説明

車両の床下地上高測定装置

【課題】作業性良好、かつ短時間で車両床下の地上高を測定できる測定装置を提供すること。
【解決手段】長尺の台座2の一端に台座2に平行に光を照射する光距離計3を設置するとともに、台座2の他端に光距離計3から所定の距離Lをおいて光距離計3からの照射光を垂直上方に反射する傾斜角θの反射鏡4を設置した構成で、反射鏡4を車両床下の測定対象個所5の垂直下方に位置せしめて台座2を測定基面G上に載置し、光距離計3から反射鏡4を介して測定対象個所5に至る距離の実測値から上記所定の距離(L)を減算するとともに、減算した値に反射鏡4の反射点Pの測定基面Gからの高さ距離(H3)を加算した距離を測定対象個所5の地上高(H)として読み取る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両の床下の地上高の測定を行なう測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両床下の各個所の地上高を測定するには、図3に示す、台座90から垂直に起立する支柱91と、支柱に91に沿って上下に移動自在な書き針92とからなるトースカン9を用い、作業者が車両床下にもぐり、トースカン9の書き針92の先端を測定対象個所5の下面に当てて、書き針92先端の高さHを測定することが行われている。
【0003】
ところで、自動車メーカーでは新型車の床下の排気管、燃料タンク、ロッカーなど多数の個所の地上高を測定することが規定されており、各個所を測定する毎に作業員は車両床下に出入りしなければならず作業性が悪く、作業時間がかかる。また各個所毎にトースカン9の書き針92の先端を測定対象個所の下面に当てて高さを合わせ、床下から取り出して書き針92先端の高さを測定するので、トースカン9を取り出すときに書き針92が車両の他の個所に当って書き針92がずれやすく、作業者は唯でさえ車両床下を出入りすることが難儀であるのに、トースカン9の扱いにも注意を強いられる。車高の低いスポーツタイプの乗用車では作業性がさらに困難で作業時間も大幅に増える。
【0004】
また従来では下記特許文献1において、駐車場などへ入庫する車両の床下をラインセンサカメラなどの撮像装置で撮像し、得られた画像情報に基づいて車両の最低地上高が予め設定された基準値を満たすか否かを判別する最低地上高規格外車両検出装置が考案されている。しかしながらこの装置では最低地上高の検出には向いているが、車両床下の多数個所の地上高の測定には不向きである。
【特許文献1】特開2001−76292号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は上記事情に鑑み、車両床下の各個所の地上高を作業性良好にかつ短い時間で測定でき、また車高の低い車両でも容易に測定できる車両の床下地上高測定装置を提供することを課題としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、車両の床下の地上高を測定する床下地上高測定装置であって、
長尺の台座の一端に該台座に平行に光を照射する光距離計を設置するとともに、上記台座の他端に上記光距離計から所定の距離をおいて上記光距離計からの照射光を反射する反射鏡を設置し、該反射鏡は反射光を垂直方向に向ける傾斜角に設定してなり、
上記反射鏡を上記床下の測定対象個所の垂直下方に位置せしめて上記台座を測定基面上に載置し、
上記光距離計から上記反射鏡を介して上記測定対象個所に至る距離の実測値から上記所定の距離を減算するとともに、減算した値に上記反射鏡の反射点の上記測定基面からの高さ距離を加算した距離を上記測定対象個所の地上高として読み取るようになす(請求項1)。
作業者は測定装置の反射鏡側を車両床下に挿入し、車外から反射鏡により反射光が床下の測定対象個所に当っていることを確認すればよい。測定対象個所の地上高は、光距離計の実測値から予め設定された光距離計と反射鏡間の距離を減じ、反射鏡の高さ距離を加えることで読み取ることができる。従って床下の多数の測定対象個所を、作業員が床下にもぐり込むことなく作業性良好かつ短時間で測定できる。
【0007】
上記光距離計として、レーザ光を照射するレーザ距離計を用いる(請求項2)。
光を細幅で直線状に照射するレーザ距離計が好適である。
【0008】
上記反射鏡の傾斜角を、上記光距離計からの光の照射方向に対して上下方向45度の傾斜角とし、上記台座を水平面をなす上記測定基面に載置する(請求項3)。
一般に床下の地上高を測定する場所は測定基面が水平とされているから、反射鏡は上下方向に45度に設定すればよい。
【0009】
上記光距離計と上記反射鏡の反射点との間の距離を、1000mmに上記反射点の上記測定基面からの高さ距離を加算した距離に設定し、実測値から1000mmを除去した距離を上記測定対象個所の地上高として読み取る(請求項4)。
このようにすれば、実測値として、1000mmと、目的とされる測定対象物の高さが表示されるから地上高の読み取りが容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1ないし図2に示すように、本発明に用いる床下地上高測定装置(以下、単に測定装置という)1は、長尺材からなる台座2の一端に光距離計3を設置するとともに、光距離計3から所定の距離(L)をおいた台座2の他端に反射鏡4を設置した構成である。
【0011】
台座2は、角形の中空断面状をなす金属製のチャンネル材で構成してあり、その全長は1300mm程度に設定してある。台座2の底面は平坦で、測定を行なう試験場などの測定基面(地面)Gに沿って載置するようにしてあり、測定基面Gに載置したとき台座2の上面が水平となる。なお、測定装置1を移動させることが多いので、台座2は軽量のものが望ましくアルミ製のチャンネル材などが最適である。
【0012】
光距離計3として一般に販売されているレーザ距離計が用いられ得る。レーザ距離計3は照射したレーザ光を測定対象物に当て、反射したレーザ光の伝達時間により距離を測定するもので、実測値がデジタル表示されるものを用いる。また可視レーザ光を照射するものが望ましい。
【0013】
レーザ距離計3は、その底面を台座2の上記一端の上面に重ね合わせて図略のネジ部材により締結してあり、レーザ光を台座2に沿って平行に照射するように載置してある。
【0014】
反射鏡4は横幅の広い長方形状をなし、上下方向に所定の傾斜角θで斜め上向きに鏡面を設定し得る。反射鏡4はその鏡面をレーザ距離計3に向け、裏面中央の脚部41を台座2の他端の上面に締結固定してある。
なお図1に示すように、反射鏡4はその傾斜角θがレーザ距離計3からの水平なレーザ光を垂直上方へ反射するように45度に設定してある。
【0015】
レーザ距離計3と反射鏡4との間の距離(L)は、1000mmに、上記測定基面Gから上記反射鏡4のレーザ光の反射点Pまでの高さ距離(H3)mmを加算した距離、すなわちL=(1000+H3)mmに設定してある。
レーザ距離計3側の位置の基準点はレーザ距離計3の設定操作によりレーザ距離計3の前端および後端のいずれを上記基準点としてもよい。
【0016】
測定装置1により車両の床下を測定するには、作業者は車両外側から測定装置1の台座2の反射鏡4側を車両の床下の測定対象個所5の下方に挿入し、レーザ距離計3のレーザ光を照射して、反射鏡4により反射した反射光を測定対象個所5に当てることにより反射鏡4の位置を確認する。
【0017】
そしてレーザ距離計3の表示部にデジタル表示される実測値を読み取る。この場合、実測値は、上記距離Lに、反射鏡4の反射点Pから測定対象個所5までの高さ距離(H2)mmを加算した距離、すなわち(1000+H3+H2)mmとなる。
【0018】
そこで測定対象個所5の地上高(H)は(H3+H2)mmであるから表示された実測値から1000mmを減じた値、実用的には表示された実測値の下3桁から測定対象個所5の地上高(H)が読み取れる。
【0019】
本実施形態によれば、作業者は車両の床下へもぐり込むことなく車両外側から作業でき、かつ反射鏡4を見ながら反射光の当て位置を床下の測定対象個所5に位置合わせでき、測定対象個所5を確認しながら測定できる。よって従来の測定作業に比べて格段に作業性が向上し、正確な測定ができ、また簡単に別の測定対象個所5へ移動させることができ、多数の測定対象個所の測定を次々と短時間で行なうことができる。
【0020】
上記実施形態では、レーザ距離計3と反射鏡4の反射点Pとの間の距離(L)を(1000+H3)mmに設定したが、これに限らず適宜の距離(L1)に設定してもよい。その場合には実測値は(L1+H2)mmで表示されるから、実測値から距離(L1)を減じ、これから高さ距離(H3)mmを加えた値が測定対象個所の地上高となる。この場合、測定値を演算表示可能な機能付きのレーザ距離計を用いれば測定の都度いちいち計算をする必要なく、直ちに地上高を知ることができる。
なおレーザ距離計3と反射点Pとの距離(L)を(1000+H3)mmとすることで、表示部で演算表示されなくても、実測値から容易に目的とする地上高を知ることができる。
【0021】
上記実施形態では、測定対象個所5の地上高(H)が測定基面Gが水平面である場所で測定されることを前提として反射鏡4の傾斜角を45度に設定したが、測定基面Gの水平性が不確かである場合には、台座2を測定基面Gに載置した状態で光を照射し、反射光が垂直方向となるように反射鏡4の傾斜角を調整したうえで測定を行なう。
【0022】
なお台座2は金属製に限らず、撓みの起こらない木製または合成樹脂製の角材でもよい。また台座2の長さは1300mm程度であれば、車両の左右両側から床下の各個所の地上高を充分に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の地上高測定装置の側面図である。
【図2】上記地上高測定装置の平面図である。
【図3】従来の車両の床下の地上高を測定する器具の正面図である。
【符号の説明】
【0024】
1 地上高測定装置
2 台座
3 レーザ距離計(光距離計)
4 反射鏡
5 測定対象個所
θ 傾斜角
P 反射点
L レーザ距離計から反射鏡の反射点までの距離
H 測定対象個所の地上高
H2 反射鏡の反射点から測定対象個所までの高さ距離
H3 測定基面から反射鏡の反射点までの高さ距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の床下の地上高を測定する床下地上高測定装置であって、
長尺の台座の一端に該台座に平行に光を照射する光距離計を設置するとともに、上記台座の他端に上記光距離計から所定の距離をおいて上記光距離計からの照射光を反射する反射鏡を設置し、該反射鏡は反射光を垂直方向に向ける傾斜角に設定してなり、
上記反射鏡を上記床下の測定対象個所の垂直下方に位置せしめて上記台座を測定基面上に載置し、
上記光距離計から上記反射鏡を介して上記測定対象個所に至る距離の実測値から上記所定の距離を減算するとともに、減算した値に上記反射鏡の反射点の上記測定基面からの高さ距離を加算した距離を上記測定対象個所の地上高として読み取るようになしたことを特徴とする車両の床下地上高測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両の床下地上高測定装置において、
上記光距離計として、レーザ光を照射するレーザ距離計を用いる車両の床下地上高測定装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両の床下地上高測定装置において、
上記反射鏡の傾斜角を、上記光距離計からの光の照射方向に対して上下方向45度の傾斜角とし、上記台座を水平面をなす上記測定基面に載置する車両の床下地上高測定装置。
【請求項4】
請求項1ないし3に記載の車両の床下地上高測定装置において、
上記光距離計と上記反射鏡の反射点との間の距離を、1000mmに上記反射点の上記測定基面からの高さ距離を加算した距離に設定し、実測値から1000mmを除去した距離を上記測定対象個所の地上高として読み取る車両の床下地上高測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−38720(P2010−38720A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−201685(P2008−201685)
【出願日】平成20年8月5日(2008.8.5)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【Fターム(参考)】