説明

車両制御装置

【課題】蓄えた圧力エネルギーを動力に変換して駆動輪に対して出力することが可能な車両において、発進時の走行性能を向上することができる車両制御装置を提供すること。
【解決手段】入力される動力を作動流体の圧力エネルギーに変換して蓄圧装置に蓄えること、および蓄圧装置に蓄えられた圧力エネルギーを動力に変換して車両の駆動輪に対して出力することが可能な変換装置と、蓄電装置に蓄えられた電力を動力に変換して出力する電動機と、を備え、車両の発進が予測される所定状況(S1肯定、S2肯定)において、蓄電装置に蓄えられた電力を電動機および変換装置によって作動流体の圧力エネルギーに変換(S3)して蓄圧装置に蓄える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、蓄積したエネルギーを利用する技術が提案されている。特許文献1には、車両の駆動軸の回転によりコンプレッサを駆動して、燃料ガスをバッファタンクに蓄圧する蓄圧回生制御手段と、車両の駆動軸の回転により回転電機を駆動して、発電された電気エネルギを蓄電装置に蓄電する蓄電回生制御手段とを備え、バッファタンクの燃料ガスにより、コンプレッサを力行駆動する燃料電池車両の制御装置の技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−235160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
蓄圧装置に蓄えた圧力エネルギーを動力に変換して車両の駆動輪に対して出力することが可能な車両において、発進時の走行性能を向上できることが望まれている。
【0005】
本発明の目的は、蓄えた圧力エネルギーを動力に変換して駆動輪に対して出力することが可能な車両において、発進時の走行性能を向上することができる車両制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車両制御装置は、入力される動力を作動流体の圧力エネルギーに変換して蓄圧装置に蓄えること、および前記蓄圧装置に蓄えられた圧力エネルギーを動力に変換して車両の駆動輪に対して出力することが可能な変換装置と、蓄電装置に蓄えられた電力を動力に変換して出力する電動機と、を備え、前記車両の発進が予測される所定状況において、前記蓄電装置に蓄えられた電力を前記電動機および前記変換装置によって前記作動流体の圧力エネルギーに変換して前記蓄圧装置に蓄えることを特徴とする。
【0007】
上記車両制御装置において、前記所定状況は、前記車両のシステム起動後であって、かつ発進前の状況であることが好ましい。
【0008】
上記車両制御装置において、前記所定状況は、搭乗者が前記車両に乗車することに伴う前記車両の状態変化を検出した状況であることが好ましい。
【0009】
上記車両制御装置において、予め定められた発進予定時刻あるいは前記車両の過去の走行履歴の少なくともいずれか一方に基づいて前記車両の発進を予測することが好ましい。
【0010】
上記車両制御装置において、前記所定状況であって、かつ前記蓄圧装置に蓄えられた圧力エネルギーが所定量未満である場合に前記蓄電装置に蓄えられた電力を前記作動流体の圧力エネルギーに変換して前記蓄圧装置に蓄えることが好ましい。
【0011】
上記車両制御装置において、前記所定状況において前記蓄電装置に蓄えられた電力を前記作動流体の圧力エネルギーに変換するときに、前記変換装置および前記電動機と前記駆動輪との動力の伝達を遮断することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明にかかる車両制御装置は、入力される動力を作動流体の圧力エネルギーに変換して蓄圧装置に蓄えること、および蓄圧装置に蓄えられた圧力エネルギーを動力に変換して車両の駆動輪に対して出力することが可能な変換装置と、蓄電装置に蓄えられた電力を動力に変換して出力する電動機と、を備え、車両の発進が予測される所定状況において、蓄電装置に蓄えられた電力を電動機および変換装置によって作動流体の圧力エネルギーに変換して蓄圧装置に蓄える。よって、本発明にかかる車両制御装置によれば、発進時に圧力エネルギーを動力に変換して駆動輪に対して出力することで、発進時の走行性能を向上することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、実施形態にかかる車両制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図2】図2は、実施形態にかかるハイブリッド車両の概略構成を示す図である。
【図3】図3は、油圧システムおよびM/Gの回生効率の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施形態にかかる車両制御装置につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0015】
(実施形態)
図1から図3を参照して、実施形態について説明する。本実施形態は、車両制御装置に関する。図1は、実施形態にかかる車両制御装置の動作を示すフローチャート、図2は、実施形態にかかるハイブリッド車両の概略構成を示す図である。
【0016】
本実施形態のハイブリッドシステムは、例えば、大型車両に搭載される。ハイブリッド車両100は、油圧式の力行/回生装置(油圧ポンプモータ32)と、電気式の力行/回生装置(M/G4)とを備えている。大型車両では、電気式の動力源のみで必要な出力を得ようとすると、高コストとなりやすい。このため、本実施形態では、電気式のライトなハイブリッドシステムと、油圧エネルギーによりHV走行可能な油圧システム3とを組み合わせている。M/G4および油圧ポンプモータ32をそれぞれ高効率となる領域で動作させることで、総合的なエネルギー利用効率の向上を図る。
【0017】
具体的には、加速域では油圧エネルギーを使い油圧走行もしくはアシスト走行し、軽負荷域では電気エネルギーによりEV走行もしくはアシスト走行することで燃費を向上させる。
【0018】
ここで、発進時に油圧エネルギーが十分に蓄えられた状態でないと、高トルク要求がなされた場合に油圧システム3が十分にアシストすることができない可能性がある。
【0019】
本実施形態の車両制御装置1−1は、システム起動後でかつ発進前に、バッテリー5の電力を圧力エネルギーに変換してアキュームレータ31に蓄える。これにより、発進前にアキュームレータ31の油圧エネルギーを増加させておくことができ、油圧システム3によって高トルク要求に応じたトルクを出力することが可能となる。よって、本実施形態によれば、発進時の走行性能を向上させ、ドライバビリティの向上を図ることができる。
【0020】
図2に示すように、ハイブリッド車両100のハイブリッドシステム100Aは、エンジン1、トランスミッション(T/M)2、油圧システム3、モータジェネレータ(M/G)4、バッテリー5、インバータ6およびECU30を備えている。また、本実施形態の車両制御装置1−1は、ハイブリッド車両100に搭載されてハイブリッド車両100を制御するものであり、油圧システム3、M/G4、バッテリー5およびECU30を備える。
【0021】
エンジン1は、ハイブリッド車両100の動力源である。エンジン1は、燃料の燃焼エネルギーを出力軸の回転運動に変換して出力する。エンジン1の出力軸は、T/M2の入力軸と接続されている。T/M2は、例えば、自動変速機であり、エンジン1から入力される動力を変速して出力軸2aに出力する。T/M2の出力軸2aは、第一クラッチC1を介して第一ギアG1に接続されている。第一ギアG1は、第二クラッチC2を介して駆動輪7と接続されている。
【0022】
油圧システム3は、入力される動力を作動流体の圧力エネルギーに変換して蓄えることができると共に、蓄えた圧力エネルギーを動力に変換して出力することができる。油圧システム3は、アキュームレータ31、油圧ポンプモータ32およびリザーブタンク33を有する。
【0023】
アキュームレータ31は、作動流体を加圧状態で蓄える蓄圧装置である。本実施形態の油圧システム3における作動流体としては、例えば作動油を用いることができる。アキュームレータ31は、高圧の作動油を蓄えることが可能な蓄圧容器であり、高圧油路34を介して油圧ポンプモータ32と接続されている。油圧ポンプモータ32は、低圧油路35を介してリザーブタンク33と接続されている。リザーブタンク33は、作動油を貯留する貯留タンクである。油圧ポンプモータ32の回転軸32aは、第三クラッチC3を介して第二ギアG2と接続されている。
【0024】
油圧ポンプモータ32は、油圧ポンプとしての機能を有すると共に、油圧モータとしての機能も有している変換装置である。具体的には、油圧ポンプモータ32は、油圧ポンプとして機能する場合、第三クラッチC3を介して回転軸32aに入力される動力によって駆動されることにより、低圧油路35を介してリザーブタンク33の作動油を吸引し、吸引した作動油を加圧して高圧油路34に吐出する。高圧油路34に吐出された作動油は、アキュームレータ31に蓄圧される。油圧ポンプモータ32は、ハイブリッド車両100の走行時に駆動輪7から伝達される動力を圧力に変換して出力することができる。つまり、油圧ポンプモータ32は、ハイブリッド車両100の運動エネルギーを作動流体の圧力に変換して出力する圧力回生装置としての機能を有する。
【0025】
また、油圧ポンプモータ32は、油圧モータとして機能する場合、アキュームレータ31に蓄圧された油圧によって駆動されることにより、圧力エネルギーを動力に変換して回転軸32aに出力する。第三クラッチC3が係合状態であると、油圧ポンプモータ32が出力する動力は、第三クラッチC3、第二ギアG2および第一ギアG1および第二クラッチC2を介して駆動輪7に伝達されてハイブリッド車両100を走行させることができる。つまり、油圧ポンプモータ32は、アキュームレータ31に蓄えられた圧力エネルギーをハイブリッド車両100の走行用の動力に変換して駆動輪7に対して出力することができる。油圧ポンプモータ32を駆動した作動油は、低圧油路35を介してリザーブタンク33に流入する。
【0026】
油圧ポンプモータ32は、油圧モータとして出力する動力の大きさ、および油圧ポンプとして機能するときの負荷の大きさを可変に制御することができる。油圧ポンプモータ32は、例えば、斜板ポンプや斜軸ポンプ等の可変容量式のポンプモータとすることができる。油圧ポンプモータ32は、例えば、容量0から最大容量まで無段階にポンプ容量/モータ容量を制御できるものとすることができる。油圧ポンプモータ32は、ポンプ容量を増減させることによってポンプ負荷、すなわち負荷トルクを増減させることができる。また、油圧ポンプモータ32は、モータ容量を増減させることによって回転軸32aに出力する動力、すなわち出力トルクを増減させることができる。
【0027】
M/G4は、電力の供給により駆動する電動機としての機能(力行機能)と、機械エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機としての機能(回生機能)とを兼ね備えている。M/G4としては、例えば、交流同期型のモータジェネレータを用いることができる。M/G4は、インバータ6を介してバッテリー5と接続されている。バッテリー5は、電力を蓄えること、および蓄えた電力を放電することが可能な蓄電装置である。インバータ6は、直流電流と交流電流との変換を行う電力変換装置である。また、インバータ6は、M/G4の出力トルクおよび発電量を制御することができる。
【0028】
M/G4の回転軸4aは、第四クラッチC4を介して第三ギアG3と接続されている。M/G4は、電動機として機能する場合、バッテリー5からインバータ6を介して供給される電力を動力に変換して回転軸4aに出力する。第四クラッチC4が係合状態であると、M/G4が出力する動力は、第三ギアG3、第二ギアG2、第一ギアG1および第二クラッチC2を介して駆動輪7に対して出力される。つまり、M/G4は、バッテリー5に蓄えられた電力をハイブリッド車両100の走行用の動力に変換して駆動輪7に対して出力することができる。
【0029】
また、M/G4は、発電機として機能する場合、第四クラッチC4を介して回転軸4aに入力される動力によって駆動されて発電する。例えば、M/G4は、ハイブリッド車両100の走行時に駆動輪7から第二クラッチC2、第一ギアG1、第二ギアG2、第三ギアG3および第四クラッチC4を介して回転軸4aに入力される動力により駆動されて発電することができる。つまり、M/G4は、ハイブリッド車両100の運動エネルギーを電力に変換して出力する電力回生装置として機能することができる。M/G4によって発電された電力は、例えばバッテリー5に充電される。
【0030】
第一ギアG1と第二ギアG2とは常時噛み合っており、相互に動力を伝達することができる。また、第二ギアG2と第三ギアG3とは常時噛み合っており、相互に動力を伝達することができる。従って、第一ギアG1と第三ギアG3とは第二ギアG2を介して相互に動力を伝達することができる。
【0031】
ECU30は、コンピュータを有する電子制御ユニットである。ECU30は、ハイブリッド車両100の走行制御を行う走行制御装置としての機能を有している。また、本実施形態のECU30は、回生制御を行う回生制御装置としての機能を有している。ECU30には、エンジン1、T/M2、アキュームレータ31、油圧ポンプモータ32、バッテリー5、インバータ6および各クラッチC1,C2,C3,C4が接続されている。エンジン1、T/M2、油圧ポンプモータ32、インバータ6および各クラッチC1,C2,C3,C4は、ECU30によって制御される。
【0032】
バッテリー5には、バッテリー5の充放電状態や電圧等を検出するセンサが接続されている。ECU30は、このセンサによる検出結果に基づいて、バッテリー5の充電状態SOCを取得することができる。充電状態SOCは、バッテリー5の充電量を示すものである。アキュームレータ31には、アキュームレータ31内の圧力を検出する圧力センサが設けられている。ECU30は、圧力センサによる検出結果に基づいて、アキュームレータ31内の油圧を取得することができる。
【0033】
各クラッチC1,C2,C3,C4は、それぞれ開放状態と係合状態とに切替え可能である。各クラッチC1,C2,C3,C4は、油圧等によって開放状態と係合状態とを切替えるアクチュエータをそれぞれ有している。これらのアクチュエータがECU30から出力される指令に応じて作動することにより、各クラッチC1,C2,C3,C4の状態が制御される。なお、各クラッチC1,C2,C3,C4は、完全係合状態のみならず、半係合状態に制御することも可能であり、更に、半係合状態における動力の伝達度合いを制御することも可能である。
【0034】
ECU30は、エンジン1、油圧システム3、M/G4の少なくともいずれか1つが出力する動力によってハイブリッド車両100を走行させることができる。例えば、ECU30は、少なくともエンジン1の動力によってハイブリッド車両100を走行させるエンジン走行を実行することができる。エンジン1が出力する動力を駆動輪7に出力する場合、第一クラッチC1および第二クラッチC2を係合状態とする。また、ECU30は、エンジン走行において、シフトポジションや走行状態に応じてT/M2の変速比を制御する。
【0035】
エンジン走行において、ECU30は、油圧システム3あるいはM/G4の少なくともいずれか一方が出力する動力を駆動輪7に伝達してハイブリッド車両100を走行させることができる。ECU30は、例えば、ハイブリッド車両100の加速時等にエンジン1のトルクが不足する場合に、油圧システム3あるいはM/G4の少なくとも一方にエンジン1をアシストさせる。
【0036】
例えば、油圧システム3によって動力を出力させる場合、ECU30は、第三クラッチC3を係合状態とすると共に、アキュームレータ31に蓄圧された油圧によって油圧ポンプモータ32を駆動する。アキュームレータ31内の加圧された作動油は、油圧ポンプモータ32に供給され、油圧ポンプモータ32を駆動して回転軸32aを回転させる。つまり、油圧ポンプモータ32において、油圧エネルギーが回転軸32aの回転動作に変換される。回転軸32aに出力された動力は、第三クラッチC3、第二ギアG2、第一ギアG1および第二クラッチC2を介して駆動輪7に伝達される。
【0037】
ECU30は、M/G4によって動力を出力させる場合、第四クラッチC4を係合状態とすると共に、バッテリー5に充電された電力によってM/G4を駆動する。M/G4が出力する動力は、第四クラッチC4、第三ギアG3、第二ギアG2、第一ギアG1および第二クラッチC2を介して駆動輪7に伝達される。ECU30は、油圧システム3およびM/G4にそれぞれ動力を出力させてエンジン1をアシストさせることもできる。
【0038】
また、油圧システム3およびM/G4は、それぞれエンジン1の動力によらずに単独でハイブリッド車両100を走行させることが可能である。例えば、ECU30は、エンジン1の動力によらずに油圧システム3が出力する動力によってハイブリッド車両100を走行させる油圧走行を実行することができる。また、ECU30は、エンジン1の動力によらずにM/G4が出力する動力によってハイブリッド車両100を走行させるEV走行を実行することができる。また、ECU30は、エンジン1の動力によらずに油圧システム3およびM/G4が出力する動力によってハイブリッド車両100を走行させることも可能である。
【0039】
ECU30は、車速およびアクセル開度などの条件に基づいて、駆動輪7に伝達するべき要求トルクあるいは要求駆動力を算出し、その算出結果に基づいて、エンジン1、T/M2、油圧システム3、インバータ6およびクラッチC1,C2,C3,C4を制御する。要求トルクや要求駆動力は、ハイブリッド車両100の走行負荷に対応する。
【0040】
油圧システム3は、大きなパワーを出力する場合に有利である。これは、油圧式はバッテリーを使用する電気式と比較して高いパワー密度を確保可能であることによる。バッテリー5は、エネルギー密度は高いがパワー密度は低いという特性を有する。一方、油圧式は、バッテリーと比較してパワー密度が高いという特性を有する。
【0041】
大きなパワーを得ようとする場合、ハイブリッドシステム100Aの大型化につながるが、油圧式は、電気式と比較してシステムの大型化を抑制しつつパワーアップを図ることが可能である。このため、油圧システム3は、例えば、大型車両に搭載される場合のハイブリッドシステム100Aのコンパクト化において有利である。
【0042】
ECU30は、軽負荷でトルクの小さな領域は基本的にM/G4の動力でハイブリッド車両100を走行させる。このとき、ECU30は、エンジン1を停止し、かつ第一クラッチC1および第三クラッチC3を開放状態としてEV走行モードとする。
【0043】
また、発進などの大きなトルクが必要な領域は油圧エネルギーでハイブリッド車両100を走行させる。このとき、ECU30は、エンジン1を停止し、かつ第一クラッチC1および第四クラッチC4を開放状態とし、油圧走行モードとする。なお、ECU30は、エンジン1を停止させることに代えて、第四クラッチC4のみを開放状態としてエンジン1を油圧エネルギーでアシストさせてハイブリッド車両100を走行させることもできる。
【0044】
また、ECU30は、ハイブリッド車両100の減速時に回生制御を行うことができる。回生制御は、例えば、ハイブリッド車両100において制動要求が検出されている場合になされる。本実施形態のハイブリッド車両100は、油圧システム3およびM/G4のそれぞれによって回生を行うことができる。例えば、ECU30は、M/G4に回生発電を行わせる場合、第四クラッチC4を係合状態とし、かつM/G4に発電を行わせる。また、ECU30は、油圧システム3に回生を行わせる場合、第三クラッチC3を係合状態とし、かつ油圧ポンプモータ32を油圧ポンプとして作動させる。
【0045】
回生時は、ECU30は、油圧を優先して回生を実施する。油圧での回生時は、第一クラッチC1および第四クラッチC4を開放状態とし、油圧ポンプモータ32を油圧ポンプとして作動させてアキュームレータ31に油圧を蓄圧する。油圧を優先して回生を行うことで、発進時等の大きなトルクが要求される場面に備えてアキュームレータ31に蓄圧しておくことができる。
【0046】
ECU30は、アキュームレータ31の油圧が所定の圧力以上になると、第四クラッチC4を係合状態とし第三クラッチC3を開放状態として電気側で回生を実施する。ECU30は、油圧および電気のいずれのエネルギーも一杯となると、第一クラッチC1を係合状態としかつ第三クラッチC3および第四クラッチC4を開放状態として、エンジンブレーキとブレーキ装置による機械的なブレーキで車両の運動エネルギーを消費する。なお、回生時には補機負荷などに応じてエンジン1を停止したまま回生したり、エンジン1を運転させたまま回生をしたりするなど、回生の態様を状況によって切り替えてもよい。
【0047】
ここで、車両の発進時には、高トルクが要求される場合がある。油圧システム3は、M/G4よりも高トルクの出力に適したシステムであるため、車両の発進時にはアキュームレータ31に油圧が蓄積された状態となっていることが望ましい。
【0048】
本実施形態の車両制御装置1−1は、ハイブリッド車両100の発進が予測される所定状況において、バッテリー5に蓄えられた電力をM/G4および油圧ポンプモータ32によって作動流体の圧力エネルギーに変換してアキュームレータ31に蓄える。これにより、ハイブリッド車両100の発進時に油圧システム3によって走行することを可能とし、運転者の高トルク要求がなされた場合にもその要求を満たすことができる。よって、本実施形態の車両制御装置1−1によれば、発進時の走行性能を向上させ、ドライバビリティの向上を図ることが可能となる。
【0049】
図1を参照して、本実施形態の車両制御装置1−1の動作について説明する。図1に示す制御フローは、例えばハイブリッドシステム100Aの始動(起動)後に実行される。
【0050】
ステップS1では、ECU30により、始動後であるか否かが判定される。ECU30は、運転者によってシステム起動操作がなされることによりハイブリッドシステム100Aが始動した状態であるか否かを判定する。その判定の結果、始動後であると判定された場合(ステップS1−Y)にはステップS2に進み、そうでない場合(ステップS1−N)には本制御フローは終了する。
【0051】
ステップS2では、ECU30により、車両停止状態であるか否かが判定される。ECU30は、例えば、車輪速を検出する車輪速センサの検出結果に基づいてステップS2の判定を行う。その判定の結果、車両停止状態であると判定された場合(ステップS2−Y)にはステップS3に進み、そうでない場合(ステップS2−N)には本制御フローは終了する。
【0052】
ステップS3では、ECU30により、電気から油圧へのエネルギー変換が実施される。本実施形態では、ECU30によってなされるM/G4および油圧システム3による電気から油圧へのエネルギー変換を単に「エネルギー変換制御」とも記載する。
【0053】
ECU30は、エネルギー変換制御を行う場合、第一クラッチC1および第二クラッチC2を開放状態とする。これにより、油圧システム3およびM/G4とエンジン1や駆動輪7との動力の伝達が遮断される。また、ECU30は、第三クラッチC3および第四クラッチC4を係合状態とする。これにより、油圧ポンプモータ32とM/G4とは動力を伝達可能となる。ECU30は、バッテリー5に蓄えられた電力によってM/G4を駆動して回転軸4aに動力を出力させる。M/G4が出力した動力は、第四クラッチC4、第三ギアG3、第二ギアG2および第三クラッチC3を介して油圧ポンプモータ32の回転軸32aに伝達される。油圧ポンプモータ32は、M/G4から伝達された動力によって駆動され、この動力を作動油の圧力エネルギーに変換してアキュームレータ31に蓄える。
【0054】
本実施形態では、第一クラッチC1および第二クラッチC2が開放状態とされてエネルギー変換制御がなされることで、駆動輪7に動力を伝達することなく、バッテリー5に蓄えられた電力を油圧エネルギーに変換してアキュームレータ31に蓄えることができる。ステップS3が実行されると、本制御フローは終了する。
【0055】
ステップS3のエネルギー変換制御は、例えば、アキュームレータ31の圧力が予め定められた所定圧となるまで実行される。また、エネルギー変換制御は、バッテリー5の充電状態が所定の閾値まで低下すると終了されるようにしてもよい。また、エネルギー変換制御は、シフトレバーが走行用のレンジに切り替えられたときや、駐車ブレーキが解除されたとき、アクセルONとされたときなど、ハイブリッド車両100を発進させる操作入力が検出されたときに終了するようにしてもよい。
【0056】
エネルギー変換制御では、ECU30は、電力から圧力エネルギーへの変換効率が高くなるように油圧ポンプモータ32およびM/G4を制御することが望ましい。図3は、油圧システム3およびM/G4の回生効率の一例を示す図である。図3において、横軸はトルク、縦軸は回生効率を示す。実線は、油圧システム3の回生効率、すなわち油圧システム3において動力を油圧エネルギーに変換する際の変換効率を示す。また、破線は、M/G4の回生効率、すなわちM/G4において動力を電力に変換する際の変換効率を示している。
【0057】
図3からわかるように、油圧システム3は、低トルクの領域、すなわち回生パワーが小さな領域では、回生効率が低下し、かつトルクが小さくなるほど回生効率が低下する。一方、M/G4の回生効率は、低トルクの領域であっても油圧システム3の回生効率ほどには低下しない。例えば、TQ1よりも低トルクの領域では、油圧システム3の回生効率は、M/G4の回生効率よりも低く、かつトルクが小さくなるほど油圧システム3の回生効率とM/G4の回生効率との乖離が大きくなる。
【0058】
また、高トルクの領域では、油圧システム3の回生効率が高く、かつトルクが大きくなるほど回生効率が高くなる。M/G4の回生効率は、高トルクの領域において油圧システム3の回生効率ほどには上昇しない。例えば、本実施形態では、TQ2よりも高トルクの領域において、油圧システム3の回生効率がM/G4の回生効率を上回り、かつトルクが大きくなるほど油圧システム3の回生効率とM/G4の回生効率との乖離が大きくなる。なお、油圧システム3の出力効率は、実線の回生効率と同様の傾向を示し、M/G4の出力効率は、破線の回生効率と同様の傾向を示す。
【0059】
ECU30は、例えば、エネルギー変換制御において、油圧ポンプモータ32の回生効率が高い領域で油圧ポンプモータ32に回生を行わせることができるように、回転数やM/G4の出力トルク、油圧ポンプモータ32の負荷等を制御する。一例として、油圧ポンプモータ32に入力されるトルクがTQ1以上のトルクとなるように、M/G4の出力トルクが制御される。更に、M/G4の出力効率が考慮されてもよい。例えば、油圧ポンプモータ32の回生効率とM/G4の出力効率を含むエネルギー変換制御の総合効率が高くなるように油圧ポンプモータ32およびM/G4が制御されてもよい。
【0060】
図1の制御フローでは、エネルギー変換制御を行う所定状況は、ハイブリッド車両100のシステム起動後であって、かつ発進前の状況であったが、所定状況はこれには限定されない。例えば、所定状況は、搭乗者がハイブリッド車両100に乗車することに伴うハイブリッド車両100の状態変化を検出した状況であってもよい。例えば、イグニッションONなど、ハイブリッド車両100が発進する前の車両状態の変化に基づいてエネルギー変換制御が実行されてもよい。
【0061】
また、ハイブリッド車両100のドアの開閉を検出したことやドアが解錠されたことを検出した場合にエネルギー変換制御を実行するようにしてもよい。一例として、運転席のドアの開閉をエネルギー変換制御実行の条件としてもよい。
【0062】
また、ハイブリッド車両100の座席に搭乗者が着座したことやシートベルトが着用されたことを検出することをエネルギー変換制御の実行条件としてもよい。例えば、運転席に搭乗者が着座したことをエネルギー変換制御の実行条件とすることができる。また、座席を調節する操作やステアリングを調節する操作を検出することをエネルギー変換制御の実行条件としてもよい。なお、トラック等の輸送車両では、積荷が積載されることを検出したことがエネルギー変換制御の実行条件とされてもよい。
【0063】
また、予め定められた発進予定時刻あるいは車両の過去の走行履歴の少なくともいずれか一方に基づいてハイブリッド車両100の発進を予測するようにしてもよい。例えば、バスやトラック等の輸送車両や営業車両は、予め定められた時刻に走行を開始するものがある。こうした車両では、予め定められた発進予定時刻において発進すると予測可能である。このため、例えば、発進予定時刻が近づいたときにエネルギー変換制御を実行するようにしてもよい。
【0064】
また、走行履歴に基づいて、発進時刻を予測するようにしてもよい。ハイブリッドシステム100Aの発進時刻についての学習制御を行い、学習結果に基づいて発進時刻を予測することができる。例えば、発進時刻を学習することで、運転者の生活パターンに応じた発進時刻の前にエネルギー変換制御を実行することが可能となる。
【0065】
また、アキュームレータ31の蓄圧量、すなわちアキュームレータ31に蓄えられた圧力エネルギーに基づいてエネルギー変換制御を実施するか否かが決定されてもよい。例えば、所定状況であって、かつアキュームレータ31の蓄圧量が所定量未満である場合にエネルギー変換制御を実施して油圧エネルギーをアキュームレータ31に蓄えるようにしてもよい。一例として、油圧走行可能な蓄圧量の最小値や油圧システム3によりエンジン1をアシストすることが可能な蓄圧量の最小値に基づいて上記所定量を定めることができる。アキュームレータ31の蓄圧量が十分でない場合に限りエネルギー変換制御を行うようにすることで、必要以上のエネルギー変換制御を抑制し、電気から油圧へエネルギーを変換することによるロスを必要最低限に留めることが可能となる。
【0066】
なお、発進時の走行負荷を予測して、エネルギー変換制御を行うようにしてもよい。例えば、搭乗人員が多い場合、搭乗人員が少ない場合よりも発進時の走行負荷が高いと予測できる。また、トラック等において、積載荷重が大きい場合、積載荷重が小さい場合よりも発進時の走行負荷が高いと予測できる。
【0067】
例えば、発進時の走行負荷が高いと予測されるときはエネルギー変換制御を行い、発進時の走行負荷が高くないと予測されるときはエネルギー変換制御を行わないようにしてもよい。また、予測される発進時の走行負荷に応じてエネルギー変換制御によるエネルギーの変換量を可変としてもよい。例えば、発進時の走行負荷が相対的に大きい場合、発進時の走行負荷が相対的に小さい場合よりもエネルギー変換制御によるエネルギーの変換量を多くするようにしてもよい。
【0068】
本実施形態の車両制御装置1−1は、走行終了時等にアキュームレータ31に蓄えられた油圧エネルギーを低減させる制御がなされる車両において特に有効である。例えば、ハイブリッドシステム100Aが停止するときにアキュームレータ31の油圧を解放する制御がなされる車両では、システム起動時にはアキュームレータ31が低圧となっている。こうした車両においてエネルギー変換制御がなされることで、発進時の走行性能を向上させることができる。
【0069】
本実施形態では、ハイブリッド車両100がエンジン1を備えているが、これに限定されるものではなく、ハイブリッド車両100はエンジン1を備えていなくてもよい。また、油圧システム3は、図示したものには限定されない。油圧システム3は、蓄圧された作動流体の圧力を動力に変換して出力すること、および入力される動力を作動流体の圧力に変換して蓄圧することができるものであればよい。
【0070】
本実施形態では、エネルギー変換制御において、M/G4によって電力から動力への変換がなされたが、これには限定されない。エネルギー変換制御において電力を消費して動力を出力する装置は、発電機として機能しない電動機であってもよい。
【0071】
上記の実施形態に開示された内容は、適宜組み合わせて実行することができる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
以上のように、本発明にかかる車両制御装置は、蓄えた圧力エネルギーを動力に変換して駆動輪に対して出力することが可能な車両において、発進時の走行性能を向上するのに適している。
【符号の説明】
【0073】
1−1 車両制御装置
3 油圧システム
4 M/G
5 バッテリー
7 駆動輪
30 ECU
31 アキュームレータ
32 油圧ポンプモータ
100 ハイブリッド車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力される動力を作動流体の圧力エネルギーに変換して蓄圧装置に蓄えること、および前記蓄圧装置に蓄えられた圧力エネルギーを動力に変換して車両の駆動輪に対して出力することが可能な変換装置と、
蓄電装置に蓄えられた電力を動力に変換して出力する電動機と、
を備え、
前記車両の発進が予測される所定状況において、前記蓄電装置に蓄えられた電力を前記電動機および前記変換装置によって前記作動流体の圧力エネルギーに変換して前記蓄圧装置に蓄える
ことを特徴とする車両制御装置。
【請求項2】
前記所定状況は、前記車両のシステム起動後であって、かつ発進前の状況である
請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記所定状況は、搭乗者が前記車両に乗車することに伴う前記車両の状態変化を検出した状況である
請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項4】
予め定められた発進予定時刻あるいは前記車両の過去の走行履歴の少なくともいずれか一方に基づいて前記車両の発進を予測する
請求項1から3のいずれか1項に記載の車両制御装置。
【請求項5】
前記所定状況であって、かつ前記蓄圧装置に蓄えられた圧力エネルギーが所定量未満である場合に前記蓄電装置に蓄えられた電力を前記作動流体の圧力エネルギーに変換して前記蓄圧装置に蓄える
請求項1から4のいずれか1項に記載の車両制御装置。
【請求項6】
前記所定状況において前記蓄電装置に蓄えられた電力を前記作動流体の圧力エネルギーに変換するときに、前記変換装置および前記電動機と前記駆動輪との動力の伝達を遮断する
請求項1から5のいずれか1項に記載の車両制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−111345(P2012−111345A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−261710(P2010−261710)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】