説明

車両の運転支援装置

【課題】車線逸脱判定時に自車両の乗員に対して効果的に車線逸脱の注意を喚起して運転者の車両運転の十分な支援を図る。
【解決手段】自車両1前方に可視光ビームLを照射する照射手段100と、自車両1前方の撮像画像から自車両1が走行中の車線を検出し(S32)、この検出された車線に対して自車両1が逸脱するか否かを判定する(S35)判定手段60とを有する車両1の運転支援装置において、前記判定手段60で自車両1が車線逸脱すると判定されたとき(S35でYES)、自車両1の乗員に対して車線逸脱の注意を喚起するための情報Xを自車両1前方の路面上に描くように前記照射手段100を制御する(S37)制御手段60を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の運転を支援する運転支援装置に関し、車両の安全技術の分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両の運転を支援する種々の運転支援装置が知られている。例えば特許文献1には、自車両の車速や舵角等に基いて自車両の走行予定経路を演算し、その演算結果に基いて走行路の路面上に可視光ビームを照射することにより、自車両の左右両サイド前方の走行路の路面に進行方向に延びる左右一対の線でなる走行予定経路を表示する技術が開示されている。これによれば、当該車両の運転者が自車両の走行予定経路を視覚的に把握することができる。
【0003】
【特許文献1】特開2003−231438号公報(段落0051)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
また、車両の運転支援装置として、走行中の車線逸脱を未然に防止するために、車線逸脱警報(LDW:Lane Departure Warning)装置が備えられることがある。このLDW装置は、例えば、自車両前方を撮像するカメラの撮像画像から、自車両が走行中の車線の区分線(隣の車線との境界線や路肩との境界線)を検出すると共に、車速及びヨーレート等から自車両の進行方向及び進行速度を算出し、この算出結果から自車両の今後予想される進路を推定する。そして、方向指示器が作動していないのに、自車両の予想進路が、検出された区分線と交わりそうなときに、自車両が車線を逸脱すると判定して、運転者を含む自車両の乗員に対して車線逸脱の注意を喚起するために、例えば音声や画面を用いて警報を発するものである。
【0005】
しかしながら、従来の警報は、車室内でブザー音や合成音声を発生したり、あるいは警告文言を車室内のディスプレイに表示するものであるため、例えば、車室内が騒々しかったり窓を開けていると警報音が聞こえず、また、警告文言を見るためにわざわざディスプレイに視線を移さなければならず、運転者に対して車線逸脱の注意を喚起することが不十分となる可能性がある。
【0006】
また、夜間の運転や雨天時の運転では、自車両の周囲の見通しが悪くなり、視認性が低下するので、たとえ運転者が前方を注視して運転していても、自車両の走行車線の区分線が確認し難く、意図しないうちに自車両が車線内で左右いずれかに偏移していたということがあり得る。したがって、そのようなときは、単に車室内で警報を発するだけでは足りず、自車両の走行車線の区分線がいまどこにあるのかを明示する必要がある。
【0007】
そこで、本発明は、自車両が車線を逸脱すると判定されたときに、自車両の乗員に対して効果的に車線逸脱の注意を喚起し、さらには、自車両の走行車線の区分線がいまどこにあるのかを明示して、運転者の車両運転の十分な支援を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明では次のような手段を用いる。なお、以下の本発明の開示において、後述する発明の実施形態で相当する符号を参考までに付記する。
【0009】
本願の請求項1に記載の発明は、自車両1前方に可視光ビームLを照射する照射手段100と、自車両1前方の撮像画像から自車両1が走行中の車線を検出し(S32)、この検出された車線に対して自車両1が逸脱するか否かを判定する(S35)判定手段60とを有する車両1の運転支援装置であって、前記判定手段60で自車両1が車線逸脱すると判定されたとき(S35でYES)、自車両1の乗員に対して車線逸脱の注意を喚起するための情報Xを自車両1前方の路面上に描くように前記照射手段100を制御する(S37)制御手段60が備えられていることを特徴とする。
【0010】
ここで、車線逸脱の注意を喚起するための情報(注意喚起情報)Xには、「逸脱注意」や「警告!」等の文字、「×」や斜線等の図形、矢印や進入禁止記号等の記号、及びこれらの組合せで構成されるものが含まれる。
【0011】
本願の請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載の車両の運転支援装置であって、前記注意喚起情報Xは、自車両1の走行車線の区分線であることを特徴とする。
【0012】
本願の請求項3に記載の発明は、前記請求項2に記載の車両の運転支援装置であって、前記区分線は、前記判定手段60で自車両1が車線逸脱すると判定された側の区分線であることを特徴とする。
【0013】
本願の請求項4に記載の発明は、前記請求項1から3のいずれか1項に記載の車両の運転支援装置であって、前記可視光ビームLは、レーザ光線であることを特徴とする。
【0014】
本願の請求項5に記載の発明は、前記請求項1から4のいずれか1項に記載の車両の運転支援装置であって、前記判定手段60で自車両1が車線逸脱すると判定されたとき(S35でYES)、自車両1の乗員に対して車線逸脱の注意を喚起するための警報を車室内で発する(S36)警報手段90が備えられていることを特徴とする。
【0015】
本願の請求項6に記載の発明は、前記請求項1から5のいずれか1項に記載の車両の運転支援装置であって、自車両1前方に可視光ビームLを照射して自車両1の乗員に走行を案内するための情報を提供する(S13,S23)走行案内手段10が備えられ、前記照射手段100は、この走行案内手段10の可視光ビーム照射手段を利用したものであることを特徴とする。
【0016】
本願の請求項7に記載の発明は、前記請求項6に記載の車両の運転支援装置であって、前記走行案内情報は、自車両1の走行予定経路Aである(S13)ことを特徴とする。
【0017】
本願の請求項8に記載の発明は、前記請求項6に記載の車両の運転支援装置であって、前記走行案内情報は、自車両1の走行方向である(S23)ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本願の請求項1に記載の発明によれば、自車両1前方に可視光ビームLを照射する照射手段100と、自車両1が車線逸脱するか否かを判定する(S35)判定手段60とを有する車両1の運転支援装置において、自車両1が車線逸脱すると判定されたときは(S35でYES)、前記照射手段100が制御されて(S37)、自車両1の乗員に対して車線逸脱の注意を喚起するための情報Xが自車両1前方の路面上に描かれるから、車線逸脱判定時には(S35でYES)、車両1前方の路面上に注意喚起情報Xが出現することとなり、前方を見ながら車両1を運転している運転者の視野の中にその注意喚起情報Xが確実に入ることとなって、運転者に顔や視線を大きく動かすことを強いることなく、運転者に対して車線逸脱の注意が効果的に喚起されることとなる。
【0019】
また、注意喚起情報Xが可視光ビームLで明るく描かれるから、該注意喚起情報Xが視覚を通じて明瞭に確認できるようになり、たとえ見通しが悪く視認性が低下する夜間の運転や雨天時の運転であっても、注意喚起情報Xが良好に確認できることとなる。
【0020】
また、自車両1が車線逸脱すると判定されたときにのみ(S35でYES)、可視光ビームLが照射されて自車両1前方の路面上に注意喚起情報Xが描かれるから(S37)、可視光ビームLを照射するための消費エネルギの抑制が図られると共に、可視光ビームLの路面反射による対向車両の乗員や道路上の歩行者等への幻惑の問題が低減する。
【0021】
本願の請求項2に記載の発明によれば、車線逸脱判定時には(S35でYES)、車両1前方の路面上に、注意喚起情報Xとして、自車両1の走行車線の区分線が描かれるから、運転者は自車両1が車線を逸脱しそうになっていることが直感できて、ハンドル操作等の逸脱回避操作を直ちに反射的にとることができる。
【0022】
また、自車両1の走行車線の区分線がいまどこにあるのかが可視光ビームLで明るく明示されるから、たとえ見通しが悪く視認性が低下する夜間の運転や雨天時の運転であっても、運転者は自車両1が前記区分線を越えないように運転することが容易となり、運転者の車両運転の十分な支援が図られる。
【0023】
本願の請求項3に記載の発明によれば、車線逸脱判定時には(S35でYES)、車両1前方の路面上に、注意喚起情報Xとして、車線逸脱が判定された側の区分線が描かれるから、運転者は車線内で自車両1が左右いずれの側に偏移しているのかまでもが判断できて、直ちに的確な逸脱回避操作をとることが可能となる。
【0024】
本願の請求項4に記載の発明によれば、可視光ビームLとして、散乱し難く、視認性が良好なレーザ光線が用いられるから、注意喚起情報Xが車両1前方の路面上に明確に出現し、文字や図形あるいは記号等で構成される注意喚起情報Xの意味がはっきりと判読できることとなる。
【0025】
本願の請求項5に記載の発明によれば、車線逸脱判定時には(S35でYES)、例えば音声や画面を用いて車室内で警報が発せられるから(S36)、車両1前方路面上の注意喚起情報Xの出現とあいまって、自車両1の乗員に対して車線逸脱の注意がより一層効果的に喚起されることとなる。
【0026】
本願の請求項6に記載の発明によれば、注意喚起情報Xを自車両1前方の路面上に描くための照射手段100と、走行案内手段10の可視光ビーム照射手段とが兼用されるから、部品点数の増大ないしコストの増大が抑制されることとなる。
【0027】
なお、走行案内手段10においては、可視光ビームLは、例えば自車両1前方の路面上や空間中に照射されたり、目的地である建物T等に照射される。
【0028】
本願の請求項7に記載の発明によれば、走行案内手段10の具体的動作の1例が示され、可視光ビームLで自車両1の走行予定経路Aが提供されるから(S13)、たとえ見通しが悪く視認性が低下する夜間の運転や雨天時の運転であっても、運転者は自車両1の走行予定経路Aを視覚を通じて明瞭に把握することができ、走行安全性が図られることとなる。
【0029】
なお、自車両1の走行予定経路Aは、例えば自車両1の車速や舵角あるいはヨーレート等に基き推定される。
【0030】
本願の請求項8に記載の発明によれば、同じく走行案内手段10の具体的動作の他の例が示され、可視光ビームLで自車両1の走行方向が提供されるから(S23)、たとえ見通しが悪く視認性が低下する夜間の運転や雨天時の運転であっても、運転者は自車両1の走行方向を視覚を通じて明瞭に把握することができ、やはり走行安全性が図られることとなる。
【0031】
なお、自車両1の走行方向は、例えばナビゲーションシステム50に入力された目的地に関する情報や自車両1の現在位置周辺の地図情報等に基き決定される。以下、発明の最良の実施の形態を通して本発明をさらに詳しく説述する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
図1は、本発明の最良の実施の形態に係る車両1の運転支援装置のシステム構成図である。本実施形態に係る車両1には、レーザ100,100から発せられる可視光ビームで自車両1前方に走行案内情報を提供する走行案内コントロールユニット10と、同じくレーザ100,100から発せられる可視光ビームで自車両1前方の路面上に車線逸脱の注意喚起情報を描く車線逸脱警報(LDW:Lane Departure Warning)コントロールユニット60とが備えられている。
【0033】
両コントロールユニット10,60は、CPU、制御用プログラム及びデータを記憶するROM、プログラムの実行の際に種々のデータを一時的に記憶するRAM等を備えてそれぞれ構成されている。
【0034】
走行案内コントロールユニット10は、車速センサ20、舵角センサ30、ヨーレートセンサ40、及びナビゲーションシステム(図中「NAVI」と記す)50からの信号を入力し、レーザ100に制御信号を出力する。車線逸脱警報コントロールユニット60は、車速センサ20、ヨーレートセンサ40、カメラ70、及びウインカスイッチ80からの信号を入力し、警報装置90及びレーザ100に制御信号を出力する。
【0035】
車速センサ20は、自車両1の車速を検出するもので、検出した車速に対応する信号を両コントロールユニット10,60に出力する。
【0036】
舵角センサ30は、自車両1の操舵角度を検出するもので、検出した操舵角度に対応する信号を走行案内コントロールユニット10に出力する。
【0037】
ヨーレートセンサ40は、自車両1のヨーレートを検出するもので、検出したヨーレートに対応する信号を両コントロールユニット10,60に出力する。
【0038】
ナビゲーションシステム50は、車室内のルーフ部に取り付けられ、現在地の位置情報(緯度、経度)を検出するGPS部、道路情報を記憶する記憶部(道路情報記憶媒体)、前記GPS部で検出された位置情報に基いて現在地を中心とする所定の範囲の道路情報を読み出す情報読出部等を有し、情報読出部で読み出された道路情報や目的地に関する情報、及び自車両1の現在位置周辺の地図情報等を走行案内コントロールユニット10に出力する。
【0039】
カメラ70は、自車両1前方の走行路や物標等を撮像するもので、車室内のルーフ部前端部に取り付けられ、例えばCCDやCMOSセンサを利用したデジタル式のカメラにより構成され、撮像信号を車線逸脱警報コントロールユニット60に出力する。
【0040】
ウインカスイッチ80は、左側又は右側のウィンカ(方向指示器)を点滅作動させるためのもので、左側又は右側のウィンカが作動しているか作動していないかのオンオフ信号を車線逸脱警報コントロールユニット60に出力する。
【0041】
警報装置90は、車室内に配設され、車線逸脱警報コントロールユニット60から制御信号を受けて、自車両1の乗員に対して音声や画面あるいは振動を用いて車線逸脱警報を発するものである。具体的には、スピーカを介して音声により車線逸脱警報を発し、又はディスプレイを介して表示により車線逸脱警報を発し、あるいは乗員が着座しているシート等を振動させることにより車線逸脱警報を発するように構成されている。
【0042】
レーザ100は、本実施形態においては、自車両1の走行案内と、自車両1の車線逸脱の注意喚起とを行うために備えられ、自車両1の前端部に左右一対配置されている。そして、両コントロールユニット10,60から制御信号を受けて、可視光ビームとしてのレーザ光線を自車両1の周囲、特に自車両1の前方に照射するように構成されている。
【0043】
図2(a)及び図2(b)は、前記車両1に搭載された走行案内コントロールユニット10が所定周期毎に繰り返し実行する具体的制御動作の1例を示すフローチャートである。
【0044】
図2(a)に示した例では、ステップS11で、車速センサ20から車速信号、舵角センサ30から舵角信号、及びヨーレートセンサ40からヨーレート信号を入手し、ステップS12で、入手した信号に基いて自車両1の走行予定経路を推定し、そして、ステップS13で、レーザ100を制御することにより、推定した走行予定経路をレーザ光線で自車両1の前方の路面上に描画する。
【0045】
図3は、図2(a)に示した例の場合にレーザ光線Lで提供される走行案内情報、つまり自車両1の走行予定経路Aの具体的1例を示す平面図である。
【0046】
図2(b)に示した例では、ステップS21で、ナビゲーションシステム50から目的地に関する情報や自車両1の現在位置周辺の地図情報等を入手し、ステップS22で、入手した情報に基いて目的地が現在位置から所定距離以内にあるか否かを判定し、そして、ある場合は、ステップS23で、レーザ100を制御することにより、目的の建物をレーザ光線で照射する。
【0047】
図4は、図2(b)に示した例の場合にレーザ光線Lで提供される走行案内情報、つまり自車両1の走行方向の具体的1例を示す斜視図である。
【0048】
なお、図4は、レーザ光線Lを目的地である建物Tに照射する場合を示したが、これに代えて、レーザ光線Lを自車両1前方の路面上や空間中に照射してもよい(特に、目的地である建物Tが現在位置から所定距離以内にない場合や、所定距離以内にあっても直接見えない場合等に有効である)。
【0049】
次に、図5は、前記車両1に搭載された車線逸脱警報コントロールユニット60が所定周期毎に繰り返し実行する具体的制御動作の1例を示すフローチャートである。
【0050】
まず、ステップS31で、カメラ70によって撮像された自車両1前方の撮像画像を入手する。
【0051】
次いで、ステップS32で、入手した撮像画像を一般的な画像処理の手法を用いて解析することにより、自車両1が現在走行中の車線を検出すると共に、車速及びヨーレート等から自車両の進行方向を検出する。
【0052】
次いで、ステップS33で、ウインカスイッチ80から左側又は右側のウィンカのオンオフ信号を入手する。
【0053】
次いで、ステップS34で、これらの検出結果や信号に基いて、自車両1の車線逸脱判定を実行し、ステップS35で、自車両1が車線を逸脱する可能性があるか否かを判定する。
【0054】
これらのステップS32〜S35の一連の動作を総合して簡単に説明する。すなわち、カメラ70から入手した撮像画像に基き、自車両1が現在走行中の車線の区分線を検出する。一方、車速センサ20及びヨーレートセンサ40の出力データ(検出された車速及びヨーレートに対応する信号)に基き、自車両1の進行方向及び進行速度を算出し、この算出結果から自車両1の今後予想される進路を推定する。
【0055】
そして、自車両1の予想進路が、検出された区分線と交わりそうか否かを判定する。そして、自車両1の予想進路が、検出された区分線と交わりそうであっても、その交わりそうな区分線の側(左か右か)のウィンカスイッチ80がオンであるときには、自車両1が走行車線から逸脱しない(車線逸脱の可能性がない)と判定される。一方、自車両1の予想進路が、検出された区分線と交わりそうであり、かつその交わりそうな区分線の側(左か右か)のウィンカスイッチ80がオフであるときには、自車両1が走行車線から逸脱する(車線逸脱の可能性がある)と判定される。
【0056】
そして、自車両1が車線逸脱する可能性があるときは、ステップS36で、車室内の警報装置90を作動し、併せて、ステップS37で、レーザ100を制御することにより、自車両1の乗員に対して車線逸脱の注意を喚起するための情報、すなわち注意喚起情報Xをレーザ光線Lで自車両1の前方の路面上に描画する。
【0057】
一方、自車両1が車線逸脱する可能性がないときは、ステップS38で、前記警報装置90を停止し、ステップS39で、前記描画を停止する。
【0058】
図6は、前記ステップS37で、レーザ光線Lの照射により自車両1前方の路面上に描かれる注意喚起情報Xの具体的1例を示す平面図である(第1実施形態)。この例では、注意喚起情報Xは、自車両1の走行車線の区分線、特に左右の区分線である。これに代えて、自車両1の車線逸脱が判定された側の左右いずれか一方の区分線のみ描画してもよい(図8(a)参照)。
【0059】
図7は、前記ステップS37で、レーザ光線Lの照射により自車両1前方の路面上に描かれる注意喚起情報Xの他の例を示す平面図である(第2実施形態)。この例では、注意喚起情報Xは、「右逸脱注意!」という文字で構成されている。これに代えて、自車両1が左側に車線逸脱する可能性があるときは、「左逸脱注意!」と描かれる。
【0060】
図8(a)〜(d)は、それぞれ、前記ステップS37で、レーザ光線Lの照射により自車両1前方の路面上に描かれる注意喚起情報Xのさらに他の例を示す平面図である。
【0061】
図8(a)の例(第3実施形態)では、注意喚起情報Xは、右の区分線とその外側(右側)に配置された複数の斜線とを含む図形で構成されている。この注意喚起情報Xは、自車両1前方でも比較的右側に描かれる。これに代えて、自車両1が左側に車線逸脱する可能性があるときは、左の区分線とその外側(左側)に配置された複数の斜線とを含む図形が自車両1前方の比較的左側に描かれる。この図8(a)の例は、第1実施形態において、自車両1の車線逸脱が判定された側の左右いずれか一方の区分線のみ描画する場合に相当する。
【0062】
図8(b)の例(第4実施形態)では、注意喚起情報Xは、右前へ進む矢印(記号)とその外側(右側)に配置された「×」(図形)との組合せで構成されている。この注意喚起情報Xは、自車両1前方でも比較的右側に描かれる。これに代えて、自車両1が左側に車線逸脱する可能性があるときは、左前へ進む矢印(記号)とその外側(左側)に配置された「×」(図形)との組合せが自車両1前方の比較的左側に描かれる。
【0063】
図8(c)の例(第5実施形態)では、注意喚起情報Xは、右前へ進む矢印とその外側(右側)に配置された進入禁止記号とを含む記号で構成されている。この注意喚起情報Xは、自車両1前方でも比較的右側に描かれる。これに代えて、自車両1が左側に車線逸脱する可能性があるときは、左前へ進む矢印とその外側(左側)に配置された進入禁止記号とを含む記号が自車両1前方の比較的左側に描かれる。
【0064】
図8(d)の例(第6実施形態)では、注意喚起情報Xは、左前を指示する複数の矢印(記号)とその内側(左側)に配置された「左に寄れ」という文字との組合せで構成されている。この注意喚起情報Xは、自車両1前方でも比較的右側に描かれる。これに代えて、自車両1が左側に車線逸脱する可能性があるときは、右前を指示する複数の矢印(記号)とその内側(右側)に配置された「右に寄れ」という文字との組合せが自車両1前方の比較的左側に描かれる。
【0065】
このように、本実施形態によれば、自車両1前方に可視光ビームLを照射する照射手段100と、自車両1が車線逸脱するか否かを判定する(S35)判定手段60とを有する車両1の運転支援装置において、自車両1が車線逸脱すると判定されたときは(S35でYES)、前記照射手段100が制御されて(S37)、自車両1の乗員に対して車線逸脱の注意を喚起するための情報Xが自車両1前方の路面上に描かれるから、車線逸脱判定時には(S35でYES)、車両1前方の路面上に注意喚起情報Xが出現することとなり、前方を見ながら車両1を運転している運転者の視野の中にその注意喚起情報Xが確実に入ることとなって、運転者に顔や視線を大きく動かすことを強いることなく、運転者に対して車線逸脱の注意が効果的に喚起されることとなる。
【0066】
また、注意喚起情報Xが可視光ビームLで明るく描かれるから、該注意喚起情報Xが視覚を通じて明瞭に確認できるようになり、たとえ見通しが悪く視認性が低下する夜間の運転や雨天時の運転であっても、注意喚起情報Xが良好に確認できることとなる。
【0067】
また、自車両1が車線逸脱すると判定されたときにのみ(S35でYES)、可視光ビームLが照射されて自車両1前方の路面上に注意喚起情報Xが描かれるから(S37)、可視光ビームLを照射するための消費エネルギの抑制が図られると共に、可視光ビームLの路面反射による対向車両の乗員や道路上の歩行者等への幻惑の問題が低減する。
【0068】
特に、第1実施形態では、車線逸脱判定時には(S35でYES)、車両1前方の路面上に、注意喚起情報Xとして、自車両1の走行車線の区分線が描かれるから、運転者は自車両1が車線を逸脱しそうになっていることが直感できて、ハンドル操作等の逸脱回避操作を直ちに反射的にとることができる。
【0069】
また、自車両1の走行車線の区分線がいまどこにあるのかが可視光ビームLで明るく明示されるから、たとえ見通しが悪く視認性が低下する夜間の運転や雨天時の運転であっても、運転者は自車両1が前記区分線を越えないように運転することが容易となり、運転者の車両運転の十分な支援が図られる。
【0070】
また、第1実施形態において、車線逸脱判定時には(S35でYES)、車両1前方の路面上に、注意喚起情報Xとして、車線逸脱が判定された側の区分線のみが描かれる場合は(第3実施形態)、運転者は車線内で自車両1が左右いずれの側に偏移しているのかまでもが判断できて、直ちに的確な逸脱回避操作をとることが可能となる。
【0071】
また、可視光ビームLとして、散乱し難く、視認性が良好なレーザ光線が用いられるから、注意喚起情報Xが車両1前方の路面上に明確に出現し、文字や図形あるいは記号等で構成される注意喚起情報Xの意味がはっきりと判読できることとなる。
【0072】
また、車線逸脱判定時には(S35でYES)、例えば音声や画面を用いて車室内で警報が発せられるから(S36)、車両1前方路面上の注意喚起情報Xの出現とあいまって、自車両1の乗員に対して車線逸脱の注意がより一層効果的に喚起されることとなる。
【0073】
また、注意喚起情報Xを自車両1前方の路面上に描くための照射手段100と、走行案内手段10の可視光ビーム照射手段とが兼用されるから、部品点数の増大ないしコストの増大が抑制されることとなる。
【0074】
また、可視光ビームLで自車両1の走行予定経路Aが提供されたときは(S13)、たとえ見通しが悪く視認性が低下する夜間の運転や雨天時の運転であっても、運転者は自車両1の走行予定経路Aを視覚を通じて明瞭に把握することができ、走行安全性が図られることとなる。
【0075】
また、可視光ビームLで自車両1の走行方向が提供されたときは(S23)、たとえ見通しが悪く視認性が低下する夜間の運転や雨天時の運転であっても、運転者は自車両1の走行方向を視覚を通じて明瞭に把握することができ、やはり走行安全性が図られることとなる。
【0076】
なお、前記実施形態において、図5のステップS37で、レーザ光線Lの照射により自車両1前方の路面上に描かれる注意喚起情報Xは点滅してもよいし、また点滅のたびにその描かれる内容が変化してもよい。
【0077】
また、自車両1前方に可視光ビームを照射する照射手段として、レーザ100に代えて、自車両1の前照灯を用いることもできる。その場合、前照灯の前に文字や図形又は記号を切り抜いたパターンを被せて、自車両1前方の路面上に注意喚起情報Xを描くようにする。
【0078】
また、自車両1が車線を逸脱するか否かの判定の手法は、種々のものが周知であるから、前記実施形態で記載したものに限らず、他のいずれの手法を用いても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0079】
以上、具体例を挙げて詳しく説明したように、本発明は、自車両が車線を逸脱すると判定されたときに、自車両の乗員に対して効果的に車線逸脱の注意を喚起し、さらには、自車両の走行車線の区分線がいまどこにあるのかを明示して、運転者の車両運転の十分な支援を図ることが可能な技術であるから、車両の安全技術の分野において広範な産業上の利用可能性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の最良の実施の形態に係る車両の運転支援装置のシステム構成図である。
【図2】(a)、(b)共、前記車両に搭載された走行案内コントロールユニットの制御動作の1例を示すフローチャートである。
【図3】前記図2(a)の場合に可視光ビームで提供される走行案内情報の具体的1例を示す平面図である。
【図4】前記図2(b)の場合に可視光ビームで提供される走行案内情報の具体的1例を示す斜視図である。
【図5】前記車両に搭載された車線逸脱警報コントロールユニットの制御動作の1例を示すフローチャートである。
【図6】前記図5の場合に可視光ビームで描かれる注意喚起情報の具体的1例を示す平面図である。
【図7】前記図5の場合に可視光ビームで描かれる注意喚起情報の他の例を示す平面図である。
【図8】(a)〜(d)共、前記図5の場合に可視光ビームで描かれる注意喚起情報のさらに他の例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0081】
1 自車両
10 走行案内手段(走行案内コントロールユニット)
60 判定手段、制御手段(車線逸脱警報コントロールユニット:S35,S37)
70 撮像手段(カメラ)
90 警報手段(警報装置)
100 照射手段(レーザ)
L 可視光ビーム(レーザ光線)
X 注意喚起情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両前方に可視光ビームを照射する照射手段と、
自車両前方の撮像画像から自車両が走行中の車線を検出し、この検出された車線に対して自車両が逸脱するか否かを判定する判定手段とを有する車両の運転支援装置であって、
前記判定手段で自車両が車線逸脱すると判定されたとき、自車両の乗員に対して車線逸脱の注意を喚起するための情報を自車両前方の路面上に描くように前記照射手段を制御する制御手段が備えられていることを特徴とする車両の運転支援装置。
【請求項2】
前記請求項1に記載の車両の運転支援装置であって、
前記注意喚起情報は、自車両の走行車線の区分線であることを特徴とする車両の運転支援装置。
【請求項3】
前記請求項2に記載の車両の運転支援装置であって、
前記区分線は、前記判定手段で自車両が車線逸脱すると判定された側の区分線であることを特徴とする車両の運転支援装置。
【請求項4】
前記請求項1から3のいずれか1項に記載の車両の運転支援装置であって、
前記可視光ビームは、レーザ光線であることを特徴とする車両の運転支援装置。
【請求項5】
前記請求項1から4のいずれか1項に記載の車両の運転支援装置であって、
前記判定手段で自車両が車線逸脱すると判定されたとき、自車両の乗員に対して車線逸脱の注意を喚起するための警報を車室内で発する警報手段が備えられていることを特徴とする車両の運転支援装置。
【請求項6】
前記請求項1から5のいずれか1項に記載の車両の運転支援装置であって、
自車両前方に可視光ビームを照射して自車両の乗員に走行を案内するための情報を提供する走行案内手段が備えられ、
前記照射手段は、この走行案内手段の可視光ビーム照射手段を利用したものであることを特徴とする車両の運転支援装置。
【請求項7】
前記請求項6に記載の車両の運転支援装置であって、
前記走行案内情報は、自車両の走行予定経路であることを特徴とする車両の運転支援装置。
【請求項8】
前記請求項6に記載の車両の運転支援装置であって、
前記走行案内情報は、自車両の走行方向であることを特徴とする車両の運転支援装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−26759(P2010−26759A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−187017(P2008−187017)
【出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】