説明

車両のサスペンション制御装置

【課題】簡単な構成で、乗り心地及び悪路走破性の向上と、走行安定性の確保を両立させ得るサスペンション制御装置を提供する。
【解決手段】第1の連通路1によって、左輪側シリンダCLの車両上方側の圧力室12と右輪側シリンダCRの車両下方側の圧力室23とが連通接続されると共に、第2の連通路2によって、左輪側シリンダCLの車両下方側の圧力室13と右輪側シリンダCRの車両上方側の圧力室22とが連通接続されている。これら第1の連通路と第2の連通路との間には弁機構3が介装されており、常時は第1の連通路と第2の連通路とが連通し、流体が第1及び第2の連通路の一方側から他方側へ移動するときに生ずる圧力差が所定値以上となったときに、第1及び第2の連通路の一方側から他方側への流体の移動を阻止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のロール運動を適切に抑制するように制御するサスペンション制御装置に係る。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記の特許文献1には、「対角ロールを確実に防止し、操縦安定性の一層の向上を図るとともに、乗員に与える違和感を排除すること」を課題とし、「車体のロール角速度に比例した減衰力を発生させ且つ当該減衰力を変更可能な減衰力発生機構を前輪及び後輪と車体との間に個別に設置した車両用ロール減衰力制御装置において、操舵角速度を検出する操舵角速度検出手段の検出値が大きくなるにつれて前輪の後輪に対する減衰力の比が大きくなるように前記減衰力発生機構の夫々を制御する前後ロール減衰力制御手段とを設けた」装置が提案されている。そして、第2図に構成例が開示され、公報第3頁左下欄に「前輪側、後輪側の夫々において、左輪側油圧シリンダ20FL(20RL)の上側シリンダ室Uが一方の油圧配管26Aを介して右輪側油圧シリンダ20FR(20RR)の下側シリンダ室Lに接続され、左輪側油圧シリンダ20FL(20RL)の下側シリンダ室Lが他方の油圧配管26Bを介して右輪側油圧シリンダ20FR(20RR)の上側シリンダ室Uに接続され、これにより、シリンダが相互にクロス接続されている。」と説明され、同頁右下欄に「制御部14Bは、可変絞り弁22F,22Rの減衰係数Ct,Crを制御するロール減衰制御コントローラ36と、このコントローラ36に検出信号を送る操舵角センサ38及び車速センサ40とを備える。」と説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−46815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
然し乍ら、上記の特許文献1に記載のロール減衰力制御装置においては、電磁弁やロール減衰制御コントローラ等の電子制御装置が必要とされ、高価な装置となっている。
【0005】
そこで、本発明は、電磁弁や電子制御装置等を必要とすることなく、簡単な構成で、乗り心地及び悪路走破性の向上と、走行安定性の確保を両立させ得るサスペンション制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を達成するため、本発明は、車両の前車軸及び後車軸のうちの少なくとも一方の車軸の左側の車輪支持部に一端を支持する第1のピストン、及び該第1のピストンを介して車両上方側の圧力室及び車両下方側の圧力室を形成し前記車体に支持する第1のハウジングを有する左輪側シリンダと、前記一方の車軸の右側の車輪支持部に一端を支持する第2のピストン、及び該第2のピストンを介して車両上方側の圧力室及び車両下方側の圧力室を形成し前記車体に支持する第2のハウジングを有する右輪側シリンダと、前記左輪側シリンダの車両上方側の圧力室と前記右輪側シリンダの車両下方側の圧力室とを連通接続する第1の連通路と、前記左輪側シリンダの車両下方側の圧力室と前記右輪側シリンダの車両上方側の圧力室とを連通接続する第2の連通路とを備え、該第2の連通路、前記第1の連通路、前記左輪側シリンダ及び前記右輪側シリンダに流体を充填して成る車両のサスペンション制御装置において、前記第1の連通路と前記第2の連通路との間に介装され、常時は前記第1の連通路と前記第2の連通路とを連通し、前記流体が前記第1の連通路及び第2の連通路の一方側から他方側へ移動するときに生ずる圧力差が所定値以上となったときに、前記第1の連通路及び第2の連通路の一方側から他方側への前記流体の移動を阻止する弁機構を備えることとしたものである。
【0007】
上記のサスペンション制御装置において、前記弁機構は、第1の弁室及び第2の弁室を形成すると共に両弁室に連通する第3の弁室を形成したハウジングと、該ハウジング内に収容され前記第3の弁室と前記第1の弁室との連通路を開閉する第1の絞り弁部材と、当該ハウジング内に収容され前記第3の弁室と前記第2の弁室との連通路を開閉する第2の絞り弁部材と、当該ハウジング内に収容され前記第1の絞り弁部材及び第2の絞り弁部材を介して夫々前記第3の弁室が前記第1の弁室及び前記第2の弁室と連通する方向に付勢する付勢手段とを備え、前記第1の連通路を前記第1の弁室に連通接続すると共に、前記第2の連通路を前記第2の弁室に連通接続して成り、常時は前記第1の弁室、第2の弁室及び第3の弁室が相互に連通し、前記流体が前記第1の弁室及び第2の弁室の一方側から前記第3の弁室を介して他方側へ移動するときに生ずる圧力差が、前記付勢手段による所定の付勢力以上となったときには、前記第1の絞り弁部材及び第2の絞り弁部材の一方によって、前記第1の弁室及び第2の弁室の一方側から他方側への前記流体の移動を阻止するように構成するとよい。
【0008】
特に、前記第1の絞り弁部材及び第2の絞り弁部材は、夫々前記第1の弁室及び第2の弁室の各々に収容され、前記ハウジング内に設けられた各々の弁座に対し、着座したときには夫々前記第1の弁室及び第2の弁室と前記第3の弁室との連通を遮断するように配設される球状弁体と、該球状弁体に当接し当該球状弁体を前記弁座から離座させる位置と当該球状弁体を前記弁座に着座させる位置の二位置間を移動する中空部材とを具備して成り、前記付勢手段は、前記第1の絞り弁部材及び第2の絞り弁部材を構成する前記中空部材の各々に対し、前記球状弁体を前記弁座から離座させる方向に付勢するスプリングを具備して成り、常時は前記球状弁体は前記弁座から離座し、前記中空部材の中空部を介して前記第1の弁室、第2の弁室及び第3の弁室が相互に連通し、前記流体が前記第1の弁室及び第2の弁室の一方側から前記第3の弁室を介して他方側へ移動するときに生ずる圧力差が、前記スプリングによる所定の付勢力以上となったときには、前記球状弁体が前記弁座に着座するように構成するとよい。
【0009】
更に、上記のサスペンション制御装置において、前記第1の連通路及び第2の連通路の夫々に連通接続し、夫々前記左輪側シリンダ及び右輪側シリンダ内に充填された流体に対しロール剛性を付与するアキュムレータを備えたものとするとよい。
【0010】
あるいは、上記のサスペンション制御装置において、前記第1の連通路と前記第2の連通路とを連通接続し、前記左輪側シリンダ及び右輪側シリンダの少なくとも一方に充填された流体に対しロール剛性を付与する単一のアキュムレータを備えたものとすると共に、常時は連通し、前記第1の連通路内の圧力と前記第2の連通路内の圧力との間に圧力差が生じたときには、前記アキュムレータを前記第1の連通路と前記第2の連通路の何れか一方側に切り替える切替弁を備えたものとしてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明は上述のように構成されているので以下の効果を奏する。即ち、本発明のサスペンション制御装置においては、第1の連通路と第2の連通路との間に介装され、常時は第1の連通路と第2の連通路とを連通し、流体が第1の連通路及び第2の連通路の一方側から他方側へ移動するときに生ずる圧力差が所定値以上となったときに、第1の連通路及び第2の連通路の一方側から他方側への流体の移動を阻止する弁機構を備えたものであるので、電磁弁や電子制御装置を用いることなく、簡単な構成の弁機構により、乗り心地及び悪路走破性の向上と、走行安定性の確保を容易に両立させることができる。例えば平坦な路面を直進走行している場合のように、左右の車輪が同相でストロークする場合には、第1の連通路と第2の連通路は弁機構を介して相互に連通した状態にあり、流体は自由に移動し得るので、良好な乗り心地が確保される。例えば、車両の旋回運動によりローリングが生じ、左右の車輪の一方側がストロークし、第1の連通路及び第2の連通路の一方側から他方側への流体の移動による圧力差が所定値以上の状態が、所定時間以上継続したときには、弁機構によって流体の移動が阻止されるので、確実にローリングが抑制され、走行安定性が確保される。
【0012】
上記の弁機構を、前述の第1の絞り弁部材及び第2の絞り弁部材を備えたものとすれば、機械的な簡単な構成の弁機構のみによって、所期の目的を達成することができる。特に、車両が悪路走行中に一方の車輪のみが段差に乗り上げた場合のように、第1の連通路及び第2の連通路の一方側から他方側へ移動するときの流体速度が瞬間的に変化した場合には、第1の絞り弁部材及び第2の絞り弁部材の追従作動に遅れが生ずるため、弁機構によって流体の移動が阻止されることはないので、乗り心地が阻害されることはない。更に、第1の絞り弁部材及び第2の絞り弁部材は、前述のようにハウジング内に収容された球状弁体等によって構成することができるので、安価な装置とすることができる。
【0013】
更に、第1の連通路及び第2の連通路の夫々にアキュムレータを備えたものとすれば、車両の旋回運動によりローリングが生じ、左右の車輪の一方側がストロークした場合には、左輪側シリンダ及び右輪側シリンダ内に充填された流体に対しロール剛性が付与されるので、緩やかなローリングに対しても適切に対応することができる。
【0014】
あるいは、前述の弁機構に加え、更に前述の切替弁を備えたものとすれば、単一のアキュムレータによって所期の目的を達成することができるので、一層安価な装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係るサスペンション制御装置の後車軸側の構成を模式的に示す正面図である。
【図2】本発明の一実施形態に供する弁機構の拡大断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に供する弁機構の作動状態を示す拡大断面図である。
【図4】本発明の他の実施形態に係るサスペンション制御装置の後車軸側の構成を模式的に示す正面図である。
【図5】本発明の他の実施形態に係るサスペンション制御装置の前車軸側の構成を模式的に示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の望ましい実施形態を図面を参照して説明する。先ず、図1は本発明の一実施形態に係るサスペンション制御装置を示すもので、車両の後車軸RAに左輪側シリンダCL及び右輪側シリンダCRが搭載され、両者が第1の連通路1及び第2の連通路2によって連通接続され、これらにオイル等の流体が充填されている。左輪側シリンダCLは、車両後方左側の車輪支持部SLに一端が支持される第1のピストン11と、この第1のピストン11を介して車両上方側の圧力室12及び車両下方側の圧力室13が形成され、車体Bに支持される第1のハウジング10を有する。同様に、右輪側シリンダCRは、車両後方右側の車輪支持部SRに一端が支持される第2のピストン21と、この第2のピストン21を介して車両上方側の圧力室22及び車両下方側の圧力室23が形成され、車体Bに支持される第2のハウジング20を有する。
【0017】
そして、第1の連通路1によって、左輪側シリンダCLの車両上方側の圧力室12と右輪側シリンダCRの車両下方側の圧力室23とが連通接続されると共に、第2の連通路2によって、左輪側シリンダCLの車両下方側の圧力室13と右輪側シリンダCRの車両上方側の圧力室22とが連通接続されており、所謂クロス接続されている。これら第1の連通路1と第2の連通路2との間には弁機構3が介装されており、常時は第1の連通路1と第2の連通路2とが連通し、流体が第1の連通路1及び第2の連通路2の一方側から他方側へ移動するときに生ずる圧力差が所定値(例えば、Pc)以上となったときに、第1の連通路1及び第2の連通路2の一方側から他方側への流体の移動を阻止するように構成されている。
【0018】
弁機構3の具体的構造については後述するが、図1に示すように、ハウジング30内に第1の弁室31及び第2の弁室32が形成されると共に、両弁室に連通する第3の弁室33が形成されている。更に、ハウジング30内には、第3の弁室33と第1の弁室31との連通路を開閉する第1の絞り弁部材V1と、第3の弁室33と第2の弁室32との連通路を開閉する第2の絞り弁部材V2が収容されると共に、付勢手段としてスプリングFが収容されており、このスプリングFによって、第1及び第2の絞り弁部材V1及びV2を介して夫々第3の弁室33が第1の弁室31及び第2の弁室32と連通する方向に付勢されている。而して、弁機構3によれば、常時は第1の弁室31、第2の弁室32及び第3の弁室33が相互に連通し、流体が第1の弁室31及び第2の弁室32の一方側から第3の弁室33を介して他方側へ移動するときに生ずる圧力差が、スプリングFによる所定の付勢力(例えば、上記の所定値Pc)以上となったときには、第1の絞り弁部材V1及び第2の絞り弁部材V2の一方によって、第1の弁室31及び第2の弁室32の一方側から他方側への流体の移動が阻止される。
【0019】
本実施形態においては、更に、第1の連通路1及び第2の連通路2の夫々に、アキュムレータ4が連通接続されており、夫々左輪側シリンダCL及び右輪側シリンダCR内に充填された流体に対しロール剛性を付与するように構成されている。このアキュムレータ4は、シリンダ形状のハウジング40内に収容されたピストン41を介して、第1の連通路1又は第2の連通路2に連通接続される調圧室42と、窒素ガス等の気体が封入されるガス室43が形成されている。図1において、ORで示す記号はオリフィス(絞り)を表すもので、図面余白の都合上一箇所のみにORを付しているが、同様のオリフィスは左輪側シリンダCLの圧力室12,13及び右輪側シリンダCRの圧力室22,23の各々に装着されており、各オリフィスを介して各圧力室に供給される流体の流速が低減される。また、ASは空気ばね装置を表す。尚、図1の一点鎖線の枠内に示す弁機構3やアキュムレータ4を一体的に構成し、バルブユニットVUとすることができる。
【0020】
而して、本実施形態のサスペンション制御装置においては、例えば平坦な路面を直進走行している場合のように、左右の車輪RL及びRRが同相でストロークする場合には、弁機構3の第1及び第2の絞り弁部材V1及びV2は何れも開位置にあって、第1の弁室31、第2の弁室32及び第3の弁室33は相互に連通している。従って、アキュムレータ4、左輪側シリンダCL及び右輪側シリンダCRは第1の連通路1及び第2の連通路2を介して相互に連通した状態にあり、流体は自由に移動し得るので、良好な乗り心地が確保される。
【0021】
例えば、車両の旋回運動によりローリングが生じ、左右の車輪RL及びRRの一方側がストロークした場合には、アキュムレータ4の作用によってロール剛性が付与されるので、適切にローリングが抑制される。更に、急激なローリングが生じ、流体が第1の連通路1及び第2の連通路2の一方側から他方側へ移動するときに生ずる圧力差がスプリングFによる所定の付勢力(所定値Pc)以上の状態が、所定時間以上継続したときには、弁機構3によって、第1の連通路1及び第2の連通路2の高圧側から低圧側への流体の移動が阻止されるので、確実にローリングが抑制される。これに対し、流体が第1の連通路1及び第2の連通路2の一方側から他方側へ移動するときの速度が緩やかで、このときに生ずる圧力差が所定の付勢力(所定値Pc)未満である場合には、アキュムレータ4、左輪側シリンダCL及び右輪側シリンダCRは第1の連通路1及び第2の連通路2を介して相互に連通した状態に維持されるので、乗り心地が阻害されることはない。また、車両が悪路走行中に一方の車輪のみが段差に乗り上げた場合のように、第1の連通路1及び第2の連通路2の一方側から他方側へ移動するときの流体速度が瞬間的に変化した場合には、第1の絞り弁部材V1及び第2の絞り弁部材V2の追従作動に遅れが生ずるため、弁機構3によって流体の移動が阻止されることはないので、乗り心地が阻害されることはない。
【0022】
上記の弁機構3は、例えば図2に示すように構成されており、第1の絞り弁部材V1及び第2の絞り弁部材V2は同一構造に形成されている。例えば第1の絞り弁部材V1においては、球状弁体Cが第1の弁室31に収容され、ハウジング30内に設けられた弁座Sに対し、着座したときには第1の弁室31と第3の弁室33との連通を遮断するように配設されている。また、球状弁体Cに当接するように中空部材Tが配設され、球状弁体Cを弁座Sから離座させる位置と球状弁体Cを弁座Sに着座させる位置の二位置間を移動するように構成されている。球状弁体Cに当接する中空部材Tの端面側には、中空部Pの開口に連通する溝Gが形成されており、球状弁体Cが弁座Sに着座していない場合には、中空部材Tが球状弁体Cに当接していても、第1の弁室31、第2の弁室32及び第3の弁室33が相互に連通するように構成されている。そして、付勢手段のスプリングFは、第1の絞り弁部材V1及び第2の絞り弁部材V2を構成する中空部材Tの各々に対し、球状弁体Cを弁座Sから離座させる方向に付勢するように配設されている。尚、上記の中空部材Tに代えて、中実のピストン部材を用い、このピストン部材が収容されるハウジング内の連通路に対し、環状空間を形成し得る外径に設定することとしてもよいが、中空部材Tを用い、中空部Pの開口面積を適宜設定する方が容易である。
【0023】
而して、常時は、図2に示すように第1及び第2の絞り弁部材V1及びV2の何れにおいても、球状弁体Cが弁座Sから離座し、中空部材Tの中空部Pを介して第1の弁室31、第2の弁室32及び第3の弁室33が相互に連通している。これに対し、例えば図3に白抜矢印で示すように、流体が第1の弁室31から第3の弁室33を介して第2の弁室32へ移動するときに中空部P(絞り)の前後で生ずる圧力差が、スプリングFによる所定の付勢力(Pc)以上となったときには、第1の絞り弁部材V1の球状弁体Cが弁座Sに着座することとなる。
【0024】
図4及び図5は本発明の他の実施形態に係るサスペンション制御装置を示すもので、図4は、図1と同様、車両の後車軸RA側の構成を示し、図5は、車両の前車軸FA側の構成を示す。図5においては、車両の前車軸FAに左輪側シリンダCL及び右輪側シリンダCRが搭載されており、基本的には図4と同様の構成であるので、実質的に同一の部材については図4と同一の符号を付して説明を省略する。尚、図5において前方左側の車輪をFLで示し、前方右側の車輪をFRで示している。
【0025】
図4及び図5に示す実施形態においては、アキュムレータ4は一個のみであるが、更に切替弁5が設けられている。この切替弁5は、ハウジング50内に球状弁体53が収容され、この球状弁体53が弁座51又は52に着座したときには一方側の連通を遮断するように構成されている。而して、切替弁5は常時は連通しているが、第1の連通路1内の圧力と第2の連通路2内の圧力との間に圧力差が生じたときには、直ちに切替弁5によってアキュムレータ4が高圧側の連通路に切り替えられる。尚、その他の構成については、図1の実施形態と同様の構成であるので、実質的に同一の部材については図1と同一の符号を付して説明を省略する。
【0026】
而して、本実施形態のサスペンション制御装置において、例えば図4の装置によれば、平坦な路面を直進走行している場合のように、左右の車輪RL及びRRが同相でストロークする場合には、切替弁5及び弁機構3は何れも開位置にあって、第1の弁室31、第2の弁室32及び第3の弁室33は相互に連通し、アキュムレータ4、左輪側シリンダCL及び右輪側シリンダCRは第1の連通路1及び第2の連通路2を介して相互に連通した状態にあり、流体は自由に移動し得るので、良好な乗り心地が確保される。
【0027】
例えば、車両の旋回運動によりローリングが生じ、左右の車輪RL及びRRの一方側がストロークし、第1の連通路1と第2の連通路2との間に圧力差が生じた場合には、切替弁5によって、第1の連通路1及び第2の連通路2のうちの高圧側はアキュムレータ4に連通し、アキュムレータ4の作用によってロール剛性が付与されるので、適切にローリングが抑制される。更に、急激なローリングが生じ、流体が第1の連通路1及び第2の連通路2の一方側から他方側へ移動するときに生ずる圧力差がスプリングFによる所定の付勢力(所定値Pc)以上の状態が、所定時間以上継続したときには、切替弁5によって、第1の連通路1及び第2の連通路2のうちの高圧側はアキュムレータ4に連通した状態で、弁機構3によって、第1の連通路1及び第2の連通路2の高圧側から低圧側への流体の移動が阻止されるので、確実にローリングが抑制される。これに対し、流体が第1の連通路1及び第2の連通路2の一方側から他方側へ移動するときの速度が緩やかで、このときに生ずる圧力差が所定の付勢力(所定値Pc)未満である場合には、弁機構3は開位置にあって、アキュムレータ4、左輪側シリンダCL及び右輪側シリンダCRは第1の連通路1及び第2の連通路2を介して相互に連通した状態に維持されるので、乗り心地が阻害されることはない。また、車両が悪路走行中に一方の車輪のみが段差に乗り上げた場合のように、第1の連通路1及び第2の連通路2の一方側から他方側へ移動するときの流体速度が瞬間的に変化した場合にも、弁機構3によって流体の移動が阻止されることはないので、乗り心地が阻害されることはない。
【符号の説明】
【0028】
B 車体
RA 後車軸
FA 前車軸
CR 右輪側シリンダ
CL 左輪側シリンダ
SR,SL 車輪支持部
OR オリフィス
V1 第1の絞り弁部材
V2 第2の絞り弁部材
1 第1の連通路
2 第2の連通路
3 弁機構
4 アキュムレータ
5 切替弁
10 第1のハウジング
11 第1のピストン
12,13 圧力室
20 第2のハウジング
21 第2のピストン
22,23 圧力室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前車軸及び後車軸のうちの少なくとも一方の車軸の左側の車輪支持部に一端を支持する第1のピストン、及び該第1のピストンを介して車両上方側の圧力室及び車両下方側の圧力室を形成し前記車体に支持する第1のハウジングを有する左輪側シリンダと、前記一方の車軸の右側の車輪支持部に一端を支持する第2のピストン、及び該第2のピストンを介して車両上方側の圧力室及び車両下方側の圧力室を形成し前記車体に支持する第2のハウジングを有する右輪側シリンダと、前記左輪側シリンダの車両上方側の圧力室と前記右輪側シリンダの車両下方側の圧力室とを連通接続する第1の連通路と、前記左輪側シリンダの車両下方側の圧力室と前記右輪側シリンダの車両上方側の圧力室とを連通接続する第2の連通路とを備え、該第2の連通路、前記第1の連通路、前記左輪側シリンダ及び前記右輪側シリンダに流体を充填して成る車両のサスペンション制御装置において、前記第1の連通路と前記第2の連通路との間に介装され、常時は前記第1の連通路と前記第2の連通路とを連通し、前記流体が前記第1の連通路及び第2の連通路の一方側から他方側へ移動するときに生ずる圧力差が所定値以上となったときに、前記第1の連通路及び第2の連通路の一方側から他方側への前記流体の移動を阻止する弁機構を備えたことを特徴とする車両のサスペンション制御装置。
【請求項2】
前記弁機構は、第1の弁室及び第2の弁室を形成すると共に両弁室に連通する第3の弁室を形成したハウジングと、該ハウジング内に収容され前記第3の弁室と前記第1の弁室との連通路を開閉する第1の絞り弁部材と、当該ハウジング内に収容され前記第3の弁室と前記第2の弁室との連通路を開閉する第2の絞り弁部材と、当該ハウジング内に収容され前記第1の絞り弁部材及び第2の絞り弁部材を介して夫々前記第3の弁室が前記第1の弁室及び前記第2の弁室と連通する方向に付勢する付勢手段とを備え、前記第1の連通路を前記第1の弁室に連通接続すると共に、前記第2の連通路を前記第2の弁室に連通接続して成り、常時は前記第1の弁室、第2の弁室及び第3の弁室が相互に連通し、前記流体が前記第1の弁室及び第2の弁室の一方側から前記第3の弁室を介して他方側へ移動するときに生ずる圧力差が、前記付勢手段による所定の付勢力以上となったときには、前記第1の絞り弁部材及び第2の絞り弁部材の一方によって、前記第1の弁室及び第2の弁室の一方側から他方側への前記流体の移動を阻止するように構成したことを特徴とする請求項1記載の車両のサスペンション制御装置。
【請求項3】
前記第1の絞り弁部材及び第2の絞り弁部材は、夫々前記第1の弁室及び第2の弁室の各々に収容され、前記ハウジング内に設けられた各々の弁座に対し、着座したときには夫々前記第1の弁室及び第2の弁室と前記第3の弁室との連通を遮断するように配設される球状弁体と、該球状弁体に当接し当該球状弁体を前記弁座から離座させる位置と当該球状弁体を前記弁座に着座させる位置の二位置間を移動する中空部材とを具備して成り、前記付勢手段は、前記第1の絞り弁部材及び第2の絞り弁部材を構成する前記中空部材の各々に対し、前記球状弁体を前記弁座から離座させる方向に付勢するスプリングを具備して成り、常時は前記球状弁体は前記弁座から離座し、前記中空部材の中空部を介して前記第1の弁室、第2の弁室及び第3の弁室が相互に連通し、前記流体が前記第1の弁室及び第2の弁室の一方側から前記第3の弁室を介して他方側へ移動するときに生ずる圧力差が、前記スプリングによる所定の付勢力以上となったときには、前記球状弁体が前記弁座に着座するように構成したことを特徴とする請求項2記載の車両のサスペンション制御装置。
【請求項4】
前記第1の連通路及び第2の連通路の夫々に連通接続し、夫々前記左輪側シリンダ及び右輪側シリンダ内に充填された流体に対しロール剛性を付与するアキュムレータを備えたことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の車両のサスペンション制御装置。
【請求項5】
前記第1の連通路と前記第2の連通路とを連通接続し、前記左輪側シリンダ及び右輪側シリンダの少なくとも一方に充填された流体に対しロール剛性を付与する単一のアキュムレータを備えると共に、常時は連通し、前記第1の連通路内の圧力と前記第2の連通路内の圧力との間に圧力差が生じたときには、前記アキュムレータを前記第1の連通路と前記第2の連通路の何れか一方側に切り替える切替弁を備えたことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の車両のサスペンション制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−101724(P2012−101724A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−253284(P2010−253284)
【出願日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】