説明

車両周辺監視装置

【課題】視差オフセット量を算出するに際に基準とする対象物を移動する対象物として高精度に視差オフセット量を算出することができる車両周辺監視装置を提供する。
【解決手段】本発明の車両周辺監視装置によれば、2つの撮像装置の光軸間平行度ずれに起因する視差オフセット量が算出される。レーダ装置により距離が検出される一の照射領域に対象物が1つのみ存在し、かつ、一の照射領域に対応する撮像画像における一の局所画像領域に、抽出された対象物が1つのみ存在するという所定条件を満たす場合に、レーダ装置により対象物までの距離が検出されるとともに、2つの撮像装置により得られた対象物の視差が算出される。前記のことより、視差オフセット量を高精度に算出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載された撮像装置によって得られる撮像画像を用いて車両の周辺を監視する車両周辺監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載された2つの撮像手段によって得られる2つの画像に基づいて対象物の視差を算出し、この視差から対象物までの距離を検出する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。上記従来技術では、第1および第2の時刻において静止している対象物の視差を算出するとともに、車速センサから第1の時刻から第2の時刻までの期間における車両の移動量を算出する。そして、前記視差ならびに車両の移動量に基づいて、2つの撮像手段の光軸間平行度ずれに起因する視差オフセット量を算出し、この算出した視差オフセット量により視差を補正する。
【特許文献1】特開2001−169310号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記従来技術は、視差オフセット量を算出する際に第1および第2の時刻における視差の基準となる対象物を静止している対象物としている。このため、視差オフセット量を算出するに際に第1および第2の時刻における視差の基準となる対象物を移動する対象物とすると、第1および第2の時刻における視差の変化量と車両の移動量との対応関係は一定しないので、上記従来技術の手法により算出される視差オフセット量が保証できなくなる。
【0004】
そこで、本発明は、視差オフセット量を算出する際に基準とする対象物を移動する対象物として高精度に視差オフセット量を算出することができる車両周辺監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1発明の車両周辺監視装置は、車両に搭載された2つの撮像装置により得られた2つの撮像画像に基づいて対象物の視差を算出し、該視差から前記対象物までの距離を検出して車両の周辺を監視する車両周辺監視装置であって、前記車両から放射状に広がる複数の送信波の照射領域における反射波の強度を検知することにより第1の対象物までの距離を検出するレーダ装置と、前記2つの撮像装置により得られた第2の対象物の視差を算出する視差算出手段と、前記第1の対象物と前記第2の対象物とが同一対象物であるか否かを判定する同一対象物判定手段と、前記同一対象物判定手段により前記第1の対象物と前記第2の対象物とが前記同一対象物であると判定された場合、前記レーダ装置で検出された前記車両から前記同一対象物までの距離と前記視差算出手段により算出された前記2つの撮像装置により得られた前記同一対象物の視差とに基づいて、前記2つの撮像装置の光軸間平行度ずれに起因する視差オフセット量を算出する視差オフセット量算出手段と、前記視差オフセット量算出手段により算出された視差オフセット量に基づいて視差を補正する視差補正手段とを備えることを特徴とする。
【0006】
第1発明の車両周辺監視装置によれば、レーダ装置により車両からの距離が検出された第1の対象物と2つの撮像装置により得られた第2の対象物とが同一対象物であると判定された場合、レーダ装置で検出された車両から同一対象物までの距離と2つの撮像装置により得られた同一対象物の視差とに基づいて、2つの撮像装置の光軸間平行度ずれに起因する視差オフセット量を算出する視差オフセット量が算出される。レーダ装置により車両から第1の対象物までの距離が静止している対象物または移動する対象物によらず正確に検出されることに鑑みて、前記のような手法により視差オフセット量を高精度に算出することができる。
【0007】
第2発明の車両周辺監視装置は、請求項1に記載の車両周辺監視装置において、前記同一対象物判定手段は、前記レーダ装置により距離が検出された一の前記照射領域に第1の対象物が1つのみ存在し、かつ、前記一の照射領域に対応する前記撮像画像における一の局所画像領域に、前記2つの撮像装置により得られた第2の対象物が1つのみ存在するという所定条件が満たされているか否かに応じて、前記第1の対象物と前記第2の対象物とが同一対象物であるか否かを判定することを特徴とする。
【0008】
第2発明の車両周辺監視装置によれば、レーダ装置により検出された車両から対象物までの距離と2つの撮像装置により得られた対象物から算出された視差とに基づいて、2つの撮像装置の光軸間平行度ずれに起因する視差オフセット量が算出される。レーダ装置により距離が検出される一の照射領域に対象物が1つのみ存在し、かつ、一の照射領域に対応する撮像画像における一の局所画像領域に、抽出された対象物が1つのみ存在するという所定条件を満たさなければ、一の照射領域においてレーダ装置により距離が検出された対象物とこれに対応する一の局所画像領域から抽出された対象物が同一の対象物であるか否かを判定するのが困難であり、視差オフセット量を高精度に算出することができない。一方、前記所定条件が満たされれば一の照射領域においてレーダ装置により距離が検出された対象物とこれに対応する一の局所画像領域から抽出された対象物が同一の対象物である可能性が高い。この点に鑑みて、前記所定条件が満たす場合に、レーダ装置により対象物までの距離が検出されるとともに、2つの撮像装置により得られた対象物の視差が算出される。前記のことにより、視差オフセット量を高精度に算出することができる。
【0009】
第3発明の車両周辺監視装置は、第2発明の車両周辺監視装置において、前記視差オフセット量算出手段は、前記同一対象物判定手段により複数の前記照射領域と該複数の照射領域にそれぞれ対応する複数の前記局所画像領域とについて前記所定条件が満たされている場合、前記第1の対象物と前記第2の対象物とが同一であると判定された複数の前記同一対象物における前記視差オフセット量を平均し、前記視差補正手段は、前記平均された視差オフセット量に基づいて視差を補正することを特徴とする。
【0010】
第3発明の車両周辺監視装置によれば、複数の照射領域とこの複数の照射領域にそれぞれ対応する複数の局所画像領域について所定条件が満たされていると判定された場合、所定条件を満たす複数の対象物における視差オフセット量が平均される。したがって、所定条件を満たす複数の照射領域における対象物までの測定距離誤差にばらつきがあるような場合でも、測定誤差ばらつきの影響が低減され高精度に視差オフセット量を算出することができる。
【0011】
第4発明の車両周辺監視装置は、車両に搭載された2つの撮像装置により得られた2つの撮像画像に基づいて対象物の視差を算出し、該視差から前記対象物までの距離を検出して車両の周辺を監視する車両周辺監視装置であって、前記車両から放射状に広がる複数の送信波の照射領域における反射波の強度を検知することにより対象物までの距離を検出するレーダ装置と、前記レーダ装置により前記対象物までの距離に基づいて前記対象物が前方車両があるか否かを判定する車両判定手段と、前記2つの撮像装置により得られた前記対象物の視差を算出する視差算出手段と、前記車両判定手段により前記前方車両があると判定された場合、前記レーダ装置で検出された前記車両から前記前方車両までの距離と前記視差算出手段により算出された前記2つの撮像装置により得られた前記前方車両の視差とに基づいて、前記2つの撮像装置の光軸間平行度ずれに起因する視差オフセット量を算出する視差オフセット量算出手段と、前記視差オフセット量算出手段により算出された視差オフセット量に基づいて視差を補正する視差補正手段とを備えることを特徴とする。
【0012】
第4発明の車両周辺監視装置によれば、レーダ装置により対象物までの距離に基づいて対象物が前方車両であると判定された場合、レーダ装置で検出された車両から前方車両までの距離と2つの撮像装置により得られた前方車両の視差とに基づいて、2つの撮像装置の光軸間平行度ずれに起因する視差オフセット量が算出される。レーダ装置により車両から前方車両までの距離が正確に検出されることに鑑みて、前記のような手法により視差オフセット量を高精度に算出することができる。
【0013】
第5発明の車両周辺監視装置は、車両に搭載された2つの撮像装置により得られた2つの撮像画像に基づいて対象物の視差を算出し、該視差から前記対象物までの距離を検出して車両の周辺を監視する車両周辺監視装置であって、前記車両から放射状に広がる複数の送信波の照射領域における反射波の強度を検知することにより対象物までの距離を検出するレーダ装置と、前記2つの撮像装置により得られた前記対象物が前方車両があるか否かを判定する車両判定手段と、前記2つの撮像装置により得られた前記対象物の視差を算出する視差算出手段と、前記車両判定手段により前記前方車両があると判定された場合、前記レーダ装置で検出された前記車両から前記前方車両までの距離と前記視差算出手段により算出された前記2つの撮像装置により得られた前記前方車両の視差とに基づいて、前記2つの撮像装置の光軸間平行度ずれに起因する視差オフセット量を算出する視差オフセット量算出手段と、前記視差オフセット量算出手段により算出された視差オフセット量に基づいて視差を補正する視差補正手段とを備えることを特徴とする。
【0014】
第5発明の車両周辺監視装置によれば、2つの撮像装置により得られた対象物が前方車両があると判定された場合、レーダ装置で検出された車両から前方車両までの距離と2つの撮像装置により得られた前方車両の視差とに基づいて、2つの撮像装置の光軸間平行度ずれに起因する視差オフセット量が算出される。レーダ装置により車両から前方車両までの距離が正確に検出されることに鑑みて、前記のような手法により視差オフセット量を高精度に算出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
[第1実施形態]
本発明の車両周辺監視装置の第1実施形態について説明する。まず、本実施形態の車両周辺監視装置の構成について説明する。車両周辺監視装置は図1および図2に示されている画像処理ユニット1を備えている。画像処理ユニット1には、自車両10の前方の画像を撮像する撮像装置としての2つの赤外線カメラ2R,2Lおよび自車両10の前方の対象物までの距離を検出するレーダ装置3が接続されると共に、自車両10の走行状態を検出するセンサとして、自車両10のヨーレートを検出するヨーレートセンサ4、自車両10の走行速度(車速)を検出する車速センサ5、および自車両10のブレーキ操作の有無を検出するブレーキセンサ6とが接続されている。さらに、画像処理ユニット1には、音声などによる聴覚的な通報情報を出力するためのスピーカ7、および赤外線カメラ2R,2Lにより撮像された撮像画像や視覚的な通報情報を表示するための表示装置8が接続されている。なお、赤外線カメラ2R,2Lが本発明における撮像装置に相当する。
【0016】
画像処理ユニット1は、詳細な図示は省略するが、A/D変換回路、マイクロコンピュータ(CPU、RAM、ROM等を有する)、画像メモリなどを含む電子回路により構成され、赤外線カメラ2R,2L、レーダ装置3、ヨーレートセンサ4、車速センサ5およびブレーキセンサ6から出力されるアナログ信号が、A/D変換回路によりデジタルデータ化されて、マイクロコンピュータに入力される。そして、マイクロコンピュータは、入力されたデータを基に、人(歩行者、自転車に乗っている者)などの対象物を検出し、検出した対象物が所定の通報要件を満す場合にスピーカ7や表示装置8により運転者に通報を発する処理を実行する。
【0017】
図2に示されているように、赤外線カメラ2R,2Lは、自車両10の前方を撮像するために、自車両10の前部(図ではフロントグリルの部分)に取り付けられている。この場合、赤外線カメラ2R,2Lは、それぞれ、自車両10の車幅方向の中心よりも右寄りの位置、左寄りの位置に配置されている。それら位置は、自車両10の車幅方向の中心に対して左右対称である。赤外線カメラ2R,2Lは、それらの光軸が互いに平行に自車両10の前後方向に延在し、かつ、それぞれの光軸の路面からの高さが互いに等しくなるように固定されている。赤外線カメラ2R,2Lは、遠赤外域に感度を有し、それにより撮像される物体の温度が高いほど、出力される映像信号のレベルが高くなる(映像信号の輝度が高くなる)特性を有している。
【0018】
レーダ装置3は自車両10の前側に赤外線カメラ2R,2Lの上方に位置するように取り付けられている。レーダ装置3は上方から見たときに図3に示されているように赤外線カメラ2R,2Lの撮像領域より狭い幅で広がるミリ波(電磁波)のビームBMを自車両10の前方に送信する。レーダ装置3における照射領域は、第1の照射領域BM1〜第7の照射領域BM7に分かれている。レーダ装置3は走査型のレーダ装置であり、自車両3の前方領域が自車両10の左右方向に走査されるように、一定強度のビームBMがその送信角度を一定角度ずつずらしながら送信される。ビームBMの左右方向の走査範囲は赤外線カメラ2R,2Lの撮像領域を水平方向についてすべて包含するように設定されている。また、ビームBMの上下方向の幅は、赤外線カメラ2R,2Lの上下方向の視野を含むように設定されている。そして、レーダ装置3はこのミリ波の反射波、すなわち、自車両10の前方に存在する対象物により反射されたミリ波を上下方向に配列された受信アンテナ(図示略)により受信する。また、レーダ装置3は照射領域ごとに反射波の強度を測定し、かつ、反射強度と、自車両10から、反射波の原因となった物体までの距離との相関関係を表わす反射強度データを画像処理ユニット1に出力する。なお、レーダ装置としてはミリ波等の電磁波(レーザー光など)のほか、超音波等の弾性振動波を用いるレーダ装置が採用されてもよい。
【0019】
また、本実施形態では、表示装置8として、自車両10のフロントウィンドウに画像情報を表示するヘッド・アップ・ディスプレイ8a(以下、HUD8aという)を備えている。なお、表示装置8として、HUD8aの代わりに、もしくは、HUD8aとともに、自車両10の車速などの走行状態を表示するメータに一体的に設けられたディスプレイ、あるいは、車載ナビゲーション装置に備えられたディスプレイを用いてもよい。
【0020】
次に、本実施形態の車両周辺監視装置の主要な機能である視差オフセット量算出処理について図4のフローチャートを用いて説明する。
【0021】
まず、レーダ装置3により対象物までの距離を検出する(図4/STEP100)。具体的には、レーダ装置3は照射領域ごとに反射波の強度を測定し、かつ、反射強度と、自車両10から、反射波の原因となった物体までの距離との相関関係を表わす反射強度データを画像処理ユニット1に出力する。
【0022】
次いで、レーダ装置3により距離が検出された一の照射領域に対象物が1つのみ存在し、かつ、一の照射領域に対応する撮像画像における一の局所画像領域に、対象物抽出手段により抽出された対象物が1つのみ存在するという所定条件を満たしている照射領域および局所画像領域の組の有無を判定する(図4/STEP102)。なお、レーダ装置3の第1の照射領域BM1〜第7のBM7では、たとえば図5に示すように対象物が検出される。第1の照射領域BM1〜第7の照射領域BM7における「○」は対象物を示している。また、レーダ装置3における各照射領域BM1〜BM7に対応する赤外線カメラ2R,2Lの撮像画像における各局所画像領域は、たとえば図6に示すように、レーダ装置3における第1の照射領域BM1〜第7の照射領域BM7に対応するように赤外線カメラ2R,2Lの撮像画像を左右方向に分割した第1の局所画像領域LA1〜第7の局所画像領域LA7である。第1の局所画像領域LA1〜第7の局所画像領域LA7における「○」は対象物を示している。第1の照射領域では、距離が検出された対象物が重なって2つ検出され、かつ、第1の照射領域BM1に対応する第1の局所画像領域LA1では、対象物が1つのみ抽出される。したがって、第1の照射領域BM1と第1の局所画像領域LA1との組は前記所定条件を満たしていないと判定される。また、第2の照射領域BM2では、距離が検出された対象物が離れて2つ検出され、かつ、第2の照射領域BM2に対応する第2の局所画像領域LA2には対象物が離れて2つ抽出される。したがって、第2の照射領域BM2と第2の局所画像領域LA2との組は前記所定条件を満たしていないと判定される。また、第3の照射領域BM3では、距離が検出された対象物が1つのみ検出され、かつ、第3の照射領域BM3に対応する第3の局所画像領域LA3では、対象物が1つのみ抽出される。したがって、第3の照射領域BM3と第3の局所画像領域LA3との組は前記所定条件を満たしていると判定される。また、第4の照射領域BM4では、距離が検出された対象物が1のみ検出され、かつ、第4の照射領域BM4に対応する第4の局所画像領域では、対象物が1のみ抽出される。したがって、第4の照射領域BM4と第4の局所画像領域LA4との組は前記所定条件を満たしている判定される。また、第5の照射領域BM5では、距離が検出された対象物が1つのみ検出され、かつ、第5の照射領域BM5に対応する第5の局所画像領域では、対象物が1つのみ抽出される。したがって、第5の照射領域BM5と第5の局所画像領域LA5との組は前記所定条件を満たしている判定される。また、第6の照射領域BM6では、距離が検出された対象物が2つ検出され、かつ、第6の照射領域BM6に対応する第6の局所画像領域LA6では、対象物が2つ抽出される。したがって、第6の照射領域BM6と第6の局所画像領域LA6との組は前記所定条件を満たしていないと判定される。また、第7の照射領域BM7では、対象物が検出されなく、かつ、第7の照射領域BM7に対応する第7の局所画像領域LA7では、対象物が抽出されない。したがって、第7の照射領域BM7と第7の局所画像領域LA7との組は前記所定条件を満たしていないと判定される。以上より、前記所定条件を満たすと判定される照射領域と局所画像領域は、第3の照射領域と第3の局所画像領域、第4の照射領域と第4の局所画像領域、および、第5の照射領域と第5の局所画像領域である。
【0023】
そして、前記所定条件が満たされていると判定された照射領域と局所画像領域が存在する場合(図4/STEP102‥YES)、一の照射領域に存在する1つの対象物までの距離を、レーダ装置3から画像処理ユニット1に送信された反射強度データに基づいて算出する(図4/STEP104)。
【0024】
その後、赤外線カメラ2R,2Lの撮像画像により得られた一の照射領域に対応する一の局所画像領域に存在する対象物の視差を算出する(図4/STEP106)。なお、当該視差は、図6に示すように、基準画像の対象物BOと同一の探索画像の対象物SOを水平方向の位置が一致するようにするエピポーラ拘束の基で算出する。
【0025】
次いで、STEP104により算出された自車両10から対象物までの距離と、STEP106により算出された対象物の視差とに基づいて視差オフセット量が算出される(図4/STEP108)。具体的に視差オフセット量Offsetは式(1)で算出される。なお、Zは、STEP104により算出された自車両10から対象物までの距離、Dnは、STEP106により算出された対象物の視差、Dは、赤外線カメラ2R,2Lの左右の間隔である基線長、および、Fは、赤外線カメラ2R,2Lのレンズの焦点距離を画素ピッチで割った値である。
【0026】
【数1】

【0027】
そして、視差オフセット量を、本視差オフセット量算出処理の結果により得られた値に更新する(視差補正手段)。
【0028】
なお、図5および図6に示すように、前記所定条件を満たしている照射領域および局所画像領域の組の有無を複数の対象物について判定して、複数の組について所定条件が満たされる場合には複数の視差オフセット量を平均するようにしてもよい。
【0029】
前記機能を発揮する車両周辺監視装置によれば、レーダ装置3により検出された自車両10から対象物までの距離と赤外線カメラ2R,2Lにより得られた対象物から算出された視差とに基づいて、赤外線カメラ2R,2Lの光軸間平行度ずれに起因する視差オフセット量が算出される(図4/S100〜S108、図5、図6参照)。レーダ装置3により距離が検出される一の照射領域に対象物が1つのみ存在し、かつ、一の照射領域に対応する撮像画像における一の局所画像領域に、抽出された対象物が1つのみ存在するという所定条件を満たさなければ、一の照射領域のレーダ装置3により距離が検出された対象物とこれに対応する一の局所画像領域から抽出された対象物が同一の対象物であるか否かを判定するのが困難であり、視差オフセット量を高精度に算出することができない。一方、前記所定条件が満たされれば一の照射領域のレーダ装置3により距離が検出された対象物とこれに対応する一の局所画像領域から抽出された対象物が同一の対象物である可能性が高い。この点に鑑みて、前記所定条件が満たす場合に、レーダ装置3により対象物までの距離が検出されるとともに、赤外線カメラ2R,2Lにより得られた対象物の視差が算出される。前記のことにより、視差オフセット量を高精度に算出することができる。
【0030】
また、前記所定条件を満たす複数の対象物があり、STEP104により算出される各対象物における自車両10からこの対象物までの距離の差が所定値以下の場合、複数のこの対象物における視差オフセット量を平均するようにしてもよい。たとえば、図7に示すように、視差オフセット量を算出する際に基準とする対象物を赤外線カメラ2R,2Lの撮像画像により得られた前方車両FBとすることができる。前方車両FBは、複数の局所画像領域LA3〜LA5に亘る1つの対象物である。なお、この場合に視差は、基準画像の対象物BOと同一の探索画像の対象物SOを水平方向の位置が一致するようにするエピポーラ拘束の基で算出する。なお、赤外線カメラ2R,2Lの撮像画像から抽出された対象物が車両であるか否かの判定は、例えば本出願人による特開2004−348645号の図7に記載されている処理で行うことができる。本例によれば、複数の照射領域におけるそれぞれの自車両10から対象物までの距離の差が所定値以下の場合、複数の対象物における視差オフセット量を平均する。したがって、所定条件を満たす複数の照射領域における対象物までの測定距離誤差にばらつきがあるような場合でも、測定誤差ばらつきの影響が低減され、当該複数の照射領域のそれぞれにおいて距離が測定された複数の対象物を一部として有する1つの物体(具体的には、前方車両)について高精度に視差オフセット量を算出することができる。
【0031】
なお、画像処理ユニット1によりSTEP102の処理を実行する構成が、本発明の同一対象物判定手段に相当し、STEP106の処理を実行する構成が、本発明の視差算出手段に相当し、STEP108の処理を実行する構成が、本発明の視差オフセット量算出手段に相当する。
[第2実施形態]
次に、本発明の車両周辺監視装置における第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態における図4に示す視差オフセット量算出処理を、図8に示す視差オフセット量算出処理にしたものである。
【0032】
まず、レーダ装置3により対象物までの距離に基づいて対象物が前方車両があるか否かを判定する(図8/STEP200)。具体的には、第1の時刻においてレーダ装置3で測定した対象物までの距離と、第2の時刻においてレーダ装置3で測定した対象物までの距離との差が、あらかじめ設定した所定値以内である場合に、レーダ装置3により距離を測定した対象物が前方車両であると判定する。
【0033】
次いで、レーダ装置3により距離を測定した対象物が前方車両であると判定された場合(図8/STEP200‥YES)、前方車両までの距離を、レーダ装置3から画像処理ユニット1に送信された反射強度データに基づいて算出する(図8/STEP202)。
【0034】
そして、赤外線カメラ2R,2Lの撮像画像により得られた前方車両の視差を算出する(図8/STEP204)。なお、当該視差は、図7に示すように、基準画像の対象物BOと同一の探索画像の対象物SOを水平方向の位置が一致するようにするエピポーラ拘束の基で算出する。
【0035】
その後、STEP202により算出された自車両10から対象物までの距離と、STEP204により算出された対象物の視差とに基づいて視差オフセット量が算出される(図8/STEP206)。具体的に視差オフセット量Offsetは式(1)で算出される。
【0036】
そして、視差オフセット量を、本視差オフセット量算出処理の結果により得られた値に更新する(視差補正手段)。
【0037】
なお、レーダ装置3により距離測定した対象物が前方車両であると判定された対象物が複数ある場合には、複数の対象物における視差オフセット量を平均するようにしてもよい。
【0038】
前記機能を発揮する車両周辺監視装置によれば、レーダ装置3により対象物までの距離に基づいて対象物が前方車両があると判定された場合、レーダ装置3で検出された車両から前方車両までの距離と赤外線カメラ2R,2Lにより得られた前方車両の視差とに基づいて、2つの撮像装置の光軸間平行度ずれに起因する視差オフセット量が算出される(図8/S200〜206、図7参照)。自車両と同一速度で移動している対象物は、自車両との相対距離が変化しないため視差は一定であることに鑑みて、前記のような方法により視差オフセット量を高精度に算出することができる。
【0039】
なお、画像処理ユニット1によりSTEP200の処理を実行する構成が、本発明の車両判定手段に相当し、STEP204の処理を実行する構成が、本発明の視差算出手段に相当し、STEP206の処理を実行する構成が、本発明の視差オフセット量算出手段に相当する。
[第3実施形態]
次に、本発明の車両周辺監視装置における第3実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態における図4に示す視差オフセット量算出処理を、図9に示す視差オフセット量算出処理にしたものである。
【0040】
まず、赤外線カメラ2R,2Lにより得られた対象物が前方車両があるか否かを判定する(図9/STEP300)。たとえば、メモリにあらかじめ保存されているテンプレートとパターンマッチングすることにより判定する。
【0041】
次いで、赤外線カメラ2R,2Lにより得られた対象物が前方車両であると判定された場合(図9/STEP300‥YES)、前方車両までの距離を、レーダ装置3から画像処理ユニット1に送信された反射強度データに基づいて算出する(図9/STEP302)。
【0042】
そして、赤外線カメラ2R,2Lの撮像画像により得られた前方車両の視差を算出する(図9/STEP304)。なお、当該視差は、図7に示すように、基準画像の対象物BOと同一の探索画像の対象物SOを水平方向の位置が一致するようにするエピポーラ拘束の基で算出する。
【0043】
その後、STEP302により算出された自車両10から対象物までの距離と、STEP304により算出された対象物の視差とに基づいて視差オフセット量が算出される(図9/STEP306)。具体的に視差オフセット量Offsetは式(1)で算出される。
【0044】
そして、視差オフセット量を、本視差オフセット量算出処理の結果により得られた値に更新する(視差補正手段)。
【0045】
前記機能を発揮する車両周辺監視装置によれば、赤外線カメラ2R,2Lにより得られた対象物が前方車両があると判定された場合、レーダ装置3で検出された車両から前方車両までの距離と赤外線カメラ2R,2Lにより得られた前方車両の視差とに基づいて、赤外線カメラ2R,2Lの光軸間平行度ずれに起因する視差オフセット量が算出される(図9/S300〜306、図7参照)。自車両と同一速度で移動している対象物は、自車両との相対距離が変化しないため視差は一定であることに鑑みて、前記のような方法により視差オフセット量を高精度に算出することができる。
【0046】
なお、画像処理ユニット1によりSTEP300の処理を実行する構成が、本発明の車両判定手段に相当し、STEP304の処理を実行する構成が、本発明の視差算出手段に相当し、STEP306の処理を実行する構成が、本発明の視差オフセット量算出手段に相当する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の車両の周辺監視装置の一実施形態の全体構成を示す図
【図2】図1の周辺監視装置を備えた車両の斜視図
【図3】レーダ装置の走査範囲に関する説明図
【図4】第1実施形態における視差オフセット量算出処理を示すフローチャート
【図5】画像処理ユニットの処理を説明するための図
【図6】画像処理ユニットの処理を説明するための図
【図7】画像処理ユニットの処理を説明するための図
【図8】第2実施形態における視差オフセット量算出処理を示すフローチャート
【図9】第3実施形態における視差オフセット量算出処理を示すフローチャート
【符号の説明】
【0048】
1…画像処理ユニット(同一対象物判定手段、車両判定手段、視差オフセット量算出手段、視差補正手段)、2R,2L…赤外線カメラ(撮像装置)、3…レーダ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された2つの撮像装置により得られた2つの撮像画像に基づいて対象物の視差を算出し、該視差から前記対象物までの距離を検出して車両の周辺を監視する車両周辺監視装置であって、
前記車両から放射状に広がる複数の送信波の照射領域における反射波の強度を検知することにより第1の対象物までの距離を検出するレーダ装置と、
前記2つの撮像装置により得られた第2の対象物の視差を算出する視差算出手段と、
前記第1の対象物と前記第2の対象物とが同一対象物であるか否かを判定する同一対象物判定手段と、
前記同一対象物判定手段により前記第1の対象物と前記第2の対象物とが前記同一対象物であると判定された場合、前記レーダ装置で検出された前記車両から前記同一対象物までの距離と前記視差算出手段により算出された前記2つの撮像装置により得られた前記同一対象物の視差とに基づいて、前記2つの撮像装置の光軸間平行度ずれに起因する視差オフセット量を算出する視差オフセット量算出手段と、
前記視差オフセット量算出手段により算出された視差オフセット量に基づいて視差を補正する視差補正手段と
を備えることを特徴とする車両周辺監視装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両周辺監視装置において、
前記同一対象物判定手段は、前記レーダ装置により距離が検出された一の前記照射領域に第1の対象物が1つのみ存在し、かつ、前記一の照射領域に対応する前記撮像画像における一の局所画像領域に、前記2つの撮像装置により得られた第2の対象物が1つのみ存在するという所定条件が満たされているか否かに応じて、前記第1の対象物と前記第2の対象物とが同一対象物であるか否かを判定することを特徴とする車両周辺監視装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両周辺監視装置において、
前記視差オフセット量算出手段は、前記同一対象物判定手段により複数の前記照射領域と該複数の照射領域にそれぞれ対応する複数の前記局所画像領域とについて前記所定条件が満たされている場合、前記第1の対象物と前記第2の対象物とが同一であると判定された複数の前記同一対象物における前記視差オフセット量を平均し、
前記視差補正手段は、前記平均された視差オフセット量に基づいて視差を補正することを特徴とする車両周辺監視装置。
【請求項4】
車両に搭載された2つの撮像装置により得られた2つの撮像画像に基づいて対象物の視差を算出し、該視差から前記対象物までの距離を検出して車両の周辺を監視する車両周辺監視装置であって、
前記車両から放射状に広がる複数の送信波の照射領域における反射波の強度を検知することにより対象物までの距離を検出するレーダ装置と、
前記レーダ装置により前記対象物までの距離に基づいて前記対象物が前方車両があるか否かを判定する車両判定手段と、
前記2つの撮像装置により得られた前記対象物の視差を算出する視差算出手段と、
前記車両判定手段により前記前方車両があると判定された場合、前記レーダ装置で検出された前記車両から前記前方車両までの距離と前記視差算出手段により算出された前記2つの撮像装置により得られた前記前方車両の視差とに基づいて、前記2つの撮像装置の光軸間平行度ずれに起因する視差オフセット量を算出する視差オフセット量算出手段と、
前記視差オフセット量算出手段により算出された視差オフセット量に基づいて視差を補正する視差補正手段と
を備えることを特徴とする車両周辺監視装置。
【請求項5】
車両に搭載された2つの撮像装置により得られた2つの撮像画像に基づいて対象物の視差を算出し、該視差から前記対象物までの距離を検出して車両の周辺を監視する車両周辺監視装置であって、
前記車両から放射状に広がる複数の送信波の照射領域における反射波の強度を検知することにより対象物までの距離を検出するレーダ装置と、
前記2つの撮像装置により得られた前記対象物が前方車両があるか否かを判定する車両判定手段と、
前記2つの撮像装置により得られた前記対象物の視差を算出する視差算出手段と、
前記車両判定手段により前記前方車両があると判定された場合、前記レーダ装置で検出された前記車両から前記前方車両までの距離と前記視差算出手段により算出された前記2つの撮像装置により得られた前記前方車両の視差とに基づいて、前記2つの撮像装置の光軸間平行度ずれに起因する視差オフセット量を算出する視差オフセット量算出手段と、
前記視差オフセット量算出手段により算出された視差オフセット量に基づいて視差を補正する視差補正手段と
を備えることを特徴とする車両周辺監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−44009(P2010−44009A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−209620(P2008−209620)
【出願日】平成20年8月18日(2008.8.18)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】