説明

車両の後方確認支援装置

【課題】後方確認の際に障害となる障害物が車室内にある場合でも、表示器を装着することなくリアビューミラーを通して良好な後方確認を行えるようにする。
【解決手段】後方確認支援装置1は、車両の後部座席よりも前方の天井部分に設置された後席用モニタ90の車両前方側面にディスプレイ20が装着され、後席用モニタ90を透過した後方領域をリアビューカメラ部10のリアビューカメラにて撮像してディスプレイ20に表示する。そして、ディスプレイ20にて表示する画像の撮像領域を、運転者の体形や姿勢により応じた後席用モニタ90を透過した後方領域になるように、運転者によるスイッチボックス50の操作により、リアビューカメラ部10のリアビューカメラの向きを変えて変更する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両において運転者が後方確認をする際に、リアビューミラーに映り込む障害物が車室内にある場合でも、良好な後方確認を行うことができるようにするための車両の後方確認支援装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、車両にて、後部座席に着座した乗員に対してTV画像などの画像情報を提供するための後席用表示装置が知られている。この後席用表示装置は、例えば、図9(a)に示す後席用モニタ90のように、後部座席より前方の車両中央部で、天井に装着されることがある。この場合、図9(b)に示すように、リアビューミラー92により映される車両後方の画像に、後席用モニタ90が映りこみ、運転者による後方確認の障害となることが考えられる。
【0003】
この対策として、撮像機により車両後方を撮像して、その撮像画像をリアビューミラーに取り付けた表示器にて表示することにより、車室内に後方確認の障害物となる後席用表示装置があっても良好な後方確認を行えるようにする後方確認支援装置が知られている(例えば、特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】
特開平11−291817号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来の後方確認支援装置においては、表示器を取り付けることによりリアビューミラーの重量増加となり、リアビューミラーが外れ易くなることが考えられる。
【0006】
これに対して、表示器をダッシュボード上などに装着する方法も考えられるが、後方確認をする際に、リアビューミラーに映った画像と、表示器が表示する画像とでは、視線の方向及び画像までの距離が異なるために画像から受ける車両後方の距離間に相違が生じ、車両後方の状態が把握しにくくなることが考えられる。また、後方確認のための画像が2種類あると、後方確認のための作業が繁雑となる。
【0007】
本発明は、こうした問題点に鑑みなされたものであり、後方確認の際に障害となる障害物が車室内にある場合でも、表示器を装着することなくリアビューミラーを通して良好な後方確認を行えるようにすることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するためになされた請求項1に記載の後方確認支援装置においては、表示手段が、運転者が車室内のリアビューミラーを見た際に車室内の障害物が映り込むリアビューミラーの障害物領域に表示画像を投影可能な位置に配置され、表示制御手段が、車両の後方画像を撮像するための撮像手段にて撮像された撮像画像に基づき、リアビューミラーの障害物領域に障害物を透過した後方画像を投影するための表示画像を生成して、表示手段に表示する。
【0009】
このように、本発明の車両の後方確認支援装置によれば、リアビューミラーの障害物領域に、障害物を透過した後方画像が投影されるため、車室内に障害物がある場合でも、運転者がリアビューミラーを通して障害物が無い場合と同様の後方確認を行うことができる。
【0010】
尚、表示手段がリアビューミラーに画像を投影する際のリアビューミラーにおける画像の範囲は、リアビューミラーに障害物が映り込む障害物領域の全域に設定することが望ましいが、その投影範囲が障害物領域の一部であっても、本発明の効果を得ることができる。
【0011】
ところで、リアビューミラーに映って見える領域は、リアビューミラーを見る位置が下がると上方にずれ、右に移ると左にずれるといった具合に、運転者が見る位置によって変わる。このため、運転者のリアビューミラーを見る位置が変わった場合、変わった位置から見たときにリアビューミラーに映って見える障害物を透過した後方画像となるように、表示手段に表示する表示画像を変更できることが望ましい。
【0012】
そのためには、本発明の車両の後方確認支援装置を、請求項2に記載のように、操作手段にて、表示制御手段が表示手段に表示する表示画像の画像領域の変更指令が外部操作によって入力され、第1画像領域変更手段が、表示制御手段で生成される表示画像の画像領域を、操作手段からの変更指令に従い変更するよう構成すると良い。
【0013】
つまり、このように構成すると、運転者等による外部操作により、表示手段に表示する表示画像の画像領域を変更することができる。このため、運転者のリアビューミラーを見る位置が変化しても、運転者は、リアビューミラーを見るなどして外部操作を行い、表示手段に表示する表示画像を、障害物を透過した後方画像とすることができる。
【0014】
尚、第1画像領域変更手段による表示制御手段が表示手段に表示する表示画像の画像領域を変更する方法としては、変更指令に応じて撮像手段の向きを変更できるようにし、撮像される領域を変更することにより、表示画像の画像領域を変える方法や、撮像手段を、表示画像の画像領域よりも広い領域を撮像するものとし、この撮像画像から変更指令に応じた範囲を切り出して表示画像を生成するようにする方法や、これらを組み合わせた方法などがある。
【0015】
また、請求項2に記載の車両の後方画像支援装置にて、運転者のリアビューミラーを見る位置が変化する度に、表示手段で表示する表示画像を、障害物を透過した後方画像となるように運転者が操作手段で入力しても良いが、いちいち入力操作をしないでも良いように、請求項3のような車両の後方確認支援装置に構成とすると良い。
【0016】
即ち、請求項3に記載の車両の後方確認支援装置においては、画像領域設定手段が、 車両運転者の目の位置を検出し、検出した目の位置に基づき車両運転者がリアビューミラーを見た際に、リアビューミラーの障害物領域に投影する表示画像の画像領域を、障害物を透過した後方画像となるように設定し、第2画像領域変更手段が、画像領域設定手段にて設定された画像領域の後方画像がリアビューミラーに投影されるように、表示制御手段が表示手段に表示する表示画像の画像領域を変更する。
【0017】
この結果、本発明(請求項3)の車両の後方確認支援装置によれば、運転者の目の位置に応じて自動的に表示画像の画像領域を変更できるため、運転者がいちいち操作入力することなく、障害物を透過した後方画像を表示手段に表示することができる。
【0018】
尚、運転者が変わると、リアビューミラーの向きも変えられることがあるため、リアビューミラーの障害物領域に投影する表示画像の画像領域を設定する際に、リアビューミラーの向きを検出して、表示画像の画像領域の設定条件として加えるようにすると良い。
【0019】
ところで、リアビューミラーに映り込む障害物の一つとして、従来例に記述した後席用表示装置がある。この後席用表示装置を搭載した車両に対して本発明(請求項1〜請求項3)を適用するには、請求項4に記載の車両の後方確認支援装置のように、表示手段を、後席用表示装置の車両前方側の面に配置すると良い。
【0020】
このようにすると、後席用表示装置が、運転者による後方確認の障害となるという問題が解消される。このため、後席用表示装置の画面を大きくして後部座席の乗員に対して多様な画像情報を提供することが可能になる。
また、請求項1〜請求項4に記載の車両の後方確認支援装置においては、請求項5に記載のように、撮像手段が、車両の後部座席を含む後方画像を撮像できるように、車室内の後部座席よりも前方に配置されると良い。
【0021】
つまり、このようにすると、後部座席の乗員も表示手段により表示される後方画像に含まれるようになり、運転者は、後部座席の後席乗員の状態もリアビューミラーにより確認することができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
[第1実施例]
以下に本発明の第1実施例を図面と共に説明する。
第1実施例の後方確認支援装置1の車両への装着状態を図1に示し、全体構成のブロック図を図2に示す。
【0023】
後方確認支援装置1は、図1に示す様に、車内中央の天井から吊るされた後席用モニタ90の下部側端部に装着されるリアビューカメラ部10と、後席用モニタ90の車両前方側面に装着されるディスプレイ20と、運転席周辺に装着されるスイッチボックス50と、車両内部に搭載されるカメラ制御ECU60とで構成され、リアビューミラー92と車両後方との間に後席用モニタ90がある場合でも、運転者がリアビューミラー92により車両後方を良好に確認できるようにするための装置である。
【0024】
尚、本実施例の説明における座標系を、図3(a)に示すように車両前後方向をX軸、車両上下方向をY軸、X軸に対して水平面で90度ずれた方向(つまり車両横方向)をZ軸とし、Y軸に対して車両上方から見て右回りの方向を右回転方向、その反対を左回転方向、X−Z平面に対して車両の上側への回転方向を上回転方向、その反対を下回転方向と呼ぶ。
【0025】
また、後席用モニタ90は、略長方形の厚板形状で、画像を表示するための表示画面を有する液晶ディスプレイなどの表示装置で構成され、表示画面が車両後方に向けられ、後席乗員のためにTV画像や、カーナビ画像などの情報を表示する。そして、後席用モニタ90は、天井に蝶番状の固定具で固定され、後席用モニタ90の不使用時には、固定具部分で天井の方向に折れ曲がり、表示画面が天井の面に沿った収納状態になる。また、使用の際には、表示画面を後席乗員に向けて展開した展開状態にて使用される。
【0026】
また、ディスプレイ20は、外部からの画像信号により画像を表示する液晶ディスプレイなどの表示装置で構成され、後席用モニタ90の車両前方側の板面の全面を覆うような大きさの画像を表示する。
また、リアビューカメラ部10は、図3(b)に示すように、リアビューカメラ11と、リアビューカメラ11を上下回転方向に回転可能に保持し、左右回転方向に回転可能に後席用モニタ90へ装着される箱体19と、箱体19に装着されるモータ12及びギア14と、後席用モニタ90に装着されるモータ15及びギア17とで構成される。
【0027】
そして、モータ12は、ギア14を介してリアビューカメラ11と噛合し、モータ12が回動されるとリアビューカメラ11が上下回転方向に回動する。また、モータ15は、ギア17を介して箱体19と噛合し、モータ15が回動されると、ギア17を介して箱体19が左右回転方向に回動する。
【0028】
尚、モータ12,15は、入力される電流の方向に応じた方向に回動するDCモータなどで構成される。そして、本実施例では、リアビューカメラ11を上回転方向に回動するようになるモータ12の回転方向を、モータ12の正転方向と呼び、リアビューカメラ11を右回転方向に回動するようになるモータ15の回転方向を、モータ15の正転方向と呼ぶ。
【0029】
また、リアビューカメラ11は、風景を撮像して画像信号を出力するCCDカメラなどで構成され、撮像した画像信号をディスプレイ20に出力する。このため、リアビューミラー11にて撮像された領域の画像がそのままディスプレイ20に表示される。
【0030】
そして、リアビューカメラ11は、ディスプレイ20及び後席用モニタ90が透過したとするときに、所定の位置から運転者に見られ、所定方向を向いたリアビューミラー92に映り込むようになる後席用モニタ90より後方の後方領域に対して、所定の方向を向けたときの撮像領域がほぼ重なるような視野範囲である。よって、このときリアビューカメラ11で撮像した画像をディスプレイ20に表示した状態で、運転者が所定の位置から、所定の方向を向いたリアビューミラー92を見ると、ディスプレイ20により投影される画像が、後席用モニタ90が透過したように見える。
【0031】
また、スイッチボックス50には、2つのスイッチ51,52が装備されている。そして、スイッチ51,52は、1つの共通端子と2つの端子のいずれかとを繋ぐ接点からなるトグルスイッチなどで構成され、トグルから手が離されると接点がいずれにも繋がらない位置に戻る。また、スイッチ51,52は、回路の共通端子がそれぞれ接地され、もう一方の端子の端子51a,51b及び端子52a,52bがカメラ制御ECU60に繋がっている。
【0032】
また、カメラ制御ECU60は、モータ12、15へ駆動電流を供給する駆動電流供給回路60a、60bを有している。そして、駆動電流供給回路60aには、スイッチ51の端子51a,51bが接続され、端子51aが接地されると、モータ12へ正転方向の駆動電流を出力し、端子51bが接地されると、モータ12へ逆転方向の駆動電流を出力する。そして、駆動電流供給回路60bも同様の構成であり、スイッチ52の端子52aが接地されると、モータ15へ正転方向の駆動電流を出力し、端子52bが接地されると、モータ15へ逆転方向の駆動電流を出力する。
【0033】
ここで、運転者によりスイッチボックス50が操作されたときの、後方確認支援装置1の動作を次に説明する。
まず、運転者がスイッチボックス50のスイッチ51を端子51a側に接続するように押す操作をした場合、端子51aが共通端子と繋がり接地される。そして、カメラ制御ECU60の駆動電流供給回路60aにて、モータ12に正転方向の駆動電流を出力し、モータ12が正転方向に回動して、ギア14を介してリアビューカメラ11を、上回転方向に回動する。
【0034】
これにより、リアビューカメラ11にて撮像される範囲が上方にずれて、画像領域が上方に移った画像がディスプレイ20に表示される。
また、同様に、スイッチ51が端子51b側に押されると、リアビューカメラ11を下回転方向に回動し、スイッチ52が端子52a側に押されると、箱体19(ひいてはリアビューカメラ11)を右回転方向へ回動し、スイッチ52が端子52b側に押されると、リアビューカメラ11を左回転方向へ回動する。そして、この時のリアビューカメラ11の向きの変化に応じて変わった撮像領域の画像が、ディスプレイ20に表示される。
【0035】
このように、スイッチ51,52が操作されると、ディスプレイ20により表示される画像の撮像領域が変更される。
以上のように、後方確認支援装置1によれば、後席用モニタ90が車室内の後部座席よりも前方の天井部分に配置された状況にて、リアビューカメラ11により撮像した画像をディスプレイ20に表示して、リアビューミラー92へ投影することにより、図4に示す様に、運転者が見たリアビューミラー92に映る画像を、後席用モニタ90が透過したようにできる。
【0036】
これにより、運転者は、後席用モニタ90を使用している展開状態でも、後席用モニタ90を折りたたんだ収納状態と同様に、リアビューミラー92により後方確認を行うことができる。
また、運転者がスイッチボックス50を操作して、ディスプレイ20に表示する画像の撮像領域を変えることができる。このため、運転者毎の視点の違いや姿勢の変化などにより、リアビューミラー92に映り込む領域が変化しても、ディスプレイ20に表示する画像を見ながら、ディスプレイ20にて表示する画像の撮像領域を変えて、容易に後席用モニタ90を透過したような画像にできる。
【0037】
[第2実施例]
以下に本発明の第2実施例を図面と共に説明する。
第2実施例の後方確認支援装置2の車両への装着状態を図5に示し、全体構成をブロック図で図6に示す。
【0038】
後方確認支援装置2は、第1実施例の後方確認支援装置1と同様の目的の装置であって、その構成は、スイッチボックス50の代わりに、運転席側フロントピラー上部に装着される眼球検出カメラ31と、運転席の可動部に装着されるシート位置検出センサ32と、リアビューミラー92の可動部に装着されるリアビューミラー角度検出センサ33とが加えられ、リアビューカメラ部10をリアビューカメラ11の向きを検出できるリアビューカメラ部41とし、カメラ制御ECU60の内部構成を変更したカメラ制御ECU61としたものである。そして、第1実施例同様に、リアビューカメラ部41のリアビューカメラ11からの画像信号によりディスプレイ20が車両後方の画像を表示する。
【0039】
尚、リアビューカメラ部41は、リアビューカメラ部10に対して、図3(b)に点線で示す、リアビューカメラ11の箱体19に対する回転角度(即ち、上下回転方向の角度)を検出するリアビューカメラ角度検出センサ13と、後席用モニタ90に対する箱体19の回転角度(即ち、左右回転方向の角度)を検出するリアビューカメラ角度検出センサ16とを加えた構成である。
【0040】
そして、リアビューカメラ角度検出センサ13は、箱体19に取り付けられ両端に電圧が印加される抵抗体と、これに摺動して接触するようにリアビューカメラ11に取り付けられた可動接点とで構成され、リアビューカメラ11の回転角度に応じた電圧となる可動接点での電圧を出力する。また、リアビューカメラ角度検出センサ16についても同様に、後席用モニタ90に対する箱体19の回転角度に応じた電圧を出力する。
【0041】
また、眼球検出カメラ31は、CCDカメラなど、画像信号を出力する撮像機で構成され、運転者の頭部が撮像される方向に向けて固定されている。
また、シート位置検出センサ32は、記憶された座席の位置及び形状を自動的に変更する電動シート93における、各可動部の位置を検出するためのポテンショメータなどで構成され、乗員の位置及び姿勢に繋がる座席の状態である電動シート93のX軸方向の位置及び背もたれの角度の信号を出力する。
【0042】
また、リアビューミラー92は、外部からの指令に応じて、あらかじめ記憶された情報でリアビューミラー92の方向を変更するポジションメモリーミラー機能を有する。そして、リアビューミラー角度検出センサ33は、このポジションメモリーミラー機能のためのポテンショメータなどで構成され、リアビューミラー92の上下回転方向及び左右回転方向の角度信号を出力する。
【0043】
また、カメラ制御ECU61は、CPU、ROM、RAM、及び、I/Oなどからなる周知のマイクロコンピュータ(以降マイコンと呼ぶ)61dと、マイコン61dからの指令に応じてモータ12,15へ駆動電流を出力するの駆動電流供給回路61a,61bとで構成され、眼球検出カメラ31、シート位置検出センサ32、リアビューミラー角度検出センサ33、及び、リアビューカメラ角度検出センサ13,16の出力を受けて、リアビューカメラ部41のモータ12,15に対する駆動電流を出力する。
【0044】
ところで、後席用モニタ90には、後席用モニタ90が天井の方に折り曲がった収納状態のときに押されて「ON」になる、リミットスイッチなどからなる後席用モニタ位置スイッチ91を備えていて、カメラ制御ECU61によりその状態が検出されるようになっている。
【0045】
ここで、図7のフローチャート図に示すカメラ制御ECU61での処理手順と共に、後方確認支援装置2の動作を説明する。
まず、S100にて、後席用モニタ位置スイッチ91の状態が「ON」か否かを判別し、後席用モニタ位置スイッチ91が「ON」の場合には、後席用モニタ90が収納状態であり、後方確認支援装置2の動作が不要のためS100を繰り返し、後席用モニタ位置スイッチ91が「ON」ではなく「OFF」で、後席用モニタ90が展開状態である場合には、S110へ移行する。
【0046】
次に、S110にて、眼球検出カメラ31の画像信号から画像を取得する。
次に、S120にて、シート位置検出センサ32の出力から電動シート93のX軸方向の位置及び背もたれの角度を取得する。
次に、S130にて、S110での画像信号による画像と、S120で取得した電動シート93のX軸方向の位置及び背もたれの角度を基に、運転手の目の位置であるアイポイント座標を算出する。
【0047】
尚、アイポイント座標の算出には、例えば次のような方法がある。
まず、眼球検出カメラ31からの画像に対して、比較的判別しやすい頭部を判別するために、頭部形状を表すいくつかの略円形のパターンでパターンマッチングを行い、パターンが合致した範囲を画像中の運転手の頭部とする。そして、その範囲内で眼球形状を表すいくつかの略円形のパターンでパターンマッチングを行って、合致したパターンの中心位置を画像中の目の位置とする。
【0048】
次に、シート位置検出センサ32の出力より、座席のX軸方向の位置で、標準的な座高(又はあらかじめ登録された座高)の人を背もたれの角度で傾けた場合の頭部(ひいては目の位置)のX軸方向の位置を算出する。
そして、この目のX軸方向の位置でのY−Z平面と、先に求めた画像中の目の位置により眼球検出カメラ31の撮像方向に伸ばした1次元の線とが重なる点の3次元座標をアイポイント座標として求める。
【0049】
次に、S140にて、リアビューミラー角度検出センサ33の出力を検出してリアビューミラー92の上下回転方向及び左右回転方向の角度を取得する。
次に、S150にて、S130で算出のアイポイント座標から、S140で取得した角度方向を向いたリアビューミラー92を見た場合に、ディスプレイ20及び後席用モニタ90が透過したとするときに、ディスプレイ20の表示範囲を通ってリアビューミラー92に映りこむ領域を算出して、リアビューカメラ11をこの領域に向けたときのリアビューカメラ11の上下回転方向の向きである上下指令角度、及び、左右回転方向の向きである左右指令角度を設定する。
【0050】
次に、S160にて、リアビューカメラ角度検出センサ13,16の出力を検出してリアビューカメラ11の上下回転方向及び左右回転方向の角度を取得する。
次に、S170にて、S150で設定した上下指令角度と、S160にて取得したリアビューカメラ11の上下回転方向の角度との差分を補正量Aとし、左右指令角度と、リアビューカメラ11の左右回転方向の角度との差分を補正量Bとして算出する。
【0051】
次に、S180にて、S170で算出した補正量Aに比例した駆動電流をモータ12に、補正量Bに比例した駆動電流をモータ15へ出力して、S100へ戻り上記の処理を繰り返す。
尚、補正量Aが正の値の場合は、リアビューカメラ11を上回転方向に向ける正転方向の駆動電流、負の値の場合は、リアビューカメラ11を下回転方向に向ける逆転方向の駆動電流を出力する。同様に、補正量Bが正の値の場合は、右回転方向、負の値の場合は左回転方向にリアビューカメラ11を向ける方向の駆動電流を出力する。このため、補正量A,Bが「0」となる方向にリアビューカメラ11の向きが変わり、上記の処理を行っている間、リアビューカメラ11は上下指令角度及び左右指令角度の方向に向けられる。
【0052】
このように、後方確認支援装置2は、眼球検出カメラ31及びシート位置検出センサ32の出力から導出した運転者の目の位置から、リアビューミラー角度検出センサ33で検出した向きのリアビューミラー92を見た際の、後席用モニタ90を透過した場合にリアビューミラー92に映り込む領域を算出して、この領域を撮像するように、カメラ制御ECU61から駆動電流を出力して、リアビューカメラ部41でリアビューカメラ11の向きを変えて撮像した画像をディスプレイ20に表示する。
【0053】
以上のように、後方確認支援装置2によれば、第1実施例同様に、運転者は、後席用モニタ90を使用している展開状態でも、後席用モニタ90を折りたたんだ収納状態と同様に、リアビューミラー92により後方確認を行うことができる。
【0054】
また、運転者が変わったり、運転者の姿勢が変化して、運転者が見たリアビューミラー92に映る画像領域が変わっても、ディスプレイ20で表示する表示画像の領域を、運転者の目の位置を検出して自動的に調整されるようにでき、運転者による操作を不要にできる。
[第3実施例]
続いて、本発明の第3実施例を図面と共に説明する。
【0055】
第3実施例の後方確認支援装置3の全体構成をブロック図で図8に示す。
後方確認支援装置3は、第2実施例と同様の機能を実現するものであって、図8に示す様に、第2実施例での後方確認支援装置2に対して、リアビューカメラ11を、後席用モニタ90に据付られたリアビューカメラ45とし、カメラ制御ECU61を、リアビューカメラ45からの画像信号を入力し、画像信号の処理を行った画像をディスプレイ20に表示するカメラ制御ECU62とした構成であり、ディスプレイ20で表示する画像領域を設定するための眼球検出カメラ31、シート位置検出センサ32、及び、リアビューミラー角度検出センサ33は第2実施例の後方確認支援装置2と同じである。
【0056】
尚、リアビューカメラ45は、リアビューカメラ11に対して視野範囲が広く車内後方のほぼ全範囲を撮像する。
また、カメラ制御ECU62は、マイコン62dと、リアビューカメラ45からの画像信号から所定の範囲の画像を抽出する画像処理を行うための画像処理プロセッサ62eとを装備している。
【0057】
また、カメラ制御ECU62での処理は、図7に示すフローチャートのカメラ制御ECU61での処理の内、処理手順のS100〜S150までが同じで、S160及びS170の処理が無く、S180における処理が、S150で算出した後席用モニタ90を透過してリアビューミラー92に映り込む領域に対して、画像処理プロセッサ62eにて、この領域の画像をリアビューカメラ45からの画像信号による画像から選定して、抽出する画像処理を行い画像信号を生成させ、ディスプレイ20へ出力するようにしたものである。
【0058】
このように、後方確認支援装置3は、眼球検出カメラ31及びシート位置検出センサ32の出力から導出した運転者の目の位置から、リアビューミラー角度検出センサ33で検出した向きのリアビューミラー92を見た際に、後席用モニタ90を透過した場合にリアビューミラー92に映り込む領域を算出して、この領域の画像をリアビューカメラ45で撮像した画像から選択して抽出した画像をディスプレイ20に表示する。
【0059】
以上のように、後方確認支援装置3においても、リアビューミラー92に映る画像が、後席用モニタ90を透過したようなる画像をディスプレイ20にて表示するため、第2実施例と同様の効果を得ることができる。
また、第1、第2実施例と比べ、リアビューカメラ45の向きを変える必要が無く駆動部品が無いため、リアビューカメラ45の装着スペースが少なくて済み実装性に優れる。また、機械部品が少ない構成にできるため、環境性、経年性が良いものにできる。
[本発明との対応関係]
本発明の後方確認支援装置における表示手段が、ディスプレイ20に相当し、第1実施例において、撮像手段及び表示制御手段が、リアビューカメラ11に相当し、操作手段がスイッチボックス50に相当し、第1画像領域変更手段が、カメラ制御部ECU60に相当する。また、第2実施例において、画像領域設定手段が、S110〜S150での処理に相当し、第2画像領域変更手段が、S160〜S180での処理に相当する。また、第3実施例において、撮像手段が、リアビューカメラ45に相当し、表示制御手段が、カメラ制御ECU62に相当し、第2画像領域変更手段がS180での処理に相当する。
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の具体的な実施形態に限定されず、このほかにも様々な形態で実施することができる。
【0060】
例えば、第1、第2実施例では、リアビューカメラ11の向きを、左右回転方向及び上下回転方向に変えれるよう構成されているが、図2の点線で示すリアビューカメラ11をX軸方向(つまり、前後方向)に移動させるモータ48、モータ48へ駆動電流を供給する駆動電流供給回路60c、及び、スイッチ53を装着して、スイッチ53の操作によりリアビューカメラ部10を前後方向にも移動できるように構成したものでも良い。
【0061】
このような構成にすると、リアビューミラー92と目の位置との距離の変化による視野範囲の変化にて生じる、リアビューミラー92に映る範囲(例えば、リアビューミラー92から目の位置が離れると、リアビューミラー92に映りこむ範囲が狭くなる。)と、ディスプレイ20が表示する範囲とのずれに対する補正もでき(前述の例示の場合、後ろ方向に移動する。)、実際の空間の画像と、ディスプレイ20にて表示する画像とのずれを少なくし、リアビューミラー92を見たときの違和感を少なくできて良い。また、このリアビューミラー92と目の位置との距離の変化に対する補正は、ズーム機能を有するリアビューカメラ11であれば、ズーム機能により視野範囲を変化させて補正するようにしたものであっても良い。
【0062】
また、第2、第3実施例での運転者の目の位置を検出する方法として、シート位置検出センサ32の代わりに、もう一つ眼球検出カメラ35を眼球検出カメラ31から離れた位置(例えば、リアビューミラー92)に装着して、眼球検出カメラ31,35の2つの画像を解析して得られた画像上の目の位置の重なりにより、3次元座標での目の位置を導出するようにしたものであっても良い。
【0063】
また、第3実施例の後方確認支援装置3において、S180の処理でリアビューカメラ45の画像信号から抽出する画像の範囲の指定を、S100〜S150までの処理で設定するのではなく、第1実施例の後方確認支援装置1のように、スイッチボックス50の操作入力に応じて指定するようにしたものであっても良い。
【0064】
また、第1実施例のように、リアビューカメラ11の向きが変更できるようになったものではなく、リアビューカメラ11とディスプレイ20とだけで構成され、所定の位置からリアビューミラー92を見たときに、後席用モニタ90を透過したようにディスプレイ20の画像がリアビューミラー92に投影されるものであっても良い。
【0065】
また、リアビューカメラ部10,41又はリアビューカメラ45を、後席用モニタ90にではなく、車両の後端部に装着して、車両の後方領域だけを撮像するようにしたものであっても良い。但し、後席用モニタ90に装着してあると、ディスプレイ20に表示される画像に、後席用モニタ90の陰になる後席乗員も映り込むため、後席乗員の状態もリアビューミラー92で確認できて良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施例の車両への装着状態を表す図である。
【図2】第1施例の全体構成を表すブロック図である。
【図3】座標系を説明する図、及び、リアビューカメラ部10を下方から見た斜視図である。
【図4】第1実施例におけるリアビューミラー92での画像を説明する図である。
【図5】第2実施例の車両への装着状態を表す図である。
【図6】第2施例の全体構成を表すブロック図である。
【図7】第2実施例のカメラ制御ECU61における処理手順を表すフローチャート図である。
【図8】第3施例の全体構成を表すブロック図である。
【図9】従来の問題点を説明する図である。
【符号の説明】
1,2,3…後方確認支援装置、10,41…リアビューカメラ部、11,45…リアビューカメラ、12,15,48…モータ、13,16…リアビューカメラ角度検出センサ、14,17…ギア、19…箱体、20…ディスプレイ、31,35…眼球検出カメラ、32…シート位置検出センサ、33…リアビューミラー角度検出センサ、50…スイッチボックス、51,52…スイッチ、60,61,62…カメラ制御ECU、90…後席用モニタ、91…後席用モニタ位置スイッチ、92…リアビューミラー、93…電動シート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の後方画像を撮像するための撮像手段と、
車両運転者が表示画像を確認可能な位置に配置された表示手段と、
前記撮像手段にて撮像された撮像画像に基づき、運転者が後方確認するための表示画像を生成して、該表示画像を前記表示手段に表示する表示制御手段と、
を備えた車両の後方確認支援装置であって、
前記表示手段は、運転者が車室内のリアビューミラーを見た際に車室内の障害物が映り込むリアビューミラーの障害物領域に、表示画像を投影可能な位置に配置され、
前記表示制御手段は、前記撮像画像に基づき、前記リアビューミラーの障害物領域に前記障害物を透過した後方画像を投影するための表示画像を生成して、前記表示手段に表示することを特徴とする車両の後方確認支援装置。
【請求項2】
前記表示制御手段が前記表示手段に表示する表示画像の画像領域の変更指令を外部操作によって入力するための操作手段と、
前記表示制御手段で生成される表示画像の画像領域を、前記操作手段からの変更指令に従い変更する第1画像領域変更手段と、
を備えることを特徴とする請求項1記載の車両の後方確認支援装置。
【請求項3】
車両運転者の目の位置を検出し、該検出した目の位置に基づき車両運転者が前記リアビューミラーを見た際に、該リアビューミラーの障害物領域に投影する表示画像の画像領域を、前記障害物を透過した後方画像となるように設定する画像領域設定手段と、
該画像領域設定手段にて設定された画像領域の後方画像が前記リアビューミラーに投影されるように、前記表示制御手段が前記表示手段に表示する表示画像の画像領域を変更する第2画像領域変更手段と、
を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車両の後方確認支援装置。
【請求項4】
前記障害物は、車両の後部座席に着座した乗員に対して画像情報を提供するために、車室内の後部座席よりも前方の天井部分に設置された後席用表示装置であり、
前記表示手段は、該後席用表示装置の車両前方側の面に配置されたことを特徴とする請求項1〜請求項3何れか記載の車両の後方確認支援装置。
【請求項5】
前記撮像手段は、車両の後部座席を含む後方画像を撮像できるように、車室内の後部座席よりも前方に配置されていることを特徴とする請求項1〜請求項4何れか記載の車両の後方確認支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2004−330873(P2004−330873A)
【公開日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−129250(P2003−129250)
【出願日】平成15年5月7日(2003.5.7)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】