説明

車両のリヤフレーム構造

【課題】車体後部に備えたバッテリー類の電装品を保護することができる車両のリヤフレーム構造を提供する。
【解決手段】車両のリヤフレーム構造10は、左右のリヤフレーム11,12の後端部にそれぞれ設けられた左右のエクステンション43,44と、左右のエクステンション43,44に架け渡されたバンパービーム45と、バンパービーム45の下方で、かつ左右のリヤフレーム11,12の後端下部に設けられた左右のガセット46,47と、左右のガセット46,47に架け渡されることで、バンパービーム45の下方で、かつバンパービーム45の前方に設けられたクロスメンバー48とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右のリヤフレーム間にハイブリッド自動車用のバッテリー類を搭載した車両のリヤフレーム構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の後部フレーム構造のなかには、リヤサイドフレームの後端上部にガセットを設けるとともに、ガセットの配置位置に対応するリヤサイドフレームの断面内に隔壁を設けることで、後面衝突に対するリヤサイドフレームの剛性を高めたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2006−88886公報
【0003】
この車両の後部フレーム構造は、後面衝突により、リヤサイドフレームに車体後方から荷重が作用した場合、ガセットがリヤサイドフレームの座屈を防ぐ部材として機能する。
よって、リヤサイドフレームの後端部のうち、下部が座屈を開始する。下部の座屈が隔壁に到達すると、隔壁の前後の部位が上方に移動する。
これにより、リヤサイドフレームの屈曲部に作用する荷重の向きを、屈曲部に沿わせる方向に変化させて、リヤサイドフレームの剛性を高めることができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ハイブリッド自動車は、モータに電圧を供給する大型バッテリーを備えている。この大型バッテリーは車体後部に取り付けることが考えられる。
そこで、リヤサイドフレームに車体後方から荷重が作用した場合、大型バッテリーを保護するために、車両の後部フレーム構造の剛性をさらに高めることが好ましい。
【0005】
本発明は、車体後部に備えたバッテリー類の電装品を保護することができる車両のリヤフレーム構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、左右のリヤフレーム間にリヤフロアパネルを設け、リヤフロアパネルの収納凹部にハイブリッド自動車のバッテリー類の電装品を搭載した車両のリヤフレーム構造であって、前記左右のリヤフレームの後端部にそれぞれ設けられた左右のエクステンションと、前記左右のエクステンションに架け渡されたバンパービームと、前記バンパービームの下方で、かつ前記左右のリヤフレームの後端下部にそれぞれ設けられた左右のガセットと、それぞれのガセットに架け渡されることで、前記バンパービームの下方で、かつ前記バンパービームの前方に設けられたクロスメンバーと、を備えたことを特徴とする。
【0007】
請求項2は、前記クロスメンバーの前方において、前記左右のリヤフレームに補強部材が架け渡され、前記補強部材の中央部が前記クロスメンバーに向けて突出するように湾曲状に形成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る発明では、左右のリヤフレームにエクステンションに介してバンパービームを架け渡した。よって、バンパービームを左右のリヤフレームから車体後方へ向けて所定間隔離して設けることができる。
また、左右のガセットにクロスメンバーを架け渡すことで、クロスメンバーをバンパービームの下方で、かつ、バンパービームの前方に設けた。
【0009】
よって、車体後面に軽衝突が発生した場合、後面衝突による軽荷重がバンパービームに作用する。
作用した軽荷重はバンパービームを経て左右のエクステンションに伝えられる。バンパービームを変形させるとともに、エクステンションを軸方向に潰す(座屈させる)ことで軽荷重の一部を吸収する。
残りの荷重は、左右のリヤフレームに伝えられ、左右のリヤフレームで支えられる。
【0010】
これにより、車体後面に軽荷重が作用した場合に、車体後部に備えたバッテリー類の電装品を、バンパービームおよび左右のエクステンションで確実に保護することができるという利点がある。
【0011】
一方、車体後面に重衝突が発生した場合、後面衝突による重荷重は、先ずバンパービームに作用する。
作用した重荷重でバンパービームが変形するとともに、左右のエクステンションが軸方向に潰れる(座屈する)ことで、バンパービームがクロスメンバーの位置まで車体前方に向けて移動する。
【0012】
作用した重荷重は、バンパービームとともにクロスメンバーに作用する。クロスメンバーに作用した荷重でクロスメンバーが変形するとともに左右のガセットが変形する。
よって、バンパービームの変形、左右のエクステンションの潰れ、クロスメンバーの変形および左右のガセットの変形により、重荷重の一部を吸収する。
残りの荷重は、左右のリヤフレームに伝えられ、左右のリヤフレームで支えられる。
【0013】
これにより、車体後面に重荷重が作用した場合に、車体後部に備えたバッテリー類の電装品を、バンパービーム、左右のエクステンション、クロスメンバーおよび左右のガセットで確実に保護することができるという利点がある。
【0014】
加えて、クロスメンバーをバンパービームの下方に設けることで、後面衝突に対する受圧面(すなわち、荷重を受ける面)の上下方向の寸法を増すことができる。
これにより、自車の車高と異なる車両が後面衝突した場合でも、衝突により作用する荷重をクロスメンバーやバンパービームなどで十分に吸収することができる。
【0015】
請求項2に係る発明では、クロスメンバーの前方において、左右のリヤフレームに補強部材を架け渡した。そして、補強部材の中央部をクロスメンバーに向けて突出するように湾曲状に形成した。
【0016】
よって、車体後面に荷重が作用してクロスメンバー中央部に局部的な変形が生じた場合に変形したクロスメンバーを、補強部材で支えることができる。
これにより、車体後部に備えたバッテリー類の電装品をより一層確実に保護することができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、「前」、「後」、「左」、「右」は作業者から見た方向にしたがい、前側をFr、後側をRr、左側をL、右側をRとして示す。
【0018】
図1は本発明に係る車両のリヤフレーム構造を示す斜視図である。
車両のリヤフレーム構造10は、車体前後方向に向けて配置された左右のリヤフレーム11,12と、左リヤフレーム11に設けられた左リヤホイールハウス14と、右リヤフレーム12に設けられた右リヤホイールハウス(図示せず)と、左右のリヤフレーム11,12に渡って設けられたリヤフロアパネル17と、左右のリヤフレーム11,12の後端部およびリヤフロアパネル17の後端部に設けられたリヤエンドパネル18と、左右のリヤフレーム11,12に設けられた衝撃吸収手段20とを備える。
【0019】
また、車両のリヤフレーム構造10は、リヤフロアパネル17の車体前方側にクロスメンバー31、32がそれぞれ所定間隔をおいて設けられている。
クロスメンバー31、32は、それぞれ左右のリヤフレーム11,12に架け渡されている。
【0020】
左リヤホイールハウス14は、左リヤフレーム11に設けられ、左後輪および左後ダンパー(図示せず)を収容する部材である。
図示しない右リヤホイールハウスは、左リヤホイールハウス14と左右対称の部材である。この右リヤホイールハウスは、右リヤフレーム12に設けられ、右後輪および右後ダンパー(図示せず)を収容する部材である。
【0021】
図2は本発明に係る車両のリヤフレーム構造からリヤフロアパネルを外した状態を示す斜視図である。
リヤフロアパネル17は、左取付側部22が左リヤフレーム11の上部に設けられ、右取付側部23が右リヤフレーム12の上部に設けられている。
このリヤフロアパネル17は、左取付側部22の内辺から下方に垂下する左壁部24と、右取付側部23の内辺から下方に垂下する右壁部25と、前端部26から下方に垂下する前壁部27と、左壁部24の下辺、右壁部25の下辺および前壁部27の下辺に設けられた底部28とを有する。
【0022】
リヤフロアパネル17は、左右の壁部24,25、前壁部27および底部28で収納空間37が形成される。
収納空間37には、バッテリー38(図1参照)や、その他の電装品(図示せず)などが収納されている。
【0023】
バッテリー38は、ハイブリッド自動車用のモータ(図示せず)に電圧を供給する大型バッテリーである。
なお、左壁部24に沿って、燃料蒸発ガスを蓄えるキャニスタ39(図1参照)が設けられている。
【0024】
リヤエンドパネル18は、左リヤフレーム11の後端部11aに取り付けられた左下部18a(図3参照)と、右リヤフレーム12の後端部12aに取り付けられた右下部18b(図3参照)が取り付けられている。
【0025】
図1に戻って、衝撃吸収手段20は、左リヤフレーム11の後端部11aに設けられた左エクステンション43と、右リヤフレーム12の後端部12aに設けられた右エクステンション44と、左右のエクステンション43,44に架け渡されたバンパービーム45と、左リヤフレーム11の後端下部11bに設けられた左ガセット46と、右リヤフレーム12の後端下部12b(図3参照)に設けられた右ガセット47と、左右のガセット46,47に架け渡されたクロスメンバー48と、クロスメンバー48の前方に設けられた補強部材49とを備える。
【0026】
図3は本発明に係る衝撃吸収手段を示す分解斜視図、図4は本発明に係る車両のリヤフレーム構造から左右のエクステンションおよびバンパービームを外した状態を示す斜視図である。
左リヤフレーム11の後端部11aに左フランジ41が形成され、左フランジ41にリヤエンドパネル18の左下部18aが取り付けられている。
同様に、右リヤフレーム12の後端部12aに右フランジ42が形成され、右フランジ42にリヤエンドパネル18の右下部18bが取り付けられている。
【0027】
左エクステンション43は、略矩形状に形成されたベース51と、ベース51から車体後方に突出されたエクステンション本体52とを有する。
ベース51は、リヤエンドパネル18の左下部18aと一体に左リヤフレーム11の後端部11a(詳しくは、左フランジ41)に取り付けられている。
エクステンション本体52は、断面略矩形枠状に形成され、後端部52aにバンパービーム45の左端部45aが取り付けられている。
【0028】
右エクステンション44は、左エクステンション43と略左右対称の部材である。右エクステンション44の構成部材に、左エクステンション43と同一符号を付して説明を省略する。
【0029】
右エクステンション44のベース51は、リヤエンドパネル18の右下部18bと一体に右リヤフレーム12の後端部12a(詳しくは、右フランジ42)に取り付けられている。
右エクステンション44のエクステンション本体52は、後端部52aにバンパービーム45の右端部45bが取り付けられている。
【0030】
バンパービーム45は、車体幅方向に延出され、左右の端部45a,45bが車体左右側にそれぞれ配置され、中央部45cが車体後方に向けて隆起するように湾曲状に形成されている。
図4に示すように、バンパービーム45は、上壁54、下壁55および後壁56で断面略コ字状に形成された部材である。
【0031】
上壁54の前辺に上フランジ57が下向きに折り曲げられている。下壁55の前辺に下フランジ58が上向きに折り曲げられている。
後壁56は、車体後方に向けて断面略湾曲状に突出したビード59を有する。後壁56にビード59を形成することで、バンパービーム45の剛性を高めることができる。
【0032】
断面略コ字状に形成されたバンパービーム45の内部空間61に左右側のエクステンション本体52の後端部52aがそれぞれ差し込まれている。
この状態で、左側のエクステンション本体52の後端部52aがバンパービーム45の左端部45aに取り付けられている。
また、右側のエクステンション本体52の後端部52aがバンパービーム45の右端部45bに取り付けられている。
【0033】
すなわち、バンパービーム45の左端部45aと左リヤフレーム11との間に左エクステンション43が介在されるとともに、バンパービーム45の右端部45bと右リヤフレーム12との間に右エクステンション44が介在されている。
これにより、バンパービーム45を左リヤフレーム11の後端部11aおよび右リヤフレーム12の後端部12aから車体後方へ向けて所定間隔S(図4参照)だけ離して設けることができる。
【0034】
図3に示すように、左ガセット46は、外側壁63、内側壁64および傾斜底壁65で断面略コ字状に形成された部材である。
外側壁63は、上辺63aが略水平に形成され、下辺が車体後方に向けて下り勾配に形成され、後辺に車幅方向左側に折り曲げられた外折曲片67を有する。
【0035】
内側壁64は、外側壁63と同様に、上辺64aが略水平に形成され、下辺が車体後方に向けて下り勾配に形成され、後辺に車幅方向右側に折り曲げられた内折曲片68を有する。
傾斜底壁65は、外側壁63の下辺および内側壁64の下辺に設けられることで、車体後方に向けて下り勾配に形成され、後辺に下方に底折曲片69を有する。
【0036】
左ガセット46は、左リヤフレーム11の後端下部11bに嵌め込まれた状態で、外側壁63の上辺63aが左リヤフレーム11の外側壁に接合され、内側壁64の上辺64aが左リヤフレーム11の内側壁に接合され、傾斜底壁65の前端部65aが左リヤフレーム11の底壁に接合されている。
これにより、左ガセット46が左リヤフレーム11の後端下部11bに設けられる。
【0037】
この状態において、左ガセット46はバンパービーム45の前方で、かつ下方に位置する。
さらに、外折曲片67、内折曲片68および底折曲片69は、左リヤフレーム11の左フランジ41に対して面一になるように配置され、かつ、左フランジ41の下方に配置されている。
【0038】
右ガセット47は、左ガセット46と略左右対称の部材である。右ガセット47の構成部材に、左ガセット46と同一符号を付して説明を省略する。
【0039】
右ガセット47は、右リヤフレーム12の後端下部12bに嵌め込まれた状態で、外側壁63の上辺63aが右リヤフレーム12の外側壁に接合され、内側壁64の上辺64aが右リヤフレーム12の内側壁に接合され、傾斜底壁65の前端部65aが右リヤフレーム12の底壁に接合されている。
これにより、右ガセット47が右リヤフレーム12の後端下部12bに設けられる。
【0040】
この状態において、右ガセット47は、左ガセット46と同様に、バンパービーム45の前方で、かつ下方に位置する。
さらに、外折曲片67、内折曲片68および底折曲片69は、右リヤフレーム12の右フランジ42に対して面一になるように配置され、かつ、右フランジ42の下方に配置されている。
【0041】
クロスメンバー48は、左ガセット46に左端部71を接合するとともに、右ガセット47に右端部72を接合することで、左右のガセット46,47に架け渡されている。
このクロスメンバー48は、バンパービーム45の下方で、かつバンパービーム45の前方に設けられている。
【0042】
クロスメンバー48は、左右のガセット46,47およびリヤエンドパネル18にそれぞれ接合されたベース74と、ベース74から車体後方に隆起した隆起部75とを有する。
ベース74は、隆起部75の左縁から左側に向けて張り出した左張出片76と、隆起部75の右縁から右側に向けて張り出した右張出片77と、隆起部75の上縁から上側に向けて張り出した上張出片78と、隆起部75の下縁から下側に向けて張り出した下張出片79とを有する。
【0043】
図3に示すように、左張出片76が左ガセット46の外折曲片67に接合され、右張出片77が右ガセット47の外折曲片67に接合されている。
下張出片79は、左端部79aが左ガセット46の底折曲片69に接合され、右端部79bが右ガセット47の底折曲片69に接合され、中央部79cがリヤエンドパネル18の下中央部18cに接合されている。
【0044】
図4に示すように、上張出片78は、中央部78aが車体後方に向けて隆起するように折り曲げられた状態で、リヤエンドパネル18に沿って接合されている。
【0045】
隆起部75は、断面略コ字状に形成された部位であって、左端部75aから左傾斜部75bが車体中央に向けて上り勾配に延出され、右端部75cから右傾斜部75dが車体中央に向けて上り勾配に延出され、左右の傾斜部75b,75d間に中央部75eが水平に延出されている。
【0046】
中央部75eに対して左右の端部75a,75cを下方に下げることができる。
よって、隆起部75の左端部75aを、左エクステンション43に対して干渉しない位置に設けることができる。
さらに、隆起部75の右端部75cを、右エクステンション44に対して干渉しない位置に設けることができる。
【0047】
ここで、クロスメンバー48は、バンパービーム45の前方に配置されている。よって、クロスメンバー48の中央部75eのうち、上部位75fをバンパービーム45の下部45dより上方に配置することができる。
すなわち、後面視において、中央部75eの上部位75fをバンパービーム45の下部45dに重ね合わせた状態に配置することができる。
【0048】
よって、バンパービーム45およびクロスメンバー48を車両後方からの衝突荷重が作用する位置(高さ位置)に配置することができる。
これにより、車両後方からの衝突荷重をバンパービーム45およびクロスメンバー48で好適に受けることができる。
なお、車両後方からの衝突荷重が作用する位置(高さ位置)は法規要件で求められる。
【0049】
さらに、クロスメンバー48をバンパービーム45の前方に配置することで、軽荷重をバンパービーム45で支え、重荷重をバンパービーム45およびクロスメンバー48で支えることが可能になる。
これにより、車両のリヤフレーム構造10を軽荷重〜重荷重の広範囲に適用することができる。
【0050】
加えて、クロスメンバー48をバンパービーム45の下方に設けることで、後面衝突に対する受圧面(すなわち、荷重を受ける面)の上下方向の寸法を増すことができる。
これにより、自車の車高と異なる車両が後面衝突した場合でも、衝突により作用する荷重をクロスメンバー48やバンパービーム45などで十分に吸収することができる。
【0051】
図1に戻って、補強部材49は、クロスメンバー48の前方において左右のリヤフレーム11,12に架け渡されたパイプ部材、または、プレス板材を溶接結合したフレーム部材である。
この補強部材49は、中央部81がクロスメンバー48に向けて突出するように湾曲状に形成されている。
【0052】
補強部材49の左端部82は、左リヤフレーム11および左リヤホイールハウス14の接合部に左取付ブラケット(図示せず)を用いて取り付けられている。
補強部材49の右端部83は、右リヤフレーム12および右リヤホイールハウスの接合部に右取付ブラケット(図示せず)を用いて取り付けられている。
補強部材49を設けた理由は図6で詳しく説明する。
【0053】
つぎに、車両のリヤフレーム構造10の後面に荷重が作用した例を図5〜図6に基づいて説明する。
図5(a),(b)は本発明に係るリヤフレーム構造の後面に荷重が作用した例を説明する図である。なお、(a)は軽荷重が作用した例を示し、(b)は重荷重が作用した例を示す。
(a)において、車体後面、すなわちリヤフレーム構造10の後面に軽衝突が発生した場合、バンパービーム45に軽荷重F1が作用する。
【0054】
作用した軽荷重F1はバンパービーム45を経て左右のエクステンション43,44に伝えられる。バンパービーム45を変形させるとともに、左右のエクステンション43,44を軸方向に潰す(座屈させる)ことで軽荷重F1の一部を吸収する。
残りの荷重は、左右のリヤフレーム11,12に矢印F2(右リヤフレーム12の矢印F2は図示せず)の如くそれぞれ伝えられる。伝えられた残りの荷重は、左右のリヤフレーム11,12で支えられる。
【0055】
これにより、リヤフレーム構造10の後面に軽荷重が作用した場合に、車体後部に備えたバッテリー38、その他の電装品、キャニスタ39などを、バンパービーム45および左右のエクステンション43,44で確実に保護することができる。
【0056】
(b)において、リヤフレーム構造10の後面に重衝突が発生した場合、後面衝突による重荷重F3が、先ずバンパービーム45に作用する。
作用した重荷重F3でバンパービーム45が変形するとともに、左右のエクステンション43,44が軸方向に潰れる(座屈する)。
【0057】
バンパービーム45の変形や左右のエクステンション43,44の潰れにより、バンパービーム45がクロスメンバー48の位置まで車体前方に向けて変位する。
よって、重荷重F3は、バンパービーム45とともにクロスメンバー48に作用する。クロスメンバー48に作用した荷重F3でクロスメンバー48が変形するとともに左右のガセット46,47が変形する。
【0058】
よって、バンパービーム45の変形、左右のエクステンション43,44の潰れ、クロスメンバー48の変形および左右のガセット46,47の変形により、重荷重F3の一部を吸収する。
【0059】
残りの荷重は、バンパービーム45および左右のエクステンション43,44を経て左右のリヤフレーム11,12に矢印F4(右リヤフレーム12の矢印F4は図示せず)の如くそれぞれ伝えられるとともに、クロスメンバー48および左右のガセット46,47を経て左右のリヤフレーム11,12に矢印F4(右リヤフレーム12の矢印F4は図示せず)の如くそれぞれ伝えられる。
伝えられた残りの荷重F4は、左右のリヤフレーム11,12で支えられる。
【0060】
これにより、リヤフレーム構造10の後面に重荷重F3が作用した場合に、車体後部に備えたバッテリー38、その他の電装品、キャニスタ39などを、バンパービーム45、左右のエクステンション43,44、クロスメンバー48および左右のガセット46,47で確実に保護することができる。
【0061】
図6は本発明に係るリヤフレーム構造の後面中央に局部的な荷重が作用した例を説明する図である。
リヤフレーム構造10の後面中央に荷重F5が局部的に作用することにより、荷重F5が、先ずバンパービーム45の中央部45cに作用する。
作用した荷重F5でバンパービーム45の中央部45cが局部的に変形する。
バンパービーム45の中央部45cが変形することで、バンパービーム45の中央部45cがクロスメンバー48の位置まで車体前方に向けて変位する。
【0062】
よって、荷重F5は、バンパービーム45の中央部45cとともにクロスメンバー48の中央部88に作用する。
クロスメンバー48の中央部88は、図4に示す、隆起部75の中央部75e、上張出片78の中央部78aおよび下張出片79の中央部からなる。
【0063】
クロスメンバー48の中央部88に作用した荷重F5でクロスメンバー48の中央部88が局部的に変形する。
バンパービーム45の中央部45cやクロスメンバー48の中央部88が局部的に変形することで、荷重F5の一部を吸収する。
【0064】
クロスメンバー48の中央部88が局部的に変形することで、補強部材49の中央部81に当接する。よって、荷重F5のうちの、残りの荷重を補強部材49で支えることができる。
これにより、リヤフレーム構造10の後面中央に荷重F5が局部的に作用した場合に、車体後部に備えたバッテリー38、その他の電装品、キャニスタ39などを、補強部材49で確実に保護することができる。
【0065】
なお、前記実施の形態で示したリヤフロアパネル17、リヤエンドパネル18、左右のエクステンション43,44、バンパービーム45、左右のガセット46,47、クロスメンバー48および補強部材49の形状などは例示したものに限定するものではなく適宜変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、左右のリヤフレーム間にハイブリッド自動車用のバッテリー類を搭載した自動車への適用に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明に係る車両のリヤフレーム構造を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る車両のリヤフレーム構造からリヤフロアパネルを外した状態を示す斜視図である。
【図3】本発明に係る衝撃吸収手段を示す分解斜視図である。
【図4】本発明に係る車両のリヤフレーム構造から左右のエクステンションおよびバンパービームを外した状態を示す斜視図である。
【図5】本発明に係るリヤフレーム構造の後面に荷重が作用した例を説明する図である。
【図6】本発明に係るリヤフレーム構造の後面中央に局部的な荷重が作用した例を説明する図である。
【符号の説明】
【0068】
10…車両のリヤフレーム構造、11…左リヤフレーム、11a…左リヤフレームの後端部、11b…左リヤフレームの後端下部、12…右リヤフレーム、12a…右リヤフレームの後端部、12b…右リヤフレームの後端下部、17…リヤフロアパネル、18…リヤエンドパネル、20…衝撃吸収手段、37…収納凹部、38…バッテリー、43…左エクステンション、44…右エクステンション、45…バンパービーム、46…左ガセット、47…右ガセット、48…クロスメンバー、49…補強部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右のリヤフレーム間にリヤフロアパネルを設け、リヤフロアパネルの収納凹部にハイブリッド自動車のバッテリー類の電装品を搭載した車両のリヤフレーム構造であって、
前記左右のリヤフレームの後端部にそれぞれ設けられた左右のエクステンションと、
前記左右のエクステンションに架け渡されたバンパービームと、
前記バンパービームの下方で、かつ前記左右のリヤフレームの後端下部にそれぞれ設けられた左右のガセットと、
それぞれのガセットに架け渡されることで、前記バンパービームの下方で、かつ前記バンパービームの前方に設けられたクロスメンバーと、
を備えたことを特徴とする車両のリヤフレーム構造。
【請求項2】
前記クロスメンバーの前方において、前記左右のリヤフレームに補強部材が架け渡され、
前記補強部材の中央部が前記クロスメンバーに向けて突出するように湾曲状に形成されたことを特徴とする請求項1記載の車両のリヤフレーム構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−254580(P2008−254580A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−98846(P2007−98846)
【出願日】平成19年4月4日(2007.4.4)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】