信号情報受信部は、車載ヘッド27を用いてもよいし、車載機2に備えた別の受信器であってもよい。
【0060】
以上詳述したように、本実施形態の路車間通信システムによれば、ビーコン制御機7の検出部15が、受信された2回のアップリンク情報35の送信時における車両Cの走行位置P1,P3に応じた走行位置情報(少なくとも受信の時間差Δtを含む。)を取得し、ビーコン制御機7の算出部16が、その取得された走行位置情報に基づいて車両Cの走行速度vに関する速度情報を算出するので、光信号による路車間通信を利用して、車両Cの走行速度vに関する速度情報をビーコン4側で正確に算出することができる。
このため、高価なスピードメータを設けなくても、光信号による路車間通信だけで車両Cの走行速度vを精度よく計測できる。
【0061】
また、本実施形態の路車間通信システムによれば、第2のダウンリンク情報36に、車両Cの走行位置P1〜P4からその下流側の所定位置P0までの距離に関する距離情報を含ませだけでなく、アップリンク情報35の送信時における車両Cの走行速度vに関する速度情報も含ませるようにしたので、車載機2側がより正確な走行速度vを取得することができる。
従って、距離情報のみを車載機2に提供する場合に比べて、より正確な情報に基づいて安全運転支援を実施することができ、ドライバに対する安全運転支援を精度よく行うことができる。
【0062】
更に、本実施形態の路車間通信システムでは、分割領域UA1〜UA4に対応する複数のフォトセンサ11が設けられ、アップリンク情報35を受信したフォトセンサ11に応じて所定位置P0までの距離L1〜L4を選択し、その距離情報を第2のダウンリンク情報36に含ませているので、アップリンク領域UA全体が規定よりも車両進行方向に広く設定されていたとしても、当該距離情報の始点(車両進行方向の上流端)と実際の車両(車載機2)の位置とが大きく離れてしまうことはほとんど無く、車載機2において所定位置P0までの距離を正確に認識させることができる。したがって、ドライバに対する安全運転支援を精度よく行うことができる。
逆に言うと、本実施形態の路車間通信システムによれば、アップリンク領域UAを車両進行方向により拡大することができるので、車載機2からのアップリンク情報の受信をより確実に行うことができる。
【0063】
〔第1実施形態の変形例〕
本実施形態の路車間通信において、アップリンク情報35の受信タイミングが余り遅くなり過ぎると、その後のダウンリンクの切り替えタイミングも遅れてしまう。従って、この場合、通信領域A内で第2のダウンリンク情報36の送信ができなくなり、そのダウンリンク情報36に渋滞情報等の所定情報を含めて車載機2に送るという本来的な路車間通信が阻害される恐れがある。
【0064】
具体的には、車両Cがアップリンク領域UAの下流側よりの領域(例えば、分割領域UA3)に至って初めて、初回のアップリンク情報35を光ビーコン4が受信したような場合には、距離情報の他に速度情報を得るために更に2回目のアップリンク情報35の受信を待っていると、ダウンリンクの切り替えタイミングが遅れて第2のダウンリンク情報36が送信できなくなることがあり得る。
【0065】
そこで、初回のアップリンク情報35に対応する車両Cの走行位置がアップリンク領域UA内の上流側よりである場合(図3では、最初の分割領域UA1と2番目の分割領域UA2)に限り、車両Cの速度情報を算出するようにすることが好ましい。
もっとも、本実施形態において、各分割領域UA1〜UA4の車両進行方向長さは、距離認識精度として要求されるレベルに応じて設定することができる。また、各分割領域UA1〜UA4の車両進行方向長さは、互いに異なっていてもよい。
【0066】
また、本実施形態では、距離L1〜L4の中からアップリンク情報35を受信したフォトセンサ11に応じた距離を選択してその距離情報を第2のダウンリンク情報36に含ませる方法を説明したが、例えば、距離L1〜L4の全てに識別番号等を付与し、その全ての距離L1〜L4とそれに対応する識別番号とを第2のダウンリンク情報に含ませ、これと同時に、アップリンク情報35を受信したフォトセンサ11に応じた1の識別番号を第2のダウンリンク情報36に含ませるようにしてもよい。
【0067】
この場合、車載コンピュータ26の距離認識部30は、第2のダウンリンク情報36に含まれる前記1の識別番号をもとに正確な距離を選択して認識することができる。
また、車載コンピュータ26が予め距離L1〜L4とその識別番号とを記憶している場合には、アップリンク情報35を受信したフォトセンサ11に応じた1の識別番号のみを第2のダウンリンク情報に含ませてもよい。
【0068】
更に、例えば、図3に示すように、距離情報を構成する距離L1〜L4の上流端P1〜P4の位置は、各分割領域UA1〜UA4の道路R上の略中央位置に限らず任意に設定することができる。
例えば、上流端P1〜P4は、各分割領域UA1〜UA4の道路R上の上流端(c,e1,e2,e3で示す位置)に設定したり、各分割領域UA1〜UA4の道路R上の下流端(e1,e2,e3,bで示す位置)に設定したりすることができる。
【0069】
また、分割領域UA1〜UA4の数(フォトセンサ11の数)は、2つ、3つ、又は5つ以上としてもよい。
更に、距離情報を構成する距離L1〜L4の下流端については、停止線40のほか、信号機の設置位置や車両感知器の位置としてもよい。
また、本実施形態における距離情報は、所定位置P0までの距離の値を直接格納する形式に限られず、所定位置P0までの距離を一意に決定しうる情報であれば、どのような形式であってもよい。
【0070】
例えば、アップリンク領域UAからその下流側の所定位置P0までの間に1又は複数のノードを設定し、これらのノードに応じた複数の距離値群によって距離情報を構成することもできる。
例えば、始点となるアップリンク領域UA内の所定位置(例えばアップリンク領域UAの上流端c)からその直近のノードまでの距離、各ノード間の距離、及び、所定位置P0直近のノードから所定位置P0までの距離によって距離情報を構成することができる。この場合、この距離情報を受信した車載コンピュータ26は、各距離の合計値を求めることで、所定位置P0までの距離を認識することができる。
【0071】
また、光ビーコン4が送信する距離情報は、距離そのものの値ではなく、当該距離の始点と終点との絶対位置(緯度・経度や宇宙空間上の任意の点を原点とする3次元空間の座標値等)を示す情報とすることができる。
例えば、距離情報を、本発明によって得られるアップリンク領域UA内の絶対位置に関する情報と、所定位置P0の絶対位置に関する情報とを含む構成とし、双方の絶対位置をもとに、車載機2の距離認識部30で距離を算出すればよい。また、車載機2側で所定位置P0の絶対位置に関する情報を記憶している場合には、光ビーコン4は、本発明によって得られるアップリンク領域UA内の絶対位置に関する情報のみを送信してもよい。
【0072】
また、所定位置P0の地点を含む道路の形状を示す道路形状情報や詳細な地図情報と、当該道路上又は地図上であって、本発明によって得られるアップリンク領域UA内の位置に対応する位置情報とを光ビーコン4が送信し、この情報をもとに車載機2が所定位置P0までの距離を取得する方法を用いてもよい。この場合、道路形状情報や地図情報は予め車載機2に記憶させてもよいし、光ビーコン4以外の無線通信によって車載機2に送信する方法でもよい。
【0073】
更に、車載コンピュータ26の各機能部30,31,32は、車両Cの電子制御装置(ECU)に組み込むこともできる。
上記各実施形態では、通信領域A(特に、アップリンク領域UA)が、光ビーコンの「近赤外線式インタフェース規格」よりも広いものとして説明しているが、通信領域Aは、当該規格に準じた寸法に設定されていてもよい。
【0074】
〔第2実施形態〕
図7及び図8は、本発明の第2実施形態を示している。
第2実施形態は、路車間通信システムの構成要素の1つである車載機2の構成は第1実施形態と同様であるが、光ビーコン4側のアップリンク情報35の受信部(受光部)11が、アップリンク光UOの受光面に対する受光位置に対応して車両Cの走行位置が特定可能なフォトダイオードよりなる点で、第1実施形態と異なる。
以下、この受信部11の構成及び機能を中心に、第2実施形態の路車間通信システムを説明する。
【0075】
〔ビーコンヘッドの受信部の構成〕
図7(a)は、本実施形態の受信部11と、道路R上に設定されるアップリンク領域UAとの幾何学的な位置関係を示した側面図である。
図7(a)に示すように、受信部11は、ビーコンヘッド8の内部に配置された基板42上に実装された受光素子43と、この受光素子43に対して所定の寸法をおいて対向配置された集光レンズ44とを備えている。
受光素子43は、フォトダイオードチップ等よりなり、集光レンズ44を通過したアップリンク光UOを受光面43aで受光すると、光電変換によってアップリンク光UOに含まれる情報を電気信号として出力する。
【0076】
受信部11の集光レンズ44は、焦点FPが、当該集光レンズ44の斜め下方側に位置するように設定されており、車載機2から送信される赤外線光であるアップリンク光UOが通過すると、そのアップリンク光UOを受光素子43の受光面43aに対して直交して照射するように集光、屈折させる。
受光素子43は、集光レンズ44を通過して受光面43aに照射されたアップリンク光UOを受光する。すなわち、受光素子43がアップリンク光UOを受光することができるアップリンク領域UAは、受光素子43の受光面43aの輪郭形状を道路R上に、上下、左右両方向を180°反転させた形状で投影するように設定される。
【0077】
つまり、図7(a)において、受光面43aの上端縁43a1が、アップリンク領域UAの下流端である位置bに対応するとともに、下端縁43a2が、アップリンク領域UAの上流端である位置cに対応することとなる。
従って、例えば図8に示すように、車両Cが、非分割であるアップリンク領域UA内の所定位置からアップリンク情報35を送信したとすると、この送信されたアップリンク情報35(アップリンク光UO)は、受信部11の受光面43a上において、幾何学的に定まる所定位置に照射されることとなる。
【0078】
図7(b)は、受光素子43の受光面43aを正面視したときの図である。
なお、図において、車両進行方向に対応する紙面上下方向をx方向、道路Rの幅方向に対応する紙面左右方向をy方向とする。
同図に示すように、受光面43aは、その輪郭形状が矩形とされている。車載機2からのアップリンク光UOは、集光レンズ44によって集光され、受光面43aにスポット的に照射されるので、受光素子43は、この受光面43aの範囲内の一部でアップリンク光UOを受光する。
【0079】
受信部11は、受光素子43とビーコン制御機7(図1)との間に介在して接続された検出部45をさらに有しており、受光素子43は、受光したアップリンク光UO格納された各種情報を電気信号として検出部45に対して出力し、検出部45はこの電気信号をビーコン制御機7へ出力する。
更に、受信部11は、アップリンク光UOに含まれる各種情報を電気信号として出力すると同時に、受光面43aのx方向における受光位置に関する受光位置情報を出力することができる。
【0080】
受光素子43は、受光面43aの上端縁43a1及び下端縁43a2に沿ってそれぞれ設けられた第1の出力電極46及び第2の出力電極47を有しており、これら両電極46,47及び図示しない受光素子43全体としての共通電極が、検出部45に接続されている。受光素子43は、これら各電極から、上述の各種情報を含んだ電気信号を検出部45に対して出力する。
【0081】
ここで、例えば、受光素子43がアップリンク光UOを図中破線Qで示す範囲で受光したとすると、この受光位置から第1の出力電極46までの距離q1と、受光位置から第2の出力電極47までの距離q2とは、互いに相違することとなる。
このとき、受光素子43が出力する電気信号の電荷は、その距離に逆比例して分割され両出力電極46,47から出力される。電極に到達するまでの距離が相対的に長くなればその抵抗値も相対的に大きくなるからである。
【0082】
検出部45は、これら両出力電極46,47から出力される電流値の差を取得することで、受光面43aのx方向における受光位置を把握することができる。
また、検出部45は、受光面43aのx方向における受光位置に関する受光位置情報を、例えば、図中において、基準線Sを基準としたx方向の座標値t1として出力するように構成されている。なお、この座標値t1は、基準線S上の値が0であり、紙面上方側でプラス、下方側でマイナスの値を採るように出力される。
【0083】
〔車両の走行位置の把握〕
ビーコン制御機7の検出部45は、更に、上記受光位置情報に基づいて車載機2がアップリンク領域UA内でアップリンク情報を送信した送信位置を把握することができる。
すなわち、図7(a)に示すように、車載機2が点eからアップリンク光UOを発光し、この光UOが図7(b)中の受光面43a上の破線Qの部分で受光されたとすると、位置cから位置eまでの距離Dと、受光面43aにおける、距離Dに対応する距離q2との間には、下記式(1)に示すような関係が成立する。
D/L1 = (T/q2)× Z ……(1)
【0084】
なお、上記式(1)中のTは受光面43aのx方向の幅寸法であり、L1はアップリンク領域UAの車両進行方向の距離である。また、Zは補正パラメータであり、受光面43aと、道路Rとは、図7(a)に示すように平行な関係ではないので、距離Dと距離q2との値の関係を補正するために乗じている。
また、距離q2は、座標値t1に基づいて下記式(2)によって求められる。なお、座標値t1は、上述のように、検出部12によって、受光位置情報として出力される。
q2 = (1/2)T + t1 ……(2)
【0085】
以上のように、光ビーコン4を設置する際に、アップリンク領域UAの車両進行方向の距離L、及び受光面43aの幅寸法Tを把握しておくことで、上記式(1)及び(2)に基づいて、距離Dを求めることができる。
検出部45は、受信部11から出力される受光位置情報(座標値t1)を受け取ると、車載機2がアップリンク領域UA内でアップリンク情報を送信した送信位置(車両Cの走行位置)を、上記式(1)及び(2)に基づいて演算し、アップリンク領域UAの上流端である位置cを基準とした距離Dとして把握することができる。
【0086】
〔ビーコン制御機の処理内容〕
図8に示すように、アップリンク領域UA内の位置Pに位置する車両C(車載機2)がアップリンク情報35を送信し、光ビーコン4がこれを受光した場合、ビーコンヘッド8に設けられた検出部45が、上述したように、アップリンク光UOの受光位置に対応して車両Cの走行位置を特定する。
この情報を受けたビーコン制御機7は、アップリンク領域UAにおいて車載機2がアップリンク情報を送信した送信位置である位置Pを、アップリンク領域UAの上流端である位置cを基準とした距離Dとして把握する。
【0087】
ビーコン制御機7は、アップリンク領域UAの上流端である位置cから、その下流側の所定位置としての停止線P0までの距離L0、及び道路R上におけるアップリンク領域UAの車両進行方向の距離L1を予め記憶装置に記憶しており、これらの距離L0,L1と上記距離Dに基づいて、車載機2の位置Pから下流側の停止線P0までの距離L2を距離情報として算出することができる。
【0088】
また、本実施形態においても、第1実施形態の場合と同様に、ビーコン制御機7は、初回のアップリンク情報35の受信したときに即座にダウンリンクの切り替えを行うのではなく、2回目のアップリンク情報35を受信したときに、ダウンリンクの切り替えを行うようになっており、当該ダウンリンクの切り替え前において2つの走行位置を生成可能となっている。
そして、ビーコン制御機7の算出部16は、上記初回と2回目のアップリンク情報35の受光時刻をそれぞれ特定してその時刻差Δtを演算し、上記2つの車載位置情報の距離差ΔLをその時間差Δtで除することにより、アップリンク領域UAを通過する車両Cの走行速度vを算出する。
【0089】
ビーコン制御機7は、算出部16で算出された上記走行速度vを速度情報とし、ダウンリンクの切り換え後の第2のダウンリンク情報36にその速度情報を含め、当該ダウンリンク情報36を、LED10を介して車載機2に送信する。
なお、第2実施形態においても、車両Cの走行位置やその距離差ΔLを特定しなくても、2つのアップリンク情報35の受信時間差Δと受光素子43における2つのアップリンク情報35の受光位置の差(x軸方向の差)とから走行速度vを求めることもできる。例えば、前記受信部11の受光素子43上における受光位置の距離差を用いて、車両Cの走行速度vを演算することもできる。
【0090】
〔第3実施形態〕
図9〜図11は、本発明の第3実施形態を示している。
第3実施形態も、路車間通信システムの構成要素の1つである車載機2の構成は第1実施形態と同様であるが、光ビーコン4側のアップリンク情報35の受信部(受光部)11が、アップリンク光UOの入射角度に対応して検出レベル差が生じるフォトダイオードよりなる点で、第1実施形態と異なる。
以下、この受信部11の構成及び機能を中心に、第3実施形態の路車間通信システムを説明する。
【0091】
〔ビーコンヘッドの受信部の構成〕
図9(a)は受信部11の底面図(下から見た図)であり、図9(b)は同受信部11の側面図である。
同図に示すように、本実施形態の受信部11は、設置角度の異なる一対の受光素子50a,50bよりなり、これらはいずれもフォトダイオードよりなる。
各受光素子50a,50bは、受光した赤外線の強さに比例した電気信号を出力する。受光素子50a,50bからの電気信号は電圧に変換されてアンプ部(図示せず)で増幅され、その電圧はセンシング信号として検出部51に入力される。
【0092】
各受光素子50a,50bによるセンシング信号は、アンプ部で検出レベルが同じ感度となるように校正されている。つまり、各受光素子50a,50bが同じ強さの赤外線を受光した場合、それぞれ同電圧のセンシング信号が検出部51に入力される。
各受光素子50a,50bは、車載機2aからのアップリンク光UAを同時に受光するように隣接して配置され、アップリンク光UAの入射角度θ1(図10参照)に応じて相互の間で検出レベルに差が生じ得るように配置された構造とされている。
【0093】
この構造をより具体的に説明すると、2つの受光素子50a,50bの受光面m,nのそれぞれは、車両Cの進行方向(矢印方向)に平行な直線e(図9の二点鎖線)に直交する垂直面f(図9の一点鎖線)に対して傾斜するように設置されている。なお、この垂直面fは、路面に対して垂直な面である。
すなわち、各受光素子50a,50bは水平面に対する取り付け角度が相異した状態で設置され、第1の受光素子50aが車両進行方向上流側、第2の受光素子50bが下流側となるように、両受光素子50a,50bが走行進行方向に並設されている。
【0094】
そして、第1の受光素子50aの受光面mの下流端と第2の受光素子50bの受光面nの上流端とが隣接して配置されており、これらの受光面m,nは、所定の折れ角度θ0を有した状態でほぼV字状に配置されている。
図10は、受信部11の拡大側面図であり、同図に示すように、2つの受光素子50a,50bが所定の折れ角度θ0を有しているため、車載機2からのアップリンク光UAの入射方向(図10の破線矢印)と各受光素子50a,50bの受光面m,nのそれぞれの法線方向との成す角度α,βが相異する。
【0095】
これにより、2つの受光素子50a,50bは、車両進行方向の上流側から入射されるアップリンク光UOを同時に受光することで、互いの検出レベルに差が生じるようになっている。
【0096】
〔車両の走行位置の把握〕
検出部51は、上記各受光素子50a,50bからの検出レベル(電圧信号)の差に基づいて入射角度θ1を検出し、車両Cの走行位置を検出する演算処理を行う。以下、この場合の具体的な演算処理を説明する。
【0097】
まず、第1の受光素子50aによる検出レベルの値を「a」とし、第2の受光素子50bによる検出レベルの値を「b」とした場合、これらの値(比率)と、入射角度θ1及び受光素子50a,50bの折れ角度θ0との関係は以下の式(3)で表される。
a:b=sin(θ1−((π−θ0)/2):sin(π−θ1−((π−θ0)/2))
……(3)
【0098】
上記関係式により入射角度θ1は以下の式(4)で表される。
【数1】

【0099】
上記式(4)において、折れ角度θ0は受信部11の製作時に定める既定値であり、この値は検出部51が予め記憶しており、また、検出レベルの値a及びbは計測値であるから、受光素子50a,50bにおける検出レベルと折れ角度θ0の値に基づいて、アップリンク光UAの入射角度θ1を検出することができる。
【0100】
図11は、検出部11による走行位置の検出機能の説明図である。
ここで、光ビーコン4のビーコンヘッド8(受光素子50a,50b)の道路Rの路面からの取り付け高さをH1とし、車載機2(アップリンクUAの発光素子)の道路Rの路面からの取り付け高さをH2とすると、この両者間の相対距離L1は、以下の式(5)で表すことができる。
【0101】
【数2】

【0102】
上記式(5)で示すように、検出部51は、前記式(4)で演算した入射角度θ1と、高さH1,H2に基づいて、車両進行方向に沿った受信部11と車載機2との間の相対距離L1を検出することができる。なお、前記高さH1,H2の値は、検出部51がメモリ等に予め記憶している。
【0103】
〔ビーコン制御機の処理内容〕
上記のように、本実施形態においても、ビーコン4側の検出部11が、アップリンク光UAの送信時における車両Cの走行位置を検出することができる。
そこで、本実施形態においても、第1実施形態の場合と同様に、ビーコン制御機7は、初回のアップリンク情報35の受信したときに即座にダウンリンクの切り替えを行うのではなく、2回目のアップリンク情報35を受信したときに、ダウンリンクの切り替えを行うようになっており、当該ダウンリンクの切り替え前において2つの走行位置を生成可能となっている。
【0104】
そして、ビーコン制御機7の算出部16は、上記初回と2回目のアップリンク情報35の受光時刻をそれぞれ特定してその時刻差Δtを演算し、上記2つの車載位置情報の距離差ΔLをその時間差Δtで除することにより、アップリンク領域UAを通過する車両Cの走行速度vを算出する。
【0105】
〔受信部の変形例〕
図12(a)は変形例に係る受信部11の底面図(下から見た図)であり、図12(b)は同受信部11の側面図である。
同図に示すように、本実施形態の受信部11は、水平に設置された一対の受光素子50a,50bと、この受光素子50a,50b間に介在する遮光壁部52とから構成されている。
【0106】
かかる構造の受信部11において、2つの受光素子50a,50bは、車両進行方向の上流側から入射されるアップリンク光UOを同時に受光すると、遮光壁部52があることによって各受光素子50a,50bの検出レベルに差が生じる。
従って、この受信部11によっても、上記検出レベルの差に基づいてアップリンク光UAの入射角度θ1を演算でき、この角度θ1から、アップリンク送信時の車両Cの走行位置を求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】第1実施形態の路車間通信システムの全体構成を示すブロック図である。
【図2】光ビーコンの平面図である。
【図3】光ビーコンの通信領域を示す側面図である。
【図4】路車間通信する車載機と、これを搭載した車両の概略構成図である。
【図5】通信領域で行われる路車間通信の手順とデータ内容を示す概念図である。
【図6】いずれかの受信部がアップリンク情報を受信してからダウンリンク情報を送信する手順を示す概略図である。
【図7】第2実施形態に用いる受信部を示し、(a)はその受信部とアップリンク領域との位置関係を示す側面図であり、(b)は受信部を正面視したときの図である。
【図8】光ビーコンの通信領域を示す側面図である。
【図9】第3実施形態に用いる受信部を示し、(a)はその受信部を下から見た図であり、(b)は受信部の側面図である。
【図10】受信部の拡大側面図である。
【図11】ビーコンヘッドと車載機の位置関係を示す側面図である。
【図12】第3実施形態の変形例に係る受信部を示し、(a)はその受信部を下から見た図であり、(b)は受信部の側面図である。
【図13】従来の光ビーコンの通信領域を示す側面図である。
【符号の説明】
【0108】
2 車載機
4 光ビーコン
7 ビーコン制御機(通信制御部)
8 ビーコンヘッド(投受光器)
10 発光ダイオード(LED)
11 フォトセンサ(受信部)
15 検出部(取得部)
16 算出部
34 第1のダウンリンク情報
35 アップリンク情報
36 第2のダウンリンク情報
A 通信領域
C 車両
R 道路
P0 停止線(所定位置)
P1〜P4 始点位置
DA ダウンリンク領域
UA アップリンク領域
UA1〜UA4 分割領域
UA アップリンク光
DO ダウンリンク光
UO アップリンク光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路を走行する車両の車載機と、前記道路の所定範囲に通信領域が設定された投受光器を有する光ビーコンとを備え、前記通信領域において前記車載機と前記光ビーコンの投受光器との間で光信号による双方向通信を行う路車間通信システムであって、
前記光ビーコンは、
前記車載機から複数回にわたってアップリンク情報を受信可能な受信部と、
受信された複数のアップリンク情報の送信時における前記車両の走行位置に応じた走行位置情報を取得する取得部と、
取得された走行位置情報に基づいて前記車両の走行速度に関する速度情報を算出する算出部とを有することを特徴とする路車間通信システム。
【請求項2】
前記算出部は、前記受信部が最初に受信したアップリンク情報に応じて得られる走行位置情報に基づいて把握される前記車両の走行位置が前記アップリンク領域内の上流側よりである場合に限り、前記車両の走行速度に関する速度情報を算出する請求項1に記載の路車間通信システム。
【請求項3】
前記受信部は、前記アップリンク領域を車両走行方向に分割してなる各分割領域に対応する複数のフォトダイオードよりなり、
前記取得部は、前記複数のフォトダイオードのうちのどのダイオードでアップリンク光が受信されたかによって前記車両の走行位置に応じた走行位置情報を取得する請求項1又は2に記載の路車間通信システム。
【請求項4】
前記受信部は、アップリンク光の受光面に対する受光位置に対応して前記車両の走行位置が特定可能なフォトダイオードよりなり、
前記取得部は、前記アップリンク光の受光位置に基づいて前記車両の走行位置に応じた走行位置情報を取得する請求項1又は2に記載の路車間通信システム。
【請求項5】
前記受信部は、アップリンク光の入射角度に対応して検出レベル差が生じるフォトダイオードよりなり、
前記取得部は、その検出レベル差に基づいて前記車両の走行位置に応じた走行位置情報を取得する請求項1又は2に記載の路車間通信システム。
【請求項6】
前記光ビーコンは、前記受信部がアップリンク情報を受信した後に所定のダウンリンク情報を前記投受光器に送信させる通信制御部を有し、
前記所定のダウンリンク情報は、算出された前記車両の走行速度に関する速度情報を含んでいる請求項1〜5のいずれか1項に記載の路車間通信システム。
【請求項7】
前記所定のダウンリンク情報は、更に、前記車両の走行位置からその下流側の所定位置までの距離に関する距離情報を含んでいる請求項6に記載の路車間通信システム。
【請求項8】
前記道路の所定範囲に通信領域が設定された投受光器を有し、前記通信領域において前記投受光器と車両の車載機との間で光信号による双方向通信を行う光ビーコンであって、
前記車載機から複数回にわたってアップリンク情報を受信可能な受信部と、
受信された複数のアップリンク情報の送信時における前記車両の走行位置に応じた走行位置情報を取得する取得部と、
取得された走行位置情報に基づいて前記車両の走行速度に関する速度情報を算出する算出部とを備えていることを特徴とする光ビーコン。
【請求項9】
道路の所定範囲に設定された通信領域において、車両に搭載された車載機と光ビーコンの投受光器との間で光信号による双方向通信を行う路車間通信方法であって、
前記光ビーコンは、前記車載機から複数回にわたってアップリンク情報を受信するとともに、その複数のアップリンク情報の送信時における前記車両の走行位置に応じた走行位置情報を取得し、その取得した走行位置情報に基づいて前記車両の走行速度に関する速度情報を算出することを特徴とする路車間通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−116566(P2009−116566A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−288175(P2007−288175)
【出願日】平成19年11月6日(2007.11.6)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】