説明

車両の制御装置

【課題】車両において車室以外で低温時に熱を供給する必要のある部分に対し、内燃機関で発生した熱を優先的に供給することのできる車両の制御装置を提供する。
【解決手段】電子制御装置は、エンジン1の始動開始から触媒暖機が完了するまでは、空調装置18のブロワ21の駆動を禁止する。触媒暖気完了後に、エンジン1の冷却水がエンジン1の暖気完了温度未満であるときにはブロワ21の駆動禁止を維持し、ブロワ21の駆動禁止中に暖房要求があれば、エンジン1とは別の熱源で車室内の暖房を行うシートヒータ19を発熱させる。触媒暖機が完了しエンジン1の冷却水が暖気完了温度以上となると、ブロワ21の駆動を許可する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車等の車両においては、原動機である内燃機関の冷却等のために同機関との間で熱交換を行う熱交換装置が設けられるとともに、同機関から熱交換装置に伝達された熱を利用して車室内の暖房を行う空調装置が設けられている。
【0003】
上記熱交換装置は、内燃機関を通過するように設けられた循環経路内の熱交換流体を循環させ、その熱交換流体と内燃機関との間で熱交換を行わせるものである。内燃機関の高温時には、こうした熱交換流体と内燃機関との間での熱交換を通じて、同機関の冷却が行われることとなる。また、上記空調装置は、車室内に温風を送るべく駆動されるブロワを備えており、そのブロワの駆動を通じて空気が熱交換装置における循環経路の途中に設けられた熱交換器を通過するようにし、同熱交換器での熱交換流体と熱交換した後の上記空気を車室内に送るものである。従って、暖房要求に基づきブロワが駆動されて空気の流れが起こされると、その空気が上記熱交換機を通過して熱交換流体により温められた後に車室に送られ、それによって車室内の暖房が行われるようになる。
【0004】
また、内燃機関の冷えた状態からの始動直後においては、熱交換装置における循環経路内の熱交換流体の温度が低いため、暖房要求に基づきブロワを駆動して上記熱交換器を空気が通過するようにしても、その空気を熱交換流体によって効果的に温めることができない。従って、上記熱交換器を通過した後の空気を車室内に送っても、それによって車室内を暖房することができず、乗員が寒さを感じるなど車室内の快適性が低下することになる。
【0005】
このため、特許文献1に示されるように、内燃機関とは別の熱源をもとに発熱するシートヒータ、例えば通電により発熱する電熱式のシートヒータを設け、循環経路内の熱交換流体の温度が低いときには、暖房要求があっても空調装置のブロワを駆動させず、上記シートヒータによって乗員を温めることが提案されている。この場合、循環経路内の熱交換流体の温度が低いために空調装置(ブロワ)によって車室内に温風を送ることができない場合であっても、上記シートヒータによって乗員を温めて車室内の暖房を行うことができるため、車室内の快適性が低下することを抑制できる。
【0006】
なお、内燃機関の温度が高くなって同機関と熱交換される循環経路内の熱交換流体の温度が車室内の暖房に利用できるほど高くなると、空調装置のブロワが駆動されて車室内に温風が送られ、それによって車室内の暖房が行われるようになる。一方、シートヒータに関しては通電が停止されて発熱が停止される。以上のように、ブロワの停止及び駆動、並びにシートヒータの通電及び通電停止を行うことで、ブロワが無駄に駆動されたりシートヒータが無駄に発熱されたりすることなく、暖房要求に基づき乗員を温めることができるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開平5−18909公報(段落[0032]〜[0036])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、近年の車両においては、内燃機関の小型化や自動停止再始動等による同機関の熱効率の向上が図られており、内燃機関から発生する熱が少なくなる関係から、車室以外にも低温時において熱の供給を受ける必要のある部分が存在するようになる。
【0009】
例えば、車両に搭載された内燃機関の排気系には排気の浄化を行う触媒が設けられており、こうした触媒の排気浄化能力を最大とするためには、同触媒の温度である触媒床温を同触媒が活性化する活性温度まで上昇させて触媒暖機を完了させておくことが必要になる。しかし、内燃機関の発生する熱が少ない上記車両においては、同機関の排気温度が低くなる傾向があるため、外気温や内燃機関の運転状態によっては触媒床温を活性温度以上とすること、言い換えれば触媒暖機を完了させた状態とすることができなくなるおそれがある。
【0010】
また、車両において内燃機関の出力軸には変速装置が繋がっており、内燃機関の回転が同変速装置を介して車輪に伝達されるようになっている。この変速装置にはトランスミッションオイルが用いられており、同装置の駆動状態に関してはトランスミッションオイルの油温が機関停止中での常温に対しある程度高い値(例えば温度t1)になったときに内燃機関の燃費改善に寄与する状態となる。このため、内燃機関の燃費改善を図るべく、車両に設けられた上記熱交換装置における循環経路内の熱交換流体と上記トランスミッションオイルとの間で熱交換を行い、同トランスミッションオイルの油温を上記温度t1以上に維持することが考えられる。しかし、内燃機関の発生する熱が少ない上記車両においては、同機関との熱交換により温度上昇する熱交換流体の温度が低くなる傾向があるため、外気温や内燃機関の運転状態によってはトランスミッションオイルの油温を上記温度t1以上とすることができなくなるおそれがある。
【0011】
更に、車両に搭載される内燃機関には潤滑オイルが用いられており、潤滑オイルはその油温が機関停止中での常温に対してある程度高い値(例えば温度t2)になったときに、粘度が低下して内燃機関の回転抵抗を低減させ、同機関の燃費改善に有効な状態となる。このため、内燃機関の燃費改善を図るべく、車両に設けられた上記熱交換装置における循環経路内の熱交換流体と上記潤滑オイルとの間で熱交換を行い、同潤滑オイルの油温を上記温度t2以上に維持することが考えられる。しかし、内燃機関の発生する熱が少ない上記車両においては、同機関との熱交換により温度上昇する熱交換流体の温度が低くなる傾向があるため、外気温や内燃機関の運転状態によっては同機関における潤滑オイルの油温を上記温度t2以上とすることができなくなるおそれがある。
【0012】
従って、上記車両においては、内燃機関の排気系にある触媒、変速装置のトランスミッションオイル、及び内燃機関の潤滑オイル等が、車室以外で低温時に熱の供給を受ける必要のある部分に相当する。
【0013】
こうした車両に上記特許文献1の技術を適用した場合、内燃機関で発生した熱を車室に優先的に供給することはできるものの、車両において車室以外で低温時に熱の供給を受ける必要のある部分に内燃機関の熱を優先的に供給することはできない。これは、暖房要求がある場合、内燃機関で発生した熱により熱交換流体の温度が車室内の暖房に利用できるほど高くなると、空調装置のブロワが駆動されて内燃機関を熱源として温められた空気が車室内に送られるためである。すなわち、内燃機関で発生した熱が上記熱交換流体及び上記空気を介して車室に優先的に供給されてしまい、上記車両において車室以外で低温時に熱の供給を受ける必要のある部分、すなわち触媒、トランスミッションオイル、及び潤滑オイル等には内燃機関で発生した熱が供給されにくくなる。
【0014】
そして、上記車両において車室以外で低温時に熱の供給を受ける必要のある部分、すなわち触媒、トランスミッションオイル、及び潤滑オイル等に内燃機関で発生した熱が優先的に供給されないと、それらの部分の温度が低下して内燃機関の燃費改善や排気エミッション改善が妨げられることになる。
【0015】
本発明の目的は、車両において車室以外で低温時に熱を供給する必要のある部分に対し、内燃機関で発生した熱を優先的に供給することのできる車両の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するための車両の制御装置の一態様では、車両に搭載される内燃機関の排気系に設けられて排気の浄化を行う触媒と、内燃機関を通過するように設けられた循環経路を備え、同循環経路内の熱交換流体を循環させて同流体と内燃機関との間で熱交換を行わせる熱交換装置と、前記循環経路の途中に設けられた熱交換器、及び暖房要求に基づき駆動されて前記熱交換器を通過する空気の流れを起こすブロワを備え、同熱交換器での前記熱交換流体との熱交換により温められた前記空気を車室内に送る空調装置と、を備える。同制御装置は、内燃機関の始動開始から前記触媒の暖機が完了するまで前記ブロワの駆動を禁止する禁止手段を備える。
【0017】
また、前記車両は、内燃機関とは別の熱源を用いて車室内での暖房を行うべく発熱する発熱手段を搭載する。前記禁止手段は、前記触媒の暖機が完了した後であって、前記熱交換流体の温度が内燃機関の暖機完了と判断可能な機関暖機完了温度未満であるときには前記ブロワの駆動の禁止を維持し、前記ブロワの駆動禁止中に暖房要求がなされたときには前記発熱手段を発熱させ、前記触媒の暖機が完了し且つ前記熱交換流体の温度が前記機関暖機完了温度以上であることに基づき、前記ブロワの駆動を許可する。
【0018】
さらに、前記空調装置は、外気温度、前記車室の実際の室内温度、及び乗員により設定される同車室内の設定温度に基づき、前記ブロワの駆動により前記車室内に送り込まれる空気の温度の目標値である目標吹き出し温度を設定し、その目標吹き出し温度に基づき前記熱交換器での空気と熱交換流体との間での熱交換量を可変とする。前記禁止手段は、前記目標吹き出し温度が予め定められた暖房要求判定値以上であるときに暖房要求ありの旨判断して前記発熱手段を発熱させ、前記目標吹き出し温度が前記暖房要求判定値未満であるときに暖房要求なしの旨判断して前記発熱手段の発熱を停止させる。
【0019】
さらに、前記禁止手段は、前記熱交換流体の温度が機関暖機判定値以上であることに基づき、同熱交換流体の温度が前記機関暖機完了温度以上である旨判断して前記ブロワの駆動を許可する。前記機関暖機判定値は、暖房要求ありの旨の判断に基づき前記発熱手段が発熱されているときには、暖房要求なしの旨の判断に基づき前記発熱手段の発熱が停止されているときに比べてより高い値に設定される。
【0020】
上記構成によれば、内燃機関が始動されると、その後に触媒の暖機が完了するまでは、仮に暖房要求があったとしてもブロワの駆動が禁止される。同ブロワの駆動が禁止されているときには、ブロワの駆動を通じて流れる空気が循環経路に設けられた熱交換器にて熱交換流体との間で熱交換されることは抑制される。従って、内燃機関で発生した熱が上記熱交換流体に供給された後、上記空気を介して車室内に供給されることは抑制され、内燃機関及び上記熱交換流体の温度が速やかに上昇することとなる。そして、内燃機関及び熱交換流体の温度が速やかに上昇すると、同機関の排気温度が高くなって同機関の排気を介して触媒に対し効率よく熱が供給される。このことは、車両において車室以外で低温時に熱を供給する必要のある部分である触媒に対し、内燃機関で発生した熱が排気を介して優先的に供給されていることを意味する。このように触媒に対し内燃機関で発生する熱を優先的に供給することができるため、内燃機関の始動開始後、触媒床温が速やかに活性温度まで上昇して触媒の暖機が完了した状態となる。従って、内燃機関の始動開始後、触媒床温の活性温度への上昇、言い換えれば触媒暖機の完了が遅れることはなく、その遅れの分だけ内燃機関の排気エミッション改善が妨げられることを抑制できる。
【0021】
また、空調装置におけるブロワの駆動が禁止されているときには、内燃機関で発生する熱が触媒及び熱交換流体に優先的に供給される。これにより、機関始動開始後の早期に触媒の暖機及び内燃機関の暖機を完了させることができ、同機関の排気エミッション改善が図られるようになる。また、上記ブロワの駆動禁止中に暖房要求がなされたときには発熱手段の発熱を通じて車室内が暖房されるため、同ブロワの駆動禁止中に車室内の乗員が寒さを感じるなど車室内の快適性が低下することは抑制される。そして、触媒の暖機が完了し且つ熱交換流体の温度が機関暖機完了温度以上である旨判断されると、言い換えれば触媒及び熱交換流体への内燃機関の熱の優先的な供給が完了して同熱交換流体の熱を車室内の暖房に利用することの可能な状況になると、ブロワの駆動が許可される。その結果、上記ブロワの駆動により車室内に温風を送って車室内の暖房を行うことが可能になる。以上により、内燃機関の排気エミッション改善を図りつつ、車室内の快適性が低下することを抑制できるようになる。
【0022】
また、暖房要求の有無を適切に判断することができ、その暖房要求の有無に応じて発熱及び発熱停止される発熱手段が、無駄に発熱したり必要なときに発熱しなかったりするという不具合が生じないようにすることができる。
【0023】
また、暖房要求ありの旨の判断に基づき発熱手段が発熱されているときには、機関始動開始後、熱交換流体の温度が暖房要求なしの旨の判断に基づく発熱手段の発熱停止時に比べてより高い値になってからでないと、ブロワの駆動の禁止が解除されて同ブロワの駆動が許可されなくなる。このことは、機関始動開始後、内燃機関で発生する熱が車室よりも熱交換流体に対しより一層優先的に供給されることを意味する。従って、機関始動開始後、熱交換流体の温度の上昇が一層速やかに行われるようになり、内燃機関の暖機も一層速やかに行われるようになる。また、上記のように内燃機関で発生する熱が車室よりも熱交換流体に対しより一層優先的に供給されるとしても、そのときには発熱手段が発熱されて車室内の暖房を行うため、乗員が寒さを感じるなど車室内の快適性が低下することは抑制される。
【0024】
上記課題を解決するための車両の制御装置の他の一態様では、車両に搭載される内燃機関の出力軸と繋がる変速装置と、内燃機関を通過するように設けられた循環経路を備え、同循環経路内の熱交換流体を循環させることにより、前記熱交換流体と内燃機関との間で熱交換を行わせるとともに、同流体と前記変速装置のトランスミッションオイルとの間でも熱交換を行わせる熱交換装置と、前記循環経路の途中に設けられた熱交換器、及び暖房要求に基づき駆動されて前記熱交換器を通過する空気の流れを起こすブロワを備え、同熱交換器での前記熱交換流体との熱交換により温められた前記空気を車室内に送る空調装置と、を備える車両の制御装置を提供する。同制御装置は、内燃機関の始動開始から前記トランスミッションオイルの油温が前記変速装置を内燃機関の燃費改善に寄与する駆動状態とし得る判定値に達するまで前記ブロワの駆動を禁止する禁止手段を備える。
【0025】
また、前記車両は、内燃機関とは別の熱源を用いて車室内での暖房を行うべく発熱する発熱手段を搭載する。前記禁止手段は、前記トランスミッションオイルの油温が前記判定値に達した後であって、前記熱交換流体の温度が内燃機関の暖機完了と判断可能な機関暖機完了温度未満であるときには前記ブロワの駆動の禁止を維持し、前記ブロワの駆動禁止中に暖房要求がなされたときには前記発熱手段を発熱させ、前記トランスミッションオイルの油温が前記判定値に達し且つ前記熱交換流体の温度が前記機関暖機完了温度以上であることに基づき、前記ブロワの駆動を許可する。
【0026】
さらに、前記空調装置は、外気温度、前記車室の実際の室内温度、及び乗員により設定される同車室内の設定温度に基づき、前記ブロワの駆動により前記車室内に送り込まれる空気の温度の目標値である目標吹き出し温度を設定し、その目標吹き出し温度に基づき前記熱交換器での空気と熱交換流体との間での熱交換量を可変とする。前記禁止手段は、前記目標吹き出し温度が予め定められた暖房要求判定値以上であるときに暖房要求ありの旨判断して前記発熱手段を発熱させ、前記目標吹き出し温度が前記暖房要求判定値未満であるときに暖房要求なしの旨判断して前記発熱手段の発熱を停止させる。
【0027】
さらに、前記禁止手段は、前記熱交換流体の温度が機関暖機判定値以上であることに基づき、同熱交換流体の温度が前記機関暖機完了温度以上である旨判断して前記ブロワの駆動を許可する。前記機関暖機判定値は、暖房要求ありの旨の判断に基づき前記発熱手段が発熱されているときには、暖房要求なしの旨の判断に基づき前記発熱手段の発熱が停止されているときに比べてより高い値に設定される。
【0028】
上記構成によれば、内燃機関が始動されると、その後にトランスミッションオイルの油温が上昇して上記判定値に達するまでは、仮に暖房要求があったとしてもブロワの駆動が禁止される。同ブロワの駆動が禁止されているときには、ブロワの駆動を通じて流れる空気が循環経路に設けられた熱交換器にて熱交換流体との間で熱交換されることは抑制される。従って、内燃機関で発生した熱が上記熱交換流体に供給された後、上記空気を介して車室内に供給されることは抑制され、内燃機関及び上記熱交換流体の温度が速やかに上昇することとなる。そして、内燃機関及び熱交換流体の温度が速やかに上昇すると、その熱交換流体と熱交換されるトランスミッションオイルに対し同熱交換流体から効率よく熱が供給される。このことは、車両において車室以外で低温時に熱を供給する必要のある部分であるトランスミッションオイルに対し、内燃機関で発生した熱が熱交換流体を介して優先的に供給されていることを意味する。このようにトランスミッションオイルに対し内燃機関で発生する熱を優先的に供給することができるため、内燃機関の始動開始後、トランスミッションオイルの油温が速やかに判定値まで上昇し、それによって変速装置が内燃機関の燃費改善に寄与する駆動状態となる。従って、内燃機関の始動開始後、トランスミッションオイルの油温が判定値まで上昇すること、言い換えれば変速装置が上記駆動状態となることが遅れることはなく、その遅れの分だけ内燃機関の燃費改善が妨げられることを抑制できる。
【0029】
また、空調装置におけるブロワの駆動が禁止されているときには、内燃機関で発生する熱がトランスミッションオイル及び熱交換流体に優先的に供給される。これにより、機関始動開始後の早期に、トランスミッションオイルの油温を上記判定値まで上昇させて変速装置を内燃機関の燃費改善に寄与する駆動状態とし、且つ内燃機関の暖機を完了させることができる。その結果、内燃機関の始動開始後の早期に、同機関の燃費改善が図られるようになる。また、上記ブロワの駆動禁止中に暖房要求がなされたときには発熱手段の発熱を通じて車室内が暖房されるため、同ブロワの駆動禁止中に車室内の乗員が寒さを感じるなど車室内の快適性が低下することは抑制される。そして、トランスミッションオイルの油温が上記判定値に達し且つ熱交換流体の温度が機関暖機完了温度以上であるときには、トランスミッションオイル及び熱交換流体への内燃機関の熱の優先的な供給が完了して同熱交換流体の熱を車室内の暖房に利用することの可能な状況になる。このような状況になるとブロワの駆動が許可され、同ブロワの駆動により車室内に温風を送って車室内の暖房を行うことが可能になる。以上により、内燃機関の燃費改善を図りつつ、車室内の快適性が低下することを抑制できるようになる。
【0030】
また、暖房要求の有無を適切に判断することができ、その暖房要求の有無に応じて発熱及び発熱停止される発熱手段が、無駄に発熱したり必要なときに発熱しなかったりするという不具合が生じないようにすることができる。
【0031】
また、暖房要求ありの旨の判断に基づき発熱手段が発熱されているときには、機関始動開始後、熱交換流体の温度が暖房要求なしの旨の判断に基づく発熱手段の発熱停止時に比べてより高い値になってからでないと、ブロワの駆動の禁止が解除されて同ブロワの駆動が許可されなくなる。このことは、機関始動開始後、内燃機関で発生する熱が車室よりも熱交換流体に対しより一層優先的に供給されることを意味する。従って、機関始動開始後、熱交換流体の温度の上昇が一層速やかに行われるようになり、内燃機関の暖機も一層速やかに行われるようになる。また、上記のように内燃機関で発生する熱が車室よりも熱交換流体に対しより一層優先的に供給されるとしても、そのときには発熱手段が発熱されて車室内の暖房を行うため、乗員が寒さを感じるなど車室内の快適性が低下することは抑制される。
【0032】
上記課題を解決するための車両の制御装置のさらに他の一態様では、内燃機関を通過するように設けられた循環経路を備え、同循環経路内の熱交換流体を循環させることにより、前記熱交換流体と内燃機関との間で熱交換を行わせるとともに、同流体と内燃機関の潤滑オイルとの間でも熱交換を行わせる熱交換装置と、前記循環経路の途中に設けられた熱交換器、及び暖房要求に基づき駆動されて前記熱交換器を通過する空気の流れを起こすブロワを備え、同熱交換器での前記熱交換流体との熱交換により温められた前記空気を車室内に送る空調装置と、を備える車両の制御装置を提供する。同制御装置は、内燃機関の始動開始から同機関の潤滑オイルの油温が同機関を効率よく駆動することの可能な判定値に達するまで前記ブロワの駆動を禁止する禁止手段を備える。
【0033】
また、前記車両は、内燃機関とは別の熱源を用いて車室内での暖房を行うべく発熱する発熱手段を搭載する。前記禁止手段は、前記潤滑オイルの油温が前記判定値に達した後であって、前記熱交換流体の温度が内燃機関の暖機完了と判断可能な機関暖機完了温度未満であるときには前記ブロワの駆動の禁止を維持し、前記ブロワの駆動禁止中に暖房要求がなされたときには前記発熱手段を発熱させ、前記潤滑オイルの油温が前記判定値に達し且つ前記熱交換流体の温度が前記機関暖機完了温度以上であることに基づき、前記ブロワの駆動を許可する。
【0034】
さらに、前記空調装置は、外気温度、前記車室の実際の室内温度、及び乗員により設定される同車室内の設定温度に基づき、前記ブロワの駆動により前記車室内に送り込まれる空気の温度の目標値である目標吹き出し温度を設定し、その目標吹き出し温度に基づき前記熱交換器での空気と熱交換流体との間での熱交換量を可変とする。前記禁止手段は、前記目標吹き出し温度が予め定められた暖房要求判定値以上であるときに暖房要求ありの旨判断して前記発熱手段を発熱させ、前記目標吹き出し温度が前記暖房要求判定値未満であるときに暖房要求なしの旨判断して前記発熱手段の発熱を停止させる。
【0035】
さらに、前記禁止手段は、前記熱交換流体の温度が機関暖機判定値以上であることに基づき、同熱交換流体の温度が前記機関暖機完了温度以上である旨判断して前記ブロワの駆動を許可する。前記機関暖機判定値は、暖房要求ありの旨の判断に基づき前記発熱手段が発熱されているときには、暖房要求なしの旨の判断に基づき前記発熱手段の発熱が停止されているときに比べてより高い値に設定される。
【0036】
上記構成によれば、内燃機関が始動されると、その後に内燃機関における潤滑オイルの油温が上昇して上記判定値に達するまでは、仮に暖房要求があったとしてもブロワの駆動が禁止される。同ブロワの駆動が禁止されているときには、ブロワの駆動を通じて流れる空気が循環経路に設けられた熱交換器にて熱交換流体との間で熱交換されることは抑制される。従って、内燃機関で発生した熱が上記熱交換流体に供給された後、上記空気を介して車室内に供給されることは抑制され、内燃機関及び上記熱交換流体の温度が速やかに上昇することとなる。そして、内燃機関及び熱交換流体の温度が速やかに上昇すると、その熱交換流体と熱交換される潤滑オイルに対し同熱交換流体から効率よく熱が供給される。このことは、車両において車室以外で低温時に熱を供給する必要のある部分である潤滑オイルに対し、内燃機関で発生した熱が熱交換流体を介して優先的に供給されていることを意味する。このように潤滑オイルに対し内燃機関で発生する熱を優先的に供給することができるため、内燃機関の始動開始後、潤滑オイルの油温が速やかに判定値まで上昇し、それによって内燃機関が効率よく駆動することの可能な状態となる。具体的には、潤滑オイルの油温の上記判定値への上昇に伴い同潤滑オイルの粘度が低下し、それに伴い内燃機関の潤滑オイルによる回転抵抗が低減するため、同機関を効率よく駆動させることの可能な状態となる。従って、内燃機関の始動開始後、潤滑オイルの油温が判定値まで上昇すること、言い換えれば内燃機関を効率よく駆動させることの可能な状態となることが遅れることはなく、その遅れの分だけ内燃機関の燃費改善が妨げられることを抑制できる。
【0037】
また、空調装置におけるブロワの駆動が禁止されているときには、内燃機関で発生する熱が潤滑オイル及び熱交換流体に優先的に供給される。これにより、機関始動開始後の早期に、内燃機関の潤滑オイルの油温を上記判定値まで上昇させて同機関を効率よく駆動可能な状態、具体的には潤滑オイルの粘度を低下させて内燃機関の同潤滑オイルによる回転抵抗を低減させた状態とし、且つ内燃機関の暖機を完了させることができる。その結果、内燃機関の始動開始後の早期に、同機関の燃費改善が図られるようになる。また、上記ブロワの駆動禁止中に暖房要求がなされたときには発熱手段の発熱を通じて車室内が暖房されるため、同ブロワの駆動禁止中に車室内の乗員が寒さを感じるなど車室内の快適性が低下することは抑制される。そして、潤滑オイルの油温が上記判定値に達し且つ熱交換流体の温度が機関暖機完了温度以上であるときには、潤滑オイル及び熱交換流体への内燃機関の熱の優先的な供給が完了して同熱交換流体の熱を車室内の暖房に利用することの可能な状況になる。このような状況になるとブロワの駆動が許可され、同ブロワの駆動により車室内に温風を送って車室内の暖房を行うことが可能になる。以上により、内燃機関の燃費改善を図りつつ、車室内の快適性が低下することを抑制できるようになる。
【0038】
また、暖房要求の有無を適切に判断することができ、その暖房要求の有無に応じて発熱及び発熱停止される発熱手段が、無駄に発熱したり必要なときに発熱しなかったりするという不具合が生じないようにすることができる。
【0039】
また、暖房要求ありの旨の判断に基づき発熱手段が発熱されているときには、機関始動開始後、熱交換流体の温度が暖房要求なしの旨の判断に基づく発熱手段の発熱停止時に比べてより高い値になってからでないと、ブロワの駆動の禁止が解除されて同ブロワの駆動が許可されなくなる。このことは、機関始動開始後、内燃機関で発生する熱が車室よりも熱交換流体に対しより一層優先的に供給されることを意味する。従って、機関始動開始後、熱交換流体の温度の上昇が一層速やかに行われるようになり、内燃機関の暖機も一層速やかに行われるようになる。また、上記のように内燃機関で発生する熱が車室よりも熱交換流体に対しより一層優先的に供給されるとしても、そのときには発熱手段が発熱されて車室内の暖房を行うため、乗員が寒さを感じるなど車室内の快適性が低下することは抑制される。
【0040】
上記車両の制御装置の各態様では、前記空調装置は、車両の乗員による切り換え操作を通じてノーマルモードとエコノミーモードとの間で切り換え可能であり、前記機関暖機判定値は、前記ノーマルモードと前記エコノミーモードとの切り換えに基づき可変設定され、前記エコノミーモードに切り換えられているときには前記ノーマルモードに切り換えられているときに比べてより高い値に設定されるという態様を採用することができる。
【0041】
この構成によれば、乗員の意志によりエコノミーモードが選択されると、機関始動開始後、熱交換流体の温度がノーマルモード時に比べてより高い値になってからでないと、ブロワの駆動の禁止が解除されて同ブロワの駆動が許可されなくなる。このことは、機関始動開始後、内燃機関で発生する熱が車室よりも熱交換流体に対しより一層優先的に供給されることを意味する。従って、機関始動開始後、熱交換流体の温度の上昇が一層速やかに行われるようになり、内燃機関の暖機も一層速やかに行われるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】第1実施形態における自動車の構成を概略的に示す略図。
【図2】図1の自動車に搭載されるエンジンを示す略図。
【図3】第1実施形態の暖房制御手順を示すフローチャート。
【図4】エアコンオートモードでの冷却水温とブロワ風量との関係を示すグラフ。
【図5】機関暖機判定値可変・シートヒータ制御処理の実行手順を示すフローチャート。
【図6】(a)〜(c)は、機関暖機判定値を大きくしたことによる冷却水温の推移、ブロワ風量の推移、及び車室内の温度の推移への影響を示すタイムチャート。
【図7】第2実施形態の暖房制御手順を示すフローチャート。
【図8】第3実施形態の暖房制御手順を示すフローチャート。
【図9】(a)〜(c)は、温度低下抑制制御の有無による冷却水温の推移、及びエンジン回転速度の推移の違いを示すタイムチャート。
【図10】第4実施形態の暖房制御手順を示すフローチャート。
【図11】温度低下抑制制御の実行手順を示すフローチャート。
【図12】ブロワ風量の低減からの復帰手順を示すフローチャート。
【図13】第5実施形態の暖房制御手順を示すフローチャート。
【図14】第6実施形態の暖房制御手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0043】
(第1実施形態)
以下、車両の制御装置を自動車の制御装置に具体化した第1実施形態について、図1〜図6に基づき説明する。
【0044】
自動車においては、図1に示されるように、原動機として搭載されたエンジン1の出力軸1aには変速装置10が繋がっており、エンジン1(出力軸1a)の回転が変速装置10を介して車輪に伝達されることで走行するようになっている。上記変速装置10には、エンジン1と同装置10の内部に設けられた変速機構との間でオイルを媒介しての動力伝達を行うトルクコンバータ9と、エンジン1と変速機構とを直接的に連結可能なロックアップクラッチ11とが設けられている。そして、変速装置10におけるロックアップクラッチ11及び変速機構の作動は、同装置10の作動油であるトランスミッションオイルの油圧を利用して行われる。
【0045】
また、自動車には、エンジン1の冷却等のために同エンジン1との間で熱交換を行う熱交換装置17が設けられている。この熱交換装置17は、エンジン1を通過するように設けられた循環経路6内に熱交換流体として存在する冷却水をウォータポンプ4の駆動を通じて循環させ、その冷却水とエンジン1との間で熱交換を行わせるものである。こうした冷却水とエンジン1との間での熱交換を通じて、エンジン1の高温時等には同エンジン1の冷却が行われることとなる。なお、熱交換装置の上記ウォータポンプ4の駆動は、エンジン1の出力軸1aからの回転伝達によって行われる。
【0046】
熱交換装置17は、冷却水とエンジン1との間で熱交換を行わせるだけでなく、同冷却水と変速装置10のトランスミッションオイルとの間でも熱交換を行わせる。
具体的には、熱交換装置における循環経路6から分岐した分岐通路6aが、上記トランスミッションオイルを循環させる油路15の途中に設けられたオイルクーラ16を通過しており、同オイルクーラ16にて冷却水とトランスミッションオイルとの間で熱交換が行われる。そして、熱交換後の冷却水は分岐通路6aを通過した後に循環経路6に戻される。従って、トランスミッションオイルが上記冷却水の温度よりも高いときには、その冷却水によって同オイルが冷却されることとなる。また、トランスミッションオイルが上記冷却水の温度よりも低いときには、その冷却水によって同オイルが温められることとなる。なお、分岐通路6aにはオイルクーラ16を通過する冷却水の流量を調節すべく開閉動作する流量制御弁6bが設けられており、この流量制御弁6bの開度調整を通じて冷却水とトランスミッションオイルとの間で熱交換される熱の量を調整することが可能となっている。
【0047】
自動車においては、エンジン1の運転制御及び上記流量制御弁6bの駆動制御を行うための電子制御装置(エンジンECU)2が搭載されるとともに、変速装置10におけるロックアップクラッチ11及び変速機構の作動制御を行うための変速装置用の電子制御装置(トランスミッションECU)12も搭載されている。エンジンECU2には、エンジン1の冷却水温TW、詳しくは循環経路6内に存在する冷却水の温度を検出する水温センサ3からの検出信号、及びエンジン1の潤滑オイルの油温を検出する油温センサ8からの検出信号が入力されるとともに、その他の各種センサからの検出信号が入力される。また、トランスミッションECU12には、エンジン1(出力軸1a)から変速装置10への入力回転数を検出するタービン回転数センサ13、及びトランスミッションオイルの温度を検出する油温センサ14といった各種センサからの検出信号が入力される。また、エンジンECU2とトランスミッションECU12とは互いに接続され、両者の間での通信が可能となっている。
【0048】
次に、エンジン1から熱交換装置17に伝達された熱を利用して自動車の車室25内の暖房等を行う空調装置18について説明する。
空調装置18は、車室25内に温風又は冷風を送るべく駆動されるブロワ21を備えている。このブロワ21を駆動して空気の流れを起こすと、エアダクト22内に空気が導入され、その空気がエバポレータ23及びヒータコア24を通過した後、車室25内に送り出されるようになる。
【0049】
上記エバポレータ23に関しては、空調用の冷媒が循環する冷媒通路7が内部を通過しており、エアダクト22内の空気を当該冷媒通路7内の冷媒で冷却するものとなっている。なお、冷媒通路7内の冷媒は、エンジン1の運転中における出力軸1aからの回転伝達により作動される空調用のコンプレッサ5の作動を通じて、冷媒通路7内を循環しつつ冷却される。また、熱交換器である上記ヒータコア24に関しては、その内部を上述した熱交換装置17の循環経路6が通過しており、エアダクト22内の空気を当該循環経路6内の暖められた冷却水で加熱するものとなっている。
【0050】
エアダクト22内において、エバポレータ23とヒータコア24との間には、エアダクト22内を通過する空気の温度調節に用いられるエアミックスダンパ26が設けられている。このエアミックスダンパ26においては、エバポレータ23を通過した空気のうちヒータコア24を通過する空気の割合、言い換えればヒータコア24での冷却水と上記空気との間での熱交換量を調節すべく開閉位置の変更が行われる。例えば、空気がヒータコア24を通過しない開閉位置(開度最小)にエアミックスダンパ26を変位させると、エバポレータ23を通過して冷却された空気がそのまま車室25内に供給され、エアダクト22から車室25内に送られる空気の温度は最も低くなる。そして、ヒータコア24を通過する空気の量が多くなる側(開度大側)にエアミックスダンパ26を変位させるほど、エアダクト22から車室25内に送られる空気の温度は高くなってゆく。
【0051】
従って、エアダクト22から車室25内に送られる空気の温度が高くなり、その空気による車室25内の暖房が行われているときには、エンジン1から熱交換装置17の冷却水に伝達された熱を利用して車室25内の暖房を行っていることになる。
【0052】
また、空調装置18は、車室25内の座席に設けられてエンジン1とは別の熱源を用いて発熱するシートヒータ、例えば通電により発熱する電熱式のシートヒータ19を備えている。このシートヒータ19に関しては、エンジン1の冷えた状態からの始動直後など、熱交換装置17における循環経路6内の冷却水の温度(冷却水温TW)が低く、車室25内の暖房を行うべくブロワ21を駆動して上記ヒータコア24を空気が通過するようにしても、その空気をヒータコア24によって効果的に温めることができないときに用いられる。このようにシートヒータ19を発熱手段(発熱部)として用いることにより、冷却水温TWが低いためにブロワ21を駆動しても車室25内に温風を送ることのできない状況のもとでも、上記シートヒータ19によって乗員を温めることができるため、乗員が寒さを感じるなど車室25内の快適性が低下することは抑制される。
【0053】
空調装置におけるブロワ21、エアミックスダンパ26、及びシートヒータ19は、自動車に搭載された空調装置用の電子制御装置(エアコンECU)27を通じて駆動制御される。このエアコンECU27と上記エンジンECU2とは互いに接続され、両者の間での通信が可能となっている。エアコンECU27は、禁止手段及び制御手段(禁止部及び制御部)として機能する。また、エアコンECU27には、車室25内の日射量を検出する日射量センサ33、自動車の外の空気の温度(外気温)を検出する外気温センサ34、及び車室25内の空気の温度(内気温)を検出する内気温センサ35といった宅種センサからの検出信号が入力される。更に、エアコンECU27には、以下に示される各種スイッチからの信号も入力される。
【0054】
・車室25内の温度を自動調整するエアコンオートモードと手動調整するマニュアルモードの間でのモード切り換えを行うためのエアコンオート制御切換スイッチ28。
・車室25内の設定温度を切り換えるための温度設定スイッチ29。
【0055】
・ブロワ21の風量を設定するための風量設定スイッチ30。
・シートヒータの発熱を自動調整するシートヒータオートモードと手動調整するマニュアルモードとの間でのモード切り換えを行うためのシートヒータオート制御切換スイッチ31。
【0056】
・車室25内の温度の調整を燃費重視で実施するエコノミーモードと快適性重視で実施するノーマルモードとの間でのモード切り換えを行うためのモード切換スイッチ32。
エアコンECU27は、エアコンオート制御切換スイッチ28の操作位置が「マニュアル」であれば、エアコンマニュアルモードでの車室25内の温度調整を行うべく、自動車の乗員によって操作される温度設定スイッチ29及び風量設定スイッチ30の操作位置に基づきブロワ21及びエアミックスダンパ26を制御する。すなわち、エアダクト22から車室25内に送られる空気の温度が温度設定スイッチ29の操作位置に対応した値となるよう、エアミックスダンパ26の開閉位置が調整される。また、ブロワ21の風量が風量設定スイッチ30の操作位置によって指示される設定風量となるよう、ブロワ21の回転速度が調整される。
【0057】
一方、エアコンオート制御切換スイッチ28の操作位置が「オート」であれば、エアコンECU27は、エアコンオートモードでの車室25内の温度調整として、温度設定スイッチ29の操作位置によって設定される設定温度、並びに、内気温、日射量、外気温、及び冷却水温TW等に応じて目標吹き出し温度TAOが算出される。この目標吹き出し温度TAOは、車室25内の温度を上記設定温度に維持するうえでのエアダクト22から車室25内に吹き出される空気の温度の目標値である。そして、エアダクト22から車室25内に送られる空気の温度が上記目標吹き出し温度TAOとなるようにエアミックスダンパ26の開閉位置が調整されるとともに、ブロワ風量が最適な値となるよう目標吹き出し温度TAOに応じてブロワ21が駆動制御される。
【0058】
更に、エアコンECU27は、モード切換スイッチ32が「ノーマル」であれば、車室25内の快適性を重視した車室25内の温度の調整を行うべく、例えば目標吹き出し温度TAOとして通常どおり算出された値を用いる。また、モード切換スイッチが「エコノミー」であれば、エンジン1の燃費を重視した車室25内の温度の調整を行うべく、エアコンECU27は、例えば目標吹き出し温度TAOを通常どおり算出された値よりも外気温に近い値に設定する。
【0059】
エアコンECU27は、シートヒータオート制御切換スイッチ31の操作位置が「オート」であれば、シートヒータオートモードでのシートヒータ19の通電及び通電停止を行うべく、温度設定スイッチ29の操作位置及び内気温センサ35によって検出される内気温又は目標吹き出し温度TAOに基づき、シートヒータ19の通電及び通電停止を行う。シートヒータ19の通電中には同ヒータ19が発熱し、シートヒータ19の通電停止中には同ヒータが発熱停止される。また、シートヒータオート制御切換スイッチ31の操作位置が「オン」または「オフ」であれば、エアコンECU27は、シートヒータマニュアルモードでのシートヒータ19の通電及び通電停止を行う。すなわち、シートヒータオート制御切換スイッチ31の操作位置が「オン」であればシートヒータ19を発熱させるべく同ヒータへの通電が行われ、シートヒータオート制御切換スイッチ31の操作位置が「オフ」であればシートヒータ19を発熱停止させるべく同ヒータ19の通電が停止される。
【0060】
次に、エンジン1の構造、及び同エンジン1に関係する各種制御について、図2を参照して説明する。
エンジン1においては、燃料噴射弁44から噴射された燃料が空気とともに吸気通路42を介して燃焼室41に供給される。そして、燃焼室41内の空気及び燃料からなる混合気に対して点火プラグ45による点火が行われると、同混合気が燃焼してピストン46が往復移動し、エンジン1の出力軸1aが回転するようになる。また、燃焼室41にて燃焼した後の混合気は、排気として燃焼室41から排気通路47に送り出され、同排気通路47に設けられた触媒コンバータ48にて浄化される。この触媒コンバータ48においては、排気を浄化するための触媒が担持されており、その触媒の温度である触媒床温を同触媒の活性化可能な温度である活性温度まで上昇させて触媒暖機を完了させた状態のとき、排気を最も効果的に浄化できるようになる。
【0061】
エンジン1の出力軸1aには、停止状態にあるエンジン1の運転を開始する際、同エンジン1を自立運転させるべく強制回転(クランキング)させるスタータ49が接続されている。そして、エンジン1のクランキング中に燃料噴射弁44からの燃料噴射及び点火プラグ45による点火を行うことにより、エンジン1が自立運転を開始して始動完了することとなる。ちなみに、エンジン1においては、燃費改善を図ることを目的に自動停止再始動が行われる。具体的には、予め定められた自動停止条件が成立したときにエンジン1の運転が自動的に停止され、自動停止中に上記自動停止条件が不成立となったときにエンジン1が自動的に再始動される。
【0062】
また、エンジン1には、排気に含まれる窒素酸化物(NOx)の量を低減させる等の意図のもと排気通路47内の排気の一部を吸気通路42に戻すEGR機構50が設けられている。このEGR機構50は、排気通路47と吸気通路42を繋ぐように設けられたEGR通路51と、そのEGR通路51のガス流通面積を可変とすべく開度調整されて同通路51を介して排気通路47から吸気通路42に戻される排気の量を調整するEGRバルブ52とを備えている。そして、EGR機構50によりエンジン1の排気の一部を吸気通路42に還流させることで、燃焼室41内での混合気の燃焼時に同燃焼室41内に燃焼に寄与しないガス(排気)が存在するようになる。その結果、燃焼室41内での混合気の燃焼温度が低下してNOxの生成が低減され、エンジン1の排気に含まれるNOxの量が低減される。
【0063】
エンジン1の運転制御を行う上記エンジンECU2には、循環経路6内の冷却水の温度を検出する上記水温センサ3からの検出信号、及びエンジン1の潤滑オイルの油温を検出する油温センサ8からの検出信号の他、以下に示される各センサからの検出信号が入力される。
【0064】
・自動車の運転者によって踏み込み操作されるアクセルペダル53の踏み込み量(アクセル踏込量)を検出するアクセルポジションセンサ54。
・吸気通路42に設けられたスロットルバルブ55の開度(スロットル開度)を検出するスロットルポジションセンサ56。
【0065】
・吸気通路42を通じて燃焼室41に吸入される空気の量を検出するエアフローメータ57。
・出力軸1aの回転に対応する信号を出力し、エンジン回転速度の算出等に用いられるクランクポジションセンサ58。
【0066】
・排気中の酸素濃度に応じた信号を出力する空燃比センサ59。
・排気通路47における触媒コンバータ48の下流側の排気の温度を検出する排気温センサ60。
【0067】
そして、エンジンECU2は、上記各種センサから入力した検出信号に基づきエンジン運転状態を把握し、その把握したエンジン運転状態に応じてスロットルバルブ55、燃料噴射弁44、スタータ49、及びEGRバルブ52といった各種機器の駆動回路にそれぞれ指令信号を出力する。こうして燃料噴射量制御、スロットル開度制御、EGR制御、及び自動停止再始動制御などのエンジン1における各種制御がエンジンECU2を通じて実施される。
【0068】
次に、上記自動車におけるエンジン1の始動開始後に生じる問題について、図1及び図2を参照して説明する。
エンジン1の冷えた状態からの始動直後においては、熱交換装置17における循環経路6内の冷却水の温度が低いため、暖房要求に基づき空調装置18のブロワ21を駆動して上記循環経路6に設けられたヒータコア24を空気が通過するようにしても、その空気を上記冷却水によって温めることができない。従って、上記ヒータコア24を通過した後の空気を車室25内に送っても、それによって車室25内を暖房することができず、乗員が寒さを感じるなど車室25内の快適性が低下することになる。なお、上記暖房要求に関しては、エアコンオートモードにあっては目標吹き出し温度TAOが高い値であるときになされ、エアコンマニュアルモードにあって温度設定スイッチ29によって設定される設定温度が高い値であるときになされる。
【0069】
エンジン1の冷えた状態からの始動直後における上記暖房に関する問題は、シートヒータ19により解消されるようになる。すなわち、乗員が寒さを感じてシートヒータオート制御切換スイッチ31を「オン」に切り換えるか、もしくは「オート」に切り換えるとともに温度設定スイッチ29の高温側の位置に操作すると、シートヒータ19が通電されて発熱して乗員を温め、車室25内の暖房を行うようになる。これにより、上述した状況のもとで乗員が寒さを感じるなど、車室25内の快適性が低下することを回避できるようになる。
【0070】
なお、エアコンオートモード且つシートヒータオートモードであるときには、エンジン1の温度が高くなって同エンジン1と熱交換される循環経路6内の冷却水の温度(冷却水温TW)が車室25内の暖房に利用できるほど高くなると、空調装置18のブロワ21が駆動されて車室25内に温風が送られ、同温風での車室25内の暖房が行われる。このように暖房が行われて車室25内の温度(内気温)が温度設定スイッチ29により設定された設定温度まで上昇すると、シートヒータ19が通電停止されて発熱も停止される。このように、エアコンオートモードでのブロワ21の停止及び駆動、並びにシートヒータオートモードでのシートヒータ19の通電及び通電停止を行うことにより、ブロワ21が無駄に駆動されたりシートヒータ19が無駄に発熱されたりすることなく、暖房要求に基づき乗員を温めることができるようになる。
【0071】
ところで、近年の自動車においては、エンジン1の小型化や自動停止再始動等によるエンジン1の熱効率の向上が図られており、エンジン1から発生する熱が少なくなる関係から、車室以外にも低温時において熱の供給を受ける必要のある部分が存在するようになる。こうした部分としては、例えばエンジン1の排気通路47に設けられた上記触媒コンバータ48があげられる。同触媒コンバータ48は、触媒床温を活性温度まで上昇させて触媒暖機を完了させた状態にあるとき最も効果的に排気を浄化できるようになる。しかし、エンジン1の発生する熱が少ない上記自動車においては、同エンジン1の排気温度が低くなる傾向があるため、外気温やエンジン1の運転状態によっては触媒床温を活性温度以上とすること、言い換えれば触媒暖機を完了させた状態とすることができなくなるおそれがある。
【0072】
上記自動車においては、上述したブロワ21の駆動を通じてエンジン1で発生した熱を車室25に優先的に供給することはできるものの、自動車において車室25以外で低温時に熱の供給を受ける必要のある部分(この例では触媒)にエンジン1の熱を優先的に供給することはできない。これは、暖房要求がある場合、エンジン1で発生した熱により冷却水温TWが車室25内の暖房に利用できるほど高くなると、空調装置18のブロワ21が駆動されてエンジン1を熱源として温められた空気が車室25内に送られるためである。すなわち、エンジン1で発生した熱が循環経路6内の冷却水及び上記空気を介して車室25に優先的に供給されてしまい、上記自動車において車室25以外で低温時に熱の供給を受ける必要のある部分、すなわち触媒に対しエンジン1で発生した熱が排気を介して供給されるということが困難になる。
【0073】
そして、上記自動車において、車室25以外で低温時(例えばエンジン1の冷えた状態からの始動直後)に熱の供給を受ける必要のある部分である触媒にエンジン1で発生した熱が優先的に供給されないと、触媒床温が活性化温度未満となって触媒暖機が完了した状態となるまでに時間がかかるようになる。その結果、エンジン1の始動開始後であって触媒暖機完了して排気の浄化が効果的に行われるようになるタイミングが遅れ、その遅れの分だけエンジン1の排気エミッション改善が妨げられることになる。
【0074】
次に、上記自動車においてエンジン1の始動開始後に生じる上述した問題への本実施形態の対策について、図3を参照して説明する。
図3は、エンジン1の始動開始から触媒暖機完了まで、及びその触媒暖機完了後における乗員や車室25に対する暖房を行うための暖房制御ルーチンを示すフローチャートである。この暖房制御ルーチンは、エアコンECU27を通じて、例えば所定時間毎の時間割り込みにて周期的に実行される。
【0075】
同ルーチンにおいては、まずエンジン1の始動開始から触媒暖機完了までの間か否かが判断される(S101)。
ここで、エンジン1の始動開始後に触媒暖機が完了した旨の判断については、エンジン1の始動開始後に触媒床温が活性温度まで上昇したことに基づいてなされる。触媒床温に関しては、触媒暖機完了後には排気温センサ60によって検出される触媒コンバータ48の下流側の排気の温度等に基づき推定することができるものの、エンジン1の始動開始から触媒暖機完了後までの間には上記排気の温度等に基づき推定することは困難である。これは、エンジン1の始動開始から触媒暖機完了までの触媒床温は、エンジン1の始動開始時点の触媒床温、及びエンジン1の始動開始後の排気温度によって大きく変わってくるためである。ちなみに、エンジン1の始動開始時点の触媒床温に関しては、その始動開始までのエンジン1の停止時間が短く触媒コンバータ48からの放熱時間が短いほど高い値となる。また、エンジン1の始動開始後から触媒暖機完了までの間の触媒床温に関しては、上記エンジン1の始動開始時点の触媒床温から影響を受ける他、エンジン1の始動開始後における排気の総流量、排気の温度の累積値、及び触媒コンバータ48に送られた未燃燃料成分の総量からも影響を受ける。
【0076】
以上のことを考慮して、エンジン1の始動開始後から触媒暖機完了までの間の触媒床温は、例えば次の(1)及び(2)に示される手順で推定される。
(1)前回のエンジン1の停止完了時点で触媒暖機完了していれば、そのときの排気温等から推定された触媒床温を記憶しておき、その触媒床温と今回のエンジン1の始動開始時までのエンジン1の停止時間とに基づき、今回のエンジン1の始動開始後から触媒暖機完了までの間の触媒床温を推定する際に用いられる初期値Tfを設定する。このように設定された初期値Tfに関しては、今回のエンジン1の始動開始時点における触媒床温に対応した値となるよう、上記記憶された触媒床温が高いほど、また上記エンジン1の停止時間が短いほど、高い値に設定される。なお、前回のエンジン1の停止完了時点で触媒暖機完了していなければ、上記初期値Tfとして予め実験等により最適な値に定められた固定値が用いられる。
【0077】
(2)エンジン1の始動開始後、16ms毎など所定の時間間隔毎に、その時間間隔の間における触媒床温の温度上昇量ΔTを累積するとともに、その累積により得られた累積値ΣΔTを上記初期値Tfに対し加算し、同加算後の値「Tf+ΣΔT」をエンジン1の始動開始後から触媒暖機完了までの間の触媒床温とする。これにより、エンジン1の始動開始後から触媒暖機完了までの間においては、上記所定の時間間隔毎に触媒床温が推定されることとなる。なお、上記所定の時間間隔の間における触媒床温の温度上昇量ΔTに関しては、上記所定の時間間隔が経過した時点でのエンジン1の吸入空気量(排気の量に対応)、排気温、及び空燃比に基づき、上記吸入空気量が多いほど、また上記排気温が高いほど、また上記空燃比がリッチであるほど、大きい値となるよう算出される。これは、上記吸入空気量が多いほど、触媒コンバータ48を通過する排気の量が多くなり、その排気から触媒コンバータ48に伝達される熱も多くなるため、そして上記排気温が高いほど排気から触媒コンバータ48に伝達される熱が多くなるためである。更に、上記空燃比がリッチであるほど、触媒コンバータ48に送られる排気中の未燃燃料成分が多く、その未燃燃料成分の触媒上での酸化反応による発熱が多くなるためである。従って、上記初期値Tf及び累積値ΣΔTに基づき推定された触媒床温は、エンジン1の始動開始後における排気の総流量、排気の温度の累積値、及び触媒コンバータ48に送られた未燃燃料成分の総量に基づいて適正に推定された値ということになる。
【0078】
以上のように推定された触媒床温が活性温度まで上昇していない場合、上記ステップS101でエンジン1の始動開始から触媒暖機が完了するまでの間である旨判断され、空調装置18におけるブロワ21の駆動が禁止される(S102)。従って、エンジン1が始動されると、その後に触媒の暖機が完了するまでは、仮に暖房要求があったとしてもブロワ21の駆動が禁止される。同ブロワ21の駆動が禁止されているときには、ブロワ21の駆動を通じてエアダクト22内を流れる空気が循環経路6に設けられたヒータコア24にて冷却水との間で熱交換されることは抑制される。従って、エンジン1で発生した熱が上記冷却水に供給された後、上記空気を介して車室25内に供給されることは抑制され、エンジン1及び上記冷却水の温度が速やかに上昇することとなる。そして、エンジン1及び冷却水の温度が速やかに上昇すると、同エンジン1の排気温度が高くなって同エンジン1の排気を介して触媒に対し効率よく熱が供給される。このことは、自動車において車室25以外で低温時に熱を供給する必要のある部分である触媒に対し、エンジン1で発生した熱が排気を介して優先的に供給されていることを意味する。このように触媒に対しエンジン1で発生する熱を優先的に供給することができるため、エンジン1の始動開始後、触媒床温が速やかに活性温度まで上昇して触媒の暖機が完了した状態となる。従って、エンジン1の始動開始後、触媒暖機の完了が遅れ、その遅れの分だけエンジン1の排気エミッション改善が妨げられることを抑制できる。
【0079】
エンジン1の始動開始後であって触媒暖機が完了した後には、エアコンオートモードであるか否かが判断される(S103)。ここで否定判定であってエアコンマニュアルモードであれば、ブロワ風量が乗員による風量設定スイッチ30の操作を通じて指示された設定風量となるよう調整されるとともに、エアミックスダンパ26の開度(開閉位置)が乗員による温度設定スイッチ29の操作を通じて指示された設定温度に対応したものへと調整される(S104)。一方、上記ステップS103でエアコンオートモードである旨判断されると、エンジン1の始動開始後の早期にエンジン1の暖機を完了させるための処理(S105以降)が実行される。
【0080】
この一連の処理においては、まず目標吹き出し温度TAOに基づきエアミックスダンパ26の開度が調整される(S105)。続いて、冷却水温TWに基づきエンジン1の暖機が完了したか否かを判断するために用いられる機関暖機判定値TW1を可変とするとともに、シートヒータ19の制御を行うための処理として、機関暖機判定値可変・シートヒータ制御処理が実施される(S106)。
【0081】
そして、冷却水温TWが上記機関暖機判定値TW1未満であるか否かが判断され(S107)、ここで肯定判定であればブロワ21の駆動が禁止される(S102)。従って、エンジン1の始動開始後における触媒暖機が完了した後であって、エアコンオートモード中であり、且つ冷却水温TWが機関暖機判定値TW1未満であるときにも、言い換えれば冷却水温TWがエンジン1の暖機完了と判断可能な値である機関暖機完了温度未満である旨判断されているときにもブロワ21の駆動が禁止される。
【0082】
上記ステップS106における機関暖機判定値可変・シートヒータ制御処理では、暖房要求があればシートヒータ19が発熱され、暖房要求がなければシートヒータ19の発熱が停止される。このため、ステップ107で肯定判定がなされてブロワ21の駆動が禁止された状態にあって、暖房要求がなされたときにはシートヒータ19が発熱されて乗員及び車室25内の暖房が行われるため、上記ブロワ21の駆動禁止中に乗員が寒さを感じるなど車室25内の快適性が低下することは抑制される。
【0083】
一方、ステップS107で冷却水温TWが上記機関暖機判定値TW1以上である旨判断されたときには、冷却水温TWがエンジン1の暖機完了と判断可能な値である機関暖機完了温度以上である旨判断されたことになる。このことは、触媒及び冷却水へのエンジン1の熱の優先的な供給が完了して同冷却水の熱を車室25内の暖房に利用することが可能な状況であることを意味する。このような状況のときにはブロワ21の駆動が許可され(S108)、同ブロワ21の駆動により車室25内に温風を送って車室25内の暖房を行うことが可能になる。また、このようにブロワ21の駆動により車室25内に温風を送って車室25内の暖房を行う際には、ブロワ風量が例えば図4に示されるように冷却水温TWに基づき可変とされる。詳しくは、冷却水温TWの機関暖機判定値TW1に対する上昇が大きくなるほどブロワ風量が大きい値に調整される。
【0084】
図5は、図3の暖房制御ルーチンにおけるステップS106の機関暖機判定値可変・シートヒータ制御処理を実行するための機関暖機判定値可変・シートヒータ制御ルーチンを示すフローチャートである。この機関暖機判定値可変・シートヒータ制御ルーチンは、エアコンECU27を通じて、暖房制御ルーチンにおけるステップS106(図3)に進む毎に実行される。
【0085】
図5に示される機関暖機判定値可変・シートヒータ制御ルーチンにおいては、まずシートヒータオートモードであるか否かが判断される(S201)。ここで否定判定であってシートヒータマニュアルモードであれば、シートヒータ19が乗員によるシートヒータオート制御切換スイッチ31の操作を通じて指示された状態となるよう制御される。具体的には、シートヒータオート制御切換スイッチ31が「オン」に操作されていればシートヒータ19を通電して発熱させ、シートヒータオート制御切換スイッチ31が「オフ」に操作されていればシートヒータ19を通電停止して発熱を停止させる(S202)。その後、機関暖機判定値TW1が値「A」に設定される(S209)。なお、この値「A」としては、冷却水の熱を車室25内の暖房に利用可能な冷却水温TWの下限値に対応した値が用いられる。
【0086】
一方、上記ステップ201でシートヒータオートモードである旨判断されると、暖房要求に応じてシートヒータ19を通電または通電停止させる処理(S203〜S205)が実行される。具体的には、目標吹き出し温度TAOが予め定められた暖房要求判定値以上であるか否かが判断され(S203)、言い換えれば暖房要求があるか否かが判断される。ここで否定判定であれば、暖房要求なしの旨判断されてシートヒータ19の発熱が停止され(S205)、機関暖機判定値TW1が上記値「A」に設定される(S509)。
【0087】
また、ステップS203で肯定判定であれば、暖房要求ありの旨判断されてシートヒータ19が発熱され(S204)、その後に機関暖機判定値TW1を上記値「A」よりも高い値とするための処理(S206〜S208)が実行される。
【0088】
この一連の処理では、まずエコノミーモードであるか否かが判断される(S207)。ここで否定判定であれば機関暖機判定値TW1が上記値「A」よりも高い値「A+β」に設定され(S208)、肯定判定であれば機関暖機判定値TW1が上記値「A+β」よりも高い値「A+β+γ」に設定される(S207)。機関暖機判定値TW1が高い値に設定されると、冷却水温TWが高い値になってからでないと、暖房制御ルーチンにおけるステップS108(図3)でのブロワ21の駆動許可(駆動禁止の解除)が実行されなくなる。ここで、機関暖機判定値TW1を大きくしたことによる冷却水温TWの推移、ブロワ風量の推移、及び車室25内の温度の推移への影響について図6を参照して説明する。
【0089】
機関暖機判定値TW1が高い値に変化すると、冷却水温TWが機関暖機判定値TW1以上になってブロワ21の駆動禁止が解除(同駆動が許可)されるタイミングが遅くなり、ブロワ21の風量が「0」から上昇してゆくタイミングも例えば図6の(b)中の「T1」から「T2」へと遅くなる。エンジン1の始動開始後、ブロワ21の風量が「0」から上昇してゆくタイミングが遅くなるということは、同エンジン1で発生する熱が車室25よりも冷却水に対し優先的に供給されるようになることを意味する。このため、エンジン1の始動開始後、冷却水温TWの推移傾向が図6の(a)の二点鎖線で示される傾向から実線で示される傾向へと変化し、同冷却水温TWの上昇が速やかに行われるようになり、エンジン1の暖機も速やかに行われるようになる。従って、機関暖機判定値TW1が上述したように値「A」、値「A+β」、値「A+β+γ」と大きくなるほど、同エンジン1で発生する熱が車室25よりも冷却水に対し一層優先的に供給され、冷却水温TWの上昇が速やかに行われるようになり、エンジン1の暖機も速やかに行われるようになる。
【0090】
ただし、機関暖機判定値TW1を高い値とすることで、ブロワ21の風量が「0」から上昇してゆくタイミングを遅くし、エンジン1で発生する熱を車室25よりも冷却水に優先的に供給すると、ブロワ風量の上昇による車室25内の温度の上昇も遅くなる。その結果、その車室25の温度の推移傾向が例えば図6の(c)に二点鎖線で示される傾向から実線で示される傾向へと変化する。しかし、このように車室25内の温度の上昇が遅くなったとしても、暖房要求があったときにはシートヒータ19が発熱して乗員を温めるため、それによって乗員が寒さを感じるなど車室25の快適性が低下することは抑制される。
【0091】
以上詳述した本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)エンジン1の始動開始から触媒暖機が完了するまでの間においては、空調装置18におけるブロワ21の駆動が禁止されるため、仮に暖房要求があったとしてもブロワ21が駆動されることはない。同ブロワ21の駆動が禁止されているときには、ブロワ21の駆動を通じてエアダクト22内を流れる空気が循環経路6に設けられたヒータコア24にて冷却水との間で熱交換されることは抑制される。従って、エンジン1で発生した熱が上記冷却水に供給された後、上記空気を介して車室25内に供給されることは抑制され、エンジン1及び上記冷却水の温度が速やかに上昇することとなる。そして、エンジン1及び冷却水の温度が速やかに上昇すると、同エンジン1の排気温度が高くなって同エンジン1の排気を介して触媒に対し効率よく熱が供給される。このことは、自動車において車室25以外で低温時に熱を供給する必要のある部分である触媒に対し、エンジン1で発生した熱が排気を介して優先的に供給されていることを意味する。このように触媒に対しエンジン1で発生する熱を優先的に供給することができるため、エンジン1の始動開始後、触媒床温が速やかに活性温度まで上昇して触媒の暖機が完了した状態となる。従って、エンジン1の始動開始後、触媒暖機の完了が遅れ、その遅れの分だけエンジン1の排気エミッション改善が妨げられることを抑制できる。
【0092】
(2)エンジン1の始動開始後における触媒暖機が完了した後であって、エアコンオートモード中であり、且つ冷却水温TWが機関暖機判定値TW1未満であるときにも、言い換えれば冷却水温TWがエンジン1の暖機完了と判断可能な値である機関暖機完了温度未満である旨判断されているときにもブロワ21の駆動が禁止される。このようにブロワ21の駆動が禁止されているときには、エンジン1で発生する熱が触媒だけでなく冷却水にも優先的に供給されることになり、始動開始後の早期にエンジン1の暖機を完了させることができる。また、上記触媒暖機完了後のブロワ21の駆動禁止中に暖房要求がなされたときには、シートヒータ19の発熱を通じて乗員が温められるため、上記ブロワ21の駆動禁止中に車室25内の乗員が寒さを感じるなど、車室25内の快適性が低下することは抑制される。そして、冷却水温TWが上記機関暖機判定値TW1以上になると、同冷却水温TWがエンジン1の暖機完了と判断可能な値である機関暖機完了温度以上である旨判断される。このことは、触媒及び冷却水へのエンジン1の熱の優先的な供給が完了して同冷却水の熱を車室25内の暖房に利用することが可能な状況であることを意味する。このような状況のときにはブロワ21の駆動が許可され、同ブロワ21の駆動により車室25内に温風を送って車室25内の暖房を行うことが可能になる。以上により、エンジン1の早期の暖機を図りつつ、車室25内の快適性が低下することを抑制できるようになる。
【0093】
(3)上記触媒暖機完了後のブロワ21の駆動禁止中に暖房要求がなされたか否かは、エアコンオートモードで用いられる目標吹き出し温度TAOに基づいて判断される。すなわち、目標吹き出し温度TAOが暖房要求判定値以上であるときには暖房要求ありの旨判断され、目標吹き出し温度TAOが暖房要求判定値以上であるときには暖房要求なしの旨判断される。これにより、上記暖房要求の有無を適切に判断することができ、その暖房要求の有無に応じて発熱及び発熱停止されるシートヒータ19が、無駄に発熱したり必要なときに発熱しなかったりするという不具合が生じないようにすることができる。
【0094】
(4)上記触媒暖機完了後のシートヒータオートモード中における上記機関暖機判定値TW1に関しては、暖房要求ありの旨の判断に基づきシートヒータ19が発熱されているときの値(「A+β」もしくは「A+β+γ」)が、暖房要求なしの旨の判断に基づきシートヒータ19が発熱停止されているときの値「A」に比べて、より高い値とされる。従って、シートヒータオートモードでは、暖房要求に基づきシートヒータ19が発熱されているときには、エンジン1の始動開始後、冷却水温TWが、暖房要求なしに基づくシートヒータ19の発熱停止時に比べてより高い値になってからでないと、ブロワ21の駆動禁止が解除されて同ブロワ21の駆動が許可されなくなる。このことは、始動開始後、エンジン1で発生する熱が車室25よりも冷却水に対しより一層優先的に供給されることを意味する。従って、エンジン1の始動開始後、冷却水温TWの上昇が一層速やかに行われるようになり、エンジン1の暖機も一層速やかに行われるようになる。また、上記のようにエンジン1で発生する熱が車室25よりも冷却水に対しより一層優先的に供給されるとしても、そのときにはシートヒータ19が発熱されて乗員を温めるため、乗員が寒さを感じるなど車室25内の快適性が低下することは抑制される。
【0095】
(5)上記シートヒータオートモード中であって暖房要求に基づきシートヒータ19が発熱しているときの機関暖機判定値TW1に関しては、乗員の意志によりエコノミーモードが選択されたときには、ノーマルモードが選択されたときの値「A+β」と比較して、より高い値「A+β+γ」に設定される。従って、エコノミーモードでは、エンジン1の始動開始後、冷却水温TWがノーマルモード時に比べてより高い値になってからでないと、ブロワ21の駆動禁止が解除されて同ブロワ21の駆動が許可されなくなる。このことは、始動開始後、エンジン1で発生する熱が車室25よりも冷却水に対しより一層優先的に供給されることを意味する。従って、エンジン1の始動開始後、冷却水温TWの上昇が一層速やかに行われるようになり、エンジン1の暖機も一層速やかに行われるようになる。
【0096】
(第2実施形態)
次に、車両の制御装置を自動車の制御装置に具体化した第2実施形態を図7に基づき説明する。
【0097】
エンジン1の小型化や自動停止再始動等によるエンジン1の熱効率の向上が図られた自動車において、車室25以外で低温時に熱の供給を受ける必要のある部分としては、変速装置10のトランスミッションオイルもあげられる。
【0098】
変速装置10の駆動状態に関しては、トランスミッションオイルの油温がエンジン停止中での常温に対しある程度高い値(例えば判定値H1)になったときにエンジン1の燃費改善に寄与する状態となる。このため、エンジン1の燃費改善を図るべく、熱交換装置17の循環経路6に繋がる分岐通路6aの流量制御弁6bを開弁し、油路15のオイルクーラ16にてトランスミッションオイルと循環経路6の冷却水との間で熱交換を行い、同オイルを上記冷却水により温めて油温を上記判定値H1以上に維持することが考えられる。しかし、エンジン1の発生する熱が少ない上記自動車においては、同エンジン1との熱交換により温度上昇する冷却水の温度が低くなる傾向があるため、外気温やエンジン1の運転状態によってはトランスミッションオイルの油温を上記判定値H1以上とすることができなくなるおそれがある。
【0099】
この実施形態は、上記自動車において、車室25以外で低温時(例えばエンジン1の冷えた状態からの始動直後)に熱の供給を受ける必要のある部分であるトランスミッションオイルにエンジン1で発生した熱を優先的に供給し、同オイルの油温を速やかに上記判定値H1以上に上昇させるようにしたものである。これにより、エンジン1の始動開始後であってトランスミッションオイルが上記判定値H1以上に上昇するタイミングが遅れ、その遅れの分だけエンジン1の燃費改善が妨げられることは抑制される。
【0100】
ちなみに、エンジン1の燃費改善に寄与する変速装置10の駆動状態としては、例えば、ロックアップクラッチ11により変速機構とエンジン1とを連結させるロックアップ制御の実行が許可された状態があげられる。同制御を通じてロックアップクラッチ11による変速機構とエンジン1との連結が行われると、エンジン1から変速機構への回転伝達が効率よく行われる。このため、車両を走行させるためのエンジン1の運転を行う際に同エンジン1の燃費が改善されるようになる。こうしたロックアップ制御に関しては、トランスミッションオイルの油温がエンジン停止中での常温からロックアップ制御許可温度まで上昇したときに実行許可される。従って、エンジン1の燃費改善に寄与する変速装置10の駆動状態として、同装置10におけるロックアップ制御の実行が許可された状態を想定した場合には、上記判定値H1がロックアップ制御許可温度に設定されることとなる。
【0101】
また、エンジン1の燃費改善に寄与する変速装置10の駆動状態としては、自動車の自走要求がないときに変速機構を強制的にニュートラル状態に切り換えるニュートラル制御の実行が許可された状態もあげられる。なお、上記自走要求がない旨の判断は、例えば、車速「0」且つアクセル踏込量「0」のときや、車速「0」且つ自動車のブレーキオンのときになされる。同ニュートラル制御を通じて変速機構が強制的にニュートラル状態に切り換えられると、変速装置10によるエンジン1の回転抵抗が低減されるため、その分だけエンジン1の燃費が改善されるようになる。こうしたニュートラル制御に関しては、トランスミッションオイルの油温がエンジン停止中での常温からニュートラル制御許可温度まで上昇したときに実行許可される。従って、エンジン1の燃費改善に寄与する変速装置10の駆動状態として、同装置10におけるニュートラル制御の実行が許可された状態を想定した場合には、上記判定値H1がニュートラル制御許可温度に設定されることとなる。
【0102】
図7は、本実施形態の暖房制御ルーチンを示すフローチャートである。この暖房制御ルーチンにおいては、第1実施形態の暖房制御ルーチンにおけるステップS101(図3)の処理に相当する処理(S301)のみが同ルーチンと異なっている。このため、以下では同ルーチンと異なる部分、及びそれに関係する部分についてのみ説明する。
【0103】
本実施形態の暖房制御ルーチンにおけるステップ301の処理では、エンジン1の始動開始後にトランスミッションオイルの油温が上昇して上記判定値H1に達するまでの間か否かが判断される。そして、トランスミッションオイルの油温が上記判定値H1まで上昇していない場合、ステップS301で肯定判定がなされ、空調装置18におけるブロワ21の駆動が禁止される(S302)。
【0104】
従って、エンジン1が始動されると、その後にトランスミッションオイルの油温が上記判定値H1以上に上昇するまでは、仮に暖房要求があったとしてもブロワ21の駆動が禁止される。同ブロワ21の駆動が禁止されているときには、ブロワ21の駆動を通じてエアダクト22内を流れる空気が循環経路6に設けられたヒータコア24にて冷却水との間で熱交換されることは抑制される。従って、エンジン1で発生した熱が上記冷却水に供給された後、上記空気を介して車室25内に供給されることは抑制され、エンジン1及び上記冷却水の温度が速やかに上昇することとなる。そして、エンジン1及び冷却水の温度が速やかに上昇すると、その冷却水を介してオイルクーラ16にてトランスミッションオイルに対し効率よく熱が供給される。このことは、自動車において車室25以外で低温時に熱を供給する必要のある部分であるトランスミッションオイルに対し、エンジン1で発生した熱が冷却水を介して優先的に供給されていることを意味する。このようにトランスミッションオイルに対しエンジン1で発生する熱を優先的に供給することができるため、エンジン1の始動開始後、トランスミッションオイルの油温が速やかに上記判定値H1まで上昇し、変速装置10の駆動状態がエンジン1の燃費改善に寄与する状態となる。従って、エンジン1の始動開始後、変速装置10が上記駆動状態となることが遅れ、その遅れの分だけエンジン1の燃費改善が妨げられることを抑制できる。
【0105】
本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(6)エンジン1の始動開始後、トランスミッションオイルの油温が速やかに上記判定値H1まで上昇し、変速装置10の駆動状態がエンジン1の燃費改善に寄与する状態となるため、その状態となることが遅れることを抑制でき、ひいてはその遅れの分だけエンジン1の燃費改善が妨げられることを抑制できる。
【0106】
(7)エンジン1の燃費改善に寄与する変速装置10の駆動状態として、同装置10におけるロックアップ制御の実行が許可された状態を想定した場合には、上記判定値H1がロックアップ制御許可温度に設定される。この場合、エンジン1の始動開始後、トランスミッションオイルの油温が速やかに上記ロックアップ制御許可温度まで上昇し、ロックアップ制御の実行が許可された状態となり、その状態となることに遅れが生じることはない。そして、その遅れの分だけエンジン1の燃費改善が妨げられることもない。
【0107】
(8)エンジン1の燃費改善に寄与する変速装置10の駆動状態として、同装置10におけるニュートラル制御の実行が許可された状態を想定した場合には、上記判定値H1がニュートラル制御許可温度に設定される。この場合、エンジン1の始動開始後、トランスミッションオイルの油温が速やかに上記ニュートラル制御許可温度まで上昇し、ニュートラル制御の実行が許可された状態となり、その状態となることに遅れが生じることはない。そして、その遅れの分だけエンジン1の燃費改善が妨げられることもない。
【0108】
(9)第1実施形態における(2)〜(5)と同等の効果を得ることができる。
(第3実施形態)
次に、車両の制御装置を自動車の制御装置に具体化した第3実施形態を図8に基づき説明する。
【0109】
エンジン1の小型化や自動停止再始動等によるエンジン1の熱効率の向上が図られた自動車において、車室25以外で低温時に熱の供給を受ける必要のある部分としては、エンジン1の潤滑オイルもあげられる。
【0110】
エンジン1に関しては、潤滑オイルの油温がエンジン停止中での常温に対してある程度高い値(例えば判定値H2)になったときに粘度が低下し、エンジン1の潤滑オイルによる回転抵抗が低減して効率よく駆動することが可能になり、同エンジン1の燃費改善に有効な状態となる。このため、エンジン1の燃費改善を図るべく、循環経路6内の冷却水と上記潤滑オイルとの間で熱交換を行い、同潤滑オイルの油温を上記判定値H2以上に維持することが考えられる。しかし、エンジン1の発生する熱が少ない上記自動車においては、同エンジン1との熱交換により温度上昇する冷却水の温度が低くなる傾向があるため、外気温やエンジン1の運転状態によっては同エンジン1における潤滑オイルの油温を上記判定値H2以上とすることができなくなるおそれがある。
【0111】
この実施形態は、上記自動車において、車室25以外で低温時(例えばエンジン1の冷えた状態からの始動直後)に熱の供給を受ける必要のある部分であるエンジン1の潤滑オイルに同エンジン1で発生した熱を優先的に供給し、同オイルの油温を速やかに上記判定値H2以上に上昇させるようにしたものである。これにより、エンジン1の始動開始後であって潤滑オイルが上記判定値H2以上に上昇するタイミングが遅れることはなくなり、その遅れの分だけエンジン1の燃費改善が妨げられることは抑制される。
【0112】
図8は、本実施形態の暖房制御ルーチンを示すフローチャートである。この暖房制御ルーチンにおいては、第1実施形態の暖房制御ルーチンにおけるステップS101(図3)の処理に相当する処理(S401)のみが同ルーチンと異なっている。このため、以下では同ルーチンと異なる部分、及びそれに関係する部分についてのみ説明する。
【0113】
本実施形態の暖房制御ルーチンにおけるステップ401の処理では、エンジン1の始動開始後にエンジン1の潤滑オイルの油温が上昇して上記判定値H2に達するまでの間か否かが判断される。そして、潤滑オイルの油温が上記判定値H2まで上昇していない場合、ステップS401で肯定判定がなされ、空調装置18におけるブロワ21の駆動が禁止される(S402)。
【0114】
従って、エンジン1が始動されると、その後に潤滑オイルの油温が上記判定値H2以上に上昇するまでは、仮に暖房要求があったとしてもブロワ21の駆動が禁止される。同ブロワ21の駆動が禁止されているときには、ブロワ21の駆動を通じてエアダクト22内を流れる空気が循環経路6に設けられたヒータコア24にて冷却水との間で熱交換されることは抑制される。従って、エンジン1で発生した熱が上記冷却水に供給された後、上記空気を介して車室25内に供給されることは抑制され、エンジン1及び上記冷却水の温度が速やかに上昇することとなる。そして、エンジン1及び冷却水の温度が速やかに上昇すると、その冷却水を介してエンジン1の潤滑オイルに対し効率よく熱が供給される。このことは、自動車において車室25以外で低温時に熱を供給する必要のある部分である潤滑オイルに対し、エンジン1で発生した熱が冷却水を介して優先的に供給されていることを意味する。このように潤滑オイルに対しエンジン1で発生する熱を優先的に供給することができるため、エンジン1の始動開始後、潤滑オイルの油温が速やかに上記判定値H2まで上昇すること、言い換えればエンジン1を効率よく駆動させることの可能な状態となることが遅れ、その遅れの分だけエンジン1の燃費改善が妨げられることを抑制できる。
【0115】
本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(10)エンジン1の始動開始後、潤滑オイルの油温が速やかに上記判定値H2まで上昇し、エンジン1を効率よく駆動させることの可能な状態となるため、その状態となることが遅れることを抑制でき、ひいてはその遅れの分だけエンジン1の燃費改善が妨げられることを抑制できる。
【0116】
(11)第1実施形態における(2)〜(5)と同等の効果を得ることができる。
(第4実施形態)
次に、車両の制御装置を自動車の制御装置に具体化した第4実施形態を図9〜図12に基づき説明する。
【0117】
この実施形態は、第1実施形態の変形例であり、エンジン1の始動開始後であって触媒暖機が完了した後の処理が第1実施形態と異なっている。上記触媒暖機が完了した後、暖房要求に基づくブロワ21の駆動によって車室25内に送られる空気がヒータコア24での冷却水との熱交換により温められているとき、その冷却水の温度が上記空気による車室25内の暖房の可能な下限値未満に低下するおそれがある。
【0118】
これは、エンジン1の小型化や自動停止再始動等によるエンジン1の熱効率の向上が図られた自動車においては、エンジン1で発生する熱が少なく、同エンジン1との熱交換により温度上昇する上記冷却水の温度が低くなる傾向があるためである。特に、エンジン1の燃費改善を意図して可能な限り広いエンジン運転領域でEGR制御を実行しようとする場合、上記冷却水の温度が低くなる傾向が更に顕著なものとなる。これは、EGR制御の実行時において、EGRバルブ52が開弁されてエンジン1の排気の一部がEGR通路51を介して吸気通路42に戻されると、それに伴いエンジン1のポンプ損失低減や冷却損失低減が図られることが関係している。このようにエンジン1のポンプ損失や冷却損失が低減するということはエンジン1の燃費が改善することを意味するが、エンジン1の冷却損失が低減するということはエンジン1で発生する熱が少なくなるということも意味する。従って、EGR制御の実行が冷却水温TWの低下を招き、同EGR制御の実行中にブロワ21が駆動されていると、冷却水温TWが上述した下限値未満により一層低下しやすくなる。
【0119】
この実施形態では、暖房要求に基づきブロワ21が駆動されて車室25内に温められた空気が送られているとき、冷却水温TWが上記下限値未満に低下することに基づき、エンジン1の発熱量が多くなるエンジン運転を実施して冷却水温TWを上層させる温度上昇制御が行われる。この温度上昇制御として、具体的にはエンジン1のアイドル回転速度の上昇、エンジン1の自動停止の禁止、及び自動停止中のエンジン1の再始動といったことが行われる。これにより、エンジン1で発生する熱が多くなるため、冷却水温TWが上記下限値以上に戻されるようになる。ただし、上記温度上昇制御によりエンジン1の発熱量を多くするということは、同エンジン1での燃料消費量が多くなることを意味し、同エンジン1での燃費を改善するうえでは不利となる。従って、エンジン1の燃費改善を図るうえでは上記温度上昇制御が可能な限り実施されないようにすることが好ましい。
【0120】
この実施形態では、以上の実情に鑑み、エンジン1の始動開始後であって触媒暖機の完了後、暖房要求に基づくブロワ21の駆動により冷却水温TWが上記下限値未満になるおそれがあるほど同冷却水温TWが低い旨判断されるとき、冷却水温TWの低下を抑制するための温度低下抑制制御が行われる。この場合、同温度低下抑制制御の実施により、冷却水温TWの上記下限値未満への低下が抑制され、その低下に起因して上記温度上昇制御が実施されることは抑制される。従って、上記温度上昇制御の実施によりエンジン1の燃費改善が妨げられることを可能な限り抑制することができるようになる。
【0121】
図9の(a)において、実線は上記温度低下抑制制御ありの場合の冷却水温TWの推移を示し、二点鎖線は上記温度低下抑制制御なしの場合の冷却水温TWの推移を示している。同図から分かるように、上記温度低下抑制制御なしの場合(二点鎖線)、冷却水温TWの上記下限値未満への低下が抑制されず、温度上昇制御としてエンジン1の自動停止の禁止や自動停止中のエンジン1の再始動が行われることとなる。その結果、エンジン1の自動停止再始動が行われず、エンジン回転速度が図9の(c)に示されるように推移することとなり、上記エンジン1の自動停止再始動によるエンジン1の燃費改善が妨げられることは避けられない。これに対し、上記温度低下抑制制御ありの場合(実線)、冷却水温TWの上記下限値未満への低下が抑制されるため、温度上昇制御としてエンジン1の自動停止の禁止や自動停止中のエンジン1の再始動が行われることは可能な限り抑制される。その結果、エンジン1の自動停止再始動が通常どおり行われ、エンジン回転速度が図9の(b)に示されるように推移することとなり、上記エンジン1の自動停止再始動によるエンジン1の燃費改善が妨げられることは抑制される。
【0122】
図10は、本実施形態の暖房制御ルーチンを示すフローチャートである。この暖房制御ルーチンも、エアコンECU27を通じて、例えば所定時間毎の時間割り込みにて周期的に実行される。
【0123】
同ルーチンにおいては、エンジン1の始動開始から触媒暖機完了までの間か否かが判断され(S501)、ここで肯定判定であればブロワ21の駆動が禁止される(S501)。一方、エンジン1の始動開始後であって上記触媒暖機が完了した後であれば(S501:NO)、上記温度低下抑制制御を実施するための処理(S503〜S505)、及び上記温度上昇制御を実施するための処理(S506、S507)が行われる。
【0124】
上記温度低下抑制を実施するための処理(S503〜S505)では、まず暖房要求があるか否か(S503)、言い換えればブロワ21が駆動されているか否かが判断される。ここで肯定判定であれば、上記ブロワ21の駆動により冷却水温TWが上記下限値未満になるおそれがあるほど同冷却水温TWが低いか否かが判断される(S504)。そして、冷却水温TWが上記ブロワ21の駆動により上記下限値未満になるおそれがあるほど低い場合、上記温度低下抑制制御が実行される(S505)。
【0125】
また、上記温度上昇制御を実施するための処理(S506、S507)では、冷却水温TWが上記下限値未満であるか否かが判断され(S506)、ここで肯定判定であれば上記温度上昇制御が実行される(S507)。
【0126】
図11は、図10の暖房制御ルーチンにおけるステップS505の温度低下抑制制御を実行するための温度低下抑制制御ルーチンを示すフローチャートである。この温度低下抑制制御ルーチンは、エアコンECU27を通じて、暖房制御ルーチンにおけるステップS505(図10)に進む毎に実行される。
【0127】
上記温度低下抑制制御ルーチンにおいては、エアコンオートモード中であることを条件に(S601:YES)、温度低下抑制制御としてブロワ21の風量の低減が行われる(S602)。このようにブロワ21の風量の低減が行われると、循環経路6のヒータコア24を通過して車室25内に流れる空気の量が少なくなり、ヒータコア24にて冷却水の熱が上記空気によって奪われることを抑制できるため、冷却水の温度低下が抑制されることとなる。ただし、ヒータコア24を通過した空気が冷却水から受ける熱が少なくなり、車室25内に送られる同空気の温度が低下することは避けられず、乗員が寒さを感じるなど車室25内の快適性が低下するおそれがある。このため、温度低下抑制制御としてブロワ21の風量低減が行われたときには、シートヒータ19の発熱が行われる(S603)。このときのシートヒータ19の発熱に関しては、同ヒータ19の発熱停止状態や所定の発熱状態から予め定められた分だけ発熱量が増大するように行われる。これにより、乗員や車室25がシートヒータ19の熱で温められるようになるため、乗員が寒さを感じるなど車室25内の快適性が低下することを抑制できるようになる。
【0128】
続いて、上記シートヒータ19の発熱による乗員の温熱感は十分であるか否かが判断される(S604)。乗員の温熱間は車室25内の温度(内気温)から影響を受けるため、この温度に基づき上記判断を行うことが可能である。すなわち、上記シートヒータ19の発熱により十分な温熱間が得られる内気温である場合には上記ステップS604で肯定判定がなされ、そうでなければ否定判定がなされる。このステップS604で肯定判定がなされると、上記ブロワ21の風量低減による冷却水温TWの変化が生じるために必要な時間が経過したことを条件に(S605:YES)、冷却水温TWが上記下限値未満になるおそれがあるほど同冷却水温TWが低いか否かが判断される(S606)。ここでの肯定判定は、上記ブロワ21の風量低減だけでは冷却水温TWの上記下限値未満への低下を抑制しきれない状況であることを意味する。この場合、温度低下抑制制御として、ブロワ21の風量低減に加えて、EGR制御の実行禁止も実施される(S607)。なお、上記ステップ601で否定判定がなされた場合、また上記ステップS604で否定判定がなされた場合も、ステップS607に進んでEGR制御の実行が禁止される。このEGR制御の実行禁止を通じて、冷却水温TWの上記下限値未満への低下がより的確に抑制されるようになり、温度上昇制御が実行されることによるエンジン1の燃費悪化をより一層的確に抑制できるようになる。
【0129】
一方、上記ステップS606で否定判定がなされた場合、その否定判定は上記ブロワ21の風量低減だけで冷却水温TWの上記下限値未満への低下を抑制できている状況であることを意味する。この場合、フラグFが「1」に設定され(S608)、EGR制御の実行が許可される(S609)。言い換えればEGR制御の実行禁止は実施されない。上記フラグFに関しては、「1」であればEGR制御の実行が許可された状態で温度低下抑制制御としてブロワ21の風量が低減されている状況であることを示し、「0」であれば同状況ではないことを示すものとなる。なお、上記ステップS605で否定判定がなされた場合も、ステップS609に進んでEGR制御の実行が許可されることとなる。
【0130】
図12は、EGR制御の実行が許可された状態で温度低下抑制制御としてブロワ21の風量が低減されている状況のときに同ブロワ21の風量の低減を停止して同風量を元に戻すためのブロワ風量復帰ルーチンを示すフローチャートである。このブロワ風量復帰ルーチンは、エアコンECU27を通じて、例えば所定時間毎の時間割り込みにて周期的に実行される。
【0131】
同ルーチンにおいては、上記フラグFが「1」であるか否か(S701)、ブロワ21の風量を低減前の値に戻しても冷却水温TWが上記下限値未満になるおそれがないほど、同冷却水温TWが高いか否か(S702)、といった判断が行われる。このステップS702の判断に関して、具体的には、ブロワ21の風量を低減前の値に戻すことによる冷却水温TWの上昇代を「ΔT」とし上記下限値を「TC」としたとき、冷却水温TWが「TC+ΔT」という値よりもある程度高いか否かの判断が行われる。そして、これらステップS701とステップS702との両方で肯定判定であれば、ブロワ21の風量低減が停止されて同風量が元の値に戻され(S703)、シートヒータ19の発熱が停止される(S704)。その後、フラグFが「0」にリセットされる(S705)。
【0132】
本実施形態によれば、第1実施形態における(1)の効果に加え、以下に示す効果が得られるようになる。
(12)エンジン1の始動開始後であって触媒暖気の完了後、暖房要求に基づくブロワ21の駆動により冷却水温TWが上記下限値未満になるおそれがあるほど同冷却水温が低い旨判断されるときには、冷却水温TWの低下を抑制するための温度低下抑制制御が行われる。この場合、同温度低下抑制制御の実施により、冷却水温TWの上記下限値未満への低下が抑制され、その低下に起因して上記温度上昇制御が実施されることは抑制される。従って、上記温度上昇制御の実施によりエンジン1の燃費改善が妨げられることを可能な限り抑制することができるようになる。
【0133】
(13)上記温度低下抑制制御としてブロワ21の風量低減が行われると、循環経路6のヒータコア24を通過して車室25内に流れる空気の量が少なくなり、ヒータコア24にて冷却水の熱が上記空気によって奪われることを抑制できるため、冷却水温TWの上記下限値未満への低下が抑制されることとなる。ただし、ブロワ21の風量を低減すると、ヒータコア24を通過した空気が冷却水から受ける熱が少なくなり、車室25内に送られる同空気の温度が低下することは避けられず、乗員が寒さを感じるなど車室25内の快適性が低下するおそれがある。こうしたことを抑制するため、上記のようにブロワ21の風量を低減させたときにはシートヒータ19の発熱が行われる。この場合、シートヒータ19の熱で乗員が温められるようになるため、乗員が寒さを感じるなど車室25内の快適性が低下することを抑制できるようになる。
【0134】
(14)温度低下抑制制御として、まずブロワ21の風量低減が行われ、それだけでは冷却水温TWの上記下限値未満への低下を抑制できないことを条件にEGR制御の実行禁止が行われる。これにより、冷却水温TWの上記下限値未満への低下を的確に抑制することができ、温度上昇制御が実行されることによるエンジン1の燃費悪化をより一層的確に抑制することができるようになる。一方、上記ブロワ21の風量低減だけで冷却水温TWの上記下限値未満への低下を抑制できるときには、EGR制御の実行禁止は行われず同EGR制御の実行が許可される。従って、可能な限りEGR制御を実行することができ、同EGR制御によるエンジン1の燃費改善効果が最大限に得られるようになる。
【0135】
(15)EGR制御の実行が許可された状態でのブロワ21の風量低減中、冷却水温TWが上記ブロワ21の風量低減を停止して同風量を元に戻しても上記下限値未満になるおそれがないほど同冷却水温TWが上昇したとき、上記ブロワ21の風量低減を停止して同風量を元に戻すとともにシートヒータ19の発熱が停止される。これにより、ブロワ21の風量低減及びシートヒータ19の発熱が無駄に長く続けられることは抑制されるようになる。
【0136】
(第5実施形態)
次に、車両の制御装置を自動車の制御装置に具体化した第5実施形態を図13に基づき説明する。
【0137】
この実施形態は、第2実施形態の変形例であり、エンジン1の始動開始後であってトランスミッションオイルの油温が上記判定値H1以上に上昇した後の処理が第2実施形態と異なっており、同処理として第4実施形態における触媒暖機完了後の処理と同じ処理が行われる。
【0138】
図13は、本実施形態の暖房制御ルーチンを示すフローチャートである。この暖房制御ルーチンにおいては、エンジン1の始動開始後にトランスミッションオイルの油温が上昇して上記判定値H1に達するまでの間か否かが判断され(S801)、ここで肯定判定がなされるとブロワ21の駆動が禁止される(S802)。また、ステップS801で否定判定がなされると、ステップS803〜S807の処理が実行される。これらステップS803〜S807の処理は、第4実施形態における暖房制御ルーチン(図9)のステップ503〜S507と同じ処理となっている。
【0139】
本実施形態によれば、第2実施形態における(6)の効果、及び第4実施形態における(12)〜(15)の効果と同等の効果が得られる。
(第6実施形態)
次に、車両の制御装置を自動車の制御装置に具体化した第6実施形態を図14に基づき説明する。
【0140】
この実施形態は、第3実施形態の変形例であり、エンジン1の始動開始後であって同エンジン1の潤滑オイルの油温が上記判定値H2以上に上昇した後の処理が第3実施形態と異なっており、同処理として第4実施形態における触媒暖機完了後の処理と同じ処理が行われる。
【0141】
図14は、本実施形態の暖房制御ルーチンを示すフローチャートである。この暖房制御ルーチンにおいては、エンジン1の始動開始後に同エンジン1の潤滑オイルの油温が上昇して上記判定値H2に達するまでの間か否かが判断され(S901)、ここで肯定判定がなされるとブロワ21の駆動が禁止される(S902)。また、ステップS901で否定判定がなされると、ステップS903〜S907の処理が実行される。これらステップS903〜S907の処理は、第4実施形態における暖房制御ルーチン(図9)のステップ503〜S507と同じ処理となっている。
【0142】
本実施形態によれば、第3実施形態における(10)の効果、及び第4実施形態における(12)〜(15)の効果と同等の効果が得られる。
(その他の実施形態)
なお、上記各実施形態は、例えば以下のように変更することもできる。
【0143】
第1〜第6実施形態において、電熱式のステアリングヒータやエアダクト22を流れる空気を暖めるためのエアヒータ等を発熱手段(発熱部)として設けてもよい。
第1〜第3実施形態において、ノーマルモードとエコノミーモードとで機関暖機判定値TW1を異なる値に設定したが、例えばノーマルモードに対応する値「A+β」に固定してもよい。
【0144】
第4〜第6実施形態において、温度低下抑制制御としてブロワ風量低減とEGR制御実行禁止との一方のみを行ってもよい。
第4〜第6実施形態において、温度低下抑制制御としてブロワ風量を低減するとき、必ずしもシートヒータ19を発熱させる必要はない。
【0145】
第1〜第3実施形態において、機関暖機判定値可変・シートヒータ制御処理において、暖房要求ありのときに必ずしもシートヒータ19を発熱させる必要はない。
第1実施形態において、暖房制御ルーチンのステップS101で肯定判定がなされたとき、暖房要求の有無に応じてシートヒータ19の発熱及び発熱停止を行ってもよい。なお、同ルーチンにおいて必ずしもステップS101の処理を行う必要はなく、その処理を省略してもよい。
【0146】
第2実施形態において、暖房制御ルーチンにおけるステップ301で肯定判定がなされたとき、暖房要求の有無に応じてシートヒータ19の発熱及び発熱停止を行ってもよい。なお、同ルーチンにおいて必ずしもステップS301の処理を行う必要はなく、その処理を省略してもよい。
【0147】
第3実施形態において、暖房制御ルーチンにおけるステップ401で肯定判定がなされたとき、暖房要求の有無に応じてシートヒータ19の発熱及び発熱停止を行ってもよい。なお、同ルーチンにおいて必ずしもステップS401の処理を行う必要はなく、その処理を省略してもよい。
【0148】
第4実施形態において、暖房制御ルーチンにおけるステップ501で肯定判定がなされたとき、暖房要求の有無に応じてシートヒータ19の発熱及び発熱停止を行ってもよい。なお、同ルーチンにおいて必ずしもステップS501の処理を行う必要はなく、その処理を省略してもよい。
【0149】
第5実施形態において、暖房制御ルーチンにおけるステップ801で肯定判定がなされたとき、暖房要求の有無に応じてシートヒータ19の発熱及び発熱停止を行ってもよい。なお、同ルーチンにおいて必ずしもステップS801の処理を行う必要はなく、その処理を省略してもよい。
【0150】
第6実施形態において、暖房制御ルーチンにおけるステップ901で肯定判定がなされたとき、暖房要求の有無に応じてシートヒータ19の発熱及び発熱停止を行ってもよい。なお、同ルーチンにおいて必ずしもステップS901の処理を行う必要はなく、その処理を省略してもよい。
【0151】
第2、第5実施形態において、判定値H1に関しては、トランスミッションオイルの粘度が低下し、変速装置10(トランスミッションオイル)によるエンジン1の回転抵抗が低減し、同エンジン1を効率よく駆動することが可能になるトランスミッションオイルの温度に設定してもよい。
【符号の説明】
【0152】
1…エンジン、1a…出力軸、2…エンジンECU(電子制御装置)、3…水温センサ、4…ウォータポンプ、5…コンプレッサ、6…循環経路、6a…分岐通路、6b…流量制御弁、7…冷媒通路、8…油温センサ、9…トルクコンバータ、10…変速装置、11…ロックアップクラッチ、12…トランスミッションECU(電子制御装置)、13…タービン回転数センサ、14…油温センサ、15…油路、16…オイルクーラ、17…熱交換装置、18…空調装置、19…シートヒータ、21…ブロワ、22…エアダクト、23…エバポレータ、24…ヒータコア、25…車室、26…エアミックスダンパ、27…エアコンECU(電子制御装置)、28…エアコンオート制御切換スイッチ、29…温度設定スイッチ、30…風量設定スイッチ、31…シートヒータオート制御切換スイッチ、32…モード切換スイッチ、33…日射量センサ、34…外気温センサ、35…内気温センサ、41…燃焼室、42…吸気通路、44…燃料噴射弁、45…点火プラグ、46…ピストン、47…排気通路、48…触媒コンバータ、49…スタータ、50…EGR機構、51…EGR通路、52…EGRバルブ、53…アクセルペダル、54…アクセルポジションセンサ、55…スロットルバルブ、56…スロットルポジションセンサ、57…エアフローメータ、58…クランクポジションセンサ、59…空燃比センサ、60…排気温センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される内燃機関の排気系に設けられて排気の浄化を行う触媒と、
内燃機関を通過するように設けられた循環経路を備え、同循環経路内の熱交換流体を循環させて同流体と内燃機関との間で熱交換を行わせる熱交換装置と、
前記循環経路の途中に設けられた熱交換器、及び暖房要求に基づき駆動されて前記熱交換器を通過する空気の流れを起こすブロワを備え、同熱交換器での前記熱交換流体との熱交換により温められた前記空気を車室内に送る空調装置と、
を備える車両の制御装置において、
内燃機関の始動開始から前記触媒の暖機が完了するまで前記ブロワの駆動を禁止する禁止手段を備え、
前記車両は、内燃機関とは別の熱源を用いて車室内での暖房を行うべく発熱する発熱手段を搭載するものであり、
前記禁止手段は、
前記触媒の暖機が完了した後であって、前記熱交換流体の温度が内燃機関の暖機完了と判断可能な機関暖機完了温度未満であるときには前記ブロワの駆動の禁止を維持し、
前記ブロワの駆動禁止中に暖房要求がなされたときには前記発熱手段を発熱させ、
前記触媒の暖機が完了し且つ前記熱交換流体の温度が前記機関暖機完了温度以上であることに基づき、前記ブロワの駆動を許可するものであり、
前記空調装置は、外気温度、前記車室の実際の室内温度、及び乗員により設定される同車室内の設定温度に基づき、前記ブロワの駆動により前記車室内に送り込まれる空気の温度の目標値である目標吹き出し温度を設定し、その目標吹き出し温度に基づき前記熱交換器での空気と熱交換流体との間での熱交換量を可変とし、
前記禁止手段は、前記目標吹き出し温度が予め定められた暖房要求判定値以上であるときに暖房要求ありの旨判断して前記発熱手段を発熱させ、前記目標吹き出し温度が前記暖房要求判定値未満であるときに暖房要求なしの旨判断して前記発熱手段の発熱を停止させるものであり、
前記禁止手段は、前記熱交換流体の温度が機関暖機判定値以上であることに基づき、同熱交換流体の温度が前記機関暖機完了温度以上である旨判断して前記ブロワの駆動を許可し、
前記機関暖機判定値は、暖房要求ありの旨の判断に基づき前記発熱手段が発熱されているときには、暖房要求なしの旨の判断に基づき前記発熱手段の発熱が停止されているときに比べてより高い値に設定される
ことを特徴とする車両の制御装置。
【請求項2】
前記空調装置は、車両の乗員による切り換え操作を通じてノーマルモードとエコノミーモードとの間で切り換え可能であり、
前記機関暖機判定値は、前記ノーマルモードと前記エコノミーモードとの切り換えに基づき可変設定され、前記エコノミーモードに切り換えられているときには前記ノーマルモードに切り換えられているときに比べてより高い値に設定される
請求項1記載の車両の制御装置。
【請求項3】
車両に搭載される内燃機関の出力軸と繋がる変速装置と、
内燃機関を通過するように設けられた循環経路を備え、同循環経路内の熱交換流体を循環させることにより、前記熱交換流体と内燃機関との間で熱交換を行わせるとともに、同流体と前記変速装置のトランスミッションオイルとの間でも熱交換を行わせる熱交換装置と、
前記循環経路の途中に設けられた熱交換器、及び暖房要求に基づき駆動されて前記熱交換器を通過する空気の流れを起こすブロワを備え、同熱交換器での前記熱交換流体との熱交換により温められた前記空気を車室内に送る空調装置と、
を備える車両の制御装置において、
内燃機関の始動開始から前記トランスミッションオイルの油温が前記変速装置を内燃機関の燃費改善に寄与する駆動状態とし得る判定値に達するまで前記ブロワの駆動を禁止する禁止手段を備え、
前記車両は、内燃機関とは別の熱源を用いて車室内での暖房を行うべく発熱する発熱手段を搭載するものであり、
前記禁止手段は、
前記トランスミッションオイルの油温が前記判定値に達した後であって、前記熱交換流体の温度が内燃機関の暖機完了と判断可能な機関暖機完了温度未満であるときには前記ブロワの駆動の禁止を維持し、
前記ブロワの駆動禁止中に暖房要求がなされたときには前記発熱手段を発熱させ、
前記トランスミッションオイルの油温が前記判定値に達し且つ前記熱交換流体の温度が前記機関暖機完了温度以上であることに基づき、前記ブロワの駆動を許可するものであり、
前記空調装置は、外気温度、前記車室の実際の室内温度、及び乗員により設定される同車室内の設定温度に基づき、前記ブロワの駆動により前記車室内に送り込まれる空気の温度の目標値である目標吹き出し温度を設定し、その目標吹き出し温度に基づき前記熱交換器での空気と熱交換流体との間での熱交換量を可変とし、
前記禁止手段は、前記目標吹き出し温度が予め定められた暖房要求判定値以上であるときに暖房要求ありの旨判断して前記発熱手段を発熱させ、前記目標吹き出し温度が前記暖房要求判定値未満であるときに暖房要求なしの旨判断して前記発熱手段の発熱を停止させるものであり、
前記禁止手段は、前記熱交換流体の温度が機関暖機判定値以上であることに基づき、同熱交換流体の温度が前記機関暖機完了温度以上である旨判断して前記ブロワの駆動を許可し、
前記機関暖機判定値は、暖房要求ありの旨の判断に基づき前記発熱手段が発熱されているときには、暖房要求なしの旨の判断に基づき前記発熱手段の発熱が停止されているときに比べてより高い値に設定される
ことを特徴とする車両の制御装置。
【請求項4】
前記空調装置は、車両の乗員による切り換え操作を通じてノーマルモードとエコノミーモードとの間で切り換え可能であり、
前記機関暖機判定値は、前記ノーマルモードと前記エコノミーモードとの切り換えに基づき可変設定され、前記エコノミーモードに切り換えられているときには前記ノーマルモードに切り換えられているときに比べてより高い値に設定される
請求項3記載の車両の制御装置。
【請求項5】
内燃機関を通過するように設けられた循環経路を備え、同循環経路内の熱交換流体を循環させることにより、前記熱交換流体と内燃機関との間で熱交換を行わせるとともに、同流体と内燃機関の潤滑オイルとの間でも熱交換を行わせる熱交換装置と、
前記循環経路の途中に設けられた熱交換器、及び暖房要求に基づき駆動されて前記熱交換器を通過する空気の流れを起こすブロワを備え、同熱交換器での前記熱交換流体との熱交換により温められた前記空気を車室内に送る空調装置と、
を備える車両の制御装置において、
内燃機関の始動開始から同機関の潤滑オイルの油温が同機関を効率よく駆動することの可能な判定値に達するまで前記ブロワの駆動を禁止する禁止手段を備え、
前記車両は、内燃機関とは別の熱源を用いて車室内での暖房を行うべく発熱する発熱手段を搭載するものであり、
前記禁止手段は、
前記潤滑オイルの油温が前記判定値に達した後であって、前記熱交換流体の温度が内燃機関の暖機完了と判断可能な機関暖機完了温度未満であるときには前記ブロワの駆動の禁止を維持し、
前記ブロワの駆動禁止中に暖房要求がなされたときには前記発熱手段を発熱させ、
前記潤滑オイルの油温が前記判定値に達し且つ前記熱交換流体の温度が前記機関暖機完了温度以上であることに基づき、前記ブロワの駆動を許可するものであり、
前記空調装置は、外気温度、前記車室の実際の室内温度、及び乗員により設定される同車室内の設定温度に基づき、前記ブロワの駆動により前記車室内に送り込まれる空気の温度の目標値である目標吹き出し温度を設定し、その目標吹き出し温度に基づき前記熱交換器での空気と熱交換流体との間での熱交換量を可変とし、
前記禁止手段は、前記目標吹き出し温度が予め定められた暖房要求判定値以上であるときに暖房要求ありの旨判断して前記発熱手段を発熱させ、前記目標吹き出し温度が前記暖房要求判定値未満であるときに暖房要求なしの旨判断して前記発熱手段の発熱を停止させるものであり、
前記禁止手段は、前記熱交換流体の温度が機関暖機判定値以上であることに基づき、同熱交換流体の温度が前記機関暖機完了温度以上である旨判断して前記ブロワの駆動を許可し、
前記機関暖機判定値は、暖房要求ありの旨の判断に基づき前記発熱手段が発熱されているときには、暖房要求なしの旨の判断に基づき前記発熱手段の発熱が停止されているときに比べてより高い値に設定される
ことを特徴とする車両の制御装置。
【請求項6】
前記空調装置は、車両の乗員による切り換え操作を通じてノーマルモードとエコノミーモードとの間で切り換え可能であり、
前記機関暖機判定値は、前記ノーマルモードと前記エコノミーモードとの切り換えに基づき可変設定され、前記エコノミーモードに切り換えられているときには前記ノーマルモードに切り換えられているときに比べてより高い値に設定される
請求項5記載の車両の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−10507(P2013−10507A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−230715(P2012−230715)
【出願日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【分割の表示】特願2010−527644(P2010−527644)の分割
【原出願日】平成20年9月8日(2008.9.8)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】