説明

車両の乗降口構造

【課題】乗降客がステップを円滑に昇降でき、しかも乗降口から車室内通路まで連続して手摺りが配置され、かつ簡易な構成で、優れた外観を有し、更に軽量化を実現できる車両の乗降口構造を提供すること。
【解決手段】車両の前部側方に設けられた乗降口14と、乗降口14と車両の前後方向に設けられた車室内通路22とを接続するステップ通路と、ステップ通路の車両後方側端縁に沿って配置された壁体と、壁体を支持するフレーム32と、壁体に沿って配設され、少なくとも一端がフレーム32に取り付けられたグリップバー36と、を備えて車両の乗降口構造を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗降口の側方にサービスボックスが設けられ、サービスボックスの前面にグリップバーが設けられている車両の乗降口構造に関する。
【背景技術】
【0002】
観光用バスの多くは、車両前方の側面に乗降口が設けてあり、乗降口からステップなどを介して、車両の前後方向に延びる車室内通路に通じるようになっている。また観光バスの場合、ステップの車両後方側、つまり乗降口側に配置された座席列の前方に、いわゆるサービスボックスと呼ばれる収納台が設置してあり、飲み物や備品などを収納していることがある。
【0003】
更に、ハイデッカー車と呼ばれる、客席が地上から高い位置に設けられた観光バスでは、サービスボックスの壁面に手摺り(グリップバー)が取り付けられ、ステップを昇降する乗降客がグリップバーを握れるようになっている。
【0004】
また、特許第3470778号の特許公報には、ドアを開扉した際いわゆる手摺りが車外に延長される発明が記載されている。
【特許文献1】特許第3470778号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来は、サービスボックスや仕切り板が木製であったため、それらが基本的に直方体に形成され、乗降口から車室内通路へは直角に屈曲していた。そのため乗降客は、乗降口と車室内通路との間を行き来するたびに直角に曲がらなければならず、屈曲部分で立ち止まって向きを変えるなどしていた。
【0006】
また、サービスボックスに設けられる引き出し口や開閉蓋も基本的に四角形が基本であり、これらがグリップバーを取り付けるべきサービスボックスの正面(車両に対して。)に設けられるため、グリップバーをステップに合わせて斜めに取り付けることができなかった。例えば、従来はグリップバーをステップの下方に設けて、サービスボックスの引き出しや開閉蓋と干渉しないようにしたり、グリップバーを複数に分けて設けるなどしていたが、いずれも良好な使い勝手とは言い難かった。
【0007】
更に、サービスボックスなどに直接グリップバーが取り付けられていたので、サービスボックス自体に、グリップバーにかかる荷重に耐え得る強度が必要とされ、壁厚が厚くなったり、大型化していた。したがってサービスボックスが、飲み物や備品類を収納する収納台としては、必要以上に頑丈な構造となっていた。
【0008】
本発明は上記課題を解決し、ステップを乗降客が円滑に昇降でき、しかも乗降口から車室内通路まで連続して手摺り(グリップバー)が配置され、かつ簡易な構成で、優れた外観を有し、更に軽量化を実現できる車両の乗降口構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するため車両の乗降口構造を次のように構成した。
【0010】
1、 車両の前部側方に設けられた乗降口と、
前記乗降口と前記車両の前後方向に設けられた車室内通路とを接続するステップ通路と、前記ステップ通路の前記車両後方側端縁に沿って配置された壁体と、前記壁体を支持するフレームと、前記壁体に沿って配設され、少なくとも一端が前記フレームに取り付けられたグリップバーと、を備えて車両の乗降口構造を構成した。
【0011】
2、 1に記載の車両の乗降口構造において、前記グリップバーを、前記乗降口近傍から前記車室内通路まで連続して設けることとした。
【0012】
3、 1に記載の車両の乗降口構造において、前記壁体は、前記ステップ通路の近傍に設けられた収納台の外壁の一部であることとした。
【0013】
4、 1に記載の車両の乗降口構造において、前記グリップバーの下部取付部は、前記乗降口に設けられたスイングドアの駆動アーム間に設けられていることとした。
【0014】
5、 3に記載の車両の乗降口構造において、前記グリップバーの下方に位置する壁体は、該グリップバーの外側縁とほぼ同一面となるよう幅方向に膨出し、かる膨出部分を前記収納台の収納部とした。
【0015】
6、 1に記載の車両の乗降口構造において、前記ステップの踏み板を、前記壁体の湾曲に対応して形成することとした。
【発明の効果】
【0016】
本発明にかかる車両の乗降口構造は、次の効果を有している。
グリップバーが車体に固定されたフレームに取り付けられるので、簡易な構成で剛性の高いグリップバーが設けられる。サービスボックスにはグリップバーからの荷重がほとんどかからないので、壁体を合成樹脂で形成でき、簡易な構造とし、かつ任意の形状、例えば円弧状に形成できる。
【0017】
合成樹脂で形成することによりサービスボックスに設けられる収納部を任意の形状、位置に形成できる。したがって、グリップバーに合わせて収納部を形成し、グリップバーを任意の形状に設けることができる。したがって、ステップ通路に沿って、連続したグリップバーをサービスボックスの正面に配設することができる。
【0018】
グリップバーとサービスボックスの外壁との間に間隙を任意に形成でき、グリップバーを握りやすくできる。グリップバーの下方に位置する壁体を外方向に膨出させ、膨出部分を収納部として有効利用できる。グリップバーの外表面と、グリップバーの下方に位置するサービスボックス外壁面とをほぼ同一面とし、グリップバーがサービスボックスの外壁から突出することを防止できる。
【0019】
ドア駆動機構に影響を与えることなく、グリップバーを設けることができる。昇降し易いステップ通路を形成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明にかかる車両の乗降口構造の一実施形態について、図を参照して説明する。
図1に、本発明にかかる乗降口構造を備えた車両10を示す。以下、乗降口構造について、車両10の進行方向を前方とし、それを基準として車両10の左右を定め、更に重力の方向を下方とし、車両10の中心に向かう方向を内側方向、その逆を外側方向として説明を行う。
【0021】
図1の車両10は観光用バスで、前方に運転席部分12を備え、運転席部分12の左側方に乗降口14が設けられている。乗降口14には、ドア15が取り付けられている。ドア15は、いわゆるスイングドアと呼ばれるドアで、乗降口14の右側、すなわち第2ピラー13(図8参照)の近傍にドア駆動機構16(図3参照)が組み付けてあり、車両10の側面とほぼ平行を保ったまま後方に開扉される構造となっている。
【0022】
車両10は、いわゆるハイデッカーと呼ばれる観光用バスで、客席用座席18が標準車と比較して地上から高い位置に設置されている。客席用座席18は、図2に示すように客席用床面20上に左右に2席ずつ並べて車両10の後部まで取り付けられており、客席用床面20の中央には前後方向に沿って、車室内通路22が車両10の後部まで設けられている。図2は、乗降口14付近を上方より見た図である。
【0023】
乗降口14から車室内通路22までは、乗降用通路23が設けられている。乗降用通路23はステップ24を具え、乗降口14から車室内通路22の高さまで上昇しながらなだらかに湾曲する通路となっている。ステップ24は、中段に踊り場を具え、各踏み板は、乗降用通路23の屈曲に合わせて、その向きと形状が適宜形成されている。かかる乗降用通路23の屈曲内側、すなわち車両10の後方側には、サービスボックス30が設置してある。
【0024】
次に、サービスボックス30について説明する。サービスボックス30は、図3に示すように、縦長の箱体で、内部に設けられたフレーム32と、壁体を構成する筐体34と、外表面に取り付けられたグリップバー(手摺り)36などから構成されている。図3は、サービスボックス30の正面を示し、図7は、乗降口14側から見たサービスボックス30を示す。
【0025】
フレーム32は金属製で、図4に示すように台座部37と、台座部37上に立ち上げられた支柱38などから構成してあり、図3に点線で示すように客席用床面20上に設置されている。台座部37は、前方に屈曲部28を具え、客席用床面20上にボルトなどで固定される。支柱38は、台座部37上に車幅方向に2本設けられており、適宜筐体34を固定するボルト用の取付孔を具えている。2本の支柱38はサービスボックス30の上部まで延びており、車幅方向内側の支柱38には、ブラケット39がほぼ高さ方向の中間位置に設けられている。ブラケット39は、後述するようにグリップバー36の上部が支持部53を介して取り付けられる部材である。
【0026】
筐体34は、例えば射出成形による合成樹脂製で、フレーム32に設けられたボルト孔などを用いて固定、支持されている。筐体34は、図3に示す正面、すなわち車両の前方側に向いた面から、側面、つまり車両10の内側に向いた面(図6に示す。)にかけて図2、及び図7に示すようにほぼ円弧状に湾曲している。かかる筐体34の正面から側面にかけての湾曲は、乗降用通路23の湾曲とほぼ同一の形状に形成されている。
【0027】
筐体34の正面から側面にかけての乗降用通路23に面した側(以下、「通路側側面」とする。)には、上部蓋体40、下部蓋体41、右横蓋体42が設けられている。上部蓋体40は、2箇所の角に丸みを有するほぼ三角形状で、左上部から下縁にかけて、グリップバー36に沿って、上部蓋体40を開閉させた際グリップバー36に干渉しないように形成されている。上部蓋体40は、左上方にノブ43を具え、ノブ43を引くと手前に開き、図5に示す上部収納室44が開放されるようになっている。上部収納室44は、筐体34の内部に、点線で示すように矩形に形成されている。
【0028】
下部蓋体41は、右上縁がグリップバー36に沿って形成してあり、下縁は、乗降用通路23に形成されたステップ24の傾斜に沿わせて形成してある。下部蓋体41は、左側にノブ45を具え、ノブ45を引くと手前に開き、図5に示す下部収納室46が開放される。下部収納室46は、筐体34の内部に、点線で示すように矩形で底面に段差を有して形成されている。
【0029】
右横蓋体42は、ほぼ四角形で、ノブ47を具え、ノブ47を引くと手前に開き、図5に示す右横収納室48が開放される。
【0030】
グリップバー36は、全体がS字状の金属製のパイプからなり、図3、及び図7に示すようにサービスボックス30の通路側側面に沿って取り付けられている。具体的には、グリップバー36は、乗降口14の近傍に位置した下端からほぼ垂直に立ち上がり、車両10の内方に向かうと共に車両後方側に湾曲し、グリップバー36の中央付近から徐々に再び上方に向き、車室内通路22の近傍に位置するように形成されている。
【0031】
グリップバー36は、図6に示すように上部においてグリップバー36から側方に分岐するように形成された支持部53を介してフレーム32のブラケット39に取り付けてある。また、下部においては、グリップバー36から側方に分岐するように形成された支持部54を介して取付金具50にボルト60で取り付けてある。取付金具50は、図3に示すようにドア15の上下アーム17の間に位置し、図8に示すようにドア駆動機構16の駆動軸19を避けるように湾曲して乗降用通路23の車両後方側の壁体52にボルト61で固定されている。図8は、図3のF8−F8線における断面図である。
【0032】
更に、筐体34は、図7に示すようにグリップバー36の下方では、グリップバー36の外側縁とほぼ同一面となるように形成してあり、かつグリップバー36の外表面から所定の間隔があくように内側に凹ませて形成されている。すなわち、境界線56の下側では、グリップバー36と同一面となるよう筐体34は前方に膨出し、境界線56の上側では、所定の間隔分内方に下がって厚みが薄く形成されている。したがってグリップバー36は、筐体34の下部の外表面から突出することなく、グリップバー36の長さ方向にわたってグリップバー36の周囲に所定の間隙を有して設けられている。
【0033】
次に、上記乗降口の構造を備えた車両10の作用、効果について説明する。
【0034】
グリップバー36は、フレーム32に上部が固定してあり、乗降用通路23の壁体52に下部が固定してあるので、乗降客の昇降に関してこれを保持するに十分な強度を備えている。筐体34は合成樹脂製で、フレーム32に取り付ける構成としたため、任意な形状に形成でき、乗降用通路23をなだらかに湾曲させることができる。これにより、乗降客の昇降を円滑にできる。
【0035】
グリップバー36が、乗降用通路23の全体にわたり、乗降用通路23に沿って連続して設けられているので、グリップバー36を用いて乗降客は安全に乗降用通路23を昇降できる。グリップバー36の下部の筐体34を、グリップバー36と同一面に形成したので、グリップバー36が筐体34から突出して設けられることがない。更に膨出させた部分をサービスボックス30の収納室として利用したので、サービスボックス30の収納容量を拡大できる。
【0036】
ステップ24の踏み板を、乗降用通路23の湾曲に合わせて適宜形成したので、乗降用通路23に沿って乗降客が昇降しやすくなる。グリップバー36の下部において、ドア15の上下アーム17の間で、壁体52に固定したので、ドア駆動機構16の動作に影響を与えることがない。
【0037】
尚、本発明にかかる乗降口の構造は、バスに限るものではなく、同様な構成を有する車両に適用することが可能である。また、乗降口14の配置は、車両10の左側面に限るものではない。更に、乗降用通路23の左側、すなわちフロントガラスの下側の部分から運転席部分12にかけて、乗降用通路23の右側と同様な湾曲面を形成してもよい。すると、乗降用通路23はほぼ平行に湾曲した通路に形成される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明にかかる乗降口構造を備えた車両の一実施形態を示す斜視図。
【図2】乗降口構造を示す平面図。
【図3】サービスボックスを示す正面図。
【図4】フレームを示す斜視図。
【図5】サービスボックスを示す正面図。
【図6】サービスボックスを示す側面図。
【図7】サービスボックスを示す斜視図。
【図8】取付金具を示す断面図。
【符号の説明】
【0039】
10…車両
12…運転席部分
14…乗降口
15…ドア
16…ドア駆動機構
18…客席用座席
20…客席用床面
22…車室内通路
23…乗降用通路
24…ステップ
30…サービスボックス
32…フレーム
34…筐体
36…グリップバー
39…ブラケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前部側方に設けられた乗降口と、
前記乗降口と前記車両内に設けられた車室内通路とを接続する湾曲したステップ通路と、
前記ステップ通路の前記車両後方側端縁に沿って配置された壁体と、
前記車両に固定され、前記壁体を支持するフレームと、
前記壁体に沿って配設され、少なくとも一端が前記フレームに固定されたグリップバーと、を備えたことを特徴とする車両の乗降口構造。
【請求項2】
前記グリップバーは、前記乗降口近傍から前記車室内通路まで連続して設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車両の乗降口構造。
【請求項3】
前記壁体は、前記ステップ通路の近傍に設けられた収納台(サービスボックス)の外壁の一部である請求項1に記載の車両の乗降口構造。
【請求項4】
前記グリップバーの下部取付部は、前記乗降口に設けられたスイングドアの駆動アームの間に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車両の乗降口構造。
【請求項5】
前記グリップバーの下方に位置する前記壁体は、該グリップバーの外側縁とほぼ同一の外表面となるよう幅方向に膨出し、該膨出部分の内側が前記収納台の収納部を形成していることを特徴とする請求項3に記載の車両の乗降口構造。
【請求項6】
前記ステップの踏み板は、前記ステップ通路の湾曲に対応して形成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両の乗降口構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−308045(P2008−308045A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−157895(P2007−157895)
【出願日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(303002158)三菱ふそうトラック・バス株式会社 (1,037)
【Fターム(参考)】