車両のトルクロッド取付構造
【課題】トルクロッドのサスペンションメンバへの取付作業性と取付剛性の向上を図ることができる車両のトルクロッド取付構造を提供すること。
【解決手段】アルミ製サスペンションメンバ4とエンジンとを連結するトルクロッド13の取付構造として、前記トルクロッド13のサスペンションメンバ側端部(後端部)を前記サスペンションメンバ4の前壁4Aに形成された貫通孔14を通過させてサスペンションメンバ4内に配置し、該サスペンションメンバ側端部(後端部)を、これに設けられたブッシュ44に下方から挿通するボルト50を前記サスペンションメンバ4の上壁4Aに締付固定するとともに、前記ボルト50の下端部と前記サスペンションメンバ4の前壁4Bの下端部とを連結プレート47によって連結する構成を採用する。
【解決手段】アルミ製サスペンションメンバ4とエンジンとを連結するトルクロッド13の取付構造として、前記トルクロッド13のサスペンションメンバ側端部(後端部)を前記サスペンションメンバ4の前壁4Aに形成された貫通孔14を通過させてサスペンションメンバ4内に配置し、該サスペンションメンバ側端部(後端部)を、これに設けられたブッシュ44に下方から挿通するボルト50を前記サスペンションメンバ4の上壁4Aに締付固定するとともに、前記ボルト50の下端部と前記サスペンションメンバ4の前壁4Bの下端部とを連結プレート47によって連結する構成を採用する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両においてエンジンの揺動を抑制するためにエンジンとアルミ製サスペンションメンバとを連結するためのトルクロッドの取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両前部のエンジンルームに配される駆動源であるエンジンは、複数のエンジンマウントによって車体に弾性支持されるが、エンジンはスロットル操作等に伴うトルク変動や回転変動等によって揺動しようとし、エンジン振動を車体に伝えないように配置されるエンジンマウントの弾性変形分だけ車体に対して揺動するため、該エンジンとサスペンションアームとを連結ロッドによって連結してエンジンの揺動を抑制するようにしている。
【0003】
ところで、トルクロッドの一端が連結されるサスペンションメンバは、車両のエンジンルームの下方に配置され、左右のサスペンションアームを上下に揺動可能に支持するとともに、エンジンルームの左右両側に車両前後方向に沿って配置された一対のエプロンサイドメンバを連結して車体の剛性を高めるための部材である。
【0004】
従来、上記サスペンションメンバは板金のプレス成形品を溶接することによって構成されており、このサスペンションメンバへのトルクロッドの取付構造が例えば特許文献1において提案されている。即ち、特許文献1には、上下の板部材によって中空状に形成された板金製のサスペンションメンバの上下の板部材の間に開口を形成するとともに、この開口の近傍に補強体を設け、トルクロッド(連結体)の一端部を開口に嵌め込んでブッシュを介して補強体に連結する取付構造が提案されている。この取付構造によれば、ブッシュの内筒を固定するボルトの両端がサスペンションメンバの上下の板部材によって両持ち状態で支持されるため、トルクロッドのサスペンションメンバへの取付剛性が高く保たれる。
【0005】
又、特許文献2には、サスペンションメンバの車体への取付構造として、サスペンションメンバを弾性支持するブッシュ(マウントインシュレータ)の内筒を車体側部材に連結する連結ボルトの下端部を補強ステーを介して車体側部材に固定することによって取付ボルトを上下で両持ち支持する構成が提案されている。
【0006】
ところで、近年、軽量化や生産性の向上等の目的のためにサスペンションメンバを軽量なアルミニウム合金で鋳造(ダイキャスト等)によって一体成形することが行われている。斯かるアルミ製サスペンションメンバは、略水平な上壁と、該上壁の前端縁と後端縁からそれぞれ下方に延びる前壁及び後壁によって下方が開放された断面形状に一体成形される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−253642号公報
【特許文献2】特開2001−097241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
成形型によって一体成形されるアルミ製サスペンションメンバは、板金製サスペンションメンバのような閉断面構造に成形することができず、下方が開放された断面形状都ならざるを得ないため、トルクロッドの一端に取り付けられたブッシュをサスペンションメンバの下面に締め付け固定せざるを得ず、ブッシュの内筒を締め付け固定するためのボルトはサスペンションメンバの上壁に片持ち状態で支持されることとなり、エンジンの揺動力によってボルトに倒れが発生する恐れがあり、その支持剛性を高く保つことは困難であるという問題があった。
【0009】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、トルクロッドのサスペンションメンバへの取付作業性と取付剛性の向上を図ることができる車両のトルクロッド取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、
アルミニウム合金によって一体成形され、略水平な上壁と、該上壁の前端縁と後端縁からそれぞれ下方に延びる前壁及び後壁によって下方が開放された断面形状を有するアルミ製サスペンションメンバと、
該アルミ製サスペンションメンバの前方に配置されたエンジンと、
該エンジンと前記サスペンションメンバとを連結するトルクロッドと、
を有する車両の前記トルクロッドのエンジン側端部とサスペンションメンバ側端部を弾性を有するブッシュを介して前記エンジンと前記サスペンションメンバにそれぞれ連結するトルクロッド取付構造として、
前記トルクロッドのサスペンションメンバ側端部を前記サスペンションメンバの前壁に形成された貫通孔を通過させてサスペンションメンバ内に配置し、該サスペンションメンバ側端部を、これに設けられた前記ブッシュに下方から挿通するボルトを前記サスペンションメンバの上壁に締付固定するとともに、前記ボルトの下端部と前記サスペンションメンバの前壁の下端部とを連結プレートによって連結する構成を採用したことを特徴とする。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記連結プレートを、前記サスペンションメンバ前壁側が幅広である平面視略三角状に成形し、その前壁側の複数箇所を前記サスペンションメンバの前壁の下端部に固定したことを特徴とする。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記サスペンションメンバの前壁に形成された前記貫通孔の左右両側位置に前記連結プレートの前壁側端部を締付固定したことを特徴とする。
【0013】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3の何れかに記載の発明において、前記サスペンションメンバの前壁の下端取付面に前記連結プレートの前壁側端部を下方から重ねて下方から締付固定したことを特徴とする。
【0014】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4の何れかに記載の発明において、前記連結プレートの前端縁を上方に屈曲させ、その屈曲部を前記サスペンションメンバの前方に配設したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の発明によれば、下方が開放されたアルミ製サスペンションメンバであっても、トルクロッドの一端をサスペンションメンバの前壁に形成された貫通孔を通過させてサスペンションメンバ内(上壁の下方で前壁の後方となるサスペンションメンバの空間部)に配置し、該トルクロッドの一端を、これに設けられたブッシュに下方から挿通するボルトをサスペンションメンバの上壁に締め付けることによって固定するとともに、前記ボルトの下端部とサスペンションメンバの前壁の下端とを連結プレートによって連結するようにしたため、ボルトが両持ち状態で確実に支持されてその倒れが防がれ、トルクロッドのサスペンションメンバへの取付剛性が高められ、エンジンの揺動がトルクロッドによって効果的に抑制される。又、トルクロッドと連結プレートは下方からの締め付けによって取り付けられるため、これらの取付作業性が高められる。更に、トルクロッドと連結プレートは下方に開放されたサスペンションメンバに取り付けられるため、中空断面構造を有する板金製サスペンションメンバのように袋状の取付部からエンジン側にトルクロッドを抜く作業が不要となり、トルクロッドの脱着作業性が高められる。
【0016】
請求項2記載の発明によれば、連結プレートをその前端側(サスペンションメンバ前壁側)が幅広である平面視略三角状に成形し、その前壁側の複数箇所をサスペンションメンバの前壁の下端部に固定するようにしたため、エンジン側からトルクロッドに作用する力を連結プレートによって確実に受けてサスペンションメンバへと伝達することができる。
【0017】
請求項3記載の発明によれば、連結プレートがサスペンションメンバの前壁に形成された貫通孔の左右両側位置に締付固定されて貫通孔の左右を連結するため、貫通孔のために剛性が低下するサスペンションメンバの前壁部分が連結プレートによって補強され、剛性が高められたサスペンションメンバの前壁部分で連結プレートに作用する力を受けることができ、剛性の高いサスペンションメンバに一端が取り付けられたトルクロッドによってエンジンの揺動が効果的に抑制される。
【0018】
請求項4記載の発明によれば、エンジンからトルクロッドへの力の伝達方向である車両前後方向に対して垂直方向である下方から連結プレートの前壁側端部をサスペンションメンバの前壁の下端取付面に重ねて締付固定するようにしたため、締結具であるボルトの緩みが防がれ、連結プレートの締め付けが確実になされてその耐久性が向上する。特に、アルミ製サスペンションメンバは大きな締付トルクに耐えられないが、比較的小さな締付トルクでも連結プレートをサスペンションメンバに高い信頼性によって確実に締付固定することができ、エンジンからトルクロッドを経て伝達される力を連結プレートによって効率良く受けることができる。
【0019】
請求項5記載の発明によれば、連結プレートの前端縁を前方に延設し、サスペンションメンバの前壁部分の下方を通過後に上方に屈曲させ、その屈曲部をサスペンションメンバの前方に配設したため、鉄材よりも軟質で傷付き易いアルミニウム合金製のサスペンションメンバの前壁下端の下面のみならず前面も連結プレートの屈曲部によって保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】車両の車体前部構造を示す側面図である。
【図2】車両のサスペンション系の構成を示す分解斜視図である。
【図3】サスペンションメンバの平面図である。
【図4】サスペンションメンバの底面図である。
【図5】サスペンションメンバの正面図である。
【図6】サスペンションメンバの左側面図である。
【図7】サスペンションアーム取付構造を示す分解斜視図である。
【図8】サスペンションアームの組付要領を示す取付部を斜め下方から見た斜視図である。
【図9】サスペンションアーム取付構造を示す部分側断面図である。
【図10】トルクロッドのサスペンションメンバへの組込方向を示す斜視図である。
【図11】本発明に係るトルクロッド取付構造を示す分解斜視図である。
【図12】本発明に係るトルクロッド取付構造を示す側断面図である。
【図13】別形態に係る連結プレートの斜視図である。
【図14】図13に示す連結プレートの前端縁部分のサスペンションメンバの前壁下端部分との関係を示す部分側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0022】
図1は車両の車体前部構造を示す側面図、図2は同車両のサスペンション系の構成を示す分解斜視図、図3はサスペンションメンバの平面図、図4は同サスペンションメンバの底面図、図5は同サスペンションメンバの正面図、図6は同サスペンションメンバの左側面図、図7はサスペンションアーム取付構造を示す分解斜視図、図8はサスペンションアームの組付要領を示す取付部を斜め下方から見た斜視図、図9はサスペンションアームの取付構造を示す部分側断面図、図10はトルクロッドのサスペンションメンバへの組込方向を示す斜視図、図11は本発明に係るトルクロッド取付構造を示す分解斜視図、図12は同トルクロッド取付構造を示す側断面図である。
【0023】
図1に示すように、車両前部のエンジンルームSには左右一対のエプロンサイドメンバ1(図1には一方のみ図示)が車両前後方向(図1の左右方向)に沿って配設されており、これらのエプロンサイドメンバ1の下方には左右一対のエプロンロアメンバ2(図1には一方のみ図示)が車両前後方向に沿って配設されている。そして、左右一対のエプロンロアメンバ2の前端には、車幅方向(図1の紙面垂直方向)に配されたラジエータサポートロアメンバ3が架設されており、同エプロンサイドメンバ2の後端にはエンジンルームSの下部に配置されたサスペンションメンバ4が連結されている。
【0024】
上記各エプロンサイドメンバ1は、前後の第1及び第2水平部1A,1Bと両水平部1A,1Bを連結する斜めの傾斜部1Cとで構成されており、その前端には変形することによって衝撃を吸収するクラッシュボックス5が取り付けられている。そして、左右の各クラッシュボックス5の前端には、車幅方向に沿う上下一対のパイプ材6を有するアッパバンパメンバ7が連結されており、該アッパバンパメンバ7の車両前方にはバンパフェイシア8が配設されている。
【0025】
又、左右一対の前記クラッシュボックス5の車幅方向内面には垂直に延びるランプサポートブレース9がそれぞれ取り付けられており、両ランプサポートブレース9の前端には、車幅方向に沿う上下一対のパイプ材10を有するロアバンパメンバ11が連結されており、該ロアバンパメンバ11の車両前方にはバンパフェイシア12が配設されている。ここで、バンパフェイシア8とバンパフェイシア12はラジエータ用の空気取入口を間に配置して一体に形成されている。
【0026】
次に、前記サスペンションメンバの構成を図2〜図6に基づいて以下に説明する。
【0027】
サスペンションメンバ4は、アルミニウム合金による鋳造(ダイキャスト等)によって一体成形される部材であって、略水平な上壁4Aと、該上壁4Aの前端縁と後端縁からそれぞれ略垂直下方に延びる前壁4B及び後壁4Cによって下方が開放された断面形状を有している。ここで、図2及び図5に示すように、サスペンションメンバ4の前壁4Bの車幅方向中央にはトルクロッド13(図2参照)が貫通するための矩形の貫通孔14が形成され、前壁4Bの右側寄りには、不図示のエンジンから車両後方へと延びる排気管15が通過するための半円状の切欠き16が形成されている。尚、サスペンションメンバ4の切欠き16の周縁には補強リブ17が一体に形成されている。
【0028】
又、アルミ製サスペンションメンバ4の上壁4Aの左右両端前側には車体取付部を構成する支柱4bがそれぞれ立設されており、図3及び図4に示すように、各支柱4bの上端部には円孔状のボルト挿通孔18がそれぞれ上下方向に貫設されている。又、サスペンションメンバ4の上壁4Aの左右両端の後端角部には同じく車体取付部を構成する取付座4c(図3参照)が形成されており、各取付座4cには円孔状のボルト挿通孔19がそれぞれ上下方向に貫設されている。
【0029】
而して、サスペンションメンバ4は、左右の前記支柱4bに形成されたボルト挿通孔18に下方から挿通するボルト20(図2参照)を図1に示す左右一対の各エプロンサイドメンバ1の第1水平部1Aの後端下面に締め付けるとともに、前記取付座4cに形成されたボルト挿通孔19に下方から挿通するボルト21(図2参照)を図1に示すように左右一対の各エプロンサイドメンバ1の斜面部1Cの後端に締め付けることによって、左右のエプロンサイドメンバ1に取り付けられる。
【0030】
ところで、サスペンションメンバ1の上部には図2に示すスタビライザ22とステアリングギヤボックス23が取り付けられるが、サスペンションメンバ4の上壁4Aの左右には、図2及び図3に示すように、スタビライザ22を取り付けるための取付座4d,4dが形成され、これらの車両前方の左右にはステアリングギヤボックス23を取り付けるための取付座4e,4fが形成されている。そして、各取付座4d,4dには各2つのネジ孔24が形成され、取付座4e,4fには各2つのネジ孔25がそれぞれ形成されている。
【0031】
而して、図2に示すように、スタビライザ22は、押え部材26に挿通する各2本のボルト27をサスペンションメンバ4の上壁4Aに形成された取付座4dのネジ孔24にねじ込むことによって左右2箇所がサスペンションメンバ4の上壁4Aに車幅方向に沿って取り付けられる。又、ステアリングギヤボックス23は、2本のボルト28をサスペンションメンバ4の取付座4eのネジ孔25にねじ込むとともに、各2本のボルト29をサスペンションメンバ4の上壁4Aに形成された取付座4fのネジ孔25にねじ込むことによって左右2箇所がサスペンションメンバ4の上壁4Aの上面に車幅方向に沿って取り付けられる。
【0032】
又、図2、図7及び図8に示すように、サスペンションメンバ4の左右両端には平面視Y字状を成す左右一対のサスペンションアーム30(図には一方のみ図示)の内端部の前後が上下に揺動可能に取り付けられる。尚、左右の各サスペンションアーム30の外側端部は、ボールジョイント31を介して不図示の前輪ナックルに回動可能に枢着されており、各前輪ナックルには左右の不図示の各前輪がそれぞれ回転可能に支持されるとともに、前記ステアリングギヤボックス23から左右に延びるタイロッド32の端部がボールジョイント33を介して連結されている。
【0033】
ここで、サスペンションアーム30の取付構造について説明する。
【0034】
サスペンションメンバ4の左右両端部の各前方部分には、図6〜図9に示すように、前後2つのボス4gが一体に形成されており、各ボス4gの下面は平坦な下向きの取付面4g−1を構成している。そして、各ボス4gにはネジ孔34がそれぞれ上下方向に貫設されている。そして、図9に示すように、サスペンションメンバ4の左右両端の各前方部分に前後に形成された取付面4g−1の間には凹部35が形成されており、該凹部35には、取付面4g−1に対して垂直方向に延びるリブ4hが立設されている。ここで、図4及び図6に示すように、サスペンションメンバ4の左右の取付面4g−1は、当該サスペンションメンバ4の車体への取付部である左右の前記支柱4bの近傍に形成されている。
【0035】
又、図6〜図8に示すように、サスペンションメンバ4の左右両端の各後方部には偏平な矩形筒状の取付部4Dがそれぞれ形成されており、図7に示すように、各取付部4Dの底面には円孔状のボルト挿通孔36が形成され、上面には円柱状のボス4iが一体に立設されている。そして、各ボス4iにはネジ孔37が上下方向に貫設されている。
【0036】
他方、図7に示すように、左右の各サスペンションアーム30(図7には一方のみ図示)の車幅方向内端部の前側には車両前後方向に開口する円筒状のボス30aが一体に形成され、このボス30aにはブッシュ38が横方向に圧入されている。ここで、ブッシュ38は、図9に示すように、サスペンションメンバ4に固定される軸38A及び外筒38Bと、これらの軸38Aと外筒38Bの間に充填されたゴム等の弾性部材38Cとで構成されており、軸38Aの外筒38Bから突出する両端部には平坦な締付固定部38aが形成されている。そして、軸38Aの各締付固定部38aには円孔状のボルト挿通孔39がそれぞれ貫設されている。
【0037】
又、各サスペンションアーム30の車幅方向内端部の後側には円孔状の嵌合孔30bが形成されており、この嵌合孔30bにはブッシュ40が上下方向に圧入されている。尚、図示しないが、ブッシュ40は、ブッシュ38と同様に内外二重筒状の内筒と外筒の間にゴム等の弾性部材を充填して構成されている。
【0038】
而して、各サスペンションアーム30は以下の要領によってサスペンションメンバ4に上下に揺動可能に取り付けられる。
【0039】
即ち、図8及び図9に示すように、各サスペンションアーム30の車幅方向内端部の前側に形成されたボス30aとこれに圧入されたブッシュ38を前後2つの取付面4g−1間に形成された凹部35に嵌め込み、ブッシュ38の軸38Aの両端に形成された平坦な締付固定部38aをサスペンションメンバ4の前後の取付面4g−1に下方から押し当て、該締付固定部38aに形成されたボルト挿通孔39に下方から挿通するボルト41をサスペンションメンバ4の取付面4g−1に形成されたネジ孔34にねじ込むことによって、各サスペンションアーム30の車幅方向内端部の前側がブッシュ38の軸38Aを中心として上下に揺動可能に取り付けられる。
【0040】
又、各サスペンションアーム30の車幅方向内端部の後側に形成された嵌合孔30bに圧入されたブッシュ40をサスペンションメンバ4に形成された矩形筒状の取付部4Dの内部に挿入し、取付部4Dの底面に形成されたボルト挿通孔36に下方から挿通するボルト42をブッシュ40の内筒に通し、このボルト42の先端を取付部4Dの上面に立設されたボス4iのネジ孔37にねじ込むことによって、各サスペンションアーム30の車幅方向内端部の後側がブッシュ40の弾性部材の弾性変形によって上下に揺動可能に取り付けられる。
【0041】
次に、前記トルクロッド13のサスペンションメンバ4への取付構造を図10〜図12に基づいて説明する。
【0042】
前記トルクロッド13は、車幅方向中央に前後方向に沿って配される部材であって、サスペンションメンバ4とその前方に配された不図示のエンジンとを連結することによってエンジンの揺動を抑制する機能を果たし、その前端はエンジンに取り付けられ、後端はサスペンションメンバ4に取り付けられている。より詳細には、トルクロッド13は、丸パイプ状のロッド本体13Aの前端に小径の円筒ボス13Bを車幅方向に開口する方向に結着し、ロッド本体13Aの後端に円筒ボス13Bよりも大径の円筒ボス13Cを上下方向に開口する方向に結着して構成されており、前端側の小径の円筒ボス13Bにはブッシュ43が圧入され、後端側の大径の円筒ボス13Cにはブッシュ44が圧入されている。
【0043】
トルクロッド13の前端側の小径の円筒ボス13Bに圧入されるブッシュ43は、図示しないが、同心状に配された内筒と外筒の間に弾性部材を充填することによって構成され、後端側の大径の円筒ボス13Cに圧入されたブッシュ44は、図12に示すように、同心状に配された内筒44Aと外筒44Bとを平面視V字状の弾性部材44Cによって連結して構成されている。そして、前端側の小径ブッシュ43は小径で高バネ定数のものであり、後端側の大径ブッシュ44は大径で低バネ定数のものとしている。
【0044】
而して、トルクロッド13は、図10に示すように、小径側の円筒ボス13Bが結着された先端側を先にしてサスペンションメンバ4の前壁4Bに形成された貫通孔14に車両後方側から通され、その後端側の大径側の円筒ボス13Cがサスペンションメンバ4の内部(上壁の下方で前壁の後方となるサスペンションメンバ4の空間部)に配置される。ここで、図12に示すように、サスペンションメンバ4の上壁4Aの車幅方向中央の前部にはボス4jが一体に立設されており、このボス4jには上下に貫通するネジ孔45が形成されている。ボス4jは、スタビライザ22を取り付けるための左右の取付座4d,4dの間の位置に形成され、ステアリングギヤボックス23を取り付けるための取付座4e,4fの間のやや後方側に形成されている。つまり、ボス4j付近の上壁は、スタビライザ22やステアリングギヤボックス23にて補強されていることになる。又、ボス4jの前後には、車両の左右方向に延びる補強ビードが形成されている。
【0045】
又、図10及び図11に示すように、サスペンションメンバ4の前壁4Bの下端部における貫通孔14の左右両側にはネジ孔46が上下方向に形成された下端取付面が形成されている。下端取付面は、大径ブッシュ44の内筒44Aの下端とほぼ同じ高さとなっている。尚、貫通孔14は、小径ブッシュ43が圧入された小径側の円筒ボス13Bは通過可能であるが、大径ブッシュ44が圧入された大径側の円筒ボス13Cは通過不能な大きさに形成されており、前壁4Bの強度の低下をできるだけ少なくしている。更に、貫通孔14の左右両側にはネジ孔46が形成されたボスが上下方向に配設されて貫通孔14の周囲を補強しており、貫通孔14を形成したことによる前壁4Bの強度の低下をできるだけ少なくしている。
【0046】
ところで、トルクロッド13の前端部は、先端の円筒ボス13Bに圧入されたブッシュ43の内筒に横方向に挿通する不図示のボルトによってエンジンの下部に取り付けられる。又、トルクロッド13の後端部のサスペンシュンメンバ4への取り付けには、図11及び図12に示す連結プレート47が使用される。
【0047】
上記連結プレート47は、前端側(サスペンションメンバ4の前壁4B側)が幅広である平面視略三角状に成形され、その前端側の幅方向端部2箇所と後端(三角形の頂点部)の1箇所の計3箇所には円孔状のボルト挿通孔48が上下方向に貫設されて、取付面が形成されている。ここで、連結プレート47の周縁には下方に向かって折り曲げられたフランジ47aが形成され、このフランジ47aによって連結プレート47の剛性が高められている。又、連結プレート47の中央部は取付面よりも一段下がった凹部47bが形成されることによって凹部47bの周囲に縦壁を形成して該連結プレート47の剛性が高められており、又、凹部47bの底面には三角孔47cが形成されている。このように連結プレート47の中央部に三角孔47cを形成することによって、該連結プレート47の軽量化が図られるとともに、連結プレート47上への泥や異物の堆積や水の滞留が防がれる。つまり、上記連結プレート47は、フランジ47a、取付面、凹部47bの周囲の縦壁及び三角孔47cにて3箇所のボルト挿通孔48を連結する三角形の枠状の補強部材となっている。
【0048】
而して、トルクロッド13の後端部に結着された円筒ボス13Cは、図12に示すように、ブッシュ44の内筒44Aがサスペンションメンバ4の上壁4Aのボス4jに形成されたネジ孔45に一致するよう位置決めされる。そして、連結プレート47の取付面がサスペンションメンバ4の前壁4Bの下端取付面に下方から重ねられ、図11に示すように、連結プレート47の前端側の左右2箇所に形成されたボルト挿通孔48にボルト49が下方から通され、これらのボルト49をサスペンションメンバ4の前壁4Bの下端取付面の左右2箇所に上下方向に形成されたネジ孔46にそれぞれねじ込むことによって連結プレート47の前端側部分がサスペンションメンバ4の前壁4Bの下端取付面に締付固定される。
【0049】
上述のように連結プレート47の前端側部分がサスペンションメンバ4の前壁4Bの下端取付面に取り付けられると、図12に示すように、該連結プレート47の後端部の1箇所に形成されたボルト挿通孔48がブッシュ44の内筒44Aに一致し、連結プレート47のボルト挿通孔48とブッシュ44の内筒44Aにボルト50を下方から通し、該ボルト50の上端ネジ部をサスペンションメンバ4の上壁4Aに立設されたボス4jのネジ孔45にねじ込むことによって、トルクロッド13の後端部がブッシュ44を介してサスペンションメンバ4の下面に締め付け固定される。このようにトルクロッド13の後端部をボルト50によって連結プレート47との共締めによってサスペンションメンバ4に取り付けると、ボルト50の上下両端はサスペンションメンバ4の上壁4Aと連結プレート47によって両持ち状態で支持される。即ち、ボルト50の下端部(頭部)とサスペンションメンバ4の前壁4Bとが連結プレート47によって連結されるため、ボルト50は両持ち状態でサスペンションメンバ4に取り付けられ、ボルト50の倒れが抑制されて確実に支持される。
【0050】
以上のように、本実施の形態では、下方が開放されたアルミ製サスペンションメンバ4であっても、トルクロッド13の一端をサスペンションメンバ4の前壁4Bに形成された貫通孔14を通過させてサスペンションメンバ4内に配置し、該トルクロッド13の一端を、これに設けられたブッシュ44に下方から挿通するボルト50をサスペンションメンバ4の上壁4Aに締め付けることによって固定するとともに、前記ボルト50の下端部とサスペンションメンバ4の前壁4Bの下端部とを連結プレート47によって連結するようにしたため、ボルト50が両持ち状態で確実に支持されてその倒れが防がれ、トルクロッド13のサスペンションメンバ4への取付剛性が高められ、エンジンの揺動がトルクロッド13によって効果的に抑制される。
【0051】
又、トルクロッド13と連結プレート47は下方からの締め付けによって取り付けられるため、これらの取付作業性が高められる。更に、トルクロッド13と連結プレート47は下方に開放されたサスペンションメンバ4に取り付けられるため、中空断面構造を有する板金製サスペンションメンバのように袋状の取付部から部品を抜く作業が不要となり、部品の脱着作業性が高められる。
【0052】
更に、本実施の形態では、連結プレート47をその前端側(サスペンションメンバ4の前壁4B側)が幅広である平面視略三角状に成形し、その前壁側の複数箇所をサスペンションメンバ4の前壁4Bの下端部に固定するようにしたため、エンジン側からトルクロッド13に作用する力を連結プレート47によって確実に受けてサスペンションメンバ4へと伝達することができる。
【0053】
又、本実施の形態では、連結プレート47がサスペンションメンバ4の前壁4Bに形成された貫通孔14の左右両側位置に締付固定されて貫通孔14の左右を連結するようにしたため、貫通孔14のために剛性が低下するサスペンションメンバ4の前壁4B部分が連結プレート47によって補強され、剛性の高いサスペンションメンバ4に一端が取り付けられたトルクロッド13によってエンジンの揺動が効果的に抑制される。
【0054】
そして、本実施の形態では、エンジンからトルクロッド13への力の伝達方向である車両前後方向に対して垂直方向である下方から連結プレート47の前方側端部をサスペンションメンバ4の前壁4Bの下端取付面に重ねて締付固定するようにしたため、締結具であるボルト49の緩みが防がれ、連結プレート47の締め付けが確実になされる。特に、アルミ製サスペンションメンバ4は大きな締付トルクに耐えられないが、比較的小さな締付トルクでも連結プレート47をサスペンションメンバ4に高い信頼性によって確実に締付固定することができ、エンジンからトルクロッド13を経て伝達される力を連結プレート47によって効率良く受けることができる。
【0055】
その他、本実施の形態では、連結プレート47は、サスペンションメンバ4の前壁4Bに形成された略半円形の切欠き16の側方に配置され、弾性部材44Cを有するブッシュ44を排気管15からの熱から保護する遮熱板として機能するため、ブッシュ44の熱による劣化が防がれてその耐久性が高められる。
【0056】
次に、本発明の別形態を図13及び図14に基づいて以下に説明する。
【0057】
図13は別形態に係る連結プレートの斜視図、図14は図13に示す連結プレートの前端縁部分のサスペンションメンバの前壁下端部分との関係を示す部分側断面図であり、本実施の形態では、図示のように連結プレート47の前端縁に形成されたフランジ47aの下端から前方に延設し、サスペンションメンバ4の前壁4Bの下端部分の下方を通過させてから上方に屈曲させて屈曲部47dを形成し、その屈曲部47dをサスペンションメンバ4の下端の前方に配設している。つまり、サスペンションメンバ4の下端を連結プレートで覆う。このため、鉄材よりも軟質で傷付き易いアルミニウム合金製のサスペンションメンバ4の前壁4B下端の下面のみならず前面も連結プレート47の屈曲部47dによって飛石等から保護することができ、サスペンションメンバ4の耐久性が高められる。
【符号の説明】
【0058】
1 エプロンサイドメンバ
4 アルミ製サスペンションメンバ
4A サスペンションメンバの上壁
4B サスペンションメンバの前壁
4C サスペンションメンバの後壁
13 トルクロッド
14 貫通孔
43,44 ブッシュ
45,46 サスペンションメンバのネジ孔
47 連結プレート
47d 連結プレートの屈曲部
48 連結プレートのボルト挿通孔
49,50 ボルト
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両においてエンジンの揺動を抑制するためにエンジンとアルミ製サスペンションメンバとを連結するためのトルクロッドの取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両前部のエンジンルームに配される駆動源であるエンジンは、複数のエンジンマウントによって車体に弾性支持されるが、エンジンはスロットル操作等に伴うトルク変動や回転変動等によって揺動しようとし、エンジン振動を車体に伝えないように配置されるエンジンマウントの弾性変形分だけ車体に対して揺動するため、該エンジンとサスペンションアームとを連結ロッドによって連結してエンジンの揺動を抑制するようにしている。
【0003】
ところで、トルクロッドの一端が連結されるサスペンションメンバは、車両のエンジンルームの下方に配置され、左右のサスペンションアームを上下に揺動可能に支持するとともに、エンジンルームの左右両側に車両前後方向に沿って配置された一対のエプロンサイドメンバを連結して車体の剛性を高めるための部材である。
【0004】
従来、上記サスペンションメンバは板金のプレス成形品を溶接することによって構成されており、このサスペンションメンバへのトルクロッドの取付構造が例えば特許文献1において提案されている。即ち、特許文献1には、上下の板部材によって中空状に形成された板金製のサスペンションメンバの上下の板部材の間に開口を形成するとともに、この開口の近傍に補強体を設け、トルクロッド(連結体)の一端部を開口に嵌め込んでブッシュを介して補強体に連結する取付構造が提案されている。この取付構造によれば、ブッシュの内筒を固定するボルトの両端がサスペンションメンバの上下の板部材によって両持ち状態で支持されるため、トルクロッドのサスペンションメンバへの取付剛性が高く保たれる。
【0005】
又、特許文献2には、サスペンションメンバの車体への取付構造として、サスペンションメンバを弾性支持するブッシュ(マウントインシュレータ)の内筒を車体側部材に連結する連結ボルトの下端部を補強ステーを介して車体側部材に固定することによって取付ボルトを上下で両持ち支持する構成が提案されている。
【0006】
ところで、近年、軽量化や生産性の向上等の目的のためにサスペンションメンバを軽量なアルミニウム合金で鋳造(ダイキャスト等)によって一体成形することが行われている。斯かるアルミ製サスペンションメンバは、略水平な上壁と、該上壁の前端縁と後端縁からそれぞれ下方に延びる前壁及び後壁によって下方が開放された断面形状に一体成形される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−253642号公報
【特許文献2】特開2001−097241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
成形型によって一体成形されるアルミ製サスペンションメンバは、板金製サスペンションメンバのような閉断面構造に成形することができず、下方が開放された断面形状都ならざるを得ないため、トルクロッドの一端に取り付けられたブッシュをサスペンションメンバの下面に締め付け固定せざるを得ず、ブッシュの内筒を締め付け固定するためのボルトはサスペンションメンバの上壁に片持ち状態で支持されることとなり、エンジンの揺動力によってボルトに倒れが発生する恐れがあり、その支持剛性を高く保つことは困難であるという問題があった。
【0009】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、トルクロッドのサスペンションメンバへの取付作業性と取付剛性の向上を図ることができる車両のトルクロッド取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、
アルミニウム合金によって一体成形され、略水平な上壁と、該上壁の前端縁と後端縁からそれぞれ下方に延びる前壁及び後壁によって下方が開放された断面形状を有するアルミ製サスペンションメンバと、
該アルミ製サスペンションメンバの前方に配置されたエンジンと、
該エンジンと前記サスペンションメンバとを連結するトルクロッドと、
を有する車両の前記トルクロッドのエンジン側端部とサスペンションメンバ側端部を弾性を有するブッシュを介して前記エンジンと前記サスペンションメンバにそれぞれ連結するトルクロッド取付構造として、
前記トルクロッドのサスペンションメンバ側端部を前記サスペンションメンバの前壁に形成された貫通孔を通過させてサスペンションメンバ内に配置し、該サスペンションメンバ側端部を、これに設けられた前記ブッシュに下方から挿通するボルトを前記サスペンションメンバの上壁に締付固定するとともに、前記ボルトの下端部と前記サスペンションメンバの前壁の下端部とを連結プレートによって連結する構成を採用したことを特徴とする。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記連結プレートを、前記サスペンションメンバ前壁側が幅広である平面視略三角状に成形し、その前壁側の複数箇所を前記サスペンションメンバの前壁の下端部に固定したことを特徴とする。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記サスペンションメンバの前壁に形成された前記貫通孔の左右両側位置に前記連結プレートの前壁側端部を締付固定したことを特徴とする。
【0013】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3の何れかに記載の発明において、前記サスペンションメンバの前壁の下端取付面に前記連結プレートの前壁側端部を下方から重ねて下方から締付固定したことを特徴とする。
【0014】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4の何れかに記載の発明において、前記連結プレートの前端縁を上方に屈曲させ、その屈曲部を前記サスペンションメンバの前方に配設したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の発明によれば、下方が開放されたアルミ製サスペンションメンバであっても、トルクロッドの一端をサスペンションメンバの前壁に形成された貫通孔を通過させてサスペンションメンバ内(上壁の下方で前壁の後方となるサスペンションメンバの空間部)に配置し、該トルクロッドの一端を、これに設けられたブッシュに下方から挿通するボルトをサスペンションメンバの上壁に締め付けることによって固定するとともに、前記ボルトの下端部とサスペンションメンバの前壁の下端とを連結プレートによって連結するようにしたため、ボルトが両持ち状態で確実に支持されてその倒れが防がれ、トルクロッドのサスペンションメンバへの取付剛性が高められ、エンジンの揺動がトルクロッドによって効果的に抑制される。又、トルクロッドと連結プレートは下方からの締め付けによって取り付けられるため、これらの取付作業性が高められる。更に、トルクロッドと連結プレートは下方に開放されたサスペンションメンバに取り付けられるため、中空断面構造を有する板金製サスペンションメンバのように袋状の取付部からエンジン側にトルクロッドを抜く作業が不要となり、トルクロッドの脱着作業性が高められる。
【0016】
請求項2記載の発明によれば、連結プレートをその前端側(サスペンションメンバ前壁側)が幅広である平面視略三角状に成形し、その前壁側の複数箇所をサスペンションメンバの前壁の下端部に固定するようにしたため、エンジン側からトルクロッドに作用する力を連結プレートによって確実に受けてサスペンションメンバへと伝達することができる。
【0017】
請求項3記載の発明によれば、連結プレートがサスペンションメンバの前壁に形成された貫通孔の左右両側位置に締付固定されて貫通孔の左右を連結するため、貫通孔のために剛性が低下するサスペンションメンバの前壁部分が連結プレートによって補強され、剛性が高められたサスペンションメンバの前壁部分で連結プレートに作用する力を受けることができ、剛性の高いサスペンションメンバに一端が取り付けられたトルクロッドによってエンジンの揺動が効果的に抑制される。
【0018】
請求項4記載の発明によれば、エンジンからトルクロッドへの力の伝達方向である車両前後方向に対して垂直方向である下方から連結プレートの前壁側端部をサスペンションメンバの前壁の下端取付面に重ねて締付固定するようにしたため、締結具であるボルトの緩みが防がれ、連結プレートの締め付けが確実になされてその耐久性が向上する。特に、アルミ製サスペンションメンバは大きな締付トルクに耐えられないが、比較的小さな締付トルクでも連結プレートをサスペンションメンバに高い信頼性によって確実に締付固定することができ、エンジンからトルクロッドを経て伝達される力を連結プレートによって効率良く受けることができる。
【0019】
請求項5記載の発明によれば、連結プレートの前端縁を前方に延設し、サスペンションメンバの前壁部分の下方を通過後に上方に屈曲させ、その屈曲部をサスペンションメンバの前方に配設したため、鉄材よりも軟質で傷付き易いアルミニウム合金製のサスペンションメンバの前壁下端の下面のみならず前面も連結プレートの屈曲部によって保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】車両の車体前部構造を示す側面図である。
【図2】車両のサスペンション系の構成を示す分解斜視図である。
【図3】サスペンションメンバの平面図である。
【図4】サスペンションメンバの底面図である。
【図5】サスペンションメンバの正面図である。
【図6】サスペンションメンバの左側面図である。
【図7】サスペンションアーム取付構造を示す分解斜視図である。
【図8】サスペンションアームの組付要領を示す取付部を斜め下方から見た斜視図である。
【図9】サスペンションアーム取付構造を示す部分側断面図である。
【図10】トルクロッドのサスペンションメンバへの組込方向を示す斜視図である。
【図11】本発明に係るトルクロッド取付構造を示す分解斜視図である。
【図12】本発明に係るトルクロッド取付構造を示す側断面図である。
【図13】別形態に係る連結プレートの斜視図である。
【図14】図13に示す連結プレートの前端縁部分のサスペンションメンバの前壁下端部分との関係を示す部分側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0022】
図1は車両の車体前部構造を示す側面図、図2は同車両のサスペンション系の構成を示す分解斜視図、図3はサスペンションメンバの平面図、図4は同サスペンションメンバの底面図、図5は同サスペンションメンバの正面図、図6は同サスペンションメンバの左側面図、図7はサスペンションアーム取付構造を示す分解斜視図、図8はサスペンションアームの組付要領を示す取付部を斜め下方から見た斜視図、図9はサスペンションアームの取付構造を示す部分側断面図、図10はトルクロッドのサスペンションメンバへの組込方向を示す斜視図、図11は本発明に係るトルクロッド取付構造を示す分解斜視図、図12は同トルクロッド取付構造を示す側断面図である。
【0023】
図1に示すように、車両前部のエンジンルームSには左右一対のエプロンサイドメンバ1(図1には一方のみ図示)が車両前後方向(図1の左右方向)に沿って配設されており、これらのエプロンサイドメンバ1の下方には左右一対のエプロンロアメンバ2(図1には一方のみ図示)が車両前後方向に沿って配設されている。そして、左右一対のエプロンロアメンバ2の前端には、車幅方向(図1の紙面垂直方向)に配されたラジエータサポートロアメンバ3が架設されており、同エプロンサイドメンバ2の後端にはエンジンルームSの下部に配置されたサスペンションメンバ4が連結されている。
【0024】
上記各エプロンサイドメンバ1は、前後の第1及び第2水平部1A,1Bと両水平部1A,1Bを連結する斜めの傾斜部1Cとで構成されており、その前端には変形することによって衝撃を吸収するクラッシュボックス5が取り付けられている。そして、左右の各クラッシュボックス5の前端には、車幅方向に沿う上下一対のパイプ材6を有するアッパバンパメンバ7が連結されており、該アッパバンパメンバ7の車両前方にはバンパフェイシア8が配設されている。
【0025】
又、左右一対の前記クラッシュボックス5の車幅方向内面には垂直に延びるランプサポートブレース9がそれぞれ取り付けられており、両ランプサポートブレース9の前端には、車幅方向に沿う上下一対のパイプ材10を有するロアバンパメンバ11が連結されており、該ロアバンパメンバ11の車両前方にはバンパフェイシア12が配設されている。ここで、バンパフェイシア8とバンパフェイシア12はラジエータ用の空気取入口を間に配置して一体に形成されている。
【0026】
次に、前記サスペンションメンバの構成を図2〜図6に基づいて以下に説明する。
【0027】
サスペンションメンバ4は、アルミニウム合金による鋳造(ダイキャスト等)によって一体成形される部材であって、略水平な上壁4Aと、該上壁4Aの前端縁と後端縁からそれぞれ略垂直下方に延びる前壁4B及び後壁4Cによって下方が開放された断面形状を有している。ここで、図2及び図5に示すように、サスペンションメンバ4の前壁4Bの車幅方向中央にはトルクロッド13(図2参照)が貫通するための矩形の貫通孔14が形成され、前壁4Bの右側寄りには、不図示のエンジンから車両後方へと延びる排気管15が通過するための半円状の切欠き16が形成されている。尚、サスペンションメンバ4の切欠き16の周縁には補強リブ17が一体に形成されている。
【0028】
又、アルミ製サスペンションメンバ4の上壁4Aの左右両端前側には車体取付部を構成する支柱4bがそれぞれ立設されており、図3及び図4に示すように、各支柱4bの上端部には円孔状のボルト挿通孔18がそれぞれ上下方向に貫設されている。又、サスペンションメンバ4の上壁4Aの左右両端の後端角部には同じく車体取付部を構成する取付座4c(図3参照)が形成されており、各取付座4cには円孔状のボルト挿通孔19がそれぞれ上下方向に貫設されている。
【0029】
而して、サスペンションメンバ4は、左右の前記支柱4bに形成されたボルト挿通孔18に下方から挿通するボルト20(図2参照)を図1に示す左右一対の各エプロンサイドメンバ1の第1水平部1Aの後端下面に締め付けるとともに、前記取付座4cに形成されたボルト挿通孔19に下方から挿通するボルト21(図2参照)を図1に示すように左右一対の各エプロンサイドメンバ1の斜面部1Cの後端に締め付けることによって、左右のエプロンサイドメンバ1に取り付けられる。
【0030】
ところで、サスペンションメンバ1の上部には図2に示すスタビライザ22とステアリングギヤボックス23が取り付けられるが、サスペンションメンバ4の上壁4Aの左右には、図2及び図3に示すように、スタビライザ22を取り付けるための取付座4d,4dが形成され、これらの車両前方の左右にはステアリングギヤボックス23を取り付けるための取付座4e,4fが形成されている。そして、各取付座4d,4dには各2つのネジ孔24が形成され、取付座4e,4fには各2つのネジ孔25がそれぞれ形成されている。
【0031】
而して、図2に示すように、スタビライザ22は、押え部材26に挿通する各2本のボルト27をサスペンションメンバ4の上壁4Aに形成された取付座4dのネジ孔24にねじ込むことによって左右2箇所がサスペンションメンバ4の上壁4Aに車幅方向に沿って取り付けられる。又、ステアリングギヤボックス23は、2本のボルト28をサスペンションメンバ4の取付座4eのネジ孔25にねじ込むとともに、各2本のボルト29をサスペンションメンバ4の上壁4Aに形成された取付座4fのネジ孔25にねじ込むことによって左右2箇所がサスペンションメンバ4の上壁4Aの上面に車幅方向に沿って取り付けられる。
【0032】
又、図2、図7及び図8に示すように、サスペンションメンバ4の左右両端には平面視Y字状を成す左右一対のサスペンションアーム30(図には一方のみ図示)の内端部の前後が上下に揺動可能に取り付けられる。尚、左右の各サスペンションアーム30の外側端部は、ボールジョイント31を介して不図示の前輪ナックルに回動可能に枢着されており、各前輪ナックルには左右の不図示の各前輪がそれぞれ回転可能に支持されるとともに、前記ステアリングギヤボックス23から左右に延びるタイロッド32の端部がボールジョイント33を介して連結されている。
【0033】
ここで、サスペンションアーム30の取付構造について説明する。
【0034】
サスペンションメンバ4の左右両端部の各前方部分には、図6〜図9に示すように、前後2つのボス4gが一体に形成されており、各ボス4gの下面は平坦な下向きの取付面4g−1を構成している。そして、各ボス4gにはネジ孔34がそれぞれ上下方向に貫設されている。そして、図9に示すように、サスペンションメンバ4の左右両端の各前方部分に前後に形成された取付面4g−1の間には凹部35が形成されており、該凹部35には、取付面4g−1に対して垂直方向に延びるリブ4hが立設されている。ここで、図4及び図6に示すように、サスペンションメンバ4の左右の取付面4g−1は、当該サスペンションメンバ4の車体への取付部である左右の前記支柱4bの近傍に形成されている。
【0035】
又、図6〜図8に示すように、サスペンションメンバ4の左右両端の各後方部には偏平な矩形筒状の取付部4Dがそれぞれ形成されており、図7に示すように、各取付部4Dの底面には円孔状のボルト挿通孔36が形成され、上面には円柱状のボス4iが一体に立設されている。そして、各ボス4iにはネジ孔37が上下方向に貫設されている。
【0036】
他方、図7に示すように、左右の各サスペンションアーム30(図7には一方のみ図示)の車幅方向内端部の前側には車両前後方向に開口する円筒状のボス30aが一体に形成され、このボス30aにはブッシュ38が横方向に圧入されている。ここで、ブッシュ38は、図9に示すように、サスペンションメンバ4に固定される軸38A及び外筒38Bと、これらの軸38Aと外筒38Bの間に充填されたゴム等の弾性部材38Cとで構成されており、軸38Aの外筒38Bから突出する両端部には平坦な締付固定部38aが形成されている。そして、軸38Aの各締付固定部38aには円孔状のボルト挿通孔39がそれぞれ貫設されている。
【0037】
又、各サスペンションアーム30の車幅方向内端部の後側には円孔状の嵌合孔30bが形成されており、この嵌合孔30bにはブッシュ40が上下方向に圧入されている。尚、図示しないが、ブッシュ40は、ブッシュ38と同様に内外二重筒状の内筒と外筒の間にゴム等の弾性部材を充填して構成されている。
【0038】
而して、各サスペンションアーム30は以下の要領によってサスペンションメンバ4に上下に揺動可能に取り付けられる。
【0039】
即ち、図8及び図9に示すように、各サスペンションアーム30の車幅方向内端部の前側に形成されたボス30aとこれに圧入されたブッシュ38を前後2つの取付面4g−1間に形成された凹部35に嵌め込み、ブッシュ38の軸38Aの両端に形成された平坦な締付固定部38aをサスペンションメンバ4の前後の取付面4g−1に下方から押し当て、該締付固定部38aに形成されたボルト挿通孔39に下方から挿通するボルト41をサスペンションメンバ4の取付面4g−1に形成されたネジ孔34にねじ込むことによって、各サスペンションアーム30の車幅方向内端部の前側がブッシュ38の軸38Aを中心として上下に揺動可能に取り付けられる。
【0040】
又、各サスペンションアーム30の車幅方向内端部の後側に形成された嵌合孔30bに圧入されたブッシュ40をサスペンションメンバ4に形成された矩形筒状の取付部4Dの内部に挿入し、取付部4Dの底面に形成されたボルト挿通孔36に下方から挿通するボルト42をブッシュ40の内筒に通し、このボルト42の先端を取付部4Dの上面に立設されたボス4iのネジ孔37にねじ込むことによって、各サスペンションアーム30の車幅方向内端部の後側がブッシュ40の弾性部材の弾性変形によって上下に揺動可能に取り付けられる。
【0041】
次に、前記トルクロッド13のサスペンションメンバ4への取付構造を図10〜図12に基づいて説明する。
【0042】
前記トルクロッド13は、車幅方向中央に前後方向に沿って配される部材であって、サスペンションメンバ4とその前方に配された不図示のエンジンとを連結することによってエンジンの揺動を抑制する機能を果たし、その前端はエンジンに取り付けられ、後端はサスペンションメンバ4に取り付けられている。より詳細には、トルクロッド13は、丸パイプ状のロッド本体13Aの前端に小径の円筒ボス13Bを車幅方向に開口する方向に結着し、ロッド本体13Aの後端に円筒ボス13Bよりも大径の円筒ボス13Cを上下方向に開口する方向に結着して構成されており、前端側の小径の円筒ボス13Bにはブッシュ43が圧入され、後端側の大径の円筒ボス13Cにはブッシュ44が圧入されている。
【0043】
トルクロッド13の前端側の小径の円筒ボス13Bに圧入されるブッシュ43は、図示しないが、同心状に配された内筒と外筒の間に弾性部材を充填することによって構成され、後端側の大径の円筒ボス13Cに圧入されたブッシュ44は、図12に示すように、同心状に配された内筒44Aと外筒44Bとを平面視V字状の弾性部材44Cによって連結して構成されている。そして、前端側の小径ブッシュ43は小径で高バネ定数のものであり、後端側の大径ブッシュ44は大径で低バネ定数のものとしている。
【0044】
而して、トルクロッド13は、図10に示すように、小径側の円筒ボス13Bが結着された先端側を先にしてサスペンションメンバ4の前壁4Bに形成された貫通孔14に車両後方側から通され、その後端側の大径側の円筒ボス13Cがサスペンションメンバ4の内部(上壁の下方で前壁の後方となるサスペンションメンバ4の空間部)に配置される。ここで、図12に示すように、サスペンションメンバ4の上壁4Aの車幅方向中央の前部にはボス4jが一体に立設されており、このボス4jには上下に貫通するネジ孔45が形成されている。ボス4jは、スタビライザ22を取り付けるための左右の取付座4d,4dの間の位置に形成され、ステアリングギヤボックス23を取り付けるための取付座4e,4fの間のやや後方側に形成されている。つまり、ボス4j付近の上壁は、スタビライザ22やステアリングギヤボックス23にて補強されていることになる。又、ボス4jの前後には、車両の左右方向に延びる補強ビードが形成されている。
【0045】
又、図10及び図11に示すように、サスペンションメンバ4の前壁4Bの下端部における貫通孔14の左右両側にはネジ孔46が上下方向に形成された下端取付面が形成されている。下端取付面は、大径ブッシュ44の内筒44Aの下端とほぼ同じ高さとなっている。尚、貫通孔14は、小径ブッシュ43が圧入された小径側の円筒ボス13Bは通過可能であるが、大径ブッシュ44が圧入された大径側の円筒ボス13Cは通過不能な大きさに形成されており、前壁4Bの強度の低下をできるだけ少なくしている。更に、貫通孔14の左右両側にはネジ孔46が形成されたボスが上下方向に配設されて貫通孔14の周囲を補強しており、貫通孔14を形成したことによる前壁4Bの強度の低下をできるだけ少なくしている。
【0046】
ところで、トルクロッド13の前端部は、先端の円筒ボス13Bに圧入されたブッシュ43の内筒に横方向に挿通する不図示のボルトによってエンジンの下部に取り付けられる。又、トルクロッド13の後端部のサスペンシュンメンバ4への取り付けには、図11及び図12に示す連結プレート47が使用される。
【0047】
上記連結プレート47は、前端側(サスペンションメンバ4の前壁4B側)が幅広である平面視略三角状に成形され、その前端側の幅方向端部2箇所と後端(三角形の頂点部)の1箇所の計3箇所には円孔状のボルト挿通孔48が上下方向に貫設されて、取付面が形成されている。ここで、連結プレート47の周縁には下方に向かって折り曲げられたフランジ47aが形成され、このフランジ47aによって連結プレート47の剛性が高められている。又、連結プレート47の中央部は取付面よりも一段下がった凹部47bが形成されることによって凹部47bの周囲に縦壁を形成して該連結プレート47の剛性が高められており、又、凹部47bの底面には三角孔47cが形成されている。このように連結プレート47の中央部に三角孔47cを形成することによって、該連結プレート47の軽量化が図られるとともに、連結プレート47上への泥や異物の堆積や水の滞留が防がれる。つまり、上記連結プレート47は、フランジ47a、取付面、凹部47bの周囲の縦壁及び三角孔47cにて3箇所のボルト挿通孔48を連結する三角形の枠状の補強部材となっている。
【0048】
而して、トルクロッド13の後端部に結着された円筒ボス13Cは、図12に示すように、ブッシュ44の内筒44Aがサスペンションメンバ4の上壁4Aのボス4jに形成されたネジ孔45に一致するよう位置決めされる。そして、連結プレート47の取付面がサスペンションメンバ4の前壁4Bの下端取付面に下方から重ねられ、図11に示すように、連結プレート47の前端側の左右2箇所に形成されたボルト挿通孔48にボルト49が下方から通され、これらのボルト49をサスペンションメンバ4の前壁4Bの下端取付面の左右2箇所に上下方向に形成されたネジ孔46にそれぞれねじ込むことによって連結プレート47の前端側部分がサスペンションメンバ4の前壁4Bの下端取付面に締付固定される。
【0049】
上述のように連結プレート47の前端側部分がサスペンションメンバ4の前壁4Bの下端取付面に取り付けられると、図12に示すように、該連結プレート47の後端部の1箇所に形成されたボルト挿通孔48がブッシュ44の内筒44Aに一致し、連結プレート47のボルト挿通孔48とブッシュ44の内筒44Aにボルト50を下方から通し、該ボルト50の上端ネジ部をサスペンションメンバ4の上壁4Aに立設されたボス4jのネジ孔45にねじ込むことによって、トルクロッド13の後端部がブッシュ44を介してサスペンションメンバ4の下面に締め付け固定される。このようにトルクロッド13の後端部をボルト50によって連結プレート47との共締めによってサスペンションメンバ4に取り付けると、ボルト50の上下両端はサスペンションメンバ4の上壁4Aと連結プレート47によって両持ち状態で支持される。即ち、ボルト50の下端部(頭部)とサスペンションメンバ4の前壁4Bとが連結プレート47によって連結されるため、ボルト50は両持ち状態でサスペンションメンバ4に取り付けられ、ボルト50の倒れが抑制されて確実に支持される。
【0050】
以上のように、本実施の形態では、下方が開放されたアルミ製サスペンションメンバ4であっても、トルクロッド13の一端をサスペンションメンバ4の前壁4Bに形成された貫通孔14を通過させてサスペンションメンバ4内に配置し、該トルクロッド13の一端を、これに設けられたブッシュ44に下方から挿通するボルト50をサスペンションメンバ4の上壁4Aに締め付けることによって固定するとともに、前記ボルト50の下端部とサスペンションメンバ4の前壁4Bの下端部とを連結プレート47によって連結するようにしたため、ボルト50が両持ち状態で確実に支持されてその倒れが防がれ、トルクロッド13のサスペンションメンバ4への取付剛性が高められ、エンジンの揺動がトルクロッド13によって効果的に抑制される。
【0051】
又、トルクロッド13と連結プレート47は下方からの締め付けによって取り付けられるため、これらの取付作業性が高められる。更に、トルクロッド13と連結プレート47は下方に開放されたサスペンションメンバ4に取り付けられるため、中空断面構造を有する板金製サスペンションメンバのように袋状の取付部から部品を抜く作業が不要となり、部品の脱着作業性が高められる。
【0052】
更に、本実施の形態では、連結プレート47をその前端側(サスペンションメンバ4の前壁4B側)が幅広である平面視略三角状に成形し、その前壁側の複数箇所をサスペンションメンバ4の前壁4Bの下端部に固定するようにしたため、エンジン側からトルクロッド13に作用する力を連結プレート47によって確実に受けてサスペンションメンバ4へと伝達することができる。
【0053】
又、本実施の形態では、連結プレート47がサスペンションメンバ4の前壁4Bに形成された貫通孔14の左右両側位置に締付固定されて貫通孔14の左右を連結するようにしたため、貫通孔14のために剛性が低下するサスペンションメンバ4の前壁4B部分が連結プレート47によって補強され、剛性の高いサスペンションメンバ4に一端が取り付けられたトルクロッド13によってエンジンの揺動が効果的に抑制される。
【0054】
そして、本実施の形態では、エンジンからトルクロッド13への力の伝達方向である車両前後方向に対して垂直方向である下方から連結プレート47の前方側端部をサスペンションメンバ4の前壁4Bの下端取付面に重ねて締付固定するようにしたため、締結具であるボルト49の緩みが防がれ、連結プレート47の締め付けが確実になされる。特に、アルミ製サスペンションメンバ4は大きな締付トルクに耐えられないが、比較的小さな締付トルクでも連結プレート47をサスペンションメンバ4に高い信頼性によって確実に締付固定することができ、エンジンからトルクロッド13を経て伝達される力を連結プレート47によって効率良く受けることができる。
【0055】
その他、本実施の形態では、連結プレート47は、サスペンションメンバ4の前壁4Bに形成された略半円形の切欠き16の側方に配置され、弾性部材44Cを有するブッシュ44を排気管15からの熱から保護する遮熱板として機能するため、ブッシュ44の熱による劣化が防がれてその耐久性が高められる。
【0056】
次に、本発明の別形態を図13及び図14に基づいて以下に説明する。
【0057】
図13は別形態に係る連結プレートの斜視図、図14は図13に示す連結プレートの前端縁部分のサスペンションメンバの前壁下端部分との関係を示す部分側断面図であり、本実施の形態では、図示のように連結プレート47の前端縁に形成されたフランジ47aの下端から前方に延設し、サスペンションメンバ4の前壁4Bの下端部分の下方を通過させてから上方に屈曲させて屈曲部47dを形成し、その屈曲部47dをサスペンションメンバ4の下端の前方に配設している。つまり、サスペンションメンバ4の下端を連結プレートで覆う。このため、鉄材よりも軟質で傷付き易いアルミニウム合金製のサスペンションメンバ4の前壁4B下端の下面のみならず前面も連結プレート47の屈曲部47dによって飛石等から保護することができ、サスペンションメンバ4の耐久性が高められる。
【符号の説明】
【0058】
1 エプロンサイドメンバ
4 アルミ製サスペンションメンバ
4A サスペンションメンバの上壁
4B サスペンションメンバの前壁
4C サスペンションメンバの後壁
13 トルクロッド
14 貫通孔
43,44 ブッシュ
45,46 サスペンションメンバのネジ孔
47 連結プレート
47d 連結プレートの屈曲部
48 連結プレートのボルト挿通孔
49,50 ボルト
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム合金によって一体成形され、略水平な上壁と、該上壁の前端縁と後端縁からそれぞれ下方に延びる前壁及び後壁によって下方が開放された断面形状を有するアルミ製サスペンションメンバと、
該アルミ製サスペンションメンバの前方に配置されたエンジンと、
該エンジンと前記サスペンションメンバとを連結するトルクロッドと、
を有する車両の前記トルクロッドのエンジン側端部とサスペンションメンバ側端部を弾性を有するブッシュを介して前記エンジンと前記サスペンションメンバにそれぞれ連結するトルクロッド取付構造であって、
前記トルクロッドのサスペンションメンバ側端部を前記サスペンションメンバの前壁に形成された貫通孔を通過させてサスペンションメンバ内に配置し、該サスペンションメンバ側端部を、これに設けられた前記ブッシュに下方から挿通するボルトを前記サスペンションメンバの上壁に締付け固定するとともに、前記ボルトの下端部と前記サスペンションメンバの前壁の下端部とを連結プレートによって連結したことを特徴とする車両のトルクロッド取付構造。
【請求項2】
前記連結プレートを、前記サスペンションメンバ前壁側が幅広である平面視略三角状に成形し、その前壁側の複数箇所を前記サスペンションメンバの前壁の下端部に固定したことを特徴とする請求項1記載の車両のトルクロッド取付構造。
【請求項3】
前記サスペンションメンバの前壁に形成された前記貫通孔の左右両側位置に前記連結プレートの前壁側端部を締付固定したことを特徴とする請求項2記載の車両のトルクロッド取付構造。
【請求項4】
前記サスペンションメンバの前壁の下端取付面に前記連結プレートの前壁側端部を下方から重ねて下方から締付固定したことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の車両のトルクロッド取付構造。
【請求項5】
前記連結プレートの前端縁を上方に屈曲させ、その屈曲部を前記サスペンションメンバの前方に配設したことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の車両のトルクロッド取付構造。
【請求項1】
アルミニウム合金によって一体成形され、略水平な上壁と、該上壁の前端縁と後端縁からそれぞれ下方に延びる前壁及び後壁によって下方が開放された断面形状を有するアルミ製サスペンションメンバと、
該アルミ製サスペンションメンバの前方に配置されたエンジンと、
該エンジンと前記サスペンションメンバとを連結するトルクロッドと、
を有する車両の前記トルクロッドのエンジン側端部とサスペンションメンバ側端部を弾性を有するブッシュを介して前記エンジンと前記サスペンションメンバにそれぞれ連結するトルクロッド取付構造であって、
前記トルクロッドのサスペンションメンバ側端部を前記サスペンションメンバの前壁に形成された貫通孔を通過させてサスペンションメンバ内に配置し、該サスペンションメンバ側端部を、これに設けられた前記ブッシュに下方から挿通するボルトを前記サスペンションメンバの上壁に締付け固定するとともに、前記ボルトの下端部と前記サスペンションメンバの前壁の下端部とを連結プレートによって連結したことを特徴とする車両のトルクロッド取付構造。
【請求項2】
前記連結プレートを、前記サスペンションメンバ前壁側が幅広である平面視略三角状に成形し、その前壁側の複数箇所を前記サスペンションメンバの前壁の下端部に固定したことを特徴とする請求項1記載の車両のトルクロッド取付構造。
【請求項3】
前記サスペンションメンバの前壁に形成された前記貫通孔の左右両側位置に前記連結プレートの前壁側端部を締付固定したことを特徴とする請求項2記載の車両のトルクロッド取付構造。
【請求項4】
前記サスペンションメンバの前壁の下端取付面に前記連結プレートの前壁側端部を下方から重ねて下方から締付固定したことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の車両のトルクロッド取付構造。
【請求項5】
前記連結プレートの前端縁を上方に屈曲させ、その屈曲部を前記サスペンションメンバの前方に配設したことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の車両のトルクロッド取付構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−61918(P2012−61918A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−206546(P2010−206546)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】
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