説明

車両の外装部品取付ブラケット

【課題】 車両の意匠面となる少なくとも3つの部品が近接配置される位置における見切り部からの視線を遮ることができる外装部品取付ブラケットを提供する。
【解決手段】 車体4の意匠面となる少なくとも3つの部品(例えば、車両ドア1,フロントフェンダパネル2,フロントバンパ3)が近接配置される位置において前記少なくとも3つの部品の裏側に配置される車両の外装部品取付ブラケット7において、部品間の見切り部に沿って対応配置されて見切り部からの視線を遮る遮蔽板部12を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の外装部品取付ブラケットに関し、さらに詳しくは、車両の意匠面となる少なくとも3つの部品が近接配置される位置において前記部品の裏側に配置される車両の外装部品取付ブラケットに関する。
【背景技術】
【0002】
図4はキャブオーバ型車両(キャブオーバ型トラック)の車体を示すものであって、この車両の側部の意匠面は、車両ドア1のドアアウタパネル1aと、車両ドア1の前方側に配設されたフロントフェンダパネル2(図4及び図5参照)と、車両ドア1の前方側であってフロントフェンダパネル2の下方側に配置されたフロントバンパ3の側方の回り込み部3aとによって構成されている。上述の3つの部品、すなわち、外装パネルであるドアアウタパネル1a,フロントフェンダパネル2,及びフロントバンパ3は、互いに近接して配置され、これらの3つの部品が互いに近接配置されている位置においてフロントフェンダパネル2とフロントバンパ3とが外装部品取付ブラケット7´(図10参照)に取付けられている。そして、これらの3つの部品間の見切り部(2つの部品の間の接合箇所)α,β,γにおいては、通常、近接配置された外装パネルの間の隙間から奥が見えないようにフロントフェンダパネル2の側端縁のフランジ2aやフロントバンパ3の側端縁のフランジ3aを図6及び図7に示す如く車両ドア1のフランジ1aの裏側に潜り込ませた状態で配置させるようにしている。
【0003】
さらに具体的に述べると、上述のフランジ2a,3aは、フロントフェンダパネル2及びフロントバンパ3の外面(意匠面)より裏側に向けて一段下がるように屈曲させた断面略L字形状の目隠し用棚形状部(目隠しフランジ)として形成されており、これらの目隠しフランジ2a,3aと車両ドアのフランジ1aとが互いにオーバーラップした状態で組み合わせられるようになっている。一方、フロントフェンダパネル2の下端縁には、図8に示すように、既述のフランジ2aと同様の断面形状のフランジ2bが設けられており、このフランジ2bがフロントパンパ3の上端縁の裏側に潜り込ませた状態で組み合わせられるようになっている。かくして、従来では、車両の意匠面を構成するパネルや部品同士の見切り部は、パネル端縁を互いにオーバーラップさせて(一方の部品の裏側に他方の部品を回り込ませて)、見切り部分の奥が見えないようにしている。なお、図6及び図7において、5はフロントピラー、6はこのフロントピラー5の外面を構成するサイドボディアウタパネルである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フロントフェンダパネル2の側端縁及び下端縁には、他の部品の裏側に回り込む目隠しフランジ2a,2bがそれぞれ設けられていて、それらの目隠しフランジ2a,2bが形成される辺に挟まれた角部(コーナー部)Rがある(図5及び図8参照)。このフロントフェンダパネル2の角部Rに目隠し用棚形状部としての目隠しフランジを設けようとする場合には、フロントフェンダパネル2の成形性の制約のためにフロントフェンダパネル2の角部Rの曲率半径を大きくする必要がある。すなわち、角部Rを緩やかな湾曲形状にする必要がある。しかしながら、フロントフェンダパネル2の角部Rの曲率半径が大きな形状(角部Rの先端を尖らせない見切り部形状)に設定すると、フロントフェンダパネル2の外観が悪くなるので、そのような曲率半径の大きな角部Rを設けることができない。また、角部Rの曲率半径を大きく設定する場合には、デザインの自由度が少なくなり、魅力あるデザインができず、商品価値が低下することとなる。そのため、従来では、フロントフェンダパネル2の角部Rにおいては図8において一点鎖線で示すような目隠しフランジ2cを設けないようにしている。
【0005】
このように、目隠し用棚形状部としてのフランジをフロントフェンダパネル2の側端縁から下端縁までの全領域にわたって設けることができないため、フロントフェンダパネル2の角部Rに目隠しフランジ2cを設けない形状にすると、目隠しフランジ2cに対応する領域において部品間に隙間δ(図9参照)が存在することとなり、図10に示す如くその隙間δを通して内部側の車体パネル(サイドボディアウタパネル6等)が外部から見えてしまうという不具合を生じる。
【0006】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであって、その目的は、車両の意匠面となる少なくとも3つの部品が近接配置される位置における見切り部からの視線を遮ることができる外装部品取付ブラケットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために、本発明では、車両の意匠面となる少なくとも3つの部品が近接配置される位置において前記部品の裏側に配置される車両の外装部品取付ブラケットにおいて、前記部品間の見切り部に沿って対応配置されて前記見切り部からの視線を遮る遮蔽板部を設けるようにしている。
また、本発明では、前記少なくとも3つの部品のうちの少なくとも1つの部品は板金部品であり、前記少なくとも3つの部品が近接配置される箇所に対応する前記板金部品の部位は角部として成形されると共に、前記角部の両側となる部位には他の部品の裏側に回り込むフランジが設けられており、前記遮蔽板部は少なくとも一部が前記角部の裏側に配置されるようにしている。
また、本発明では、前記少なくとも3つの部品のうちの2つの部品が固定される固定部を備え、前記固定部の間に前記遮蔽板部を有するようにしている。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の本発明は、車両の意匠面となる少なくとも3つの部品が近接配置される位置において部品の裏側に配置される車両の外装部品取付ブラケットにおいて、部品間の見切り部に沿って対応配置されて見切り部からの視線を遮る遮蔽板部を設けるようにしたものであるから、少なくとも3つの部品が近接配置される位置における見切り部からの視線を外装部品取付ブラケットによって遮ることができ、別部品を追加することなく意匠面上の見栄えを向上させることができる。また、少なくとも3つの部品が近接配置される箇所に対応する部品の部位(例えば、角部)に視線を遮るための目隠し用棚形状部としてのフランジ(目隠しフランジ)を設ける必要がないため、部品の形状についての自由度の向上を図ることができる。さらに、部品の成形性の向上を図り得て、部品の作製が容易となる。
【0009】
また、請求項2に記載の本発明は、少なくとも3つの部品のうちの少なくとも1つの部品は板金部品であり、少なくとも3つの部品が近接配置される箇所に対応する板金部品の部位は角部として成形されると共に、角部の両側となる部位には他の部品の裏側に回り込むフランジが設けられており、遮蔽板部は少なくとも一部が角部の裏側に配置されるようにしたものであるから、次のような作用効果を奏することができる。すなわち、両側に目隠しフランジが形成された辺に挟まれた角部では、既述の如く目隠しフランジを形成し難いのであるが、当該部位に外装部品取付ブラケットの遮蔽板部を配置することにより、板金部品に目隠しフランジを一体成形(湾曲成形)する必要がなくなり、板金部品の成形性の向上を図ることができると共に、部品の作製が容易となる。
【0010】
また、請求項3に記載の本発明は、少なくとも3つの部品のうちの2つの部品が固定される固定部を備え、固定部の間に遮蔽板部を有するようにしたものであるから、単一の外装部品取付ブラケットに設けられた固定部に2つの部品を固定することとなるので、これら2つの部品の相互間の取付位置が決まり、見切り部の隙間を一定に保つことができる。また、外装部品取付ブラケットに対する見切り部の位置が正確に定まり、見切り部の位置に確実に遮蔽板部を配置することができる。そのため、外装部品取付ブラケットの遮蔽板部を小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態に係る外装部品取付ブラケットについて図1〜図3,図5及び図6を参照して説明する。なお、図1〜図3において、図4〜図10と同様の部分には同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0012】
図1は、キャブオーバ型トラックの車体4を示すものである。図1に示すように、本実施形態に係る外装部品取付ブラケット7は、車体4の側部の意匠面となるドアアウタパネル1aと、板金部品のフロントフェンダパネル2と、フロントバンパ3との3つの部品が互いに近接配置される位置において、フロントピラー5のアウタパネルとなるサイドボディアウタパネル6の外表面に溶接結合され、これらの3つの部品すなわちドアアウタパネル1a,フロントフェンダパネル2,及びフロントバンパ3の裏側に配置されるようになっている。
【0013】
本実施形態の外装部品取付ブラケット7は、図2に示すように、1枚の板金部材を断面略L字状に屈曲成形して成る部材であり、車両の前後方向に添って延びるように配置されてサイドボディアウタパネル6に溶接される溶接面部8と、この溶接面部8の後端から車両左右方向に縦壁状に延びる部品取付面部9を有し、この部品取付面部9の上側部分9aがフロントフェンダパネル2の取付部(フロントフェンダパネル2が固定される固定部)であり、部品取付面部9の下側部分9bがフロントバンパ3の取付部(フロントバンパ3が固定される固定部)となっている。なお、部品取付面部9の上側部分9aにはフロントフェンダパネル取付用の溶接ナット10が溶接結合されており、部品取付面部9の下側部分9bにはフロントバンパ取付用の2つのボルト挿通孔11が形成されている。
【0014】
また、外装部品取付ブラケット7の部品取付面部9には、部品間の見切り部に沿って対応配置されてその見切り部からの視線を遮る遮蔽板部12が設けられている。さらに具体的に述べると、部品取付面部9の車両側方端箇所であって、かつ、フロントフェンダパネル固定部である部品取付面部9の上側部分9aとフロントバンパ固定部である部品取付面部9の下側部分9bとの間の箇所に遮蔽板部12が設けられている。この遮蔽板部12は、部品取付面部9に突設(延設)された矩形の細長の板状片をその部品取付面部9に対して車両前方側に向けて屈曲させて成るものであって、外装部品取付ブラケット7の溶接面部9aに対向して配置されている。そして、外装部品取付ブラケット7の遮蔽板部12は、車両前後方向に沿って(フロントバンパ3の上縁に沿って)延びるように配置され、その前端は、ロントフェンダパネル2の下端縁に形成された目隠しフランジ2bの裏側(車体側)に位置するようになっていて、目隠しフランジ2bに連続して遮蔽板部12が配置されている。
【0015】
一方、ドアアウタパネル1a,フロントフェンダパネル2,及びフロントバンパの3部品が近接配置される箇所に対応するフロントフェンダパネル2(板金部品)の部位は、図 に示すような角部Rとして成形されており、この角部Rには従来と同様に目隠しフランジは設けられていない。そして、この角部Rの両側となる部位(辺部)には他の部品すなわちドアアウタパネル1a及びフロントバンパ3の裏側にそれぞれ回り込む目隠しフランジ2a,2b(意匠面から奥側に一段下がってドアアウタパネル1a及びフロントバンパ3の裏側に入り込む目隠し用棚形状部)が設けられている。
【0016】
次に、車両ドア1,フロントフェンダパネル2,及びフロントバンパ3の取付手順について述べると、以下の通りである。まず、外装部品取付ブラケット7の溶接面部8をフロントピラー5のサイドボディアウタパネル6に予め溶接結合しておき、この外装部品取付ブラケット7の部品取付面部9の上側部分9aにフロントフェンダパネル2の目隠しフランジ2aに連接された取付部13をボルト締めすることで、フロントフェンダパネル2を外装部品取付ブラケット7を介してフロントピラー5に取付ける。この取付けに伴って、外装部品取付ブラケット7の遮蔽板部12の少なくとも一部がフロントフェンダパネル2の角部Rの裏側に配置される。なお、フロントフェンダパネル2の下端縁には、意匠面から奥側に一段下がってフロントバンパ3の裏側に入り込む目隠しフランジ2bが設けられ、該フランジ2bに車体4への固定部が形成されている。
【0017】
しかる後に、フロントバンパ3を車体4の前方側から略水平方向に車体4に近づけて、車体4に固定された外装部品取付ブラケット7の部品取付面部9の下側部分9bにビス止めすることにより、フロントバンパ3を車体4に取付ける。これに伴い、フロントフェンダパネル2の下辺部に形成されている目隠しフランジ2bがフロントバンパ3の側方の回り込み部3aの裏側に配置される。なお、フロントフェンダパネル2には、意匠面から奥側に一段下がってフロントバンパ3の裏側に入り込む目隠しフランジ2bが設けられ、当該目隠しフランジ2bが車体4に固定されているため、フロントバンパ3の側からフロントフェンダパネル2の裏側に入り込む目隠しフランジ(目隠し用棚形状部)をフロントバンパ3に形成することができない。それは、フロントバンパ3の取付方法として、車両の前方側からフロントバンパを近づけて組付ける組付け性の良い方法が取れられているので、フロントバンパ3に目隠しフランジを設けるようにした場合には、フロントバンパ3の目隠しフランジとフェンダパネル2の目隠しフランジ2b及びフランジ13とが互いに干渉してしまうからである。
【0018】
このような構成の外装部品取付ブラケット7によれば、車両ドア1,フロントフェンダパネル2,及びフロントバンパ3間の見切り部に沿って対応配置されてその見切り部からの視線を遮る遮蔽板部12を備えているので、この遮蔽板部12の存在により、車両ドア1の前端部とフェンダパネル2の下端部とフロントバンパ3の上端部との合わせ箇所に生じる隙間δを通して内部側の車体パネル(サイドボディアウタパネル6)が見えてしまうのを防止でき、これにより、外観上は奥が見えない構造にすることができる。また、外装部品取付ブラケット7の一部を延長して遮蔽板部12を設ければよいため、新たな部品を追加する必要がない。しかも、フロントフェンダパネル2の成形性を犠牲にすることなく対処することができる。また、本実施形態では、フロントフェンダ2の角部Rに目隠しフランジを設けず、この角部Rの近傍箇所を車体4に固定する外装部品取付ブラケット7から、当該角部Rの裏側に配置される目隠しフランジとしての遮蔽板部12を延設するようにしているので、デザインの自由度を確保しながら、見切り部から奥が見えないような構造にすることができ、商品性の向上を図ることが可能である。
【0019】
なお、フロントフェンダパネル2に別部品の遮蔽板を固定することも考えられるが、フロントフェンダパネル2は車両の意匠面となるので、スポット溶接等で別部品の遮蔽板を溶接することができず、また意匠面以外での取付けにおいてもさらに別の取付部品(ブラケット等)を必要とするため、部品点数が増えて生産性が悪くなる。これに対し、本実施形態によれば、遮蔽板部12を外装部品取付ブラケット7と一体に設けるようにしているので、部品点数は増加せず、生産性の悪化もない。
【0020】
以上、本発明の一実施形態について述べたが、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。例えば、既述の実施形態では、車両ドア1,フロントフェンダパネル2,及びフロントバンパ3の3つの部品を取付けるための外装部品取付ブラケット7について述べたが、それ以外の部品を近接配置させて取付けるための外装部品取付ブラケットであってもよく、また4つ以上の部品を近接配置状態で取付けるための外装部品取付ブラケットであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係る外装部品取付ブラケットが取付けられた車体の斜視図である。
【図2】図1において矢印Xで示す箇所に設けられた外装部品取付ブラケットの拡大斜視図である。
【図3】図2におけるA−A線断面図である。
【図4】キャブオーバ型車両の車体を示す斜視図である。
【図5】フロントフェンダパネルの裏面図である。
【図6】図4におけるB−B線拡大断面図である。
【図7】図4におけるC−C線拡大断面図である。
【図8】図5において矢印Yで示すフロントフェンダパネルの角部の拡大斜視図である。
【図9】図4において矢印Zで示す箇所の拡大平面図である。
【図10】図9におけるD−D線拡大断面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 車両ドア
1a ドアアウタパネル
2 フロントフェンダパネル
3 フロントバンパ
4 車体
5 フロントピラー
6 サイドボディアウタパネル
7 外装部品取付ブラケット
8 溶接面部
9 部品取付面部
12 遮蔽板部
R 角部
δ 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の意匠面となる少なくとも3つの部品が近接配置される位置において前記部品の裏側に配置される車両の外装部品取付ブラケットであって、前記部品間の見切り部に沿って対応配置されて前記見切り部からの視線を遮る遮蔽板部を設けたことを特徴とする車両の外装部品取付ブラケット。
【請求項2】
前記少なくとも3つの部品のうちの少なくとも1つの部品は板金部品であり、前記少なくとも3つの部品が近接配置される箇所に対応する前記板金部品の部位は角部として成形されると共に、前記角部の両側となる部位には他の部品の裏側に回り込むフランジが設けられており、前記遮蔽板部は少なくとも一部が前記角部の裏側に配置されることを特徴とする請求項1に記載の車両の外装部品取付ブラケット。
【請求項3】
前記少なくとも3つの部品のうちの2つの部品が固定される固定部を備え、前記固定部の間に前記遮蔽板部を有することを特徴とする請求項1に記載の車両の外装部品取付ブラケット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2007−131020(P2007−131020A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−323080(P2005−323080)
【出願日】平成17年11月8日(2005.11.8)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】