説明

車両の下部車体構造

【課題】車両の重量が増大するのを防止しつつ、簡単な構成で車両用部材を効率よく配設できるようにする。
【解決手段】車室の底面を形成するフロアパネル2の上方に少なくとも運転席シートと助手席シート4とが車幅方向に並設された車両において、運転席シートの下方には、運転席シートを車両の前後方向に移動可能に支持するシートレールがフロアパネル上に設置されるとともに、助手席シート4の下方には、フロアパネル2を上方に膨出させたフロア膨出部9が形成され、このフロア膨出部9に助手席シート4が取り付けられるとともに、このフロア膨出部9に収納部33が設けられた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室の底面を形成するフロアパネルの上方に少なくとも運転席シートと助手席シートとが車幅方向に並設された車両の下部車体構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に示されるように、フロアパネル上に運転席および助手席が設置された所謂ツーシータタイプで屋根が開放されるように構成されたオープンカー等において、上記運転席および助手席の後方に、開閉式屋根である幌の格納部を設けるとともに、その下方に位置するキックアップパネルおよびクロスメンバの後側に燃料タンクを設置することが行われている。
【0003】
また、下記特許文献2に示されるように、フロアパネル上に運転席および助手席が設置された所謂ツーシータタイプのスポーツカーにおいて、ダッシュパネルの凹部内に駆動装置を配設し、該駆動装置の側方のダッシュパネルの前方にバッテリを配設し、バッテリ前端位置を駆動装置よりも前方に位置させることで、駆動装置とバッテリとの両者を後方配置し、これによりヨー慣性モーメントの低減を図って、操縦安定性および車両の運動性能の向上を図り、しかも衝突荷重をバッテリで受け止めて、衝突時に駆動装置の後退量を減少させて、安全性を向上させることが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−021607号公報
【特許文献2】特開2005−28911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記ツーシータタイプのスポーツカー等においては、車体をコンパクト化することが特に望まれ、車載バッテリ等からなる車両用補機や物品の収納スペース等を確保することが重要な課題であった。上記特許文献1,2に開示された車両では、車両用補機の設置スペースや物品等の収納スペースを確保するために様々な工夫が凝らされているが、車体をコンパクト化しつつ、車両用補機の設置スペースや物品等の収納スペースをさらに効果的に確保することが望まれている。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、車体を効果的にコンパクト化してコストダウンを図りつつ、物品等の収納スペースを充分に確保できる車両の下部車体構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、車室の底面を形成するフロアパネルの上方に少なくとも運転席シートと助手席シートとが車幅方向に並設された車両の下部車体構造であって、運転席シートの下方には、運転席シートを車両の前後方向に移動可能に支持するシートレールがフロアパネル上に設置され、かつ助手席シートの下方には、フロアパネルを上方に膨出させたフロア膨出部が形成され、このフロア膨出部に助手席シートが取り付けられるとともに、このフロア膨出部に収納部が設けられたものである。
【0008】
請求項2に係る発明は、上記請求項1に記載の車両の下部車体構造において、上記フロア膨出部の一部を下方に凹入させることにより物品の収納部が形成されたものである。
【0009】
請求項3に係る発明は、上記請求項2に記載の車両の下部車体構造において、助手席シートのシートクッションが、上記収納部の上面を開閉可能に覆うように設置されたものである。
【0010】
請求項4に係る発明は、上記請求項1〜3の何れか1項に記載の車両の下部車体構造において、上記フロア膨出部の下方に、車両用補機の収納部が設けられたものである。
【0011】
請求項5に係る発明は、上記請求項4に記載の車両の下部車体構造において、上記フロア膨出部の下方に、エンジンの排気系部材からなる車両用補機が収納されたものである。
【0012】
請求項6に係る発明は、上記請求項5に記載の車両の下部車体構造において、上記フロア膨出部の下方に配設された排気系部材が、助手席に着座した乗員の暖房用具として利用されるように構成されたものである。
【0013】
請求項7に係る発明は、上記請求項5または6に記載の車両の下部車体構造において、上記フロア膨出部の下方に、エンジンの排気系に設けられた排気浄化触媒が配設されたものである。
【0014】
請求項8に係る発明は、上記請求項1〜7の何れか1項に記載の車両の下部車体構造において、助手席シートが、上記シートレールにより前後移動可能に支持された運転席シートの最後方部位に対応した位置に固定されたものである。
【0015】
請求項9に係る発明は、上記請求項4に記載の車両の下部車体構造において、上記フロア膨出部の下方に、車載バッテリまたは電力貯蔵用キャパシタが収納されたものである。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明では、運転席シートの下方に、運転席シートを車両の前後方向に移動可能に支持するシートレールをフロアパネル上に設置し、かつ助手席シートの下方には、フロアパネルを上方に膨出させたフロア膨出部を形成し、このフロア膨出部に助手席シートを取り付けるとともに、このフロア膨出部に収納部を設けたため、車体を効果的にコンパクト化してコストダウンを図りつつ、物品等の収納スペースを充分に確保することができるという利点がある。
【0017】
請求項2に係る発明では、上記フロア膨出部の一部を下方に凹入させることにより物品の収納部を形成したため、車体をコンパクト化することが特に望まれるツーシータタイプのスポーツカー等においても、上記助手席シートの下方部に形成された空間部を有効に利用して物品の収納ペースを充分に確保できるという利点がある。
【0018】
請求項3に係る発明では、上記収納部の上面を助手席シートのシートクッションにより開閉可能に覆うように構成したため、上記収納部内に収納された物品等を助手席シートのシートクッションで隠蔽して優れた盗難予防機能が得られるとともに、上記シートクッションを揺動変位させて収納部の上面を開放状態とすることにより、この収納部に対する物品の出し入れを容易に行うことができる。
【0019】
請求項4に係る発明では、フロア膨出部の下方に車両用補機の収納部を設けたため、助手席シートの下方部に形成された空間部を有効に利用して上記車両用補機を適正に設置できるという利点がある。
【0020】
請求項5に係る発明では、上記フロア膨出部の下方に、エンジンの排気通路等からなる排気系部材を収納するように構成したため、助手席シートの下方部に形成された空間部を有効に利用して上記排気通路を適正に配管できる等の利点がある。
【0021】
請求項6に係る発明では、上記フロア膨出部の下方に配設された排気系部材を、助手席に着座した乗員の暖房用具として利用するように構成したため、エンジンから排出される排気ガスの熱を有効に利用して助手席シートを下方から暖房することにより、乗員の居住性を効果的に向上できるという利点がある。
【0022】
請求項7に係る発明では、上記フロア膨出部の下方に形成された空間部を利用して大容量の排気浄化触媒を効率よく配置できるという利点がある。
【0023】
請求項8に係る発明では、シートレールにより前後移動可能に支持された運転席シートの最後方部位に対応した位置に助手席シートを固定するように構成したため、この乗員が着座した助手席シートからなる重量物を車両の中心寄りの位置に配設することにより、車両の運転性能を効果的に向上させることができるとともに、助手席シートの前方側に設けられるスペースを最大限に広くすることができ、小柄な体格の乗員が助手席シートに着座した場合は勿論のこと、大柄な体格の乗員が助手席シートに着座した場合においても、その前方側に広いスペースを確保して良好な居住性が得られるという利点がある。
【0024】
請求項9に係る発明では、上記フロア膨出部の下方に車載バッテリまたは電力貯蔵用キャパシタを収納するように構成したため、上記フロア膨出部の下方に形成された空間部を利用して大容量または複数個の車載バッテリ等を効果的に設置できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る車両の下部車体構造を備えた車両の概略構成を示す平面図である。
【図2】運転席シートおよび助手席シートの設置状態を示す正面断面図である。
【図3】運転席シートの設置状態を示す側面断面図である。
【図4】助手席シートの設置状態を示す側面断面図である。
【図5】運転席シートを前方に移動させた状態を示す平面図である。
【図6】本発明に係る車両の下部車体構造の別の実施形態を示す平面図である。
【図7】助手席シートの下方に排気系部材を配設した状態を示す側面断面図である。
【図8】本発明に係る車両の下部車体構造のさらに別の実施形態を示す平面図である。
【図9】本発明に係る車両の下部車体構造のさらに別の実施形態を示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1〜図5は、本発明に係る車両の下部車体構造の実施形態を示している。本実施形態に係る車両は、その車室1内のフロアパネル2上に運転席シート3および助手席シート4が左右に並設されるとともに、車室上方にルーフ部材(図示せず)が開閉可能に設置された所謂ツーシータタイプのオープンカーである。上記フロアパネル2の左右両側方部には、車両の前後方向に延びる左右一対のサイドシル5が配設されるとともに、上記フロアパネル2の車幅方向中央部には、車室内側(上方)に向けて突出するトンネル部6が車両の前後方向に延びるように設置されている。
【0027】
上記車室1内の左側部位には、運転席シート3を移動可能に支持する左右一対のシートレール8が車両の前後方向に延びるように設置されている。また、車室1内の左側部位には、フロアパネル2を上方に膨出させたフロア膨出部9が形成され、その上に助手席シート4が取り付けられている。そして、上記運転席シート3および助手席シート4の設置部の後方側には、斜め上方に向けてキックアップしたキックアップ部10と、その上端部から車両の後方側に延びるリヤフロアパネル11とが連設されている。また、上記リヤフロアパネル11の前部下面には、車幅方向に延びる閉断面を形成するリヤクロスメンバ12が配設されている。
【0028】
上記運転席シート3は、図3に示すように、車室1内のフロアパネル2上に設置された上記シートレール8に沿って車両の前後方向にスライド可能に支持されたシートクッション13と、その後端部に立設されたシートバック14と、上記シートクッション13の後端部側面に取り付けられてシートバック14を傾動可能に支持するリクライニング機構15とを備えている。そして、上記シートレール8に沿って運転席シート3のシートクッション13をスライド変位させることにより、図5に示すように、運転席シート3を、ステアリングホイール16およびインストルメントパネル17に近接させた最前方位置から、図1および図3に示すように、上記フロアパネル2のキックアップ部10に近接させた最後方位置まで前後移動させることにより、運転席シート3に着座した運転者の着座位置を、その体格等に応じて調整できるように構成されている。
【0029】
一方、助手席シート4は、図4に示すように、上記フロア膨出部9上に載置されたシートクッション18と、このシートクッション18の後方部から上方に立設されたシートバック19と有している。そして、上記助手席シート4の設置位置は、上記運転席シート3の最前方位置よりも後方側、具体的には、上記シートレール8により前後移動可能に支持された運転席シート3の最後方位置に対応した車室1の後方部位に設定されている。このように助手席シート4のシートクッション18およびシートバック19が、上記フロアパネル2の後端部に設けられたキックアップ部10に近接した位置に支持されることにより、上記シートクッション18の前後移動が規制されるとともに、上記シートバック19の傾動変位が規制された状態で、上記シートレール8により前後移動可能に支持された運転席シート3の最前方位置よりも後方側において、上記助手席シート4が車体に固定的に設置されている。
【0030】
また、上記助手席シート4のシートバック19には、丸パイプ材等からなるシートバックフレーム24が配設されている。このシートバックフレーム24は、シートバック19の上辺部に沿って車幅方向に延びる上方部材25と、その車幅方向の外側端部から下方に延びる側方部材26と、上記上方部材25を支持する棒状部材27とを有している。上記シートバックフレーム24の側方部材26は、その下端部に設けられた取付ブラケット28を介して上記フロア膨出部9の後部上面にボルト止めされる等の手段で固定されている。
【0031】
上記シートバックフレーム24の棒状部材27は、図2に示すように、正面視で運転席シート3と助手席シート4との間において上下方向に延びるように設置された縦部材29と、その上端部から斜めシートバック19の中央部に向けて斜め下方に延びる斜め部材30とを有している。上記縦部材29は、その下端部に設けられた取付ブラケット31が、上記リヤクロスメンバ12により補強されたリヤフロアパネル11の前端部上面にボルト止めされる等の手段で固定されている。さらに、上記取付ブラケット31が設けられた縦部材29の下端部前方に位置するキックアップ部10の中央部には、上記トンネル部6の上面に沿って車両の前後方向に延びるように設置された左右一対のトンネルメンバ32,32の後端部が接続されている。
【0032】
上記斜め部材30の下部は、助手席シート4のシートバック19内に導入されてシートバックフレーム24の上方部材25に溶接されている。一方、上記上方部材25は、その車幅方向の内側方部がシートバック19外に導出されるとともに、その先端部が上記棒状部材27の縦部材29の上下方向中間部に溶接されている。そして、上記縦部材29の上方部分および斜め部材30からなる棒状部材27の上部が、助手席シート4の上方に延びるように設置されることにより、助手席シート4に着座した乗員を保護するロールバー部材が構成されている。
【0033】
上記助手席シート4の下方に位置するフロア膨出部9には、その一部、具体的には周縁部を除く中央部分を下方に凹入させることにより物品の収納部33が形成されている。そして、助手席シート4のシートクッション18が上記収納部33の上面を覆うように設置されている。また、上記助手席シート4のシートクッション18は、その前端部に設けられたヒンジ部34を支点にして揺動可能に支持され、必要に応じて図4の仮想線で示すように、上記収納部33の上面を開放し得るように構成されている。
【0034】
上記運転席シート3および助手席シート4の前方には、図3および図4に示すように、車室1と、その前方に位置するエンジンルームとを区画するダッシュパネル35が車幅方向に延びるように設置されるとともに、このダッシュパネル35の上方には、フロントウインド36の下端部を支持するカウル部材37が車幅方向に延びように設置されている。そして、上記助手席シート4の前方に位置するカウル部材37の下方であって上記ダッシュパネル35とインストルメントパネル17との間には、ブロアおよび熱交換器等を有する空調ユニット38が配設されている(図4参照)。
【0035】
すなわち、上記のように助手席シート4の設置位置を、運転席シート3の最前方位置よりも後方側、例えば上記シートレール8により前後移動可能に支持された運転席シート3の最後方位置に対応した車室1の後方部位に設定した場合には、助手席シート4の前方側に広いスペースを確保することができる。このため、上記助手席シート4に着座した乗員の居住性を悪化させることなく、その前方側に位置するインストルメントパネル17を後方側へ突出させることにより、助手席シート4の前方部に上記空調ユニット38を設置するためのスペースを確保することが可能である。
【0036】
なお、図4において、符号39は、カウル部材37および空調ユニット38の車内側面(後面)を覆うように設置された上記インストルメントパネル17等を支持するインパネメンバであり、符号40は、空調ユニット38から供給された空調用エアを必要個所に供給する空調用ダクトである。また、符号41は、車両の衝突時に展開して助手席シート4に着座した乗員を保護する助手席用エアバッグである。
【0037】
上記空調ユニット38の設置部側方に形成された空間部、つまり運転席シート3と助手席シート4との間において車両の前後方向に延びるトンネル部6の前部上面には、図3に示すように、シフトレバー42からなる車両用操作部材が、ステアリングホイール16の側方位置に設置されている。また、上記シフトレバー42の前方側に位置するインストルメントパネル17の車幅方向中央部には、その下方部分を前方側に凹入させた凹入部43が形成され、これによってシフトレバー42の操作時にインストルメントパネル17が邪魔にならないように構成されている。
【0038】
上記のように車室の底面を形成するフロアパネル2の上方に運転席シート3と助手席シート4とが車幅方向に並設された車両の下部車体構造において、運転席シート3の下方に、運転席シート3を車両の前後方向に移動可能に支持するシートレール8をフロアパネル2からなるフロアパネル上に設置し、かつ助手席シート4の下方に、フロアパネル2を上方に膨出させたからなるフロア膨出部9を形成し、このフロア膨出部9に助手席シート4を取り付けるとともに、このフロア膨出部9に収納部33を設けたため、車体を効果的にコンパクト化してコストダウンを図りつつ、物品等の収納スペースを充分に確保することができる。
【0039】
すなわち、上記実施形態では、助手席シート4を車室1の後方部において固定したため、この助手席シート4用のシートレールを省略してその分だけ車体を軽量化することができるとともに、材料費を節約して製造コストを安価に抑制することができる。また、上記助手席シート4をシートレールにより前後移動可能に支持した場合のように、助手席シート4を前後移動させる際に車体との干渉を回避するために助手席シート4のレイアウトを工夫する必要がないという利点がある。そして、上記フロア膨出部9の一部を下方に凹入させることにより物品の収納部33を形成したため、車体をコンパクト化することが特に望まれるツーシータタイプのスポーツカー等においても、上記助手席シート4の下方部に形成された空間部を有効に利用して物品の収納ペースを充分に確保することができる。
【0040】
また、上記実施形態に示すように、前端部等を支点として揺動可能に支持された助手席シート4のシートクッション18により、上記収納部33の上面を開閉可能に覆うように構成した場合には、この収納部33内に収納された物品等を上記シートクッション18で隠蔽することができるため、優れた盗難予防機能が得られるという利点がある。そして、上記シートクッション18を揺動変位させて上記収納部33の上面を開放状態とすることにより、この収納部33に対する物品の出し入れを容易に行うことができる。
【0041】
特に、上記実施形態に示すように、シートレール8により前後移動可能に支持された運転席シート3の最後方部位に対応した位置において上記助手席シート4を固定するように構成した場合には、この助手席シート4およびその乗員からなる重量物を車両の中心寄りの位置に配設することにより、車両の運転性能を効果的に向上させることができる。また、上記助手席シート4の前方側に設けられるスペースを最大限に広くすることができるため、小柄な体格の乗員が助手席シート4に着座した場合は勿論のこと、大柄な体格の乗員が助手席シート4に着座した場合においても、その前方側に広いスペースを確保して良好な居住性が得られるという利点がある。
【0042】
そして、上記実施形態に示すように、助手席シート4の前方に位置するカウル部材37の下方であってダッシュパネル35とインストルメントパネル17との間に、ブロアおよび熱交換器等を有する空調ユニット38を配設した場合には、運転席シート3の前方および車幅方向中央部に空調ユニットを配設するためのスペースを確保する必要がなく、当該部分の有効利用を図ることができる。また、上記のように助手席シート4の前方側部位に空調ユニット38を配設した場合には、上記インストルメントパネル17にグローブボックスからなる物品収納部を設けることが困難であるが、上記助手席シート4の下方に物品等の収納部33を設けることにより、物品等の収納スペースを確保できるという利点がある。
【0043】
さらに、上記空調ユニット38を助手席シート4の前方部位に設置することによりスペース的に余裕がある上記インストルメントパネル17の車幅方向中央部を前方側に凹入させて凹入部43を形成するとともに、上記トンネル部6の上面であってステアリングホイール16の近傍位置、つまりインストルメントパネル17の後端面に近接した位置にシフトレバー42等からなる車両用操作部材を設置することが可能である。
【0044】
上記のようにインストルメントパネル17の車幅方向中央部に凹入部43を形成した場合には、上記車両用操作部材の操作性を損なうことなく、これをインストルメントパネル17の後端面に近接した車室の前方位置に配設することができる。したがって、上記ステアリングホイール16を把持した運転者が、シフトレバー42等からなる車両用操作部材を迅速かつ適正に操作できるように、上記ステアリングホイール16の側方位置にシフトレバー42を設置できるという利点がある。
【0045】
なお、上記フロア膨出部9の一部を下方に凹入させることにより物品の収納部33を形成してなる上記実施形態に代え、上記助手席シート4が設置されるフロア膨出部9の下方に、エンジンの排気系部材、具体的には排気通路等からなる車両用補機を配設することにより、上記フロア膨出部9の下方部を上記排気系部材の収納部として利用するように構成してもよい。このように構成した場合には、上記助手席シート4の下方部に形成された空間部を有効に利用して上記排気通路等を適正に配管できるという利点がある。
【0046】
また、図6および図7に示すように、上記フロア膨出部9の下方に、エンジンの排気通路44を通る排気の一部を一時的に貯留する排気貯留部45を設けるとともに、この排気貯留部45に対する排気の導入を規制するシャッターバルブ46とを設け、上記排気貯留部45を、助手席シート4に着座した乗員の暖房用具として利用するように構成してもよい。すなわち、暖房が必要な冬季等においては、図6の実線で示すように、上記シャッターバルブ46を開放位置に変位させて排気貯留部45内に排気を導入することにより、その熱を有効に利用して助手席シート4を下方から効果的に暖房することができる。一方、暖房が不要な夏期等には、図6の破線で示すように、上記シャッターバルブ46を閉止位置に変位させて排気貯留部45に対する排気の導入を停止することにより、その熱影響が助手席シート4に及ぶのを防ぐことができる。
【0047】
さらに、図8に示すように、エンジンの排気通路44に設けられた排気浄化触媒47を上記助手席シート4の下方に配設した構造としてもよく、この場合には、上記フロア膨出部9の下方に形成された空間部を利用して大容量の排気浄化触媒47を効率よく配置できるという利点がある。なお、上記のようにフロア膨出部9の下方に排気浄化触媒47を配設した場合に、排気浄化触媒47の上面を覆うように遮熱板を設置する等により、排気浄化触媒47の熱影響が夏期等に助手席シート4に及ぶのを防止することが望ましい。
【0048】
また、図9に示すように、取付具48を介して車載バッテリ49からなる車両用部材の設置部を設けた構造としてもよく、この場合には、上記フロア膨出部9の下方に形成された空間部を利用して大容量または複数個の車載バッテリ49を効果的に設置できる。なお、上記フロア膨出部9の下方に配設される車両用部材としては、上記車載バッテリ49以外にも、電気自動車等において使用される電力貯蔵用キャパシタ、またはハイブリッド車両においてその動力源用主電池の高電圧を低電圧に変換して補機電池を充電するDC−DCコンバータからなるハイブリッド車両用コンバータ等が考えられる。
【0049】
また、上記実施形態では、車室1内のフロアパネル2上に運転席シート3および助手席シート4だけが設置されたツーシータタイプで、ルーフパネルおよびこれを支持するピラーのないオープンカーに本発明を適用した例について説明したが、これに限られず、後列シートを備えた車両についても本発明を適用可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 車室
2 フロアパネル
3 運転席シート
4 助手席シート
8 シートレール
9 フロア膨出部
18 シートクッション
33 物品の収納部
44 排気通路(排気系部材)
45 排気貯留部(暖房用具)
47 排気浄化触媒
49 車載バッテリ(車両用補機)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室の底面を形成するフロアパネルの上方に少なくとも運転席シートと助手席シートとが車幅方向に並設された車両の下部車体構造であって、運転席シートの下方には、運転席シートを車両の前後方向に移動可能に支持するシートレールがフロアパネル上に設置され、かつ助手席シートの下方には、フロアパネルを上方に膨出させたフロア膨出部が形成され、このフロア膨出部に助手席シートが取り付けられるとともに、このフロア膨出部に収納部が設けられたことを特徴とする車両の下部車体構造。
【請求項2】
上記フロア膨出部の一部を下方に凹入させることにより物品の収納部が形成されたことを特徴とする請求項1に記載の車両の下部車体構造。
【請求項3】
助手席シートのシートクッションが、上記収納部の上面を開閉可能に覆うように設置されたことを特徴とする請求項2に記載の車両の下部車体構造。
【請求項4】
上記フロア膨出部の下方に、車両用補機の収納部が設けられたことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の車両の下部車体構造。
【請求項5】
上記フロア膨出部の下方に、エンジンの排気系部材からなる車両用補機が収納されたことを特徴とする請求項4に記載の車両の下部車体構造。
【請求項6】
上記フロア膨出部の下方に配設された排気系部材が、助手席に着座した乗員の暖房用具として利用されるように構成されたことを特徴とする請求項5に記載の車両の下部車体構造。
【請求項7】
上記フロア膨出部の下方に、エンジンの排気系に設けられた排気浄化触媒が配設されたことを特徴とする請求項5または6に記載の車両の下部車体構造。
【請求項8】
助手席シートが、上記シートレールにより前後移動可能に支持された運転席シートの最後方部位に対応した位置に固定されたことを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の車両の下部車体構造。
【請求項9】
上記フロア膨出部の下方に、車載バッテリまたは電力貯蔵用キャパシタが収納されたことを特徴とする請求項4に記載の車両の下部車体構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−143783(P2011−143783A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−4949(P2010−4949)
【出願日】平成22年1月13日(2010.1.13)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】