説明

車両の通電制御装置

【課題】オイルヒータへの通電を的確に行いつつ、潤滑油の劣化及びオイルヒータの故障を抑制する。
【解決手段】車両の通電制御装置は、内燃機関における潤滑経路に設けられるオイルヒータと、オイルヒータに通電可能である蓄電手段とを備える車両において、オイルヒータへの通電を制御する。該通電制御装置は、オイルヒータを通過するオイルの温度たるオイル温度、及びオイルヒータ本体の温度たるヒータ温度のうちの少なくとも一方を特定する第1温度特定手段と、蓄電手段の蓄電残量が所定量より大きい場合、オイル温度及びヒータ温度のうちの少なくとも一方に応じて、オイルヒータへの通電を行う通電制御手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばオイルヒータ等の、潤滑油を加熱する潤滑油加熱装置を備える車両において、該潤滑油加熱装置への通電を制御する通電制御装置の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置として、電気自動車において、バッテリ残容量が設定値より大きい場合であって、潤滑油の油温が所定の温度より低い場合、オイルヒータへの通電を行い、潤滑油を加熱するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1では、潤滑油を加熱する場合、油温に応じた通電量がオイルヒータに流される。
【0003】
また、エンジンオイルを加熱するヒータ、及び/又は触媒を活性化するためのヒータへの電力供給量を制御する装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2では、減速時、発電機の出力電圧が高電圧に設定されると共に、発電機の発電能力に余裕がある場合、ヒータへの電力供給量が増加される。
【0004】
また、排気浄化装置と、該排気浄化装置を含むエンジン部分の加熱を行う電気加熱手段とを備えるハイブリッド車両において、車両の要求駆動力、及びバッテリの充電残量に基づいてエンジンの運転が必要と判断された場合、要求駆動力、充電残量及びエンジン各部の温度に基づいて、電気加熱手段の通電制御を行うものが提案されている(例えば、特許文献3参照)。特許文献3では、充電残量が所定値以下である場合、エンジン始動に最低限必要なグロープラグの通電制御のみが行われる。また、充電残量が所定値を上回り、充電上限閾値未満である場合、グロープラグの通電制御に加え、排気浄化性能を高めるための電気加熱手段の通電制御が行われる。更には、充電残量が充電上限閾値以上である場合、グロープラグ及び電気加熱手段の通電制御に加え、冷却水加熱用のブロックヒータの通電制御が行われる。尚、これら通電制御は、電気加熱手段及びグロープラグの加熱段階に対応している。
【0005】
また、電熱触媒を備えるハイブリッド車両において、減速時に電熱触媒を暖機する際、少なくともモータの回生電力を電熱触媒に供給するものが提案されている(例えば、特許文献4参照)。特許文献4では、電熱触媒の温度、及びバッテリの充電量に基づいて、モータと電熱触媒とバッテリとの間の電力供給回路が切り替え可能である。
【0006】
また、ハイブリッド車両において、バッテリの充電量が基準値より大きい場合、エンジンオイルの温度が摂氏80度から85度の間に保たれるように、エンジンオイルをヒータで加熱するものが提案されている(例えば、特許文献5参照)。
【0007】
また、ハイブリッド車両において、バッテリの充電力が第1閾値より大きい、又は第2閾値より小さい場合、モータの回生電力を直接加熱触媒に供給し、バッテリの充電量が第1閾値より小さく第2閾値より大きい場合、少なくとも回生電力をバッテリに充電し、バッテリの蓄電電力を加熱触媒に供給するものが提案されている(例えば、特許文献6参照)。特許文献6では、加熱触媒の温度が温度閾値より高い場合、加熱触媒への回生電力の供給が停止される。
【0008】
更には、エンジン水温及びエンジン油温に応じて、冷却水循環経路切替弁及びオイル流量制御弁、並びにオイルヒータへの通電を制御するものが提案されている(例えば、特許文献7参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平9−4431号公報
【特許文献2】特開2006−101588号公報
【特許文献3】特開2009−096356号公報
【特許文献4】特開2009−214703号公報
【特許文献5】特開2009−281330号公報
【特許文献6】特開2009−227038号公報
【特許文献7】特開2005−325790号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特許文献1に記載の装置では、オイルヒータへの通電量が油温に対応している。このため、例えば通電直前に、余熱が冷めない内に測定された油温に対応する通電量がヒータに供給されると、油温或いはオイルヒータ本体が過上昇することで、潤滑油の劣化やオイルヒータの故障が生じ兼ねないといった技術的問題点がある。
【0011】
本発明は、例えば上述した問題点に鑑みなされたものであり、オイルヒータへの通電を的確に行いつつ、潤滑油の劣化及びオイルヒータの故障を抑制し得る車両の通電制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決するために、本発明に係る第1の車両の通電制御装置は、内燃機関における潤滑経路に設けられるオイルヒータと、該オイルヒータに通電可能である蓄電手段とを備える車両において、前記オイルヒータへの通電を制御する通電制御装置であって、前記オイルヒータを通過するオイルの温度たるオイル温度、及び前記オイルヒータ本体の温度たるヒータ温度のうちの少なくとも一方を特定する第1温度特定手段と、前記蓄電手段の蓄電残量が所定量より大きい場合、前記特定されたオイル温度及びヒータ温度のうちの少なくとも一方に応じて、前記オイルヒータへの通電を行う通電制御手段とを備える。
【0013】
本発明に係るオイルヒータは、潤滑油(以下、「オイル」と称する)を巡回させるための潤滑経路に設けられており、該潤滑経路を通って内燃機関における回転部及び摺動部に供給されるオイルを昇温可能に構成される。オイルヒータは、一般的な特性として、オイルを加熱する形態として、比較的低い電力で長時間の通電を行うよりも、例えば内燃機関の始動時等に、比較的高い電力で短時間の通電を行った方が、同一のエネルギーを用いた場合であってもオイルを効果よく暖めることが可能である。オイルは、一般的には、摂氏90度前後で使用される場合、劣化し難い。
【0014】
本発明に係る蓄電手段は、例えばエンジン及び/又は発電機からの発電電力を充電可能であると共に、例えばオイルヒータやヒータ付触媒等の電機に対し蓄電電力(言い換えれば、通電電力)を放電可能に構成されるバッテリを示す。蓄電手段について、一般的な特性として、蓄電量(以下、適宜「蓄電残量」と称する)が全蓄電量のうちの60パーセント程度の状態で蓄電手段を使用する場合、実際の使用可能期間が本来の期間より短くなり、劣化が早まる場合がある。ここで、オイルヒータに係る「通電を行う」とは、オイルヒータに対し予め設定された条件で電力供給を行うことを示す。この電力供給に係る「条件」とは、具体的には、少なくともオイル温度及びヒータ温度が各々の上限温度を超えないように設定される電力量及びその供給時間を示す。こうした条件では、設定される電力量及び/又はその供給時間を縮小した通電が行われてもよい。
【0015】
本発明に係る第1温度特定手段は、オイル温度及びヒータ温度のうちの少なくとも一方を特定する。ここで、オイル温度及びヒータ温度に係る「特定」とは、例えば温度センサ等の温度計測器を用いて各々の温度が直接に出力される、或いは一又は複数のパラメータを取得し所定の方程式を用いて各々の温度が算出或いは推定されることを示す。上記温度計測器、及びパラメータ取得のための計器等は、例えばオイルヒータの近傍で、潤滑経路におけるオイルヒータの上流側及び下流側のいずれに設置されてもよい。
【0016】
本発明に係る通電制御手段は、例えば、一又は複数のCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、各種プロセッサ又は各種コントローラ、或いは更にROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、バッファメモリ又はフラッシュメモリ等の各種記憶手段等を適宜に含み得る、単体或いは複数のECU(Electronic Controlled Unit)等の各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等の形態を採り得る。
【0017】
本発明の第1の車両の通電制御装置に係る通電制御手段は、蓄電手段の蓄電残量が所定量より大きい場合、第1温度特定手段により特定されたオイル温度及びヒータ温度のうちの少なくとも一方に応じて、オイルヒータへの通電を行う。ここで、蓄電残量に係る「所定量」とは、蓄電手段の劣化に影響を及ぼさない蓄電残量の最低値、及び通電のための供給電力に基づいて決められ、通電前に、少なくとも該供給電力に相当する蓄電残量を保持するか否かを判定するための蓄電残量の判定値である。また、オイル温度及びヒータ温度に係る「応じて」とは、オイル温度又はヒータ温度と、各々の所定温度とを比較した結果に対応して通電を行うことを示す。具体的には、オイル温度が一の所定温度より低い場合、オイルヒータへの通電を行う。又はヒータ温度が他の所定温度より低い場合、該通電を行う。又はオイル温度が一の所定温度より低く、且つヒータ温度が他の所定温度より低い場合、該通電を行う。
【0018】
本発明の第1の車両の通電制御装置によれば、蓄電残量が所定量より大きい場合、第1温度特定手段により、オイル温度及びヒータ温度のうちの少なくとも一方が特定される。すると、通電制御手段により、オイル温度に応じてオイルヒータへの通電を行うことで、オイルが過上昇することがなく、オイルの劣化を抑制することが可能である。又は通電制御手段により、ヒータ温度に応じてヒータへの通電を行うことで、オイルヒータ本体が過上昇することがなく、オイルヒータの故障を抑制することが可能である。又は通電制御手段により、オイル温度及びヒータ温度に応じてヒータへの通電を行う。この際、オイル温度及びヒータ温度に基づいて、オイルヒータへの通電に最適なタイミングを取ると共に、オイル温度及びヒータ温度に基づいて、オイル温度及びヒータ温度が各々の上限温度を超えない程の適当な通電電力を供給する。このように、最適な通電タイミングで適当な通電電力をオイルヒータに供給することで、オイルヒータへの通電を的確に行いつつ、オイルの劣化及びオイルヒータの故障を抑制することが可能である。
【0019】
本発明に係る第1の車両の通電制御装置の一の態様では、前記特定されたオイル温度が第1所定温度より低いか否かを判定する第1判定手段と、前記特定されたヒータ温度が第2所定温度より低いか否かを判定する第2判定手段とを更に備え、前記特定されたオイル温度は、前記潤滑経路における前記オイルヒータより上流を通過する前記オイルの温度であって、前記通電制御手段は、前記第1判定手段により前記オイル温度が前記第1所定温度より低いと判定され、且つ前記第2判定手段により前記ヒータ温度が前記第2所定温度より低いと判定される場合、前記オイルヒータへの通電を行う。
【0020】
本発明に係る第1判定手段及び第2判定手段の各々は、例えばECU等の処理ユニットであって、通信制御手段と別体に構成されてもいいし、通信制御手段に含まれていてもよい。ここで、第1判定手段に係る「第1所定温度」とは、例えばオイルヒータ上流側を通過するオイルの上限温度であって、通電の要否を判定するための該オイル温度の判定値を示す。また第2判定手段に係る「第2所定温度」とは、例えばヒータの上限温度であって、通電の要否を判定するためのヒータ温度の判定値を示す。このような第1及び第2所定温度について、典型的には、第1所定温度より第2所定温度の方が高い温度をとる。
【0021】
この態様によれば、第1判定手段により、オイル温度が第1所定温度より低いと判定され、且つ第2判定手段により、ヒータ温度が第2所定温度より低いと判定されると、通信制御手段により、オイルヒータへの通電が行われる。これにより、最適な通電タイミングで適当な通電量をオイルヒータに供給することで、オイルヒータへの通電を的確に行うことが可能である。言い換えれば、オイルヒータの稼働効率を高めることが可能である。
【0022】
本発明に係る車両の通電制御装置の他の態様では、前記潤滑経路を巡回する前記オイルの流量たるオイル流量を、前記特定されたオイル温度、及び前記内燃機関における機関回転速度に基づいて特定する流量特定手段を更に備え、前記第1温度特定手段は、前記特定されたオイル温度及びオイル流量に基づいて前記ヒータ温度を特定してもよい。
【0023】
本発明に係る流量特定手段は、例えばECU等の処理ユニットであって、通信制御手段と別体に構成されてもいいし、通信制御手段に含まれていてもよい。ここで、流量特定手段に係る「オイル流量」とは、具体的には、潤滑経路において分岐経路を除いた一経路の一断面を単位時間当たりに通過するオイルの質量を示す。また、オイル流量に係る「特定」とは、オイル温度及び機関回転速度をパラメータとし、所定のマップを用いて算出或いは推定することを示す。
【0024】
この態様によれば、ヒータ温度を特定するべく、先ず流量特定手段により、オイル流量が特定される。すると、特定されたオイル流量、及びオイル温度に基づいて、第1温度特定手段により、ヒータ温度が特定される。これにより、ヒータ温度を特定するための温度計測器を設置する必要がないので、該温度計測器分のコストを削減することが可能である。
【0025】
本発明に係る車両の通電制御装置の他の態様では、前記第1温度特定手段は、前記オイルヒータの抵抗値に基づいて前記ヒータ温度を特定してもよい。
【0026】
この態様によれば、第1温度特定手段により、ヒータ温度に応じて変化するオイルヒータの抵抗値に基づいて、ヒータ温度が特定される。ここで、ヒータ温度に係る「特定」とは、オイルヒータの抵抗値をパラメータとし、所定の方程式を用いて算出或いは推定することを示す。これにより、ヒータ温度を特定するための温度計測器を設置する必要がないので、該温度計測器分のコストを削減することが可能である。
【0027】
本発明に係る第2の車両の通電制御装置は、内燃機関における潤滑経路に設けられるオイルヒータと、前記内燃機関における排気経路に設けられるヒータ付触媒と、前記オイルヒータ及び前記ヒータ付触媒のうちの少なくとも一方に通電可能である蓄電手段とを備える車両において、前記オイルヒータ及び前記ヒータ付触媒への通電を制御する通電制御装置であって、前記オイルヒータを通過するオイルの温度たるオイル温度、及び前記オイルヒータ本体の温度たるヒータ温度のうちの少なくとも一方を特定する第1温度特定手段と、前記ヒータ付触媒の温度たる触媒温度を特定する第2温度特定手段と、前記第1温度特定手段により特定されたオイル温度、及び前記第2温度特定手段により特定された触媒温度のうちの少なくとも一方に基づいて、前記オイルヒータ及び前記ヒータ付触媒に対する、前記蓄電手段における供給可能電力の分配を行うための分配比率を特定する分配比率特定手段と、前記特定された分配比率で前記分配が行われるように、前記オイルヒータ及び前記ヒータ付触媒への通電を行う通電制御手段とを備える。
【0028】
本発明に係るヒータ付触媒は、例えばEHC(Electric Heated Catalyst)等の電気加熱式触媒であって、排気経路に設けられ、該排気経路を通って大気に排出される排ガス中の有害物質を浄化可能に構成される。
【0029】
本発明に係る第2温度特定手段において、触媒温度に係る「特定」とは、例えば温度センサ等の温度計測器を用いて触媒温度が直接に出力される、或いは一又は複数のパラメータを取得し所定の方程式を用いて触媒温度が算出或いは推定されることを示す。
【0030】
本発明に係る分配比率特定手段は、第2温度特定手段により特定された触媒温度、及び第1温度特定手段により特定されたオイル温度のうちの少なくとも一方に基づいて、供給可能電力の分配比率が特定される。ここで、蓄電手段に係る「供給可能電力」とは、例えばオイルヒータ及びヒータ付触媒に対し供給可能である通電電力の合計値を示す。また、分配比率に係る「特定」とは、オイル温度及び触媒温度をパラメータとし、所定のマップを用いて一義的な分配比率を出力或いは決定する、又はオイル温度若しくは触媒温度に基づいて所定の条件を付した分配比率を算出或いは決定することを示す。
【0031】
本発明の第2の車両の通電制御装置によれば、分配比率特定手段により、第1温度特定手段により特定されたオイル温度、及び第2温度特定手段により特定された触媒温度のうちの少なくとも一方に基づいて、供給可能電力の分配比率が特定される。具体的には、例えば当該車両が加速する、一定速で走行する又は停止中である場合、オイル温度及び触媒温度に基づいて、一義的な分配比率が特定される。又は当該車両が減速する場合、触媒温度に基づいて、ヒータ付触媒の通電に要する電力を決定し、決定された電力をヒータ付触媒への通電用に優先的に確保するように、分配比率が特定される。このようにヒータ付触媒への通電を優先する理由として、減速時に排ガス量が比較的少なくなり触媒温度が上昇し易いこと、またこうした時期に次回の加速要求に備えて予め触媒を暖めることで、比較的短時間の通電で触媒を効率的に活性化することが挙げられる。
【0032】
続いて、分配比率が特定されると、通電制御手段により、分配比率特定手段により特定された分配比率で供給可能電力の分配が行われるように、オイルヒータ及びヒータ付触媒への通電が行われる。ここで、ヒータ付触媒に係る「通電を行う」とは、ヒータ付触媒に対し予め設定された条件で電力供給を行うことを示す。この電力供給に係る「条件」とは、具体的には、少なくとも触媒温度が上限温度を超えないように設定される電力量及びその供給時間を示す。
【0033】
これにより、オイルヒータに対し通電を的確に行いつつ、オイルの劣化及びオイルヒータの故障を抑制することが可能である。他方、ヒータ付触媒に対し通電を的確に行いつつ、ヒータ付触媒の故障を抑制することが可能である。
【0034】
本発明に係る第2の車両の通電制御装置の一の態様では、前記特定された触媒温度に基づいて、前記ヒータ付触媒への通電のために要求される要求電力を特定する要求電力特定手段を更に備え、前記分配比率特定手段は、当該車両が減速する場合、(i)前記特定された要求電力と、(ii)前記供給可能電力から前記特定された要求電力を減算した残りの電力との比率を、前記ヒータ付触媒対前記オイルヒータの前記分配比率として特定する。
本発明に係る要求電力特定手段は、例えばECUであって、触媒温度に基づいて、ヒータ付触媒における要求電力を特定する。ここで、要求電力に係る「特定」とは、触媒の特性から導かれる関係式を用いて、一義的に算出、推定或いは規定することを示す。
【0035】
この態様によれば、走行状況に応じて、ヒータ付触媒への通電に要する電力を優先的に確保するように分配比率が特定される。具体的には、分配比率特定手段により、減速時に、要求電力特定手段により特定された要求電力と、該要求電力を供給可能電力から減算した残りの電力との比率が分配比率として特定される。
【0036】
分配比率が特定されると、通電制御手段により、ヒータ付触媒に対し、要求電力に相当する割合の通電電力が供給されると共に、オイルヒータに対し、供給可能電力から、ヒータ付触媒への通電電力を減算した残りの電力に相当する割合の通電電力が供給される。
【0037】
これにより、減速時を利用して、オイルヒータよりヒータ付触媒を優先する通電を行うことで、触媒を効率的に活性化し、排ガスの浄化作用を高めることが可能である。
【0038】
本発明に係る第2の車両の通電制御装置の他の態様では、前記供給可能電力は、前記蓄電手段の蓄電残量に、当該車両の減速により出力される回生電力を加算した値であってもよい。
【0039】
当該車両は、回生電力を発生させる例えばモータジェネレータ等の発電機を更に備える。この態様によれば、蓄電残量と回生電力との合計値たる供給可能電力を常時正確に把握し、把握する供給可能電力を分配する比率を特定することで、オイルヒータ及びヒータ付触媒に対し通電を的確に行うことが可能である。
【0040】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する実施するための形態から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の第1実施形態に係る通電制御システムの構成を概念的に表すブロック図である。
【図2】図1のオイルヒータへの通電の必要性を判定するための、オイル温度及びヒータ温度の上限温度を示すグラフである。
【図3】本発明の第1実施形態に係る第1通電制御処理を示すフローチャートである。
【図4】本発明の第2実施形態に係る通電制御システムの構成を概念的に表すブロック図である。
【図5】図4のバッテリにおける供給可能電力を説明するグラフである。
【図6】図4のオイルヒータ及びEHCに対する供給可能電力の分配比率の傾向を示すマップである。
【図7】車速に応じた、図4のオイルヒータ及びEHCへの供給電力の推移を示すグラフである。
【図8】本発明の第2実施形態に係る第2通電制御処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。
<第1実施形態>
<第1実施形態の構成>
始めに、図1を参照し、本発明の第1実施形態に係る通電制御システム100の構成について説明する。ここに、図1は、通電制御システム100の構成を概念的に表すブロック図である。
【0043】
図1において、通電制御システム100は、主として、エンジン2、オイルヒータ8、バッテリ10、スイッチ16及びECU20を備える。
【0044】
エンジン2は、本発明に係る「内燃機関」の一例たるガソリンエンジンであって、車両の主たる動力源として機能するように構成されている。尚、本発明における「内燃機関」とは、燃料種別、燃料の供給態様、燃料の燃焼態様、吸排気系の構成及び気筒配列等、その物理的、機械的又は電気的構成を問わない各種の態様を採り得る、燃料の燃焼により動力を生成可能な機関を包括する概念である。係る概念を満たす限りにおいて、本発明の内燃機関は、各種の態様を採り得る。
【0045】
エンジン2には、車速センサ3が取り付けられる。車速センサ3は、車速を検出することが可能に構成されたセンサである。車速センサ3は、ECU20と電気的に接続されており、検出された車速は、ECU20によって一定又は不定の周期で参照される。
【0046】
エンジン2に組み込まれる潤滑装置は、主として、オイルヒータ8の他、オイル通路1の上流側から順番に、オイルポンプ4、オイルフィルタ5、制御弁6及びオイルクーラ7から成る。
【0047】
エンジン2の回転部及び摺動部を沿って配置されるオイル通路1を巡回するオイル(エンジンオイル)は、オイルポンプ4で吸引、圧送され、オイルフィルタ5を介して制御弁6に到達する。オイル通路1は、制御弁6でオイルクーラ側通路及びオイルヒータ側通路に分岐する。制御弁6は、ECU20によってオイル温度に応じて開弁状態の切り替えが行われることで、その下流に設置されるオイルクーラ7又はオイルヒータ8に向けてオイルが流れるように構成されている。オイルクーラ7は、走行時に取り込まれる空気、或いは冷却水を利用してオイルを冷却するように構成されている。オイルヒータ8は、電熱器9に通電を行うことで、オイルを暖めるように構成されている。オイルクーラ側通路及びオイルヒータ側通路は、オイルクーラ7及びオイルヒータ8の下流で合流し、再び単一の通路になる。オイルクーラ7又はオイルヒータ8を通過し、冷却又は暖められたオイルは、合流後のオイル通路1を経て、再びエンジン2の回転部及び摺動部に送られる。
【0048】
オイルヒータ8の本体及び周辺には、3つの温度センサが設置されている。オイルヒータ側通路において、オイルヒータ8の上流及び下流には、オイル温度センサ12及び13が夫々設置されている。電熱器9の近傍には、ヒータ温度センサ14が設置されている。オイル温度センサ12は、本発明に係る「第1温度特定手段」の一部として機能し、オイルヒータ8によって暖められる直前のオイルの温度(以下、適宜「ヒータ入口油温度」と称する)Toil1を検出可能に構成されている。オイル温度センサ13は、本発明に係る「第1温度特定手段」の一部として機能し、オイルヒータ8によって暖められた直後のオイルの温度(以下、適宜「ヒータ出口油温度」と称する)Toil2を検出可能に構成されている。ヒータ温度センサ14は、本発明に係る「第1温度特定手段」の一部として機能し、オイルヒータ本体の温度(以下、適宜「ヒータ温度」と称する)Twallを検出可能に構成されている。これら温度センサ12から14は、ECU20と電気的に接続されており、検出された各温度は、ECU20によって一定又は不定の周期で参照される。
【0049】
オイルヒータ8の一方の端子には、電流/電圧モニタ15を介してバッテリ10が接続され、オイルヒータ8の他方の端子には、スイッチ16が接続されている。電流/電圧モニタ15は、電熱器9(言い換えれば、オイルヒータ8)の電気抵抗Rを取得するべく、オイルヒータ8にかかる電圧Eと、オイルヒータ8に流れる電流Iとを検出可能に構成されている。スイッチ16は、ECU20によって「ON」及び「OFF」のいずれかの状態をとるように構成されている。スイッチ16が「ON」状態をとる場合、オイルヒータ8(言い換えれば、電熱器9)への通電が継続して行われ、オイルヒータ8を通過するオイルが加熱される。他方、スイッチ16が「OFF」状態をとる場合、オイルヒータ8への通電は行われない。
【0050】
バッテリ10は、本発明に係る「蓄電手段」の一例であって、本実施形態においては、オイルヒータ8に対し電力を供給すると共に、不図示のモータジェネレータによる発電電力を蓄電することが可能に構成されている。バッテリ10には、SOCセンサ11が設置されている。
【0051】
SOCセンサ11は、バッテリ10の蓄電状態を示す値として蓄電残量SOC(State Of Charge)(以後、単に「SOC」と称する)を検出可能に構成されている。SOCセンサ11は、ECU20と電気的に接続されており、検出されたSOCは、ECU20によって一定又は不定の周期で参照される。尚、本実施形態においては、SOCがバッテリ10における全蓄電量の60パーセントを満たす場合、オイルヒータ8及びその他の電機に対する電力供給が可能である。
【0052】
不図示のPCUは、バッテリ10から取り出した直流電力を交流電力に変換してオイルヒータ8に供給すると共に、不図示のモータジェネレータによって発電された交流電力を直流電力に変換してバッテリ10に供給するインバータを含んでおり、バッテリ10との間又はモータジェネレータとの間の電力の入出力を制御可能に構成されている。PCUは、ECU20と電気的に接続されており、ECU20によってその動作が制御される構成となっている。
【0053】
ECU20は、本発明に係る「通電制御装置」の一例であって、CPU、ROM及びRAM等を備える電子制御ユニットである。ECU20は、通電制御システム100の各部の動作を制御可能に構成されている。ECU20は、本実施形態においては、ROMに格納された制御プログラムに従って、後述する第1通電制御処理を実行可能に構成されている。
【0054】
尚、ECU20は、本発明に係る「第1判定手段」、「第2判定手段」及び「流量特定手段」として機能し得る通電判定部21と、本発明における第1の車両の通信制御装置に係る「通電制御手段」として機能し得る通電制御部22とを有し、これらの各手段に係る動作は、全てECU20によって実行されるように構成されている。但し、本発明に係るこれらの各手段の物理的、機械的及び電気的な構成はこれに限定されるものではなく、例えばこれらの各手段は、複数のECU、各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等の各種コンピュータシステムとして構成されていてもよい。
【0055】
<第1実施形態の動作>
次に、図2を参照し、第1実施形態に係るECU20の動作について説明する。ここに、図2(a)は、エンジン2の出力が大きい場合の、ヒータ入口油温度Toil1及びヒータ温度Twallの推移を示すグラフであって、図2(b)は、エンジン2の出力が小さい場合の、ヒータ入口油温度Toil1及びヒータ温度Twallの推移を示すグラフである。
【0056】
図2(a)及び(b)には共通して、横軸に時間がとられ、縦軸に温度がとられている。この縦軸には、ヒータ入口油温度Toil1における、オイルヒータ8への通電の必要性を判定するための上限温度Ta(即ち、本発明に係る「第1所定温度」の一例)、及びヒータ温度Twallにおける、オイルヒータ8への通電の必要性を判定するための上限温度Tb(即ち、本発明に係る「第2所定温度」の一例)が示されている。ヒータ入口油温度Toil1の上限温度Taは、ヒータ温度Twallの上限値Tbより低い温度に設定される。
【0057】
図2(a)に示すように、エンジン出力が大きい場合、ヒータ入口油温度Toil1は、比較的大きく上昇し、上限温度Taに達し易い。一方、エンジン出力が大きい場合、ヒータ温度Twallは、上昇しつつも、上限温度Tbに達することがない。これは、オイルヒータ8からオイルへの熱伝導が生じ易く、オイルヒータ8を通過するオイルがオイルヒータ8の熱を多少持ち去るためである。
【0058】
図2(b)に示すように、エンジン出力が小さい場合、ヒータ入口油温度Toil1は、上昇しつつも、上限温度Taに達することがない。一方、エンジン出力が小さい場合、ヒータ温度Twallは、比較的大きく上昇し、上限温度Tbに達し易い。
【0059】
ECU20における通電判定部21は、オイルヒータ8への通電を行うか否かを判定するためのパラメータとして、SOC、ヒータ入口油温度Toil1及びヒータ出口油温度Toil2のうちのいずれか一方(以下、適宜「オイル温度Toilx」と称する)、並びにヒータ温度Twallを用いる。これらパラメータを用いた判定について、具体的には、SOCセンサ11により検出されたSOCが全蓄電量の60パーセントを満たすか否かが判定される。SOCが全蓄電量の60パーセントを満たす場合、オイル温度Toilxが上限温度Taより低いか否かが判定されることで、オイルヒータ8への通電の必要性が判定される。オイル温度Toilxが上限温度Taより低い場合、ヒータ温度Twallが上限温度Tbより低いか否かが判定されることで、オイルヒータ8の故障が回避される。
【0060】
通電判定部21は、SOCが全蓄電量の60パーセントを満たすと判定され、且つオイル温度Toilxが上限温度Taより低いと判定され、且つヒータ温度Twallが上限温度Tbより低いと判定される場合にのみ、オイルヒータ8への通電を行う旨の信号を出力する。
【0061】
ECU20における通電制御部22は、通電判定部21から出力される信号に応じて、スイッチ16の切り替えを行う。具体的には、通電を行う旨の信号が出力された場合、オイルヒータ8に対し所定の通電を行うように、スイッチ16を「ON」状態に切り替える。一方、通電を行う旨の信号が出力されない場合、オイルヒータ8に対し通電不能に、スイッチ16を「OFF」状態に切り替える。ここで、オイルヒータ8に対する「所定の通電」とは、オイル温度Toilxが上限温度Taを超えない程度、且つヒータ温度Twallが上限温度Tbを超えない程度に、例えば比較的高電圧で且つ比較的短時間、バッテリ10の蓄電電力をオイルヒータに供給することを示す。
【0062】
<第1通電制御処理>
本実施形態では、エンジン2を効率的に暖機するべく、ヒータ入口油温度Toil1及びヒータ温度Twallに応じて、オイルヒータ8に対し所定の通電を行うための第1通電制御処理が実行可能である。
【0063】
図3を参照し、第1通電制御処理について説明する。ここに、図3は、第1通電制御処理を示すフローチャートである。
【0064】
図3において、ECU20は、先ずSOCセンサ11により検出されるSOCが、バッテリ10における全蓄電量の60パーセントより大きいか否かを判定する(ステップS41)。この判定の結果、SOCが全蓄電量の60パーセントより小さいと判定される場合(ステップS41:No)、再度ステップS41の処理を実行する。
【0065】
一方、ステップS41の判定の結果、SOCが全蓄電量の60パーセントより大きいと判定される場合(ステップS41:Yes)、通電判定部21は、オイル温度センサ12により検出されるヒータ入口油温度Toil1が上限温度Taより低いか否かを判定する(ステップS42)。この判定の結果、ヒータ入口油温度Toil1が上限温度Taより高いと判定される場合(ステップS42:No)、再度ステップS41の処理を実行する。
【0066】
一方、ステップS42の判定の結果、ヒータ入口油温度Toil1が上限温度Taより低いと判定される場合(ステップS42:Yes)、通電判定部21は、ヒータ温度センサ14により検出されるヒータ温度Twallが上限温度Tbより低いか否かを判定する(ステップS43)。この判定の結果、ヒータ温度Twallが上限温度Tbより高いと判定される場合(ステップS43:No)、再度ステップS41の処理を実行する。
【0067】
一方、ステップS43の判定の結果、ヒータ温度Twallが上限温度Tbより低いと判定される場合(ステップS43:Yes)、通電制御部22は、オイルヒータ8に対し所定の通電を行うように、スイッチ16を「ON」状態に切り替える(ステップS44)。これにより、一連の第1通電制御処理が終了する。
【0068】
本実施形態の第1通電制御処理によれば、バッテリ10が全蓄電量の60パーセントより大きいSOCを備えており、ヒータ入口油温度Toil1が上限温度Taより低く、且つヒータ温度Twallが上限温度Tbより低い場合、オイルヒータ8に対し所定の通電を行う。これにより、最適な通電タイミングで適当な通電電力をオイルヒータ8に供給するので、オイルヒータ8への通電を的確に行うことが可能である。言い換えれば、オイルヒータ8の稼働効率を高めることが可能である。更には、的確な通電により、オイルの劣化及びオイルヒータ8の故障を抑制することが可能である。
【0069】
本実施形態では、ECU20により制御される通電の対象は、オイルヒータ8に限られるが、オイルヒータ8に併せてEHCへの通電を制御してもよい。
【0070】
本実施形態では、ヒータ温度Twallがヒータ温度センサ14により直接に特定されるが、ヒータ温度Twallを特定する形態はこれに限定されない。即ち、ヒータ温度センサ14を用いることなく、ヒータ温度Twallを間接的に特定することも可能である。
【0071】
<第1ヒータ温度特定方法>
ヒータ温度センサを用いることなくヒータ温度Twallを特定する、第1の形態では、ヒータ温度Twallの特定に係るパラメータとして、ヒータ入口油温度Toil1及びヒータ出口油温度Toil2、オイル流量m、熱伝達率h、ヒータ面積A並びに比熱Cpが用いられる。ヒータ入口油温度Toil1は、例えばオイル温度センサ12により検出され、ヒータ出口油温度Toil2は、例えばオイル温度センサ13により検出される。オイル流量mは、オイル通路1を構成する複数の部分通路のうち、分岐した部分通路を除いた一部分経路の一断面を単位時間当たりに通過するオイルの質量である。オイル流量mの特定には、例えばエンジン2の回転速度(以後、「機関回転速度」と称する)Ne及びヒータ入口油温度Toil1の関係を表すマップが用いられる。熱伝達率h、ヒータ面積A及び比熱Cpは、オイルヒータ本体の形状、及びオイルの物理的性質から決定される。ここで、数式1は、オイルヒータからオイルへ熱伝達されるエネルギーと、この熱伝達によるオイルの昇温に要するエネルギーとが釣り合うことを表す。ヒータ温度Twallは、数式1から導かれる数式2を用い、上記パラメータに基づいて算出される。
【0072】
【数1】

【0073】
【数2】

【0074】
このように、第1の形態によれば、ヒータ入口油温度Toil1及びヒータ出口油温度Toil2を検出すると共に、新たにオイル流量mを特定することで、ヒータ温度Twallを算出する。これにより、ヒータ温度センサの設置が不要となり、ヒータ温度センサ分のコストを削減することが可能である。
【0075】
<第2ヒータ温度特定方法>
ヒータ温度センサを用いることなくヒータ温度Twallを特定する、第2の形態では、ヒータ温度Twallの特定に係るパラメータとして、実抵抗R、基準抵抗R0、基準温度T0及び温度抵抗係数αが用いられる。実抵抗Rは、電流/電圧モニタ15により検出される電流E及び電圧Iに基づいて算出される。基準抵抗R0、基準温度T0及び温度抵抗係数αは、オイルヒータ8において予め設定される。ここで、数式3は、ヒータ温度Twallに応じて変化する実抵抗Rを表す。ヒータ温度Twallは、数式3から導かれる数式4を用い、上記パラメータに基づいて算出される。
【0076】
【数3】

【0077】
【数4】

【0078】
このように、第2の形態によれば、オイルヒータ8に係る電流E及び電圧Iを検出することで、ヒータ温度Twallを算出する。これにより、第1の形態と同様にして、ヒータ温度センサの設置が不要となり、ヒータ温度センサ分のコストを削減することが可能である。
【0079】
<第2実施形態>
<第2実施形態の構成>
次に、図4を参照し、本発明の第2実施形態に係る通信制御システム200の構成について説明する。ここに、図4は、通電制御システム200の構成を概念的に表すブロック図である。尚、通信制御システム200において、図1の通信制御システム100と同一名称且つ同一番号の要素について、その説明を省略する。但し、同一名称であっても異なる番号が付された要素については、図1の通信制御システム100との構成の差異を説明する。
【0080】
図4において、通信制御システム200は、主として、エンジン2、オイルヒータ8及びスイッチ16に加えて、EHC30、スイッチ33、バッテリ110及びECU120を備える。
エンジン2における排気ポートには、排気通路29が組み付けられている。エンジン2から排出される排気ガス(排ガス)は、排気通路29に導かれてEHC30に到達する。
【0081】
EHC30は、本発明に係る「ヒータ付触媒」の一例であって、排ガスを浄化する不図示の触媒、及び触媒を暖める触媒ヒータ31を備える。
【0082】
触媒ヒータ31の一方の端子には、バッテリ110が接続され、触媒ヒータ31の他方の端子には、スイッチ33が接続されている。スイッチ33は、ECU20によって「ON」及び「OFF」のいずれかの状態をとるように構成されている。スイッチ33が「ON」状態をとる場合、EHC30(言い換えれば、触媒ヒータ31)への通電が継続して行われ、触媒が加熱される。他方、スイッチ33が「OFF」状態をとる場合、EHC30への通電は行われない。EHC30には、触媒温度センサ32が設置されている。
【0083】
触媒温度センサ32は、本発明に係る「第2温度特定手段」の一例であって、触媒の温度(以後、「触媒温度」と称する)Tehcを検出可能に構成されている。触媒温度センサ32は、ECU120と電気的に接続されており、検出された温度Tehcは、ECU120によって一定又は不定の周期で参照される。
【0084】
バッテリ110は、本実施形態においては、オイルヒータ8及びEHC30に対し電力を供給すると共に、不図示のモータジェネレータによる発電電力を蓄電することが可能に構成されている。
【0085】
ECU120は、通電制御システム200の各部の動作を制御可能に構成されている。ECU120は、本実施形態においては、ROMに格納された制御プログラムに従って、後述する第2通電制御処理を実行可能に構成されている。
【0086】
尚、ECU120は、本発明に係る「分配比率特定手段」及び「要求電力特定手段」として機能し得る分配比率設定部121と、本発明における第2の車両の通信制御装置に係る「通電制御手段」として機能し得る通電制御部122とを有し、これらの各手段に係る動作は、全てECU120によって実行されるように構成されている。
【0087】
<第2実施形態の動作>
次に、図5から図7を参照し、第2実施形態に係るECU120の動作について説明する。先ず図5を参照し、オイルヒータ8及びEHC30への通電のためにバッテリ110から供給可能である通電電力の合計値たる供給可能電力について説明する。ここに、図5(a)は、SOC及び供給電力の関係を示すグラフであって、図5(b)は、回生電力及び供給電力の関係を示すグラフであって、図5(c)は、バッテリ蓄電電力及び供給可能電力の関係を示すグラフである。
【0088】
図5(a)は、横軸にSOCがとられ、縦軸にSOCに対応する供給電力がとられている。SOCが一定値を満たす場合、SOCの増加に伴って供給電力が増加する。図5(b)は、横軸に回生電力がとられ、縦軸に回生電力に対応する供給電力がとられている。モータジェネレータによる回生電力が零より大きい場合、回生電力の増加に伴って供給電力が増加する。図5(c)は、横軸に、バッテリ蓄電電力として、SOCと回生電力とが合算された電力がとられる。また、縦軸に、供給可能電力として、バッテリ蓄電電力に対応する供給電力がとられている。図5(c)に示すように、供給可能電力とは、バッテリ110のSOCに対応する電力と、モータジェネレータによる発電電力たる回生電力に対応する電力との合計値である。図5を踏まえて、ECU120における分配比率設定部121は、SOCセンサ11により検出されるSOC、及びモータジェネレータによる回生電力を取得し、これらに基づいて供給可能電力を算出する。
【0089】
続いて、図6を参照し、供給可能電力の分配比率について説明する。ここに、図6は、オイルヒータ8及びEHC30に対し供給される供給可能電力の分配比率の傾向を示すマップである。
【0090】
図6は、横軸にEHC温度がとられ、縦軸にオイル温度がとられている。図6に示すように、触媒温度が高く、且つオイル温度が低い程、オイルヒータ8に対する分配比率が高くなる傾向がある。一方、触媒温度が低く、且つオイル温度が高い程、EHC30に対する分配比率が高くなる傾向がある。図6に示される点線は、分配比率が、オイルヒータ8とEHC30との間で逆転する境界を示す。
【0091】
続いて、図7を参照し、車速に応じて推移する、供給可能電力の分配比率について説明する。ここに、図7(a)は、車速の推移を示すグラフであって、図7(b)は、車速に応じたオイルヒータ8への供給電力の推移を示すグラフであって、図7(c)は、車速に応じたEHC30への供給電力の推移を示すグラフである。
【0092】
図7(a)は、横軸に時間がとられ、縦軸に車速がとられている。図7(a)に示すように、時間t1から時間t2までの間、車速は一気に増加する。この後、時間t2から時間t3までの間、車速は一定速となる。この後、時間t3から時間t4までの間、車速は一気に減少する。図7(b)は、横軸に時間がとられ、縦軸に車速に応じた、オイルヒータ8への供給電力(以下、適宜「ヒータ供給電力」と称する)がとられている。図7(c)は、横軸に時間がとられ、縦軸に車速に応じた、EHC30への供給電力(以下、適宜「EHC供給電力」と称する)がとられている。尚、本実施形態では、供給可能電力は、ヒータ供給電力及びEHC供給電力として使用されるものとする。
【0093】
図7(a)から図7(c)に示すように、時間t1から時間t3までの間(即ち、車速が増加する又は一定速となる場合)、オイルヒータ8対EHC30の分配比率は、例えば「3.5」対「1」に設定される。また、時間t3から時間t4までの間(即ち、車速が減少する場合)、オイルヒータ8対EHC30の分配比率は、例えば「1」対「4.6」に設定される。
【0094】
図6及び図7を踏まえて、ECU120における分配比率設定部121は、本実施形態では、走行状況に応じて、供給可能電力の分配比率を設定する。具体的には、車両が増速する又は一定速で走行する場合、例えば図6等のマップを用いて、オイル温度Toilx及び触媒温度Tehcに基づいて、オイルヒータ8対EHC30の分配比率を一義的に設定する。この際、典型的には、オイルヒータ8及びEHC30のうち、比較的低い温度が検出された一方の分配比率が他方の分配比率より大きくなる。即ち、オイルヒータ8対EHC30の分配比率が例えば「3.5」対「1」に設定される場合、触媒温度Tehcよりオイル温度Toilxについて、比較的低い温度が検出されたこととなる。
【0095】
一方、車両が減速する場合、分配比率設定部121は、先ず触媒温度Tehcに基づいて、EHC30への通電に要求される要求電力Wehcを特定する。すると、分配比率設定部121は、特定した要求電力Wehcと、供給可能電力Wttlから要求電力Wehcを減算した残りの電力Woilとの比率を分配比率として設定する。即ち、オイルヒータ8対EHC30の分配比率が例えば「1」対「4.6」に設定される場合、オイルヒータ8よりEHC30に対する供給電力が優先的に確保されることとなる。
【0096】
ECU120における通電制御部122は、本実施形態では、オイルヒータ8及びEHC30に対し、分配比率設定部121により設定された分配比率で供給可能電力が供給されるように、スイッチ16及び33の各々を「ON」状態に切り替える。
【0097】
<第2通電制御処理>
本実施形態では、エンジン2及びEHC30を効率的に暖機するべく、オイル温度Toilx及び/又は触媒温度Tehcに基づいて設定される分配比率で、オイルヒータ8及びEHC30に対し電力供給(即ち、通電)を行うための第2通電制御処理が実行可能である。
【0098】
図8を参照し、第2通電制御処理について説明する。ここに、図8は、第2通電制御処理を示すフローチャートである。
【0099】
図8において、ECU120は、先ずSOCセンサ11により検出されるSOC、及びモータジェネレータによる回生電力を取得する(ステップS51)。すると、分配比率設定部121は、取得されたSOC及び回生電力とに基づいて、バッテリ110における供給可能電力Wttlを算出する(ステップS52)。すると、ECU120は、オイル温度センサ12又は13により検出されるオイル温度Toilx、及び触媒温度センサ32により検出される触媒温度Tehcを取得する(ステップS53)。続いて、ECU120は、車速センサ3により検出される車速から、車両が減速する(或いは減速している)か否かを判定する(ステップS54)。この判定の結果、車両が減速すると判定される場合(ステップS54:Yes)、分配比率設定部121は、触媒温度Tehcに基づいて、EHC30における要求電力Wehcを算出すると共に、ステップS52の処理にて算出された供給可能電力Wttlから、該要求電力Wehcを減算した残りの電力Woilを算出する。こうして算出された、残りの電力Woil対要求電力Wehcの比率を、オイルヒータ8対EHC30の分配比率として設定する(ステップS55)。
【0100】
一方、ステップS54の判定の結果、車両が増速する又は一定速で走行すると判定された場合(ステップS54:No)、分配比率設定部121は、オイル温度Toilx及び触媒温度Tehcに基づいて、オイルヒータ8対EHC30の分配比率を一義的に設定する(ステップS56)。
【0101】
ステップS55又はS56の処理にて分配比率が設定されると、通電制御部122は、設定された分配比率で、オイルヒータ8及びEHC30に対し電力供給を行うように、スイッチ16及び33の各々を「ON」状態に切り替える(ステップS57)。これにより、一連の第2通電制御処理が終了する。
【0102】
本実施形態の第2通電制御処理によれば、走行状況に応じて、EHC30への通電に要する電力を優先的に確保するように分配比率が特定される。これにより、減速時を利用して、オイルヒータ8よりEHC30を優先する通電を行うことで、触媒を効率的に活性化し、排ガスの浄化作用を高めることが可能である。
【0103】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う車両の通電制御装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0104】
1…オイル通路、2…エンジン、8…オイルヒータ、12…オイル温度センサ、14…ヒータ温度センサ、20…ECU、100…通電制御システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関における潤滑経路に設けられるオイルヒータと、該オイルヒータに通電可能である蓄電手段とを備える車両において、前記オイルヒータへの通電を制御する通電制御装置であって、
前記オイルヒータを通過するオイルの温度たるオイル温度、及び前記オイルヒータ本体の温度たるヒータ温度のうちの少なくとも一方を特定する第1温度特定手段と、
前記蓄電手段の蓄電残量が所定量より大きい場合、前記特定されたオイル温度及びヒータ温度のうちの少なくとも一方に応じて、前記オイルヒータへの通電を行う通電制御手段と
を備えることを特徴とする車両の通電制御装置。
【請求項2】
前記特定されたオイル温度が第1所定温度より低いか否かを判定する第1判定手段と、
前記特定されたヒータ温度が第2所定温度より低いか否かを判定する第2判定手段と
を更に備え、
前記特定されたオイル温度は、前記潤滑経路における前記オイルヒータより上流を通過する前記オイルの温度であって、
前記通電制御手段は、前記第1判定手段により前記オイル温度が前記第1所定温度より低いと判定され、且つ前記第2判定手段により前記ヒータ温度が前記第2所定温度より低いと判定される場合、前記オイルヒータへの通電を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の車両の通電制御装置。
【請求項3】
前記潤滑経路を巡回する前記オイルの流量たるオイル流量を、前記特定されたオイル温度、及び前記内燃機関における機関回転速度に基づいて特定する流量特定手段
を更に備え、
前記第1温度特定手段は、前記特定されたオイル温度及びオイル流量に基づいて前記ヒータ温度を特定する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の車両の通電制御装置。
【請求項4】
前記第1温度特定手段は、前記オイルヒータの抵抗値に基づいて前記ヒータ温度を特定する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の車両の通電制御装置。
【請求項5】
内燃機関における潤滑経路に設けられるオイルヒータと、前記内燃機関における排気経路に設けられるヒータ付触媒と、前記オイルヒータ及び前記ヒータ付触媒のうちの少なくとも一方に通電可能である蓄電手段とを備える車両において、前記オイルヒータ及び前記ヒータ付触媒への通電を制御する通電制御装置であって、
前記オイルヒータを通過するオイルの温度たるオイル温度、及び前記オイルヒータ本体の温度たるヒータ温度のうちの少なくとも一方を特定する第1温度特定手段と、
前記ヒータ付触媒の温度たる触媒温度を特定する第2温度特定手段と、
前記第1温度特定手段により特定されたオイル温度、及び前記第2温度特定手段により特定された触媒温度のうちの少なくとも一方に基づいて、前記オイルヒータ及び前記ヒータ付触媒に対する、前記蓄電手段における供給可能電力の分配を行うための分配比率を特定する分配比率特定手段と、
前記特定された分配比率で前記分配が行われるように、前記オイルヒータ及び前記ヒータ付触媒への通電を行う通電制御手段と
を備えることを特徴とする車両の通電制御装置。
【請求項6】
前記特定された触媒温度に基づいて、前記ヒータ付触媒への通電のために要求される要求電力を特定する要求電力特定手段
を更に備え、
前記分配比率特定手段は、当該車両が減速する場合、(i)前記特定された要求電力と、(ii)前記供給可能電力から前記特定された要求電力を減算した残りの電力との比率を、前記ヒータ付触媒対前記オイルヒータの前記分配比率として特定する
ことを特徴とする請求項5に記載の車両の通電制御装置。
【請求項7】
前記供給可能電力は、前記蓄電手段の蓄電残量に、当該車両の減速により出力される回生電力を加算した値である
ことを特徴とする請求項5又は6に記載の車両の通電制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−246795(P2012−246795A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−117353(P2011−117353)
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】