説明

車両の後部車体構造

【課題】 ハッチバック車等の車体後壁に開口を有する車両において、リアホイールハウスに入力される荷重を車体後部に効果的に分散させることができる車両の後部車体構造を提供する。
【解決手段】 リアホイールハウス部6の上部から後壁部4における開口周辺部分4aに向けて車両前後方向に延びる連結ガセット51と、リアホイールハウス部6の上部から側壁部3内を通って略上方に延び、ピラー部9に至るリヤピラーレインフォースメント9とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の後部車体構造、具体的には、車体後壁に開口が設けられた車両の後部車体構造に関し、車体構造の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両においては、車体後部のリアホイールハウスの上部に、リアホイールを車体に支持するサスペンションの支持部が設けられ、この支持部に車両の荷重が作用することから、該支持部からリアホイールハウス上部に伝達される荷重を車体各部に如何に分散するかが重要となる。
【0003】
例えば、特許文献1には、リアホイールハウス周辺の構造として、セダンタイプの車両において、車体後部の側壁を構成するインナパネルとアウタパネルとの間に、リアホイールハウス上部のサスペンションタワー側方から後方に延びるリアフェンダレインフォースメントを設けると共に、上記インナパネルとアウタパネルとの間に、サスペンションタワーの側方からリアピラー内を斜め上方に延びるリアピラーレインフォースメントを設け、かつ、これらリアフェンダレインフォースメントとリアピラーレインフォースメントとをサスペンションタワーの側方で結合する技術が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開平5−16837号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1に記載の技術を、上記のようなセダンタイプとは異なるタイプの車両に適用した場合、リアホイールハウス上部に伝達される荷重の分散が十分とは言えない場合がある。
【0006】
そこで、本発明は、ハッチバック車等の車体後壁に開口を有する車両において、リアホイールハウス上部に伝達される荷重を車体後部に効果的に分散させることができる車両の後部車体構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、次のように構成したことを特徴とする。
【0008】
まず、本願の請求項1に記載の発明(以下、第1発明という)は、開口を有する車体後壁を有し、かつ車体側壁から内方に膨出するリアホイールハウスと、上記車体側壁に、リアホイールハウス近傍から上方に延びるピラー部とが設けられた車両の後部車体構造であって、上記リアホイールハウスの上部から車体後壁における開口周辺部分に向けて前後方向に延びる連結部材と、リアホイールハウス上部から上記側壁内を通って略上方に延び、ピラー部に至る補強部材とが備えられていることを特徴とする。
【0009】
また、本願の請求項2に記載の発明(以下、第2発明という)は、第1発明において、補強部材は、上部が車体前方側に傾斜していることを特徴とする。
【0010】
そして、本願の請求項3に記載の発明(以下、第3発明という)は、第1発明または第2発明において、車体側壁におけるピラー部の後方にはウィンドウ用開口が設けられており、補強部材は、該開口の前端縁部及び下端縁部に沿って延びていることを特徴とする。
【0011】
さらに、本願の請求項4に記載の発明(以下、第4発明という)は、第1発明から第3発明のいずれかにおいて、車体側壁の上端部とルーフの車幅方向端部とを連結するルーフレールが設けられており、補強部材はピラー部内を通って該ルーフレールに連結されていることを特徴とする。
【0012】
また、本願の請求項5に記載の発明(以下、第5発明という)は、第1発明から第4発明のいずれかにおいて、連結部材は、リアホイールハウスの上部と車体後壁における開口周辺部分との間で側壁に接合されていることを特徴とする。
【0013】
そして、本願の請求項6に記載の発明(以下、第6発明という)は、第5発明において、連結部材は、リアホイールハウス上部から車体後壁に向かって斜め上方に延びていることを特徴とする。
【0014】
さらに、本願の請求項7に記載の発明(以下、第7発明という)は、第1発明から第6発明のいずれかにおいて、リアホイールハウス上部とフロアとを略上下方向に連結するホイールハウス補強部材が設けられていることを特徴とする。
【0015】
そして、本願の請求項8に記載の発明(以下、第8発明という)は、第1発明において、ホイールハウス補強部材は、リアホイールハウス上部で連結部材に連結されていることを特徴とする。
【0016】
さらに、本願の請求項9に記載の発明(以下、第9発明という)は、第8発明において、左右のホイールハウス補強部材は、下部が車幅方向に延びて互いに連結されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
次に、本発明の効果について説明する。
【0018】
まず、第1発明によれば、開口を有する車体後壁を有し、かつ車体側壁から内方に膨出するリアホイールハウスと、上記車体側壁に、リアホイールハウス近傍から上方に延びるピラー部が設けられた車両において、例えばサスペンション等を介してリアホイールハウスに伝達される車体荷重が、上記リアホイールハウスの上部から車体後壁における開口周辺部分に向けて前後方向に延びる連結部材を介して車体後壁における開口周辺部分に伝達されると共に、リアホイールハウス上部から上記側壁内を通って略上方に延び、ピラー部に至る補強部材を介して車体側壁にも伝達されることとなる。つまり、上記荷重を車体後部の広い範囲に効果的に分散させることができる。
【0019】
その場合に、車体側壁のピラー部及び車体後壁における開口周辺部分は、通常複数のパネル部材が接合されることにより形成され、非常に剛性が高いので、上記分散された荷重を効果的に受け止めることができる。
【0020】
また、第2発明によれば、補強部材は、上部が車体前方側に傾斜しているから、リアホイールハウスに伝達される荷重を、傾斜していない場合と比較して、車体側壁におけるより広い面積を有するリアホイールハウスよりも車体前方側の部分に効果的に分散させることができる。
【0021】
そして、第3発明によれば、車体側壁にサイドウィンドウ用開口が設けられているような場合に、最もサスペンションに近く応力が集中しやすい上記開口の前端縁部と下端縁部とが交わる角部周辺が補強され、車体側壁の剛性が向上する。
【0022】
さらに、第4発明によれば、リアホイールハウスに伝達される荷重を、ルーフレールを介してルーフにも分散することができる。
【0023】
また、第5発明によれば、リアホイールハウスに伝達される荷重を、リアホイールハウス後方の車体側壁にも分散することができる。
【0024】
さらに、第6発明によれば、連結部材がリアホイールハウス上部から車体後壁に向かって斜め上方に延びているから、リアホイールハウスに伝達される荷重を、連結部材が後方にほぼ水平に延びている場合よりも、車体側壁におけるリアホイールハウスよりも後方の部分に効果的に分散させることができる。すなわち、車体側壁におけるリアホイールハウス後方部分においては、リアホイールハウス自体の面積が大きいことに起因して、リアホイールハウスと略同高さ以下の範囲では上記荷重を分散させるための十分な面積が確保できないが、本第6発明によれば、連結部材がリアホイールハウス上部から車体後壁に向かって斜め上方に延びているから、リアホイールハウス後方におけるより広い面積を有する部分に上記荷重を効果的に伝達して分散させることができるのである。
【0025】
また、第7発明によれば、リアホイールハウスに伝達される荷重を、ホイールハウス補強部材を介してフロアへも分散させることができる。また、このとき、連結部材と補強部材とホイールハウス補強部材とでY字状の補強構造が実現されるので、リアホイールハウスに入力される荷重を、後部車体の各部にまんべんなく分散させることができる。
【0026】
そして、第8発明によれば、ホイールハウス補強部材がリアホイールハウス上部で連結部材に連結されているから、ホイールハウス上部の剛性が向上する。
【0027】
さらに、第9発明によれば、左右のホイールハウス補強部材の下部が車幅方向に延びて互いに連結されているので、車体後部全体の剛性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0029】
図1は、本実施の形態に係る車両の後部車体を車体前方側斜め上方から透視した全体斜視図、図2は、図1のA−A線矢視断面図、図3は、図1のB−B線矢視断面図、図4は、図1のC−C線矢視断面図、図5は、図1のD−D線矢視断面図である。なお、これらの図面は、室内トリム等が装着されていない状態を示す。また、これらの図では、一方の側壁部側のみを図示しているが、他方の側壁部側も対称な構造であり、その説明は基本的に省略する。
【0030】
図1に示すように、本実施の形態に係る車両1の車体後部は、主たる構成要素として、車体底面を構成するフロア部2と、車体側面を構成する側壁部3と、車体後面を構成する後壁部4と、車体上面を構成するルーフ部5とを有する。
【0031】
上記各部のうちの側壁部3の下部には、車体内方側に膨出する半円状のリアホイールハウス部6が設けられている。後壁部4には、バックドア7に対応する開口8が設けられている。
【0032】
また、側壁部3における上記リアホイールハウス部6の上方には、該リアホイールハウス部6の近傍から斜め上方に延びるリアピラー部9が設けられていると共に、側壁部3におけるリアピラー部9の前方には乗員の乗降用開口10が設けられていると共に、該リアピラー部9の後方にはサイドウィンドウ用開口11が設けられている。そして、側壁部3の上端部には車体において最も車体前方に位置するピラー部(図示せず)から最も車体後方に位置するピラー部12にまで延びるルーフレール部13が設けられており、該ルーフレール部13に上記ルーフ部5の車幅方向端部が連結されている。
【0033】
次に、上記側壁部3等の構造について詳しく説明すると、図2、図3にも併せて示すように、側壁部3は、インナパネル21と、アウタパネル22とで中空体として構成され、その内部には、リアピラーレインフォースメント23(以下、「リアピラーレイン23」という)が配設されている。このリアピラーレイン23は、図2、図3に示すように、下端部のフランジ23aが、インナパネル21の下部におけるアウタパネル22側に膨出する膨出部21aの車幅方向略中央部に接合されており、図1に示すように、リアピラー部9に向けて車体前方側に傾斜した状態で略上下方向に延び、リアピラー部9を通って上端部がルーフレール部13に接合されている。なお、接合とは、溶接等による結合を意味し、以下同様の意味で用いる。
【0034】
また、リアピラーレイン23は、図1に示すように、アウタパネル22側に膨出する膨出部23bと、前端部及び後端部にフランジ23c,23dとを有する断面ハット状とされており、両フランジ23c,23dがインナパネル21に接合され、これらで閉断面が形成されている。
【0035】
また、図4に示すように、リアピラー部9においては、インナパネル21、アウタパネル22、及びリアピラーレイン23における前端部及び後端部が重合されて、3重構造とされると共に、これらの部材により閉断面が形成されている。なお、重合とは、接合同様、溶接等による結合を意味し、以下同様の意味で用いる。
【0036】
また、リアピラーレイン23は、図1に示すように、サイドウィンドウ用開口11の前端縁部11a及び下端縁部11bに沿って延びており、前端縁部11aに沿う部分においては、図4に示すように、インナパネル21とアウタパネル22とリアピラーレイン23とが前述のように3重に重合されていると共に、下端縁部11bに沿う部分においても、図2に示すように、インナパネル21とアウタパネル22とリアピラーレイン23とが3重に重合されている。これによれば、側壁部3における、前端縁部11a及び下端縁部11bが交差する隅部3a(図1参照)の剛性が向上することとなる。
【0037】
リアホイールハウス部6は、図1〜図3に示すように、車室側への膨出部24aが形成されたリアホイールパネル24を有する。該リアホイールパネル24の膨出部42aの周囲には、フランジ24bが形成されており、図2〜図3に示すように、該フランジ24bがインナパネル21における縦面部21bの下部に接合されている。
【0038】
後壁部4は、図1に示すように、エンドインナパネル61と図示しないエンドアウタパネルとを有し、開口8に沿う端部では各パネルのフランジ同士が接合されている。
フロア部2は、図1、図2に示すように、平板状のフロアパネル31を有する。該フロアパネル31における側壁部3側の端部の下方には、車体前後方向に延びるフレーム部材32が接合されている。フロアパネル31は、側壁部3側の端部にフランジ31aを有し、該フランジ31aが上記フレーム部材の縦面部32aを介してリアホイールパネル24の膨出部24aの側面に重合されている。
【0039】
図1に示すように、左右のリアホイールハウス部6の間には、両リアホイールハウス部6及びフロア部2の上面に沿って車幅方向に延び、その両端が左右のリアホイールハウス部6の上部に達する補強部材40が設けられている。該補強部材40は車体後方(または前方)側から見るとU字状とされていると共に、左右のアッパホイールハウスレインフォースメント41(以下、「アッパレイン41」という)と、ロワホイールハウスレインフォースメント42(以下、「ロワレイン42」と、アッパクロスメンバ43とからなっており、以下これらについて説明する。
【0040】
まず、アッパレイン41は、図1〜図3に示すように、リアホイールパネル24の上部に配設されていると共に、上部から下部にわたって車体内方側に膨出する膨出部41aと、これらの周囲に設けられたフランジ41b,41c,41c,41d,41dとを有し、断面ハット状とされている。そして、フランジ41bがインナパネル21の縦面部21bに接合され,フランジ41c,41cがリアホイールパネル24の膨出部24aの上面に接合され,フランジ41d,41dがリアホイールパネル24の膨出部24aの側面に接合されており、図2に示すように、上記膨出部41aとリアホイールパネル24の膨出部24aとで、閉断面が形成されている。
【0041】
ロワレイン42は、アッパレイン41とフロアパネル31とを連結するもので、アッパレイン41の下方に配設されており、幅方向略中央部で車体内方側に膨出する膨出部42aと、その幅方向両側に設けられたフランジ42b,42bとを有し、断面ハット状とされている。そして、上記アッパレイン41の膨出部41aの下部と該ロワレイン42の膨出部42aの上部とが嵌め合わされた状態で、フランジ42b,42bの上部がアッパレイン41のフランジ41d,41dの下部に接合されると共に、フランジ42a,42aの下部がフロアパネル31の上面に接合されている。
【0042】
アッパクロスメンバ43は、左右のロワレイン42を連結するもので、フロアパネル31の上面に沿って車幅方向に延び、上方に膨出する膨出部43aと、フランジ43b,43bとを有し、断面ハット状とされている。そして、該フランジ43b,43bがフロアパネル31の上面に接合されて、アッパクロスメンバ43とフロアパネル31とで閉断面が形成されている。また、アッパクロスメンバ43の車幅方向両端部においては、アッパクロスメンバの膨出部43aの車幅方向端部と、ロワレイン42の膨出部42aの下部とが嵌めあわされた状態で接合されている。
【0043】
図5に示すように、フロアパネル31の下面には、車幅方向に延びるフロアクロスメンバ44が配設されている。該フロアクロスメンバ44は、下方に膨出する膨出部44aと、フランジ44b,44bとを有し、断面ハット状とされている。そして、該フランジ44b,44bがフロアパネル31の下面に接合されて、フロアクロスメンバ44とフロアパネル31とで閉断面が形成されている。そして、アッパクロスメンバ43の車体前方側フランジ43bとフロアクロスメンバ44の車体後方側フランジ44bとがフロアパネル31を介して重合されている。
【0044】
図1に戻り、リアホイールハウス6の車体後方には、リアホイールハウス6の上部から車体後壁4における開口8の周辺部分4aに向けて側壁部3に沿って斜め上方に延びる連結ガセット51が配設されている。該連結ガセット51は、平面視略方形状のプレート部材であり、平面部51aと、該平板部51aに対して折り曲げ形成したフランジ51b,51c,51d,51eとを有する。そして、側壁部3側の辺部のフランジ51bが側壁部3のインナパネル21に接合され、後壁部4側の辺部のフランジ51cが後壁部4のインナパネル61に接合され、リアホイールハウス部6側の辺部のフランジ51dがリアホイールパネル24の膨出部24aの上面に接合されている。反側壁部3側の辺部のフランジ51eは連結ガセット51の剛性向上を目的とするものであり、他のフランジ51b,51c,51dとは異なり、下方に折り曲げられている。
【0045】
また、連結ガセット51におけるリアホイールハウス部6側の辺部には延長部51fが設けられ、該延長部51fが、上記アッパレイン41の膨出部41aの上面に接合され、連結ガセット51とアッパレイン41とが連結されている。したがって、この連結部においては、リアホイールパネル24とアッパレイン41と連結ガセット51とが3重に重合されることとなる。そして、この重合部に設けられた孔部Hにボルトナット部材を挿入締結することによりリアホイール用のサスペンション装置が取り付けられている。
【0046】
次に、本実施の形態に係る作用について説明する。
【0047】
まず、車体後部の補強という観点から説明すると、補強部材40は左右のリアホイールハウス部6間でU字状構造となるから、左右の側壁部3が車体側方へ撓みにくくなると共に、連結ガセット51と補強部材40とがリアホイールハウス部6の上部で連結されるから、後壁部4における開口周辺部分4aの剛性が向上し、ひいては車体後部全体にの捩れ剛性が向上することとなる。また、上記補強部材40はリアホイールハウス部6及びフロア部2の上面に沿って設けられているから、該補強部材40により車体後部の室内空間が損なわれることがない。
【0048】
また、連結ガセット51は、リアホイールハウス部6から後壁部4における開口周辺部4aに向けて斜め上方に延びているから、後壁部4におけるより高い位置まで剛性の高い範囲を広げることができる。
【0049】
さらに、補強部材40はフランジを有する断面ハット状とされていると共に、該フランジがフロア部2の上面に接合されて、補強部材40とフロア部2とで閉断面が形成されることにより、フロア部2の剛性が向上し、ひいては車体後部の剛性が向上することとなる。
【0050】
そして、補強部材40と連結ガセット51とは、リアホイールハウス部6の上部におけるサスペンション装置の取付部で連結されているから、この連結部においては、補強部材40と連結ガセット51とホイールハウスパネル24とにより三重構造となって、剛性が向上し、サスペンションから伝達された車体等の荷重を確実に支持でできる。
【0051】
次に、サスペンションからリアホイールハウス部6に伝達される車体荷重の分散という観点から見ると、該荷重が、リアホイールハウス部6の上部から連結ガセット51を介して後壁部4における開口周辺部分4aに伝達されると共に、リアピラーレイン23を介してリアピラー部9を含む側壁部3にも伝達されることとなる。つまり、上記荷重を車体後部の広い範囲に効果的に分散させることができる。
【0052】
その場合に、リアピラー部9及び後壁部4における開口周辺部分4aは、複数のパネル部材が接合されることにより形成され、非常に剛性が高いので、上記分散された荷重を効果的に受け止めることができる。
【0053】
また、リアピラーレイン23は、上部が車体前方側に傾斜しているからリアホイールハウス部6に伝達される荷重を、傾斜していない場合と比較して、側壁部3におけるより広い面積を有するリアホイールハウス部6よりも車体前方側の部分に効果的に分散させることができる。
【0054】
そして、リアピラーレイン23は、サイドウィンドウ用開口11の前端縁部11a及び下端縁部11bに沿って延びているから、側壁部3にサイドウィンドウ用開口11が設けられているような場合に、最もサスペンションに近く応力が集中しやすい上記開口11の前端縁部11aと下端縁部11bとが交わる角部3a周辺が補強され、側壁部3の剛性が向上する。
【0055】
さらに、リアピラーレイン24はルーフレール部13に連結されているから、リアホイールハウス部6に伝達される荷重を、ルーフレール部13を介してルーフ部5にも分散することができる。
【0056】
また、連結ガセット51は、リアホイールハウス部6の上部と後壁部4における開口周辺部分4aとの間で側壁部3に接合されているから、リアホイールハウス部6に入力される荷重を、リアホイールハウス部6の後方の側壁部3にも分散させることができる。
【0057】
さらに、連結ガセット51がリアホイールハウス部6の上部から後壁部4に向かって斜め上方に延びているから、リアホイールハウス部6に伝達される荷重を、連結ガセットが後方にほぼ水平に延びている場合よりも、側壁部3におけるリアホイールハウス部6よりも後方の部分に効果的に分散させることができる。すなわち、側壁部3におけるリアホイールハウス部6の後方部分においては、リアホイールハウス部6自体の面積が大きいことに起因して、リアホイールハウス部6と略同高さ以下の範囲では上記荷重を分散させるための十分な面積が確保できないが、本実施の形態によれば、連結ガセット51がリアホイールハウス部6上部から後壁部4に向かって斜め上方に延びているから、リアホイールハウス部6の後方におけるより広い面積を有する部分に上記荷重を伝達して分散させることができるのである。
【0058】
また、リアホイールハウス部6の上部とフロア部2とを略車両上下方向に連結する補強部材40が設けられているから、リアホイールハウス部6に伝達される荷重を、補強部材40を介してフロア部2へも分散させることができる。また、このとき、連結ガセット51とリアピラーレイン23と補強部材40とでY字状の補強構造が実現されるので、リアホイールハウス部6に入力される荷重を、後部車体の各部にまんべんなく分散させることができる。
【0059】
また、補強部材40のアッパクロスメンバ43の車体前方側フランジ43bとフロアクロスメンバ44の車体後方側フランジ44bとがフロアパネル31を介して重合されているから、サスペンションから補強部材40に加わる荷重をフロアクロスメンバ44に分散することができ、またアッパクロスメンバ43及びフロアクロスメンバ44の前後のフランジ43b,43b,44b,44bをそれぞれ重ね合わせて接合する場合に比較して、フロア部2の補強範囲を車体前後方向に広げることができ、また、3重構造の箇所が減少することにより例えば溶接等の作業性を向上させることができる。
【0060】
なお、上記実施の形態においては、補強部材40のロワレイン42は、アッパレイン41,41の下部にまで延びるものとしたが、以下のようにしてもよい。すなわち、図6に示すように、上端部から下端部まで延びる膨出部142aとフランジ142bとを有する断面ハット状とされたロワレイン142の上端部を補強部材140のアッパレイン141の膨出部141aにまで延ばすと共に、連結ガセット151の延長部151fの下部にまで延びる延長部142cを設け、図7に示すように、連結ガセット151の延長部151fと、ロワレイン142の延長部142cと、アッパレイン141dと、リアホイールパネル124の膨出部124aの上面部とを4重に重合させ、この重合部に設けた孔部H′にボルトナット部材を挿入締結することによりサスペンション装置を固定する。これによれば、サスペンション装置の固定部の剛性が更に向上する。また、リアホイールパネル124の膨出部124aの上面部とロワレイン142とでフロア部102からリアホイールハウス部106の上部に至る連続的な閉断面が形成され、車体後部の捩れ剛性が一層向上することとなる。
【0061】
なお、本実施の形態においては、アッパクロスメンバ43のフランジ43bとフロアクロスメンバ44のフランジ44bとをフロア部材31を介して重合する場合に、アッパクロスメンバ43の車体前方側フランジ43bとフロアクロスメンバ44の車体後方側フランジ44bとを重合したが、アッパクロスメンバ43の車体後方側フランジ43bとフロアクロスメンバ44の車体後方側フランジ44bとを重合してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、車体後壁に開口が設けられた車両の後部車体構造に広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の実施の形態に係る車両の後部車体を車体前方側斜め上方から透視した全体斜視図である。
【図2】図1のA−A線矢視断面図である。
【図3】図1のB−B線矢視断面図である。
【図4】図1のC−C線矢視断面図である。
【図5】図1のD−D線矢視断面図である。
【図6】本発明の他の実施の形態に係る車両の後部車体を車体前方側斜め上方から透視した全体斜視図である。
【図7】図6のE−E線矢視断面図である。
【符号の説明】
【0064】
1 車両
2 フロア部
3 側壁部(車体側壁)
4 後壁部(車体後壁)
4a 後壁部における開口周辺部分(車体後壁における開口周辺部分)
5 ルーフ部(ルーフ)
6 リアホイールハウス部(リアホイールハウス)
7 バックドア
8 開口
9 リアピラー部(ピラー部)
11 サイドウィンドウ用開口(ウィンドウ用開口)
11a 前端縁部
11b 下端縁部
13 ルーフレール
23 リアピラーレイン(補強部材)
40 補強部材(ホイールハウス補強部材)
51 連結ガセット(連結部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を有する車体後壁を有し、かつ車体側壁から内方に膨出するリアホイールハウスと、上記車体側壁に、リアホイールハウス近傍から上方に延びるピラー部とが設けられた車両の後部車体構造であって、上記リアホイールハウスの上部から車体後壁における開口周辺部分に向けて前後方向に延びる連結部材と、リアホイールハウス上部から上記側壁内を通って略上方に延び、ピラー部に至る補強部材とが備えられていることを特徴とする車両の後部車体構造。
【請求項2】
補強部材は、上部が車体前方側に傾斜していることを特徴とする請求項1に記載の車両の後部車体構造。
【請求項3】
車体側壁におけるピラー部の後方にはウィンドウ用開口が設けられており、補強部材は、該開口の前端縁部及び下端縁部に沿って延びていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両の後部車体構造。
【請求項4】
車体側壁の上端部とルーフの車幅方向端部とを連結するルーフレールが設けられており、補強部材はピラー部内を通って該ルーフレールに連結されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の車両の後部車体構造。
【請求項5】
連結部材は、リアホイールハウスの上部と車体後壁における開口周辺部分との間で側壁に接合されていることを特徴とする請求項1から請求4のいずれかに記載の車両の後部車体構造。
【請求項6】
連結部材は、リアホイールハウス上部から車体後壁に向かって斜め上方に延びていることを特徴とする請求項5に記載の車両の後部車体構造。
【請求項7】
リアホイールハウス上部とフロアとを略上下方向に連結するホイールハウス補強部材が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の車両の後部車体構造。
【請求項8】
ホイールハウス補強部材は、リアホイールハウス上部で連結部材に連結されていることを特徴とする請求項7に記載の車両の後部車体構造。
【請求項9】
左右のホイールハウス補強部材は、下部が車幅方向に延びて互いに連結されていることを特徴とする請求項8に記載の車両の後部車体構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−69268(P2006−69268A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−252228(P2004−252228)
【出願日】平成16年8月31日(2004.8.31)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】