説明

車両の制動制御装置

【課題】センターデフロック状態又は直結4輪駆動状態であっても、制動制御を行い、運転者の運転を適切に支援できる制動制御装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、車輪への制動力を制御して、車両の旋回中の挙動を安定させる車両の制動制御装置80であって、
前記車両の旋回状態を検出する旋回状態検出手段10と、
該旋回状態検出手段により検出された旋回状態に基づいて、前記車両の各車輪の制動制御量を設定する制動制御量設定手段20と、
該制動制御量設定手段により設定された制動制御量に基づいて、前記各車輪の制動制御を行う制動制御手段50と、
前記車両が走行している路面の路面摩擦係数を推定する路面摩擦係数推定手段30とを備え、
前記制動制御量設定手段は、前記車両がセンターデフロック状態又は直結4輪駆動状態のときには、前記各車輪の制動制御量の上限を、前記路面摩擦係数推定手段により推定された路面摩擦係数に応じて変更することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制動制御装置に関し、特に、フルタイム4輪駆動車のセンターデフロック状態又はパートタイム4輪駆動車の直結4輪駆動状態のときの車両の挙動を安定させる制動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両の旋回時の挙動状態に応じて、各輪の制動力を制御する車両の挙動制御装置が知られている。かかる車両の挙動制御装置において、センターデフがロック状態の場合には、前輪と後輪の回転数差が拘束されることで、意図しない車輪に制動力や駆動力が働き、センターデフがフリーの場合と比べると、アンチスピンモードの大きさやタイヤ横力の前後輪バランスが変化することから、センターデフがロック状態である場合には、各輪の制動力制御及びエンジン出力制御を禁止して、運転者の期待にそぐわない制御が行われることを防止した技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−344077号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述の特許文献1に記載の構成では、センターデフがロック状態では、一切車両の挙動制御装置による制御が行われなくなるので、運転者の運転を支援する制御が全く行われないことになり、運転者にとっては挙動制御装置の恩恵を全く受けることができなくなってしまうという不都合があった。
【0004】
そこで、本発明は、センターデフロック状態又は直結4輪駆動状態であっても、制動制御を行い、運転者の運転を適切に支援できる制動制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、第1の発明に係る車両の制動制御装置は、車輪への制動力を制御して、車両の旋回中の挙動を安定させる車両の制動制御装置であって、
前記車両の旋回状態を検出する旋回状態検出手段と、
該旋回状態検出手段により検出された旋回状態に基づいて、前記車両の各車輪の制動制御量を設定する制動制御量設定手段と、
該制動制御量設定手段により設定された制動制御量に基づいて、前記各車輪の制動制御を行う制動制御手段と、
前記車両が走行している路面の路面摩擦係数を推定する路面摩擦係数推定手段とを備え、
前記制動制御量設定手段は、前記車両がセンターデフロック状態又は直結4輪駆動状態のときには、前記各車輪の制動制御量の上限を、前記路面摩擦係数推定手段により推定された路面摩擦係数に応じて変更することを特徴とする。これにより、センターデフがロック状態又は直結4駆状態であっても、ブレーキにより車両の挙動安定制御を行うことができる。
【0006】
第2の発明は、第1の発明に係る車両の制御装置において、前記制動制御量の上限は、前記路面摩擦係数が圧雪路より小さい値のときには、前記車両がセンターデフロック状態又は直結4輪駆動状態でないときよりも低く設定されたことを特徴とする。これにより、路面摩擦係数が小さい、いわゆる低μ路であっても、車両の挙動をブレーキにより安定に制御することができる。
【0007】
第3の発明は、第1又は第2の発明に係る車両の制動制御装置において、
前記制動制御量設定手段は、前記路面摩擦係数が第1の所定値より小さいときには、後輪の前記制動制御量の上限をゼロに設定し、旋回外側前輪のみを制御対象として制動制御量を設定することを特徴とする。これにより、アイスバーン等のいわゆる極低μ路であっても、車両の挙動を制動力により安定に制御することができる。
【0008】
第4の発明は、第3の発明に係る車両の制動制御装置において、
前記制動制御量設定手段は、前記路面摩擦係数が前記第1の所定値以上第2の所定値以下のときには、旋回内側後輪の前記制動制御量の上限をゼロに設定し、旋回外側の前輪及び後輪を制御対象として制動制御量を設定することを特徴とする。これにより、アイスバーン等のいわゆる極低μ路よりは路面摩擦係数が高いが、雪等が混じったいわゆる低μ路についても、車両の挙動を制動力により安定に制御することができる。
【0009】
第5の発明は、第4の発明に係る車両の制動制御装置において、
前記制動制御量設定手段は、前記路面摩擦係数が前記第2の所定値より大きいときには、旋回内側前輪以外の3輪を制御対象として制動制御量を設定することを特徴とする。これにより、路面摩擦係数がある程度高くなったときには、基準輪以外の3輪総てを制御対象とすることにより、車両の挙動を制動力により安定に制御できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、センターデフロック状態にあるフルタイム4輪駆動車又は直結4輪駆動状態にあるパートタイム4輪駆動車であっても、路面摩擦係数に応じて適切に制動制御を行うことにより、車両の挙動制御を行って車両を安定に旋回制御できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。
【0012】
図1は、本実施例に係る車両の制動制御装置80の構成を概略的に示した図である。本実施例に係る制動制御装置80の主要構成要素は、旋回状態検出手段10と、制動制御量設定手段20と、路面摩擦係数推定手段30と、ブレーキアクチュエータ等が適用される制動制御手段50とを含む。
【0013】
本実施例に係る制動制御装置80に関連する車両の構成要素としては、プロペラシャフト62が、フロントデフ63及びリアデフ64に取り付けられ、フロントデフ63に取り付けられたフロントアクスル65を介して前輪FR、FLが取り付けられ、リアデフ64に取り付けられたリアアクスル66を介して後輪RR、RLが取り付けられている。本実施例に係る車両は、4輪駆動車であり、フルタイム4輪駆動車及びパートタイム4輪駆動車の双方を含んでよい。駆動状態切替手段60が、プロペラシャフト62の中央に設けられている。駆動状態切替手段60は、フルタイム4輪駆動車の場合はセンターデファレンシャルであり、パートタイム4輪駆動車の場合は、プロペラシャフト62のロック機構である。
【0014】
なお、駆動状態切替手段60は、例えば、駆動状態切替スイッチ61により駆動状態を切り替え可能に構成してよい。また、駆動状態切替スイッチ61は、必要に応じてリアーデフロック状態等の駆動状態も切り替え可能に構成してよい。
【0015】
図2は、フルタイム4輪駆動車の概略構成図である。図2において、エンジン73の駆動力は、センターデファレンシャル60aを介して前輪側と後輪側のプロペラシャフト62F,62Rに配分される。プロペラシャフト62F、62Rに配分された駆動力は、前輪側はフロントデフ63を介してフロントアクスル65に伝達され、後輪側はリアデフ64を介してリアアクスル66に伝達される。センターデファレンシャル60aは、前後の車輪の差動を許容するギアであるが、ユーザの切り替えにより、センターデフロック状態とし、前後の車輪の差動を制限するように設定することが可能である。例えば、駆動状態切替スイッチ61aにより、センターデフ60aがデフロック状態とされると、前輪のプロペラシャフト62Fと後輪のプロペラシャフト62Rの回転数が等しくなり、前輪の左右輪の回転数平均と後輪の左右輪の回転数平均が等しくなるように差動制限を受ける。このようなセンターデフロック状態において、本実施例に係る制動制御装置80は適用される。
【0016】
図3は、パートタイム4輪駆動車の概略構成を示した図である。図3において、図3のセンターデファレンシャル60aがロック機構60bに変更された点が図2のフルタイム4輪駆動車と異なっている。パートタイム4輪駆動車は、通常は2輪駆動状態で走行し、必要なときのみ前後のプロペラシャフト62F、62Rが直結される。例えば、トランスファーレバー61bにより前後のプロペラシャフトが直結されると、直結4輪駆動状態となり、フルタイム4輪駆動車のセンターデフロック状態と同じ状態となる。このような場合にも、本実施例に係る制動制御装置80は適用される。
【0017】
なお、図2及び図3で説明したように、フルタイム4輪駆動車のセンターデフロック状態と、パートタイム4輪駆動車の直結4輪駆動状態は、前輪側のプロペラシャフト62Fと後輪側のプロペラシャフト62Rの回転数が等しく、同じ駆動状態を意味しているので、本明細書又は図面において、単に直結4輪駆動状態と呼ぶときは、フルタイム4輪駆動車のセンターデフロック状態も含むこととする。
【0018】
図1に戻り、本実施例に係る制動制御装置80の構成要素の説明を行う。
【0019】
旋回状態検出手段10は、車両の旋回状態を検出する手段である。旋回状態検出手段10は、例えば、加速度センサ11により車両の前後加速度及び/又は横加速度、ヨーレートセンサ12によりヨーレート、操舵角センサ13により操舵角、及び車輪速センサ14から車速及び/又は車輪速等を検出してよい。また、これらの検出値に基づいて、旋回状態を示す横滑り等を検出してよい。例えば、車体のスリップ角と車体のスリップ角速度の値により後輪横滑り傾向の旋回状態を検出したり、操舵量と車速から運転者の要求ヨーレートを演算し、実際の車両のヨーレートと比較することにより、前輪横滑り傾向の旋回状態を検出してよい。旋回状態検出手段10により検出された旋回状態に関する情報は、制動制御量設定手段20に送られる。
【0020】
制動制御量設定手段20は、旋回状態検出手段10により検出された車両の旋回状態の挙動を示すデータに基づき、制動制御量の設定演算をまず行う。即ち、制動制御量設定手段20は、旋回状態検出手段10で検出された旋回状態が横滑り傾向にある場合に、その横滑りを打ち消すようなアンチモーメント力を車両に発生させるように、各車輪FR、FL、RR、RLに加える制動制御量を定める。例えば、車両の強い後輪横滑り傾向が検出された場合には、その傾向の程度に応じて、旋回外側前後輪にブレーキをかけ、車両の外向きに安定化モーメントを発生させ、後輪の横滑り傾向を抑制するような設定演算を行なう。なお、制動制御の対象となる車輪は、旋回内側前輪を除く3輪であり、旋回内側前輪は、他の3輪を制動制御する際の基準輪となる。
【0021】
また、制動制御量設定手段20は、上述のように、最初に、車両の旋回状態を安定化させる安定化モーメントを算出し、各車輪に加える制動制御量を定めるが、その際に、設定した制動制御量を最終的に出力するか否かの判断も行う。つまり、制動制御量設定手段20は、車両の旋回状態により安定化モーメントを一旦算出し、これに基づいて制動制御量を算出するが、これらの制動制御量をそのまま出力してよいか否かは、車両の駆動状態及び路面摩擦係数μからも影響を受けるため、これを判断した上で制動制御量の設定出力を行う。本実施例に係る制動制御装置80は、4輪駆動車が直結4輪駆動状態にある場合に適用するので、通常の2輪駆動車とは異なる制約上の上で制動制御量を設定する必要があり、制動制御量設定手段20は、そのような制約を考慮した上で最終的な制動制御量を定める。詳細は後述するが、具体的には、制動制御量に上限を設け、更にその上限を路面の路面摩擦係数により変更するようにしている。従って、制動制御量設定手段20は、旋回状態検出手段10で検出された旋回状態に基づいて安定化モーメントを算出し、これを実現するような各車輪の制動制御量を設定するが、制動制御量が上述の上限を超えている場合には、上限の制動量が設定されることになる。そして、その制動制御量の上限は、車両が走行している路面の摩擦係数μに応じて変更されることになる。
【0022】
なお、制動制御量の上限は、ゼロも含まれる。制動制御量の上限がゼロということは、その制動制御量を出力しないということになり、実質的に、制御対象輪から除いたと考えてもよい。即ち、制動制御量設定手段20は、旋回状態検出手段10に基づいて、安定化モーメントの算出を3輪について行うが、制動制御量の上限がゼロに設定されている車輪については、その安定化モーメントを実現するような制動制御量を出力せず、制御対象から除く制御も行う。具体的には、制御対象輪が、旋回外側前輪の1輪のみになる場合と、旋回外側前後輪の2輪になる場合がある。この点についても、後に詳説する。
【0023】
制動制御量設定手段20により設定された制動制御量は、制動制御手段50に送られる。なお、制動制御量は、最終的に、各車輪のブレーキキャリパーのホイールシリンダー53a、53b、53c、53dの制動圧を制御するように定められればよく、演算の過程においては、車輪速度や目標スリップ率等の制御し易い変数を用いて制動制御量の制御目標値等の設定を行ってよい。
【0024】
路面摩擦係数推定手段30は、車両が走行している路面の路面摩擦係数μを推定する手段である。上述のように、本実施例に係る制動制御装置80では、路面摩擦係数に応じて制動制御量設定手段20で設定される制動制御量の上限が変更されるため、走行中の路面の摩擦係数μを推定する必要があり、路面摩擦係数推定手段30が設けられている。
【0025】
路面摩擦係数推定手段30は、その路面摩擦係数μの推定手法としては、種々の手法を利用してよい。例えば、実験的に得られたマップから、操舵角と横加速度に基づいて路面摩擦係数μを推定する手法でもよい。また、例えば、操舵角及び車速をもとに推定した横加速度と、加速度センサ11で検出した実測の横加速度との偏差に基づいて路面摩擦係数μを推定する手法であってもよい。
【0026】
なお、路面摩擦係数μは、道路の状況により種々異なりうるが、例えば圧雪路面ではμ=0.3程度、アイスバーンの状態の氷路面ではμ=0.1程度、その中間のμ=0.2程度が氷と雪の混じった路面に該当し得る。路面摩擦係数推定手段30により推定された路面摩擦係数μは、上述の制動制御量設定手段20に送られ、制動制御量の上限を定めるのに利用される。
【0027】
今まで説明した旋回状態検出手段10、制動制御量設定手段20及び路面摩擦係数推定手段30は、例えば、車両安定制御ECU40に一体的に構成されてよい。
【0028】
車両安定性制御ECU40は、VSC(Vehicle Stability Control)システムと呼ばれる車両安定性制御システムを制御するためのECU(Electric Control Unit、電子制御ユニット)である。車両安定性制御ECU40は、車両の旋回状態で、車両の安定性を確保するためにブレーキによる制動力を自動的に演算して制御を行う。車両安定制御ECU40は、例えばプログラムにより演算を行なう計算機として構成されてよい。車両安定性制御ECU40は、通常の2輪駆動車に適用されている従来の車両安定性制御システムの演算制御機能を有することが最低限必要である。そして、本実施例に係る制動制御装置80は、従来からの車両安定性制御システムを前提として、直結4輪駆動状態の場合に適用する制動制御装置80を提案しているので、制動制御装置80の演算機能手段である制動制御量設定手段20及び路面摩擦係数推定手段30は、各々別個に設けてもよいが、車両安定性制御ECU40に組み込んで一体的に構成することが好ましい。なお、車両安定性制御システムのオン・オフは、例えば、運転席の近くにある入力スイッチ41により切り替えられてよい。
【0029】
なお、本実施例に係る制動制御装置80においては、制動制御を対象とし、エンジン出力の制御には言及していないが、通常の車両安定性制御システムにおいては、エンジン出力も制御してよく、そのための制御手段として、エンジンECU70とスロットルアクチュエータ71とスロットル開度センサ72を備えてもよい。
【0030】
制動制御手段50は、ブレーキアクチュエータが好適に適用され、ブレーキによる各車輪FR、FL、RR、RLの制動力の制御を行う。制動制御手段50は、制動制御量設定手段20から送られてきた各車輪FR、FL、RR、RLの制動量の指示に従い、マスターシリンダ51から送られてくる油圧を圧力センサ52で検出しながら、各車輪FR、FL、RR、RLのホイールシリンダ53a、53b、53c、53dに加える制動圧を制御する。制動制御手段50は、例えば、油圧ポンプやソレノイドバルブを含んでよく、これらにより制御対象輪のホイールシリンダ53a、53b、53c、53dを制御してよい。
【0031】
次に、制動制御量設定手段20における、制動対象輪の変更制御について説明する。
【0032】
図4は、直結4輪駆動状態の車両に、従来の車両安定性制御システムを適用した場合の問題と、本実施例に係る制動制御装置80の制御対象輪の考え方を説明するための図である。図4においては、車両が左側に旋回しているときに、後輪RR、RLの強い横滑りがあるいわゆるオーバーステア状態を示している。このような場合には、通常の車両安定性制御システムによる車両安定性制御を実行すれば、基準輪である旋回内側前輪FL以外の3輪FR、RR、RLが制御対象となり、3輪制御によりブレーキ力が働くことになる。そして、通常の2輪駆動車であれば、図4に示すように、車両スピン挙動と反対のアンチスピンモーメント(安定化モーメント)を発生させることができる。
【0033】
しかしながら、ここで、旋回中の車両が直結4輪駆動状態で、旋回外側前輪である右前輪FRにのみブレーキ力を作用させた場合を考える。今まで説明したように、直結4輪駆動状態においては、前後のプロペラシャフト62F、62Rが等しい回転数で回転し、前輪の回転数平均と後輪の回転数平均が等しくなってしまうので、旋回外側前輪FRに制御ブレーキがかかると、一瞬反対側の前輪FLが増速するが、すぐにほぼ一定となって、右前輪FRの制御ブレーキに合わせて回転速度が落ちてゆく。すると、前輪側のプロペラシャフト62Fの回転速度が落ちるが、後輪側のプロペラシャフト62Rは前輪のプロペラシャフト62Fに直結しているので、後輪RR、RLに強いエンジンブレーキがかかったのと同じ状態となり、後輪RR、RLの回転速度も落ち込む。即ち、前輪1輪FRだけの制御ブレーキにより、後輪2輪RR、RLの速度も落ちるので、3輪に制御ブレーキをかけたのと同じ状態となる。直結4輪駆動状態では、このような性質を持つが、これに通常通りの車両安定性制御を適用して、3輪を制御対象として後輪RR、RLも制御ブレーキをかけると、上述の右前輪FRの制御ブレーキの制動トルクの影響に加えて、更に後輪RR、RLに制御ブレーキがかかることになるので、後輪RR、RLだけ強くブレーキ力が加わった状態となり、後輪RR、RLの回転速度が著しく落ち込む。後輪RR、RLの回転速度が落ち込むと、車輪がロック傾向になり、旋回中の横力を確保できない状態となる。これが、例えば、アイスバーンのような路面摩擦係数μが極めて低い極低μ路で起きると、後輪RR、RLがロック傾向となり、路面摩擦係数μが低いために後輪の車輪速度が回復しにくいので、車両の挙動の収束に不利になる。
【0034】
従って、例えば、アイスバーンのようなμ=0.1以下の極低μ路を、直結4輪状態で車両が走行する場合には、制御ブレーキは旋回外側前輪のみにかけるようにすれば、後輪の車輪速度はあまり低下せず、車輪速度が回復し易くなる。
【0035】
一方、路面摩擦係数μがもっと高い場合には、後輪の車輪速度の低下のおそれは減少するので、安定化モーメントを最大限発揮させるために、旋回外側の前後輪の2輪(図4においては、FRとRR)に制御ブレーキをかけるようにしてよい。例えば、路面摩擦係数μ=0.1〜0.18程度の雪と氷が混在したような路面では、このように旋回外側の前後輪に制御ブレーキをかけるようにしてもよい。
【0036】
このように、直結4輪駆動状態の車両には、路面の摩擦係数μに応じて制御対象輪を変更することにより、極低μ路や低μ路の路面であっても、制動制御装置80を適用して車両の安定化制御を行うことができる。なお、上述の極低μ路及び低μ路の路面摩擦係数μの値は、一例として示したものであり、これらに限定する趣旨ではない。制御対象輪の路面摩擦係数μに応じた切り替え制御は、車種や走行路面の他の要因にも左右されるので、切り替えの基準値となるμの値は、個別具体的に設定してよい。
【0037】
次に、制動制御量設定手段20において行う、制動制御量の上限設定について説明する。
【0038】
図5は、基準輪である旋回内側前輪の車速に対して、旋回外側前輪の速度が低下したときに、後輪がどの程度前輪の影響を受けて速度が低下するかを示した実験データである。図5(a)(b)の双方とも、横軸が時間、縦軸がスリップ率を示している。スリップ率が高い程、ロックになり易い状態であることを示している。
【0039】
図5(a)は、旋回外側前輪のスリップ率に制限を設けなかった場合の前輪(フロント輪)と後輪(リア輪)との関係を示した図である。図5(a)において、前輪の速度が時間t=0のときには全く低下しておらず、時間t=t0から前輪の速度が低下し始めてスリップ率が上昇し始める。そして、t=t1で最大の落ち込みを示してスリップ率が最大となり、t=t2で基準輪と同じ速度に回復してスリップ率もゼロとなった変化状態を示しているが、後輪の方も、この変化状態にほぼ追従した変化を示している。即ち、後輪も、t=t0で速度の落ち込みとスリップ率の上昇が始まり、t=t1でスリップ率が最大となり、t=t2でスリップ率がゼロに戻る。図5(a)より、前輪のスリップ率の上昇に応じて、後輪のスリップ率も上昇することが分かる。
【0040】
一方、図5(b)は、前輪のスリップ率に規制がかかり、前輪のスリップ率が目標スリップ率SLを超えないように制御した場合を示している。この場合において、前輪は、t=t0でスリップ率が上昇し始め、t=t1で最大となるが、目標スリップ率SLによる規制があるため、スリップ率の上昇が抑えられ、t=t2でスリップ率がゼロとなる変化をしている。後輪は、変化の軌跡の概形は前輪と同様であるが、t=t1の前輪のスリップ率の規制がかかっているのに追従して、後輪のスリップ率の増加も抑えられた変化となっている。このことから、前輪の目標スリップ率SLを抑えることにより、後輪のスリップ率も抑えることができ、速度の落ち込みを防ぐことができることが分かる。
【0041】
図6は、目標スリップ率SLによる目標車輪速度vwtの制御を示した図である。図6において、グラフの横軸は時間t、縦軸は車輪速度を示している。グラフの特性曲線は、基準車輪速度vbを示しており、旋回内側前輪の車輪速度を意味する。車体速度と近似して用いられる速度である。グラフの下部の方形波は、車両安定性制御の制御フラグであり、この期間に車両安定性制御が行われることを意味する。基準車輪速度曲線vbと平行に、下側に引かれている直線は、車輪速度の制御目標となる目標車輪速度vwtを示している。また、目標車輪速度vwtに追随するように破線で描かれている曲線は、実車輪速度を示している。
【0042】
図6において、目標スリップ率SLは、基準車輪速度をvb、車輪速度をvwとすると、SL=(vb−vw)/vbで表される。目標スリップ率SLは、ブレーキによる制動力制御を実行する場合に、各車輪の制動量の目標となる値である。即ち、制動力を制御して車両安定性制御を行う場合に、各制御対象輪に設定された制動量を制御目標として制動制御手段50は制動制御を行うが、その設定は、各制御対象輪について目標スリップ率SLを設定することにより行われる。
【0043】
例えば、図6の下部に示されている制御フラグが立つと、車両安定性制御が実行され、基準車輪速度vbから、所定量車輪速度が減少した逆矩形波のように目標車輪速度vwtが各制御対象輪に指示される。これに応じてブレーキがかけられ、実車輪速度が追従し、最初は少しオーバーシュートするが、徐々に安定して目標車輪速度vwtに一致するようになる。そして、必要な安定化モーメントが得られたら、すぐに制御フラグもゼロになり、目標車輪速度vwtも元の基準車輪速度vbに戻る。実車輪速度も、目標車輪速度に追従して元に戻る。これを、4輪同時に演算して各々の車輪毎に目標スリップ率SLを演算して制御を繰り返している(但し、制御中の1輪は基準輪なので、実際の制御対象は3輪)。
【0044】
なお、目標車輪速度vwtは、図6に示された目標スリップ率の式SL=(vb−vw)/vbより、目標スリップ率SLを設定することにより、一義的に定まることが分かる。即ち、目標スリップ率の式SL=(vb−vw)/vbの車輪速度vwにvwtを代入して変形した式1のvwt=vb×(1−SL)により、目標スリップ率SLが定まると、目標車輪速度vwtが一義的に定まることが分かる。従って、上述のように、目標スリップ率SLを設定することにより、各制御対象輪の目標車輪速度vwtを設定し、それに合わせた実車輪速度の制御を行うことができる。
【0045】
一方、目標スリップ率SLは、一般的には、車輪の摩擦力、即ち制動力を最も効果的に発揮する制御目標としてその設定範囲が設定される。図7に、スリップ率と進行方向摩擦力の関係を示すグラフを示す。図7において、横軸はスリップ率、縦軸は進行摩擦力を示しており、乾燥したアスファルトにおけるスリップ率と進行方向摩擦力との関係と、雪路におけるスリップ率と進行方向摩擦力との関係を示す特性曲線が示されている。これらの特性曲線から分かるように、アスファルトや雪路レベルの一般的な路面においては、スリップ率を10〜20%、或いは10〜30%程度に設定するのが、制動力が大きく好ましい制御目標領域であることが分かる。図示しないが、アイスバーン等の極低μ路では、7〜8%で規制をかけるのが好ましい。
【0046】
ここで、図6のグラフに戻り、基準車輪速度vbと目標車輪速度vwtとの差、即ち制御量の大きさvb−vwt=△vwについて考える。式1のvwt=vb×(1−SL)から、SLを大きく設定すると、目標車輪速度vwtの値は小さくなり、制御量の大きさΔvwは大きくなる。逆に、SLを小さな値とすれば、vwtは大きくなるので、制御量の大きさΔvwは小さくなる。従って、ブレーキ制御目標である目標スリップ率SLに制限をかけて小さな値とすると、制御目標とする目標車輪速度vwtもあまり小さすぎる値とならず、目標ブレーキ制動力を大き過ぎる設定とすることが防止される。
【0047】
上述のように、本実施例に係る制動制御装置80においては、直結4輪駆動状態の車両を制御するため、直結プロペラシャフト62による後輪の速度の落ち込みを防ぐ制御を行う必要があるが、目標スリップ率SLに制限をかけることにより、過度のブレーキ制御を防止することができる。また、このような目標スリップ率SLの制限設定は、制御対象輪毎に可能であるため、路面の状態や車両の駆動状態を考慮して、各制御対象輪に適切な制限値を設定することができる。
【0048】
つまり、車輪のタイヤが効果的に制動力を発揮するスリップ率の設定は、図7で示したように、路面摩擦係数との関係により定まるので、大きな制動力を発揮させるべき旋回外側前輪はこれに合わせた設定を行って制動力を発揮させるのが好ましい。一方、直結4輪駆動状態であることの制約から生じる後輪の車輪速度の落ち込みは、後輪にかける制動力の大きさを制限することにより防止できる。従って、制御対象輪の各輪の目標スリップ率SLの上限を、路面摩擦係数の応じて適切に設定することにより、直結4輪駆動状態の車両に適切な制動制御を行なうことができる。
【0049】
図8は、本実施例に係る制動制御装置80の動作フローを示した図である。なお、今までの説明と同様の構成要素については、同一の参照符号を付して、その説明を省略する。
【0050】
ステップ100では、スイッチ入力の処理が行われる。例えば、スイッチ入力には、フルタイム4輪駆動車の場合はセンターデフロック状態とするか否か、パートタイム4輪駆動車の場合には、直結4輪駆動状態とするか否かの切り替えがあってよく、これらの切り替えは、図1の駆動状態切替スイッチ61により実行されてよい。また、リアーデフロック状態をするか否かのスイッチがあってもよい。更に、車両安定性制御システム(VSC)の動作モード切替スイッチとして、例えば、VSCを通常の動作モードに設定したり、TRC(Traction Control)をオフに設定したり、VSCをオフに設定したりするモードを選択設定できる入力スイッチ41があってよい。
【0051】
本実施例に係る制動制御装置80では、センターデフロック状態又は直結4輪駆動状態で、かつVSCが通常の動作モードに設定されたときに制動制御を行う。なお、リアーデフロック状態では、本実施例に係る制動制御装置80は、動作しないこととしてもよい。また、TRCは、駆動輪のブレーキ油圧制御によるエンジン出力制御により、駆動輪のスリップを抑える機能であるが、本実施例に係る制動制御装置80とは、動作が異なるため、TRCをオフにするか否かのスイッチを設けてもよい。
【0052】
なお、本実施例に係る制動制御装置80では、スイッチ入力により車両が直結4輪駆動状態にあるか否か(以下、センターデフロック状態を含む)を判定しているが、センターデファレンシャル60a等にセンサを設け、駆動状態を判別するようにしてもよい。
【0053】
ステップ110では、車両安定性制御システムが動作すべき状態か否かの判定を行う。具体的には、旋回状態検出手段10により、車両が横滑りしている状態にあることを検出し、車両安定性制御システムの動作許可の判定を行う。なお、旋回状態の検出は、図1において説明したように、加速度センサ11、ヨーレートセンサ12、操舵角センサ13、車輪速センサ14a、14b、14c、14dにより行ってよい。
【0054】
ステップ120では、制動制御量設定手段20において、旋回状態検出手段10により検出した車両状態をもとに、必要な安定化モーメントを算出する。これにより、車両の横滑りを抑制する安定化モーメントが算出される。
【0055】
ステップ130では、制動制御量設定手段20において、各制御対象輪(3輪)の目標スリップ率SLが演算される。このとき、基本的には、ステップ120で算出された安定化モーメントを実現するような目標スリップ率SLが、基準輪以外の各制御対象輪について演算されるが、これをそのまま出力するか、或いは制限を加えるかの最終的なガードをかけた判断がなされる。この判断は、路面摩擦係数推定手段30により推定された走行中の路面の摩擦係数μに応じて、基準輪以外の各制御対象輪の目標スリップ率SLの上限が定められ、この目標スリップ率SLの上限の範囲内で制動量が演算設定され、出力される。なお、目標スリップ率SLの上限は、後輪についてはゼロの場合もあり、この場合は、目標スリップ率SLは出力されず、実質的に制御対象輪が1輪、又は2輪に限定されたことになる。路面摩擦係数μが極めて低い極低μ路の場合や、低μ路の場合は、このような制約を受ける。
【0056】
ステップ140では、制動制御量設定手段30により設定されて出力された制動制御量に基づき、制動制御手段50において、ソレノイド駆動指示がなされる。ステップ130で演算設定された目標スリップ率SLになるように、制動制御手段50たるブレーキアクチュエータがソレノイドバルブを駆動し、ブレーキ液圧を制御し、フィードバック制御により、各制御対象輪が目標スリップ率SLになるように油圧をかけて制御する。
【0057】
このとき、例えば、制動制御手段50は、油圧を掛ける側と抜く側を制御しているが、車輪のロックを回避すべく、ロックと判断したらすぐ油圧を抜けるように、通常の制御とは異なる制御としてもよい。例えば、減速の反応速度を非常に大きくするような制御定数に設定してよい。なお、ロックの判断は、基準車輪とロック対象の車輪の速度の比較により検出しており、例えば、スリップ率が20%を超えたときに、ロックと判定するようにしてもよい。
【0058】
ステップ150では、制動制御手段60であるブレーキアクチュエータが、制御対象である各車輪のホイールシリンダ53a、53b、53c、53dの油圧を制御して、目標スリップ率SLが実現されるようなブレーキ制動力をかけるようにする。そして、目標スリップ率SLに達したら、その処理を終了する。
【0059】
図9は、図8のステップ110からステップ130で行われる、制動制御の態様の一例を示した処理フロー図である。図1においては、旋回状態検出手段10で検出した旋回状態及び路面摩擦係数推定手段30で推定した路面摩擦係数μに基づき、制動制御量設定手段20で制動制御量を設定する段階のフロー図である。
【0060】
ステップ200では、VSC(車両安定性制御)が開始される。図8における、ステップ110の許可判定に該当する。
【0061】
ステップ210では、各車輪の目標スリップ率SLの指示値が算出される。これは、目標スリップ率SLに制限をかける前の、安定化モーメントを算出した段階の指示値又は設定値を意味する。図8における、ステップ120の安定化モーメントの算出に該当する。なお、目標スリップ率SLの指示値は、旋回状態検出手段10により旋回状態が検出され、制動制御量設定手段20により、安定化モーメントが算出される。
【0062】
ステップ220では、センターデフロック状態、即ち直結4輪駆動状態であるか否かが判断される。車両の駆動状態が4輪直結駆動状態であるか否かで、目標スリップ率SLの上限値を変更するので、直結4輪駆動状態か否かをこのステップで判断する。なお、図8においては、ステップ100のスイッチ入力の処理に含まれると捉えてもよい。直結4輪駆動状態であれば、ステップ230に進み、直結4輪駆動状態でなければ、ステップ300に進む。直結4輪駆動状態でなければ、本実施例に係る制御装置80を適用する必要はなく、通常の車両安定性制御が実行されてよい。
【0063】
ステップ230では、路面摩擦係数推定手段30により推定された路面摩擦係数μが、圧雪路のμ値より小さいか否かが判断される。上述のように、本実施例に係る制動制御装置80では、路面摩擦係数μの値に応じて目標スリップ率SLを変化させ、制動量の上限を変更するので、最初の判定基準値として、走行中の路面の摩擦係数μが圧雪路より小さいか否かを判定する。圧雪路の路面摩擦係数μは、一般的にμ=0.3程度であり、これより路面摩擦係数μが大きい場合には、通常の車両安定性制御を適用できる場合が多いので、それをまず判断する趣旨である。推定された路面摩擦係数μが圧雪路より小さい場合はステップ240に進み、大きい場合は、直結4輪状態でない場合と同様に、ステップ300に進む。
【0064】
ステップ240では、推定された路面摩擦係数μから、路面が極低μ路状態であるか否かが判定される。ここで、極低μ路とは、本実施例に係る制動制御装置80において、最も低いレベルの摩擦係数路面として対応する制動制御を行う対象路面であることを意味する。具体的には、例えば、アイスバーン等の氷状の路面を意味し、摩擦係数μが、μ=0.1程度より小さい路面を想定している。但し、基準となる路面摩擦係数μは、車両や周囲の環境に応じて変化し得るので、この値に限定する趣旨ではない。本実施例に係る極低μ路とは、制動制御装置80が設定する最も低い所定基準値より小さい摩擦係数μの路面を意味し、路面摩擦係数μの低い方から所定基準値を設定したときには、1番小さい所定基準摩擦係数値よりも路面摩擦係数μの小さい路面という意味である。
【0065】
ステップ240において、推定路面摩擦係数30が第1の所定値より小さく、極低μ路状態であると判断されたときには、ステップ260に進み、第1の所定値以上で極低μ路状態でないと判断されたときには、ステップ250に進む。
【0066】
ステップ260では、極低μ路に対応した制動制御が行われる判断がなされ、具体的には、旋回外側前輪の1輪にのみ制動力が加えられる制御指示がなされる。路面摩擦係数μが極めて低いアイスバーンのような路面では、直結4輪駆動状態では後輪の速度の落ち込みが懸念されるため、旋回外側前輪のみを制動し、後輪の速度落ち込みを防止したものである。なお、この制御指令は、制動制御量設定手段20で行われる。ステップ260の終了後は、ステップ290に進む。
【0067】
ステップ290では、制御対象の各輪について、最終的な制動量である目標スリップ率SLが、制動制御量設定手段20から制動制御手段50に対して出力され、処理フローを終了する。極低μ路では、後輪については、ガードがかかってゼロ出力、即ち目標スリップ率SLが出力されないことになる。旋回外側前輪については、制御量の上限の範囲内で目標スリップ率SLが出力される。なお、目標スリップ率SLは、そのまま出力されて制動制御手段50で油圧量に変換されてもよいし、制動制御量設定手段20で換算してもよい。
【0068】
ステップ240に戻り、推定路面摩擦係数μが極低μ路以上である、即ち第1の所定値以上であると判断されたときには、ステップ250に進む。
【0069】
ステップ250では、推定された路面摩擦係数μが、低μ路状態であるか否かが判断される。つまり、極低μ路ではないことがステップ240で判定された後、それよりも摩擦係数がやや大きい程度の低μ路か、それよりも更に摩擦係数の大きい微低μ路であるか否かを本ステップで判定する。具体的には、例えば、アイスバーンの氷状路と雪路が混在し、アイスバーン状態よりは路面摩擦係数μが大きくなっているが、なお低摩擦係数の路面であるような場合である。このような場合に、例えば2番目に小さい基準値を設け、第2の所定値として、制動制御を切り替える基準としてよい。例えば、第1の所定値をμ=0.1としたら、第2の所定値をμ=0.17又は0.18程度に設定してもよい。ステップ250で、低μ路であると判定されたときは、ステップ270に進み、低μ路よりも摩擦係数が大きく、低μ路でないと判定されたら、ステップ280に進む。
【0070】
ステップ270では、低μ路に対応した制動制御が行われる判断がなされ、具体的には、旋回外側前後輪の2輪に制動力が加えられる制御指示がなされる。路面摩擦係数μが、極低μ路よりはやや大きいので、極低μ路のときよりは後輪の速度の低下を気にする必要がないが、やはり低μ路であるので通常の路面摩擦係数μの路面よりは後輪速度が低下するおそれが残るので、極低μ路の制動制御対象である旋回外側前輪に加えて、旋回外側後輪も制動制御の対象としたものである。これにより、第2の摩擦係数の低さのレベルの路面に対し、制動制御輪の数を第1の摩擦係数の低さのレベルの路面よりは増やして制動効果を上げるとともに、通常の摩擦係数の大きさの路面よりは後輪の速度の低下を考慮した、摩擦係数の大きさに応じた適切な制動制御とすることができる。ステップ270終了後は、ステップ290に進む。
【0071】
ステップ290では、各車輪に対して、制動量設定手段20から制動制御手段50に対して、目標スリップ率SL、又は目標スリップ率SLに応じた油圧量等の制動量の設定が出力され、制動制御が実行されて処理フローを終了する。旋回外側前輪及び後輪について、制動制御量の上限の範囲内で、出力値が設定され、旋回内側後輪については、出力がゼロとなり、制御対象から外される。
【0072】
ステップ250に戻り、推定された路面摩擦係数μが低μ路状態でない場合、即ち第2の所定値よりも大きい場合には、ステップ280に進む。
【0073】
ステップ280では、低μ路よりも路面摩擦係数μが大きい、微低μ路の場合の制動制御であるので、制御対象輪を、通常と同じく3輪とする制御指示がなされる。但し、ステップ230で判定した圧雪路よりは路面摩擦係数μが小さい状態であるので、通常の車両安定性制御よりも、目標スリップ率SLの上限を小さく設定するのが好ましい。即ち、制御対象輪は旋回内側内輪を除く3輪とするが、例えば通常の車両安定性制御の目標スリップ率SLが、各輪が30%程度の上限に設定されているとすれば、例えば、前輪を5〜10%程度、後輪を0〜5%程度の出力に上限を設定してよい。このように設定すれば、同じ3輪制御であっても、路面摩擦係数μの増大に応じて、徐々に目標スリップ率SLを大きく設定することができ、きめ細かく路面摩擦係数μに応じた適切な制動制御を行うことができる。ステップ280終了後は、ステップ290に進む。
【0074】
ステップ290では、各車輪の目標スリップ率SLに応じて、各車輪の制動量が設定出力され、制動制御手段50に送られる。上述のように、各輪とも制動量の上限の範囲内で制御量が設定出力され、それに応じて制動制御手段50が作動し、処理フローを終了する。
【0075】
次に、ステップ220に戻り、センターデフロック状態、即ち直結4輪駆動状態でないと判定された場合と、ステップ230において、直結4輪駆動状態ではあるが、路面摩擦係数μが圧雪路のμ値より小さいと判定された場合について説明する。この場合は、いずれもステップ300に進む。
【0076】
ステップ300では、制動量設定手段20において、目標スリップ率SLが例えば30%の上限規制で設定される。これは、通常の場合の目標スリップ率SLと同様であり、図7で説明したように、通常の道路において制動力を最も効果的に発揮できるスリップ率の領域である。ステップ220において、直結4輪駆動状態でないと判断されたときには、フルタイム4輪駆動車であれば、前後のプロペラシャフト62F、62Rの回転数の差動を許容する状態であり、パートタイム4輪駆動車であれば、2輪駆動状態であるので、後輪の回転速度の低下の問題はないので、通常の車両安定性制御を適用してよい。
【0077】
一方、ステップ220において、直結4輪駆動状態と判定されたときであっても、ステップ230において、推定路面摩擦係数μが圧雪路のμ値以上と判定されれば、直結4輪駆動状態による後輪の回転速度の低下の影響は少ないので、これも通常の車両安定性制御と同じ目標スリップ率SLの上限設定にしてよいと判断する。ステップ300が終了したら、ステップ310に進む。
【0078】
ステップ310では、制動制御量設定手段20において、通常の目標スリップ率SLの上限値を用いた通常の3輪制御による、制動制御指令がなされる。即ち、旋回状態検出手段10により検出された旋回状態に基づく安定化モーメントが算出され、上限に達しない限りは、その安定化モーメントを発生させるような制動制御を行う制動制御量が設定され、制動制御手段50に出力される。ステップ310の終了後は、ステップ320に進む。
【0079】
ステップ320では、通常のブレーキ制御が制動制御手段50により実行され、その処理を終了する。
【0080】
このように、本実施例に係る制動制御装置80では、路面摩擦係数μに応じて、制御対象輪の数を含めて目標スリップ率等の制動制御量に上限を設けることにより、直結4輪駆動状態の車両に対しても、制動制御を安全に実行することができる。なお、本実施例においては、最終的に制御態様が4態様に分類される例を説明したが、これは、車両の種類や路面摩擦係数μ以外の条件により変更され得るので、これらの態様は、種々変更することが可能である。
【0081】
次に、図9において説明した、各制御対象輪の制動制御量の上限設定について、図10を用いて説明する。図10は、制動制御量設定手段20において行われる、制動制御量の上限設定の演算内容を説明するための図である。
【0082】
図10(a)は、旋回外側前輪の目標スリップ率SLの上限規制値の例を示した図である。また、図10(b)は、後輪の目標スリップ率SLの上限規制値を示した図である。図10(a)(b)において、ともに横軸は路面μ推定値、縦軸は目標スリップ率SL[%]を示している。図10(a)(b)において、μ=0.1より小さい領域が、極低μ路のアイスバーン状態、0.1≦μ≦0.18の範囲が極低μ路よりも少し雪が多くなった低μ路状態、0.18<μ≦0.25の範囲が低μ路よりも更にアイスバーン状態が減った微低μ路状態、0.25<μ≦0.3の範囲が、微低μ路よりも更に路面摩擦係数μが大きく、通常状態よりは僅かに路面摩擦係数μが小さい僅低μ路を示している。
【0083】
図10(a)において、路面μ推定値の大きさに応じて、目標スリップ率SLの上限が変化している特性が示されている。路面μ推定値が0.1より小さいときには、目標スリップ率SLの上限は一定で5%であり、路面μ推定値が0.1以上0.25以下の範囲では、5〜10%の範囲で路面μ推定値に比例する直線特性の上限を示し、路面μ推定値が0.25より大きく、0.3以下の範囲では、一定の10%の上限を示している。このように、例えば、路面μが0.1より小さいアイスバーン等の氷状の極低μ路では、5%程度の目標スリップ率SLの上限を設定するのが好ましく、圧雪路よりもやや路面μが低い程度の、路面μが0.25より大きい程度の路面に対しては、10%の上限に設定することが好ましいことが分かっていれば、その間を、例えば図10(a)に示したように直線で結んで徐々に増加させることにより、路面μ推定値が変化することにより急激に目標スリップ率SLの上限が変化して出力が急変動する事態を避けることができる。従って、目標スリップ率SLの上限の設定に当たっては、路面μ推定値に対応する適切な目標スリップ率SLが算出できたら、それらを満たすように、路面μ推定値と目標スリップ率SLの上限の関係を定めることができる。
【0084】
このように目標スリップ率SLの上限を定めることにより、例えば、μ<0.1の極低μ路で安定化モーメントに基づく目標スリップ率SLが8%と算出されても、上限が5%であれば5%しか出力されず、過度の制動力による制動制御を行って車両の挙動の収束に不利になる事態を防げる。なお、図10(a)に示した、目標スリップ率SLを5〜10%に設定するのは、図7で説明した、通常の車両安定性制御においてはアイスバーン状態で7〜8%程度に設定するのと概略一致しており、旋回外側前輪については、目標スリップ率SLの上限をあまり低い設定とはしておらず、制動力をきちんと効かせていることが分かる。
【0085】
図10(b)は、後輪の路面μ推定値と目標スリップ率SLとの関係を示した図であるが、目標スリップ率SLは、0〜5%の範囲に設定されている。直結4輪駆動状態では、前輪の制動トルクによる後輪の回転速度低下の影響があるため、前輪よりも目標スリップ率SLの上限値は低く設定され、必要以上に制動力を加えない設定となっている。図10(b)において、後輪は、旋回外側と旋回内側で独立に設定がなされている。前輪は、旋回外側のみが制御対象輪であったため、1輪のみの特性でよいが、後輪は、2輪とも対象となり、旋回外側と旋回内側では適切な制動力も多少異なるため、各々独立に設定している。
【0086】
図10(b)において、路面μ推定値が0.1より小さい極低μ路では、外輪及び内輪の双方とも、目標スリップ率SLの上限はゼロに設定されている。これは、極低μ路では、直結4輪駆動状態では後輪の回転数の低下の問題が懸念されるため、これを防ぐべく出力ゼロとし、実質的な制御対象輪から除外するためである。このときは、旋回外側の前輪のみの1輪制御となる。
【0087】
一方、路面μ推定値が0.1以上0.18以下の範囲では、旋回外側後輪のみに正の目標スリップ率SLが設定されており、旋回内側後輪はゼロのままである。この状態では、旋回外側の前輪及び後輪が制御対象輪となり、2輪制御状態となる。なお、旋回外側後輪の目標スリップ率SLの上限値も、路面μ推定値の増加とともに徐々に増加してゆくように設定されており、急激な出力の増加を抑えた設定となっている。これにより、制御対象輪が1輪から2輪に切り替わるときも、路面摩擦係数の基準値の付近で急激に切り替わるのではなく、滑らかに制御を切り替えることができる。
【0088】
次に、路面μ推定値が0.18より大きくなると、旋回内側後輪にも正の目標スリップ率上限値が設定され、制御対象輪に加わる。この段階で、3輪制御となり、通常の車両安定性制御と同じ数の制御対象輪となるが、目標スリップ率SLの上限は0〜5%と低く設定されているので、通常よりも小さな範囲の制動力で制動制御が行われることになる。外輪と内輪との目標スリップ率SLにも若干の差があり、旋回内側後輪は出力上限が低く抑えられている。また、旋回内側後輪の目標スリップ率SLの増加も、路面μ推定値の増加に比例して徐々に増加してゆくように設定されている。
【0089】
次に、路面μ推定値が0.25を超えると、旋回外側後輪も旋回内側後輪も目標スリップ率SLの上限値は5%となる。圧雪路よりも僅かに路面摩擦係数μの低い雪路では、通常の30%程度の上限値よりも低い設定として、回転速度が低下し過ぎないような設定となっている。
【0090】
このように、図10(a)(b)に示したように、路面摩擦係数μに応じて旋回外側前輪と旋回外側後輪及び旋回内側後輪の目標スリップ率SLに、通常の車両安定性制御よりも低い適切な上限を各々設けることにより、車輪に加えるブレーキ力を抑えつつ制動制御を行うことができ、直結4輪駆動状態の車両にも車両安定性制御を適用することができる。なお、図10に示した目標スリップ率SL及び路面μ推定値は例示であり、車種や環境に応じて設定を変えることができる。また、図10のうち、路面μ推定値のμ=0.1が図9における第1の所定値に該当し、μ=0.18が第2の所定値に該当する。
【0091】
図11は、本実施例に係る制動制御装置80の、図9とは異なる制動制御の態様の一例を示した処理フロー図である。なお、個々の処理内容については、今までの説明と同様であるので、その処理自体の詳細内容については、説明を省略する。
【0092】
ステップ400では、VSCが開始される。図6で説明したように、VSCの制御フラグが立った状態であり、旋回状態検出手段10で検出された旋回状態に基づいて、制動制御量設定手段20により、安定化モーメントが算出され、これに基づく制動制御量が設定される。
【0093】
ステップ410では、センターデフロック状態か否か、即ち、直結4輪駆動状態か否かが判断される。直結4輪駆動状態の場合には、ステップ420に進み、直結4輪駆動状態でない場合には、ステップ450に進む。
【0094】
ステップ420では、極低μ路状態か否かが判断される。図9で説明した処理フローにおいては、ここで、路面摩擦係数μが圧雪路より小さいか否かを判断したが、直結4輪駆動状態とすると、路面摩擦係数μがある程度高くても、後輪の速度低下が問題となり易い車両では、このように、直結4輪駆動状態であれば、目標スリップ率SLの制限を行う制御モードに入れるように構成してもよい。なお、極低μ路と判断されたときは、ステップ430に進み、極低μ路でない、即ち低μ路と判断されたときは、ステップ440に進む。
【0095】
ステップ430では、旋回外側前輪のみを制御対象とする、1輪制御が行われる。アイスバーン等の極低μ路では、回転速度の低下が起き易い後輪には、制御ブレーキ力を加えないこととしているのは、今までの説明と同様である。
【0096】
ステップ420に戻り、極低μ路でないと判断されたときには、ステップ440に進み、旋回外側前後輪の2輪を制御対象とする制動制御が行われる。極低μ路よりは後輪の速度低下のおそれが少ないため、制動対象輪を増やし、2輪としたものである。図9及び図10で説明した処理フローでは、更に目標スリップ率SLの上限を低く設定した上で、3輪制御とする制御態様(0.18≦μ<0.3の範囲)を含んでいたが、このように、制御モードを減らし、極低μ路以外では、旋回外側の2輪制御とするような設定としてもよい。
【0097】
ステップ410に戻り、車両がセンターデフロック状態、つまり直結4輪駆動状態でないときには、ステップ450に進み、通常制御の3輪制御を行う。直結4輪駆動でないときには、通常の制動制御を行って問題無いからである。
【0098】
このように、図11の処理フローでは、図9に示した処理フローよりも制御パターンを少なくし、簡略化した処理としている。車両の種類、ユーザの要請により、このような態様としてもよい。逆に、図10に示した路面μ推定値の切り替え値の数を増やしたり、目標スリップ率SLの上限設定値をもっと多く設定したりして、きめ細かな制動制御を行うことも可能である。このように、種々の状況に応じて、制動制御量の上限設定を行うことにより、色々な状況に対応可能な制動制御装置80とすることができる。
【0099】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本実施例に係る車両の制動制御装置80の構成を概略的に示した図である。
【図2】フルタイム4輪駆動車の概略構成図である。
【図3】パートタイム4輪駆動車の概略構成図である。
【図4】直結4輪駆動状態の車両に、従来の車両安定性制御システムを適用した場合の問題と、本実施例に係る制動制御装置80の制御対象輪の考え方を説明するための図である。
【図5】旋回外側前輪のスリップ率低下と、後輪のスリップ率低下の関係を示した実験データである。図5(a)は、旋回外側前輪のスリップ率に制限を設けなかった場合の前輪と後輪との関係を示した図である。図5(b)は、前輪のスリップ率が目標スリップ率SLを超えないように制御した場合を示している。
【図6】目標スリップ率SLによる目標車輪速度vwtの制御を示した図である。
【図7】スリップ率と進行方向摩擦力の関係を示した図である。
【図8】本実施例に係る制動制御装置80の動作フローを示した図である。
【図9】本実施例に係る制動制御装置80の、制動制御の態様の一例を示した処理フロー図である。
【図10】制動制御量設定手段20において行われる、制動制御量の上限設定の演算内容を説明するための図である。図10(a)は、旋回外側前輪の目標スリップ率SLの上限規制値の例を示した図である。図10(b)は、後輪の目標スリップ率SLの上限規制値を示した図である。
【図11】本実施例に係る制動制御装置80の、図9とは異なる制動制御の態様の一例を示した処理フロー図である。
【符号の説明】
【0101】
10 旋回検出手段
11 加速度センサ
12 ヨーレートセンサ
13 操舵角センサ
14a、14b、14c、14d 車輪速センサ
20 制動制御量設定手段
30 路面摩擦係数推定手段
40 車両安定性制御ECU
41 入力スイッチ
50 制動制御手段
51 マスターシリンダ
52 圧力センサ
53a、53b、53c、53d ホイールシリンダ
60 駆動状態切替手段
61、61a、61b 駆動状態切替スイッチ
62、62F、62R プロペラシャフト
63 フロントデフ
64 リアデフ
65 フロントアクスル
66 リアアクスル
70 エンジンECU
71 スロットルアクチュエータ
72 スロットル開度センサ
73 エンジン
80 制動制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪への制動力を制御して、車両の旋回中の挙動を安定させる車両の制動制御装置であって、
前記車両の旋回状態を検出する旋回状態検出手段と、
該旋回状態検出手段により検出された旋回状態に基づいて、前記車両の各車輪の制動制御量を設定する制動制御量設定手段と、
該制動制御量設定手段により設定された制動制御量に基づいて、前記各車輪の制動制御を行う制動制御手段と、
前記車両が走行している路面の路面摩擦係数を推定する路面摩擦係数推定手段とを備え、
前記制動制御量設定手段は、前記車両がセンターデフロック状態又は直結4輪駆動状態のときには、前記各車輪の制動制御量の上限を、前記路面摩擦係数推定手段により推定された路面摩擦係数に応じて変更することを特徴とする車両の制動制御装置。
【請求項2】
前記制動制御量の上限は、前記路面摩擦係数が圧雪路より小さい値のときには、前記車両がセンターデフロック状態又は直結4輪駆動状態でないときよりも低く設定されたことを特徴とする請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項3】
前記制動制御量設定手段は、前記路面摩擦係数が第1の所定値より小さいときには、後輪の前記制動制御量の上限をゼロに設定し、旋回外側前輪のみを制御対象として制動制御量を設定することを特徴とする請求項1又は2に記載の車両の制動制御装置。
【請求項4】
前記制動制御量設定手段は、前記路面摩擦係数が前記第1の所定値以上第2の所定値以下のときには、旋回内側後輪の前記制動制御量の上限をゼロに設定し、旋回外側の前輪及び後輪を制御対象として制動制御量を設定することを特徴とする請求項3に記載の車両の制動制御装置。
【請求項5】
前記制動制御量設定手段は、前記路面摩擦係数が前記第2の所定値より大きいときには、旋回内側前輪以外の3輪を制御対象として制動制御量を設定することを特徴とする請求項4に記載の車両の制動制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−143380(P2008−143380A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−333671(P2006−333671)
【出願日】平成18年12月11日(2006.12.11)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】