説明

車両の乗員保護装置

【課題】助手席シート21に着座している乗員51(小柄な乗員51)の顔面が、エアバッグ12の、車両前方に向かって上側に傾斜する受け面12aに出来る限り当接するようにして該乗員を効果的に保護する。
【解決手段】車両1の衝突時に、乗員51の上半身が前傾して該乗員51の顔面が、膨張展開状態のエアバッグ12の受け面12aに当接するように、助手席シート21のシートクッション21aの前部を上昇させて乗員51の膝部を持ち上げる上昇手段(第2エアバッグユニット31)を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の衝突時(特に前面衝突時)にインフレータを作動させてエアバッグを助手席シートの前方に膨張展開させるように構成された車両の乗員保護装置に関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両の車室内の前端部に設けたインストルメントパネル内にエアバッグユニットを配設して、車両の衝突時に、このエアバッグユニットのエアバッグを、インフレータからのガス供給により助手席シートの前方に膨張展開させることで、助手席シートに着座している乗員を保護するようにすることは、よく知られている。
【0003】
上記膨張展開状態のエアバッグの車両後側の面には、車両前方に向かって上側に傾斜する受け面が形成されている場合があり(例えば特許文献1参照)、このような受け面で乗員の顔面を受けるようにすれば、乗員を有効に保護することが可能になる。すなわち、エアバッグの車両後側の面が略鉛直に延びる面である場合には、乗員の頭部がエアバッグから後向きの力を受け易くなるため、頭部が車両後側に仰け反る可能性があるが、乗員の頭部が前傾して上記受け面に当接すれば、頭部が車両後側に仰け反り難くなり、頭部を支える首部が保護される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−19560号公報(第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記エアバッグに上記のような受け面を形成することは、特に小柄な乗員の場合に有効である。すなわち、小柄でない乗員の場合には、顔面が略鉛直に延びる面に当接して頭部が後向きの力を受けても、その力に十分に打ち勝つ力を首部に発生させることができる。しかし、小柄な乗員の場合には、エアバッグから受ける力に打ち勝つ力を発生させることができず、このため、小柄な乗員の場合に、その顔面を上記受け面に当接させるようにすることが好ましい。
【0006】
しかし、小柄な乗員の場合には、車両の衝突時に、該乗員の臀部が前側に移動し易く、このように臀部が前側に移動してしまうと、上半身が前傾姿勢になり難く、このため、顔面が上記受け面に当接しなくなる可能性が高くなる。
【0007】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、助手席シートに着座している乗員(小柄な乗員)の顔面が、エアバッグの、車両前方に向かって上側に傾斜する受け面に出来る限り当接するようにして該乗員を効果的に保護しようとすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明では、車両のインストルメントパネル内における助手席シートの前方に相当する部分に収容されたエアバッグと、該エアバッグへガスを供給するインフレータとを備え、上記車両の衝突時に該インフレータを作動させて該エアバッグを上記助手席シートの前方に膨張展開させるように構成された車両の乗員保護装置を対象として、上記エアバッグは、膨張展開状態で、上記助手席シートに着座している所定の体格の乗員の顔面を受ける、車両前方に向かって上側に傾斜する受け面を有し、上記車両の衝突時に、上記乗員の上半身が前傾して該乗員の顔面が、膨張展開状態のエアバッグの上記受け面に当接するように、上記助手席シートのシートクッションの前部を上昇させて上記乗員の膝部を持ち上げる上昇手段を備えている、構成とした。
【0009】
上記の構成により、車両が衝突(特に前面衝突)すると、エアバッグが助手席シートの前方(助手席シートに着座している所定の体格の乗員(小柄な乗員)の上半身の前方)に膨張展開するとともに、上昇手段が作動して、助手席シートのシートクッションの前部を上昇させて乗員の膝部を持ち上げる。この膝部の持ち上げにより、乗員の臀部が前側に移動し難くなり、腰部が助手席シートのシートバックの直前に位置することになる。この結果、乗員の上半身がその腰部を起点にして前傾し易くなる。よって、乗員の顔面が、膨張展開状態のエアバッグの受け面に当接するようになり、乗員の首部が保護される。
【0010】
上記車両の乗員保護装置において、上記エアバッグの受け面は、該エアバッグの膨張展開状態で、エアバッグの車両後側の面において該受け面の車幅方向両側の部分に対して車両前側へ窪んだ窪み部に形成されている、ことが好ましい。
【0011】
このことにより、窪み部の幅(車幅方向の長さ)を適切に設定することで、乗員の顔面が受け面に当接するまでの間に、受け面の車幅方向両側の部分(窪み部の車幅方向両側の側面)でも顔面を受けることができ、顔面が受け面に直接当接する場合に比べて、顔面に加わる衝撃力を軽減することができる。
【0012】
上記車両の乗員保護装置において、上記エアバッグは、該エアバッグの下端部が、上記乗員の上記上昇手段による持ち上げ前の膝部近傍まで膨張展開する形状であって、該エアバッグの下端部が、上記上昇手段による上記乗員の膝部の持ち上げにより該膝部から上側への押圧力を受けても、膨張展開状態のエアバッグの上端部が上記車両のフロントウインドに当接することによって、上記受け面の上方移動を抑制するように形成されている、ことが好ましい。
【0013】
このことで、乗員の膝部が持ち上げられても、エアバッグ(受け面)の上方移動が抑制され、乗員の顔面が、膨張展開状態のエアバッグの受け面に当接するようになる。
【0014】
或いは、上記車両の乗員保護装置において、上記エアバッグは、該エアバッグの下端部が、上記乗員の上記上昇手段による持ち上げ前の膝部近傍まで膨張展開する形状であって、該エアバッグの下端部に、上記乗員の上記上昇手段により持ち上げられた膝部とエアバッグの下端部との当接を回避するための上方へ凹む凹部が形成されている、ことが好ましい。
【0015】
このような凹部の形成により、乗員の膝部が持ち上げられても、その膝部がエアバッグの下端部に当接しなくなり、エアバッグ(受け面)の上方移動が抑制される。
【0016】
また、上記車両の乗員保護装置において、上記エアバッグは、該エアバッグの下端部が、上記乗員の上記上昇手段による持ち上げ前の膝部近傍まで膨張展開する形状であって、該エアバッグ内における上記受け面よりも上側位置に、エアバッグの車幅方向への膨張展開を規制するテザーが配設されている、ことが好ましい。
【0017】
このことにより、エアバッグのテザー配設部分(受け面よりも上側部分)の車幅方向への膨張展開が規制され、その代わりに、エアバッグにおけるテザーよりも下側部分(エアバッグの下部)が車幅方向に膨張展開し易くなる。この結果、乗員の持ち上げられた膝部がエアバッグの下端部に当接したとしても、エアバッグの下部が車幅方向に膨張展開することで、受け面が上方に移動し難くなり、乗員の顔面が、膨張展開状態のエアバッグの受け面に当接するようになる。また、小柄でない乗員の場合には、該乗員の顔面がエアバッグの車両後側の面における受け面よりも上側部分に当接することになるが、この部分に対応する高さ位置にテザーが配設されてエアバッグの車幅方向への膨張展開が規制されるので、小柄でない乗員の顔面を適切に受け止めることができる。
【0018】
上記車両の乗員保護装置において、上記インフレータは、上記エアバッグへ供給するガス圧を変更可能なものであり、上記インフレータの上記ガス圧を制御する圧力制御手段と、上記助手席シートのシートクッションの車両前後方向のスライド位置を検出する位置検出手段とを更に備え、上記圧力制御手段は、上記位置検出手段により検出された上記スライド位置が所定位置よりも前側にあるときには、該所定位置又はその後側にあるときよりも上記ガス圧を低下させるように構成されている、ことが好ましい。
【0019】
すなわち、助手席シートのシートクッションのスライド位置が所定位置よりも前側にあるときには、助手席シートに小柄な乗員が着座している場合であり、この場合には、ガス圧を低くして該乗員が受ける力を小さくすることが好ましい。一方、上記スライド位置が上記所定位置又はその後側にあるときには、助手席シートに小柄な乗員又は小柄でない乗員が着座している場合であり、小柄な乗員であっても小柄でない乗員であっても、インストルメントパネルから離れた位置に居るので、ガス圧を高くすることが好ましい。したがって、圧力制御手段による上記制御により、シートクッションのスライド位置に応じてガス圧を適切にすることがきる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明の車両の乗員保護装置によると、車両の衝突時に、乗員の臀部が前側に移動し難くなり、乗員の上半身が腰部を起点にして前傾して、乗員の顔面が、膨張展開状態のエアバッグの受け面に当接するようになり、よって、乗員の適切な保護を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係る乗員保護装置が搭載された車両の車室内前部を示す、車両後側から見た図である。
【図2】上記車両の車室内前部の部分断面概略側面図である。
【図3】上記乗員保護装置の制御系の構成を示すブロック図である。
【図4】車両が前面衝突した状態を示す図2相当図である。
【図5】第1エアバッグユニットにおける膨張展開完了時のエアバッグを車両後側から見た図である。
【図6】第1エアバッグユニットのエアバッグの別の形態を示す図4相当図である。
【図7】第1エアバッグユニットのエアバッグの更に別の形態を示す図5相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0023】
図1及び図2は、本発明の実施形態に係る乗員保護装置が搭載された車両1の車室内前部を示す。この車両1の車室内の前端部には、車幅方向に延びるインストルメントパネル2が設けられている。このインストルメントパネル2内における助手席シート21の前方に相当する部分に第1エアバッグユニット10が配設されている。この第1エアバッグユニット10は、開口を有するケーシング11と、該ケーシング11内の開口側に折り畳まれた状態で収容されたエアバッグ12と、ケーシング11内の奥側に収容され、エアバッグ12へガスを供給するインフレータ13とを有している。
【0024】
上記ケーシング11は、ブラケット14を介して、車幅方向に延びる車体強度部材としてのステアリング支持部材3に支持固定されており、この支持固定状態で、ケーシング11の開口は、車両後側寄りの斜め上側を向いていて、インストルメントパネル1の上壁部の内側面に略接している。
【0025】
インストルメントパネル2の上壁部の内側面におけるケーシング11の開口縁部と対向する部分には、断面略V字状の破断溝4が形成されている。この破断溝4は、エアバッグ12の膨張展開圧によって破断するようになっている。そして、エアバッグ12は、インストルメントパネル2の上壁部において破断溝4の破断により生じる開口からインストルメントパネル2の外側(助手席シート21の前方)に膨張展開する。
【0026】
上記インフレータ13は、車両1の衝突時(前面衝突時)に、当該乗員保護装置の制御を行うコントローラ61(図3参照)から起爆信号を受けて作動(起爆)して、ガスを発生させ、このガスをエアバッグ12へ供給する。本実施形態では、インフレータ13には、2つの火薬が設けられ、コントローラ61から低圧力用の起爆信号を受けたときには、1つの火薬のみを起爆し、コントローラ61から高圧力用の起爆信号を受けたときには、2つの火薬を起爆するように作動する。1つの火薬のみを起爆したときには、2つの火薬を起爆したときに比べて、インフレータ13がエアバッグ12へ供給するガス圧(エアバッグ12の膨張展開圧)が低くなる。このことで、コントローラ61は、インフレータ13の上記ガス圧を制御する圧力制御手段を構成することになる。
【0027】
上記エアバッグ12は、インフレータ13からのガス供給により、助手席シート21の前方(助手席シート21に着座している乗員51の上半身の前方)に膨張展開する。このエアバッグ12は、膨張展開状態で、助手席シート21に着座している所定の体格の乗員51の顔面を受ける、車両前方に向かって上側に傾斜する受け面12aを有している(図4参照)。本実施形態では、上記所定の体格の乗員51は、小柄な人、具体的には、アメリカ人女性の中で5%以内に入るような小柄な人を想定している。以下、所定の体格の乗員51を他の体格の乗員51と区別していう場合には、小柄な乗員51といい、区別しない場合には、単に乗員51という。
【0028】
上記受け面12aは、エアバッグ12の膨張展開状態で、エアバッグ12の車両後側の面の上下方向及び左右方向の略中央において該受け面12aの車幅方向両側の部分に対して車両前側へ窪んだ窪み部12bに形成されている(図4及び図5参照)。この窪み部12bの下部が、車両前方に向かって上側に傾斜していて、上記受け面12aを形成している。窪み部12bの上部は、受け面12aの上端(車両前側端)から車両後方に向かって上側に傾斜している。窪み部12bの幅(車幅方向の長さ)は、窪み部12bの上下方向略中央で最大であり、上側及び下側に向かって小さくなる(図5参照)。窪み部12bの幅の最大値(小柄な乗員51の顔が当接する前の値)は、小柄な乗員51の顔の幅よりも小さくて、該小柄な乗員51の顔面が受け面に当接するまでの間に、受け面12aの車幅方向両側の部分(窪み部12bの車幅方向両側の側面)でも顔面を受ける(図4は、受け面12aの車幅方向両側の部分で顔面を受けている状態を示す)。このとき、窪み部12bが左右に拡がりながら小柄な乗員51の顔面が窪み部12b内に沈み込んでいき、最終的に小柄な乗員51の顔面が受け面12aに当接することになる。尚、助手席シート21に小柄でない乗員51が着座している場合には、該小柄でない乗員51の顔面は、膨張展開状態のエアバッグ12の車両後側の面における窪み部12bよりも上側部分又は受け面12aよりも上側部分に当接する。
【0029】
上記助手席シート21は、シートクッション21aと、下端部がシートクッション21aの後端部に、車幅方向に延びる軸回りに回動可能に支持されたシートバック21bと、このシートバック21bの上端に取り付けられたヘッドレスト21cとを有している。
【0030】
助手席シート21のシートクッション21aの前部には、第2エアバッグユニット31が配設されている。この第2エアバッグユニット31も、第1エアバッグユニット10と同様に、開口を有するケーシング32と、該ケーシング32内の開口側に折り畳まれた状態で収容されたエアバッグ33(膨張展開した状態の図4参照)と、ケーシング32内の奥側に収容され、エアバッグ33へガスを供給するインフレータ34(図3のみに示す)とを有している。上記ケーシング32の支持構成の図示は省略するが、ケーシング32は、助手席シート21のシートクッション21aのパッド前部の下側において、ブラケットを介してシートクッションフレームに支持固定されており、この支持固定状態で、ケーシング32の開口は上側を向いていて、上記パッドの下面に略接している。そして、上記インフレータ34は、車両1の衝突時(前面衝突時)に、コントローラ61から起爆信号を受けて作動(起爆)して、ガスを発生させ、このガスをエアバッグ33へ供給する。このガス供給により、エアバッグ33が上記パッド前部の下側で展開して、該パッド前部を上昇させる。
【0031】
上記第2エアバッグユニット31は、車両1の衝突時に、エアバッグ33の膨張展開によって、シートクッション21aの前部を上昇させて乗員51の膝部を持ち上げる上昇手段として機能させるために設けられている。このエアバッグ33の膨張展開により、車両1の衝突時に、小柄な乗員51の上半身が腰部を起点に前傾して該小柄な乗員51の顔面が、第1エアバッグユニット10における膨張展開状態のエアバッグ12の受け面12aに当接するようにしている。すなわち、小柄な乗員51の場合には、車両1の衝突時に、該小柄な乗員51の臀部が前側に移動し易く(後述のシートベルト装置41のプリテンショナ機構49が作動しても、臀部がシートベルト42の腰部拘束部42bの下側をすり抜ける可能性がある)、このように臀部が前側に移動してしまうと、上半身が前傾姿勢になり難く、このため、顔面が上記受け面12aに当接しなくなる可能性が高くなる。そこで、小柄な乗員51の膝部を持ち上げることで、小柄な乗員51の臀部が前側に移動するのを抑制して、小柄な乗員51の上半身がその腰部を起点にして前傾し易くなるようにする。小柄でない乗員51の場合も、その膝部が持ち上げられることになるが、これにより、プリテンショナ機構49の作動と相俟って、小柄でない乗員51の上半身も腰部を起点にして前傾し易くなる。上記膝部の持ち上げ量は、小柄な乗員51の臀部が前側に移動するのを抑制できる程度の量であり、このことから、第2エアバッグユニット31のエアバッグ33の膨張展開完了時の容積は、第1エアバッグユニット10のエアバッグ12の膨張展開完了時の容積に比べてかなり小さく、また、インフレータ34の火薬は1つのみであり、その火薬量も第1エアバッグユニット10のインフレータ13の1つの火薬量よりもかなり少ない。
【0032】
尚、上記上昇手段としては、第2エアバッグユニット31に限らず、助手席シート21のシートクッション21aの前部(パッド前部)を上昇させる電磁式又は油圧式等のアクチュエータで構成してもよい。但し、車両1の衝突時にシートクッション21aの前部を出来る限り早期に上昇させる観点からは、上記のようにエアバッグ33を膨張展開させる構成が好ましい。
【0033】
助手席シート21は、シートクッション21aを車両前後方向にスライドさせるスライド機構22を有している。このスライド機構22は、シートクッション21aの左右両端部の下部に設けられたスライダ23と、前後部でレール取付部材25を介して車室フロア(車体部材)に固定した、車両前後方向に延びる左右の案内レール24とで構成されている。上記左右のスライダ23が、左右の案内レール24に対し車両前後方向にスライド可能にそれぞれ係合されており、シートクッション21aの車両前後方向のスライド位置を調整することができるようになっている。そして、シートクッション21aには、該シートクッション21aの車両前後方向のスライド位置を検出する位置検出手段としてのポジションセンサ26(図3のみに示す)が配設されている。このポジションセンサ26による検出信号は上記コントローラ61に入力される。
【0034】
図4に示すように、上記第1エアバッグユニット10のエアバッグ12は、該エアバッグ12の下端部が、乗員51の膝部(第2エアバッグユニット31により持ち上げられる前の膝部)近傍まで膨張展開する形状である。すなわち、エアバッグ12の下部(窪み部12bよりも下側部分)は、左側分割部12cと右側分割部12dとに2分割されており(図5参照)、これら両分割部12c,12dの後面が、乗員51の左右の肩部から胸部にかけての部分をそれぞれ保護する。このために、エアバッグ12の下端部(両分割部12c,12dの下端部)は、乗員51の膝部近傍に位置する。このような位置関係では、第2エアバッグユニット31のエアバッグ33により乗員51の膝部が持ち上げられると、エアバッグ12の下端部が該膝部から上側への押圧力を受けてエアバッグ12全体が上方移動してしまう。これにより、エアバッグ12の受け面12aの位置が、予め設定した設定位置から上側にずれて、小柄な乗員51の顔面が受け面12aに当接しなくなる。このようなことがないように、本実施形態では、エアバッグ12は、該エアバッグ12の下端部が乗員51の膝部から上側への押圧力を受けても、膨張展開状態のエアバッグ12の上端部が車両1のフロントウインド7に当接することによって、受け面12a(エアバッグ12全体)の上方移動を抑制するように形成されている。これにより、エアバッグ12は、該エアバッグ12の下端部が乗員51の膝部から上側への押圧力を受けても、上方移動はできず、車幅方向に膨張する。
【0035】
上記車両1には、助手席シート21に着座している乗員51を拘束するシートベルト装置41が設けられている。このシートベルト装置41は、図2に示すように、シートベルト42と、該シートベルト42を巻き取るリトラクタ部43と、このリトラクタ部43から引き出されたシートベルト42の先端部が取り付けられた外側固定部44と、シートベルト42の長さ方向中間部に配設されたタング46が着脱可能に係合するバックル47を有する内側固定部45とを有する3点式に構成されている。内側固定部45は、助手席シート21の車幅方向内側で車体部材に固定されている一方、リトラクタ部43及び外側固定部44は、助手席シート21を挟んで内側固定部45とは反対側である車幅方向外側で車体部材に固定されている。上記リトラクタ部43から引き出されたシートベルト42は、助手席シート21の車幅方向外側の上方位置に設けられたスリップガイド48により、その引き出し方向が上向きから下向きに変換されて、その先端部が外側固定部44に取り付けられている。タング46は、スリップガイド48と外側固定部44との間でシートベルト42に対して摺動可能に設けられており、このタング46がバックル47に係合されることで、乗員51がシートベルト42を着用した状態となる。この着用状態で、シートベルト42は、乗員51の車幅方向外側の肩部から胸部を通って腰部の車幅方向内側部分にまで下側に向かって車幅方向内側に斜めに延びる胸部拘束部42aと、乗員51の腰部において車幅方向に延びる腰部拘束部42bとを有する。
【0036】
上記リトラクタ部43及び外側固定部44内には、後述の距離センサ63による検出結果に基づいてコントローラ61が衝突を予知したとき(例えば、車両1が障害物に衝突するまでの予測時間が、予め決めた基準時間よりも短いとき)に、シートベルト42の両端部をリトラクタ部43及び外側固定部44内にそれぞれ引き込むプリテンショナ機構49がそれぞれ設けられている。これらプリテンショナ機構49は、シートベルト42を巻き取る巻取ローラを巻取方向に回転駆動する電動モータによって構成されている。上記リトラクタ部43のプリテンショナ機構49は、ロードリミッタ機能を有し、シートベルト42に所定値よりも大きな張力が作用しないようになされている。この所定値の値に応じて、車両1の衝突時に乗員51の上半身がその腰部を起点にして前傾する際の前傾量を調整することができる。
【0037】
図3は、上記乗員保護装置の制御系の構成を示す。コントローラ61は、周知のマイクロコンピュータをベースとする制御装置であって、プログラムを実行する中央演算処理装置(CPU)と、例えばRAMやROMにより構成されてプログラムおよびデータを格納するメモリと、種々の信号の入出力を行うための入出力(I/O)バスとを含む。このコントローラ61に、車両1の前面衝突を検出するための衝突センサ62(例えば加速度センサからなる)と、車両1と該車両1の前方に位置する障害物との間の距離を検出するための距離センサ63と、上記ポジションセンサ26とが接続されて、これらセンサ62,63,26からの検出信号が入力される。そして、これらの入力信号に基づいて、第1及び第2エアバッグユニット10,31のインフレータ13,34並びにリトラクタ部43及び外側固定部44のプリテンショナ機構49を制御する。
【0038】
コントローラ61は、衝突センサ62からの入力信号に基づいて車両1の前面衝突を検出すると、第1及び第2エアバッグユニット10,31のインフレータ13,34に対して起爆信号をそれぞれ送信する。本実施形態では、コントローラ61は、両エアバッグユニット10,31のインフレータ13,34に対して同時に起爆信号をそれぞれ送信する。
【0039】
また、コントローラ61は、第1エアバッグユニット10のインフレータ13に対しては、ポジションセンサ26からの入力信号に応じて、低圧力用又は高圧力用の起爆信号を送信する。具体的には、助手席シート21のシートクッション21aの車両前後方向のスライド位置が所定位置よりも前側にあるときには、インフレータ13に対して低圧力用の起爆信号を送信する一方、上記スライド位置が上記所定位置又はその後側にあるときには、インフレータ13に対して高圧力用の起爆信号を送信する。これにより、上記スライド位置が所定位置よりも前側にあるときには、該所定位置又はその後側にあるときよりも、エアバッグへ供給するガス圧が低下する。すなわち、上記スライド位置が所定位置よりも前側にあるときには、助手席シート21に小柄な乗員51が着座している場合であり、この場合には、上記ガス圧を低くして該小柄な乗員が受ける力を小さくすることが好ましい。一方、上記スライド位置が上記所定位置又はその後側にあるときには、助手席シート21に小柄な乗員又は小柄でない乗員が着座している場合であり、小柄な乗員であっても小柄でない乗員であっても、インストルメントパネル2から離れた位置に居るので、ガス圧を高くすることが好ましい。したがって、上記の制御により、シートクッション21aのスライド位置に応じて上記ガス圧を適切にすることがきる。
【0040】
上記距離センサ63は、例えば、車両前方へ検知波(赤外線やミリ波等)を発信する発信器と、その検知波が車両前方の障害物に当たって反射してくる反射波を受信する受信器とを有していて、検知波の発信時点から反射波を受信するまでの時間を計測することによって、車両1と車両1前方の障害物との間の距離を検出する。そして、コントローラ61は、距離センサ63により検出された距離に応じて、車両1の上記障害物への衝突可能性の大小を判定する。この判定は、例えば以下のようにして行う。すなわち、車両1と障害物との間の距離と、該距離の変化から得られる、車両1の障害物に対する接近速度とから、車両1が障害物に衝突するまでの予測時間を求め、この予測時間が、予め定めた基準時間よりも短いときに、衝突可能性が高いと判定する。
【0041】
コントローラ61は、車両1の障害物への衝突可能性が高いと判定したときには、上記リトラクタ部及び外側固定部内のプリテンショナ機構49に対して作動信号をそれぞれ送信して、両プリテンショナ機構49を共に作動させる。これにより、助手席シート21に着座している乗員51を、シートベルト42により強く拘束する。そして、コントローラ61は、衝突センサ62により障害物との衝突を検出したときには、上記の如く第1及び第2エアバッグユニット10,31のインフレータ13,34を同時に作動(起爆)させる。一方、衝突可能性が高いと判定した時点から所定時間(上記基準時間よりも僅かに長い時間)経過しても、衝突センサ62により障害物との衝突が検出されなかったときには、衝突が回避されたものと判断して、プリテンショナ機構49の作動を停止して、乗員51のシートベルト42による強い拘束を解除する。
【0042】
次に、上記乗員保護装置の動作について説明する。
【0043】
先ず、コントローラ61が、距離センサ63からの入力信号に基づき、車両1の障害物への衝突可能性が高いと判定したときには、リトラクタ部43及び外側固定部44内のプリテンショナ機構49を共に作動させて、助手席シート21に着座している乗員51を、シートベルト42により強く拘束する。これにより、助手席シート21の乗員51の背中がシートバック21bに押え付けられるとともに、該乗員51の腰部がシートバック21bの直前に位置することになる。
【0044】
そして、実際に車両1が障害物へ前面衝突すると、コントローラ61は、衝突センサ62からの入力信号に基づき衝突を検出し、第1及び第2エアバッグユニット10,31のインフレータ13,34に対して起爆信号を同時に送信する。このとき、助手席シート21のシートクッション21aの車両前後方向のスライド位置が所定位置よりも前側にあるときには、第1エアバッグユニット10のインフレータ13に対して低圧力用の起爆信号を送信する一方、上記スライド位置が上記所定位置又はその後側にあるときには、インフレータ13に対して高圧力用の起爆信号を送信する。
【0045】
第1及び第2エアバッグユニット10,31のインフレータ13,34の起爆により、第1及び第2エアバッグユニット10,31のエアバッグ12,33がそれぞれ膨張展開し始める。第2エアバッグユニット31のエアバッグ33は、第1エアバッグユニット10のエアバッグ12よりも膨張展開完了時の容積が小さいので、エアバッグ12よりも早期に膨張展開完了する(図4参照)。このエアバッグ12の膨張展開により、助手席シート21のシートクッション21aのパッド前部が上昇して乗員51の膝部が持ち上げられる。これにより、乗員51の臀部が前側に移動し難くなり、腰部がシートバック21bの直前に位置することになる。ここで、上記のようにプリテンショナ機構49が作動しているので、これだけでも乗員51の臀部は前側には移動し難いが、小柄な乗員51の場合には、臀部がシートベルト42の腰部拘束部42bの下側をすり抜ける可能性がある。そこで、上記のように乗員51(小柄でない乗員51も含む)の膝部を持ち上げ、これにより、乗員51の臀部の前側への移動(すり抜け)を抑制する。
【0046】
上記のように膝部が持ち上げられた乗員51の上半身は、腰部を起点にして前傾しようとする。この前傾しようとする力が次第に強くなって、シートベルト42に所定値よりも大きな張力が作用すると、リトラクタ部43のプリテンショナ機構49におけるロードリミッタ機能により、シートベルト42に所定値よりも大きな張力が作用しないようになされているので、乗員51の上半身がその腰部を起点にして前傾し始める。
【0047】
上記乗員51の上半身の前傾の途中又は前傾開始前に、第1エアバッグユニット10のエアバッグ12が膨張展開完了した状態になる(図4参照)。そして、小柄な乗員51の場合には、更に上半身が前傾していくと、該小柄な乗員51の顔面がエアバッグ12の窪み部12bの車幅方向両側の側面に接触しながら窪み部12b内に沈み込んでいき(図4参照)、やがて受け面12aに当接する。助手席シート21のシートクッション21aの車両前後方向のスライド位置が前側にあるときには、小柄な乗員51の顔面が受け面12aの前側部分に当接し、上記スライド位置が後側にあるときには、小柄な乗員51の顔面が受け面12aの後側部分に当接する。これにより、小柄な乗員51の頭部が車両後側に仰け反り難くなり、頭部を支える首部が保護される。また、窪み部12bの車幅方向両側の側面でも小柄な乗員51の顔面を受けることで、該顔面が受け面12aに直接当接する場合に比べて、顔面に加わる衝撃力を軽減することができる。
【0048】
一方、小柄でない乗員51の場合には、その顔面が、膨張展開状態のエアバッグ12の車両後側の面における窪み部12bよりも上側部分又は受け面12aよりも上側部分(略鉛直方向に延びる部分)に当接する。小柄でない乗員51の場合には、その当接により頭部が後向きの力を受けても、その力に十分に打ち勝つ力を首部に発生させることができるので、顔面が略鉛直方向に延びる部分に当接しても、頭部が車両後側に仰け反るようなことはない。
【0049】
ここで、エアバッグ12は、該エアバッグ12の下端部が、乗員51の上記エアバッグ33による持ち上げ前の膝部近傍まで膨張展開する形状であるため、エアバッグ33により乗員51の膝部が持ち上げられたときに、該膝部がエアバッグ12の下端部を上側へ押圧する。しかし、膨張展開状態のエアバッグ12の上端部は、フロントウインド7に当接しているため、エアバッグ12の下端部が乗員51の膝部から上側への押圧力を受けても、エアバッグ12は上方移動できず、車幅方向に膨張する。これにより、エアバッグ12の受け面12aが上記設定位置から上側にずれるようなことはなく、小柄な乗員51の顔面が受け面12aに当接する。
【0050】
したがって、本実施形態では、第1エアバッグユニット10のエアバッグ12が、膨張展開状態で、助手席シート21に着座している小柄な乗員51の顔面を受ける、車両前方に向かって上側に傾斜する受け面12aを有し、車両1の衝突時に、小柄な乗員51の上半身が前傾して該小柄な乗員51の顔面が、膨張展開状態のエアバッグ12の受け面12aに当接するように、助手席シート21のシートクッション21aの前部を上昇させて小柄な乗員51の膝部を持ち上げるようにしたので、小柄な乗員51の上半身がその腰部を起点にして前傾し易くなり、小柄な乗員51の顔面が、エアバッグ12の受け面12aに当接し、小柄な乗員51の首部が保護される。
【0051】
尚、上記実施形態では、エアバッグ33により乗員51の膝部が持ち上げられたときに、その膝部によりエアバッグ12が上方移動しないように、膨張展開状態のエアバッグ12の上端部をフロントウインド7に当接させるようにしたが、図6に示すように、エアバッグ12の下端部(左側分割部12c及び右側分割部12dの下端部)に、エアバッグ33により持ち上げられた膝部とエアバッグ12の下端部との当接を回避するための上方へ凹む凹部12eを形成するようにしてもよい。この場合も、エアバッグ12の上端部をフロントウインド7に当接させることが好ましい。これは、小柄でない乗員51の場合、その顔面が、膨張展開状態のエアバッグ12の車両後側の面における略鉛直方向に延びる部分に当接するため、その当接によりエアバッグ12が車両前側に移動しようとするが、エアバッグ12の上端部が、車両前方に向かって下側に傾斜したフロントウインド7に当接することで、エアバッグ12の車両前側移動を抑制することができる。
【0052】
また、上記凹部12eに代えて、図7に示すように、エアバッグ12内における受け面12aよりも上側位置に、エアバッグ12の車幅方向への膨張展開を規制するテザー17を配設するようにしてもよい。このテザー17は、膨張展開状態のエアバッグ12の車幅方向両側の側部同士を連結するように、エアバッグ12内において車幅方向に延びている。これにより、エアバッグ12のテザー17配設部分(受け面12aよりも上側部分)の車幅方向への膨張展開が規制され、その代わりに、エアバッグ12におけるテザー17よりも下側部分、つまりエアバッグ12の下部(左側分割部12c及び右側分割部12d)が車幅方向に膨張展開し易くなる。これにより、乗員51の持ち上げられた膝部がエアバッグ12の下端部に当接したとしても、エアバッグ12の下部が車幅方向に膨張展開することで、受け面12aが上方に移動し難くなる。しかも、小柄でない乗員51の場合には、該小柄でない乗員51の顔面がエアバッグ12の車両後側の面におけるテザー17と略同じ高さ位置に当接するので、その高さ位置でのエアバッグ12の車幅方向への膨張展開が規制され、小柄でない乗員51の顔面を適切に受け止めることができる。このようなテザー17を配設する場合も、エアバッグ12の上端部をフロントウインド7に当接させることで、エアバッグ33により持ち上げられた膝部によりエアバッグ12が上方移動しないようにしたり、小柄でない乗員51の顔面の当接によるエアバッグ12の車両前側移動を抑制したりすることが好ましい。また、テザー17の配設に加えて、上記凹部12eを形成するのがより一層好ましい。
【0053】
さらに、上記実施形態では、第1及び第2エアバッグユニット10,31のインフレータ13,34を同時に起爆させたが、第2エアバッグユニット31のインフレータ34の起爆タイミングは、小柄な乗員51の臀部の前側への移動を効果的に抑制できるような観点から設定すればよく、第1エアバッグユニット10のインフレータ13の起爆タイミングと異なっていてもよい。
【0054】
また、上記実施形態では、エアバッグ12の受け面12aを、該エアバッグ12の膨張展開状態で、エアバッグ12の車両後側の面において受け面12aの車幅方向両側の部分に対して車両前側へ窪んだ窪み部12bに形成したが、このような窪み部12bに受け面12aを形成する必要は必ずしもなく、窪み部の車幅方向両側の側面がない形態(受け面の車幅方向両側が車両後側へ隆起していない形態)で、車両前方に向かって上側に傾斜する受け面を形成したエアバッグにも本発明を適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、車両の衝突時にインフレータを作動させてエアバッグを助手席シートの前方に膨張展開させるように構成された車両の乗員保護装置に有用である。
【符号の説明】
【0056】
1 車両
2 インストルメントパネル
7 フロントウインド
10 第1エアバッグユニット
12 エアバッグ
12a 受け面
12b 窪み部
12e 凹部
13 インフレータ
17 テザー
21 助手席シート
21a シートクッション
26 ポジションセンサ(位置検出手段)
31 第2エアバッグユニット(上昇手段)
51 乗員
61 コントローラ(圧力制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のインストルメントパネル内における助手席シートの前方に相当する部分に収容されたエアバッグと、該エアバッグへガスを供給するインフレータとを備え、上記車両の衝突時に該インフレータを作動させて該エアバッグを上記助手席シートの前方に膨張展開させるように構成された車両の乗員保護装置であって、
上記エアバッグは、膨張展開状態で、上記助手席シートに着座している所定の体格の乗員の顔面を受ける、車両前方に向かって上側に傾斜する受け面を有し、
上記車両の衝突時に、上記乗員の上半身が前傾して該乗員の顔面が、膨張展開状態のエアバッグの上記受け面に当接するように、上記助手席シートのシートクッションの前部を上昇させて上記乗員の膝部を持ち上げる上昇手段を備えていることを特徴とする車両の乗員保護装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両の乗員保護装置において、
上記エアバッグの受け面は、該エアバッグの膨張展開状態で、エアバッグの車両後側の面において該受け面の車幅方向両側の部分に対して車両前側へ窪んだ窪み部に形成されていることを特徴とする車両の乗員保護装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の車両の乗員保護装置において、
上記エアバッグは、該エアバッグの下端部が、上記乗員の上記上昇手段による持ち上げ前の膝部近傍まで膨張展開する形状であって、該エアバッグの下端部が、上記上昇手段による上記乗員の膝部の持ち上げにより該膝部から上側への押圧力を受けても、膨張展開状態のエアバッグの上端部が上記車両のフロントウインドに当接することによって、上記受け面の上方移動を抑制するように形成されていることを特徴とする車両の乗員保護装置。
【請求項4】
請求項1又は2記載の車両の乗員保護装置において、
上記エアバッグは、該エアバッグの下端部が、上記乗員の上記上昇手段による持ち上げ前の膝部近傍まで膨張展開する形状であって、該エアバッグの下端部に、上記乗員の上記上昇手段により持ち上げられた膝部とエアバッグの下端部との当接を回避するための上方へ凹む凹部が形成されていることを特徴とする車両の乗員保護装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の車両の乗員保護装置において、
上記エアバッグは、該エアバッグの下端部が、上記乗員の上記上昇手段による持ち上げ前の膝部近傍まで膨張展開する形状であって、該エアバッグ内における上記受け面よりも上側位置に、エアバッグの車幅方向への膨張展開を規制するテザーが配設されていることを特徴とする車両の乗員保護装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載の車両の乗員保護装置において、
上記インフレータは、上記エアバッグへ供給するガス圧を変更可能なものであり、
上記インフレータの上記ガス圧を制御する圧力制御手段と、
上記助手席シートのシートクッションの車両前後方向のスライド位置を検出する位置検出手段とを更に備え、
上記圧力制御手段は、上記位置検出手段により検出された上記スライド位置が所定位置よりも前側にあるときには、該所定位置又はその後側にあるときよりも上記ガス圧を低下させるように構成されていることを特徴とする車両の乗員保護装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−168120(P2011−168120A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−32323(P2010−32323)
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】