説明

車両の荷室構造

【課題】車室の後方に隣接して、上面に設けられた開口部がトランクリッドにより開閉可能とされたトランクルームを有する車両において、トランクルームの収容部を、耐水性を有する水密な収納容器部材で構成した場合に、後突時等における車室への衝撃荷重の伝達を抑制可能な車両の荷室構造を提供する。
【解決手段】前記トランクルーム6の収容部を、耐水性を有する水密な収納容器部材50で構成すると共に、該収納容器部材50に、略車体前後方向からの該部材50への所定以上の荷重の入力時に、該部材50の略車体前後方向への変形を促進する折曲予定部50e(変形促進手段)を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室の後方に隣接して、上面に設けられた開口部がトランクリッドにより開閉可能とされたトランクルームを有する車両の荷室構造に関し、車両の車体構造の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
例えば、セダンタイプや、スポーツカータイプの車両においては、車体の後部に、上面に設けられた開口部がトランクリッドにより開閉可能とされたトランクルームが設けられる場合があるが、このようなタイプの車両においては、例えば車体のデザインや、車体の大きさ等の理由から、トランクルームの大きさ(容積、前後寸法、車幅寸法、深さ等)を大型の荷物を収容可能な程度に十分確保できない場合がある。その一方で、このようなタイプの車両においても、近年、例えばレジャーの際に自転車等の大型の荷物を積載可能なユーティリティ性が求められている。
【0003】
例えば特許文献1には、前記タイプの車両において、大型の荷物として自転車を積載可能なように、車室ルーフ部から車体後部の上方に左右一対のレール部材及びその支持部材を配設すると共に、該レール部材上で走行可能な台車を準備しておき、必要に応じて該台車に自転車をセットしてレール部材に装着することにより、該自転車を車室ルーフ部の上方等に積載可能とした荷物積載装置が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開平11−245735号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載の荷物積載装置は、前述のように、車室ルーフ部から車体後部の上方にレール部材等を配設する必要があるだけでなく、台車が必要であり、非常に大掛かりなものとなる。また、台車は自転車専用のものであるので、それ以外のものは積載できない。そして、その他のものを積載するためには、異なる台車が別途必要となる。
【0006】
また、特許文献1には、レール部材を取外し可能としてもよい旨の記載があるが、前述のように非常に大掛かりなものであるので、取外し、取付には多大な手間がかかり、実質的に常時取付状態となると考えられる。そして、その場合、車体のデザインが損なわれることとなる。
【0007】
なお、トランクリッドを開けた状態とすれば、トランクルームよりも大きなものを積載することが可能となるが、この場合、降雨時にはトランクルーム内に雨水が浸入してその周辺も水浸しとなる虞がある。
【0008】
そこで、本願出願人は、先の特許出願(特願2008−057469号)においてトランクルームの収容部を、耐水性を有する水密な収納容器部材で構成することを提案したが、この場合、車体後部側の剛性が高くなり、その結果、トランクルームが車室の後方に隣接して設けられている車両においては、後突時等に車室に衝撃荷重が及びやすくなる虞がある。
【0009】
そこで、本発明は、車室の後方に隣接して、上面に設けられた開口部がトランクリッドにより開閉可能とされたトランクルームを有する車両において、トランクルームの収容部を、耐水性を有する水密な収納容器部材で構成した場合に、後突時等における車室への衝撃荷重の伝達を抑制可能な車両の荷室構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明は、次のように構成したことを特徴とする。
【0011】
まず、本願の請求項1に記載の発明は、車室の後方に、上面に設けられた開口部がトランクリッドにより開閉可能とされたトランクルームを有する車両の荷室構造であって、前記トランクルームの収容部が、耐水性を有する水密な収納容器部材で構成されていると共に、該収納容器部材に、略車体前後方向からの該部材への所定以上の荷重の入力時に、該部材の略車体前後方向への変形を促進する変形促進手段が設けられていることを特徴とする。
【0012】
また、請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載の車両の荷室構造において、前記収納容器部材は、樹脂で形成されていることを特徴とする。
【0013】
また、請求項3に記載の発明は、前記請求項1または請求項2に記載の車両の荷室構造において、前記変形促進手段は、前記該収納容器部材への前記所定以上の荷重の入力時に、該部材を、略車体前後方向に蛇腹状に変形させるように構成されていることを特徴とする。
【0014】
また、請求項4に記載の発明は、前記請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の車両の荷室構造において、前記収納容器部材は、車体に設けられた凹部に上方から嵌め込まれており、該収納容器部材及び車体に、互いに係合する係合部が設けられていると共に、該収納容器部材に、前記係合部での係合を解除させる係合解除手段が設けられていることを特徴とする。
【0015】
また、請求項5に記載の発明は、前記請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の車両の荷室構造において、前記トランクリッドは、前端部を中心として回動して裏面が略上方を向く開放状態にまで開放可能に設けられていると共に、該トランクリッドを、前記開放状態で支持する支持手段が設けられていることを特徴とする。
【0016】
また、請求項6に記載の発明は、前記請求項5に記載の車両の荷室構造において、前記トランクリッドの開放状態において該リッド及び前記トランクルームの開口部の上方の空間を荷物積載空間として利用可能とする荷物固定手段が、前記リッドの閉鎖状態において車体外部に露出しない位置に固定してまたは該位置に着脱可能に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
次に、本発明の効果について説明する。
【0018】
まず、請求項1に記載の発明によれば、トランクルーム内の収容部が、耐水性を有する水密な収納容器部材で構成されているので、トランクリッドを開放した状態で走行しているときに降雨があっても、雨水は収納容器部材に溜まることとなる。すなわち、収納容器部材がない場合は、トランクルーム内に水が直接溜まったり、車体の内面を構成するパネル類が水浸しになる虞があるが、そのような不具合が防止されることとなる。
【0019】
また、該収納容器部材に、略車体前後方向からの該部材への所定以上の荷重の入力時に、該部材の略車体前後方向への変形を促進する変形促進手段が設けられているから、後突時等に、トランクルームの前方に存在する車室に衝撃荷重が加わるのが抑制されることとなる。したがって、車室内の乗員の安全性が向上することとなる。
【0020】
また、請求項2に記載の発明によれば、前記収納容器部材は樹脂で形成されているから、例えば樹脂の厚さ等を調整することにより前記所定の荷重のコントロールが容易に行える。
【0021】
また、請求項3に記載の発明によれば、前記変形促進手段は、前記該収納容器部材への前記所定以上の荷重の入力時に、該部材を、略車体前後方向に蛇腹状に変形させるように構成されているから、衝撃荷重が効果的に吸収されることとなる。したがって、車室に衝撃荷重が加わるのが良好に抑制されることとなる。また、蛇腹の段数や深さ等を調整することにより前記所定の荷重のコントロールが容易に行える。
【0022】
ところで、前記収納容器部材内には、種々の荷物類が収容されるので、汚れやすく、容易に取り外して清掃ができることが望ましい。そこで、収納容器部材を、ボルト等を用いず、車体側の凹部に上方から嵌め込むだけの構造とすることが考えられるが、このような構造の場合、トランクリッドを開放している状態のときに車体へ衝撃荷重が作用すると、収納容器部材が車外に離脱する虞がある。
【0023】
しかし、請求項4に記載の発明によれば、該収納容器部材及び車体に、互いに係合する係合部が設けられているから、車体への衝撃荷重の作用時に収納容器部材が車外に離脱するのが防止される。また、収納容器部材に、前記係合部での係合を手動解除させる係合解除手段が設けられているから、収納容器部材を車体から容易に取り外すこともできる。
【0024】
また、請求項5に記載の発明によれば、前記トランクリッドは、前端部を中心として回動して裏面が略上方を向く開放状態にまで開放可能に設けられているから、トランクルーム内及びその上方の空間を利用して、例えばトランクルームの深さよりも背の高い荷物を積載することができる。また、後述する固定手段を用いれば、トランクリッドやトランクルームの開口部の上方の空間を利用して、自転車等の荷物を積載することも可能となる。すなわち、種々の大型の荷物を、大掛かりな装置を設けることなく、かつ車体のデザインを損なうことなく積載することができる。
【0025】
また、トランクリッドを開放状態で支持する支持手段が設けられているので、開放状態のリッドが安定して支持されることとなる。したがって、車両の走行中の振動によりトランクリッドがばたついたり、それに伴って車体に悪影響が生じたりするのも防止される。
【0026】
また、請求項6に記載の発明によれば、前記トランクリッドの開放状態において該リッド及び前記トランクルームの開口部の上方の空間を荷物積載空間として利用可能とする荷物固定手段が設けられているから、トランクリッドやトランクルームの開口部の上方の空間を利用して、例えば自転車やサーフボード等の大型の荷物を安全に積載することができる。
【0027】
その場合に、前記荷物固定手段は、前記リッドの閉鎖状態において車体外部に露出しない位置に固定してまたは該位置に着脱可能に設けられているから、該固定手段がトランクリッドの閉鎖状態において外部に露出せず、車両の美観が損なわれることがない。
【0028】
また、着脱可能とされている場合においては、トランクリッドを閉鎖した状態では取り外すことにより、トランクルーム内の空間を有効に活用することもできる。また、荷物固定手段が着脱可能であるので、種々の固定手段を利用することができ、種々の荷物を積載することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態に係る車両の荷室構造について説明する。
【0030】
本実施の形態に係る車両の荷室構造は、図1に示す車両1に適用されている。この車両1は、車体2の前後方向略中間に車室3が設けられると共に該車室3の上部が開閉可能とされたオープンカータイプの車両である。
【0031】
この車両1の車体2の後部側、詳しくは車室3の後端と車体1の後端との間の部分の後部側には、上面に設けられた開口部4がトランクリッド5により開閉可能とされたトランクルーム6が設けられている。
【0032】
また、本車両1は、前述のようにオープンカータイプの車両であるが、このような車両におけるロールオーバー時の乗員保護のため、車室3とトランクリッド5との間の車体2の上面2aには、車室3内に配設された左右のシート7,7の後方においてそれぞれロールバー8,8が設けられている。このロールバー8は、図2(図1のA矢視図)に示すように、車体前後方向視で門形状をしている。
【0033】
前記トランクリッド5は、図1に示すように該リッド5の前端部の左右両端側に設けられた一対のヒンジ10,10を介して、車体2に支持されている。その場合に、本実施の形態においては、該トランクリッド5は、図3に示すように、前記ヒンジ10,10により、前端側を中心として回動して裏面が略上方を向く開放状態まで開放可能とされている。
【0034】
このヒンジ10について説明すると、該ヒンジ10は、図4に示すように、車体2に固定された支持ブラケット11と、該支持ブラケット11の上端部に設けられた支持軸12を介して回動可能に支持された半円弧形状のスワンネック型の回動アーム13とを有すると共に、支持軸12はトランクリッド5の上面と略同じ高さ位置に設けられており、これにより、仮想線で示すように、リッド5が車室3後方の車体上面2aと干渉することなく、裏面が略上方を向く開放状態に開放可能となっている。
【0035】
また、本実施の形態においては、トランクリッド5を前記(図3の)開放状態で支持する支持機構20が設けられている。
【0036】
この支持機構20は、図3に示すように、ロールバー8に設けられて開放状態のトランクリッド5の後端部が載置される支持部21と、トランクリッド5をこの開放状態で固定するロック機構22とで構成されている。
【0037】
その場合に、支持部21は、図2に示すように、ロールバー8の上辺部8bの上部後面側に設けられた段差部8aにより構成されており、該段差部8aの上面には、トランクリッド5の後端部の意匠面を保護する弾性部材22が取り付けられている。
【0038】
その場合に、支持部21の高さ位置は、図3(b)からわかるように、トランクリッド5の開放状態においてその上端αが車室3のシート7(所定位置)に着座する所定の体格を有する乗員Zの上端よりも高くなるように設定されている。
【0039】
ロック機構22は、図1、図3に示すように、前記ロールバー8に設けられたロールバー側部材30と、トランクリッド5の後部に設けられたリッド側部材40とを有している。
【0040】
まず、リッド側部材40から説明すると、該リッド側部材40は、図5に示すように、トランクリッド5の後壁5aの下面部に固定された支持ブラケット41と、一端部側が、該ブラケット41に支持された車幅方向に向く軸46を中心として回動可能なように支持された丸棒状の棒状部材42と、該棒状部材42の他端部に設けられた軸47を中心として回動可能に支持された操作部材43及び係合部材44とを有している。そして、棒状部材42は、ロック機構22の非使用時、車体2のトランクルーム後壁2cの外面に取り付けられた係止部材45の溝45a内に挟持されることにより係止されるように構成されている。
【0041】
一方、ロールバー側部材30は、図2に示すように、ロールバー8の上辺部8bの上部中央に形成された凹部8c内に取り付けられており、図6に示すように、基部30aと、該基部30aの左右の端部から立ち上がる一対の縦壁部30b,30bとを有し、これら30a,30b,30bで前記リッド側部材40の棒状部材42が嵌合可能な溝部30cを形成している。
【0042】
また、図5、図6に示すように、ロールバー側部材30の縦壁部30b,30bの内面の前部側、及びリッド側部材40の係合部材44の上部側(図5における上下)に、互いに係合可能な係合凹部30d,30d及び係合突部44a,44aが形成されている。
【0043】
そして、図7に示すように、開放状態のトランクリッド5の後端部をロールバー8の支持部21に弾性部材22を介して載置した状態で、操作部材43の操作部43aを持って棒状部材42を軸46を中心としてロールバー8側へ回動させ、仮想線で示すように係合凹部30dと係合突部44aとを係合させる。そして、この係合部を支点として操作部材43及び係合部材44を回動させながら、棒状部材42を軸46を中心としてさらに回動させ、係合部材30の係合凹部30dと係合部材44の係合突部44aとを実線で示す係合状態とさせる。そして、この係合状態においては、操作部材43が操作されるまでの間、トグル機構の原理により、ロックされた状態が保持されることとなる。すなわち、図3のようにトランクリッド5を開放状態として車両1を走行させたとしても、走行中の振動等によりトランクリッド5がばたついたり、それに伴って車体に悪影響が生じたりするのが防止されることとなる。
【0044】
したがって、本実施の形態においては、トランクリッド5を閉鎖した状態ではトランクルーム6内に収容し切れない大型の荷物でも、該リッド5を開放状態とすることにより、トランクルーム6の開口部4の上方の空間をも利用して積載し、かつその状態で走行することが可能となる。また、このような効果を、大掛かりな装置を設けることなく、かつ車体のデザインを損なうことなく実現することができる。
【0045】
ここで、このようにトランクリッド5を開放状態として車両1を走行させると、雨天時等においてはトランクルーム6内に雨水が入ることとなるので、雨水等に対する対策を講じることが好ましい。
【0046】
そこで、本実施の形態においては、図3に示すように、トランクルーム6は、車体2の構成材で形成された凹部2bと、該凹部2bの上方から嵌め込まれ、樹脂製で耐水性を有する収納容器部材50(収納部)で構成されている。
【0047】
この収納容器部材50は、図8、図9に示すように、上面が開口した(開口部4を形成する)箱状の本体部50aと、該本体部50aの上端縁に設けられたフランジ部50bとを有しており、該フランジ部50bが車体側の凹部2bの上端部に沿ってその外側に設けられた平面部2dに上方から当接することにより車体2側に支持されるようになっている。したがって、上方へ持ち上げれば、凹部2bから取り外すことができる。
【0048】
フランジ部50bの下面にはシール部材51が取り付けられており、収納容器部材50が凹部2b内に取り付けられた状態において、凹部2b内や、車体2における凹部2bに連続する部位に雨水等が侵入するのが防止されるようになっている。このように、本実施の形態においては、収納容器部材50が設けられているので、トランクルーム6の凹部2b内に水が溜まったり、車体2を構成するパネル類が水浸しになるような不具合が防止されることとなる。
【0049】
また、収納容器部材50の底面部50cには、図示しないキャップにより開閉可能なドレーン50d,50dが形成されている。これによれば、トランクリッド5を開放した状態で走行しているときに降雨があり、雨水が収納容器部材50内に溜まった場合、収納容器部材50を取り外して車外でキャップを外すことにより、水抜きを行うことができる。また、収納容器部材50が汚れた場合は、車体2から取り外した状態で水洗い清掃等を容易に行うことができる。
【0050】
また、収納容器部材50は、車体下面部近傍に至る深さを有している。これによれば、背の高い荷物をできるだけ上方に突出させず、かつ安定して収容することができる。
【0051】
ここで、本実施の形態においては、図8、図9に示すように、収納容器部材50は、車体2に車体後方からの衝撃荷重が作用して車体の後部が車体前後方向に圧縮変形しようとするときに、これを阻害しないように、該収納容器部材50には、車体後方から衝撃荷重が作用したときに、該部材50を車体前後方向に蛇腹状に折り畳み可能とする複数の折曲予定部50e…50e(変形促進手段)が形成されている。
【0052】
これらの折曲予定部50e…50eはそれぞれ、この収納容器部材50の本体部50aの左右の側面部、底面部、及びフランジ部50bに形成された複数の筋状の溝部50f…50fにより構成されている。これらの溝部50f…50fは、図10に示すように、これらの面部の一面側及び他面側に交互に形成されており、収納容器部材50に車体後方から所定以上の衝撃荷重が入力されると、これらの溝部50f…50fにおいて交互に山折れ、谷折れし、その結果、図11に示すように、収納容器部材50が蛇腹状に前後に折り畳まれるようになっている。
【0053】
したがって、後突時等に、トランクルーム6の前方に位置する車室3に衝撃荷重が加わるのが抑制されることとなる。すなわち、車体2へ衝撃荷重が作用したときにおける車室3内の乗員の安全性が向上することとなる。
【0054】
また、収納容器部材50は樹脂で形成されているから、例えば樹脂の厚さ等を調整することにより前記所定の荷重のコントロールが容易に行える。
【0055】
また、折曲予定部50e…50e(変形促進手段)は、該収納容器部材50への前記所定以上の荷重の入力時に、該部材50を、略車体前後方向に蛇腹状に変形させるように構成されているから、衝撃荷重が効果的に吸収されることとなる。したがって、車室3に衝撃荷重が加わるのが良好に抑制されることとなる。また、蛇腹の段数や深さ等を調整することにより前記所定の荷重のコントロールが容易に行える。
【0056】
ところで、収納容器部材50内には、種々の荷物類が収容されるので、汚れやすく、容易に取り外して清掃ができることが望ましい。そこで、収納容器部材50を、ボルト等を用いず、車体側の凹部に上方から嵌め込むだけの構造としている。しかし、このような構造の場合、トランクリッド5を開放している状態のときに車体2へ衝撃荷重が作用すると、収納容器部材50が車外に離脱する虞がある。
【0057】
そこで、図8、図9に示すように、本実施の形態においては、収納容器部材50の本体部50aの前面部及び後面部にはそれぞれ、車幅方向に延び、容器内側に突出する凹部50g,50g(係合部)が形成されている。また、車体2の凹部2bの前面部及び後面部にはそれぞれ、車幅方向に延び、収納容器部材50側に突出する凸部2e,2e(係合部)が形成されている。これらの凸部2e,2eは、収納容器部材50が凹部2b内に装着された状態において収納容器部材50の凹部50g,50gに対応する位置に形成されており、この装着状態において、これらの収納容器部材50側の凹部50g,50gと、車体2側の凸部2e,2eとが係合するようになっている。
【0058】
また、収納容器部材50の本体部50aの前面部及び後面部にはそれぞれ、前記凹部50g,50gの上方において、該部材50の内側に突出する取手部50i,50iが形成されている。また、図12に示すように、取手部50i,50iを収納容器部材50の中心側に引っ張ると、仮想線で示すように、収納容器部材50の本体部50aの前面部及び後面部が収納容器部材50のの中心側に撓み変形可能なように形成されており(例えばこれらの面部の厚さがこのように変形可能なように設定されており)、これにより、車体2a側の凸部2eと収納容器部材50側の凹部50gとの係合を手動解除可能に構成されている。
【0059】
このように、本実施の形態においては、収納容器部材50の本体部50a及び車体2の凹部2bに、互いに係合する凸部2e,2e及び凹部50g,50g(係合部)が設けられているから、車体2への衝撃荷重の作用時においても収納容器部材50が車外に離脱するのが防止される。また、収納容器部材50に、前記係合部での係合を手動解除させる取手部50g,50g(係合解除手段)が設けられているから、例えば収納容器部材50の洗浄時等に収納容器部材50を車体2から容易に取り外すこともできる。
【0060】
なお、本実施の形態においては、変形促進手段として折曲予定部50e…50eを設けたが、折曲予定部50e…50eに代えて、予め完全には前後に収縮していない蛇腹状に形成された蛇腹状部を設け、該蛇腹状部を衝撃荷重でさらに収縮可能に構成してもよい。また、本体部50aの側面部、底面部、及び左右のフランジ部の強度を、前面部や後面部等の強度よりも弱くする、すなわち脆弱にすることにより、変形促進手段を構成することも可能である。
【0061】
次に、荷物の積載例を説明する。
【0062】
まず、図13は、トランクルーム6の深さよりも背の高い荷物L1を積載した例を示しており、このように本実施の形態に係る荷室構造によれば、トランクルーム6の深さよりも背の高い荷物でも積載できる。
【0063】
その場合に、支持部21の高さ位置は、前述のように、トランクリッド5の開放状態においてその上端αが車室3の所定位置に着座する所定の体格を有する乗員Zの上端よりも高くなるように設定されているから、万一、後突等があり、荷物L1がトランクルーム6から前方に飛び出したとしても、該トランクリッド5により荷物L1が受け止められ、該荷物L1の乗員への衝突が阻止されることとなる。
【0064】
図14は、上部側がトランクルーム6の開口部4よりも前後に広がった形状の植木等の荷物L2を積載した例を示しており、このように本実施の形態に係る荷室構造によれば、開口部4よりも前後に広がった形状の荷物でも積載できる。
【0065】
ここで、本実施の形態においては、図3に示すように、トランクリッド5の裏面(例えばインナパネル)に、後述するアタッチメント等を取付可能な複数の取付部5b…5bが設けられている。そして、トランクリッド5を開放状態としたときに、取付部5b…5bにアタッチメントを固定することにより、トランクリッド5及びトランクルーム6の開口部4の上方の空間を、荷物積載空間として利用することができるようになっている。
【0066】
例えば、図15は、アタッチメント60として支持ブラケット61,62を利用して、トランクリッド5及びトランクルーム6の開口部4の上方の空間に、自転車L3を積載した例を示している。
【0067】
これらの支持ブラケット61,62のうち、この前部側の支持ブラケット61は、図16(a)に示すように、左右一対のボルト挿通孔61a,61aが設けられた基部61bと、該基部61bに立設され、上端部にボルト挿通孔61c,61cが設けられた左右一対の立設部61d,61dとを有している。
【0068】
一方、後側の支持ブラケット62は、図16(b)に示すように、左右一対のボルト挿通孔62a,62aが設けられた基部62bと、該基部62bに立設され、上端部に溝62c,62cが設けられた左右一対の立設部62d,62dとを有している。
【0069】
そして、図17(a)に示すように、前側の支持ブラケット61側についてはは、蝶ボルトBBを、トランクリッド5裏面の取付部5bの内面に設けられたナットWNに、基部61bのボルト挿通孔61a,61a、及びトランクリッド5裏面の取付部5bに設けられたボルト挿通孔5h,5hを介して螺合させることにより固定する。また、自転車のフロントフォークFFの下端部の前輪軸受部Fa(溝部や孔部)と、前側の支持ブラケット61の立設部61dの貫通孔61cとに、ハンドル付ボルトLBを挿通する。そして、該ボルトLBの先端側にハンドル付ナットLNを螺合させてフロントフォークFの前輪軸受部Faを、前側の支持ブラケット61に固定する。
【0070】
一方、図17(b)に示すように、後側の支持ブラケット62側については、蝶ボルトBBを、車体2の凹部2b上端周囲の平面部2dの下面に設けられたナットWNに、基部62bのボルト挿通孔62a,62a、収納容器部材50のフランジ部50bのボルト挿通孔50h,50h、及び前記平面部2dに設けられたボルト挿通孔2h,2hを介して螺合させることにより固定する。また、自転車L3の後輪軸ボルトBRの両端側を左右の立設部62d,62dの溝62cに上方から挿入すると共に、該ボルトBRの左右の端部にハンドル付ナットLNを螺合させることにより、自転車の後部側を、後側の支持ブラケット62に固定する。
【0071】
このように、自転車L3の前部側及び後部側をアタッチメント61,62を介してトランクリッド5及び車体2に固定することにより、トランクリッド5及びトランクルーム6の開口部4の上方の空間を自転車L3積載空間として利用することができるようになる。
【0072】
図18は、アタッチメント70を利用して、トランクリッド5及びトランクルーム6の開口部4の上方の空間に、サーフボードL4を積載した例を示している。
【0073】
このアタッチメント70は、図19に示すように、左右一対の支持ブラケット71,71と、ポール部材72とで構成されている。
【0074】
支持ブラケット71,71は、左右一対のねじ挿通孔71a,71aが設けられた基部71bと、該基部71bに立設され、上端部にねじ挿通孔71c,71cが設けられた左右一対の立設部71d,71dとを有している。
【0075】
ポール部材72は、支持ブラケット71,71の上端側に、ねじ挿通孔71c,71cに挿通されたボルト73,73によりネジ止めされている。すなわち、分解可能となっている。
【0076】
そして、左右の支持ブラケット71,71の基部71b、71bをトランクリッド5裏面の左右の取付部5b,5bにそれぞれ、前記支持ブラケット61同様に蝶ネジで固定する。
【0077】
そして、図5のようにサーフボードL4の下部側をトランクルーム6内に収容すると共に、上部側をアタッチメント70のポール部材72に紐等で固定する。これにより、トランクリッド5及びトランクルーム6の開口部4の上方の空間をサーフボードL4積載空間として利用することができるようになる。
【0078】
なお、このアタッチメント70によれば、サーフボードL4以外にも、例えば物干し竿や、弓、板材等、種々の長い荷物を積載することができる。
【0079】
このように本実施の形態によれば、アタッチメント60,70は、前記トランクリッド5または車体2に対して着脱可能とされているから、トランクリッド5を閉鎖した状態ではアタッチメント60,70を取り外すことにより、トランクルーム6内の空間を有効に活用することもできる。また、種々のアタッチメントを利用することができ、種々の荷物を積載することができる。
【0080】
該アタッチメント60,70は、前記リッド5の閉鎖状態において車体外部に露出しない位置(取付部5b等)に着脱可能とされているから、トランクリッド5の閉鎖状態において外部に露出せず、車両1の美観が損なわれることがない。
【0081】
なお、荷物固定手段が比較的小さいものであれば、トランクリッド5の閉鎖状態において外部に露出しない位置に、トランクリッド5の裏面や収納容器部材50等に一体的に設けてもよく、この場合、アタッチメントの取付、取外しの手間が軽減されることとなる。
【0082】
また、前記実施の形態においては、自転車搭載用のアタッチメント60と、サーフボード等搭載用のアタッチメント70について説明したが、その他の物品用のアタッチメントを用意すれば、さらに多種の荷物を搭載することができる。
【0083】
なお、本実施の形態においては、オープンカータイプの車両に適用した場合について説明したが、オープンカータイプでない例えばセダンタイプの車両にも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、車室の後方に隣接して、上面に設けられた開口部がトランクリッドにより開閉可能とされたトランクルームを有する車両において、トランクルームの収容部を、耐水性を有する水密な収納容器部材で構成した場合に、後突時等における車室への衝撃荷重の伝達を抑制可能な車両の荷室構造を提供することができ、自動車産業に広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の実施形態に係る車両の荷室構造が適用された車両の平面図((a図))及び側面図((b)図)である。
【図2】図1のA矢視図(ロールバー部分の拡大図)である。
【図3】トランクリッドを開放した状態における図1相当の図である。
【図4】図1の矢印B−Bによる拡大断面図(ヒンジ部分の拡大図)である。
【図5】(a)図は図1の矢印C−Cによる拡大断面図(ロック機構のリッド側部材部分の拡大図)、(b)図は(a)図の矢印D−Dによる断面図である。
【図6】(a)図は図2の矢印E部分を車両前方から見た拡大図(ロック機構の車体側部材部分の拡大図)、(b)図は(a)図の矢印F−Fによる断面図である。
【図7】図3の矢印G−Gによる拡大断面図(ロック機構部分の拡大図)である。
【図8】図3の矢印H−Hによる拡大断面図(トランクルーム部分の拡大図)である。
【図9】収納容器部材の単品斜視図である。
【図10】図8の矢印L−Lによる拡大断面図である。
【図11】車体後方から衝撃荷重が入力された場合の作用図である。
【図12】図8の矢印M部分の拡大図である。
【図13】荷物積載例である(その1、箱の場合)。
【図14】荷物積載例である(その2、植木の場合)
【図15】荷物積載例である(その3、自転車の場合)。
【図16】自転車固定用アタッチメントの単品斜視図である。
【図17】(a)図は図15の矢印J−Jによる拡大断面図(トランクリッドへのアタッチメントの取付部、及び自転車のアタッチメントへの取付部の拡大図)、(b)図は図15の矢印K−Kによる拡大断面図(トランクルーム後壁へのアタッチメントの取付部、及び自転車のアタッチメントへの取付部の拡大図)である。
【図18】荷物積載例である(その4、サーフボードの場合)。
【図19】サーフボード固定用アタッチメントの単品斜視図である。
【符号の説明】
【0086】
1 車両
2 車体
2e 凸部(係合部)
3 車室
4 開口部
5 トランクリッド
6 トランクルーム
8 ロールバー
10 ヒンジ機構
20 支持機構(支持手段)
50 収納容器部材(収納容器部材、収納部)
50e 折曲予定部(変形促進手段)
50f 凹部(係合部)
50g 取手部(係合解除手段)
60,70 アタッチメント(荷物固定手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室の後方に、上面に設けられた開口部がトランクリッドにより開閉可能とされたトランクルームを有する車両の荷室構造であって、
前記トランクルームの収容部が、耐水性を有する水密な収納容器部材で構成されていると共に、
該収納容器部材に、略車体前後方向からの該部材への所定以上の荷重の入力時に、該部材の略車体前後方向への変形を促進する変形促進手段が設けられていることを特徴とする車両の荷室構造。
【請求項2】
前記請求項1に記載の車両の荷室構造において、
前記収納容器部材は、樹脂で形成されていることを特徴とする車両の荷室構造。
【請求項3】
前記請求項1または請求項2に記載の車両の荷室構造において、
前記変形促進手段は、前記該収納容器部材への前記所定以上の荷重の入力時に、該部材を、略車体前後方向に蛇腹状に変形させるように構成されていることを特徴とする車両の荷室構造。
【請求項4】
前記請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の車両の荷室構造において、
前記収納容器部材は、車体に設けられた凹部に上方から嵌め込まれており、
該収納容器部材及び車体に、互いに係合する係合部が設けられていると共に、
該収納容器部材に、前記係合部での係合を手動解除させる係合解除手段が設けられていることを特徴とする車両の荷室構造。
【請求項5】
前記請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の車両の荷室構造において、
前記トランクリッドは、前端部を中心として回動して裏面が略上方を向く開放状態にまで開放可能に設けられていると共に、
該トランクリッドを、前記開放状態で支持する支持手段が設けられていることを特徴とする車両の荷室構造。
【請求項6】
前記請求項5に記載の車両の荷室構造において、
前記トランクリッドの開放状態において該リッド及び前記トランクルームの開口部の上方の空間を荷物積載空間として利用可能とする荷物固定手段が、前記リッドの閉鎖状態において車体外部に露出しない位置に固定してまたは該位置に着脱可能に設けられていることを特徴とする車両の荷室構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2009−214576(P2009−214576A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−57502(P2008−57502)
【出願日】平成20年3月7日(2008.3.7)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】