説明

車両の下部構造

【課題】この発明は、車両の空気抵抗を減少させるとともに、センタサポートの耐久性を向上させることができる車両の下部構造を実現することを目的とする。
【解決手段】この発明は、車両の下部構造において、排気管及びマフラの上方に配設した断面がハット形の遮熱板をプロペラシャフトのセンタサポートとマフラとの間で前側遮熱板と後側遮熱板とに分割し、前側遮熟板を排気管とセンタサポートとの間に配設する一方、後側遮熱板をプロペラシャフトの上方に配設し、前側遮熱板に形成される湾曲部の高さと幅とをセンタサポートより車両後側で減少させ、湾曲部の車両後端部をマフラの上面に沿う断面形状に形成したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は車両の下部構造に係り、特に、車両の空気抵抗を減少させるとともに、センタサポートの耐久性を向上させることができる車両の下部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の下部構造には、従来、フロアパネルに形成したトンネル部内に中間部をマウントゴムを備えるセンタサポートで支持されるプロペラシャフトを配設し、その下方にマフラを備えた排気管を配設したものがある。そして、車両の下部構造には、センタサポートやトンネル部の温度上昇を防止するため、排気管及びマフラの上方に遮熱板を配設したものある。
【0003】
従来の車両の下部構造には、プロペラシャフトなどの駆動系部材と排気管との間に遮熱板を配設し、この遮熱板の上面で駆動系部材の範囲外位置に車両前後方向に延びる突起部を形成し、遮熱部の前後端部を駆動系部材に固定することで、駆動系部材と排気管との間のクリアランスを小さくしたものがある。
また、従来の車両の下部構造には、プロペラシャフトのセンタサポートと排気管との間に遮熱板を配設し、この遮熱板の排気管側の面に排気管側に突出する曲面部を形成し、曲面部で排気管からの輻射熱を拡散反射するものがある。
【特許文献1】実開平6−55955号公報
【特許文献2】特開平10−119827号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来の車両の下部構造においては、遮熱板の下方に断面積の大きいマフラを配設すると、マフラの底面がフロア下面から下方に突出して車両の空気抵抗が増加する問題があった。
また、従来の車両の下部構造においては、車両前後方向でマフラをプロペラシャフトのセンタサポートよりも車両後方側に配設し、センタサポートと排気管との間に配設された遮熱板をマフラの上方に延長した場合に、遮熱板の上方を流れる走行風がセンタサポートから車両後方に流れにくくなり、走行風によるセンタサポートの冷却効果が低下してマウントゴムが高温に晒され、耐久性を低下させる問題があった。
【0005】
この発明は、車両の空気抵抗を減少させるとともに、センタサポートの耐久性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、フロアパネルに車両上方に突出するトンネル部を形成し、前記トンネル部内に車両前後方向に延びるプロペラシャフトを車両後側に向かうにつれて車両上下方向の位置が低くなるよう傾斜させた状態で配役し、マウントゴムを備えるセンタサポートによって前記プロペラシャフトの中間部を前記フロアパネルに弾性的に支持し、前記プロペラシャフトの下方に車両前後方向に延びる排気管を配設し、前記排気管の車両前後方向で前記センタサポートより後側の部位にマフラを配設し、前記トンネル部内に突出する湾曲部とこの湾曲部の両側から車両幅方向に突出するフロアパネルヘの取付部とを備える断面がハット形の遮熱板を前記排気管及びマフラの上方に配設した車両の下部構造において、前記遮熱板をセンタサポートとマフラとの間で前側遮熱板と後側遮熱板とに分割し、前記前側遮熟板を排気管とセンタサポートとの間に配設する一方、前記後側遮熱板を前記プロペラシャフトの上方に配設し、前記前側遮熱板に形成される湾曲部の高さと幅とを前記センタサポートより車両後側で減少させ、前記湾曲部の車両後端部をマフラの上面に沿う断面形状に形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明の車両の下部構造は、遮熱板をセンタサポートの車両後方側で前側遮熱板と後側遮熱板とに分割し、前側遮熱板を排気管とセンタサポートとの間に配設する一方、後側遮熱板をプロペラシヤフトの上方に配設することによって、マフラを車両上下方向でプロペラシャフトに近づけた位置に配設できる。そのため、この発明の車両の下部構造は、マフラがフロアパネルから下方に突出して車両の空気抵抗が増加することを抑制できる。
また、この発明の車両の下部構造は、前側遮熱板に形成される湾曲部の高さと幅とをセンタサポートより車両後側で減少させ、湾曲部の車両後端部をマフラの上面に沿う断面形状としたため、前側遮熱板の下方を排気管に沿って流れる高温の空気を、マフラの前端面に衝突させて車両下方へ排出することができる。
さらに、この発明の車両の下部構造は、前側遮熱板の上方の空間をセンタサポートに向かって流れる走行風を、マフラの上面に形成される空間を通して効率良く車両後方へ排出できる。そのため、この発明の車両の下部構造は、後側遮熱板をマフラとプロペラシャフトとの間に配設する場合と比べ、走行風によるセンタサポートの冷却効果を高めてマウントゴムゴムが高温に晒されることを防止できる。
よって、この発明の車両の下部構造は、車両の空気抵抗を減少させるとともに、センタサポートの耐久性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
この発明は、車両の空気抵抗を減少させ、センタサポートの耐久性を向上させることを、遮熱板を前側遮熱板と後側遮熱板とに分割して配設し、前側遮熱板の湾曲部の車両後端部をマフラの上面に沿う断面形状に形成することで、実現するものである。
以下、図面に基づいてこの発明の実施例を説明する。
【実施例】
【0009】
図1〜図5は、この発明の実施例を示すものである。図1はトンネル部の車両前後方向における断面図、図2はトンネル部の底面図、図3は図2のIII−III線による拡大断面図、図4は車両の前後方向における断面図、図5は車両の底面図である。
図4・図5において、1は車両、2は車体、3は右側前輪、4は左側前輪、5は右側後輪、6は左側後輪である。車両1の下部構造は、車体2を構成するフロアパネル7の前端にダッシュパネル8の下端を接続し、フロアパネル7の後端に後斜め上方に向かって延びる傾斜パネル9を介して車体2の後端まで略水平に延びるリヤパネル10を接続し、リヤパネル10にスペアタイヤハウス11を下方に突出させて形成している。傾斜パネル9の下側には、燃料タンク12を配置している。フロアパネル7には、車両幅方向中央に、車両1の上方に突出して車両前後方向に延びるトンネル部13を形成している。トンネル部13は、車両後側に向かうにつれて車両上下方向の位置が低くなるよう傾斜させた状態で形成している。
前記車両1は、ダッシュパネル8の前側に、エンジン14とこのエンジン14に連結した変速機15とを横置きに搭載している。変速機15には、内蔵したフロントディファレンシャル16に右側前輪車軸17・左側前輪車軸18の内端を接続している。右側前輪車軸17・左側前輪車軸18は、外端を前記右側前輪3・左側前輪4にそれぞれ接続している。また、変速機15には、トランスファ19を連結している。トランスファ19には、車両前後方向に延びるプロペラシャフト20の前端を接続している。プロペラシャフト20の後端は、リヤディファレンシャル21に接続している。リヤディファレンシャル21には、右側後輪車軸22・左側後輪車軸23の内端を接続している。右側後輪車軸22・左側後輪車軸23は、外端を前記右側後輪5・左側後輪6にそれぞれ接続している。
【0010】
この車両1の下部構造は、フロアパネル7のトンネル部13内に、車両前後方向に延びるプロペラシャフト20を、車両後側に向かうにつれて車両上下方向の位置が低くなるよう傾斜させた状態で配役している。プロペラシャフト20は、第1〜第3シャフト部24〜26に3分割し、第1シャフト部24と第2シャフト部25とを第1中間継手27により接続し、第2シャフト部25と第3シャフト部26とを第2中間継手28により接続している。フロアパネル7のトンネル部13内には、第1シャフト部24と第2シャフト部25とを配設している。
プロペラシャフト20は、中間部の第2シャフト部25の前後端をそれぞれ第1・第2センタサポート29・30によりフロアパネル7のトンネル部13内に支持している。第1センタサポート29は、図3に示すように、第2シャフト部25の前端を軸支する軸受31と、軸受31の外周に固着した円環形状の弾性部材であるマウントゴム32と、マウントゴム32の外周に固着した円筒形状の支持部材33と、支持部材33をトンネル部13に固定するブラケット34とからなる。第2センタサポート30は、第1センタサポート29と同様に、第2シャフト部25の後端を軸支する軸受と、軸受の外周に固着した円環形状の弾性部材であるマウントゴムと、マウントゴムの外周に固着した円筒形状の支持部材と、支持部材をトンネル部13に固定するブラケットとからなる。
プロペラシャフト20は、マウントゴム32を備える第1・第2センタサポート29・30によって、中間部の第2シャフト部25をフロアパネル3のトンネル部13に弾性的に支持している。第2シャフト部25が配置されたトンネル部13の内面35には、図1に示すように、断面が略U字形状で車両下方に突出するとともに車両幅方向に延びる前側補強部材36と後側補強部材37とが固定されている。
【0011】
前記車両1は、図4・図5に示すように、エンジン14の排気を車体2の後部に導く排気管38を、車体2の略中央を車両前後方向に配設している。エンジン14には、排気側に排気マニホルド39を取り付け、この排気マニホルド39に第1触媒コンバータ40を接続し、第1触媒コンバータ40にフレキシブルチューブ41を介して前記排気管38の前端を接続している。排気管38は、中間部に第2触媒コンバータ42とサブマフラ43とを介装し、後端を車両幅方向に2本に分岐してスペアタイヤハウス11の両側にそれぞれ配置した右側メインマフラ44・左側メインマフラ45にそれぞれ接続している。
この車両1の下部構造は、トンネル部13内のプロペラシャフト20の下方に車両前後方向に延びる排気管38を配設し、排気管38の車両前後方向でプロペラシャフト20の第1センタサポート29より後側の部位にサブマフラ43を配設している。排気管38の車両前後方向でプロペラシャフト20の第1センタサポート29より前側の部位には、第2触媒コンバータ42を配設している。
【0012】
この車両1の下部構造は、図1〜図3に示すように、排気管38及びサブマフラ43の上方には、断面薄板形状の遮熱板46を配設している。遮熱板46は、第1センタサポート29とサブマフラ43との間で、前側遮熱板47と後側遮熱板48とに分割している。前側遮熱板47は、トンネル部13内に突出する略逆U字形状の湾曲部49と、この湾曲部49の両側から車両幅方向に突出するフロアパネル7ヘの右側取付部50・左側取付部51とを備える、断面がハット形に形成されている。また、後側遮熱板48は、トンネル部13内に突出する略逆U字形状の湾曲部52と、この湾曲部52の両側から車両幅方向に突出するフロアパネル7ヘの右側取付部53・左側取付部54とを備える、断面がハット形に形成されている。
この車両1の下部構造は、図1・図2に示すように、排気管38及びサブマフラ43の上方に配設する遮熱板46を前側遮熱板47と後側遮熱板48とに分割し、前側遮熟板47を排気管38と第1センタサポート29との間に配設する一方、後側遮熱板48をプロペラシャフト20の第2シャフト部25の上方に配設している。
これにより、この車両1の下部構造は、サブマフラ43を車両上下方向でプロペラシャフト20に近づけた位置に配設できる。そのため、この車両1の下部構造は、サブマフラ43がフロアパネル7から下方に突出して、車両1の空気抵抗が増加することを抑制できる。
また、この車両1の下部構造は、図1・図2に示すように、前側遮熱板47に形成される湾曲部49の高さhと幅wとを第1センタサポート29より車両後側で減少させ、図3に示すように、湾曲部49の車両後端部をサブマフラ43の楕円形状の上面55に沿う断面形状に形成している。
これにより、この車両1の下部構造は、図1・図3に示すように、前側遮熱板47の下方を排気管38に沿って流れる高温の空気(矢印A)を、サブマフラ43の前端面56に衝突させて車両1の下方へ排出することができる。
さらに、この車両1の下部構造は、図1・図3に示すように、前側遮熱板47の上方の空間S1を第1センタサポート29に向かって流れる走行風(矢印B)を、サブマフラ43の上面55に形成される空間S2を通して効率良く車両1の後方へ排出できる。そのため、この車両1の下部構造は、後側遮熱板48をサブマフラ43とプロペラシャフト20との間に配設する場合と比べ、走行風による第1センタサポート29の冷却効果を高めてマウントゴム32が高温に晒されることを防止できる。
よって、この車両1の下部構造は、車両1の空気抵抗を減少させるとともに、第1センタサポート29の耐久性を向上させることができる。
【0013】
この車両1の下部構造は、図1・図2に示すように、後側遮熱板48をトンネル部13の内面35に固定された後側補強部材37の下方に配設し、後側遮熱板48に後側補強部材37を挿入する開口部57を形成している。
これにより、この車両1の下部構造は、後側遮熱板48がトンネル部13の内面35に固定された後側補強部材37の下方に配役されている場合であっても、後側遮熱板48に後側補強部材37を挿入する開口部57を形成することよって後側遮熱板48の下方の空間S2を拡大でき、サブマフラ43の配設位置を高くして、車両1の空気抵抗を低減することができる。
また、この車両1の下部構造は、図1・図2に示すように、後側遮熱板48とサブマフラ43の上面55との間の空間S2を拡大でき、前側遮熱板47の上方の空間S1を第1センタサポート29に向かって流れる走行風を効率良く車両後方に排出できる。
よって、この車両1の下部構造は、車両1の空気抵抗を減少させるとともに、第1センタサポート29の冷却効果を高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0014】
この発明の車両の下部構造は、フロアパネルのトンネル部内にプロペラシャフトと排気管とを配設した場合に、車両の空気抵抗を減少させ、センタサポートの耐久性を向上させることができるものであり、各種車両に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施例を示すトンネル部の車両前後方向における断面図である。
【図2】実施例を示すトンネル部の底面図である。
【図3】実施例を示す図2のIII−III線による拡大断面図である。
【図4】実施例を示す車両の前後方向における断面図である。
【図5】実施例を示す車両の底面図である。
【符号の説明】
【0016】
1 車両
2 車体
7 フロアパネル
13 トンネル部
14 エンジン
15 変速機
20 プロペラシャフト
29 第1センタサポート
30 第2センタサポート
32 マウントゴム
36 前側補強部材
37 後側補強部材
38 排気管
43 サブマフラ
46 遮熱板
47 前側遮熱板
48 後側遮熱板
49 湾曲部
50 右側取付部
51 左側取付部
52 湾曲部
53 右側取付部
54 左側取付部
57 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロアパネルに車両上方に突出するトンネル部を形成し、前記トンネル部内に車両前後方向に延びるプロペラシャフトを車両後側に向かうにつれて車両上下方向の位置が低くなるよう傾斜させた状態で配役し、マウントゴムを備えるセンタサポートによって前記プロペラシャフトの中間部を前記フロアパネルに弾性的に支持し、前記プロペラシャフトの下方に車両前後方向に延びる排気管を配設し、前記排気管の車両前後方向で前記センタサポートより後側の部位にマフラを配設し、前記トンネル部内に突出する湾曲部とこの湾曲部の両側から車両幅方向に突出するフロアパネルヘの取付部とを備える断面がハット形の遮熱板を前記排気管及びマフラの上方に配設した車両の下部構造において、前記遮熱板をセンタサポートとマフラとの間で前側遮熱板と後側遮熱板とに分割し、前記前側遮熟板を排気管とセンタサポートとの間に配設する一方、前記後側遮熱板を前記プロペラシャフトの上方に配設し、前記前側遮熱板に形成される湾曲部の高さと幅とを前記センタサポートより車両後側で減少させ、前記湾曲部の車両後端部をマフラの上面に沿う断面形状に形成したことを特徴とする車両の下部構造。
【請求項2】
前記後側遮熱板をトンネル部の内面に固定された補強部材の下方に配設し、前記後側遮熱板に前記補強部材を挿入する開口部を形成したことを特徴とする請求項1に記載の車両の下部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−12845(P2010−12845A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−173008(P2008−173008)
【出願日】平成20年7月2日(2008.7.2)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】