説明

車両周辺監視装置

【課題】 赤外線カメラにより温度一様表面を有するデバイスを用いることなく、グレースケール画像中の対象物の輝度(輝度値)を推定することを可能とする車両周辺監視装置を提供する。
【解決手段】
予め求めておいた路面温度Trと外気温Taの対応関係の特性102に基づき検出した外気温Taから推定される路面温度Trと、この路面温度Trに対応するグレースケール画像中の路面領域の輝度(路面輝度という。)との対応関係から、グレースケール画像中の対象物の輝度(輝度値)を推定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、赤外線カメラにより撮影した赤外線画像(グレースケール画像)に基づき、車両周辺に存在する対象物を検出する車両周辺監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両周辺監視装置では、赤外線カメラにより捉えた自車両周辺の画像から、自車両との接触の可能性がある歩行者等の対象物の情報を検出し、その情報を自車両の運転者に提供する。
【0003】
この装置では、左右一組の赤外線カメラ(ステレオカメラ)が撮影した自車両周辺の画像において温度が高い部分を前記対象物にすると共に、左右画像中の対象物の視差を求めることにより該対象物までの距離を算出し、対象物の移動方向や対象物の位置から、自車両の走行に影響を与えそうな対象物を検出して警報を出力する(特許文献1、2参照。)。
【0004】
そして、特許文献1に係る装置では、2値化画像上の対象物の特徴量と、グレースケール画像上の対象物の特徴量との比較結果に基づいて、対象物画像の輝度分散の採否等を判定し、歩行者の認識処理方法を変更するようにして、歩行者認識の信頼性を向上させている。
【0005】
特許文献2には、グレースケール画像から輝度の高い(温度の高い)対象物(人体)の頭部候補を検知し、検知した頭部候補が人体の頭部の横幅(頭幅)よりも大きいか否かを判定することで、人体か人工構造物かを判別する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−79999号公報([0142]〜[0144])
【特許文献2】特許第3970876号公報([0035]、[0038]、[0040]、[0041]、図7)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、赤外線カメラは、赤外線の強さに比例して出力レベルが高くなる撮像素子(センサ素子又はセンサ画素ともいう。)の集合的構成(マトリクス構成)、いわゆるFPA(Focale Plane Array)構成とされている。
【0008】
そして、赤外線カメラは、出力レベルが高くなると、通常、センサ画素の輝度(映像出力輝度)が高くなるように構成されているので、赤外線が強いと、1画素は白っぽく表示される。
【0009】
その一方、撮像素子(センサ画素)は、図13に示すように、素子温度が高くなると出力レベル(なお、出力レベルの数値は、A/D変換器の分解能等によって異なるので参考値である。以下同じ。)が高くなる特性100(菱形で示す測定点の近似直線)を有している。なお、この図13の特性100は、赤外線カメラにより温度一様面を撮像しているときの特性を示している。
【0010】
そして、赤外線カメラを搭載する車両周辺監視装置では、特に、夕方から夜間において、当該赤外線カメラにより車両周辺に存在する動物あるいは人体(哺乳動物)を対象物として検出する。
【0011】
しかしながら、従来技術に係る赤外線カメラでは、例えば、図14に示すように、素子温度Teが例えば、Te=Te1=42.94[℃]と、Te=Te2=53.02[℃]、Te=Te3=62.97[℃]とでは、対象物温度[℃]に対する赤外線カメラの出力レベル(輝度値)が変化してしまい、結果として、輝度値から哺乳動物等の対象物を特定することが困難になるという課題がある。
【0012】
しかも、図13に示した素子温度に対する出力レベルは、経年劣化等により特性が変化する可能性があり、そのときには、素子温度を計測することが必要になり、定期的に特性100を作り直さなければならないという煩雑さもある。
【0013】
これらの課題を解決するために、フィードバック制御等により所定の既知の値に温度が保持される温度一様表面(基準面)を有するデバイスを赤外線カメラにより撮像し、既知の温度に基づき赤外線カメラの出力レベルを校正(補正)することも考えられるが、温度一様表面を有するデバイスの取り扱い方等、赤外線カメラのシステムが複雑化し、車載用としては、部品コスト及び取り付けコストが、共にアップしてしまうという課題がある。
【0014】
この発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、温度一様表面を有するデバイスを用いることなく、グレースケール画像中の対象物の輝度(輝度値)を推定することを可能とする車両周辺監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この発明に係る車両周辺監視装置は、車両に搭載された赤外線カメラにより取得されるグレースケール画像に基づいて前記車両の周辺に存在する対象物を検出する車両周辺監視装置において、外気温を検出する外気温検出部と、前記グレースケール画像の中から路面領域を検出する路面領域検出部と、予め求めておいた路面温度と外気温の対応特性に基づいて、前記外気温検出部により検出した前記外気温に対応する、前記路面領域検出部により検出した前記路面領域の温度(路面温度という。)を算出する路面温度算出部と、算出した前記路面領域の温度と、前記路面領域検出部により検出した前記グレースケール画像の中の路面領域の輝度との対応関係に基づいて、前記対象物の輝度を推定する対象物輝度推定部と、を備えることを特徴とする。
【0016】
この発明によれば、予め求めておいた路面温度と外気温の対応特性に基づき外気温から推定される路面温度と、この路面温度に対応するグレースケール画像中の路面領域の輝度(路面輝度という。)との対応関係から、グレースケール画像中の対象物の輝度(輝度値)を推定することができる。
【0017】
この場合、推定したグレースケール画像中の対象物の輝度(輝度値)に基づいて、グレースケール画像の階調補正(校正)を行うことで、グレースケール画像から対象物の抽出が容易になる。
【0018】
また、推定した対象物の輝度に基づき、前記グレースケール画像又は当該グレースケール画像の2値化画像から対象物を検出する対象物検出部をさらに備え、前記対象物検出部は、前記対象物を哺乳動物とし、当該哺乳動物に対応する輝度範囲を算出し、算出した輝度範囲内の検出物に対してのみ前記哺乳動物であるか否かの判定を行うようにすることで、哺乳動物であるか否かを迅速に判別することができる。
【0019】
さらに、前記車両に、車両周辺に存在する物体の位置及びサイズを検出するレーダを搭載することで、前記路面領域検出部は、前記レーダが閾値サイズを上回る物体を検出しない領域を前記路面領域と検出するようにできるので、より迅速に路面領域を検出することができる。
【0020】
なお、前記車両には、さらに、当該車両が走行する周辺に舗装路面が存在する第1可能性情報、又は前記舗装路面上にノイズが存在する第2可能性情報を検出する車両周辺情報検出部が備えられ、前記車両周辺情報検出部による前記第1及び第2可能性情報の検出結果に基づいて、前記路面領域検出部による路面領域検出の仕方を変更するようにしてもよい。第1可能性情報を検出した場合、対象物の検出精度が高くなると判断し、第2可能性情報を検出した場合、対象物の検出精度が低くなると判断する。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、温度一様表面を有するデバイスを用いることなく、路面温度と外気温との対応関係に基づき、前記路面温度を有する路面領域が撮像されたグレースケール画像中の対象物の輝度(輝度値)を、簡易に推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明の第1実施例に係る車両周辺監視装置の構成を示すブロック図である。
【図2】第1実施例の車両周辺監視装置が搭載された車両の模式図である。
【図3】外気温と路面温度の対応関係を示す特性図である。
【図4】第1実施例の動作説明に供されるフローチャートである。
【図5】階調補正前のグレースケール画像の例示図である。
【図6】対象物温度範囲対出力レベル範囲との対応関係の補正説明図である。
【図7】図5のグレースケール画像の階調補正(輝度補正)後のグレースケール画像の説明図である。
【図8】第2実施例に係る車両周辺監視装置の構成を示すブロック図である。
【図9】第2実施例の車両周辺監視装置が搭載された車両の模式図である。
【図10】第2実施例の動作説明に供されるフローチャートである。
【図11】レーダ装置による探索範囲の説明に供される模式的鳥瞰図である。
【図12】図11の鳥瞰図に対応した後続車両の運転者が視認する景色の模式図である。
【図13】赤外線センサにおける素子温度に対する出力レベルの変化特性図である。
【図14】素子温度をパラメータとして、対象物温度と出力レベルの対応関係の変化を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、この発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0024】
[第1実施例]
図1は、この発明の第1実施例に係る車両周辺監視装置10の構成を示すブロック図である。図2は、図1に示した車両周辺監視装置10が搭載された車両12の模式図である。
【0025】
図1及び図2において、車両周辺監視装置10は、該車両周辺監視装置10を制御する画像処理ユニット14(処理装置)と、この画像処理ユニット14に接続される左右の赤外線カメラ16R、16L(撮像装置)と、車両12の車速Vsを検出する車速センサ18と、運転者によるブレーキペダルの操作量(ブレーキ操作量)Brを検出するブレーキセンサ20と、車両12のヨーレートYrを検出するヨーレートセンサ22と、車両12が置かれている外気温度(気温、環境温度)Taを検出する温度センサ28(外気温検出部)と、音声で警報等を発するためのスピーカ24(通知部)と、赤外線カメラ16R、16Lにより撮影された画像を表示し、接触の危険性が高い歩行者等の対象物(移動対象物)を車両の運転者に認識させるためのHUD(Head Up Display)26a等を含む画像表示装置26(通知部)と、を備える。
【0026】
画像表示装置26としては、HUD26aに限らず、ナビゲーションシステムのディスプレイを利用することができる。
【0027】
画像処理ユニット14は、車両12の周辺の赤外線画像と車両の走行状態を示す信号(ここでは、車速Vs、ブレーキ操作量Br及びヨーレートYr)とから、車両前方の歩行者等の動く物体を検出し、接触の可能性が高いと判断したときにスピーカ24を通じて警報を発する。
【0028】
ここで、画像処理ユニット14は、入力アナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換回路、デジタル化した画像信号を記憶する画像メモリ(記憶部14m)、各種演算処理を行うCPU(中央処理装置)14c、CPU14cが演算途中のデータを記憶するために使用するRAM(Random Access Memory)やCPU14cが実行するプログラムやテーブル、マップなどを記憶するROM(Read Only Memory)等の記憶部14m、スピーカ24の駆動信号と画像表示装置26の表示信号などを出力する出力回路等を備えており、赤外線カメラ16R、16L、ヨーレートセンサ22、車速センサ18、ブレーキセンサ20、及び温度センサ28の各出力信号は、デジタル信号に変換されてCPU14cに入力されるように構成されている。
【0029】
画像処理ユニット14のCPU14cは、これらデジタル信号を取り込んでプログラムを実行することで、次に述べる各種機能部(機能手段ともいう。)として機能し、スピーカ24及び画像表示装置26に警告に係る駆動信号(音声信号や表示信号)を送出する。
【0030】
いわゆるステレオカメラとして機能する赤外線カメラ16R、16Lは、図2に示すように、自車両12の前部バンパー部に、自車両12の車幅方向中心部に対してほぼ対称な位置に配置されており、2つの赤外線カメラ16R、16Lの光軸が互いに平行であって、かつ両者の路面からの高さが等しくなるように固定されている。なお、赤外線カメラ16R、16Lは、対象物の温度が高いほど、その出力信号レベルが高くなる(輝度が増加する)特性を有している。
【0031】
また、HUD26aは、自車両12のフロントウインドシールドの運転者の前方視界を妨げない位置に表示画面が表示されるように設けられている。
【0032】
この第1実施例において、CPU14cは、路面領域検出部30、路面温度算出部32、路面輝度算出部33、対象物輝度推定部34、階調補正部35、及び対象物検出部36等として動作(機能)する。
【0033】
この第1実施例において、記憶部14mには、図3に示すように、外気温Taと路面温度Tr(ここでは、アスファルト路面の表面温度)の対応関係を表す、菱形で示す実測点の近似直線である特性102(外気温Taと路面温度Trとの既知の対応関係)をマップあるいは計算式として予め記憶されている。外気温Taと路面温度Trは、概ね正比例の関係にあり、その差Δは、4.3[℃](路面温度Trが外気温Taより概ね4[℃]程度高い。)であった。また、アスファルト路面の路面温度Trは、夕方から日没後、真夜中にかけて、略一定であることを確認している。
【0034】
なお、この特性102を、季節{夏と冬と春(秋)}、時間帯(例えば、太陽が出たての夜明け等の朝時は、外気温Taが同じであっても、昼時より路面温度Trが低い。)、天候(晴れ、雨や曇り等)等に応じて変更することが好ましく、変更することもこの発明に含まれる。この場合、季節、時間帯は、図示しないカレンダ・タイマにより、また、天候は、図示しない照度計や雨滴検知センサあるいは晴雨計等又は通信システムにより情報センタから地域毎の気象情報を得ることにより判断することができる。
【0035】
さらに、図3に示す特性102を、路面の属性・種類、例えば、アスファルト路面であるか、コンクリート路面であるが、未舗装の路面(草地や土)であるか等に応じて変更することもこの発明に含まれる。路面の属性・種類は、予め、ナビゲーションシステムの道路地図情報に属性として持たせたり、通信により情報センタから無線により取得するように構成することができる。
【0036】
次に、基本的には以上のように構成される第1実施例に係る車両周辺監視装置10の動作について図面を参照して説明する。
【0037】
図4は、画像処理ユニット14による歩行者等の対象物の検出、グレースケール画像の輝度の校正(階調補正)等の動作説明に供されるフローチャートである。
図4のステップS1において、画像処理ユニット14の路面温度算出部32は、温度センサ28(外気温検出部)を通じて外気温Taを検出し、記憶部14mに取り込み、さらに、図3の特性102を参照し、検出した外気温Taに対応する路面温度(路面領域の温度)Trを推定(算出)する。
【0038】
次いで、ステップS2において、車速センサ18により検出される車速Vs等から車両12の走行状態(走行中か停車中)を判定し、停車中である場合には、処理を停止する。なお、停車中であっても路面領域が比較的に明瞭である結果、信頼性が高い場合には、路面領域の検出をしてもよい。停車中であっても、ステップS3以降の処理を行うようにしてもよい。
【0039】
走行中である場合には、ステップS3において、画像処理ユニット14は、赤外線カメラ16R、16Lによりフレーム毎に撮影された車両前方の所定画角範囲のフレーム毎の出力信号である赤外線画像を取得し、A/D変換し、グレースケール画像を画像メモリに格納する。なお、赤外線カメラ16Rによりグレースケール右画像が得られ、赤外線カメラ16Lによりグレースケール左画像が得られる。また、グレースケール右画像とグレースケール左画像では、同一の対象物の表示画面上の水平位置がずれて表示されるので、このずれ(視差)により対象物までの距離を算出することができる。以下、基準画像をグレースケール右画像として、単にグレースケール画像という。図5は、例としてのグレースケール画像48を示している。このグレースケール画像48では、赤外線カメラ16Rを構成する赤外線センサの素子温度が高く、対象物52及び路面領域50の輝度が共に飽和領域近傍となっており、対象物52と路面領域50とを峻別することがきわめて困難になっていることに留意する。
【0040】
次いで、ステップS4において、路面領域検出部30は、グレースケール画像48から路面領域50を検出する。
【0041】
路面領域50の検出は、路面領域は、一般に、温度が略一様であり、従って輝度が略一様である点に留意して検出される。また、路面領域は、通常、グレースケール画像48の下側領域に撮像される点に留意して検出される。よって、グレースケール画像48中、下側領域において、輝度分散の小さい値が連続した場合には、路面領域50と推定し路面領域50を検出することができる。
【0042】
次いで、ステップS5において、路面輝度算出部33は、検出した路面領域50の複数画素の輝度値(A/D変換値)を画像メモリから取得し、複数画素の輝度の平均値を路面輝度Rbとして算出する。複数画素の輝度の平均値をとることで、ノイズを低減することができる。なお、路面輝度Rbは、よりノイズを低減するために、グレースケール画像48の複数回撮像に係る複数フレームの平均値を用いることがより好ましい。
【0043】
次いで、ステップS6において、ステップS1で推定した路面温度Trと、ステップS5で算出した路面輝度Rbの対応関係から、人体を含む哺乳動物(対象物)の表面温度(対象物温度という。)Tm、具体例としては、人体では頭部、特に額の温度範囲(35[℃]前後で一定である既知)に対応するステップS3で得たグレースケール画像48(図5参照)中の輝度範囲を求める。
【0044】
この場合、対象物輝度推定部34は、ステップS3で得たグレースケール画像中の路面輝度Rbと路面温度Trと対象物温度Tm(既知)との対応関係から、対象物温度Tmの輝度(対象物輝度)Btを、次の(1)式により求める(推定する)ことができる。
対象物輝度(Bt)
=路面輝度(Rb)×対象物温度(Tm)/路面温度(Tr) …(1)
【0045】
次いで、ステップS7において、階調補正部35は、対象物検出部36が検出対象とする対象物の所定の輝度範囲に、グレースケール画像48中の対象物52が入るように階調補正を行う。
【0046】
この例では、図6に示すように、対象物温度範囲対出力レベル範囲との対応関係60が、対応関係58に示すように、輝度値が低くなるようにグレースケール画像48の階調を補正する(対象物52を予め定めてある閾値輝度により検出し易い輝度範囲に変換する)。この階調補正は、デジタルデータであるグレースケール画像48に対して行っても一定の効果が得られるが、A/D変換器の分解能を精度よく使うために、A/D変換器に入力するアナログ信号に対して行うことがより好ましい。
【0047】
そうすると、図7の階調補正後のグレースケール画像48Aに示すように、路面領域50Aと人体対象物Pの輝度差を容易に峻別できるようになり、ステップS8において、対象物検出部36により前記所定閾値輝度以上の輝度を有する対象物を哺乳動物(人又は動物)、特に、人体対象物Pとして捉えることができ、次に、人体対象物Pの外接四角形(人体の大きさは、170[cm]×50[cm]程度と仮定する。)より僅かに大きい領域にマスク領域54を設定し、所定閾値以上の輝度を有し、所定の形状を有する対象物を人体対象物Pと推定することで、人体対象物Pを検出することができる。なお、人体対象物Pを検出する際、グレースケール画像48Aに対して、人体を検出するための所定閾値輝度以上の輝度を有する部分を「1」、未満の部分を「0」とする2値化処理を行ってもよい。
【0048】
なお、上述したように、グレースケール画像48の輝度を補正して処理することが好ましいが、図3に示したように、路面温度Trと外気温Taとの対応関係の特性102が分かっているので、人体対象物Pの輝度範囲をグレースケール画像48から直接推定することもできる。
【0049】
次に、ステップS9において、経時的にフレーム毎に得られるグレースケール画像48A等及びその2値化画像から、温度の高い部分の動体(動いているもの)を対象物である人体P等として検出し、動体の移動ベクトル(速度と方向)を検出する。また、このステップS9において、ブレーキセンサ20、車速センサ18、及びヨーレートセンサ22の各出力であるブレーキ操作量Br、車速Vs、ヨーレートYrと、ステップS7で検出した対象物までの距離Zrとに基づき、当該車両12の対象物検出部36が検出した対象物に接触の可能性があるかどうかを判定し、接触の可能性があると判定した場合には、ステップS10において、運転者に情報を提供する。具体的には、当該歩行者のグレースケール画像48AをHUD26aに表示するとともに、スピーカ24を通じて警報を発生し、車両12の運転者に接触の回避操作を促す。グレースケール画像48Aは、階調が補正された画像(図7)であるので、運転者が人体対象物Pを認識し易い。
【0050】
以上説明したように、上述した第1実施例に係る車両周辺監視装置10は、車両12に搭載された赤外線カメラ16L、16Rにより取得されるグレースケール画像48に基づいて車両12の周辺に存在する対象物52(P)を検出する際、外気温検出部としての温度センサ28により外気温Taを検出する。次に、路面領域検出部30により、グレースケール画像48の中から画面の下側に存在して輝度分散の小さい領域が続く領域を路面領域50として検出する。次いで、路面温度算出部32は、予め求めておいた路面温度Trと外気温Taの対応関係の特性102に基づいて、温度センサ28により検出した外気温Taに対応する、路面領域検出部30により検出した路面温度Trを算出する。そして、対象物輝度推定部34は、算出した路面温度Trと、路面領域検出部30により検出したグレースケール画像48の中の路面領域50の輝度(路面輝度Rb)との対応関係に基づいて、対象物52の輝度(対象物輝度Bt)を、既知の対象物温度(Tm)を用いて上記(1)式で示したように推定することができる。
【0051】
この場合、推定したグレースケール画像中の対象物52の輝度(輝度値)に基づいて、グレースケール画像の階調補正(校正)を行うことで、図7に示した階調補正後のグレースケール画像48Aから対象物Pの抽出が容易になる。
【0052】
前記の対象物検出部36は、対象物Pを哺乳動物、例えば人とし、当該人に対応する輝度範囲を算出し、算出した輝度範囲内の検出物に対してのみ人であるか否かの判定を行うようにすることで、人であるか否かを迅速に判別することができる。
【0053】
[第2実施例]
図8は、この発明の第2実施例に係る車両周辺監視装置10Aの構成を示すブロック図である。図9は、図8に示した車両周辺監視装置10Aが搭載された車両12Aの模式図である。
【0054】
第2実施例に係る車両周辺監視装置10Aと車両12Aの構成要素及びその作用について、第1実施例に係る車両周辺監視装置10と車両12の構成要素と同一のものあるいは対応するものには同一の参照符号をつけてその詳細な説明を省略する。
【0055】
この第2実施例に係る車両周辺監視装置10Aでは、対象物までの距離の検出並びに路面領域の検出をレーダ画像により行う点で、第1実施例に係る車両周辺監視装置10と構成及び作用が異なる。
【0056】
公知のように、レーダ装置62により対象物の位置(距離と方位)を検出することができるので、赤外線カメラは、いわゆるステレオカメラの構成とする必要がなく、図9に示すように、単一の赤外線カメラ16が、車両12Aの前部バンパー部上、自車両12の車幅方向中心部に配置される。レーダ装置62は、その図9に示すように、車両12Aのフロントグリルの中央に、赤外線カメラ16の上方に配置される。
【0057】
レーダ装置62は、赤外線カメラ16の水平画角(撮影領域)よりも狭いビーム幅の電波を車両12Aの前方に送信し、かつ左右方向所定範囲に走査する。そして、物体からの反射波を受信し、反射強度、反射方向と受信時間とから物体を検出するとともに、後述するように、路面領域検出部30の機能を備えるので、第2実施例の画像処理ユニット14Aから路面領域検出部30が削除されている。また、上述した路面領域検出部30による路面領域の検出処理であるステップS4の処理も省略される。なお、レーダ装置62では、受信電波の反射強度により物体の大略の大きさと位置(距離と方向)を検出する。人体対象物の精度の確保された大きさは赤外線カメラ16の画像から検出する。
【0058】
赤外線カメラ16は、遠赤外線を多量に発する人を含む哺乳動物を対象物とし、かつその対象部分を高輝度部分とするグレースケール画像を出力する。
【0059】
この第2実施例において、図8に示すナビゲーション装置70は、車両周辺情報検出部として機能し、当該車両12Aが走行する周辺に舗装路面が存在する第1可能性情報、又は前記舗装路面上にノイズが存在する、例えば、工事中等の路面が存在する等の第2可能性情報を検出する。ナビゲーション装置70から第1可能性情報を検出した場合、対象物の検出精度が高くなると判断し、第2可能性情報を検出した場合、対象物の検出精度が低くなると判断する。
【0060】
次に、図10に示すフローチャートを参照して、第2実施例の車両周辺監視装置10Aの動作について説明する。
【0061】
なお、図10に示すフローチャートの処理に関し、上記した図4に示したフローチャートの処理と対応する処理あるいは同一の処理には、同一のステップ番号(処理番号)を付け、その詳細な説明を省略する。
【0062】
ステップS1の外気温Taから路面温度Trの推定処理後に、ステップS21において、レーダ装置62により、図11の鳥瞰図に示すように、一点鎖線で囲んだ扇形の所定探索範囲64内の車両前方の障害物(対象物を含む物体)68の位置、距離、及びサイズ(大きさ)を計測し、記憶部14mに取り込む。なお、図12は、図11の鳥瞰図に対応した車両12Aの運転者が視認する景色を模式的に示している。
【0063】
次に、ステップS2Aにおいて、車両12Aの手前の所定範囲66内に障害物68{閾値サイズを上回る物体(立体物)}が存在するか否か(障害物68の有無)を判定し、障害物68が存在しないと判別した場合には、その所定範囲66の領域は、路面領域であると判別し、ステップS3の処理に進む。ステップS2Aの処理が、上述した路面領域検出部30の処理に対応する。
【0064】
ステップS3において、図5に示したグレースケール画像48が得られるが、グレースケール画像48の下側領域は、路面領域50であり、ステップS5において、上述したようにその路面領域50から路面輝度が算出される。ステップS5以降の処理は、第1実施例の処理と同一であるので、その説明を省略する。
【0065】
上述した第2実施例によれば、車両12Aに、車両周辺に存在する物体の位置(距離と方位)及びサイズ(大きさ)を検出するレーダ装置62を搭載しているので、路面領域検出部として機能するレーダ装置62が閾値サイズを上回る物体を検出しない領域を路面領域50と検出するようにでき、より迅速に路面領域50を検出することができる。
【0066】
なお、この発明は、上述の実施形態に限らず、この明細書の記載内容に基づき、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0067】
10、10A…車両周辺監視装置 12、12A…車両
14…画像処理ユニット 16、16L、16R…赤外線カメラ
26a…HUD 28…温度センサ
30…路面領域検出部 32…路面温度算出部
33…路面輝度算出部 34…対象物輝度推定部
35…階調補正部 36…対象物検出部
62…レーダ装置 70…ナビゲーション装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された赤外線カメラにより取得されるグレースケール画像に基づいて前記車両の周辺に存在する対象物を検出する車両周辺監視装置において、
外気温を検出する外気温検出部と、
前記グレースケール画像の中から路面領域を検出する路面領域検出部と、
予め求めておいた路面温度と外気温の対応特性に基づいて、前記外気温検出部により検出した前記外気温に対応する、前記路面領域検出部により検出した前記路面領域の温度(路面温度という。)を算出する路面温度算出部と、
算出した前記路面領域の温度と、前記路面領域検出部により検出した前記グレースケール画像の中の路面領域の輝度との対応関係に基づいて、前記対象物の輝度を推定する対象物輝度推定部と、
を備えることを特徴とする車両周辺監視装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両周辺監視装置において、
さらに、推定した対象物の輝度に基づき、前記グレースケール画像又は当該グレースケール画像の2値化画像から対象物を検出する対象物検出部、を備え、
前記対象物検出部は、前記対象物を哺乳動物とし、当該哺乳動物に対応する輝度範囲を算出し、算出した輝度範囲内の検出物に対してのみ前記哺乳動物であるか否かの判定を行う
ことを特徴とする車両周辺監視装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の車両周辺監視装置において、
前記車両には、さらに、車両周辺に存在する物体の位置及びサイズを検出するレーダが搭載され、
前記路面領域検出部は、前記レーダが閾値サイズを上回る物体を検出しない領域を前記路面領域として検出する
ことを特徴とする車両周辺監視装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両周辺監視装置において、
前記車両には、さらに、当該車両が走行する周辺に舗装路面が存在する第1可能性情報、又は前記舗装路面上にノイズが存在する第2可能性情報を検出する車両周辺情報検出部が備えられ、
前記車両周辺情報検出部による前記第1及び第2可能性情報の検出結果に基づいて、前記路面領域検出部による路面領域検出の仕方を変更する
ことを特徴とする車両周辺監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−107952(P2011−107952A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−261850(P2009−261850)
【出願日】平成21年11月17日(2009.11.17)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】