説明

車両のフロントボディ構造

【課題】車両前部に衝突した衝突体がピラーに二次衝突することを低減できる車両のフロントボディ構造を得る。
【解決手段】フード12の下方のエンジンルーム26内には、フード12の車両前後方向前側に第1形状保持部材32が配設されており、フェンダパネル14の下方には、車両前後方向前側に第2形状保持部材34が配設されている。第1形状保持部材32及び第2形状保持部材34は、車両前後方向前側からの正面視において、車両幅方向外側が車両上下方向下側に向けて傾斜する傾斜面32A、34Aを備えており、また、車両上下方向上側からの平面視において、車両前後方向後側が車両前後方向に対して所定の角度で車両幅方向外側に向けて拡がるように傾斜する形状に設定されている。これによって、衝突体が衝突したときに、フード12及びフェンダパネル14の衝突後の形状が所定の変形形状Bとなるように規制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のフロントボディ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両前部に衝突してフード上に跳ね上げられた衝突体が、ピラーに二次衝突することがある。これに対し、下記特許文献1には、衝突体がピラーと二次衝突した際の衝突を緩和するために、衝突の発生をセンサにより検出し、ピラーを覆うようにエアバックを展開する構成が開示されている。
【特許文献1】特開2000−264146号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記先行技術による場合、エアバックを設置するための構成が複雑になり、大きなコストアップに繋がるという問題がある。このような背景から、衝突体をピラーに二次衝突させない技術が待ち望まれている。
【0004】
本発明は上記事実を考慮し、車両前部に衝突した衝突体がピラーに二次衝突することを低減できる車両のフロントボディ構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明に係る車両のフロントボディ構造は、車両前後方向前側に取付けられたフードと、前記フードの車両前後方向後側で、フロントウィンドウの両側に配設されたピラーと、を有する車両のフロントボディ構造であって、車両前端角部に衝突した衝突体が、前記ピラーと衝突しないように、前記衝突体の衝突後の挙動を制御する挙動制御手段を有することを特徴とする。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載の車両のフロントボディ構造において、前記挙動制御手段が、前記フード及び前記フードの車両幅方向両側に配設されたフェンダの少なくとも一方に設けられ、前記衝突体の衝突により前記車両前端角部に荷重が入力されたときに、前記衝突体の衝突後の挙動が前記ピラーから外れる挙動となるように前記衝突体を支持する傾斜部であることを特徴とする。
【0007】
請求項3の発明は、請求項2に記載の車両のフロントボディ構造において、前記傾斜部が、前記荷重の入力により、前記フード及び前記フェンダの少なくとも一方における車両前後方向前側かつ車両幅方向外側の部位を変形させる変形規制手段により形成されることを特徴とする。
【0008】
請求項4の発明は、請求項3に記載の車両のフロントボディ構造において、前記変形規制手段が、前記フード及び前記フェンダの少なくとも一方の下方側に設けられ、前記フード及び前記フェンダの少なくとも一方の衝突後の形状を前記傾斜部が形成された形状に保持する形状保持部材であることを特徴とする。
【0009】
請求項5の発明は、請求項2から請求項4までのいずれか1項に記載の車両のフロントボディ構造において、前記傾斜部が、車両前後方向前側からの正面視において、車両幅方向外側が水平方向に対して30°〜60°の角度で、車両上下方向下側に向けて傾斜すると共に、車両上下方向上側からの平面視において、車両前後方向後側が車両前後方向に対して30°〜60°の角度で、車両幅方向外側に向けて拡がるように傾斜する形状であることを特徴とする。
【0010】
請求項6の発明は、請求項2に記載の車両のフロントボディ構造において、前記傾斜部は、前記荷重の入力により、前記フード及び前記フェンダの少なくとも一方における車両前後方向前側かつ車両幅方向外側の部位に離脱可能に装着された装着部材が離脱することによって露見されることを特徴とする。
【0011】
請求項7の発明は、請求項6に記載の車両のフロントボディ構造において、前記傾斜部は、前記フード及び前記フェンダの少なくとも一方を構成し、かつ、車両前後方向前側からの正面視において、車両幅方向外側が水平方向に対して30°〜60°の角度で、車両上下方向下側に向けて傾斜すると共に、車両上下方向上側からの平面視において、車両前後方向後側が車両前後方向に対して30°〜60°の角度で、車両幅方向外側に向けて拡がるように傾斜する傾斜面であり、前記装着部材が前記傾斜面の上面に取付けられて、前記フード及び前記フェンダの少なくとも一方の意匠面を形成し、かつ、所定以上の荷重が作用したときに前記傾斜面から外れる構成とされたことを特徴とする。
【0012】
請求項1記載の本発明によれば、車両前端角部に衝突した衝突体の衝突後の挙動を制御する挙動制御手段が設けられており、車両前端角部に衝突した衝突体が、フードの車両前後方向後側のフロントウィンドウの両側に配設されたピラーに衝突しないように、衝突体の衝突後の挙動が制御される。すなわち、挙動制御手段により、車両前端角部のフードなどに衝突した衝突体の跳ね上がり挙動がピラーから外れる挙動となるように制御される。したがって、衝突体がピラーに二次衝突する虞を低減することができる。
【0013】
請求項2記載の本発明によれば、衝突体の衝突により車両前端角部に荷重が入力されたときに、前記フード及び前記フードの車両幅方向両側に配設されたフェンダの少なくとも一方に設けられた傾斜部で衝突体を支持することにより、衝突体の衝突後の挙動がピラーから外れる挙動となるように制御される。すなわち、衝突体の跳ね上がり挙動をピラーから外れる軌道に誘導することができる。したがって、衝突体がピラーに二次衝突する虞をより確実に低減することができる。
【0014】
請求項3記載の本発明によれば、衝突体の衝突時に荷重が入力されると、フード及びフェンダの少なくとも一方における車両前後方向前側かつ車両幅方向外側の部位を変形させる変形規制手段により、当該部位に傾斜部が形成される。このため、フード及びフェンダの少なくとも一方を変形させるという簡易な構成で、フード又はフェンダに衝突した衝突体の跳ね上がり挙動をピラーから外れる軌道に誘導することができる。
【0015】
請求項4記載の本発明によれば、フード及び前記フェンダの少なくとも一方の下方側に形状保持部材が設けられており、衝突体が衝突すると、フード及びフェンダの少なくとも一方の衝突後の形状は、傾斜部が形成された形状に保持される。このため、簡易な構成で、衝突後にフード及びフェンダの少なくとも一方を所定の形状に変形させて傾斜部を形成することができる。
【0016】
請求項5記載の本発明によれば、衝突体がフード及びフェンダの少なくとも一方に衝突したときに形成される傾斜部が、車両前後方向前側からの正面視において、車両幅方向外側が水平方向に対して30°〜60°の角度で車両上下方向下側に向けて傾斜すると共に、車両上下方向上側からの平面視において、車両前後方向後側が車両前後方向に対して30°〜60°の角度で、車両幅方向外側に向けて拡がるように傾斜する形状となる。このため、簡易な構成で、衝突体の衝突時に所定の形状の傾斜部を形成することができる。
【0017】
請求項6記載の本発明によれば、衝突体の衝突時に荷重が入力されると、フード及びフェンダの少なくとも一方における車両前後方向前側かつ車両幅方向外側の部位に装着された装着部材が離脱することによって、傾斜部が露見される。この傾斜部で衝突体が支持されることにより、衝突体の衝突後の挙動が案内される。このため、装着部材を離脱させるという簡易な構成で、フード又はフェンダに衝突した衝突体の跳ね上がり挙動をピラーから外れる軌道に誘導することができる。
【0018】
請求項7記載の本発明によれば、傾斜部は、車両前後方向前側からの正面視において、車両幅方向外側が水平方向に対して30°〜60°の角度で車両上下方向下側に向けて傾斜すると共に、車両上下方向上側からの平面視において、車両前後方向後側が車両前後方向に対して30°〜60°の角度で、車両幅方向外側に向けて拡がるように傾斜する傾斜面であり、装着部材が傾斜面の上面に取付けられて、フード及びフェンダの少なくとも一方の意匠面を形成している。衝突体が衝突して所定以上の荷重が作用したときに装着部材が傾斜面から外れることにより、傾斜面が現れる。この傾斜面によって衝突体の衝突後の挙動が制御される。このため、フード及びフェンダの少なくとも一方の意匠面を害することなく、フード又はフェンダに衝突した衝突体の跳ね上がり挙動をピラーから外れる軌道に誘導することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、請求項1記載の本発明に係る車両のフロントボディ構造は、車両前端角部に衝突した衝突体がピラーに二次衝突する虞を低減することができるという優れた効果を有する。
【0020】
請求項2記載の本発明に係る車両のフロントボディ構造は、衝突体を傾斜部で支持することにより、車両前部に衝突した衝突体がピラーに二次衝突する虞をより確実に低減することができるという優れた効果を有する。
【0021】
請求項3記載の本発明に係る車両のフロントボディ構造は、フード及びフェンダの少なくとも一方を変形させるという簡易な構成で、衝突後の衝突体の跳ね上がり挙動をピラーから外れる軌道に誘導することができるという優れた効果を有する。
【0022】
請求項4記載の本発明に係る車両のフロントボディ構造は、形状保持部材を設けるという簡易な構成で、衝突後にフード及びフェンダの少なくとも一方に傾斜部を形成することができるという優れた効果を有する。
【0023】
請求項5記載の本発明に係る車両のフロントボディ構造は、簡易な構成でフード及びフェンダの少なくとも一方に傾斜部を形成することができるという優れた効果を有する。
【0024】
請求項6記載の本発明に係る車両のフロントボディ構造は、装着部材を離脱させるという簡易な構成で、フード又はフェンダに衝突した衝突体の跳ね上がり挙動をピラーから外れる軌道に誘導することができるという優れた効果を有する。
【0025】
請求項7記載の本発明に係る車両のフロントボディ構造は、フード及びフェンダの少なくとも一方の意匠面を害することなく、衝突後の衝突体の跳ね上がり挙動をピラーから外れる軌道に誘導することができるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
〔第1実施形態〕
【0027】
以下、図1〜図4を用いて、本発明に係る車両のフロントボディ構造の第1実施形態について説明する。なお、これらの図において適宜示される矢印FRは車両前方側を示しており、矢印UPは車両上方側を示しており、矢印OUTは車両幅方向外側を示している。
【0028】
図1には、本実施形態に係る車両のフロントボディ構造の全体構成が示されている。また、図2には、車両のフロントボディ構造の一部平面図が示されている。これらの図に示されるように、車両10の車両前後方向前側にはフード12が開閉可能に取付けられており、フード12の車両幅方向両側には、フェンダパネル14が車両前後方向に沿って配設されている。フード12とフェンダパネル14の見切り部付近の車両前後方向前側には、車両幅方向の両端部にヘッドランプ16が配設されている。フェンダパネル14の車両前後方向後側にはフロントピラー20が配設されており、フード12の車両前後方向後側であってフロントピラー20の間には、フロントウィンドウとしてのウィンドウシールドガラス18が配設されている。ウィンドウシールドガラス18及びフロントピラー20は、車両前後方向後側に上り勾配となるように設けられている。
【0029】
図3には、図1中の車両10のA−A線における縦断面図が示されている。この図に示されるように、フード12の車両幅方向両端部の下部には、断面が略ハット状に形成された補強用のインナパネル22が配設されている。インナパネル22の車両幅方向内側のフランジ部22Aはフード12の下部に接合されている。また、インナパネル22の車両幅方向外側のフランジ部22Bにフード12の車両幅方向端部が折り返されて、所謂へミング加工によりインナパネル22のフランジ部22Bとフード12とが接合されている。なお、図3には、車両幅方向の一方側(図1中の右側)のみが示されており、車両幅方向の他方側(図1中の左側)は省略している。
【0030】
フェンダパネル14は、前輪24(図1参照)の上方側を覆い車両側部前側の意匠面を構成する湾曲形状の外側縦壁部14Aと、この外側縦壁部14Aの上端部から下方側に段階的に傾斜するように設けられた内側縦壁部14Bと、この内側縦壁部14Bからエンジンルーム26側へほぼ水平に延出された内側下面部14Cと、を含んで構成されている。上述したフード12は、左右一対のフェンダパネル14の内側縦壁部14Bの上端部間に配設されており、エンジンルーム26を図示しないフードヒンジ回りに開閉可能となっている。
【0031】
フェンダパネル14の内側下面部14Cの下方には、車両前後方向に沿って延在するエプロンメンバ28が配設されている。エプロンメンバ28は、上方側に配置された断面が略U字状のエプロンメンバアッパ29と、下方側に配置された断面が略L字状のエプロンメンバロア30と、で閉断面構造に形成されている。エプロンメンバアッパ29の車両幅方向外側の一端部29Aは、略水平に屈曲されてエプロンメンバロア30の上面部30Aに接合されており、エプロンメンバアッパ29の車両幅方向内側の他端部29Bは、車両幅方向内側へ若干屈曲されてエプロンメンバロア30の内側縦壁部30Bに接合されている。
【0032】
フード12の下方のエンジンルーム26内には、フード12の車両前後方向前側に変形規制手段としての第1形状保持部材32が配設されている。フェンダパネル14の下方には、車両前後方向前側に変形規制手段としての第2形状保持部材34が配設されている。図1及び図2に示されるように、第1形状保持部材32及び第2形状保持部材34は、車両10に衝突体が衝突したときに、フード12及びフェンダパネル14の衝突後の形状が所定の変形形状Bとなるように規制するものである。
【0033】
図3に示されるように、第1形状保持部材32及び第2形状保持部材34は、車両前後方向前側からの正面視において、車両幅方向外側が水平方向に対して所定の角度で車両上下方向下側に向けて傾斜する傾斜面32A、34Aがそれぞれ形成されている。傾斜面32A、34Aの傾斜角度は、車両10に衝突体が衝突したときに、フード12及びフェンダパネル14の衝突後の変形形状Bが、車両前後方向前側からの正面視において、車両幅方向外側が水平方向に対して約45°の角度(図4中のθ=45°)で車両上下方向下側に向けて傾斜する形状となるように設定されている。すなわち、衝突体の衝突時にフード12及びフェンダパネル14が変形して現れた面(変形形状B)が、請求項2に記載した「傾斜部」である。本実施形態では、傾斜面34Aは、車両幅方向外側が水平方向に対して約45°の角度で車両上下方向下側に向けて傾斜する形状に設定されている。また、傾斜面32Aは、フード12にインナパネル22が設けられているため、車両幅方向外側が水平方向に対して約45°よりも大きな角度で車両上下方向下側に向けて傾斜する形状に設定されている。
【0034】
また、図2に示されるように、第1形状保持部材32及び第2形状保持部材34は、車両幅方向におけるフロントピラー20の両端部の延長線上の間に位置するように配設されている。さらに、第1形状保持部材32及び第2形状保持部材34は、車両上下方向上側からの平面視において、車両前後方向後側が車両前後方向に対して約45°の角度(図2中のθ=45°)で車両幅方向外側に向けて拡がるように傾斜する形状に形成されている(図2中のフード12及びフェンダパネル14の変形形状Bを参照)。
【0035】
また、第1形状保持部材32及び第2形状保持部材34の剛性は、フード12及びフェンダパネル14の剛性よりも大きく設定されている。第1形状保持部材32は、エンジンルーム26内の既設部品の形状を利用して構成されている。なお、エンジンルーム26内に専用の部品を設けてもよい。また、第2形状保持部材34は、エプロンメンバロア30にブラケット(図示省略)を介して取付けられている。なお、第2形状保持部材34は、ヘッドランプ16のハウジングにブラケット(図示省略)を介して取り付けてもよい。
【0036】
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0037】
衝突体が車両10のフード12及びフェンダパネル14付近に衝突すると、図4に示されるように、フード12及びフェンダパネル14が車両幅方向内側及び車両上下方向下側に凹み、フード12及びフェンダパネル14が第1形状保持部材32の傾斜面32A及び第2形状保持部材34の傾斜面34Aに沿った形状に変形する。すなわち、フード12及びフェンダパネル14の衝突後の変形形状Bが、車両前後方向前側からの正面視において、車両幅方向外側が水平方向に対して約45°の角度で車両上下方向下側に向けて傾斜する形状となる(図4中のθ=45°)。これと共に、図2に示されるように、フード12及びフェンダパネル14の衝突後の変形形状Bが、車両上下方向上側からの平面視において、車両前後方向後側が車両前後方向に対して約45°の角度で、車両幅方向外側に向けて拡がるように傾斜する形状となる(図2中のθ=45°)。すなわち、第1形状保持部材32の傾斜面32A及び第2形状保持部材34の傾斜面34Aによって、フード12及びフェンダパネル14の車両前後方向前側かつ車両幅方向外側の部位の変形が規制され、当該部位の形状が所定の変形形状Bに変形する。これによって、フード12及びフェンダパネル14に衝突した衝突体(特に衝突体の重心より少し上の部分)が車両幅方向外側に押され、衝突体の跳ね上がり挙動をフロントピラー20から外れる軌道に誘導することができる。このため、衝突体がフロントピラー20に二次衝突する虞を低減することができる。
【0038】
このような車両のフロントボディ構造では、第1形状保持部材32及び第2形状保持部材34を設けるという簡易な構成で、フード12及びフェンダパネル14の所定の部位を、衝突体の衝突後の挙動がフロントピラー20と衝突しない挙動となるような変形形状Bに変形させることができる。
【0039】
また、フード12及びフェンダパネル14の衝突後の変形形状Bは、衝突体の重心より少し上の部分が車両幅方向外側に押されるような形状に設定することが望ましい。例えば、衝突体が歩行者である場合には、歩行者の体幹部(歩行者の腰より少し上の部分)やその上方側が車両幅方向外側に押されるような形状に設定することで、歩行者の頭部を車両幅方向外側にずらすことができる。これによって、衝突体の跳ね上がり挙動をフロントピラー20から外れる軌道により確実に誘導することができる。
【0040】
〔第2実施形態〕
【0041】
図5〜図7を用いて、本発明に係る車両のフロントボディ構造の第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同一の部材には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0042】
図5及び図6に示されるように、車両50の前後方向前側にはフード52が開閉可能に取付けられており、フード52の車両幅方向両側には、フェンダパネル54が車両前後方向に沿って配設されている。フード52とフェンダパネル54の見切り部付近の車両前後方向前側には、フード52とフェンダパネル54の見切り部の意匠面を構成する装着部材56が配設されている。
【0043】
図6に示されるように、フード52の車両幅方向両端部の下部には、断面が略ハット状に形成されたインナパネル58が配設されている。インナパネル58の車両幅方向内側のフランジ部58Aはフード52の下部に接合されている。また、インナパネル58の車両幅方向外側のフランジ部58Bにフード52の車両幅方向端部が折り返されて、所謂へミング加工によりインナパネル58のフランジ部58Bとフード52とが接合されている。フード52の車両幅方向両側には、車両幅方向外側に向かって下り勾配となる傾斜部としての第1内側傾斜面52Aが形成されている。
【0044】
フェンダパネル54は、前輪24(図5参照)の上方側を覆い意匠面を構成する外側縦壁部54Aと、この外側縦壁部54Aの上部側で車両幅方向外側に向かって下り勾配となるように形成された傾斜部としての第2内側傾斜面54Dと、この第2内側傾斜面54Dの上端部から下方側に段階的に傾斜するように設けられた内側縦壁部54Bと、この内側縦壁部54Bからエンジンルーム26側へほぼ水平に延出された内側下面部54Cと、を含んで構成されている。
【0045】
フード52の第1内側傾斜面52A及びフェンダパネル54の第2内側傾斜面54Dは、ほぼ延長線上に設けられており、車両前後方向前側からの正面視において、車両幅方向外側が水平方向に対して約45°の角度で車両上下方向下側に向けて傾斜するように形成されている。また、フード52の第1内側傾斜面52A及びフェンダパネル54の第2内側傾斜面54Dは、車両上下方向上側からの平面視において、車両前後方向後側が車両前後方向に対して約45°の角度で車両幅方向外側に向けて拡がるように傾斜する形状に設定されている(図5を参照)。
【0046】
装着部材56は、略平面状の下面部56Aと、下面部56Aに対して弓型に突出する外側湾曲面56Bと、を備えており、外側湾曲面56Bは、フード52及びフェンダパネル54の意匠面を構成している。装着部材56は、下面部56Aがフード52の第1内側傾斜面52A及びフェンダパネル54の第2内側傾斜面54Dの上面に面接触するように配置されている。そして、下面部56Aに取付けられたクリップ60をフード52の第1内側傾斜面52Aに形成された孔53の周縁に係止させることにより、装着部材56がフード52の第1内側傾斜面52Aに取付けられている。この構成では、衝突体の衝突等により装着部材56に所定以上の荷重が作用したときに、クリップ60が第1内側傾斜面52Aの孔53から外れ、装着部材56が脱落するようになっている。すなわち、装着部材56の外れ荷重は、装着部材56の下方に配置されたフード52の第1内側傾斜面52A及びフェンダパネル54の第2内側傾斜面54Dの変形荷重よりも小さく設定されている。
【0047】
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0048】
車両50の装着部材56付近に衝突体が衝突して所定以上の荷重が作用すると、図7に示されるように、クリップ60が第1内側傾斜面52Aの孔53から外れ、装着部材56がフード52及びフェンダパネル54から外れる。これによって、フード52の第1内側傾斜面52A及びフェンダパネル54の第2内側傾斜面54Dが現れる。フード52の第1内側傾斜面52A及びフェンダパネル54の第2内側傾斜面54Dは、車両前後方向前側からの正面視において、車両幅方向外側が水平方向に対して約45°の角度で車両上下方向下側に向けて傾斜するように形成されると共に、車両上下方向上側からの平面視において、車両前後方向後側が車両前後方向に対して約45°の角度で車両幅方向外側に向けて拡がるように傾斜する形状となっている。このように、装着部材56が外れてフード52の第1内側傾斜面52A及びフェンダパネル54の第2内側傾斜面54Dが現れることにより、フード52及びフェンダパネル54に衝突した衝突体(特に衝突体の重心より少し上の部分)が車両幅方向外側に押され、衝突体の跳ね上がり挙動をフロントピラー20から外れる軌道に誘導することができる。このため、衝突体がフロントピラー20に二次衝突する虞を低減することができる。
【0049】
このような車両のフロントボディ構造では、装着部材56をフード52の第1内側傾斜面52A及びフェンダパネル54の第2内側傾斜面54Dに離脱可能に取付けるという簡易な構成で、衝突体の衝突時に装着部材56が離脱し、フード52及びフェンダパネル54の所定の部位に、衝突体がフロントピラー20と衝突しない挙動となるような形状(第1内側傾斜面52A及び第2内側傾斜面54D)が現れる。このため、フード52及びフェンダパネル54の意匠面を害することなく、フード52又はフェンダパネル54に衝突した衝突体の跳ね上がり挙動をピラーから外れる軌道に誘導することができる。
【0050】
なお、フード52の第1内側傾斜面52A及びフェンダパネル54の第2内側傾斜面54Dは、衝突体の重心より少し上の部分が車両幅方向外側に押されるような形状に設定することが望ましい。これによって、衝突体の跳ね上がり挙動をフロントピラー20から外れる軌道により確実に誘導することができる。
【0051】
〔実施形態の補足説明〕
【0052】
(1)上述の第1実施形態では、第1形状保持部材32及び第2形状保持部材34を設けることにより、フード12及びフェンダパネル14の衝突後の変形形状Bが、車両前後方向前側からの正面視において、車両幅方向外側が水平方向に対して約45°の角度で車両上下方向下側に向けて傾斜する形状に規制されるように構成されているが、この角度(図4中のθ)は45°に限定されず、30°〜60°の範囲で設定可能である。さらに、フード12及びフェンダパネル14の衝突後の変形形状Bが、車両上下方向上側からの平面視において、車両前後方向後側が車両前後方向に対して約45°の角度で車両幅方向外側に向けて拡がるように傾斜する形状に規制されるように構成されているが、この角度(図2中のθ)は45°に限定されず、30°〜60°の範囲で設定可能である。このような角度に設定することにより、フード12又はフェンダパネル14に衝突した衝突体の跳ね上がり挙動をフロントピラー20から外れる軌道に誘導することができる。
【0053】
(2)上述の第2実施形態では、フード52の第1内側傾斜面52A及びフェンダパネル54の第2内側傾斜面54Dは、車両前後方向前側からの正面視において、車両幅方向外側が水平方向に対して約45°の角度で車両上下方向下側に向けて傾斜するように形成されているが、この角度は45°に限定されず、30°〜60°の範囲で設定可能である。さらに、フード52の第1内側傾斜面52A及びフェンダパネル54の第2内側傾斜面54Dは、車両上下方向上側からの平面視において、車両前後方向後側が車両前後方向に対して約45°の角度で車両幅方向外側に向けて拡がるように傾斜する形状に設定されているが、この角度は45°に限定されず、30°〜60°の範囲で適宜に設定可能である。このような角度に設定することにより、フード52又はフェンダパネル54に衝突した衝突体の跳ね上がり挙動をフロントピラー20から外れる軌道に誘導することができる。
【0054】
(3)上述の第1実施形態では、フード12及びフェンダパネル14の変形させる部位は、その周囲の変形させない部位と剛性がほぼ同じであるが、フード12及びフェンダパネル14の変形させる部位の剛性を、その周囲の部位の剛性より弱く設定してもよい。例えば、フード12のインナパネル22の深さを浅くする等により、フード12の変形させる部位を、その周囲の部位の剛性よりも弱くすることができる。
【0055】
(4)上述の第2実施形態では、装着部材56をフード52の第1内側傾斜面52Aにクリップ60により接合したが、これに限らず、他の接合手段を用いてもよい。例えば、装着部材56をフード52にボルトとナットで接合すると共に、ボルト貫通孔をボルトの軸部よりも大きくしてボルトを外れやすくする構成や、装着部材56をフード52に細いリベットで接合する構成としてもよい。すなわち、衝突体の衝突により所定以上の荷重が作用したときに、装着部材56が外れる構造であればよい。
【0056】
(5)上述の第1実施形態、第2実施形態では、衝突後のフードとフェンダパネルの両方の部位を変形させ、又は、衝突後のフードとフェンダパネルの両方の部位の装着部材が離脱する(外れる)ように設定しているが、これらに限定されず、フード及びフェンダパネルの少なくとも一方を変形又は離脱させる構成であってもよい。車両の変形又は離脱させる部位は、フロントピラーの車両幅方向両端部の延長線上の間に位置する部位であることが好ましく(図2参照)、車両の形状や大きさによって適切な部位を変形又は離脱させるように構成することができる。フード及びフェンダパネルの少なくとも一方の適切な部位を変形又は離脱させることにより、フード又はフェンダパネルに衝突した衝突体の跳ね上がり挙動をフロントピラーから外れる軌道により確実に誘導することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】第1実施形態に係る車両のフロントボディ構造が適用された車両の前部を示す斜視図である。
【図2】第1実施形態に係る車両のフロントボディ構造が適用された車両を示す平面図である。
【図3】図1中のA−A線に沿った車両の断面を示す縦断面図である。
【図4】衝突体が衝突した後のフード及びフェンダパネルの変形状態を示す縦断面図である。
【図5】第2実施形態に係る車両のフロントボディ構造が適用された車両の前部を示す斜視図である。
【図6】第2実施形態に係る車両のフロントボディ構造が適用された車両を示す縦断面図である。
【図7】衝突体が衝突した後のフード及びフェンダパネルの変形状態を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0058】
10 車両
12 フード
14 フェンダパネル(フェンダ)
18 ウィンドウシールドガラス(フロントウィンドウ)
20 フロントピラー(ピラー)
32 第1形状保持部材(変形規制手段)
32A 傾斜面
34 第2形状保持部材(変形規制手段)
34A 傾斜面
50 車両
52 フード
52A 第1内側傾斜面(傾斜部)
54 フェンダパネル(フェンダ)
54D 第2内側傾斜面(傾斜部)
56 装着部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前後方向前側に取付けられたフードと、
前記フードの車両前後方向後側で、フロントウィンドウの両側に配設されたピラーと、を有する車両のフロントボディ構造であって、
車両前端角部に衝突した衝突体が、前記ピラーと衝突しないように、前記衝突体の衝突後の挙動を制御する挙動制御手段を有することを特徴とする車両のフロントボディ構造。
【請求項2】
前記挙動制御手段が、
前記フード及び前記フードの車両幅方向両側に配設されたフェンダの少なくとも一方に設けられ、前記衝突体の衝突により前記車両前端角部に荷重が入力されたときに、前記衝突体の衝突後の挙動が前記ピラーから外れる挙動となるように前記衝突体を支持する傾斜部であることを特徴とする請求項1に記載の車両のフロントボディ構造。
【請求項3】
前記傾斜部が、
前記荷重の入力により、前記フード及び前記フェンダの少なくとも一方における車両前後方向前側かつ車両幅方向外側の部位を変形させる変形規制手段により形成されることを特徴とする請求項2に記載の車両のフロントボディ構造。
【請求項4】
前記変形規制手段が、
前記フード及び前記フェンダの少なくとも一方の下方側に設けられ、前記フード及び前記フェンダの少なくとも一方の衝突後の形状を前記傾斜部が形成された形状に保持する形状保持部材であることを特徴とする請求項3に記載の車両のフロントボディ構造。
【請求項5】
前記傾斜部が、
車両前後方向前側からの正面視において、車両幅方向外側が水平方向に対して30°〜60°の角度で、車両上下方向下側に向けて傾斜すると共に、
車両上下方向上側からの平面視において、車両前後方向後側が車両前後方向に対して30°〜60°の角度で、車両幅方向外側に向けて拡がるように傾斜する形状であることを特徴とする請求項2から請求項4までのいずれか1項に記載の車両のフロントボディ構造。
【請求項6】
前記傾斜部は、
前記荷重の入力により、前記フード及び前記フェンダの少なくとも一方における車両前後方向前側かつ車両幅方向外側の部位に離脱可能に装着された装着部材が離脱することによって露見されることを特徴とする請求項2に記載の車両のフロントボディ構造。
【請求項7】
前記傾斜部は、
前記フード及び前記フェンダの少なくとも一方を構成し、かつ、車両前後方向前側からの正面視において、車両幅方向外側が水平方向に対して30°〜60°の角度で、車両上下方向下側に向けて傾斜すると共に、車両上下方向上側からの平面視において、車両前後方向後側が車両前後方向に対して30°〜60°の角度で、車両幅方向外側に向けて拡がるように傾斜する傾斜面であり、
前記装着部材が前記傾斜面の上面に取付けられて、前記フード及び前記フェンダの少なくとも一方の意匠面を形成し、かつ、所定以上の荷重が作用したときに前記傾斜面から外れる構成とされたことを特徴とする請求項6に記載の車両のフロントボディ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−190429(P2009−190429A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−30125(P2008−30125)
【出願日】平成20年2月12日(2008.2.12)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】