説明

車両を形成する部品に付着した付着物を除去する除去装置

【課題】電力変換器を搭載した車両において、車両を形成する部品に車両外部から付着した付着物を低コストで除去する。
【解決手段】ハイブリッド車両は、ウィンドシールドガラス700と昇圧コンバータとを含む。ウィンドシールドガラス700の下部は、エンジンルーム840の内部まで延びている。エンジンルーム840には、昇圧コンバータが設けられる。昇圧コンバータは、昇圧用IPMと、リアクトル320とを含む。リアクトル320は、昇圧用IPMがオン/オフされる際に流れる高周波電流の周波数に応じた周波数で振動する。リアクトル320は、ケース322に固定されて収容される。ケース322は、エンジンルーム840の内部に設けられたウィンドシールドガラス700の下部の内面にボルトで直接固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両を形成する部品に付着した付着物を除去する技術に関し、特に、電力変換器を備えた車両の外装部品に付着した付着物を除去する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
降雨下で自動車を運転する場合、フロントガラス、サイドミラー、背面ガラスに付着する水滴を除去することは自動車を安全に運転する上で必要不可欠である。水滴を除去するために、従来、ガラスやミラーの表面にゴムを押しつけて水滴を拭き取る運動をさせる機械式ワイパーが使用されている。しかし、機械式ワイパーは水滴の拭き取りにゴムを使用するため、紫外線による劣化、摩擦による摩耗が確実に生じ一定期間で取り替える必要がある。さらに、ガラスやミラーに付着した水滴に油が混じっていると、ガラスやミラーの表面には油膜が生じ、油膜で光の干渉現象が起こり極めて視界が悪化する。これらの問題を解決する技術が、たとえば特開平8−140898号公報(特許文献1)に開示されている。
【0003】
この公報に開示されたワイパー装置は、自動車におけるウィンドシールドガラス、リアウィンドシールドガラスおよびサイドミラーに設置された超音波振動子と、超音波振動子に駆動信号を送信する高周波発生機とを含む。
【0004】
この公報に開示されたワイパー装置によると、高周波発生機からの駆動信号により、超音波振動子を、ガラスやミラーの材料に依存した弾性表面波固有振動数に一致する周波数で励振する。このようにすると、ガラスやミラーの表面に弾性表面波振動が生じ水滴の吸着力を低下させると同時に水滴の凝集力を高める。その結果、水滴は球状となり、水滴の自重あるいは走行中の風圧により、ガラスやミラーの表面から水滴を滑り落とすことができる。
【特許文献1】特開平8−140898号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されたワイパー装置においては、水滴を除去するために、超音波振動子と高周波発生機とを別途設ける必要があり、コストが高くなるという問題がある。
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、電力変換器を搭載した車両において、車両の外形を形成する部品の外面に付着した付着物を低コストで除去することができる除去装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明に係る除去装置は、車両を形成する部品に車両外部から付着した付着物を除去する。この除去装置は、車両に搭載された電力変換器を構成するスイッチング素子と、スイッチング素子に電気的に接続され、スイッチング素子の動作により高周波電流が流れる導体とを含む。導体は、部品の近傍に設けられる。
【0008】
第1の発明によると、車両には、電力変換器(インバータやコンバータ)が搭載される。電力変換器を構成するスイッチング素子の動作により、スイッチング素子に電気的に接続される導体に高周波電流が流れる。この導体は、車両を形成する部品(たとえばウィンドシールドガラス、ルーフパネル、サイドミラーなどの外装部品)の近傍に設けられる。そのため、たとえば導体が高周波電流が導体に流れることにより振動する振動体である場合において、導体を部品に固定することにより、部品に付着した付着物(水滴や汚れ)を除去する振動エネルギが導体から部品に伝達される。これにより、高周波電流を発生させる専用の装置を設けることなく、電力変換器を構成するスイッチング素子からの高周波電流を利用して、付着物を除去することができる。その結果、電力変換器を搭載した車両において、車両を形成する部品に車両外部から付着した付着物を低コストで除去することができる除去装置を提供することができる。
【0009】
第2の発明に係る除去装置においては、第1の発明の構成に加えて、導体は、高周波電流が流れることにより振動する振動体であって、部品に固定される。
【0010】
第2の発明によると、導体は、高周波電流が流れることにより振動する振動体である。この振動体が、車両を形成する部品に固定される。このようにすると、振動体が振動することにより部品も振動し、雨天時などに部品の外面に付着した水滴の吸着力が低下するとともに、水滴の凝集力が高まる。そのため、水滴の自重あるいは走行中の風圧により、部品の外面から水滴を滑り落とすことができる。さらに、振動の周波数が非可聴帯域に含まれる場合には、振動体および振動体に固定された部品が超音波振動する。これにより、部品の外面に付着した水滴を媒体として、部品の外面を超音波洗浄することができる。
【0011】
第3の発明に係る除去装置においては、第2の発明の構成に加えて、電力変換器は、コンバータである。振動体は、コンバータを構成するリアクトルである。
【0012】
第3の発明によると、コンバータを構成するリアクトルの振動を利用して、車両を形成する部品を振動させることができる。これにより、車両を形成する部品を振動させる専用の振動体を設ける必要がなく、さらなる低コスト化を図ることができる。
【0013】
第4の発明に係る除去装置は、第2の発明の構成に加えて、高周波電流の周波数が非可聴帯域に含まれるようにスイッチング素子の動作を制御するための手段をさらに含む。
【0014】
第4の発明によると、高周波電流の周波数が非可聴帯域に含まれるため、振動体および振動体に固定された部品が超音波振動する。これにより、部品の外面に付着した水滴を媒体として、部品の外面を超音波洗浄することができる。すなわち、部品の外面に付着した油脂などの汚れを、部品の外面に付着した水滴中に乳化させたり拡散させたりして、部品の外面から除去することができる。
【0015】
第5の発明に係る除去装置においては、第1〜4のいずれかの発明の構成に加えて、部品は、車両の室内と室外とを区分けするガラス部品およびボデー部品の少なくともいずれかである。
【0016】
第5の発明によると、車両の室内と室外とを区分けするガラス部品およびボデー部品の少なくともいずれかの外面に付着した付着物を除去することができる。
【0017】
第6の発明に係る除去装置においては、第1の発明の構成に加えて、部品は、車両の室外に設けられた導電性のサイドミラーである。導体は、コイル状の導線であって、サイドミラーの内面近傍にサイドミラーと接触しない状態で設けられる。
【0018】
第6の発明によると、コイル状の導線に高周波電流が流れる際、導線の周りに磁力線が発生する。導線はサイドミラーの内面付近に設けられているため、磁力線の影響を受けて導電性のサイドミラーに電流が流れて、サイドミラーが誘導加熱される。誘導加熱によって生じた熱エネルギにより、サイドミラーの外面に付着した水滴が蒸発する。そのため、専用のヒータを設けることなく、サイドミラーを加熱してサイドミラーの外面に付着した水滴を除去することができる。さらに、導線の周りに発生する磁力線によりサイドミラーを誘導加熱するため、導線とサイドミラーとは接触しない状態で設けられ、絶縁されている。そのため、たとえば導線に高電圧の電流が流れる場合であっても、別途専用の感電防止対策をサイドミラーに施す必要がなく、装置全体の簡素化および低コスト化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0020】
<第1の実施の形態>
図1を参照して、本実施の形態に係る除去装置が搭載されたハイブリッド車両について説明する。なお、本実施の形態に係る除去装置が搭載される車両は、ハイブリッド車両に限定されず、電気自動車であってもよい。
【0021】
このハイブリッド車両は、エンジン(図示せず)と、走行用バッテリ100と、コンデンサ200と、昇圧コンバータ300と、コンデンサ400と、インバータ用IPM500A,500Bと、モータジェネレータ600A,600Bと、ECU(Electronic Control Unit)1000とを含む。
【0022】
走行用バッテリ100は、複数のセルを直列に接続したモジュールをさらに複数直列に接続して形成される二次電池である。走行用バッテリ100の出力電圧は、従来の補器類の定格電圧(12ボルト程度)よりも高い値(数百ボルト程度)になる。
【0023】
コンデンサ200は、走行用バッテリ100から供給された直流電力の電圧を平滑化し、その平滑化された直流電力を昇圧コンバータ300へ供給する。
【0024】
昇圧コンバータ300は、コンデンサ200とコンデンサ400との間に設けられる。昇圧コンバータ300は、昇圧用IPM310と、リアクトル320とを含む。
【0025】
昇圧用IPM310は、2つのIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)と、IGBTのエミッタ側からコレクタ側に電流を流すように、各IGBTにそれぞれ並列に接続された2つのダイオードとを含む。昇圧用IPM310は、ECU1000から送信されるキャリア周波数に基づいて、各IGBTのゲートをオン/オフ(通電/遮断)する。
【0026】
リアクトル320は、一方端が走行用バッテリ100の電源ラインに接続され、他方端が昇圧用IPM310の2つのIGBTの中間点に接続される。昇圧用IPM310の各IGBTのゲートがオン/オフされる際、リアクトル320には、キャリア周波数に応じた高周波電流が流れる。この高周波電流がリアクトル320を流れると、リアクトル320は、高周波電流の周波数に応じた周波数で振動する。
【0027】
昇圧コンバータ300は、走行用バッテリ100から供給された直流電圧を、昇圧用IPM310とリアクトル320との協働によって昇圧し、コンデンサ400に供給する。また、昇圧コンバータ300は、ハイブリッド車両の回生制動時、モータジェネレータ600A,600Bによって発電され、インバータ用IPM500A,500Bによって変換された直流電圧を、昇圧用IPM310とリアクトル320との協働によって降圧し、走行用バッテリ100へ供給する。
【0028】
コンデンサ400は、昇圧コンバータ300から供給された直流電力の電圧を平滑化し、その平滑化された直流電力をインバータ用IPM500A,500Bへ供給する。
【0029】
インバータ用IPM500A,500Bは、6つのIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)と、IGBTのエミッタ側からコレクタ側に電流を流すように、各IGBTにそれぞれ並列に接続された6つのダイオードとを含む。インバータ用IPM500A,500Bは、ECU1000からの指令信号に基づいて各IGBTのゲートをオン/オフ(通電/遮断)することにより、走行用バッテリ100から供給された電流を、直流電流から交流電流に変換し、モータジェネレータ600A,600Bに供給する。
【0030】
ECU1000には、ワイパスイッチ1010がハーネスなどを介在させて接続されている。ワイパスイッチ1010は、ウィンドシールドガラスの外面に付着した水滴や汚れを除去するか否かを車両のユーザが選択するためのスイッチである。ユーザによりワイパスイッチ1010がオンされると、ワイパスイッチ1010は水滴や汚れの除去を要求する信号をECU1000に送信する。
【0031】
ECU1000は、車速センサ、シフトポジションセンサ、アクセル開度センサ、ストロークセンサ、スロットル開度センサ、エンジン回転数センサ(いずれも図示せず)などからの信号、ワイパスイッチ1010からの信号、ROM(Read Only Memory)に記憶されたマップおよびプログラムなどに基づいて、ハイブリッド車両が所望の走行状態となるように、機器類を制御する。
【0032】
図2を参照して、本実施の形態に係る除去装置の一部を構成するリアクトル320の搭載位置について説明する。
【0033】
ハイブリッド車両の室内と室外とは、フードパネル800、ルーフパネル810、バックドアパネル820、ウィンドシールドガラス700、バックドアガラス710などにより区分けされる。ハイブリッド車両の室内は、ダッシュパネル830によって、エンジンルーム840と、乗員室850とに分けられる。
【0034】
エンジンルーム840には、エンジンおよびモータジェネレータ600A,600Bの他に、昇圧用IPM310やインバータ用IPM500A,500Bが搭載される。ウィンドシールドガラス700の下部は、エンジンルーム840の内部まで延びている。
【0035】
リアクトル320は、ケース322に固定されて収容される。ケース322は、エンジンルーム840の内部に設けられたウィンドシールドガラス700の下部の内面にボルトで直接固定される。なお、ケース322をウィンドシールドガラス700の下部の内面に接着剤で固定してもよい。
【0036】
図3を参照して、本実施の形態に係るECU1000が実行するプログラムの制御構造について説明する。なお、このプログラムは、予め定められたサイクルタイムで繰り返し実行される。
【0037】
ステップ(以下、ステップをSと略す。)100にて、ECU1000は、ワイパスイッチ1010からの信号に基づいて、ワイパスイッチ1010がオンされたか否かを判断する。ワイパスイッチ1010がオンされると(S100にてYES)、処理はS102に移される。そうでないと(S100にてNO)、処理はS104に移される。
【0038】
S102にて、ECU1000は、キャリア周波数を超音波洗浄領域に含まれる超音波周波数F(1)に設定する。なお、ここでいう超音波洗浄領域とは、ウィンドシールドガラス700の外面に付着した雨滴を媒体として、ウィンドシールドガラス700の外面を超音波洗浄するのに適した非可聴周波数帯域(たとえば20〜30kHz程度)を意味するものとする。
【0039】
S104にて、ECU1000は、キャリア周波数をS102で設定した周波数F(1)よりも低い周波数F(2)に設定する。
【0040】
以上のような構造およびフローチャートに基づく、本実施の形態に係る除去装置の作用について説明する。
【0041】
雨天時などで、ワイパスイッチ1010がオンされると(S100にてYES)、昇圧用IPM310のキャリア周波数が超音波洗浄領域に含まれる超音波周波数F(1)に設定され(S102)、超音波周波数F(1)の交流成分を含む高周波電流が流れる。この高周波電流がリアクトル320を流れると、リアクトル320は、超音波周波数F(1)で振動する。リアクトル320はケース322を経由してウィンドシールドガラス700に固定されているため、図4の矢印Aに示すように、リアクトル320の振動がケース322を経由してウィンドシールドガラス700に伝達される。
【0042】
これにより、図4の矢印Bに示すように、雨天時に降ってきた水滴をウィンドシールドガラス700に付着させずにはじき飛ばすことができる。
【0043】
さらに、図4の矢印Cに示すように、ウィンドシールドガラス700に付着した水滴の凝集力を高めて球状とし、水滴の自重あるいは走行中の風圧により、ウィンドシールドガラス700から滑り落とすことができる。
【0044】
さらに、ウィンドシールドガラス700が超音波周波数F(1)で振動するため、ウィンドシールドガラス700の外面に付着した油脂などの汚れを、水滴中に乳化させたり拡散させたりして、ウィンドシールドガラス700の外面を超音波洗浄することができる。これにより、雨天時の前方視界を良くすることができる。
【0045】
一方、晴天時などで、ワイパスイッチ1010がオフされている場合(S100にてNO)には、キャリア周波数が超音波周波数F(1)よりも低い周波数F(2)に設定される(S104)ため、昇圧用IPM310のスイッチング損失および温度上昇が抑制される。
【0046】
なお、リアクトル320は昇圧用IPM310と同じエンジンルーム840内に設けられるため、リアクトル320と昇圧用IPM310と接続するハーネスの簡素化を図ることができる。
【0047】
以上のように、本実施の形態に係る除去装置によれば、昇圧コンバータを構成するリアクトルをウィンドシールドガラスに固定する。このリアクトルは、昇圧コンバータを構成する昇圧用IPMのスイッチング動作により生じる高周波電流により振動する。リアクトルの振動はウィンドシールドガラスに振動が伝達され、この振動によりウィンドシールドガラスの外面に付着した水滴や汚れが除去される。これにより、高周波電流を発生させる専用の装置および専用の振動体を設けることなく、ウィンドシールドガラスの外面に付着した雨滴や汚れを低コストで除去することができる。
【0048】
なお、本実施の形態においては、図3のフローチャートで、ワイパスイッチ1010がオンされているか否かによってキャリア周波数を変更する場合について説明したが、昇圧用IPM310の制御要件や耐熱要件を満足するのであれば、ワイパスイッチ1010がオンされているか否かに関わらず、キャリア周波数を常に超音波周波数F(1)に設定するようにしてもよい。
【0049】
<第1の実施の形態の変形例>
第1の実施の形態において、リアクトル320をウィンドシールドガラス700以外の部品に固定するようにしてもよい。
【0050】
たとえば、図5に示すように、リアクトル320を、エンジンルーム840内におけるフードパネル800の内面に固定してもよい。これにより、上述の第1の実施の形態と同様に、リアクトル320と昇圧用IPM310とを接続するハーネスの簡素化を図りつつ、フードパネル800の外面を洗浄することができ、洗車に必要なユーザの労力を軽減することができる。
【0051】
また、図6に示すように、リアクトル320をルーフパネル810の内面に固定してもよい。これにより、表面積の大きいルーフパネル810を振動させて、広い範囲を洗浄することができるため、洗車に必要なユーザの労力をより効果的に軽減することができる。
【0052】
また、図7に示すように、リアクトル320を複数に分割し、ウィンドシールドガラス700、フードパネル800およびルーフパネル810に固定するようにしてもよい。これにより、ハイブリッド車両の外面全体を洗浄することができる。
【0053】
<第2の実施の形態>
図8を参照して、本実施の形態に係る除去装置について説明する。本実施の形態に係る除去装置が搭載されたハイブリッド車両は、上述の第1の実施の形態に係るハイブリッド車両の構成と比較して、ECU1000、ワイパスイッチ1010に代えて、ECU2000、ミラーワイパスイッチ2010を含む点、サイドミラー900およびコイル2020をさらに含む点が異なる。これら以外の構成は、上述の第1の実施の形態に係るハイブリッド車両の構成と同じ構成である。同じ構成については同じ参照符号が付してある。それらの機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明はここでは繰返さない。
【0054】
サイドミラー900は、後方確認用のミラーであり、左右のフロントドア(図示せず)の前側の外面にそれぞれ設けられる。なお、図8には、左右いずれか一方のサイドミラー900のみが示されている。サイドミラー900は、銀などの導電性の金属膜が外面に施された鏡面部910と、樹脂などで形成されるボデー部920とを含む。
【0055】
コイル2020は、鏡面部910とボデー部920とで囲まれたサイドミラー900の内部空間の鏡面部910の内面付近に、鏡面部910に接触しない状態で設けられる。コイル2020は、一方端がリアクトル320に接続され、他方端が走行用バッテリ100の電源ラインに接続される。昇圧用IPM310の各IGBTのゲートがオン/オフされると、コイル2020には、リアクトル320を経由して、キャリア周波数に応じた高周波電流が流れる。なお、昇圧用IPM310やインバータ用IPM500A,500Bのスイッチングにより高周波電流が流れる場所であれば、コイル2020が設けられる場所がリアクトル320と走行用バッテリ100との間であることに限定されない。
【0056】
ECU2000には、ミラーワイパスイッチ2010がハーネスなどを介在させて接続されている。ミラーワイパスイッチ2010は、サイドミラー900の鏡面部910の外面に付着した水滴の除去を車両のユーザが選択するためのスイッチである。ユーザによりミラーワイパスイッチ2010がオンされると、ミラーワイパスイッチ2010は水滴の除去を要求する信号をECU2000に送信する。
【0057】
ECU2000は、車速センサ、シフトポジションセンサ、アクセル開度センサ、ストロークセンサ、スロットル開度センサ、エンジン回転数センサなどからの信号、ワイパスイッチ1010からの信号、ROM(Read Only Memory)に記憶されたマップおよびプログラムなどに基づいて、ハイブリッド車両が所望の走行状態となるように、機器類を制御する。
【0058】
図9を参照して、本実施の形態に係るECU2000が実行するプログラムの制御構造について説明する。なお、このプログラムは、予め定められたサイクルタイムで繰り返し実行される。
【0059】
S200にて、ECU2000は、ミラーワイパスイッチ2010からの信号に基づいて、ミラーワイパスイッチ2010がオンされたか否かを判断する。ミラーワイパスイッチ2010がオンされると(S200にてYES)、処理はS202に移される。そうでないと(S200にてNO)、処理はS204に移される。
【0060】
S202にて、ECU2000は、キャリア周波数を誘導加熱領域に含まれる周波数F(3)に設定する。なお、ここでいう誘導加熱領域とは、コイル2020を流れる電流による誘導加熱により、鏡面部910の外面に付着した水滴が蒸発するのに十分な熱エネルギを鏡面部910に生じさせるのに適した高周波数帯域を意味するものとする。
【0061】
S204にて、ECU2000は、キャリア周波数をS202で設定した周波数F(3)よりも低い周波数F(4)に設定する。
【0062】
以上のような構造およびフローチャートに基づく、本実施の形態に係る除去装置の作用について説明する。
【0063】
雨天時などで、ミラーワイパスイッチ2010がオンされると(S200にてYES)、キャリア周波数が誘導加熱領域に含まれる周波数F(3)に設定され(S202)、周波数F(3)の交流成分を含む高周波電流が流れる。この高周波電流がコイル2020を流れると、コイル2020周りに磁力線が発生する。この磁力線の影響を受けて、鏡面部910の外面に施された金属膜に電流が流れ、この電流のジュール熱により鏡面部910の金属膜が加熱(すなわち誘導加熱)される。
【0064】
そのため、図10の矢印Eに示すように、加熱された鏡面部910の熱エネルギが鏡面部910の外面に付着した水滴に伝達され、やがて、図10の矢印Fに示すように、水滴が蒸発する。これにより、専用のヒータを設けることなく、鏡面部910の水滴を除去することができる。さらに、冬季には、鏡面部910の熱エネルギによって鏡面部910の凍結を防止することもできる。これにより、雨天時や冬季においても、後方確認を適切に行なうことができる。
【0065】
一方、ミラーワイパスイッチ2010がオフされている場合(S200にてNO)には、キャリア周波数が周波数F(3)よりも低い周波数F(4)に設定される(S204)ため、昇圧用IPM310のスイッチング損失および温度上昇が抑制される。
【0066】
さらに、定格電圧が12ボルト程度の低電圧のヒータで鏡面部910を加熱する場合に比べて、走行用バッテリ100の高い出力電圧を低電圧に降圧するためのDC/DCコンバータも不要となるため、より低コスト化を図ることができる。
【0067】
さらに、コイル2020は、鏡面部910に接触しない状態で設けられ、コイル2020と鏡面部910とは絶縁されている。そのため、たとえばヒータを鏡面に接するように設けて走行用バッテリ100の高い出力電圧でヒータを駆動する場合に比べて、別途専用の感電防止対策を鏡面部910に施す必要がなく、除去装置全体の簡素化および低コスト化を図ることができる。
【0068】
以上のように、本実施の形態に係る除去装置によれば、昇圧コンバータと走行用バッテリとの間にコイルを設け、そのコイルを金属膜が施された鏡面部の内面付近に設けた。そのため、昇圧コンバータを構成する昇圧用IPMのスイッチング動作により生じる高周波電流がコイルを流れる際に、鏡面部が誘導加熱される。そのため、高周波電流を発生させる専用の装置および専用のヒータを設けることなく、サイドミラーの鏡面部の外面に付着した水滴を低コストで除去することができる。
【0069】
なお、本実施の形態においては、図9のフローチャートで、ミラーワイパスイッチ2010がオンされているか否かによってキャリア周波数を変更する場合について説明したが、本発明に係る除去装置においては、必ずしもキャリア周波数を変更する必要はない。たとえば、サイドミラー900やコイル2020の耐熱要件を満足するのであれば、ミラーワイパスイッチ2010がオンされているか否かに関わらず、キャリア周波数を周波数F(3)に設定するようにしてもよい。また、走行用バッテリ100とリアクトル320とを、コイル2020を経由せずに接続する状態とコイル2020を経由して接続する状態とを切り換えるリレーを設け、ミラーワイパスイッチ2010がオンされている場合にのみ、高周波電流がコイル2020に電流が流れるようにリレーを制御してもよい。
【0070】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る除去装置が搭載される車両のブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る除去装置を構成するリアクトルの搭載位置を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係るECUの制御構造を示すフローチャートである。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る除去装置の作用を示す図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態の変形例に係る除去装置を構成するリアクトルの搭載位置を示す図(その1)である。
【図6】本発明の第1の実施の形態の変形例に係る除去装置を構成するリアクトルの搭載位置を示す図(その2)である。
【図7】本発明の第1の実施の形態の変形例に係る除去装置を構成するリアクトルの搭載位置を示す図(その3)である。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係る除去装置が搭載される車両のブロック図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態に係るECUの制御構造を示すフローチャートである。
【図10】本発明の第2の実施の形態に係る除去装置の作用を示す図である。
【符号の説明】
【0072】
100 走行用バッテリ、200 コンデンサ、300 昇圧コンバータ、320 リアクトル、322 ケース、400 コンデンサ、500A,500B インバータ用IPM、600A,600B モータジェネレータ、700 ウィンドシールドガラス、710 バックドアガラス、800 フードパネル、810 ルーフパネル、820 バックドアパネル、830 ダッシュパネル、840 エンジンルーム、850 乗員室、900 サイドミラー、910 鏡面部、920 ボデー部、1000 ECU、1010 ワイパスイッチ、2010 ミラーワイパスイッチ、2020 コイル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を形成する部品に車両外部から付着した付着物を除去する除去装置であって、
前記車両に搭載された電力変換器を構成するスイッチング素子と、
前記スイッチング素子に電気的に接続され、前記スイッチング素子の動作により高周波電流が流れる導体とを含み、
前記導体は、前記部品の近傍に設けられる、除去装置。
【請求項2】
前記導体は、前記高周波電流が流れることにより振動する振動体であって、前記部品に固定される、請求項1に記載の除去装置。
【請求項3】
前記電力変換器は、コンバータであり、
前記振動体は、前記コンバータを構成するリアクトルである、請求項2に記載の除去装置。
【請求項4】
前記除去装置は、前記高周波電流の周波数が非可聴帯域に含まれるように前記スイッチング素子の動作を制御するための手段をさらに含む、請求項2に記載の除去装置。
【請求項5】
前記部品は、前記車両の室内と室外とを区分けするガラス部品およびボデー部品の少なくともいずれかである、請求項1〜4のいずれかに記載の除去装置。
【請求項6】
前記部品は、前記車両の室外に設けられた導電性のサイドミラーであり、
前記導体は、コイル状の導線であって、前記サイドミラーの内面近傍に前記サイドミラーと接触しない状態で設けられる、請求項1に記載の除去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−40262(P2009−40262A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−208245(P2007−208245)
【出願日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】