説明

車両の後部車体構造

【課題】サスペンションからの入力によるホイールハウスの振動を抑制し、騒音抑制を図ると共に、ダンパ取付部の変形を抑制して、操安性の向上を図る車両の後部車体構造を提供する。
【解決手段】ホイールハウス3の上方にサスペンション17のダンパ取付部18aが設けられ、ダンパ取付部18a近傍とリヤピラー22とを連結する第1ガセット31と、リヤサイドフレーム6のサスペンション支持部15,16近傍とダンパ取付部18a近傍とを連結する第2ガセット32と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の後部車体構造に関し、詳しくは、車体後壁前方の車体側壁から車幅方向内側に膨出してホイールハウスが設けられ、このホイールハウスの下方にリヤサイドフレームが接続されると共に、該リヤサイドフレームにサスペンション部材を支持するサスペンション支持部が設けられたような車両の後部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上述例の車両の後部車体構造としては、例えば、特許文献1に開示されたものがある。
すなわち、車体後壁前方の車体側壁から車幅方向の内側に膨出してホイールハウスが設けられ、このホイールハウスの下方に、車両の前後方向に延びるリヤサイドフレームが接続された構造において、リヤサスペンションのダンパ取付部とリヤピラーとを連結する連結ガセットを設けると共に、ダンパ取付部とフロアパネルとを連結するフロアガセットを設けたものである。
【0003】
この特許文献1に開示された従来構造においては、上述の連結ガセットとフロアガセットを通じて後輪懸架装置(リヤサスペンション)からの入力荷重を有効に車体側壁と車体フロア、または、車体後壁と車体フロアに分散して伝達することができるため、後輪懸架装置の一部の取付け部における支持剛性を高めることができるという効果がある。
しかしながら、該特許文献1には、サスペンションからの入力によるホイールハウスの振動を抑制し、騒音抑制を図ることを意図して、サスペンション支持部近傍とダンパ取付部近傍とを連結するという技術思想は開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−161152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、この発明は、ホイールハウスの上方にサスペンションのダンパ取付部を設け、該ダンパ取付部近傍とリヤピラーとを連結する第1ガセットと、リヤサイドフレームのサスペンション支持部近傍と上記ダンパ取付部近傍とを連結する第2ガセットと、を設けることで、サスペンションからの入力によるホイールハウスの振動を抑制し、騒音抑制を図ることができると共に、ダンパ取付部の変形を抑制して、操縦安定性いわゆる操安性の向上を図ることができる車両の後部車体構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明による車両の後部車体構造は、車体後壁前方の車体側壁から車幅方向内側に膨出してホイールハウスが設けられ、該ホイールハウス下方にリヤサイドフレームが接続されると共に、該リヤサイドフレームにサスペンション部材を支持するサスペンション支持部が設けられた車両の後部車体構造であって、上記ホイールハウスの上方にサスペンションのダンパ取付部が設けられ、該ダンパ取付部近傍とリヤピラーとを連結する第1ガセットと、上記リヤサイドフレームのサスペンション支持部近傍とダンパ取付部近傍とを連結する第2ガセットと、を備えたものである。
【0007】
上記構成によれば、第2ガセットでホイールハウスを補強することができるので、サスペンションからの入力によるホイールハウスの振動を抑制し、騒音抑制を図ることができる。
また、ダンパ取付部近傍は第1ガセットを介してリヤピラーに連結されると共に、第2ガセットを介してリヤサイドフレームのサスペンション支持部近傍に連結されているので、サスペンションからダンパ取付部に入力された荷重をリヤピラーとリヤサイドフレームとに分散することができ、該ダンパ取付部の変形を抑制して、操縦安定性の向上を図ることができる。
【0008】
この発明の一実施態様においては、上記サスペンション部材がサブフレームであり、上記サスペンション支持部が該サブフレームの支持部であることを特徴とする。
上記構成によれば、サスペンション部材としてのサブフレームを伝わって入力される振動により上記ホイールハウスが振動することを抑制できる。
【0009】
この発明の一実施態様においては、上記サスペンション部材が緩衝部材であり、上記サスペンション支持部が該緩衝部材の支持部であることを特徴とする。
上記構成によれば、サスペンション部材としての緩衝部材(コイルスプリング参照)から入力される振動によって、ホイールハウスが振動することを抑制できる。
【0010】
この発明の一実施態様においては、左右のリヤサイドフレームのサスペンション支持部近傍同士を車幅方向に結合するクロスメンバを備えたものである。
上記構成によれば、リヤサイドフレームのサスペンション支持部近傍同士をクロスメンバで結合したので、該クロスメンバによりホイールハウスの振動抑制機能と、ダンパ取付部の内倒れ抑制機能とを向上させることができる。
【0011】
この発明の一実施態様においては、上記第2ガセットがホイールハウスの車内側に設けられたものである。
上記構成によれば、第2ガセットをホイールハウスの車内側に設けたので、ダンパ取付部の内倒れ抑制機能をさらに向上させることができる。
【0012】
この発明の一実施態様においては、上記第2ガセットがホイールハウスの車外側に設けられたものである。
上記構成によれば、第2ガセットをホイールハウスの車外側に設けることで、デッドスペースを利用して、該第2ガセットを配設することができる。
【0013】
この発明の一実施態様においては、上記第1ガセットと第2ガセットとがホイールハウスを挟んで対向するように設けられたものである。
上記構成によれば、第1ガセットと第2ガセットとを対向配置したので、第1ガセット、第2ガセットの荷重伝達が効果的に行なわれる構成となすことができる。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、ホイールハウスの上方にサスペンションのダンパ取付部を設け、該ダンパ取付部近傍とリヤピラーとを連結する第1ガセットと、リヤサイドフレームのサスペンション支持部近傍と上記ダンパ取付部近傍とを連結する第2ガセットと、を設けたので、サスペンションからの入力によるホイールハウスの振動を抑制し、騒音抑制を図ることができると共に、ダンパ取付部の変形を抑制して、操縦安定性いわゆる操安性の向上を図ることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の車両の後部車体構造を示す側面図
【図2】車両の後部車体構造を示す斜視図
【図3】図1のA−A線に沿う要部の断面図
【図4】図1のB−B線に沿う要部の断面図
【図5】図1のC−C線に沿う要部の断面図
【図6】図1の部分拡大図
【図7】車両の後部車体構造の他の実施例を第3ガセット対応部で断面して示す断面図
【図8】車両の後部車体構造の他の実施例を第1、第2ガセット対応部で断面して示す断面図
【図9】車両の後部車体構造をトーションビーム型リヤサスペンションを備えた車両に適用して示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0016】
サスペンションからの入力によるホイールハウスの振動を抑制し、騒音抑制を図ると共に、ダンパ取付部の変形を抑制して、操安性の向上を図るという目的を、車体後壁前方の車体側壁から車幅方向内側に膨出してホイールハウスが設けられ、該ホイールハウス下方にリヤサイドフレームが接続されると共に、該リヤサイドフレームにサスペンション部材を支持するサスペンション支持部が設けられた車両の後部車体構造であって、上記ホイールハウスの上方にサスペンションのダンパ取付部が設けられ、該ダンパ取付部近傍とリヤピラーとを連結する第1ガセットと、上記リヤサイドフレームのサスペンション支持部近傍とダンパ取付部近傍とを連結する第2ガセットと、を備えるという構成にて実現した。
【実施例1】
【0017】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は車両の後部車体構造を示し、図1はその側面図、図2は後部車体構造を示す斜視図、図3は図1のA−A線要部矢視図、図4は図1のB−B線要部矢視図、図5は図1のC−C線要部矢視図である。
【0018】
図1において、車室および荷室の底面を形成する車体フロア1を設けている。
この車体フロア1はフロアパネル1Aと、このフロアパネル1Aから前低後高状に傾斜して後方に延びるキックアップ部1Bと、このキックアップ部1Bの後端部から後方に向けて略水平に延びるリヤフロア1Cと、を備えている。
【0019】
図1〜図5に示すように、車体後壁前方の車体側壁としてのキャブサイドインナ2を設け、このキャブサイドインナ2から車幅方向内側に膨出してホイールハウスインナ3が設けられている。
【0020】
図3、図4、図5に断面図で示すように、この実施例ではキャブサイドインナ2の下部に、該キャブサイドインナ2と一体にホイールハウスアウタ4を車幅方向外側に膨出して形成しており、このホイールハウスアウタ4の形成部位と対向して、キャブサイドインナ2とは別部材から成るホイールハウスインナ3を設け、このホイールハウスインナ3と、上述のホイールハウスアウタ4との両者で、後輪と対応する位置にホイールハウス5を形成したものである。
上述のホイールハウスインナ3は、車幅方向内側に膨出する膨出部3aと、キャブサイドインナ2の下部、またはホイールハウスアウタ4の上部に接合される接合フランジ部3bと、後述するリヤサイドフレーム6に接合される接合フランジ部3cと、を備えている。
【0021】
上述の車体フロア1の下部両サイドで、かつ、ホイールハウスインナ3下方には、車両の前後方向に延びるリヤサイドフレーム6が接続固定されている。
このリヤサイドフレーム6は、図2に示すようにホイールハウスインナ3と対応しない部分はその断面が逆ハット形状に形成されており、また、リヤサイドフレーム6がホイールハウスインナ3と対応する部分においては、車外側の接合フランジ6aを水平方向から上下方向に変向させて、図3、図4、図5に示すように、この上下方向に指向する接合フランジ6aをホイールハウスインナ3の下部車内側の面に接合固定している。
【0022】
また、車体フロア1とリヤサイドフレーム6との間には、車両の前後方向に延びる閉断面7を形成して、下部車体剛性の向上を図るように構成している。
さらに、図1に示すように、車体フロア1のキックアップ部1Bの下部において、左右のリヤサイドフレーム6,6を車幅方向に連結するクロスメンバ8を設け、このクロスメンバ8と車体フロア1との間には、車幅方向に延びる閉断面9を形成して、下部車体剛性の向上を図るように構成している。
【0023】
加えて、図1に示すように、上述のキックアップ部1Bよりも後方のリヤフロア1Cの下部において、左右のリヤサイドフレーム6,6を車幅方向に連結するリヤクロスメンバ10を設け、このリヤクロスメンバ10と車体フロア1との間には、車幅方向に延びる閉断面11を形成して、下部車体剛性の向上を図るように構成している。
また、上述のキックアップ部1Bよりも前方のフロアパネル1Aの下部において、図2に示すように、左右のリヤサイドフレーム6,6を車幅方向に連結するクロスメンバ12を設け、このクロスメンバ12と車体フロア1との間にも、車幅方向に延びる閉断面を形成して、下部車体剛性の向上を図るように構成している。
【0024】
図1、図2に示すように、リヤサイドフレーム6には、サスペンション部材を支持するサスペンション支持部が設けられている。
上述のサスペンション部材はサブフレーム13と、緩衝部材としてのコイルスプリング14とであって、サスペンション支持部はサブフレーム13を支持するサスペンション取付けボルト15と、コイルスプリング14を支持するスプリングリテーナ16と、に設定されている。
【0025】
上述のサブフレーム13は、図2に示すように、フロントクロスメンバ13Fと、リヤクロスメンバ13Rと、左右のサイドクロスメンバ13Sとを、平面視で略井桁状に組合せたもので、マルチリンク形式のリヤサスペンション17を支持するためのものであてて、サブフレーム13における左右のサイドクロスメンバ13Sがリヤサイドフレーム6,6の下面に取付け固定されている。
上述のリヤサスペンション17は、ストラット構造のダンパ18を有し、このダンパ18はその上端部にダンパ取付部18aを備えている。
【0026】
この実施例では、車両に第3列目のシート(図示せず)を搭載する関係上、該ダンパ18はその下部に対して、その上部が後方に位置するように、ダンパ18を後方傾斜させて設けており、図1、図2に示すように、ホイールハウスインナ3の後部上方に形成された段差部3d(図4、図5参照)に該ダンパ18のダンパ取付部18aを取付けている。
ここで、上述のリヤクロスメンバ10は、左右のリヤサイドフレーム6,6のサスペンション支持部(サスペンション取付けボルト15、スプリングリテーナ16参照)近傍同士を車幅方向に結合する強度部材である。
【0027】
ところで、図1に示すリヤドア開口部19と、クオータウインド20との間には、クオータピラー21が形成されている。
また、クオータウインド20の後部にはリヤピラー22が形成されている。
【0028】
図1のA−A線矢視断面図を図3に示すように、上述のクオータピラー21はキャブサイドインナ2の一部と、クオータピラーレインフォースメント23との間に、車両の上下方向に延びる閉断面24を形成することで構成されており、一方、図1のB−B線矢視断面図とC−C線矢視断面図を図4、図5に示すように、上述のリヤピラー22はキャブサイドインナ2の他部とリヤピラーレインフォースメント25との間に、車両の略上下方向に延びる閉断面26を形成することで構成されている。
なお、図1、図2において、27,28は軽量化を目的として上述のキャブサイドインナ2に形成された開口部であり、このキャブサイドインナ2においてリヤドア開口部19とその後方の開口部27との間には、連結部2Aが形成されており、また前後の開口部27,28間にも、連結部2Bが形成されている。
【0029】
図1、図2、図4、図5に示すように、上述のホイールハウスインナ3上部のダンパ取付部18a近傍と、リヤピラー22とを略上下方向に連結する第1ガセット31を設けている。
【0030】
図1の要部を図6に拡大して示すように、該第1ガセット31は、その前後上下に接合フランジ31aを有するハット断面形状に形成されており、複数の接合フランジ31aを、各要素、すなわち、リヤピラー22、連結部2B、ホイールハウスインナ3上部のダンパ取付部18a近傍にそれぞれスポット溶接することで、図4、図5に示すように、上下方向に延びる閉断面29を形成している。
しかも、図1、図2、図4、図5に示すように、上述のリヤサイドフレーム6のサスペンション支持部近傍としてのサスペンション取付けボルト15または/およびスプリングリテーナ16の近傍と、ホイールハウスインナ3上部のダンパ取付部18aの近傍とを略上下方向に連結する第2ガセット32を設けている。
【0031】
図4、図5、図6に示すように、この実施例では上述の第2ガセット32は、その加工性を考慮して、上部ガセット32Aと下部ガセット32Bとの2部品で構成しているが、これは1部品で構成する構造を採用してもよい。
【0032】
この第2ガセット32もその前後上下に接合フランジ32aを有するハット断面形状に形成されており、複数の接合フランジ32aを、各要素、すなわち、ホイールハウスインナ3の接合フランジ部3b、ホイールハウスインナ3上部のダンパ取付部18a近傍、ホイールハウスインナ3、サスペンション取付けボルト15または/およびスプリングリテーナ16の近傍に対応するリヤフロア1Cにそれぞれスポット溶接することで、図4に示すように閉断面30を形成している。
【0033】
この実施例1では、図4、図5に示すように、上述の第2ガセット32はホイールハウスインナ3の車内側に設けられている。
さらに、図1のA−A線矢視断面図を図3に示すように、クロスメンバ8とリヤサイドフレーム6との接合部と、クオータピラー21の下部とを、ホイールハウスインナ3の車内側の面に沿って略上下方向に連結する第3ガセット33を設けている。
【0034】
図3、図6に示すように、この実施例では該第3ガセット33も第2ガセット32と同様に、その加工性を考慮して、上部ガセット33Aと下部ガセット33Bとの2部品で構成しているが、これは1部品で構成する構造を採用してもよい。
【0035】
この第3ガセット33もその前後上下に接合フランジ33aを有するハット断面形状に形成されており、複数の接合フランジ33aを、各要素、すなわち、クオータピラー21下部の連結部2A、ホイールハウスインナ3、上記両者6,8の接合部に対応する車体フロア1としてのキックアップ部1Bにそれぞれスポット溶接することで、図3に示すように閉断面34を形成している。
【0036】
さらに、図3に示すように、クオータピラー21の閉断面24と、第3ガセット33の閉断面34とが、車両の上下方向に連続するように形成されると共に、図4、図5に示すように、第1ガセット31の閉断面29と、第2ガセット32の閉断面30とが車両の上下方向に略連続するように形成されており、また、図4、図5に示すように、リヤピラー22の閉断面26と第1ガセット31の閉断面29とがキャブサイドインナ2の連結部2Bを挟んで対向するように設けられており、効率的な荷重伝達を図るように構成している。
なお、図中、矢印Fは車両前方を示し、矢印INは車両内方を示し、矢印OUTは車両外方を示す。
【0037】
このように、図1〜図6で示した実施例1の車両の後部車体構造は、車体後壁前方の車体側壁(キャブサイドインナ2参照)から車幅方向内側に膨出してホイールハウス(ホイールハウスインナ3参照)が設けられ、該ホイールハウス(ホイールハウスインナ3)下方にリヤサイドフレーム6が接続されると共に、該リヤサイドフレーム6にサスペンション部材(サブフレーム13または/およびコイルスプリング14参照)を支持するサスペンション支持部(サスペンション取付けボルト15または/およびスプリングリテーナ16参照)が設けられた車両の後部車体構造であって、上記ホイールハウス(ホイールハウスインナ3)の上方にリヤサスペンション17のダンパ取付部18aが設けられ、該ダンパ取付部18a近傍とリヤピラー22とを連結する第1ガセット31と、上記リヤサイドフレーム6のサスペンション支持部(各要素15,16参照)近傍とダンパ取付部18a近傍とを連結する第2ガセット32と、を備えたものである(図2参照)。
【0038】
この構成によれば、第2ガセット32でホイールハウス(ホイールハウスインナ3参照)を補強することができるので、リヤサスペンション17からの入力によるホイールハウス(ホイールハウスインナ3参照)の振動を抑制し、騒音抑制を図ることができる。
また、ダンパ取付部18a近傍は第1ガセット31を介してリヤピラー22に連結されると共に、第2ガセット32を介してリヤサイドフレーム6のサスペンション支持部(各要素15,16参照)近傍に連結されているので、リヤサスペンション17からダンパ取付部18aに入力された荷重をリヤピラー22とリヤサイドフレーム6とに分散することができ、該ダンパ取付部18a(および、ダンパ取付部18aが取付けられた部分のホイールハウスインナ3)の変形を抑制して、操縦安定性の向上を図ることができる。
【0039】
さらに、上記サスペンション部材がサブフレーム13であり、上記サスペンション支持部が該サブフレーム13の支持部(サスペンション取付けボルト15参照)であることを特徴とする(図1、図2参照)。
この構成によれば、サスペンション部材としてのサブフレーム13を伝わって入力される振動により上記ホイールハウス(ホイールハウスインナ3参照)が振動することを抑制できる。
【0040】
また、上記サスペンション部材が緩衝部材(コイルスプリング14参照)であり、上記サスペンション支持部が該緩衝部材(コイルスプリング14)の支持部(スプリングリテーナ16参照)であることを特徴とする(図1、図2参照)。
この構成によれば、サスペンション部材としての緩衝部材(コイルスプリング14参照)から入力される振動によって、ホイールハウス(ホイールハウスインナ3参照)が振動することを抑制できる。
【0041】
さらに、左右のリヤサイドフレーム6,6のサスペンション支持部(各要素15,16参照)近傍同士を車幅方向に結合するクロスメンバ(リヤクロスメンバ10参照)を備えたものである(図1、図2参照)。
この構成によれば、リヤサイドフレーム6,6のサスペンション支持部(サスペンション取付けボルト15または/およびスプリングリテーナ16参照)近傍同士をクロスメンバ10で結合したので、該クロスメンバ10によりホイールハウス(ホイールハウスインナ3)の振動抑制機能と、ダンパ取付部18aの内倒れ抑制機能とを向上させることができる。
【0042】
加えて、上記第2ガセット32がホイールハウス(ホイールハウスインナ3参照)の車内側に設けられたものである(図4、図5参照)。
この構成によれば、第2ガセット32をホイールハウス(ホイールハウスインナ3)の車内側に設けたので、ダンパ取付部18aの内倒れ抑制機能をさらに向上させることができる。
【0043】
なお、上記実施例においては、バックドアを備えた車両に適用した場合を例示したが、上記第1ガセット31はダンパ取付部18a近傍とリヤピラー22とを連結する強度部材であるから、セダン型の車両との共通化を図ることができる。
また、実施例で開示したように、上述の第1ガセット31および第2ガセット32と併せて、第3ガセット33を用いると、リヤサスペンション17からの入力荷重をクオータピラー21、リヤサイドフレーム6、クロスメンバ8にも伝達して、荷重分散を図ることができるので、ホイールハウスインナ3の振動抑制、騒音抑制をさらに向上させることができると共に、ホイールハウスインナ3の内倒れをより一層抑制することができる。
【実施例2】
【0044】
図7、図8は車両の後部車体構造の他の実施例を示し、図7は図1のA−A線に相当する部分の断面図であり、図8は図1のB−B線に相当する部分の断面図である。つまり、図7は第3ガセット33配設部位における断面図、図8は第1ガセット31および第2ガセット32の配設部位における断面図である。
【0045】
図1〜図6で示した先の実施例1においては、第2ガセット32および第3ガセット33をホイールハウスインナ3の車内側に設けたが、図7、図8で示すこの実施例2においては、第2ガセット32および第3ガセット33をホイールハウスインナ3の車外側に設けたものである。
【0046】
図8に示すように、第2ガセット32は複数の接合フランジ32aを有するハット断面形状に形成されており、この第2ガセット32はリヤサイドフレーム6のサスペンション支持部(各要素15,16参照)の近傍とダンパ取付部18aの近傍とを連結するものであって、複数の接合フランジ32aのうち上部の接合フランジ32aはホイールハウスインナ3の接合フランジ部3bの車外側に接合され、中間部の接合フランジ(図示せず)はホイールハウスインナ3およびリヤサイドフレーム6の車外側の面に接合され、下部の接合フランジ32aはリヤサイドフレーム6の下面部に接合されて、各要素3,6と第2ガセット32との間には、閉断面30が形成されている。
【0047】
また、図8に示すように、第1ガセット31はダンパ取付部18aの近傍とリヤピラー22とを連結するものであって、この第1ガセット31は先の実施例1と同様に、リヤピラー22、連結部2B、ホイールハウスインナ3の車内側の面にそれぞれ接合固定されており、各要素22,2B,3と第1ガセット31との間には、車両の略上下方向に延びる閉断面29が形成されている。
【0048】
しかも、図8に示すように、上述の第1ガセット31と第2ガセット32とがホイールハウスインナ3の膨出部3aを挟んで対向するように設けられると共に、第1ガセット31の閉断面29と第2ガセット32の閉断面30とがホイールハウスインナ3を介して上下方向に連続するように構成されている。
【0049】
図7に示すように、第3ガセット33はクオータピラー21の下部と、クロスメンバ8とリヤサイドフレーム6との接合部と、の間を上下方向に連結する強度部材であって、この第3ガセット33は複数の接合フランジ33aを有するハット断面形状に形成されている。
【0050】
そして、第3ガセット33の複数の接合フランジ33aのうち上部の接合フランジ33aは、ホイールハウスインナ3の接合フランジ部3bとキャブサイドインナ2の連結部2Aの下部との間に挟持固定されており、中間部の接合フランジ(図示せず)はホイールハウスインナ3およびリヤサイドフレーム6の車外側の面に沿うように形成されて、これら両者3,6に接合されており、下部の接合フランジ33aは、クロスメンバ8と対応する位置のリヤサイドフレーム6の下面部に接合されて、各要素3,6と第3ガセット33との間には、閉断面34が形成されている。
また、クオータピラー21の閉断面24と、第3ガセット33の閉断面34とは、各要素3b,33a,2Aの接合部を介して、上下方向に連続するように構成されている。
【0051】
このように、図7、図8で示した実施例2の車両の後部車体構造においては、上記第2ガセット32がホイールハウス(ホイールハウスインナ3参照)の車外側に設けられたものである(図8参照)。
この構成によれば、第2ガセット32をホイールハウス(ホイールハウスインナ3参照)の車外側に設けることで、デッドスペースを利用して、該第2ガセット32を配設することができる。
【0052】
また、上記第1ガセット31と第2ガセット32とがホイールハウス(ホイールハウスインナ3参照)を挟んで対向するように設けられたものである(図8参照)。
この構成によれば、第1ガセット31と第2ガセット32とを対向配置したので、第1ガセット31、第2ガセット32の荷重伝達が効果的に行なわれる構成となすことができる。
【実施例3】
【0053】
図9は車両の後部車体構造のさらに他の実施例を示す斜視図である。
先の実施例1、実施例2においては、マルチリンク形式のリヤサスペンション17を備えた車両を例示したが、図9に示すこの実施例3においては、トーションビーム形式のリヤサスペンション37を備えた車両に適用するものである。
【0054】
このトーションビーム形式のリヤサスペンション37は、トーションビーム38と、フロアアーム39と、アッパシート40とロアシート41との間に上下方向に張架された緩衝部材としてのコイルスプリング42と、上端部にダンパ取付部18aを有するダンパ18と、を備えており、このダンパ18は略鉛直方向に指向するものである。
このため、上記ダンパ18のダンパ取付部18aはホイールハウスインナ3のトップデッキ部における車両の前後方向の略中央に取付けられている。
【0055】
また、サスペンション部材であるコイルスプリング42の上部を支持するアッパシート40は、サスペンション支持部であって、このサスペンション支持部としてのアッパシート40は図9に示すように、リヤサイドフレーム6の車外側面に固定されている。
さらに、図9で示す車両は実施例1、2と異なりクオータピラーおよびクオータウインドが存在しないものであって、リヤドア開口部19の直後には、車両の略上下方向に延びるリヤピラー22が形成されている。
【0056】
そして、この実施例3においても、先の実施例1、2と同様に、ホイールハウスインナ3のダンパ取付部18a近傍とリヤピラー22とを連結する第1ガセット31と、リヤサイドフレーム6のサスペンション支持部(アッパシート40参照)近傍と、ダンパ取付部18a近傍とを連結する第2ガセット32を備えている。
【0057】
さらに、この実施例3においては、ダンパ取付部18a近傍とキャブサイドインナ2とを連結する第4ガセット43を設け、この第4ガセット43でホイールハウスインナ3の入力荷重による変位を抑制すると共に、ホイールハウスインナ3の内倒れを防止すべく構成している。
なお、図9において、44はサイドシルインナ、45はリヤエンドパネルである。
【0058】
このように、図9で示した車両の後部車体構造においても、車体後壁前方の車体側壁(キャブサイドインナ2参照)から車幅方向内側に膨出してホイールハウス(ホイールハウスインナ3参照)が設けられ、該ホイールハウス(ホイールハウスインナ3)下方にリヤサイドフレーム6が接続されると共に、該リヤサイドフレーム6にサスペンション部材(コイルスプリング42参照)を支持するサスペンション支持部(アッパシート40参照)が設けられた車両の後部車体構造であって、上記ホイールハウス(ホイールハウスインナ3参照)の上方にサスペンション37のダンパ取付部18aが設けられ、該ダンパ取付部18a近傍とリヤピラー22とを連結する第1ガセット31と、上記リヤサイドフレーム6のサスペンション支持部(アッパシート40参照)近傍とダンパ取付部18a近傍とを連結する第2ガセット32と、を備えたものである。
この構成によれば、第2ガセット32でホイールハウス(ホイールハウスインナ3参照)を補強することができるので、サスペンション37からの入力によるホイールハウス(ホイールハウスインナ3参照)の振動を抑制し、騒音抑制を図ることができる。
【0059】
また、ダンパ取付部18a近傍は第1ガセット31を介してリヤピラー22に連結されると共に、第2ガセット32を介してリヤサイドフレーム6のサスペンション支持部(アッパシート40参照)近傍に連結されているので、サスペンション37からダンパ取付部18aに入力された荷重をリヤピラー22とリヤサイドフレーム6とに分散することができ、該ダンパ取付部18a(および、ダンパ取付部18aが取付けられた部分のホイールハウスインナ3)の変形を抑制して、操縦安定性の向上を図ることができる。
【0060】
図9で示したこの実施例においても、その他の点については先の実施例1、2とほぼ同様であるから、図9において前図と同一の部分には、同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0061】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明の車体側壁は、実施例のキャブサイドインナ2に対応し、
以下同様に、
ホイールハウスは、ホイールハウスインナ3に対応し、
クロスメンバは、リヤクロスメンバ10に対応し、
サスペンション部材は、サブフレーム13、コイルスプリング14,42に対応し、
サスペンション支持部は、サスペンション取付けボルト15、スプリングリテーナ16、アッパシート40に対応し、
サスペンションはリヤサスペンション17,37に対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0062】
2…キャブサイドインナ(車体側壁)
3…ホイールハウスインナ(ホイールハウス)
6…リヤサイドフレーム
10…リヤクロスメンバ(クロスメンバ)
13…サブフレーム(サスペンション部材)
14,42…コイルスプリング(サスペンション部材、緩衝部材)
15…サスペンション取付けボルト(サスペンション支持部)
16…スプリングリテーナ(サスペンション支持部)
17,37…リヤサスペンション(サスペンション)
18a…ダンパ取付部
31…第1ガセット
32…第2ガセット
40…アッパシート(サスペンション支持部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体後壁前方の車体側壁から車幅方向内側に膨出してホイールハウスが設けられ、
該ホイールハウス下方にリヤサイドフレームが接続されると共に、
該リヤサイドフレームにサスペンション部材を支持するサスペンション支持部が設けられた
車両の後部車体構造であって、
上記ホイールハウスの上方にサスペンションのダンパ取付部が設けられ、
該ダンパ取付部近傍とリヤピラーとを連結する第1ガセットと、
上記リヤサイドフレームのサスペンション支持部近傍とダンパ取付部近傍とを連結する第2ガセットと、を備えた車両の後部車体構造。
【請求項2】
上記サスペンション部材がサブフレームであり、上記サスペンション支持部が該サブフレームの支持部である
請求項1記載の車両の後部車体構造。
【請求項3】
上記サスペンション部材が緩衝部材であり、上記サスペンション支持部が該緩衝部材の支持部である
請求項1記載の車両の後部車体構造。
【請求項4】
左右のリヤサイドフレームのサスペンション支持部近傍同士を車幅方向に結合するクロスメンバを備えた
請求項1〜3の何れか1に記載の車両の後部車体構造。
【請求項5】
上記第2ガセットがホイールハウスの車内側に設けられた
請求項1〜4の何れか1に記載の車両の後部車体構造。
【請求項6】
上記第2ガセットがホイールハウスの車外側に設けられた
請求項1〜4の何れか1に記載の車両の後部車体構造。
【請求項7】
上記第1ガセットと第2ガセットとがホイールハウスを挟んで対向するように設けられた
請求項6記載の車両の後部車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−168121(P2011−168121A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−32346(P2010−32346)
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】