説明

車両フロア構造

【課題】互いに対向する上壁及び下壁を有するブレース部材によって、フロアトンネルの一方側から他方側に効率的に荷重を伝達することができる車両フロア構造を得る。
【解決手段】車両フロア構造10は、車幅方向中央部で車両上下方向の下向きに開口するフロアトンネル16を有する車体フロア11と、車幅方向に延在されると共に車両上下方向に離間しつつ対向する上壁40U及び下壁40Lを有しフロアトンネル16の開口部を跨ぐように配置されたトンネルブレース40と、トンネルブレース40の車幅方向両端を車体フロア11に締結するボルト45とを備える。ボルト45のボルト45の頭部45Bは、下壁40Lから車両上下方向の下方に突出しない範囲で、該下壁40Lにおける車幅方向外側を向く端面である被係合面40LAと車幅方向に対向して位置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両フロア構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のフロアに設けられたトンネルに対する車幅方向外側部分間を、該トンネルの開口部を跨ぐ部材にて連結する構造が知られている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−230435号公報
【特許文献2】特開2008−184125号公報
【特許文献3】特開平8−080874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、互いに対向する上壁及び下壁を有するブレース部材でトンネル両側を連結する場合、該ブレース部材にて車幅方向の反対側に効率的に荷重を伝達することについて、改善の余地がある。
【0005】
本発明は、互いに対向する上壁及び下壁を有するブレース部材によって、フロアトンネルの一方側から他方側に効率的に荷重を伝達することができる車両フロア構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明に係る車両フロア構造は、車幅方向中央部で車両上下方向の下向きに開口するフロアトンネルが形成されたフロアと、車幅方向に延在されると共に車両上下方向に離間しつつ対向する上壁及び下壁を有し、前記フロアにおけるフロアトンネルの開口部を跨ぐように配置されたブレース部材と、それぞれ前記ブレース部材の下壁から車両上下方向の下方に突出しない範囲で、該ブレース部材の上壁における車幅方向両端部を前記フロアにおける前記フロトンネルの車幅方向外側部分に締結すると共に、該ブレース部材の下壁における車幅方向外側を向く端面と車幅方向に対向して位置する少なくとも一対の締結具と、を備えている。
【0007】
請求項1記載の車両フロア構造では、車幅方向の一端側に車幅方向内向きの荷重が作用した場合、この荷重の一部はブレース部材の上壁によってフロアトンネルに対する荷重入力側とは反対側に伝達される。この荷重伝達に伴って締結具が車幅方向内向きに変位されると、該締結具はブレース部材の下壁における車幅方向外側を向く端面に係合する。これにより、車幅方向内向きの荷重の一部は、ブレース部材の下壁によってもフロアトンネルに対する荷重入力側とは反対側に伝達される。
【0008】
このように、請求項1記載の車両フロア構造では、互いに対向する上壁及び下壁を有するブレース部材によって、フロアトンネルの一方側から他方側に効率的に荷重を伝達することができる。
【0009】
請求項2記載の発明に係る車両フロア構造は、請求項1記載の車両フロア構造において、前記締結具における前記下壁の車幅方向外側を向く端面と車幅方向に対向する部分と、前記上壁との間には、スペーサ部材が介在されている。
【0010】
請求項2記載の車両フロア構造では、スペーサ部材を設けることで、上壁と下壁とが比較的大きく離間している場合でも、ブレース部材の下壁における車幅方向外側を向く端面に対し締結具を車幅方向に対向(車両上下方向にラップ)させることができる。
【0011】
請求項3記載の発明に係る車両フロア構造は、請求項1又は請求項2記載の車両フロア構造において、前記下壁には、前記締結具の一部を前記上壁との間に入り込ませるための貫通孔が形成されており、前記締結具は、前記下壁における前記貫通孔の内周面に対し車両上下方向にラップしている。
【0012】
請求項3記載の車両フロア構造では、下壁に形成された貫通孔を通じて締結具がブレース部材の下壁下面から突出しないように該ブレース部材内に進入される。上記の通り荷重伝達に伴って締結具が車幅方向内向きに変位されると、該締結部は、貫通孔の内周面(孔壁)のうち車幅方向外側を向く部分に係合し、該下壁に荷重を伝達する(支持させる)。
【0013】
請求項4記載の発明に係る車両フロア構造は、請求項1〜請求項3の何れか1項記載の車両フロア構造において、前記締結具は、車両上下方向の下端に位置する頭部を前記下壁における車幅方向外側を向く端面と車幅方向に対向させたボルトである。
【0014】
請求項4記載の車両フロア構造では、ブレース部材の上壁を貫通してフロア側のナット等に螺合されるボルトの頭部が、下壁の車幅方向外側を向く端面にラップして配置されている。このため、ブレース部材の組付等が容易である。
【0015】
請求項5記載の発明に係る車両フロア構造は、請求項1〜請求項4の何れか1項記載の車両フロア構造において、前記ブレース部材は、アルミニウム又はアルミニウムの合金の押出形材で構成されている。
【0016】
請求項5記載の車両フロア構造では、上壁と下壁とを繋ぐ立壁を複数有する構造、例えば「日」字状の断面や「目」字状の断面等の高剛性構造(剛性確保手段)を容易に得ることができるアルミ押出形材でブレース部材が構成されている。本車両フロア構造では、このようなブレース部材を用いた構成において、車幅方向の荷重伝達に上壁及び下壁を有効に利用することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように本発明に係る車両フロア構造は、互いに対向する上壁及び下壁を有するブレース部材によって、フロアトンネルの一方側から他方側に効率的に荷重を伝達することができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る車体フロア構造の要部を拡大して示す断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る車体フロア構造を構成するトンネルブレース、スペーサ部材及びボルトを示す分解斜視図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る車体フロア構造を示す図であって、図4の3−3線に沿った断面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る車体フロア構造を示す車両下方から見た斜視図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る車体フロア構造を示す図であって、(A)はフロアへの側突荷重の入力初期の断面図、(B)はトンネルブレース変形後の荷重伝達状況を示す断面図である。
【図6】(A)は、本発明の第1の実施形態に係る車体フロア構造による荷重伝達モードを説明する模式的な正面図、(B)は比較例に係る車体フロア構造による荷重伝達モードを説明する模式的な正面図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る車体フロア構造の要部を拡大して示す断面図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る車体フロア構造を構成するトンネルブレース、スペーサ部材及びボルトを示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の第1の実施形態に係る車両フロア構造10について、図1〜図6に基づいて説明する。なお、図中に適宜記す矢印FRは車両前後方向の前方向(走行方向)を、矢印UPは車両上下方向の上方向を、矢印INは車幅方向内側を、矢印OUTは車幅方向外側をそれぞれ示す。
【0020】
図4には、車両フロア構造10が適用された自動車車体Bの概略構造が車両下方側から見た斜視図にて示されている。また、図3には、図4の3−3線に沿った断面図が示されている。これらの図に示される如く、自動車車体Bは、それぞれ車両前後方向に長手とされた左右一対のロッカ12を備えている。それぞれ側部縦骨格部としての左右のロッカ12には、それぞれ車体フロア11を構成するフロアパネル14の車幅方向の外端部が接合されており、左右のフロアパネル14の車幅方向内端部は、車両前後方向に長手とされた中央縦骨格部としてのフロアトンネル16にそれぞれ接合されている。
【0021】
フロアトンネル16は、車両上下方向の下向きに開口してトンネル空間Tを形成したトンネル部としてトンネル本体18と、該トンネル本体18の車幅方向両側の開口縁部に形成された閉断面構造のトンネルサイド骨格部20とを含んで構成されている。図4に示される如く、フロアトンネル16を構成するトンネル本体18、トンネルサイド骨格部20は、それぞれフロアパネル14の車両前後方向の略全長に亘り形成されている。
【0022】
なお、各ロッカ12は、それぞれの車両前端がフロントピラー22の車両下端に連続されると共にそれぞれの車両後端がリヤピラー(センタピラーとして把握することも可能である)26に連続している。左右のフロントピラー22には、それぞれダッシュパネル24の車幅方向の異なる端部が接合されている。一方、左右のリヤピラー26には、それぞれルームパーティションパネル28の車幅方向の異なる端部が接合されている。ダッシュパネル24、ルームパーティションパネル28の車両下端は、フロアパネル14(車体フロア11)の車両前後端にも接合されている。
【0023】
また、図4に示される如く、自動車車体Bは、車幅方向に長手とされ、フロアパネル14の上側でロッカ12とフロアトンネル16のトンネルサイド骨格部20とを連結するクロスメンバ30を備えている。この実施形態では、それぞれ車両前後方向に並列すると共にフロアパネル14とで閉断面を成す前後一対のクロスメンバ30が設けられている。前後のクロスメンバ30には、図示しないシートレールの前後端が固定的に取り付けられるようになっている。さらに、前後のクロスメンバ30よりも車両前後方向の前側では、フロントクロスメンバ36がロッカ12とフロアトンネル16のトンネルサイド骨格部20とを連結している。
【0024】
以上説明した自動車車体Bは、その主要部を成すロッカ12、フロアパネル14(フロアトンネル16)、フロントピラー22、ダッシュパネル24、リヤピラー26、ルームパーティションパネル28、クロスメンバ30、フロントクロスメンバ36がそれぞれ炭素繊維強化プラスチック(以下、CFRPという)にて構成されている。
【0025】
そして、車両フロア構造10は、車幅方向に長手とされ、フロアトンネル16の開口部を跨ぐように左右のトンネルサイド骨格部20間を架け渡すブレース部材としてのトンネルブレース40を備えている。この実施形態では、トンネルブレース40は、トンネルサイド骨格部20における前後のクロスメンバ30の連結部位間、及びフロントクロスメンバ36の連結部位間を架け渡すように、計3つ設けられている。
【0026】
各トンネルブレース40は、アルミニウム又はアルミニウム合金の押出成形品である押出形材として構成されており、この実施形態では、図4に示される如く「目」字を倒伏させた如き断面形状を有する。具体的には、トンネルブレース40は、それぞれ平面視で車幅方向に長手の矩形状を成し車両上下方向に離間しつつ対向する上壁40U、下壁40L、これら上壁40Uと下壁40Lとを車両前後方向に離間した4箇所で別個に連結する4枚の立壁40Vとで構成されている。なお、この実施形態では、トンネルブレース40の上壁40Uは、下壁40Lに対し厚肉とされている。
【0027】
これらトンネルブレース40は、車幅(長手)方向の両端部において、締結によってトンネルサイド骨格部20に固定されている。この実施形態では、図2及び図4に示される如く、トンネルブレース40の車幅方向両端は、それぞれ車両前後方向の2箇所でトンネルサイド骨格部20に締結されるようになっている。以下、この締結構造について具体的に説明する。
【0028】
図1に示される如く、トンネルサイド骨格部20には、トンネルブレース40の締結部位において該トンネルサイド骨格部20の閉断面部を埋めるインサート材42と、インサート材42に埋め込まれた締結用カラー(カラーナット)44とが設けられている。締結用カラー44のめねじ部(ねじ孔)44Aは、トンネルブレース40の締結前においては、フロアパネル14の下面から車両下向きに開口(露出)されている。インサート材42は、例えばガラス繊維強化樹脂(GFR)やCFRPにてブロック状に形成されている。締結用カラー44は、アルミニウム又はアルミニウム合金等の金属材にて構成されている。
【0029】
図1及び図2に示される如く、トンネルブレース40の上壁40Uには、締結用カラー44のめねじ部44Aに螺合するボルト45のボルト本体45Aが貫通するボルト孔46が形成されている。また、下壁40Lには、ボルト45の頭部45Bを挿通可能な貫通孔48が形成されている。トンネルブレース40は、ボルト45のボルト本体45Aが締結用カラー44のめねじ部44Aに螺合されることで、該締結用カラー44とボルト45の頭部45Bとの間で締結されるようになっている。
【0030】
また、車両フロア構造10では、トンネルブレース40の上壁40Uとボルト45の頭部45Bとの間に、スペーサ部材50が介在されている。スペーサ部材50は、ボルト45のボルト本体45Aを貫通させる貫通孔50Aを有する筒状を成しており、この実施形態では図2にも示される如く円筒状を成している。スペーサ部材50は、例えば鉄(鋼材)、アルミニウム又はアルミニウム合金、CFRP、GFRP等の何れかにて構成されている。この実施形態では、下壁40Lの貫通孔48は、スペーサ部材50の通過可能に形成されている。なお、スペーサ部材50は、トンネルブレース40における車幅方向外向きに開口する開口端(長手方向端部)から上壁40Uと下壁40Lとの間に配置するようにしても良い。
【0031】
スペーサ部材50の車両上下方向の高さ(厚み)は、ボルト45の頭部45Bが下壁40Lの下面に対し車両上下方向の下方に突出せず、かつ該頭部45Bが貫通孔48の内周面すなわち下壁40Lの壁厚部分と車両上下方向にオーバラップする範囲に位置されるように、設定されている。より具体的には、スペーサ部材50の高さHsとボルト45の頭部45Bの高さHbとの和Htは、下壁40Lの上面から上壁40Uの下面までの高さ(間隔)Hiよりも大で、かつ下壁40Lの下面から上壁40Uの下面までの高さHoと同等以下となるように、スペーサ部材50の高さHsが設定されている。
【0032】
以上により、車両フロア構造10では、トンネルブレース40をトンネルサイド骨格部20に固定したボルト45の頭部45Bは、下壁40Lにおける貫通孔48の内周面のうち、車幅方向外側を向く被係合面40LAと、車幅方向において所定間隔の隙間Gを挟んで対向している。
【0033】
次に、第1の実施形態の作用を説明する。
【0034】
上記構成の車両フロア構造10では、自動車車体Bに対する側面衝突が生じた場合に、図5(A)に示される如く、フロアパネル14(前後のクロスメンバ30、フロントクロスメンバ36)に車幅方向内向きに荷重Fが作用する。この荷重Fの一部は、トンネルブレース40を介して反衝突側のフロアパネル14に伝達(分散)される。
【0035】
この際、先ず、衝突側のフロアパネル14からの荷重Fの一部は、トンネルブレース40の上壁40Uを介して反衝突側のフロアパネル14に伝達される(図5(A)の荷重Fu参照)。この側突荷重の支持に伴い、上壁40Uの面内変形が進行すると(上壁40Uがフロアトンネル16、立壁40Vと共に圧縮方向に変形されると)、ボルト45の頭部45Bが所定間隔の隙間Gを空走して下壁40Lにおける被係合面40LAに係合する。すると、この係合後は、荷重Fの一部は、下壁40L(及び立壁40V)を介する経路によっても反衝突側のフロアパネル14に伝達される(図5(B)の荷重Fl参照)。
【0036】
これにより、車両フロア構造10では、側突荷重を効率良く反衝突側に伝達(分散)することができると共に、この荷重(伝達)の持続性を向上することができる。この点につき、図6(B)に示される比較例に係る車両フロア構造100との比較で説明する。車両フロア構造100では、トンネルブレース40は、上壁40Uにおいてのみトンネルサイド骨格部20に結合されている。この車両フロア構造100に車幅方向の側突荷重Fが作用すると、この荷重は主に上壁40Uを介して反衝突側に伝達される。このとき、車両フロア構造100では、トンネルブレース40の中立軸(図心)CLから距離Lだけ離間した上壁40Uに荷重Fが作用するので、トンネルブレース40の上壁40Uには、距離Lと荷重Fとの積である曲げモーメントM0が作用する。このため、車両フロア構造100におけるトンネルブレース40は、構造的に折れ(座屈し)やすい。この曲げモーメントM0による上壁40Uの折れ(座屈)を防止するためには、該上壁40Uの壁厚を厚くする必要がある一方、荷重伝達効果を奏しない下壁40Lは下限壁厚制限があり、余肉とされる。
【0037】
これに対して車両フロア構造10では、上記の通りボルト45を介して下壁40Lにも側突荷重が入力され、該下壁40Lが側突荷重の伝達に寄与する。このため、車両フロア構造10におけるトンネルブレース40は、変形モードが軸圧壊とされる。具体的には図6(A)に示される如く、上壁40U、下壁40Lのそれぞれが荷重Fの一部を支持するため、下壁40Lに作用する荷重Flによって生じる曲げモーメントMlが、上壁40Uに作用する荷重Fuによる曲げモーメントMu(M0と同じ方向のモーメント)をキャンセルする。これにより、トンネルブレース40は、荷重Fの一部を軸力として反衝突側のフロアパネル14に伝達する。
【0038】
これにより、車両フロア構造10では、側面衝突に伴う荷重Fの一部をトンネルブレース40の上壁40U及び下壁40Lを介して効率的に反衝突側のフロアパネル14に伝達することができる。また、車両フロア構造10では、トンネルブレース40の変形モードが軸圧壊モードとされるため、該トンネルブレース40の折れ(座屈)が防止又は効果的に抑制され、該トンネルブレース40による荷重(伝達)の持続性が向上する。
【0039】
さらに、下壁40Lにおいても側突荷重を伝達する車両フロア構造10では、上壁40Uの厚肉化に頼ることなく側面衝突に対する要求強度を確保することができる。このため、車両フロア構造10における上壁40Uの壁厚は、車両フロア構造100における上壁40Uの壁厚に対し薄肉化されている。また、下壁40L、立壁40Vの壁厚(の下限)は、上壁40Uの板厚に依存する(比例関係とされる)ので、上壁40Uの薄肉化は、下壁40L及び立壁40Vの薄肉化にも寄与する。すなわち、車両フロア構造10では、所要の側面衝突性能を満たしつつ、自動車車体Bの軽量化に寄与する。
【0040】
また、車両フロア構造10では、上壁40Uとボルト45の頭部45Bとの間にスペーサ部材50を介在させる簡単な構造で、側突荷重を下壁40Lに伝達させる構成が実現された。また、単体としての必要強度で寸法形状が決まるトンネルブレース40に対し、スペーサ部材50の設定によって、容易にボルト45の頭部45Bを被係合面40LAとの対向(ラップ)位置に配置することができる。
【0041】
さらに、車両フロア構造10では、ボルト45を挿通させるための貫通孔48の内周面を利用して追加の加工等することなく被係合面40LAを得ることができる。また、この実施形態では、締結具としてボルト45が用いられているので、トンネルブレース40を車両下方からトンネルサイド骨格部20(フロアパネル14)に容易に締結することができる。
【0042】
またさらに、車両フロア構造10では、アルミニウム又はアルミニウム合金の押出形材より成るトンネルブレース40を備えている。これにより、上壁40U及び下壁40Lを有しかつ所要の剛性、強度を確保するための断面形状(例えば、上記「目」字状断面の他「日」字状断面等の剛性確保手段)有したトンネルブレース40を容易に形成することができる。換言すれば、車両フロア構造10は、剛性確保手段によるトンネルブレース40の剛性、強度を効率的に利用して衝突性能の確保と車体の軽量化との両立に寄与している。
【0043】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係る車両フロア構造60について、図7及び図8に基づいて説明する。なお、上記した第1の実施形態と基本的に同一の部品、部分には、上記第1の実施形態と同一の符号を付して説明を省略し、又図示を省略する場合がある。
【0044】
図7には、車両フロア構造60の要部が図1に対応する拡大断面図にて示されており、図8には、車両フロア構造60を構成するトンネルブレース62の被締結部分が図2に対応する分解斜視図にて示されている。これらの図に示される如く、車両フロア構造60は、トンネルブレース62を構成する下壁62Lに貫通孔48が形成されず、該下壁62Lの長手方向の端面がボルト45の頭部45Bとの被係合面62LAとされている点で、第1の実施形態に係る車両フロア構造10とは異なる。
【0045】
具体的には、トンネルブレース62は、上壁40Uと同様の寸法形状を有しボルト孔46が形成された上壁62Uと、上壁62Uの車両下方に離間しつつ該上壁62Uに対向する下壁62Lと、これら上壁62Uと下壁62Lとを車両前後方向に離間した4箇所で別個に連結する4枚の立壁62Vとで構成されている。
【0046】
下壁62Lは、上壁62Uに対し車幅方向に短く、上壁62Uの長手方向端面に対し車幅方向の内側に位置された長手方向の端面が上記の通り被係合面62LAとされている。被係合面62LAの車幅方向の位置は、車両フロア構造10における被係合面40LAと略一致されている。また、この実施形態では、被係合面62LAよりも車幅方向外側の立壁62Vは、下面が上壁62U側ほど車両上方に位置するように傾斜されている。
【0047】
このようなトンネルブレース62は、例えば「目」字状断面のアルミニウム又はアルミニウム合金の押出形材(下壁62L、立壁62V)の長手方向両端を切り欠いて形成することができる。車両フロア構造60の他の構成は、車両フロア構造10の対応する構成と基本的に同じである。
【0048】
したがって、第2の実施形態に係る車両フロア構造60によっても、第1の実施形態に係る車両フロア構造10と同様の作用によって同様の効果を得ることができる。
【0049】
なお、上記した実施形態では、CFRPにて主要構造が形成された自動車車体Bに車両フロア構造10、60が適用された例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、鋼板にて主要構造が構成された自動車車体に本発明を適用しても良い。また、トンネルブレース40、トンネルブレース62の数は、要求される衝突性能に応じて適宜設定されれば良い。
【0050】
また、上記した実施形態では、トンネルブレース40、62が「目」字状断面を有するアルミニウム又はアルミニウム合金の押出形材より成る例を示したが、本発明はトンネルブレース40、62の材質や製法によって限定されることはない。ただし、ボルト45の頭部45Bと被係合面40LA、62LAとの間に隙間G(スペーサ部材50の挿入スペース、工具スペース)が設定されることを考慮して、トンネルブレース40、62は延性材(延性破壊を生じる材料)にて構成することが望ましい。
【0051】
さらに、上記した実施形態では、上壁40U、62Uとボルト45の頭部45Bとの間にスペーサ部材50を介在させる例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、頭部45Bを伸ばした専用のボルトを用いてトンネルブレース40、トンネルブレース62を締結する構成としても良い。
【0052】
またさらに、上記した実施形態では、トンネルブレース40、62の車幅方両端がそれぞれ前後2箇所(2対の締結具)でトンネルサイド骨格部20に締結された例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、トンネルブレース40、62の車幅方両端がそれぞれ1箇所又は3箇所以上(1対又は3対以上の締結具)でトンネルサイド骨格部20に締結され構成としても良い。
【0053】
また、上記した実施形態では、締結具としてのボルト45の頭部45Bが被係合面40LAに干渉可能にラップして配置された例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、ナットが被係合面40LAに干渉可能にラップして配置された構成としても良い。この構成は、例えば、めねじ部44Aに代えて貫通孔を有する締結用カラー44に車両上方から挿通させたボルトを用いて、トンネルブレース40、62とフロアパネル14(前後のクロスメンバ30)上のシートレールを共締めする構成等に適用することができる。
【符号の説明】
【0054】
10 車両フロア構造
11 車体フロア(フロア)
16 フロアトンネル
20 トンネルサイド骨格部(ブレース部材の締結部位)
40 トンネルブレース(ブレース部材)
40L 下壁
40U 上壁
40LA 被係合面(車幅方向外側を向く端面)
45 ボルト
45B 頭部
48 透孔
50 スペーサ部材
60 車両フロア構造
62 トンネルブレース(ブレース部材)
62L 下壁
62U 上壁
62LA 被係合面(車幅方向外側を向く端面)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向中央部で車両上下方向の下向きに開口するフロアトンネルが形成されたフロアと、
車幅方向に延在されると共に車両上下方向に離間しつつ対向する上壁及び下壁を有し、前記フロアにおけるフロアトンネルの開口部を跨ぐように配置されたブレース部材と、
それぞれ前記ブレース部材の下壁から車両上下方向の下方に突出しない範囲で、該ブレース部材の上壁における車幅方向両端部を前記フロアにおける前記フロトンネルの車幅方向外側部分に締結すると共に、該ブレース部材の下壁における車幅方向外側を向く端面と車幅方向に対向して位置する少なくとも一対の締結具と、
を備えた車両フロア構造。
【請求項2】
前記締結具における前記下壁の車幅方向外側を向く端面と車幅方向に対向する部分と、前記上壁との間には、スペーサ部材が介在されている請求項1記載の車両フロア構造。
【請求項3】
前記下壁には、前記締結具の一部を前記上壁との間に入り込ませるための貫通孔が形成されており、
前記締結具は、前記下壁における前記貫通孔の内周面に対し車両上下方向にラップしている請求項1又は請求項2記載の車両フロア構造。
【請求項4】
前記締結具は、車両上下方向の下端に位置する頭部を前記下壁における車幅方向外側を向く端面と車幅方向に対向させたボルトである請求項1〜請求項3の何れか1項記載の車両フロア構造。
【請求項5】
前記ブレース部材は、アルミニウム又はアルミニウムの合金の押出形材で構成されている請求項1〜請求項4の何れか1項記載の車両フロア構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−247653(P2010−247653A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−98977(P2009−98977)
【出願日】平成21年4月15日(2009.4.15)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】