車両制御装置
【課題】車両制御装置に関し、制御の妥当性を自律的に判断し現場保存性及び利便性を向上させる。
【解決手段】車両10の周囲の対象を検出する第一検出手段11,12を設ける。また、第一検出手段11,12で検出された対象と車両10との接触時に、車両10を停止させる停止制御を開始する停止制御開始手段5aを設ける。さらに、停止制御の開始後に、車両10の乗員による対象の確認動作を検出する第二検出手段11〜15を設ける。また、その確認動作の検出時に、停止制御を終了させる停止制御終了手段5bを設ける。
【解決手段】車両10の周囲の対象を検出する第一検出手段11,12を設ける。また、第一検出手段11,12で検出された対象と車両10との接触時に、車両10を停止させる停止制御を開始する停止制御開始手段5aを設ける。さらに、停止制御の開始後に、車両10の乗員による対象の確認動作を検出する第二検出手段11〜15を設ける。また、その確認動作の検出時に、停止制御を終了させる停止制御終了手段5bを設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両接触時における車両挙動を制御する車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、周囲の物体等との接触の可能性を予測しながら車両を制御するプリクラッシュシステムが開発されている。一般的なプリクラッシュシステムでは、対象を検出するためのミリ波レーダー装置や赤外線レーダー装置,ビデオカメラ等が車両の前部に設けられ、その対象の種類や対象までの距離,対象の相対速度などに応じて、車両の制動装置や安全装置が制御される。
【0003】
例えば特許文献1には、レーダーセンサを用いて自車両に衝撃が入力される可能性がある状況を判断し、判断の結果に応じてブレーキユニット,シートベルトユニットを強制的に作動させるプリクラッシュシステムが開示されている。車両と対象とが実際に接触する前にその可能性を予測してブレーキやシートベルトのテンションを制御することにより、乗員保護性能を向上させることが可能となる。
【0004】
また、特許文献2には、監視カメラで撮像された画像データに対して画像処理を施すことにより歩行者を識別し、衝突の検知時にボンネットフードをリフトアップさせるセーフティシステムが開示されている。このような制御により、車両が歩行者と接触した場合であっても歩行者に与えられる衝撃を緩和することができるとされている。
【0005】
ところで、上述の制御は何れも、車両の接触時及びそれ以前の状態に着目して実施される制御であり、接触に伴って発生しうる被害を軽減することが意図されたものである。これに対し、アクシデントが発生した現場の保存性を考慮して、車両の移動を規制する制御を実施するシステムも提案されている。
【0006】
例えば特許文献3には、共通の移動体規制システム上で管理された車両同士の接触アクシデントに際し、当該車両及び相手側車両の駆動を停止させる制御信号を出力することによって移動規制をかけ、アクシデントが発生したときの状態を保存する技術が開示されている。ここでは、警察当局や交通管制センター等の第三者によって移動規制が解除可能とされている。このようなシステムにより、現場の保存性が向上して検証作業を容易とすることができ、また当事者の逃亡を防止することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−74302号公報
【特許文献2】特開2008−137426号公報
【特許文献3】特開2003−25938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記のような移動体規制システムでは、車両の移動規制を解除するのに当事者以外からの解除指令が必要となる。そのため、軽微な接触時であっても車両を移動させることができなくなり、利便性を著しく低下させるという課題がある。例えば、自宅のカーポート内で家族が所持するセカンドカーに接触したような場合であっても、車両の移動が規制されることになる。このように、当事者にとっては解除手続が煩雑であり、これを解除する第三者の負担も過大である。
【0009】
また、特許文献3に記載されたような移動体規制システムでは、個々の車両が中枢システムに集中管理されるため、中枢システムにかかる潜在的な負荷が大きくなるほか、柔軟性,拡張性に乏しいという課題がある。加えて、このような集中管理システムでは、システム障害の発生時にシステム上の全車両が制御不能となるおそれがある。特に、災害によって通信システムや給電システム等のインフラに障害が発生した場合を想定すると、トラフィックを一極に集中管理するシステムは現実的ではなく、個々の車両が自律的に移動規制を実施するような分散型システムが望まれる。
【0010】
本件の目的の一つは、車両接触時に車両の停止制御を実施する車両制御装置において、制御の妥当性を自律的に判断し、現場保存性及び利便性を向上させることである。
なお、この目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本件の他の目的として位置づけることができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)ここで開示する車両制御装置は、車両に設けられ、前記車両の周囲の対象(対象物,人物等)を検出する第一検出手段と、前記車両と前記第一検出手段で検出された前記対象との接触時に、前記車両を停止させる停止制御を開始する停止制御開始手段とを備える。
また、前記停止制御の開始後に、前記車両の乗員による前記対象の確認動作を検出する第二検出手段と、前記確認動作の検出時に、前記停止制御を終了させる停止制御終了手段とを備える。
【0012】
(2)前記第一検出手段で検出された前記対象が歩行者であるか否かを識別する対象識別手段を備え、前記停止制御開始手段が、前記歩行者との接触時に前記停止制御を開始するとともに、前記歩行者以外との接触時に前記停止制御を禁止することが好ましい。この場合、停止制御は歩行者以外との接触時には実施されず、歩行者との接触時に実施される。
【0013】
(3)前記車両の乗員の降車を検出する降車検出手段を備え、前記第二検出手段が、前記降車検出手段が前記降車を検出したことを以て前記確認動作を検出することが好ましい。この場合、乗員が降車しない限り停止制御が継続される。
(4)前記第二検出手段が、前記車両のドアの開閉状態に基づき前記確認動作を検出することが好ましい。
【0014】
(5)前記第二検出手段が、前記車両に装備されたシートベルトの着脱状態に基づき前記確認動作を検出することが好ましい。
(6)前記第二検出手段が、前記車両のシートに内蔵された重量センサの検出値に基づき前記確認動作を検出することが好ましい。
(7)前記対象識別手段が、前記対象の形状に基づき前記歩行者と前記歩行者以外とを識別することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
開示の車両制御装置によれば、接触時に車両を自律的に停止させることにより、乗員に対して接触状態の確認を促すことができる。また、車両を停止させることで現場の保存性及び事後処理性を高めることができ、証拠保全が容易となる。さらに、乗員による確認動作が検出されない限り停止制御が継続されるため、確実に確認作業を実施させることができる。一方、確認動作が検出された場合には停止制御が終了するため、軽微な接触時に移動が制限され続けることがなく、利便性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】一実施形態に係る車両制御装置が適用された車両の側面図である。
【図2】図1の車両の上面図である。
【図3】車両制御装置の全体構成を例示するブロック図である。
【図4】車両制御装置で実施される制御を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図面を参照して制御装置について説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。
【0018】
[1.装置構成]
本実施形態の車両制御装置は、図1及び図2に示す車両10に搭載される。この車両10は、エンジン17を駆動源として走行する自動車であり、エンジン17で発生する駆動力が図示しない動力伝達経路を介して各車輪22に伝達されている。また、各車輪22には、図示しないブレーキペダルの踏み込み操作に応じた制動力を発生させるブレーキ装置16(制動装置)と、各車輪22の回転を拘束する電動パーキングブレーキ装置19とが併設されている。図1では、車軸に一体固定されたブレーキディスクに摩耗材(ブレーキパッド)を押し付けることで制動力を発生させるディスクブレーキが示されているが、具体的な制動装置の種類は任意である。車両10は、エンジン17から各車輪22へと伝達される駆動力で発進,走行し、ブレーキ装置16から各車輪22へと伝達される制動力で減速,停止する。
【0019】
図1は、車両10の前側のドア20を透視して示す側面図である。車両10の車室内には、シート21が設けられる。このシート21は、図2に示すように、車両10の車幅方向に並んで一対設けられる。以下、運転者が着座するシート21を運転席21Aと呼び、運転席21Aの左隣に配置された乗員用のシート21を助手席21Bと呼ぶ。また、運転席21Aの右側方に面したドア20を運転席ドア20Aと呼び、助手席21Bの左側方に面したドア20を助手席ドア20Bと呼ぶ。
【0020】
運転席ドア20A及び助手席ドア20Bのそれぞれには、その開閉状態を検出するドアスイッチ15(第二検出手段)が設けられる。これらのドアスイッチ15は、例えばドア20の開放時にオン信号を出力し、ドア20の閉鎖時にオフ信号を出力する(又はオン信号を出力しない)。以下、これらのドアスイッチ15のうち、運転席ドア20Aの開閉状態を検出するものを第一ドアスイッチ15Aと呼び、助手席ドア20B側のものを第二ドアスイッチ15Bと呼ぶ。
【0021】
運転席21A及び助手席21Bのそれぞれの内部には、着座中の乗員の有無を検出するための重量センサ13(第二検出手段)が設けられる。これらの重量センサ13は、シート21の座面に作用する荷重を検出するものである。例えば、所定量以上の荷重の作用時にオン信号を出力し、所定量未満の荷重の作用時にオフ信号を出力する(又はオン信号を出力しない)。以下、これらの重量センサ13のうち、運転席21Aに内蔵された一方を第一重量センサ13Aと呼び、助手席21Bに内蔵された他方を第二重量センサ13Bと呼ぶ。
【0022】
各シート21の側方には、着座した乗員を保護するための図示しないシートベルトが設けられる。また、運転席21Aの左側方及び助手席21Bの右側方には、シートベルトの装着状態を検出するバックルスイッチ14(第二検出手段)が設けられる。これらのバックルスイッチ14は、シートベルトのタングプレートがバックルに係合しているか否かに応じてオン/オフ信号を出力するものである。例えば、シートベルトの着装時にはシートベルトのタングプレートがバックルに係合するため、オン信号が出力され、シートベルトの未着装時にはオフ信号が出力される(又はオン信号が出力されない)。
【0023】
なお、バックルスイッチ14が出力する信号は、乗員の着座姿勢が固定されているか否か(シートベルトの着装状態)を判断するのに用いられるだけでなく、乗員の動作を判断するのにも用いることができる。すなわち、信号がオン信号からオフ信号へと変化した場合、乗員が降車動作を開始しているものと判断できる。以下、これらのバックルスイッチ14のうち、運転席21Aに設けられた一方を第一バックルスイッチ14Aと呼び、助手席21Bに設けられた他方を第二バックルスイッチ14Bと呼ぶ。
【0024】
上記の重量センサ13,バックルスイッチ14及びドアスイッチ15から出力された信号は、後述する電子制御装置9に伝達される。これらの信号は、乗員の降車動作や降車した乗員を判断するのに用いられる。電子制御装置9の配設位置は任意であり、例えば図1,図2に示すように、シート21前面のインストルメントパネルの内部に設けてもよい。また、車室内の任意の位置には、電子制御装置9の出力装置として機能するスピーカー18が設けられる。スピーカー18は、電子制御装置9による車両10の制御の内容や情報を乗員に報知するための音響装置である。なお、スピーカー18の代わりにカーステレオ装置やカーナビゲーション装置等に内蔵される音響装置を流用してもよい。
【0025】
運転席21Aと助手席21Bとの間には、電動パーキングブレーキ装置19を作動させるためのブレーキレバーが設けられる。電動パーキングブレーキ装置19は、各車輪22の回転をロック(停止状態で固定)するための制動装置である。図1では、前述のブレーキ装置16とは別個に電動パーキングブレーキ装置19が設けられた車両10を例示しているが、電動パーキングブレーキ装置19をブレーキ装置16に内蔵させてもよい。
【0026】
この電動パーキングブレーキ装置19は、例えば車両10の停車時にブレーキレバーが操作されると、ブレーキペダルの踏み込みの有無に関わらず、図示しないモータを駆動してブレーキディスクに摩耗材を押し付けるように作動する。また、本実施形態の電動パーキングブレーキ装置19は電子制御装置9によって制御可能に構成されており、ブレーキレバーが操作されていない状態であっても車輪22の回転をロックすることが可能となっている。
【0027】
車両10の前端部には、ミリ波レーダー11及びカメラ12が設けられる。ミリ波レーダー11(第一検出手段,第二検出手段)は、車両10の前方の物体等を検出するレーダー装置であり、例えばアンテナ,送受信回路及び演算回路を備えて構成される。アンテナはミリ波帯の電波を送受信する部位であり、送受信回路はアンテナから送信する送信波を生成するとともに、アンテナで受信した受信波を信号に変換する部位である。また、演算回路は受信した信号を解析して、電波を反射した物体や車両,人物等(すなわち対象)までの距離Lや速度,角度等を検出するものである。
【0028】
このミリ波レーダー11は二つの機能を持つ。第一の機能は、車両10の走行に係る周囲の対象を検出する機能である。すなわち、車両10の周囲の他車両や歩行者,障害物,路面形状,ガードレール等の構造物,地形,白線等を検出する機能である。第二の機能は、車両10の停車時における車両10の乗員の動作を検出する機能である。本実施形態の車両制御装置では、これらの二種類の機能を利用した制御が実施される。ここで検出された対象までの距離L,速度及び角度の情報は、電子制御装置9に伝達される。
【0029】
カメラ12(第一検出手段,第二検出手段)は、車両10の前方の画像を動画として撮影する単眼ビデオカメラである。ここで撮影される動画は連続した複数の画像(静止画像)からなり、それぞれの画像データが随時、電子制御装置9に伝達される。電子制御装置9では、各画像データに対して画像処理演算が施され、画像内に存在する他車両(例えば、先行車や対向車),歩行者,道路形状,風景部分等が分析される。また、このカメラ12もミリ波レーダー11と同様の二つの機能を持ち、車両10の周囲の対象を検出する機能と、乗員の動作を検出する機能とが内蔵されている。
【0030】
なお、ミリ波レーダー11による対象の検知距離,検知角及び電波のスキャン速度が十分であれば、ミリ波レーダー11のみで対象の位置,大きさ及び速度を検出することが可能である。一方、ミリ波レーダー11とカメラ12とを併用することで、対象の検出精度が向上する。
【0031】
電子制御装置9は、周知のマイクロプロセッサやROM,RAM等を集積したLSIデバイス又は組み込み電子デバイスであり、本車両10のプリクラッシュシステムを制御するものである。図3に示すように、電子制御装置9の入力側には、ミリ波レーダー11,カメラ12,重量センサ13,バックルスイッチ14及びドアスイッチ15が接続される。一方、電子制御装置9の出力側には、ブレーキ装置16,エンジン17,スピーカー18及び電動パーキングブレーキ装置19が接続される。
【0032】
[2.制御構成]
[2−1.制御の概要]
本実施形態の電子制御装置9では、おもに二つの制御が実施される。第一の制御はプリクラッシュ制御であり、第二の制御は停止制御である。
プリクラッシュ制御とは、周囲の物体等(対象)に対する車両10の接触の可能性を予測し、仮にその対象と接触したとしてもできるだけ被害が小さくなるように車両10の挙動を調整する制御である。
【0033】
具体的には、例えば先行車の急制動操作により車両10が先行車と接触しそうになったときに、報知音や音声で接触の可能性を乗員に案内する制御、エンジン17の出力を低下させるとともにブレーキ装置16による制動力を増加させて接触時の相対速度を減少させる制御、車高を上下させることによって先行車との接触面積を増大させ衝撃力を分散させる制御、接触の直前にエアバッグの加圧装置やシートベルトのテンション調整機構を作動させる制御などが含まれる。プリクラッシュ制御は、車両10と対象との接触時及びそれ以前に実施される。
【0034】
これに対して停止制御とは、車両10と対象との接触後に実施される制御であり、運転者による操作に関わらず車両10の発進,走行を禁止する制御である。ただし、接触時に単純に車両10の移動を規制したのでは、車両10の利便性が低下するおそれが生じる。そこで、本実施形態の電子制御装置9では、接触が発生したことを以て直ちに車両10を停止させるのではなく、停止制御の開始条件及び終了条件を判定したうえで停止制御を実施し、これを解除する構成を備える。
【0035】
[2−2.制御ブロック構成]
電子制御装置9には、上記の二種類の制御を実現するソフトウェア又はハードウェアとして、対象識別部1,距離判定部2,降車検出部3,プリクラッシュ制御部4及び停止制御部5が設けられる。
【0036】
対象識別部1(対象識別手段)は、対象の種類を識別するものである。ここでは、ミリ波レーダー11で検出された対象までの距離L,相対速度及び角度の情報からその対象の形状が特定され、その形状に基づいて対象の種類が識別される。例えば、対象までの距離L及び角度の情報から、対象の表面上に位置する測定点の座標が演算される。この測定点とは、ミリ波レーダー11から発せられた電波を反射した位置を意味する。測定点の空間的な分布は対象の形状に対応した形状となり、分布の広がりは対象の大きさ(高さ,横幅といった実寸法)に相当する。
【0037】
したがって、典型的な歩行者の形状や普通自動車,大型車両,自動二輪車等の形状のテンプレートを予め設定しておけば、それらのテンプレートと測定点の分布とを比較することで対象の種類の特定が可能となる。また、小型自動二輪車のようにその形状のみでは歩行者との区別が難しい場合には、対象の速度を考慮して識別してもよい。なお、このような対象の識別手法に代えて、あるいは加えて、カメラ12で撮影された画像データから対象の視覚的な特徴(輪郭形状や色,動作等のパターン)を特定し、パターン認識によりその種類を識別してもよい。ここで識別された対象の種類は、停止制御部5に伝達される。
【0038】
距離判定部2は、車両10と対象との接触の可能性を予測するとともに、実際に接触したか否かを判定するものである。ここでは、ミリ波レーダー11で検出された対象までの距離Lが所定距離L0以下であるときに接触の可能性があるものと判断され、距離Lが所定距離L0よりも大きいときに接触の可能性がないものと判断される。また、距離Lが0以下であるときには車両10が対象に接触したと判断される。ここでの判断結果はプリクラッシュ制御部4及び停止制御部5に伝達される。
【0039】
降車検出部3(降車検出手段)は、乗員の車両10からの降車を検出するものである。ここでいう乗員とは、車両10の対象とが接触した時点で車両10に搭乗している人物である。本実施形態では、運転席21A及び助手席21Bの搭乗者の降車を検出する場合について説明する。なお、後部座席の搭乗者の降車についても同様に検出することが可能である。
【0040】
降車検出部3は、以下のすべての条件(1)〜(4)が成立した場合に、運転者が降車したと判断し、その旨の情報を停止制御部5に伝達する。
(1)第一重量センサ13Aの出力信号がオフ
(2)第一バックルスイッチ14Aの出力信号がオフ
(3)第一ドアスイッチ15Aの出力信号がオフ
(4)上記(1)〜(3)成立後、ミリ波レーダー11又はカメラ12で人を検出
【0041】
一方、以下のすべての条件(5)〜(8)が成立した場合には、助手席側の乗員が降車したと判断し、その旨の情報を停止制御部5に伝達する。
(5)第二重量センサ13Bの出力信号がオフ
(6)第二バックルスイッチ14Bの出力信号がオフ
(7)第二ドアスイッチ15Bの出力信号がオフ
(8)上記(5)〜(7)成立後、ミリ波レーダー11又はカメラ12で人を検出
【0042】
なお、条件(4),(8)は、ミリ波レーダー11の物体検出範囲又はカメラ12の撮影範囲の外側から内側へと進入する対象を検出することを意味する。条件(4),(8)の人物検出にカメラ12を用いる場合、画像データから乗員の顔を認識することによって車両10の乗員が降車したことを検出する構成としてもよい。顔認証を実施することで、車両10の乗員が複数存在する場合であっても条件(4),(8)に係る検出対象の人物を特定することが容易となる。
【0043】
また、ミリ波レーダー11を用いる場合、物体検出範囲内に対象が進入したときの距離や速度,進入方向等に基づいて車両10の乗員が降車したことを検出する構成としてもよい。例えば、車両10の進行方向に向かって物体検出範囲の右側から対象が進入した場合にはその対象が運転者であると判断し、左側から進入した場合には助手席21Bの搭乗者であると判断することも可能である。
【0044】
プリクラッシュ制御部4は、前述のプリクラッシュ制御を管理するものである。プリクラッシュ制御の実施条件には少なくとも、距離判定部2で車両10と対象との接触の可能性があるものと判断されることが含まれる。また、その他の実施条件として、車両10の車速が0でないことや、ブレーキペダルが踏み込まれていないこと等を追加してもよい。プリクラッシュ制御部4は、これらのような実施条件を随時判定し、条件成立時にプリクラッシュ制御を実施する。
【0045】
停止制御部5は、前述の停止制御を管理するものであり、距離判定部2で車両10と対象との接触が検出されたときにその旨の報知を行う。また、停止制御部5は、制御開始条件を判定する制御開始部5aと、制御終了条件を判定する制御終了部5bとを有する。
【0046】
制御開始部5a(停止制御開始手段)は、距離判定部2で対象との接触が検出され、かつ、対象識別部1で識別された対象の種類が歩行者(人,動物を含む)である場合に、停止制御を開始するものである。つまり、停止制御は歩行者との接触が認められた場合にのみ実施される。制御開始部5aは、例えばブレーキ装置16,エンジン17及びスピーカー18へと制御信号を出力し、車両10を停止させるとともに、停止制御が実施された旨の案内を乗員に報知する。
【0047】
また、乗員による現場確認を促すべく、接触の対象が歩行者であることが乗員に報知される。さらに、車両10の停止後には電動パーキングブレーキ装置19にロック信号を出力し、車両10の発進を防止する。なお、対象の種類が歩行者でない場合には、制御開始部5aは制御信号を出力せず、停止制御を開始しない。
【0048】
一方、制御終了部5b(停止制御終了手段)は、停止制御の実施中に降車検出部3で乗員の降車が検出された場合に、停止制御が終了させるものである。つまり、乗員が車両10を降りて歩行者を確認した場合には停止制御が解除される。制御終了部5bは、制御開始部5aからの制御信号の出力先に対して、制御を終了させる信号を出力するとともに、停止制御が終了したことを乗員に報知する。
【0049】
[3.フローチャート]
図4は、電子制御装置9で実行される制御手順を例示するフローチャートである。このフローチャートに示される制御は、電子制御装置9の内部で所定の周期(例えば数[ms]周期)で繰り返し実施される。フローチャート中のフラグFは、停止制御の実施,不実施を意味するフラグであり、停止制御の実施時にF=1に設定され、不実施時にはF=0に設定される。
【0050】
ステップA10では、停止制御部5においてフラグFがF=0であるか否かが判定される。通常の走行時であって停止制御が実施されていなければ、ステップA20へ進む。ステップA20では、ミリ波レーダー11で検出された対象までの距離L,相対速度及び角度の情報が対象識別部1に伝達され、対象の種類が識別される。なお、ミリ波レーダー11で検出された対象がない場合には、このフローを終了してもよい。
【0051】
続くステップA30では、距離判定部2において、車両10と対象とが接触したか否かが判定される。ここで、対象までの距離LがL≦0である場合には実際に接触したと判定され、ステップA40へ進む。一方、距離LがL>0である場合にはまだ接触していないため、ステップA70へ進む。
【0052】
ステップA40では、停止制御部5からスピーカー18に制御信号が出力され、車両10が対象と接触したことが乗員に報知される。また、続くステップA50では、停止制御部5の制御開始部5aにおいて、対象の種類が歩行者であるか否かが判定される。この判定には、ステップA20で対象識別部1に識別された対象の種類が用いられる。ここで、対象が歩行者の場合にはステップA60へ進み、フラグFがF=1に設定される。また、これに続くステップA100以降では停止制御が実施される。次回以降の演算周期では、ステップA20〜A60の制御がスキップされ、ステップA100以降の制御が実施される。
【0053】
ステップA50の判定で、対象が歩行者でなかった場合には、そのままこのフローを終了する。例えば、自宅のカーポート内で家族が所持するセカンドカーに接触したような場合、対象が歩行者ではないため停止制御は実施されない。
なお、車両10と対象とが接触していない場合に進むステップA70では、プリクラッシュ制御部4において、対象までの距離Lが所定距離L0よりも大きいか否かが判定される。ここで、対象までの距離LがL≦L0である場合には接触の可能性があるものと判断され、ステップA80へ進む。ステップA80では、プリクラッシュ制御部4においてプリクラッシュ制御が実施され、このフローを終了する。なお、本フローに記載されていない他の実施条件を判定した上でプリクラッシュ制御を実施する構成としてもよい。
【0054】
一方、ステップA70で対象までの距離LがL>L0である場合には接触の可能性がないものと判断され、ステップA90へ進む。ステップA90では、プリクラッシュ制御部4においてプリクラッシュ制御が解除され、このフローを終了する。なお、プリクラッシュ制御を開始していない状態であればステップA90をスキップしてこのフローを終了してもよい。
【0055】
続いて、停止制御及びその解除について説明する。ステップA100では、制御開始部5aにおいて停止制御が実施される。例えば、車両10が走行中であればブレーキ装置16に制御信号が出力され、制動力が徐々に付与される。また、エンジン17にも制御信号が出力され、エンジン出力(駆動力)が減じられる。また、スピーカー18から歩行者との接触があったことが報じられ、乗員に対して現場確認を促すためのアナウンスがなされる。さらに、車両10が停止すると電動パーキングブレーキ装置19にロック信号が出力され、車両10の再発進が防止される。
【0056】
続くステップA110では、重量センサ13で検出された荷重,バックルスイッチ14で検出されたシートベルトの着装状態に対応した信号,ドアスイッチ15で検出されたドア20の開閉状態に対応した信号,ミリ波レーダー11又はカメラ12の検出情報が降車検出部3に伝達される。これらの情報に基づき、ステップA120〜A150では乗員による歩行者の確認動作が検出される。
【0057】
まずステップA120では、降車検出部3において、重量センサ13の出力信号がオフであるか否かが判定される。すなわち、運転席21A,助手席21Bに乗員が着座しているか否かが判定される。ここで出力信号がオフである場合にはステップA130へ進み、出力信号がオンである場合にはそのままフローを終了する。
なお、運転者の降車を判定するフローとは別個に、助手席側の乗員の降車を判定するフローを設けてもよい。
【0058】
本フローチャートでは便宜的に運転者の降車と助手席側の乗員の降車とを一緒に判定するようなフローを例示している。本フローチャートのステップA120では、上記の条件(1),(5)が同時に判定されており、条件(1)が成立した場合には以下のステップで条件(2)〜(4)が判定され、条件(5)が成立した場合には以下のステップで条件(6)〜(8)が判定される。また、両方の条件(1),(5)がともに成立した場合には、以下のステップで条件(2)〜(4),(6)〜(8)がともに判定される。
【0059】
ステップA130では、バックルスイッチ14の出力信号がオフであるか否かが判定される。すなわち、乗員がシートベルトを外したか否かが判定される。ここで出力信号がオフである場合にはステップA140へ進み、出力信号がオンである場合にはそのままフローを終了する。
ステップA140では、ドアスイッチ15の出力信号がオフであるか否かが判定される。すなわち、乗員がドア20から外へ出ようとしているか否かが判定される。ここで出力信号がオフである場合にはステップA150へ進み、出力信号がオンである場合にはそのままフローを終了する。
【0060】
ステップA150では、ステップA140の条件成立時から所定時間内にミリ波レーダー11又はカメラ12で人を検出したか否かが判定される。すなわち、乗員が接触した歩行者を確認しているか否かが判定される。ここで人が検出された場合にはステップA160へ進み、検出されない場合にはそのままフローを終了する。上記の所定時間は、タイマーやカウンター等を用いてステップA140の条件成立時からの経過時間を計測することによって判定可能である。
【0061】
ステップA160は、上記のステップA120〜A150が全て成立したときに実行されるステップであり、フラグFがF=0に設定される。続くステップA170では、制御終了部5bにおいて乗員が車両10から降りて歩行者を確認したものと判断され、停止制御が終了する。
ここでは、ステップA100で実施された各制御が終了し、車両が発進,走行可能な状態となる。例えば、電動パーキングブレーキ装置19のロックが解除されるとともに、スピーカー18から走行可能であることがアナウンスされる。また、ブレーキ装置16やエンジン17への制御信号の出力が停止し、車両10が通常のアイドリング状態とされる。
【0062】
[4.効果]
このように、上記の車両制御装置では、ミリ波レーダー11で検出された対象と車両10との接触の可能性がある場合には、プリクラッシュ制御が実施される。これにより、仮にその対象と接触したとしてもできるだけ被害を軽減するように車両10の挙動を調整することができる。また、車両10と対象との接触時にはその旨の報知がなされ、自律的に停止制御が実施される。これにより、乗員に対して接触状態の確認を促すことができる。
【0063】
また、停止制御では、運転者による操作に関わらず車両10の発進,走行が禁止される。これにより、接触現場の保存性を高めることができ、証拠保全が容易となる。さらに、乗員による確認動作が検出されない限り停止制御が継続されるため、確実に確認作業を実施させることができる。一方、確認動作が検出された場合には停止制御が終了するため、軽微な接触時に車両10の移動が過剰に制限されることがなく、利便性を向上させることができる。
【0064】
なお、上記の車両制御装置の停止制御は、接触を検知した車両10が自律的に移動を規制する制御であって、例えば中枢システムに集中管理されたものではないため、柔軟性及び拡張性に優れているというメリットがある。特に、災害によってインフラに障害が発生したような場合であっても、現場保存性を向上させることができ、かつ、十分な利便性を維持することができる。
【0065】
また、上記の車両制御装置では、接触の対象が歩行者である場合に停止制御が開始される。逆にいえば、接触の対象が自宅のカーポートや門扉といった物体であれば、停止制御が開始されない。このように、車両10と歩行者との接触時に停止制御を開始することにより、歩行者の安否を乗員に確認させることができ、迅速な救急措置が可能となる。
一方、車両10と歩行者以外の物体との接触時には停止制御が禁止されるため、車両10の移動が拘束されることがなく、利便性を向上させることができる。なお、公道上における車両10と他車両との接触時であれば、乗員の意思で交通の邪魔にならない路肩へと車両を移動させて停車させることもでき、交通渋滞の発生を防止することができる。
【0066】
また、上記の車両制御装置では、ミリ波レーダー11又はカメラ12を用いて車両10の乗員による歩行者の確認動作を検出している。このように、歩行者との接触後の乗員の行動を監査することにより、確実に確認作業を実施させることができる。
【0067】
このような歩行者の確認動作の検出に際し、ドア20の開閉状態を検出することで、乗員の降車意思を確認することができ、より確実に確認作業を実施させることができる。また、ドア20が開放されていなければ、たとえミリ波レーダー11又はカメラ12で乗員らしき人物が検出されたとしても、その人物が乗員ではないことになる。したがって、乗員の誤検出を防止することができるというメリットがある。
【0068】
これに加えて、上述の実施形態では、運転席ドア20A,助手席ドア20Bのそれぞれに第一ドアスイッチ15A,第二ドアスイッチ15Bが設けられるため、降車しようとしている乗員が運転者であるのか、それとも助手席21Bの搭乗者であるのかを特定することができる。
同様に、上記の車両制御装置では、シートベルトの装着状態を参照して上記の歩行者の確認動作を検出している。これにより、乗員の降車意思を確認することができ、より確実に確認作業を実施させることができる。また、乗員の誤検出を確実に防止することができるとともに、降車しようとしている乗員の特定がより容易となる。
【0069】
さらに、上記の車両制御装置では、シートベルトのバックルスイッチ14やドアスイッチ15だけでなく、重量センサ13を用いて着座中の乗員の有無を検出している。これにより、実際に乗員が車両10から降車したことを確認することができ、乗員の誤検出をより確実に防止することができるとともに、降車した乗員を特定することができる。
【0070】
なお、上記の重量センサ13,バックルスイッチ14,ドアスイッチ15といった降車検出に係るセンサは、乗員の降車を検出する機能を持つものであるとともに、乗員に降車を促す機能を持つもの(すなわち、降車促進手段)と捉えることができる。したがって、これらの降車促進手段を備えた上記の車両制御装置には、歩行者の安否を乗員に積極的に確認させることができるというメリットがある。
【0071】
また、上記の車両制御装置では、ミリ波レーダー11やカメラ12から得られる対象の形状に基づいて歩行者と歩行者以外とを識別している。このように、対象の形状に基づく種類の識別により、歩行者と他車両とを混同してしまうような誤検出を防止することができる。したがって、停止制御の制御性を高めることができる。
【0072】
[5.変形例]
上述した実施形態に関わらず、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。本実施形態の各構成は、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせてもよい。
上述の実施形態では、停止制御の開始条件として接触の対象が歩行者であることが規定されているが、対象が歩行者の場合だけでなく、歩行者以外の物体や他車両の場合にも停止制御を開始する構成としてもよい。この場合、軽微な接触時であっても確実に確認作業を実施させることができ、接触現場の保存性をさらに向上させることができる。
【0073】
また、上述の実施形態では、ミリ波レーダー11及びカメラ12を備えた車両10を例示したが、少なくとも車両10の周囲の空間的な状況を把握するセンサを備えていればよく、具体的なセンシング手法はこれに限定されない。例えば、ミリ波レーダー11及びカメラ12の代わりに、ステレオカメラ(同一の被写体を二つの視点から撮影する撮影装置)を用いてもよい。
【0074】
また、上述の実施形態では、条件(1)〜(8)に示すように、重量センサ13,バックルスイッチ14,ドアスイッチ15及びミリ波レーダー11(又はカメラ12)の各検出情報に基づいて乗員による歩行者の確認動作が確認されているが、具体的な確認手法はこれに限定されず、例えば条件(1)〜(8)の少なくとも一つが成立したことを以て乗員による歩行者の確認動作がなされたと判断してもよい。
【0075】
また、停止制御での制御対象に関しても、ブレーキ装置16,エンジン17,スピーカー18及び電動パーキングブレーキ装置19のうちの少なくとも一つを制御するものとすることが可能であり、あるいは、図示しないクラッチやトランスミッション,シフトレバー等を制御対象としてもよい。例えば、クラッチを切断することによってエンジン出力の駆動輪側への伝達を禁止する制御としてもよいし、シフトレバーの操作位置をニュートラル位置やパーキング位置に固定して、ドライブ位置に操作できないようにするような制御としてもよい。停止制御の具体的な実施手法に関わらず、上述の実施形態と同様の効果を奏するものとなる。
【0076】
なお、上述の実施形態では、エンジン17を駆動源とした車両10に適用された車両制御装置を説明したが、本車両制御装置の適用対象はこれに限定されず、例えばハイブリッド車両や電気自動車に適用してもよい。
【符号の説明】
【0077】
1 対象識別部(対象識別手段)
2 距離判定部
3 降車検出部(降車検出手段)
4 プリクラッシュ制御部
5 停止制御部
5a 制御開始部(停止制御開始手段)
5b 制御終了部(停止制御終了手段)
9 電子制御装置
11 ミリ波レーダー(第一検出手段,第二検出手段)
12 カメラ(第一検出手段,第二検出手段)
13 重量センサ(第二検出手段)
14 バックルスイッチ(第二検出手段)
15 ドアスイッチ(第二検出手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両接触時における車両挙動を制御する車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、周囲の物体等との接触の可能性を予測しながら車両を制御するプリクラッシュシステムが開発されている。一般的なプリクラッシュシステムでは、対象を検出するためのミリ波レーダー装置や赤外線レーダー装置,ビデオカメラ等が車両の前部に設けられ、その対象の種類や対象までの距離,対象の相対速度などに応じて、車両の制動装置や安全装置が制御される。
【0003】
例えば特許文献1には、レーダーセンサを用いて自車両に衝撃が入力される可能性がある状況を判断し、判断の結果に応じてブレーキユニット,シートベルトユニットを強制的に作動させるプリクラッシュシステムが開示されている。車両と対象とが実際に接触する前にその可能性を予測してブレーキやシートベルトのテンションを制御することにより、乗員保護性能を向上させることが可能となる。
【0004】
また、特許文献2には、監視カメラで撮像された画像データに対して画像処理を施すことにより歩行者を識別し、衝突の検知時にボンネットフードをリフトアップさせるセーフティシステムが開示されている。このような制御により、車両が歩行者と接触した場合であっても歩行者に与えられる衝撃を緩和することができるとされている。
【0005】
ところで、上述の制御は何れも、車両の接触時及びそれ以前の状態に着目して実施される制御であり、接触に伴って発生しうる被害を軽減することが意図されたものである。これに対し、アクシデントが発生した現場の保存性を考慮して、車両の移動を規制する制御を実施するシステムも提案されている。
【0006】
例えば特許文献3には、共通の移動体規制システム上で管理された車両同士の接触アクシデントに際し、当該車両及び相手側車両の駆動を停止させる制御信号を出力することによって移動規制をかけ、アクシデントが発生したときの状態を保存する技術が開示されている。ここでは、警察当局や交通管制センター等の第三者によって移動規制が解除可能とされている。このようなシステムにより、現場の保存性が向上して検証作業を容易とすることができ、また当事者の逃亡を防止することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−74302号公報
【特許文献2】特開2008−137426号公報
【特許文献3】特開2003−25938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記のような移動体規制システムでは、車両の移動規制を解除するのに当事者以外からの解除指令が必要となる。そのため、軽微な接触時であっても車両を移動させることができなくなり、利便性を著しく低下させるという課題がある。例えば、自宅のカーポート内で家族が所持するセカンドカーに接触したような場合であっても、車両の移動が規制されることになる。このように、当事者にとっては解除手続が煩雑であり、これを解除する第三者の負担も過大である。
【0009】
また、特許文献3に記載されたような移動体規制システムでは、個々の車両が中枢システムに集中管理されるため、中枢システムにかかる潜在的な負荷が大きくなるほか、柔軟性,拡張性に乏しいという課題がある。加えて、このような集中管理システムでは、システム障害の発生時にシステム上の全車両が制御不能となるおそれがある。特に、災害によって通信システムや給電システム等のインフラに障害が発生した場合を想定すると、トラフィックを一極に集中管理するシステムは現実的ではなく、個々の車両が自律的に移動規制を実施するような分散型システムが望まれる。
【0010】
本件の目的の一つは、車両接触時に車両の停止制御を実施する車両制御装置において、制御の妥当性を自律的に判断し、現場保存性及び利便性を向上させることである。
なお、この目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本件の他の目的として位置づけることができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)ここで開示する車両制御装置は、車両に設けられ、前記車両の周囲の対象(対象物,人物等)を検出する第一検出手段と、前記車両と前記第一検出手段で検出された前記対象との接触時に、前記車両を停止させる停止制御を開始する停止制御開始手段とを備える。
また、前記停止制御の開始後に、前記車両の乗員による前記対象の確認動作を検出する第二検出手段と、前記確認動作の検出時に、前記停止制御を終了させる停止制御終了手段とを備える。
【0012】
(2)前記第一検出手段で検出された前記対象が歩行者であるか否かを識別する対象識別手段を備え、前記停止制御開始手段が、前記歩行者との接触時に前記停止制御を開始するとともに、前記歩行者以外との接触時に前記停止制御を禁止することが好ましい。この場合、停止制御は歩行者以外との接触時には実施されず、歩行者との接触時に実施される。
【0013】
(3)前記車両の乗員の降車を検出する降車検出手段を備え、前記第二検出手段が、前記降車検出手段が前記降車を検出したことを以て前記確認動作を検出することが好ましい。この場合、乗員が降車しない限り停止制御が継続される。
(4)前記第二検出手段が、前記車両のドアの開閉状態に基づき前記確認動作を検出することが好ましい。
【0014】
(5)前記第二検出手段が、前記車両に装備されたシートベルトの着脱状態に基づき前記確認動作を検出することが好ましい。
(6)前記第二検出手段が、前記車両のシートに内蔵された重量センサの検出値に基づき前記確認動作を検出することが好ましい。
(7)前記対象識別手段が、前記対象の形状に基づき前記歩行者と前記歩行者以外とを識別することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
開示の車両制御装置によれば、接触時に車両を自律的に停止させることにより、乗員に対して接触状態の確認を促すことができる。また、車両を停止させることで現場の保存性及び事後処理性を高めることができ、証拠保全が容易となる。さらに、乗員による確認動作が検出されない限り停止制御が継続されるため、確実に確認作業を実施させることができる。一方、確認動作が検出された場合には停止制御が終了するため、軽微な接触時に移動が制限され続けることがなく、利便性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】一実施形態に係る車両制御装置が適用された車両の側面図である。
【図2】図1の車両の上面図である。
【図3】車両制御装置の全体構成を例示するブロック図である。
【図4】車両制御装置で実施される制御を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図面を参照して制御装置について説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。
【0018】
[1.装置構成]
本実施形態の車両制御装置は、図1及び図2に示す車両10に搭載される。この車両10は、エンジン17を駆動源として走行する自動車であり、エンジン17で発生する駆動力が図示しない動力伝達経路を介して各車輪22に伝達されている。また、各車輪22には、図示しないブレーキペダルの踏み込み操作に応じた制動力を発生させるブレーキ装置16(制動装置)と、各車輪22の回転を拘束する電動パーキングブレーキ装置19とが併設されている。図1では、車軸に一体固定されたブレーキディスクに摩耗材(ブレーキパッド)を押し付けることで制動力を発生させるディスクブレーキが示されているが、具体的な制動装置の種類は任意である。車両10は、エンジン17から各車輪22へと伝達される駆動力で発進,走行し、ブレーキ装置16から各車輪22へと伝達される制動力で減速,停止する。
【0019】
図1は、車両10の前側のドア20を透視して示す側面図である。車両10の車室内には、シート21が設けられる。このシート21は、図2に示すように、車両10の車幅方向に並んで一対設けられる。以下、運転者が着座するシート21を運転席21Aと呼び、運転席21Aの左隣に配置された乗員用のシート21を助手席21Bと呼ぶ。また、運転席21Aの右側方に面したドア20を運転席ドア20Aと呼び、助手席21Bの左側方に面したドア20を助手席ドア20Bと呼ぶ。
【0020】
運転席ドア20A及び助手席ドア20Bのそれぞれには、その開閉状態を検出するドアスイッチ15(第二検出手段)が設けられる。これらのドアスイッチ15は、例えばドア20の開放時にオン信号を出力し、ドア20の閉鎖時にオフ信号を出力する(又はオン信号を出力しない)。以下、これらのドアスイッチ15のうち、運転席ドア20Aの開閉状態を検出するものを第一ドアスイッチ15Aと呼び、助手席ドア20B側のものを第二ドアスイッチ15Bと呼ぶ。
【0021】
運転席21A及び助手席21Bのそれぞれの内部には、着座中の乗員の有無を検出するための重量センサ13(第二検出手段)が設けられる。これらの重量センサ13は、シート21の座面に作用する荷重を検出するものである。例えば、所定量以上の荷重の作用時にオン信号を出力し、所定量未満の荷重の作用時にオフ信号を出力する(又はオン信号を出力しない)。以下、これらの重量センサ13のうち、運転席21Aに内蔵された一方を第一重量センサ13Aと呼び、助手席21Bに内蔵された他方を第二重量センサ13Bと呼ぶ。
【0022】
各シート21の側方には、着座した乗員を保護するための図示しないシートベルトが設けられる。また、運転席21Aの左側方及び助手席21Bの右側方には、シートベルトの装着状態を検出するバックルスイッチ14(第二検出手段)が設けられる。これらのバックルスイッチ14は、シートベルトのタングプレートがバックルに係合しているか否かに応じてオン/オフ信号を出力するものである。例えば、シートベルトの着装時にはシートベルトのタングプレートがバックルに係合するため、オン信号が出力され、シートベルトの未着装時にはオフ信号が出力される(又はオン信号が出力されない)。
【0023】
なお、バックルスイッチ14が出力する信号は、乗員の着座姿勢が固定されているか否か(シートベルトの着装状態)を判断するのに用いられるだけでなく、乗員の動作を判断するのにも用いることができる。すなわち、信号がオン信号からオフ信号へと変化した場合、乗員が降車動作を開始しているものと判断できる。以下、これらのバックルスイッチ14のうち、運転席21Aに設けられた一方を第一バックルスイッチ14Aと呼び、助手席21Bに設けられた他方を第二バックルスイッチ14Bと呼ぶ。
【0024】
上記の重量センサ13,バックルスイッチ14及びドアスイッチ15から出力された信号は、後述する電子制御装置9に伝達される。これらの信号は、乗員の降車動作や降車した乗員を判断するのに用いられる。電子制御装置9の配設位置は任意であり、例えば図1,図2に示すように、シート21前面のインストルメントパネルの内部に設けてもよい。また、車室内の任意の位置には、電子制御装置9の出力装置として機能するスピーカー18が設けられる。スピーカー18は、電子制御装置9による車両10の制御の内容や情報を乗員に報知するための音響装置である。なお、スピーカー18の代わりにカーステレオ装置やカーナビゲーション装置等に内蔵される音響装置を流用してもよい。
【0025】
運転席21Aと助手席21Bとの間には、電動パーキングブレーキ装置19を作動させるためのブレーキレバーが設けられる。電動パーキングブレーキ装置19は、各車輪22の回転をロック(停止状態で固定)するための制動装置である。図1では、前述のブレーキ装置16とは別個に電動パーキングブレーキ装置19が設けられた車両10を例示しているが、電動パーキングブレーキ装置19をブレーキ装置16に内蔵させてもよい。
【0026】
この電動パーキングブレーキ装置19は、例えば車両10の停車時にブレーキレバーが操作されると、ブレーキペダルの踏み込みの有無に関わらず、図示しないモータを駆動してブレーキディスクに摩耗材を押し付けるように作動する。また、本実施形態の電動パーキングブレーキ装置19は電子制御装置9によって制御可能に構成されており、ブレーキレバーが操作されていない状態であっても車輪22の回転をロックすることが可能となっている。
【0027】
車両10の前端部には、ミリ波レーダー11及びカメラ12が設けられる。ミリ波レーダー11(第一検出手段,第二検出手段)は、車両10の前方の物体等を検出するレーダー装置であり、例えばアンテナ,送受信回路及び演算回路を備えて構成される。アンテナはミリ波帯の電波を送受信する部位であり、送受信回路はアンテナから送信する送信波を生成するとともに、アンテナで受信した受信波を信号に変換する部位である。また、演算回路は受信した信号を解析して、電波を反射した物体や車両,人物等(すなわち対象)までの距離Lや速度,角度等を検出するものである。
【0028】
このミリ波レーダー11は二つの機能を持つ。第一の機能は、車両10の走行に係る周囲の対象を検出する機能である。すなわち、車両10の周囲の他車両や歩行者,障害物,路面形状,ガードレール等の構造物,地形,白線等を検出する機能である。第二の機能は、車両10の停車時における車両10の乗員の動作を検出する機能である。本実施形態の車両制御装置では、これらの二種類の機能を利用した制御が実施される。ここで検出された対象までの距離L,速度及び角度の情報は、電子制御装置9に伝達される。
【0029】
カメラ12(第一検出手段,第二検出手段)は、車両10の前方の画像を動画として撮影する単眼ビデオカメラである。ここで撮影される動画は連続した複数の画像(静止画像)からなり、それぞれの画像データが随時、電子制御装置9に伝達される。電子制御装置9では、各画像データに対して画像処理演算が施され、画像内に存在する他車両(例えば、先行車や対向車),歩行者,道路形状,風景部分等が分析される。また、このカメラ12もミリ波レーダー11と同様の二つの機能を持ち、車両10の周囲の対象を検出する機能と、乗員の動作を検出する機能とが内蔵されている。
【0030】
なお、ミリ波レーダー11による対象の検知距離,検知角及び電波のスキャン速度が十分であれば、ミリ波レーダー11のみで対象の位置,大きさ及び速度を検出することが可能である。一方、ミリ波レーダー11とカメラ12とを併用することで、対象の検出精度が向上する。
【0031】
電子制御装置9は、周知のマイクロプロセッサやROM,RAM等を集積したLSIデバイス又は組み込み電子デバイスであり、本車両10のプリクラッシュシステムを制御するものである。図3に示すように、電子制御装置9の入力側には、ミリ波レーダー11,カメラ12,重量センサ13,バックルスイッチ14及びドアスイッチ15が接続される。一方、電子制御装置9の出力側には、ブレーキ装置16,エンジン17,スピーカー18及び電動パーキングブレーキ装置19が接続される。
【0032】
[2.制御構成]
[2−1.制御の概要]
本実施形態の電子制御装置9では、おもに二つの制御が実施される。第一の制御はプリクラッシュ制御であり、第二の制御は停止制御である。
プリクラッシュ制御とは、周囲の物体等(対象)に対する車両10の接触の可能性を予測し、仮にその対象と接触したとしてもできるだけ被害が小さくなるように車両10の挙動を調整する制御である。
【0033】
具体的には、例えば先行車の急制動操作により車両10が先行車と接触しそうになったときに、報知音や音声で接触の可能性を乗員に案内する制御、エンジン17の出力を低下させるとともにブレーキ装置16による制動力を増加させて接触時の相対速度を減少させる制御、車高を上下させることによって先行車との接触面積を増大させ衝撃力を分散させる制御、接触の直前にエアバッグの加圧装置やシートベルトのテンション調整機構を作動させる制御などが含まれる。プリクラッシュ制御は、車両10と対象との接触時及びそれ以前に実施される。
【0034】
これに対して停止制御とは、車両10と対象との接触後に実施される制御であり、運転者による操作に関わらず車両10の発進,走行を禁止する制御である。ただし、接触時に単純に車両10の移動を規制したのでは、車両10の利便性が低下するおそれが生じる。そこで、本実施形態の電子制御装置9では、接触が発生したことを以て直ちに車両10を停止させるのではなく、停止制御の開始条件及び終了条件を判定したうえで停止制御を実施し、これを解除する構成を備える。
【0035】
[2−2.制御ブロック構成]
電子制御装置9には、上記の二種類の制御を実現するソフトウェア又はハードウェアとして、対象識別部1,距離判定部2,降車検出部3,プリクラッシュ制御部4及び停止制御部5が設けられる。
【0036】
対象識別部1(対象識別手段)は、対象の種類を識別するものである。ここでは、ミリ波レーダー11で検出された対象までの距離L,相対速度及び角度の情報からその対象の形状が特定され、その形状に基づいて対象の種類が識別される。例えば、対象までの距離L及び角度の情報から、対象の表面上に位置する測定点の座標が演算される。この測定点とは、ミリ波レーダー11から発せられた電波を反射した位置を意味する。測定点の空間的な分布は対象の形状に対応した形状となり、分布の広がりは対象の大きさ(高さ,横幅といった実寸法)に相当する。
【0037】
したがって、典型的な歩行者の形状や普通自動車,大型車両,自動二輪車等の形状のテンプレートを予め設定しておけば、それらのテンプレートと測定点の分布とを比較することで対象の種類の特定が可能となる。また、小型自動二輪車のようにその形状のみでは歩行者との区別が難しい場合には、対象の速度を考慮して識別してもよい。なお、このような対象の識別手法に代えて、あるいは加えて、カメラ12で撮影された画像データから対象の視覚的な特徴(輪郭形状や色,動作等のパターン)を特定し、パターン認識によりその種類を識別してもよい。ここで識別された対象の種類は、停止制御部5に伝達される。
【0038】
距離判定部2は、車両10と対象との接触の可能性を予測するとともに、実際に接触したか否かを判定するものである。ここでは、ミリ波レーダー11で検出された対象までの距離Lが所定距離L0以下であるときに接触の可能性があるものと判断され、距離Lが所定距離L0よりも大きいときに接触の可能性がないものと判断される。また、距離Lが0以下であるときには車両10が対象に接触したと判断される。ここでの判断結果はプリクラッシュ制御部4及び停止制御部5に伝達される。
【0039】
降車検出部3(降車検出手段)は、乗員の車両10からの降車を検出するものである。ここでいう乗員とは、車両10の対象とが接触した時点で車両10に搭乗している人物である。本実施形態では、運転席21A及び助手席21Bの搭乗者の降車を検出する場合について説明する。なお、後部座席の搭乗者の降車についても同様に検出することが可能である。
【0040】
降車検出部3は、以下のすべての条件(1)〜(4)が成立した場合に、運転者が降車したと判断し、その旨の情報を停止制御部5に伝達する。
(1)第一重量センサ13Aの出力信号がオフ
(2)第一バックルスイッチ14Aの出力信号がオフ
(3)第一ドアスイッチ15Aの出力信号がオフ
(4)上記(1)〜(3)成立後、ミリ波レーダー11又はカメラ12で人を検出
【0041】
一方、以下のすべての条件(5)〜(8)が成立した場合には、助手席側の乗員が降車したと判断し、その旨の情報を停止制御部5に伝達する。
(5)第二重量センサ13Bの出力信号がオフ
(6)第二バックルスイッチ14Bの出力信号がオフ
(7)第二ドアスイッチ15Bの出力信号がオフ
(8)上記(5)〜(7)成立後、ミリ波レーダー11又はカメラ12で人を検出
【0042】
なお、条件(4),(8)は、ミリ波レーダー11の物体検出範囲又はカメラ12の撮影範囲の外側から内側へと進入する対象を検出することを意味する。条件(4),(8)の人物検出にカメラ12を用いる場合、画像データから乗員の顔を認識することによって車両10の乗員が降車したことを検出する構成としてもよい。顔認証を実施することで、車両10の乗員が複数存在する場合であっても条件(4),(8)に係る検出対象の人物を特定することが容易となる。
【0043】
また、ミリ波レーダー11を用いる場合、物体検出範囲内に対象が進入したときの距離や速度,進入方向等に基づいて車両10の乗員が降車したことを検出する構成としてもよい。例えば、車両10の進行方向に向かって物体検出範囲の右側から対象が進入した場合にはその対象が運転者であると判断し、左側から進入した場合には助手席21Bの搭乗者であると判断することも可能である。
【0044】
プリクラッシュ制御部4は、前述のプリクラッシュ制御を管理するものである。プリクラッシュ制御の実施条件には少なくとも、距離判定部2で車両10と対象との接触の可能性があるものと判断されることが含まれる。また、その他の実施条件として、車両10の車速が0でないことや、ブレーキペダルが踏み込まれていないこと等を追加してもよい。プリクラッシュ制御部4は、これらのような実施条件を随時判定し、条件成立時にプリクラッシュ制御を実施する。
【0045】
停止制御部5は、前述の停止制御を管理するものであり、距離判定部2で車両10と対象との接触が検出されたときにその旨の報知を行う。また、停止制御部5は、制御開始条件を判定する制御開始部5aと、制御終了条件を判定する制御終了部5bとを有する。
【0046】
制御開始部5a(停止制御開始手段)は、距離判定部2で対象との接触が検出され、かつ、対象識別部1で識別された対象の種類が歩行者(人,動物を含む)である場合に、停止制御を開始するものである。つまり、停止制御は歩行者との接触が認められた場合にのみ実施される。制御開始部5aは、例えばブレーキ装置16,エンジン17及びスピーカー18へと制御信号を出力し、車両10を停止させるとともに、停止制御が実施された旨の案内を乗員に報知する。
【0047】
また、乗員による現場確認を促すべく、接触の対象が歩行者であることが乗員に報知される。さらに、車両10の停止後には電動パーキングブレーキ装置19にロック信号を出力し、車両10の発進を防止する。なお、対象の種類が歩行者でない場合には、制御開始部5aは制御信号を出力せず、停止制御を開始しない。
【0048】
一方、制御終了部5b(停止制御終了手段)は、停止制御の実施中に降車検出部3で乗員の降車が検出された場合に、停止制御が終了させるものである。つまり、乗員が車両10を降りて歩行者を確認した場合には停止制御が解除される。制御終了部5bは、制御開始部5aからの制御信号の出力先に対して、制御を終了させる信号を出力するとともに、停止制御が終了したことを乗員に報知する。
【0049】
[3.フローチャート]
図4は、電子制御装置9で実行される制御手順を例示するフローチャートである。このフローチャートに示される制御は、電子制御装置9の内部で所定の周期(例えば数[ms]周期)で繰り返し実施される。フローチャート中のフラグFは、停止制御の実施,不実施を意味するフラグであり、停止制御の実施時にF=1に設定され、不実施時にはF=0に設定される。
【0050】
ステップA10では、停止制御部5においてフラグFがF=0であるか否かが判定される。通常の走行時であって停止制御が実施されていなければ、ステップA20へ進む。ステップA20では、ミリ波レーダー11で検出された対象までの距離L,相対速度及び角度の情報が対象識別部1に伝達され、対象の種類が識別される。なお、ミリ波レーダー11で検出された対象がない場合には、このフローを終了してもよい。
【0051】
続くステップA30では、距離判定部2において、車両10と対象とが接触したか否かが判定される。ここで、対象までの距離LがL≦0である場合には実際に接触したと判定され、ステップA40へ進む。一方、距離LがL>0である場合にはまだ接触していないため、ステップA70へ進む。
【0052】
ステップA40では、停止制御部5からスピーカー18に制御信号が出力され、車両10が対象と接触したことが乗員に報知される。また、続くステップA50では、停止制御部5の制御開始部5aにおいて、対象の種類が歩行者であるか否かが判定される。この判定には、ステップA20で対象識別部1に識別された対象の種類が用いられる。ここで、対象が歩行者の場合にはステップA60へ進み、フラグFがF=1に設定される。また、これに続くステップA100以降では停止制御が実施される。次回以降の演算周期では、ステップA20〜A60の制御がスキップされ、ステップA100以降の制御が実施される。
【0053】
ステップA50の判定で、対象が歩行者でなかった場合には、そのままこのフローを終了する。例えば、自宅のカーポート内で家族が所持するセカンドカーに接触したような場合、対象が歩行者ではないため停止制御は実施されない。
なお、車両10と対象とが接触していない場合に進むステップA70では、プリクラッシュ制御部4において、対象までの距離Lが所定距離L0よりも大きいか否かが判定される。ここで、対象までの距離LがL≦L0である場合には接触の可能性があるものと判断され、ステップA80へ進む。ステップA80では、プリクラッシュ制御部4においてプリクラッシュ制御が実施され、このフローを終了する。なお、本フローに記載されていない他の実施条件を判定した上でプリクラッシュ制御を実施する構成としてもよい。
【0054】
一方、ステップA70で対象までの距離LがL>L0である場合には接触の可能性がないものと判断され、ステップA90へ進む。ステップA90では、プリクラッシュ制御部4においてプリクラッシュ制御が解除され、このフローを終了する。なお、プリクラッシュ制御を開始していない状態であればステップA90をスキップしてこのフローを終了してもよい。
【0055】
続いて、停止制御及びその解除について説明する。ステップA100では、制御開始部5aにおいて停止制御が実施される。例えば、車両10が走行中であればブレーキ装置16に制御信号が出力され、制動力が徐々に付与される。また、エンジン17にも制御信号が出力され、エンジン出力(駆動力)が減じられる。また、スピーカー18から歩行者との接触があったことが報じられ、乗員に対して現場確認を促すためのアナウンスがなされる。さらに、車両10が停止すると電動パーキングブレーキ装置19にロック信号が出力され、車両10の再発進が防止される。
【0056】
続くステップA110では、重量センサ13で検出された荷重,バックルスイッチ14で検出されたシートベルトの着装状態に対応した信号,ドアスイッチ15で検出されたドア20の開閉状態に対応した信号,ミリ波レーダー11又はカメラ12の検出情報が降車検出部3に伝達される。これらの情報に基づき、ステップA120〜A150では乗員による歩行者の確認動作が検出される。
【0057】
まずステップA120では、降車検出部3において、重量センサ13の出力信号がオフであるか否かが判定される。すなわち、運転席21A,助手席21Bに乗員が着座しているか否かが判定される。ここで出力信号がオフである場合にはステップA130へ進み、出力信号がオンである場合にはそのままフローを終了する。
なお、運転者の降車を判定するフローとは別個に、助手席側の乗員の降車を判定するフローを設けてもよい。
【0058】
本フローチャートでは便宜的に運転者の降車と助手席側の乗員の降車とを一緒に判定するようなフローを例示している。本フローチャートのステップA120では、上記の条件(1),(5)が同時に判定されており、条件(1)が成立した場合には以下のステップで条件(2)〜(4)が判定され、条件(5)が成立した場合には以下のステップで条件(6)〜(8)が判定される。また、両方の条件(1),(5)がともに成立した場合には、以下のステップで条件(2)〜(4),(6)〜(8)がともに判定される。
【0059】
ステップA130では、バックルスイッチ14の出力信号がオフであるか否かが判定される。すなわち、乗員がシートベルトを外したか否かが判定される。ここで出力信号がオフである場合にはステップA140へ進み、出力信号がオンである場合にはそのままフローを終了する。
ステップA140では、ドアスイッチ15の出力信号がオフであるか否かが判定される。すなわち、乗員がドア20から外へ出ようとしているか否かが判定される。ここで出力信号がオフである場合にはステップA150へ進み、出力信号がオンである場合にはそのままフローを終了する。
【0060】
ステップA150では、ステップA140の条件成立時から所定時間内にミリ波レーダー11又はカメラ12で人を検出したか否かが判定される。すなわち、乗員が接触した歩行者を確認しているか否かが判定される。ここで人が検出された場合にはステップA160へ進み、検出されない場合にはそのままフローを終了する。上記の所定時間は、タイマーやカウンター等を用いてステップA140の条件成立時からの経過時間を計測することによって判定可能である。
【0061】
ステップA160は、上記のステップA120〜A150が全て成立したときに実行されるステップであり、フラグFがF=0に設定される。続くステップA170では、制御終了部5bにおいて乗員が車両10から降りて歩行者を確認したものと判断され、停止制御が終了する。
ここでは、ステップA100で実施された各制御が終了し、車両が発進,走行可能な状態となる。例えば、電動パーキングブレーキ装置19のロックが解除されるとともに、スピーカー18から走行可能であることがアナウンスされる。また、ブレーキ装置16やエンジン17への制御信号の出力が停止し、車両10が通常のアイドリング状態とされる。
【0062】
[4.効果]
このように、上記の車両制御装置では、ミリ波レーダー11で検出された対象と車両10との接触の可能性がある場合には、プリクラッシュ制御が実施される。これにより、仮にその対象と接触したとしてもできるだけ被害を軽減するように車両10の挙動を調整することができる。また、車両10と対象との接触時にはその旨の報知がなされ、自律的に停止制御が実施される。これにより、乗員に対して接触状態の確認を促すことができる。
【0063】
また、停止制御では、運転者による操作に関わらず車両10の発進,走行が禁止される。これにより、接触現場の保存性を高めることができ、証拠保全が容易となる。さらに、乗員による確認動作が検出されない限り停止制御が継続されるため、確実に確認作業を実施させることができる。一方、確認動作が検出された場合には停止制御が終了するため、軽微な接触時に車両10の移動が過剰に制限されることがなく、利便性を向上させることができる。
【0064】
なお、上記の車両制御装置の停止制御は、接触を検知した車両10が自律的に移動を規制する制御であって、例えば中枢システムに集中管理されたものではないため、柔軟性及び拡張性に優れているというメリットがある。特に、災害によってインフラに障害が発生したような場合であっても、現場保存性を向上させることができ、かつ、十分な利便性を維持することができる。
【0065】
また、上記の車両制御装置では、接触の対象が歩行者である場合に停止制御が開始される。逆にいえば、接触の対象が自宅のカーポートや門扉といった物体であれば、停止制御が開始されない。このように、車両10と歩行者との接触時に停止制御を開始することにより、歩行者の安否を乗員に確認させることができ、迅速な救急措置が可能となる。
一方、車両10と歩行者以外の物体との接触時には停止制御が禁止されるため、車両10の移動が拘束されることがなく、利便性を向上させることができる。なお、公道上における車両10と他車両との接触時であれば、乗員の意思で交通の邪魔にならない路肩へと車両を移動させて停車させることもでき、交通渋滞の発生を防止することができる。
【0066】
また、上記の車両制御装置では、ミリ波レーダー11又はカメラ12を用いて車両10の乗員による歩行者の確認動作を検出している。このように、歩行者との接触後の乗員の行動を監査することにより、確実に確認作業を実施させることができる。
【0067】
このような歩行者の確認動作の検出に際し、ドア20の開閉状態を検出することで、乗員の降車意思を確認することができ、より確実に確認作業を実施させることができる。また、ドア20が開放されていなければ、たとえミリ波レーダー11又はカメラ12で乗員らしき人物が検出されたとしても、その人物が乗員ではないことになる。したがって、乗員の誤検出を防止することができるというメリットがある。
【0068】
これに加えて、上述の実施形態では、運転席ドア20A,助手席ドア20Bのそれぞれに第一ドアスイッチ15A,第二ドアスイッチ15Bが設けられるため、降車しようとしている乗員が運転者であるのか、それとも助手席21Bの搭乗者であるのかを特定することができる。
同様に、上記の車両制御装置では、シートベルトの装着状態を参照して上記の歩行者の確認動作を検出している。これにより、乗員の降車意思を確認することができ、より確実に確認作業を実施させることができる。また、乗員の誤検出を確実に防止することができるとともに、降車しようとしている乗員の特定がより容易となる。
【0069】
さらに、上記の車両制御装置では、シートベルトのバックルスイッチ14やドアスイッチ15だけでなく、重量センサ13を用いて着座中の乗員の有無を検出している。これにより、実際に乗員が車両10から降車したことを確認することができ、乗員の誤検出をより確実に防止することができるとともに、降車した乗員を特定することができる。
【0070】
なお、上記の重量センサ13,バックルスイッチ14,ドアスイッチ15といった降車検出に係るセンサは、乗員の降車を検出する機能を持つものであるとともに、乗員に降車を促す機能を持つもの(すなわち、降車促進手段)と捉えることができる。したがって、これらの降車促進手段を備えた上記の車両制御装置には、歩行者の安否を乗員に積極的に確認させることができるというメリットがある。
【0071】
また、上記の車両制御装置では、ミリ波レーダー11やカメラ12から得られる対象の形状に基づいて歩行者と歩行者以外とを識別している。このように、対象の形状に基づく種類の識別により、歩行者と他車両とを混同してしまうような誤検出を防止することができる。したがって、停止制御の制御性を高めることができる。
【0072】
[5.変形例]
上述した実施形態に関わらず、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。本実施形態の各構成は、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせてもよい。
上述の実施形態では、停止制御の開始条件として接触の対象が歩行者であることが規定されているが、対象が歩行者の場合だけでなく、歩行者以外の物体や他車両の場合にも停止制御を開始する構成としてもよい。この場合、軽微な接触時であっても確実に確認作業を実施させることができ、接触現場の保存性をさらに向上させることができる。
【0073】
また、上述の実施形態では、ミリ波レーダー11及びカメラ12を備えた車両10を例示したが、少なくとも車両10の周囲の空間的な状況を把握するセンサを備えていればよく、具体的なセンシング手法はこれに限定されない。例えば、ミリ波レーダー11及びカメラ12の代わりに、ステレオカメラ(同一の被写体を二つの視点から撮影する撮影装置)を用いてもよい。
【0074】
また、上述の実施形態では、条件(1)〜(8)に示すように、重量センサ13,バックルスイッチ14,ドアスイッチ15及びミリ波レーダー11(又はカメラ12)の各検出情報に基づいて乗員による歩行者の確認動作が確認されているが、具体的な確認手法はこれに限定されず、例えば条件(1)〜(8)の少なくとも一つが成立したことを以て乗員による歩行者の確認動作がなされたと判断してもよい。
【0075】
また、停止制御での制御対象に関しても、ブレーキ装置16,エンジン17,スピーカー18及び電動パーキングブレーキ装置19のうちの少なくとも一つを制御するものとすることが可能であり、あるいは、図示しないクラッチやトランスミッション,シフトレバー等を制御対象としてもよい。例えば、クラッチを切断することによってエンジン出力の駆動輪側への伝達を禁止する制御としてもよいし、シフトレバーの操作位置をニュートラル位置やパーキング位置に固定して、ドライブ位置に操作できないようにするような制御としてもよい。停止制御の具体的な実施手法に関わらず、上述の実施形態と同様の効果を奏するものとなる。
【0076】
なお、上述の実施形態では、エンジン17を駆動源とした車両10に適用された車両制御装置を説明したが、本車両制御装置の適用対象はこれに限定されず、例えばハイブリッド車両や電気自動車に適用してもよい。
【符号の説明】
【0077】
1 対象識別部(対象識別手段)
2 距離判定部
3 降車検出部(降車検出手段)
4 プリクラッシュ制御部
5 停止制御部
5a 制御開始部(停止制御開始手段)
5b 制御終了部(停止制御終了手段)
9 電子制御装置
11 ミリ波レーダー(第一検出手段,第二検出手段)
12 カメラ(第一検出手段,第二検出手段)
13 重量センサ(第二検出手段)
14 バックルスイッチ(第二検出手段)
15 ドアスイッチ(第二検出手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられ、前記車両の周囲の対象を検出する第一検出手段と、
前記車両と前記第一検出手段で検出された前記対象との接触時に、前記車両を停止させる停止制御を開始する停止制御開始手段と、
前記停止制御の開始後に、前記車両の乗員による前記対象の確認動作を検出する第二検出手段と、
前記確認動作の検出時に、前記停止制御を終了させる停止制御終了手段と
を備えたことを特徴とする、車両制御装置。
【請求項2】
前記第一検出手段で検出された前記対象が歩行者であるか否かを識別する対象識別手段を備え、
前記停止制御開始手段が、前記歩行者との接触時に前記停止制御を開始するとともに、前記歩行者以外との接触時に前記停止制御を禁止する
ことを特徴とする、請求項1記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記車両の乗員の降車を検出する降車検出手段を備え、
前記第二検出手段が、前記降車検出手段が前記降車を検出したことを以て前記確認動作を検出する
ことを特徴とする、請求項2記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記第二検出手段が、前記車両のドアの開閉状態に基づき前記確認動作を検出する
ことを特徴とする、請求項2又は3記載の車両制御装置。
【請求項5】
前記第二検出手段が、前記車両に装備されたシートベルトの着脱状態に基づき前記確認動作を検出する
ことを特徴とする、請求項2〜4の何れか1項に記載の車両制御装置。
【請求項6】
前記第二検出手段が、前記車両のシートに内蔵された重量センサの検出値に基づき前記確認動作を検出する
ことを特徴とする、請求項2〜5の何れか1項に記載の車両制御装置。
【請求項7】
前記対象識別手段が、前記対象の形状に基づき前記歩行者と前記歩行者以外とを識別する
ことを特徴とする、請求項2〜6の何れか1項に記載の車両制御装置。
【請求項1】
車両に設けられ、前記車両の周囲の対象を検出する第一検出手段と、
前記車両と前記第一検出手段で検出された前記対象との接触時に、前記車両を停止させる停止制御を開始する停止制御開始手段と、
前記停止制御の開始後に、前記車両の乗員による前記対象の確認動作を検出する第二検出手段と、
前記確認動作の検出時に、前記停止制御を終了させる停止制御終了手段と
を備えたことを特徴とする、車両制御装置。
【請求項2】
前記第一検出手段で検出された前記対象が歩行者であるか否かを識別する対象識別手段を備え、
前記停止制御開始手段が、前記歩行者との接触時に前記停止制御を開始するとともに、前記歩行者以外との接触時に前記停止制御を禁止する
ことを特徴とする、請求項1記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記車両の乗員の降車を検出する降車検出手段を備え、
前記第二検出手段が、前記降車検出手段が前記降車を検出したことを以て前記確認動作を検出する
ことを特徴とする、請求項2記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記第二検出手段が、前記車両のドアの開閉状態に基づき前記確認動作を検出する
ことを特徴とする、請求項2又は3記載の車両制御装置。
【請求項5】
前記第二検出手段が、前記車両に装備されたシートベルトの着脱状態に基づき前記確認動作を検出する
ことを特徴とする、請求項2〜4の何れか1項に記載の車両制御装置。
【請求項6】
前記第二検出手段が、前記車両のシートに内蔵された重量センサの検出値に基づき前記確認動作を検出する
ことを特徴とする、請求項2〜5の何れか1項に記載の車両制御装置。
【請求項7】
前記対象識別手段が、前記対象の形状に基づき前記歩行者と前記歩行者以外とを識別する
ことを特徴とする、請求項2〜6の何れか1項に記載の車両制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図2】
【図3】
【図4】
【公開番号】特開2012−224254(P2012−224254A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−94460(P2011−94460)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】
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