説明

車両のボディ構造

【課題】本発明は、シール部材上に水が溜まらないようにして、凍結によるスライドドアとウェザーストリップ等との貼り付きを防止することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る車両のボディ構造は、主ウェザーストリップ30とシール部材50とを備え、乗降口がスライドドアにより閉じられたときに、主ウェザーストリップ30及びシール部材50がスライドドアとボディ間に挟まれて弾性変形する構成の車両のボディ構造であって、主ウェザーストリップ30の前側の縦辺部30fには、センターピラー2pにより縦辺部30fに導かれ、その縦辺部30fを伝って流れる水の流れ方向を変化させて、その水を落下させる第1ダム部36が形成されており、シール部材50には、第1ダム部36の働きで落下する水と、センターピラー2pを伝って流れる水とを通すための開口57が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のボディに形成された乗降口の開口周縁に全周に亘って取付けられた主ウェザーストリップと、その主ウェザーストリップの下方で車両前後方向に延びるように取付けられたシール部材とを備え、前記乗降口がスライドドアによって閉じられる構成の車両のボディ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の走行中に路面から伝わるノイズを減衰させるため、主ウェザーストリップの下方に帯状のシール部材を車幅方向に延びるように取付けることが行われている。しかし、例えば、屋根から融雪水等がセンターピラー及び主ウェザーストリップを伝って流れてくると、その融雪水等がシール部材の上に溜まって凍結し、氷が成長することで、スライドドアが主ウェザーストリップやシール部材に貼り付くことがある。
特許文献1には、融雪水等がフロントピラー及びウェザーストリップに沿って下端位置まで流下しないように、ウェザーストリップの途中にダムを設け、融雪水等をフロントピラー等の途中からフロントドアの外側に落下させる技術が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開平2008−7010号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した構成により、融雪水等の落下位置を車両前後方向において調整することが可能である。しかし、シール部材は車両前後方向に延びるように広い範囲に設けられているため、融雪水等の落下位置を調整したとしてもシール部材上に融雪水等が溜まらないようにするのは難しい。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、シール部材上に水が溜まらないようにして、凍結によるスライドドアとウェザーストリップ等との貼り付きを防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題は、各請求項の発明によって解決される。
請求項1の発明は、ボディのセンターピラーの後方に形成された乗降口の開口周縁に全周に亘って取付けられた主ウェザーストリップと、その主ウェザーストリップの下方で車両前後方向に延びるように取付けられたシール部材とを備え、前記乗降口がスライドドアにより閉じられたときに、前記主ウェザーストリップ及びシール部材が前記スライドドアと前記ボディ間に挟まれて弾性変形する構成の車両のボディ構造であって、前記主ウェザーストリップの前側の縦辺部には、前記センターピラーにより前記縦辺部に導かれ、その縦辺部を伝って流れる水の流れ方向を変化させて、その水を落下させる第1ダム部が形成されており、前記シール部材には、前記第1ダム部の働きで落下する水と、前記センターピラーを伝って流れる水とを通すための開口が形成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明によると、主ウェザーストリップの前側の縦辺部には、その縦辺部を伝って流れる水の流れ方向を変化させて、その水を落下させる第1ダム部が形成されている。このため、例えば、融雪水等が屋根からセンターピラーを伝って主ウェザーストリップの縦辺部まで導かれても、その縦辺部を伝って流れる水は第1ダム部の位置で落下するようになる。即ち、前記水は縦辺部を伝って主ウェザーストリップの下辺部に回り込み難くなる。
さらに、シール部材には、第1ダム部の働きで落下する水と、センターピラーを伝って流れる水とを通すための開口が形成されている。このため、第1ダム部から落下した水、及びセンターピラーを伝って流れる水はシール部材の開口を通って路面上に落とされる。
これにより、主ウェザーストリップの下辺部とシール部材との間に水が溜まって凍結するような不具合がなく、凍結によるスライドドアの貼り付きを防止できる。
【0008】
請求項2の発明によると、第1ダム部は、主ウェザーストリップの縦辺部から山形に突出するように形成されていることを特徴とする。
このため、容易に第1ダム部を形成できるようになる。
請求項3の発明によると、シール部材の開口の後端縁と主ウェザーストリップの下辺部との間には板状の第2ダム部が配置されており、前記第2ダム部が前記主ウェザーストリップの前側の縦辺部を伝って前記下辺部に回り込もうとする水の流れ方向を変化させて、前記シール部材の開口に導く構成であることを特徴とする。
このため、第1ダム部の近傍を通過した水が主ウェザーストリップの下辺部に回り込もうとしても、その水が第2ダム部の働きでシール部材の開口に導かれる。即ち、第1ダム部と第2ダム部の二段階で水の流れ方向を変化させる構成のため、シール部材上にさらに水が溜まり難くなる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、主ウェザーストリップの下辺部とシール部材との間に溜まった水が凍結し、スライドドアが主ウェザーストリップやシール部材に貼り付くような不具合を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
[実施形態1]
以下、図1から図9に基づいて本発明における車両のボディ構造について説明する。本実施形態はスライドドアを備える車両のボディ構造に関するもので、図1は前記車両のフロントドア、スライドドアの部分を表す側面図、図2はスライドドアにより開閉される乗降口回りに取付けられたウェザーストリップの配置を表す側面図である。図3から図9は、図1、図2の各部側面図、斜視図、及び縦断面図を表している。
なお、図中の前後左右及び上下は車両の前後左右及び上下に対応している。
【0011】
<車両のボディ2及びスライドドア4の構造概要ついて>
図1(A)に示すように、車両のボディ2の左側面には扉状のフロントドア3とスライドドア4とが取付けられている。ここで、図1(B)は、図1(A)のB部拡大図を表している。
スライドドア4は、図1に示す前端位置から外側後方にスライドすることで、後部乗降口20(図2参照)を開放できるように構成されている。また、スライドドア4が閉じられてストッパ(図示省略)により前端位置に保持された状態では、スライドドア4の上部とボディ2のルーフサイド部2rの間には一定幅の隙間である見切り部Mが形成される。また、スライドドア4の前端縁とフロントドア3の後端縁との間にも見切り部Mが形成される。ここで、スライドドア4の前端縁には、フロントドア3の後端縁との見切り部Mを塞げるように、図6(B)に示すように、見切りシール4sが取付けられている。
なお、図6(B)は図1(B)のVIB-VIB矢視断面図を表している。
【0012】
前記スライドドア4により開閉されるボディ2の後部乗降口20は、図2に示すように、略角形に形成されており、その後部乗降口20の周縁部にフランジ板部23が形成されている。そして、前記フランジ板部に主ウェザーストリップ30が全周に亘って取付けられている。また、主ウェザーストリップ30の上方には、車両前後方向に延びる庇状の上部ウェザーストリップ40が取付けられている。さらに、主ウェザーストリップ30の下方には、同じく車両前後方向に延びるようにシール部材50が取付けられている。
【0013】
ここで、図2のIVA部の拡大斜視図が図4(A)に示されており、図2のVIIA部の拡大斜視図が図7(A)に示されている。また、図1、図2のVA-VA矢視断面図が図5(A)に、VB-VB矢視断面図が図5(B)に示されている。さらに、図1、図2のVIA-VIA矢視断面図が図6(A)に、VIB-VIB矢視断面図が前述のように図6(B)に示されている。
【0014】
前記ボディ2のルーフサイド部2rには、図4、図5等に示すように、スライドドア4が閉じられたときに、そのスライドドア4の上端部裏側が非接触状態で収納される窪み部10が形成されている。さらに、前記窪み部10には、後部乗降口20の真上位置に、図5(A)に示すように、スライドドア4の上部ローラ(図示省略)を支持する上部レール12が収納されるレール用凹部14が形成されている。そして、前記レール用凹部14の上側で、前記窪み部10の端縁部分に沿って上部ウェザーストリップ40が取付けられている。
【0015】
<上部ウェザーストリップ40について>
上部ウェザーストリップ40は、例えば、見切り部Mから流れ込んだ融雪水等が主ウェザーストリップ30の上辺部30u上に溜まらないようにするためのシール材である。上部ウェザーストリップ40は、図3(A)の全体側面図に示すように、窪み部10におけるレール用凹部14の上側部分に取付けられる本体部42と、その本体部42から前方に突出する前側突出板部43と、前記本体部42から後方に突出する後側突出板部45とから構成されている。
上部ウェザーストリップ40の本体部42は、図3(B)、図5(A)に示すように、グリップ部421とシール部424とから構成されている。ここで、図3(B)は図3(A)のB-B矢視断面図を表している。グリップ部421は、図5(A)に示すように、レール用凹部14の開口近傍に車両前後方向に延びるように形成されたフランジ板部14fに嵌められて上部ウェザーストリップ40をボディ2のルーフサイド部2rに固定する部分である。グリップ部421は、断面U字形をした板バネ状の骨材421xが埋め込まれた硬い微発泡ゴム材により構成されている。シール部424は、軟らかい高発泡ゴム材により形成されており、スライドドア4が閉じられたときにそのスライドドア4に押圧されて溝状に弾性変形し、前記スライドドア4とボディ2のルーフサイド部2rとの間をシールする。
ここで、上部ウェザーストリップ40の本体部42は、押出し成形装置(図示省略)により図3(B)に示す断面形状に成形される。
【0016】
上部ウェザーストリップ40の前側突出板部43は、図3(A)、図4(A)に示すように、円弧状板部431とシール前端部434とから構成されており、前記円弧状板部431が前記本体部42のグリップ部421に連続するように構成されている。また、シール前端部434が前記本体部42のシール部424に連続するように構成されている。
前側突出板部43の円弧状板部431は、スライドドア4が閉じられる際に、図6(A)に示すように、ボディ2の窪み部10の前部とスライドドア4の前部裏側との間に挟まれる部分であり、窪み部10の端縁部分に沿って取付けられる。円弧状板部431は、図3(C)、図4(A)に示すように、樹脂製の板状骨材431xの回りを型成形されたゴム板材431yで覆う構成であり、板状骨材431xの長手方向における二箇所にクリップ432が固定されている。ここで、図3(C)は、図3(A)のC−C矢視断面図を表している。
前記クリップ432は、ボディ2の窪み部10の前部所定位置に形成された貫通孔(図示省略)に挿入されることで、前記貫通孔の周縁と弾性力により係合する。これにより、前側突出板部43の円弧状板部431は、ボディ2の窪み部10の前部所定位置に確実に固定される。
【0017】
前側突出板部43のシール前端部434は、図4(A)(B)に示すように、円弧状板部431よりも下方に突出して前端側で最も低くなるように形成されている。このため、見切り部Mから流れ込んだ融雪水等(以下、水という)が溝状のシール部424で受けられると、そのシール部424を前方に流れ、シール前端部434の前端側から流れ落ちるようになる。シール前端部434の前端には、その下端部の位置に板状のリップ部435が形成されている。そして、前記リップ部435がボディ2のセンターピラー2pの稜線部分Rに面接触している。
センターピラー2pは、図2に示すように、前部乗降口8と後部乗降口20との間に形成された支柱であり、図6(B)に示すように、横断面形状が略台形状に形成されている。そして、前記シール前端部434のリップ部435は、自身の弾性力でセンターピラー2pの稜線部分Rに面接触している。これにより、シール部424を前方に流れて、前記シール前端部434の前端側から流れ落ちる水は、リップ部435を伝ってセンターピラー2pの稜線部分Rに導かれ、前記センターピラー2pを伝って下方に流れるようになる。
【0018】
上部ウェザーストリップ40の後側突出板部45は、図3(D)に示すように、固定板部451とシール後端部454とから構成されており、前記固定板部451が前記本体部42のグリップ部421に連続するように構成されている。また、シール後端部454が前記本体部42のシール部424に連続するように構成されている。
後側突出板部45の固定板部451は、図3(D)に示すように、樹脂製の板状骨材451xの回りを型成形されたゴム板材451yで覆う構成であり、板状骨材451xにクリップ452が長手方向に一定寸法だけ変位可能な状態で取付けられている。
前記クリップ452は、ボディ2の窪み部10の後部所定位置に形成された貫通孔(図示省略)に挿入されることで、前記貫通孔の周縁と弾性力により係合する。これにより、後側突出板部45の固定板部451は、ボディ2の窪み部10の後部所定位置に確実に固定される。ここで、クリップ452は長手方向に一定寸法だけ変位可能な構成のため、前記貫通孔が車両前後方向に若干位置ずれしていても、前記クリップ452を前記貫通孔に係合できるようになる。
【0019】
<主ウェザーストリップ30について>
主ウェザーストリップ30は、図2に示すように、上辺部30u、下辺部30d、前側縦辺部30f、及び後側縦辺部30bにより、後部乗降口20の形状に合わせて略角枠状に形成されている。主ウェザーストリップ30は、図5から図7等に示すように、グリップ部34と中空シール部35とから構成されている。グリップ部34は、後部乗降口20の周縁部に形成されたフランジ板部23に嵌め込まれる部分であり、断面U字形をした板バネ状の骨材(図示省略)が埋め込まれた硬い微発泡ゴム材により構成されている。グリップ部34は、図7(A)に示すように、そのフランジ板部23を表裏から挟む表側挟持板34fと裏側挟持板34uとを備えている。
中空シール部35は、軟らかい高発泡ゴム材により形成されており、スライドドア4が閉じられたときに、略楕円状に弾性変形してスライドドア4と後部乗降口20の周縁部との間をシールする。
【0020】
主ウェザーストリップ30の前側縦辺部30fの下部には、図7(A)に示すように、グリップ部34の表側挟持板34fに第1ダム部36が形成されている。第1ダム部36は、センターピラー2pからグリップ部34の表側挟持板34fを伝って下方に流れる水が主ウェザーストリップ30の下辺部30d側に回りこまないようにするための突起である。第1ダム部36は、図7(A)に示すように、グリップ部34の表側挟持板34fの前端面から前方に突出する略直角三角形状に形成されている。そして、前記直角三角形の斜辺に相当する第1ダム部36の傾斜面36kの上端がグリップ部34の表側挟持板34fの前端面と連続するように形成されている。このため、グリップ部34の表側挟持板34fの前端面を伝って下方に流れる水は、その前端面から第1ダム部36の傾斜面36kに導かれ、前記第1ダム部36の頂点Pの位置から落下するようになる。
また、グリップ部34の表側挟持板34fの裏側には、後部乗降口20の周縁のフランジ板部23を伝って下方に流れる水を前記第1ダム部36の位置で落下させる裏側ダム(図示省略)が設けられている。
【0021】
<シール部材50について>
シール部材50は、フロントドア3により開閉される前部乗降口8の下方に取付けられた前側シール部材(図示省略)と、スライドドア4に開閉される後部乗降口20の下方に取付けられた後側シール部材50(以下、シール部材50という)とから構成されている。シール部材50は、車両の走行中に路面から車室内に伝わるノイズを減衰させるための部材であり、図7(A)、図8(B)等に示すように、ボディ2のロッカ部2qの側面に取付けられる。シール部材50の取付けは、ロッカ部2qの側面に形成された貫通孔2a(図7(B)参照)に挿入接続されるクリップ52により行われる。シール部材50は、図8(B)に示すように、縦壁部53と上側壁部54と下側壁部55とが相互に端縁部分で接合されることにより中空閉断面状に形成される。シール部材50の縦壁部53は、微発泡ゴム材により硬く形成されており、その縦壁部53がクリップ52によりボディ2のロッカ部2qの側面に固定される。上側壁部54と下側壁部55とは、軟らかい高発泡ゴム材により横断面略円弧形に成形されており、スライドドア4の押圧力で、図9(A)に示すように、山形に変形するように構成されている。
【0022】
シール部材50の前端部には、縦壁部53の延長線上に固定フランジ部56が形成されており、その固定フランジ部56が、図7(B)に示すように、前側シール部材(図示省略)の後端部50fと共にロッカ部2qの側面にクリップ52により固定される。
また、シール部材50には、図7(A)に示すように、そのシール部材50がロッカ部2qの側面に取付けられた状態で、主ウェザーストリップ30の第1ダム部36の真下位置に配置される切欠き部57が形成されている。前記切欠き部57は、平面略台形状でロッカ部2q側が開放するように形成されており、前記第1ダム部36の真下に前記切欠き部57の中央が位置するように配置されている。これにより、第1ダム部36の位置で落下した水は、矢印に示すように切欠き部57を通過して路面上に落ちるようになる。また、センターピラー2pを伝って流れ落ちる水も切欠き部57を通過して路面上に落ちるようになる。
即ち、シール部材50の切欠き部57が本発明におけるシール部材の開口に相当する。
【0023】
シール部材50には、切欠き部57の後側に、そのシール部材50の上面側から主ウェザーストリップ30の下辺部30dまで延びる板状の第2ダム部58が設けられている。第2ダム部58は、図7(A)に示すように、主ウェザーストリップ30の縦辺部30fを伝って下辺部30dに回り込もうとする水の流れ方向を変化させてシール部材50の切欠き部57まで導く部分である。このため、第2ダム部58の先端部分は、図7(A)、図9(A)(B)に示すように、主ウェザーストリップ30の下辺部30dを構成するグリップ部34の表側挟持板34fの下端面に面接触できるように構成されている。また、第2ダム部58の裏側は例えば接着剤等によりロッカ部2qの表面に接合される。
ここで、図9(A)は、図7(A)のIXA-IXA断面図を表しており、図9(B)は、図7(A)のIXB-IXB断面図を表している。
第2ダム部58には、図7(A)、図9(B)に示すように、その第2ダム部58の前端側にガイド面58eがロッカ部2qの表面に対して直角に形成されており、そのガイド面58eが切欠き部57の後端壁面57xと連続するように構成されている。これにより、主ウェザーストリップ30の縦辺部30fにおけるグリップ部34の表側挟持板34fを伝って下辺部30d側に回り込もうとする水は、矢印に示すようにガイド面58eによってシール部材50の切欠き部57の位置まで導かれ、路面上に落下するようになる。
【0024】
<本実施形態に係る車両のボディ構造の働きについて>
本実施形態に係る車両のボディ構造では、スライドドア4が後部乗降口20を閉じる位置(前端位置)まで移動すると、図6(A)に示すように、ボディ2のルーフサイド部2rに形成された窪み部10の前部とスライドドア4の前部裏側との間に上部ウェザーストリップ40の前側突出板部43が挟まれるようになる。また、図6(B)に示すように、スライドドア4の前端縁とフロントドア3の後端縁との間に見切りシール4sが挟まれるようになる。
これにより、スライドドア4が強く閉じられることで、例えば、ゴム製のストッパ当接部材(図示省略)が弾性変形し、スライドドア4が仮に閉位置から前方にオーバランした場合でも、前記スライドドア4がボディ2のルーフサイド部2rに当接したり、フロントドア3に当接するようなことはない。
【0025】
また、例えば、屋根上の雪が解けることによる融雪水(水)が、図4(A)(B)に示すように、ボディ2のルーフサイド部2rとスライドドア4との見切り部Mから流入しも、それらの水が上部ウェザーストリップ40のシール部424で受けられるため、主ウェザーストリップ30上に溜まることがない。また、上部ウェザーストリップ40とスライドドア4との接触部分に水が溜まることもない。さらに、上部ウェザーストリップ40のシール部424で受けられた水は前方に流れ、シール前端部434からリップ部435を介してセンターピラー2pの稜線部分Rに導かれる。これにより、前記水は、前記センターピラー2pの側面を伝って下方に流れ、一部が主ウェザーストリップ30の前側縦辺部30fのグリップ部34を伝って流れるようになる。
このようにして、センターピラー2pを伝って流れ落ちる水は、図7(A)に示すように、シール部材50の切欠き部57を通過して路面上に落ちる。さらに、主ウェザーストリップ30のグリップ部34を伝って下方に流れる水は第1ダム部36の位置で落下して切欠き部57を通過し、路面上に落ちるようになる。
また、第1ダム部36の近傍を通過して引き続きグリップ部34を伝って流れる水は、第2ダム部58のガイド面58eによって切欠き部57に導かれ、路面上に落下する。
これにより、主ウェザーストリップ30の下辺部30dとシール部材50との間に水が溜まって凍結するようなことがない。
【0026】
<本実施形態に係る車両のボディ構造の長所について>
本実施形態に係る車両のボディ構造によると、主ウェザーストリップ30の前側縦辺部30fには、その縦辺部30fのグリップ部34を伝って流れる水の流れ方向を変化させて、その水を落下させる第1ダム部36が形成されている。このため、融雪水等が屋根からセンターピラー2pを伝って主ウェザーストリップ30の縦辺部30fまで導かれ、その縦辺部30fのグリップ部34を伝って流れる水は第1ダム部36の位置で落下するようになる。即ち、前記水は縦辺部30fを伝って主ウェザーストリップ30の下辺部30dに回り込み難くなる。
さらに、シール部材50には、第1ダム部36の位置で落下する水と、センターピラー2pを伝って流れる水とを通すための切欠き部57(開口)が形成されている。このため、第1ダム部36から落下した水と、センターピラー2pを伝って流れる水はシール部材50の切欠き部57(開口)を通って路面上に落とされる。
これにより、主ウェザーストリップ30の下辺部30dとシール部材50との間に水が溜まって凍結するような不具合がなく、凍結によるスライドドアの貼り付きを防止できる。
【0027】
また、第1ダム部36は、主ウェザーストリップ30の縦辺部30fから山形に突出するように形成されているため、第1ダム部の成形が容易になる。
また、シール部材50の切欠き部57(開口)の後端縁には、そのシール部材50の上面側から主ウェザーストリップ30の下辺部30dまで延びる板状の第2ダム部58が形成されている。そして、第2ダム部58が主ウェザーストリップ30の前側の縦辺部30fを伝ってその主ウェザーストリップ30の下辺部30dに回り込もうとする水の流れ方向を変化させて、シール部材50の切欠き部57(開口)に導くようにしている。このため、第1ダム部の近傍を通過した水が主ウェザーストリップ30の下辺部30dに回り込もうとしても、その水が第2ダム部58の働きでシール部材50の切欠き部57(開口)に導かれる。これより、さらにシール部材50上に水が溜まり難くなる。
【0028】
<変更例>
ここで、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本実施形態では、第1ダム部36を略直角三角形状に突出形成する例を示したが、第1ダム部36の形状は適宜変更可能である。例えば、第1ダム部36の傾斜面36kを凸円弧面状(扇形)に形成したり、あるいは前記傾斜面36kを凹円弧面状に形成することも可能である。また、前記第1ダム部36をグリップ部34の表側挟持板34fに対してフランジ状に形成することも可能である。
さらに、本実施形態では、第2ダム部58をシール部材50の切欠き部57の後端縁に形成する例を示したが、主ウェザーストリップ30の下辺部30d側に形成することも可能である。また、第2ダム部58を単独で形成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態1に係るボディ構造を備える車両のフロントドア、スライドドアの部分を表す側面図(A図)であり、A図のB矢視部拡大図である(B図)。
【図2】スライドドアにより開閉される後部乗降口の回りに取付けられたウェザーストリップの配置を表す側面図である。
【図3】上部ウェザーストリップの全体側面図(A図)、A図のB-B矢視断面図(B図)、A図のC-C矢視断面図(C図)、及びA図のD-D矢視断面図(D図)である。
【図4】図2のIVA部の拡大斜視図(A図)であり、A図のB-B矢視断面図(B図)である。
【図5】図1、図2のVA-VA矢視断面図(A図)、図1、図2のVB-VB矢視断面図(B図)である。
【図6】図1、図2のVIA-VIA矢視断面図(A図)、図1、図2のVIB-VIB矢視断面図(B図)である。
【図7】図2のVIIA部の拡大斜視図(A図)であり、A図のB部拡大斜視図(B図)である。
【図8】シール部材の前部における平面図(A図)、A図のB-B矢視断面図(B図)である。
【図9】図7(A)のIXA-IXA矢視断面図(A図)、図7(A)のIXB-IXB矢視断面図(B図)である。
【符号の説明】
【0030】
2・・・・・ボディ
2p・・・・センターピラー
4・・・・・スライドドア
20・・・・後部乗降口(乗降口)
30・・・・主ウェザーストリップ
36・・・・第1ダム部
36k ・・・傾斜面
50・・・・シール部材
57・・・・切欠き部(開口)
57x ・・・後端壁面
58・・・・第2ダム部
58e ・・・ガイド面


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボディのセンターピラーの後方に形成された乗降口の開口周縁に全周に亘って取付けられた主ウェザーストリップと、その主ウェザーストリップの下方で車両前後方向に延びるように取付けられたシール部材とを備え、前記乗降口がスライドドアにより閉じられたときに、前記主ウェザーストリップ及びシール部材が前記スライドドアと前記ボディ間に挟まれて弾性変形する構成の車両のボディ構造であって、
前記主ウェザーストリップの前側の縦辺部には、前記センターピラーにより前記縦辺部に導かれ、その縦辺部を伝って流れる水の流れ方向を変化させて、その水を落下させる第1ダム部が形成されており、
前記シール部材には、前記第1ダム部の働きで落下する水と、前記センターピラーを伝って流れる水とを通すための開口が形成されていることを特徴とする車両のボディ構造。
【請求項2】
請求項1に記載された車両のボディ構造であって、
第1ダム部は、主ウェザーストリップの縦辺部から山形に突出するように形成されていることを特徴とする車両のボディ構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2のいずれかに記載された車両のボディ構造であって、
前記シール部材の開口の後端縁と主ウェザーストリップの下辺部との間には板状の第2ダム部が配置されており、
前記第2ダム部が前記主ウェザーストリップの前側の縦辺部を伝って前記下辺部に回り込もうとする水の流れ方向を変化させて、前記シール部材の開口に導く構成であることを特徴とする車両のボディ構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−255673(P2009−255673A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−105627(P2008−105627)
【出願日】平成20年4月15日(2008.4.15)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【出願人】(000219705)東海興業株式会社 (147)
【出願人】(000123549)化成工業株式会社 (11)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】