説明

車両の切り換えスイッチの切り換え状態表示構造

【課題】メーターに切り換えスイッチの切り換え状態の表示用のスペースが不要で、運転者が切り換えスイッチの切り換え状態を瞬時に把握することができる車両の切り換えスイッチの切り換え状態表示構造を提供する。
【解決手段】車両の所定の切り換えスイッチ10がオンの状態で、前記切り換えスイッチ10の意匠部11Aを点灯させるとともに、インストルメントパネル1上のメーター20の表示面のクラスター24で囲まれた範囲Xを、前記切り換えスイッチ10の意匠部11Aの点灯色と同色に照明する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両の切り換えスイッチの切り換え状態表示構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の切り換えスイッチの一例として2輪駆動と4輪駆動に切り換える切り換えスイッチがある。従来、車両の運転中に前記切り換えスイッチの切り換え状態を把握できるように、切り換えスイッチをオンの状態で点灯させる技術があった(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公昭63−43145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両の切り換えスイッチは、一般に、運転者の視界から離れたインストルメントパネル上やセンターコンソールなどの操作パネルに設けられている。そのために、上記従来の技術によれば、運転中に切り換え状態を視認するのに視界を大きく移動させなければならなかった。
インストルメントパネル上のメーターの画面に切り換えスイッチの切り換え状態を図示する技術もあるが、この技術ではメーターの画面に図示のためのスペースを必要としていた。一方、スペース削減のために小さい図にした構造では、切り換え状態を瞬間的に把握することができず、注視時間を長くしなければならなかった。
本発明は上記実状に鑑みて成されたもので、その目的は、メーターに切り換えスイッチの切り換え状態の表示用のスペースが不要で、運転者が切り換えスイッチの切り換え状態を瞬時に把握することができる車両の切り換えスイッチの切り換え状態表示構造を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の特徴は、
車両の所定の切り換えスイッチがオンの状態で前記切り換えスイッチの意匠部を点灯させるとともに、インストルメントパネル上のメーターの表示面のクラスターで囲まれた範囲を前記切り換えスイッチの意匠部の点灯色と同色に照明する点にある。(請求項1)
【0006】
この構成によれば、切り換えスイッチが、運転中の視界から離れたインストルメントパネル上やセンターコンソールなどの操作パネルに設けられていても、運転者は切り換えスイッチの点灯を確認するのではなく、インストルメントパネル上のメーターの照明色を確認する程度の短い視線の移動で切り換えスイッチの切り換え状態を瞬時に把握することができる。また、メーター上に切り換えスイッチの切り換え状態の表示や図を必要としないから、その他の表示をメーター上に余裕を持って配置することができる。
そして、インストルメントパネル上のメーターの表示面のクラスターで囲まれた範囲と前記切り換えスイッチの意匠部とが同色に点灯・照明しているから、メーターの照明色が切り換えスイッチの意匠部の点灯色と整合性が取れているか否かを確認することができる。(請求項1)
【0007】
本発明において、
前記切り換えスイッチの意匠部を光透過性材料で形成し、点灯光が前記切り換えスイッチの内部側から前記意匠部を透過すると、切り換えスイッチの意匠部を確実に点灯することができ、メーターの照明色が切り換えスイッチの意匠部の点灯色と整合性が取れているか否かを容易に確認することができる。(請求項2)
【0008】
本発明において、
前記切り換えスイッチを取り囲むように設けたダイヤルにより前記照明の強弱及びオフ状態を調整可能にしてあると、車外の明るさや運転者の好み、切り換え状態の使用頻度などに合わせて照明の強弱を調整することができ、運転者の使い勝手を向上させることができる。(請求項3)
【0009】
本発明において、
前記照明の色を紫、青等の寒色系にしてあると、メーターの指針や目盛りなどのための他の照明と区別しやすくすることができる。(請求項4)
【0010】
本発明において、
前記切り換えスイッチは2輪駆動と4輪駆動に切り換えるスイッチであり、
前記切り換えスイッチをオンにすると2輪駆動から4輪駆動に切り換わり、オフにすると4輪駆動から2輪駆動に切り換わると、運転者が4輪駆動への切り換え状態を瞬時に確認することができる。(請求項5)
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、
メーターに切り換えスイッチの切り換え状態の表示用のスペースが不要で、運転者が切り換えスイッチの切り換え状態を瞬時に把握することができる車両の切り換えスイッチの切り換え状態表示構造を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】インストルメントパネルとその周辺の構成部品を示す斜視図
【図2】操作パネルの斜視図
【図3】メーターの正面図
【図4】図1のA−A断面図
【図5】メーターの分解斜視図
【図6】コンビネーションメーターの縦断側面図
【図7】切り換えスイッチの切り換え状態表示構造の回路図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。図1に示すように、インストルメントパネル1の車幅方向中央にセンターコンソール2が配置されている。そして、運転席横側前方のシフトレバー5の車両前方側に立ち上がったセンターコンソール部分の表面に操作パネル4が設けられ、この操作パネル4に、空調、オーディオなどの操作スイッチ3と、2輪駆動と4輪駆動に切り換える円盤状の切り換えスイッチ10(所定の切り換えスイッチに相当)とが設けられている。符号6はステアリングホイール、20はメーターである。
【0014】
メーター20について説明すると、図5に示すように、インストルメントパネル1に、ステアリングホイール6のシャフトを貫通させるための開口部9を形成するとともに、開口部9の上方に凹部19を形成してある。そして、凹部19にコンビネーションメーター25を嵌め込んで固定し、コンビネーションメーター25の表示部の周囲を取り囲むようにクラスター24を取り付けてスクリューSで固定してある。
【0015】
コンビネーションメーター25には速度計21と回転数計22と燃料計23を一体に設けてある(図3参照)。コンビネーションメーター25の裏面側には、インストルメントパネル1の内部の電子回路に結線されるハーネスなどが凹部19の孔等を通して結線されている。
【0016】
前記凹部19の上部に被さるように庇27がインストルメントパネル1に一体に形成されている。これにより、メーター20の表示面である速度計21の表示面21Mと回転数計22の表示面22Mと燃料計23の表示面23Mにフロントガラスからの外光が当たらないようにして、メーター20の視認性が低下するのを防止している。クラスター24は庇27の下面側を覆うように室内方向に向けて庇状に突出している。
【0017】
図4,図6にコンビネーションメーター25の断面図を示してある。メーター指針31はムーブメント32を表示板33の貫通孔を通じて連結することにより作動可能となっている。表示板33の裏面側にはプリント基板34が配置され、このプリント基板34上に複数の発光ダイオード35を固定することにより、メーター指針31の光透過性の材料で形成された箇所やその他の表示板33上の表示を裏面側から照らして発光可能としている。
【0018】
図2に示すように、前記切り換えスイッチ10は、スイッチ部11と、スイッチ部11の外周を囲む枠状のダイヤル12とを備えている。このスイッチ部11を指で押すと回路がオンとなって2輪駆動から4輪駆動に切り換わり、スイッチ部11を再び押すと回路がオフとなって4輪駆動から2輪駆動に切り換わる。
【0019】
また、スイッチ部11を光透過性の樹脂材で構成し、スイッチ部11の裏側(車両前方側)に光源としての発光ダイオードを設け、4輪駆動に切り換わっているときは、点灯光がスイッチ部11の内部からスイッチ部11の意匠部11Aを透過して、意匠部11Aの全面が発光するよう構成してある。逆に、2輪駆動に切り換わっているときは発光ダイオードが消灯して前記意匠部11Aは発光しない。これにより、運転者はスイッチ部11を見て発光していれば、4輪駆動に切り換わっていると認識することができる。
【0020】
しかしながら、運転中の視線をインストルメントパネル1の中央下方のセンターコンソール2の操作パネル4まで移動させると、4輪駆動になっているか否かの確認時間が長くなる。そこで本発明では、さらに、インストルメントパネル1の運転席側に配置したステアリングホイール6の車両前方側に位置するメーター20に、4輪駆動に切り換わっているか否かを表示する表示構造を設けてある。
【0021】
すなわち、前記切り換えスイッチ10がオンの4輪駆動状態で、切り換えスイッチ10の意匠部11Aを点灯させるとともに、速度計21の表示面21Mと回転数計22の表示面22Mと燃料計23の表示面23Mとを取り囲むクラスター24に囲まれた範囲Xを、切り換えスイッチ10の意匠部11Aの点灯色と同色に照明し、前記切り換えスイッチ10がオフの2輪駆動状態で、切り換えスイッチ10の意匠部11Aを消灯させ、前記意匠部11Aの点灯色と同色の前記範囲Xの照明を停止するよう構成してある。
【0022】
詳しくは、図6に示すように、前記一般的な発光ダイオード35とは別に、2輪駆動と4輪駆動に切り換える切り換えスイッチ10のスイッチ部11と同色の光を発光する4輪駆動表示用発光ダイオード36をプリント基板34上に配置してある。
そして、見返し板37と表示板33との当接する位置の近傍に設けた光透過性材料で形成した光透過部33a(隙間であってもよい)を通じて、前記速度計21の表示面21Mと回転数計22の表示面22Mと燃料計23の表示面23Mとの輪郭を浮かび上がらせるように構成してある(前記速度計21の表示面21Mと回転数計22の表示面22Mと燃料計23の表示面23Mとの全てではなく、これらのうちのいずれか一つだけ、あるいは任意の組み合わせの二つの輪郭を浮かび上がらせるように構成してあってもよい)。
【0023】
前記スイッチ部11の表示用発光ダイオード及び4輪駆動表示用発光ダイオード36は、通常のメーター20の指針や文字などの照明に使用される色(黄色、赤、オレンジ、緑)とは異なって、メーター20の照明に使用されない寒色系の色(例えば紫あるいは青)にしてある。
【0024】
これにより、運転者は2輪駆動状態か4輪駆動状態かを確認するのに、メーター20を注視することなく、前方視界をある程度保ったままメーター20の発光色を認識するだけでよいため、従来に比べて非常に少ない負担で4輪駆動への切り換え状態を把握することができる。
【0025】
さらに、4輪駆動用発光ダイオード36の光の強さを調整可能にすることにより、車外の明るさや運転者の好みに合わせて手動での調整を可能にしてある。具体的には、スイッチ部11を取り囲むように設けたダイヤル12を回転することにより、メーター20の4輪駆動表示用発光ダイオード36の光の強弱を調整可能にして前記照明の強弱を調整可能にしてある。従って、運転者は各自の認識のしやすさに合わせた照明の強さを選ぶことができる。また、このダイヤル12を回転終端位置まで回すことにより、4輪駆動表示用発光ダイオード36の照明を消してオフ状態にすることも可能にし、使用頻度に合わせて表示の照明の有無を選択可能にしてある。
【0026】
図7に回路図を示してある。スイッチ部11を押してスイッチがオンになるとバッテリ40からの通電により、制御装置50にスイッチがオンの状態であることが伝達され、この制御装置50に予め組み込まれたプログラムの信号により4輪駆動用発光ダイオード36が点灯される。さらに、ダイヤル12の回転角度の情報も制御装置50に送られ、光の強弱に関する信号が4輪駆動用発光ダイオード36の調整部に送られる。
スイッチ部11を再び押してスイッチがオフになると、制御装置50にスイッチがオフの状態であることが伝達され、この制御装置50に予め組み込まれたプログラムの信号により4輪駆動用発光ダイオード36が消灯される。
【0027】
図3に示すように、メーター20の表示面にも4輪駆動中である自動車の表示部29を現わせてメーター20で確認可能に構成してあるが、この構造に換えて、前記表示部29を省略した構造に構成することもできる。前記表示部29を省略した構造によれば、表示部29を省略することでその他の表示をメーター上に余裕を持って配置することができる。
【0028】
[別実施形態]
前記切り換えスイッチは、アイドリングストップや加速制御を自動的に行ういわゆるエコロジー運転を可能とする切り換えスイッチであってもよい。
すなわち、アイドリングストップや加速制御を自動的に行ういわゆるエコロジー運転を可能とする切り換えスイッチがオンの状態で、この切り換えスイッチの意匠部を点灯させ、かつ、インストルメントパネル上のメーターの表示面のクラスターで囲まれた範囲を、前記切り換えスイッチの意匠部の点灯色と同色に照明する車両の切り換えスイッチの切り換え状態表示構造にも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0029】
1 インストルメントパネル
10 切り換えスイッチ
11A 意匠部
12 ダイヤル
20 メーター
21M,22M,23M メーターの表示面
24 クラスター
X インストルメントパネル上のメーターの表示面のクラスターで囲まれた範囲

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の所定の切り換えスイッチがオンの状態で前記切り換えスイッチの意匠部を点灯させるとともに、インストルメントパネル上のメーターの表示面のクラスターで囲まれた範囲を前記切り換えスイッチの意匠部の点灯色と同色に照明する車両の切り換えスイッチの切り換え状態表示構造。
【請求項2】
前記切り換えスイッチの意匠部を光透過性材料で形成し、点灯光が前記切り換えスイッチの内部側から前記意匠部を透過する請求項1記載の車両の切り換えスイッチの切り換え状態表示構造。
【請求項3】
前記切り換えスイッチを取り囲むように設けたダイヤルにより前記照明の強弱及びオフ状態を調整可能にしてある請求項1又は2記載の車両の切り換えスイッチの切り換え状態表示構造。
【請求項4】
前記照明の色を紫、青等の寒色系にしてある請求項1〜3のいずれか一つに記載の車両の切り換えスイッチの切り換え状態表示構造。
【請求項5】
前記切り換えスイッチは2輪駆動と4輪駆動に切り換えるスイッチであり、
前記切り換えスイッチをオンにすると2輪駆動から4輪駆動に切り換わり、オフにすると4輪駆動から2輪駆動に切り換わる請求項1〜4のいずれか一つに記載の車両の切り換えスイッチの切り換え状態表示構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−208586(P2010−208586A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−59675(P2009−59675)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】