説明

車両側部のエネルギー吸収構造

【課題】エアバッグの展開性を向上させた車両側部のエネルギー吸収構造を提供する。
【解決手段】車両側部のエネルギー吸収構造は、シートバックの幅方向外側に上下方向に延びるように設けられたシートバックサイドフレーム部材と、このシートバックサイドフレーム部材のシート幅方向外側に取付けられ、車両衝突時に膨張展開するエアバッグを備えたエアバッグ装置と、シートバックの少なくとも側面の一部を覆うバックボードと、を有し、シート側面視で、前記エアバッグ装置の前端部が前記バックボードの前端部よりも車両前方に位置するように設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートのエネルギー吸収構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両側部のエネルギー吸収構造としては、車両用シートのシートバックのシート幅方向外側部に設けられたサイドサポート内にエアバッグ装置を収納した構造が採用されている。
このような車両側部のエネルギー吸収構造の一例が特許文献1及び特許文献2に記載されている。特許文献1及び特許文献2に記載された車両側部のエネルギー吸収構造においては、サイドサポート内にエアバッグ装置が収納され、このエアバッグ装置が収納されている部分を完全に覆うように、シートバックの後方から側面全体にカバー(ボード)が配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−006961号公報
【特許文献2】特開2006−205765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の車両側部のエネルギー吸収構造においては、上述したように、サイドサポート内に収納されたエアバッグ装置を覆うため、シート後方から側面全体にカバーが配置されているため、エアバッグが展開する際に、エアバッグがカバーを外側に押して広げながら展開しなければならず、展開しにくいという問題が発生する。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、エアバッグの展開性を向上させた車両側部のエネルギー吸収構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を達成するために、本発明の車両側部のエネルギー吸収構造は、シートバックの幅方向外側に上下方向に延びるように設けられたシートバックサイドフレーム部材と、このシートバックサイドフレーム部材のシート幅方向外側に取付けられ、車両衝突時に膨張展開するエアバッグを備えたエアバッグ装置と、シートバックの少なくとも側面の一部を覆うバックボードと、を有し、シート側面視で、エアバッグ装置の前端部が前記バックボードの前端部よりも車両前方に位置するように設けられていることを特徴としている。
このように構成された本発明においては、エアバッグ展開時にバックボードを車両外側に移動させる必要があるが、バックボードによりシートバックの少なくとも側面の一部を覆うようにし、さらに、エアバッグ装置の前端部がバックボードの前端部よりも車両前方に位置するようにしたので、バックボードによってエアバッグの展開が妨げられることがなく、エアバッグの展開性が向上する。
【0007】
本発明は、好ましくは、更に、バックボードのシート幅方向内側で前記シートバックサイドフレーム部材に固定されたエアバッグブラケットを有し、バックボードが、前記エアバッグブラケットを介して前記サイドフレーム部材に固定されている。
このように構成された本発明においては、バックボードがエアバッグブラケットを介してサイドフレーム部材に固定されているので、バックボードをシートバックの側面において確実に固定することができる。
【0008】
本発明において、好ましくは、エアバッグブラケットは、エアバッグ装置の少なくともシート幅方向外側の一部を後方から覆うエアバッグ展開ガイド部材である。
このように構成された本発明においては、エアバッグ展開ガイド部材により、エアバッグの展開をガイドしてエアバッグを車両前方に効果的に展開させることができる。また、このエアバッグ展開ガイド部材を設けることにより、エアバッグケースを設けなくても大型化に対応することができる。さらに、上述したように、バックボードがエアバッグブラケット(エアバッグ展開ガイド部材)に固定されているため、エアバッグ展開時にバックボードが展開の妨げになることがない。
【0009】
本発明は、好ましくは、更に、シートバックを被装する表皮材にエアバッグ展開圧を受けて開口可能な脆弱部であって、この開口からエアバッグがシートバックの外側に展開する前記脆弱部と、エアバッグの展開圧によって生じる表皮材の伸張を抑制するための低伸張部材と、を有し、表皮材は、シート幅方向外側から脆弱部まで延びる第1表皮材と、シートバックの前側のシート幅方向中央側から脆弱部まで延びる第2表皮材とからなり、低伸張部材は、第1表皮材よりシート内側に設けられ、その一端部が脆弱部近傍にて第1表皮材に固定され、その他端部がバックボードと前記エアバッグブラケットとの固定位置よりも車両後方位置にてシートバックサイドフレームに固定されている。
このように構成された本発明においては、シートバックサイドフレーム部材にバックボードを取付ける前に低伸張部材を取付けることができるので、低伸張部材及びバックボードのシートバックサイドフレーム部材への取り付け性が向上する。
【0010】
本発明において、好ましくは、低伸張部材は、バックボードとエアバッグブラケットとの固定位置に対応する部分にバックボードとエアバッグブラケットとを固定する固定部材を貫通する貫通穴が形成されている。
このように構成された本発明においては、バックボードとエアバッグブラケットとを固定する固定部材が低伸張部材に形成された貫通穴を貫通した状態で低伸張部材を取り付けるようにしたので、低伸張部材の上下方向長さの設定の自由度が増加する。
【0011】
本発明は、好ましくは、更に、シートバックを被装する表皮材にエアバッグ展開圧を受けて開口可能な脆弱部であって、この開口からエアバッグがシートバックの外側に展開する前記脆弱部と、エアバッグの展開圧によって生じる前記表皮材の伸張を抑制するための低伸張部材と、を有し、表皮材は、シート幅方向外側から脆弱部まで延びる第1表皮材と、シートバックの前側のシート幅方向中央側から脆弱部まで延びる第2表皮材とからなり、低伸張部材は、第1表皮材よりシート内側に設けられ、その一端部が脆弱部近傍にて第1表皮材に固定され、その他端部がバックボードとエアバッグブラケットとの固定位置よりも車両前方位置でエアバッグブラケット又は第1表皮材に固定されている。
このように構成された本発明においては、バックボードをエアバッグブラケットに取り付ける前に低伸張部材をエアバッグブラケット又は第1表皮材を固定することができるため、低伸張部材の取り付けを確実に行うことができる。
【0012】
本発明は、好ましくは、更に、シートバックの背面に設けられ、着座乗員の背部を車両後方側から支持するランバーサポートを備えるランバーサポート装置を有し、このランバーサポート装置は、シートバックのシート幅方向外側に、ランバーサポートの位置や形態を調整するためのランバー操作部を備え、ランバーサポートとランバー操作部はランバーシャフトにより連結され、このランバーシャフトがバックボードに形成された孔に挿入され、ランバー操作部は、エアバッグ展開時にランバーシャフトから外れて飛散することを防止するように係合部材を介してランバーシャフトに係合されている。
このように構成された本発明においては、エアバッグ展開時にランバー操作部がランバーシャフトから外れても、ランバー操作部が係合部材によりランバーシャフトに取り付けられているので、ランバー操作部が飛散することがなく、乗員の保護性能が向上する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の車両側部のエネルギー吸収構造によれば、車両用シートの側部に設けられたエアバッグの展開性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態による車両側部のエネルギー吸収構造を備えた車両用シートの斜視図である。
【図2】本発明の実施形態による車両側部のエネルギー吸収構造を備えた車両用シートの部分透視側面図である。
【図3】図2のIII−III線に沿って切断した部分断面図である。
【図4】本発明の別の実施形態による車両側部のエネルギー吸収構造を有する車両用シートの図3と同様の部分断面図である。
【図5】本発明の更に別の実施形態による車両側部のエネルギー吸収構造を有する車両用シートの図3と同様の部分断面図である。
【図6】図2のVI−VI線に沿って切断した部分断面図である。
【図7】ランバーサポートの駆動機構を示す斜視図である。
【図8】ランバーシャフトとランバーレバーとの結合状態を示す分解斜視図である。
【図9】ランバーシャフトとランバーレバーとの取付け状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態による車両側部のエネルギー吸収構造について説明する。
先ず、図1乃至図3により、本発明の第1実施形態による車両側部のエネルギー吸収構造を備えた車両用シートを説明する。図1は本発明の第1実施形態による車両側部のエネルギー吸収構造を備えた車両用シートの斜視図であり、図2は本発明の第1実施形態による車両側部のエネルギー吸収構造を備えた車両用シートの部分透視側面図であり、図3は図2のIII−III線に沿って見たサイドサポート部の内部構造を示す部分断面図である。
【0016】
図1に示すように、符号1は、車室内の前列の左側に配置された車両用シート(ドライバーズシート)を示し、この車両用シート1は、シートクッション3と、このシートクッション3の後端に回動自在に取り付けられたシートバック2と、このシートバック2の上端に取り付けられたヘッドレスト9とを備えている。シートバック2の両側部にはサイドサポート部4が設けられ、これらのサイドサポート部4のうち車幅方向外側のサイドサポート部4の下方には、後述するランバーサポート装置のランバーレバー6が設けられている。
【0017】
図2に示すように、車両用シート1のシートバック2には、バックボード8と、シートバックサイドフレーム10と、サイドエアバッグ装置12が設けられている。バックボード8は、シートの背面全体と側面の一部とを覆うようにシートバック2に設けられ、サイドエアバッグ装置12は、バックボード8とシートバックサイドフレーム10との間の空間に設けられている。
【0018】
図3に示すように、サイドエアバッグ装置12は、エアバッグ15と、このエアバッグ15の後方に設けられエアバッグ15を展開させるための爆発を起こすインフレータ16とを備えている。エアバッグ装置12は、全体が布製のカバー11で覆われている。この布製のカバー11は、テープ(図示せず)により接着され、エアバッグ展開時にテープが剥がれるようになっている。さらに、エアバッグ装置12のエアバッグ15の前端部15aは、バックボード8の前端部8aよりも車両前方に位置している。
【0019】
サイドエアバッグ装置12の背面にはエアバッグブラケット14が設けられ、このエアバッグブラケット14は平面視で断面がU字形をしており、サイドエアバッグ装置12の後方及び両側面の一部を覆うようにその両側部が前方に向って延びている。このエアバッグ装置12のエアバッグ15、インフレータ16は、ボルト・ナット17aにより、エアバッグブラケット14を介してシートバックサイドフレーム10に取り付けられている。
【0020】
サイドサポート部4の前端部4aから中央前方部4bを通ってシート中央部にかけてクッション材18が配置されている。サイドサポート部4は、その表面が、表皮材20、22によって覆われている。バックボード8、表皮材20、22によって囲まれた空間内にクッション材18、サイドエアバッグ装置12、サイドフレーム10が収容されている。表皮材20、22は、第1表皮材20と第2表皮材22からなり、第1表皮材20は、バックボード8の前端部8aの内側からサイドサポート部4の側面を通って前方部4aまで延び、第2表皮材22は、サイドサポート部4の前方部4aの、第1表皮材20の端部と近接した部分から中央部4bを通ってシート中央部に向って延びている。
【0021】
第1表皮材20と第2表皮材22の内側には、エアバッグ15の展開の際に表皮材20、22の伸張を抑制するための低伸張部材である第1力布24及び第2力布26がそれぞれ設けられている。第1力布24は、第1表皮材20の前方先端部、すなわちサイドサポート部4の前方部4aから、サイドエアバッグ装置12と第1表皮材20との間の空間を通り、次いでバックボード8の後述するクリップ30を越えて、バックボード8とブラケット14との間の空間を通って、サイドサポート部4の後方部4cに向って延びている。第2力布26は、第2表皮材22の前方先端部すなわちサイドサポート部4cの前方部4aから、クッション材18と第1力布24との間の空間を通り、次いでクッション材18とサイドエアバッグ装置12との間の空間を通り、更にクッション材18とシートバックサイドフレーム10との間の空間を通って、サイドサポート部4の後方部4cに向って延び、ボルト・ナット17bによってサイドフレーム10に固定されている。第1力布24と第2力布26のそれぞれの後端は、互いに重ねられて、サイドサポート部4内の空間の後部で、ボルト・ナット17bによってシートバックサイドフレーム10に固定されている。第1表皮材20と第1力布24、及び、第2表皮材22と第2力布26は、サイドサポート4の前方部4aの近傍でそれぞれ先端部が縫い合わされている。
【0022】
第1表皮材20と第2表皮材22との間には、縫い目の強度を他の部位よりも弱くした脆弱部28が設けられている。この脆弱部28は、エアバッグが展開するときにエアバッグの展開圧力によって内側から破断されて、エアバッグが通過するための開口を形成する。
【0023】
バックボード8の前端部8aには、バックボード8の内側面に、バックボード8の内方に向って突出するクリップ30が設けられ、このクリップ30は、第1表皮材20と、第1力布24と、ブラケット14とを貫通して、ブラケット14の側部のうち、外側の方の側部の前端部近傍において、この側部の内側表面上まで延びている。クリップ30によって、第1表皮材20と、第1力布24とがブラケット14に固定されている。
【0024】
この第1実施形態において、サイドエアバッグ装置12は以下のようにしてサイドサポート部4内に取り付けられる。即ち、シート外側に位置する方の側部の前端部にあらかじめ貫通孔を設けたエアバッグブラケット14と、エアバッグブラケット14の内側に配置したエアバッグ装置12とを、ボルト・ナット17aを介してサイドフレーム10に取付ける。次いで、あらかじめ先端部を縫い合わせた第2表皮材22と第2力布26とを、第2力布26の縫い合わされていない方の端部をボルト・ナット17bを介してサイドフレーム10の後部に取り付け、第2表皮材22と第2力布の26との間の空間にクッション材18を配置する。次いで、第1力布24と第1表皮材20との先端部をあらかじめ縫い合わせておき、第1力布24の縫い合わされていない端部を、ボルト・ナット17bを介して、第2力布26が取り付けられているのと同じ場所で、サイドフレーム10に取り付ける。次いで、第1表皮材20を、縫合部で折り返して、第1力布24の外側表面上に重ね合わせた後に、クリップ30が通る位置、すなわちエアバッグブラケット14の孔と整合する位置に、第1表皮材20、第1力布24を貫通する孔を設ける。この孔と、エアバッグブラケット14の孔とを通して、バックボード8の前端部内側にあらかじめ取り付けられたクリップ30を貫通させ、バックボード8をエアバッグブラケット14に固定する。このように、第1表皮材20、第1力布24にクリップ30を通すための貫通孔を設けるので、第1表皮材20、第1力布24の上下方向長さの設定の自由度を増加させることができる。
【0025】
次に、上述した本発明の第1実施形態による車両側部のエネルギー吸収構造を備えた車両用シートの動作(作用)を説明する。
車両が、側方からの衝撃により、側突が生じた場合、インフレータ16が爆発して、エアバッグ装置12のエアバッグ15が展開する。このとき、エアバッグ15は、テープが剥がれたエアバッグカバー11から第1力布24と第2力布26との間を通って前方に進み、第2の力布26、クッション材18と、第1表皮材20、第1力布24とを左右に押し広げながら、脆弱部28に達し、エアバッグ15の展開圧力によって脆弱部28を内側から破断し、破断された開口部からシートの外部に出て、展開される。
【0026】
エアバッグ装置12のエアバッグ15の前端部15aがバックボード8の前端部8aよりも前方に配置されているので、エアバッグ15の展開時にバックボード8がエアバッグ15の展開を妨げることがない。また、断面U字形状のエアバッグブラケット14が、サイドエアバッグ装置12の後方及び両側面の一部を覆うように両側部が前方に向って延びているので、エアバッグケースを設けなくても、このエアバッグブラケット14がエアバッグ15の展開時にエアバッグ15をガイドし、エアバッグの展開方向が前方に向けられ、効果的にエアバッグ15を展開することができる。
【0027】
次に、図4により本発明の第2実施形態による車両側部のエネルギー吸収構造を有する車両用シートを説明する。図4は、本発明の第2実施形態による車両側部のエネルギー吸収構造を有する車両用シートの図3と同様の部分断面図である。ここでは、図3に示す第1実施形態と異なる構成のみ説明する。即ち、第2実施形態においては、サイドエアバッグ装置12は、エアバッグケース13を有し、このエアバッグケース13内にエアバッグ15と、エアバッグ15の後方に設けられたインフレータ16とが収納されている。エアバッグケース13の中央の前端部13aにはエアバッグ15が展開するときの出口となる開口部が設けられている。このエアバッグ装置12のエアバッグケース13の前端部13aは、バックボード8の前端部8aよりも車両前方に位置している。さらに、本実施形態の車両用シートでは、サイドサポート部4の前方部4aから中央前方部4bを通ってシート中央部にかけて配置されるクッション材18aの他に、サイドエアバッグ装置12の前方の、第1力布24と第2力布26との間の空間にも、サイドサポート4の前方部4aから側方かつ後方に延びるように、クッション材18bが設けられている。
【0028】
次に、上述した本発明の第2実施形態による車両側部のエネルギー吸収構造を備えた車両用シートの動作(作用)を説明する。
車両が、側方からの衝撃により、側突が生じた場合、インフレータ16が爆発して、エアバッグ装置12のエアバッグ15が展開する。このとき、エアバッグ15は、エアバッグケース13の開口部13aから第1力布24と第2力布26との間を通って前方に進み、第2の力布26、クッション材18a、18bと、第1表皮材20、第1力布24とを左右に押し広げながら、脆弱部28に達し、エアバッグ15の展開圧力によって脆弱部28を内側から破断し、破断された開口部からシートの外部に出て、展開される。
このように、第1力布24と第2力布26との間にもクッション材18bが設けられていることによって、エアバッグ15が、その展開時に、クッション材18aと18bとの間の空間を通って脆弱部28に進むようになるので、エアバッグの展開方向を確実に前方に向けることができる。
【0029】
次に、図5により本発明の第3実施形態による車両側部のエネルギー吸収構造を有する車両用シートを説明する。図5は、本発明の第3実施形態による車両側部のエネルギー吸収構造を有する車両用シートの図3に示す第1実施形態に対応する部分断面図である。ここでは、図3に示す第1実施形態と異なる構成のみ説明する。即ち、第3実施形態においては、第1力布24をサイドサポート部4内の空間の後方まで延ばすことなく、クリップ30よりも前方位置で、第1表皮材20に縫い付けるようにしている。第1力布24を第1表皮材20に縫い付けるほか、第1力布24をエアバッグブラケット14に固定してもい。
【0030】
この第3実施形態において、サイドエアバッグ装置12以下のようにしてサイドサポート部4内に取り付けられる。即ち、シート外側に位置する方の側部の前端部にあらかじめ貫通孔を設けたエアバッグブラケット14と、エアバッグブラケット14の内側に配置したエアバッグ装置12とを、ボルト・ナット17aを介してサイドフレーム10に取付ける。次いで、あらかじめ先端部を縫い合わせた第2表皮材22と第2力布26とを、第2力布26の縫い合わされていない方の端部をサイドフレーム10の後部にボルト・ナット17bを介して取り付け、第2表皮材22と第2力布の26との間にクッション材18を配置する。次いで、第1力布24と第1表皮材20との先端部をあらかじめ縫い合わせる。第1表皮材20の長さは、縫合部から第1力布24の端部までの長さよりも、縫合部から第1表皮材20の端部までの長さがクリップ30を取り付けるために必要な分の長さだけ長くなるようになっている。次いで、第1力布24の縫い合わされていない端部を、エアバッグブラケット14の外方側部の前端部の外方側表面上に固定する。または、第1表皮材20を縫合部で折り返して第1力布24の上に重ね、第1力布24の縫い合わされていない方の端部を第1表皮材20に縫い付けるなどして固定する。次いで、第1表皮材20を、エアバッグブラケット14のシート外方に位置する方の側部の外側表面上に位置するようにエアバッグブラケット14の外側表面上に重ね合わせた後、クリップ30が通る位置、すなわちエアバッグブラケット14の孔と整合する位置に、第1表皮材20を貫通する孔を設ける。この孔と、エアバッグブラケット14の孔とを通して、バックボード8の前端部内側にあらかじめ取り付けられたクリップ30を貫通させ、バックボード8をエアバッグブラケット14に固定する。このように、第1力布24が、クリップ30よりも車両前方位置でエアバッグブラケット14または第1表皮材20に固定されているので、バックボード8をエアバッグブラケット14に取り付ける前に第1力布24をエアバッグブラケット14または第1表皮材20に固定することができるため、第1力布24の取付けを確実に行うことができる。
【0031】
次に、図6乃至図9により本発明の第4実施形態による車両側部のエネルギー吸収構造を有する車両用シートを説明する。図6は、図2のVI−VI線に沿って切断した、ランバーサポート装置を示す部分断面図であり、図7は、ランバーサポートの駆動機構を示す斜視図であり、図8は、ランバーシャフトとランバーレバーとの結合状態を示す分解斜視図であり、図9は、ランバーシャフトとランバーレバーとの取付け状態を示す平面図である。
図6に示すように、シートバック2には、乗員の腰部または背部を車両後方側から支持するためのランバーサポート装置31が備えられている。ランバーサポート装置31は、板状のランバーサポート32と、ランバーサポート32を支持するための、シート幅方向に延びるトーションバー34と、ランバーサポート32の位置および形態を変化させるための操作部であるランバーレバー6と、トーションバー34を介してランバーレバー6とランバーサポート32とを結合するためのランバーシャフト36とを備えている。
【0032】
ランバーレバー6と、ランバーサポート32及びトーションバー34との間には、シートバックサイドフレーム10が配置され、ランバーレバー6は、バックボード8を貫いてシート内部からシート幅方向外側に延びている。ランバーシャフト36は、サイドフレーム10を貫通して延び、回動可能に支持されている。
【0033】
図7は、ランバーサポートの駆動機構37を示す斜視図である。図7に示すように、ランバーシャフト36のシート幅方向内側端部は、コイル状スプリング40及び歯部46を有する移動部材44と、歯部46と噛合って枢支軸50を中心に回動可能なセクタギア48を介して、トーションバー34のシート幅方向外側端部に連結されている。コイル状スプリング40の内側端部は、ベースプレート38に当接しており、このベースプレート38は、サイドフレーム10に固定するためのフランジ部42を備えている。
【0034】
図8は、ランバーサポートの駆動機構37を示す斜視図、図9は、ランバーシャフトとランバーレバーとの取付け状態を示す平面図である。図8に示すように、ランバーレバー6は、乗員が把持するためのレバー形状のノブ部52と、ランバーシャフト36の一端側を保持するシャフト保持部54とを備える。ノブ部52は、レバー形状の代わりにダイヤル式操作が可能な筒形状であってもよい。
【0035】
シャフト保持部54には、スプライン溝が形成されたシャフト孔62が設けられており、このシャフト孔62にキー溝が設けられたランバーシャフト36の先端部分58を嵌合することにより、ランバーシャフト36とランバーレバー6のシャフト保持部54とが、スプライン結合によって回転不能に結合される。
【0036】
シャフト保持部54の外周部の車両後側部分には、ランバーシャフト36とランバーレバー6とを固定するためのCリング状の止め輪68を嵌め込むためのスリット56が設けられている。このスリット56に、車両後方から前方に向って止め輪68が嵌め込まれるようになっている。
【0037】
ランバーレバー6はプラスチック製であり、ランバーレバー6のノブ部52の内側の上端部60に、プラスチックの弾性を利用してヒンジ作用を行うPPヒンジ64が一体的に設けられている。このヒンジ64の先端には、ランバーシャフト36を挿通することができる内径を有する係止リング部66が一体的に備えられている。一体的なヒンジ64の代わりに、ノブ部52とは別体のヒンジを上端部60と係止リング部66との間に設けてもよい。
【0038】
PPヒンジ64の弾性を利用してヒンジ部を屈曲させ、係止リング部66とシャフト保持部54とを同軸に設定し、係止リング部66を通して、シャフト孔62にランバーシャフト36の先端部分58を嵌合する。その後、止め輪68をスリット56に車両後方から前方に向って嵌め込むことによって、図9に示すようにランバーシャフト36とランバーレバー6とが固定される。
【0039】
ヒンジ64は、ノブ部52のレバー先端部とは逆側に位置するように配置されている。また、係止リング部66は、サイドエアバッグ装置12のシート幅方向における外側端部よりも内方に位置している。
このような構成によれば、サイドエアバッグ装置12のエアバッグの膨張展開時に、ランバーレバー6がエアバッグの展開力を受けたとしても、ヒンジ64の係止リング部66は、ランバーシャフト36に結合されたままであるので、ランバーレバー6をランバーシャフト36に繋ぎ止めることができ、ランバーレバー6の飛び出しを防止することができる。また、サイドエアバッグ装置12のエアバッグの膨張展開時に、ランバーレバー6がエアバッグの展開力を受け、シャフト保持部54が破損したり、またはランバーレバー6がランバーシャフト36から抜け出た場合には、ランバーレバー6がシート幅方向外側に向って外れるようになっている。
【0040】
また、ランバーシャフト36とランバーレバー6とを固定するための止め輪68は、ランバーレバー6のシャフト保持部54の外周部に設けたスリット56に車両後方から前方に向って嵌め込まれている。この結果、サイドエアバッグ装置12のエアバッグの膨張展開時に、ランバーレバー6がエアバッグの展開力を受け、シャフト保持部54が破損したり、またはランバーレバー6がランバーシャフト36から抜け出た場合には、車両後方からスリットに嵌め込まれている止め輪68が車両後方側に移動するので、止め輪68が前方側に飛び出して乗員を直撃することがなく、安全性を高めることができる。
【0041】
係止リング部66とノブ部52の上端部60とを接続するヒンジ64は、サイドエアバッグ装置12のエアバッグの膨張展開時にその展開力を直接に受け易いノブ部52のレバー先端部ではなく、その逆側に位置しているので、ヒンジ64にエアバッグの展開力が直接に加わることが抑制され、ランバーレバー6の飛散を防止することができる。
また、係止リング部66はサイドエアバッグ装置12のシート幅方向における外側端部よりも内方に位置しているので、サイドエアバッグ装置12のエアバッグの膨張展開時にその展開力がシャフト側結合部に加わることが抑制され、ランバーレバー6の飛散を防止することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 シート
2 シートバック
3 シートクッション
4 サイドサポート部
6 ランバーレバー
8 バックボード
10 シートバックサイドフレーム
11 カバー
12 サイドエアバッグ装置
13 エアバッグケース
13a エアバッグケースの前端部(開口部)
14 ブラケット
15 エアバッグ
15a エアバッグの前端部
16 インフレータ
17a、17b ボルト・ナット
18、18a、18b クッション材
20 第1表皮材
22 第2表皮材
24 第1力布
26 第2力布
28 脆弱部
30 クリップ
31 ランバーサポート装置
32 ランバーサポート
34 トーションバー
36 ランバーシャフト
37 ランバーサポートの駆動機構
38 ベースプレート
40 コイル状スプリング
42 フランジ部
44 移動部材
46 歯部
48 セクタギア
50 枢支軸
52 ノブ部
54 シャフト保持部
56 スリット
58 先端部分
60 上端部
62 シャフト孔
64 PPヒンジ
66 係止リング部
68 止め輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートバックの幅方向外側に上下方向に延びるように設けられたシートバックサイドフレーム部材と、
このシートバックサイドフレーム部材のシート幅方向外側に取付けられ、車両衝突時に膨張展開するエアバッグを備えたエアバッグ装置と、
シートバックの少なくとも側面の一部を覆うバックボードと、を有し、
シート側面視で、前記エアバッグ装置の前端部が前記バックボードの前端部よりも車両前方に位置するように設けられていることを特徴とする車両用シートのエネルギー吸収構造。
【請求項2】
更に、前記バックボードのシート幅方向内側で前記シートバックサイドフレーム部材に固定されたエアバッグブラケットを有し、
前記バックボードが、前記エアバッグブラケットを介して前記サイドフレーム部材に固定されている請求項1に記載の車両用シートのエネルギー吸収構造。
【請求項3】
前記エアバッグブラケットは、前記エアバッグ装置の少なくともシート幅方向外側の一部を後方から覆うエアバッグ展開ガイド部材である請求項2に記載の車両用シートのエネルギー吸収構造。
【請求項4】
更に、前記シートバックを被装する表皮材にエアバッグ展開圧を受けて開口可能な脆弱部であって、この開口からエアバッグがシートバックの外側に展開する前記脆弱部と、前記エアバッグの展開圧によって生じる前記表皮材の伸張を抑制するための低伸張部材と、を有し、
前記表皮材は、前記シート幅方向外側から前記脆弱部まで延びる第1表皮材と、前記シートバックの前側のシート幅方向中央側から前記脆弱部まで延びる第2表皮材とからなり、
前記低伸張部材は、前記第1表皮材よりシート内側に設けられ、その一端部が前記脆弱部近傍にて前記第1表皮材に固定され、その他端部が前記バックボードと前記エアバッグブラケットとの固定位置よりも車両後方位置にて前記シートバックサイドフレームに固定されている請求項2又は請求項3に記載の車両用シートのエネルギー吸収構造。
【請求項5】
前記低伸張部材は、前記バックボードと前記エアバッグブラケットとの固定位置に対応する部分に前記バックボードと前記エアバッグブラケットとを固定する固定部材を貫通する貫通穴が形成されている請求項4に記載の車両用シートのエネルギー吸収構造。
【請求項6】
更に、前記シートバックを被装する表皮材にエアバッグ展開圧を受けて開口可能な脆弱部であって、この開口からエアバッグがシートバックの外側に展開する前記脆弱部と、前記エアバッグの展開圧によって生じる前記表皮材の伸張を抑制するための低伸張部材と、を有し、
前記表皮材は、前記シート幅方向外側から前記脆弱部まで延びる第1表皮材と、前記シートバックの前側のシート幅方向中央側から前記脆弱部まで延びる第2表皮材とからなり、
前記低伸張部材は、前記第1表皮材よりシート内側に設けられ、その一端部が前記脆弱部近傍にて前記第1表皮材に固定され、その他端部が前記バックボードと前記エアバッグブラケットとの固定位置よりも車両前方位置で前記エアバッグブラケット又は前記第1表皮材に固定されている請求項2に記載の車両用シートのエネルギー吸収構造。
【請求項7】
更に、前記シートバックの背面に設けられ、着座乗員の背部を車両後方側から支持するランバーサポートを備えるランバーサポート装置を有し、
このランバーサポート装置は、シートバックのシート幅方向外側に、前記ランバーサポートの位置や形態を調整するためのランバー操作部を備え、
前記ランバーサポートとランバー操作部はランバーシャフトにより連結され、このランバーシャフトが前記バックボードに形成された孔に挿入され、
上記ランバー操作部は、エアバッグ展開時にランバーシャフトから外れて飛散することを防止するように係合部材を介してランバーシャフトに取り付けられている請求項1乃至6の何れか1項に記載の車両用シートのエネルギー吸収構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−184668(P2010−184668A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−31457(P2009−31457)
【出願日】平成21年2月13日(2009.2.13)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】